JP4889321B2 - 伸縮性積層部材及び物品 - Google Patents

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本発明は、伸縮性積層部材に関し、さらに詳しく述べると、柔軟性及び肌触り特性にすぐれかつ伸縮時に層剥離(いわゆるデラミネーション)や芯材の分離などを生じないシート状積層部材に関する。本発明はまた、かかる伸縮性積層部材を備えた物品、例えば使い捨ておむつ、衣服などに関する。
下着等の衣服や使い捨ておむつ等の衛生用品において、それらの物品の取り扱い性、着用感(フィット感)などを改善するため、例えば腰などの部位に伸縮性をもった材料が使用されている。例えば使い捨ておむつを例にとると、着用時、腰部をメカニカルファスナーで締結して使用する、いわゆるオープンタイプの使い捨ておむつにおいて、そのメカニカルファスナーの取り付け部位(イヤ部)に幅広の伸縮性部材が用いられている。伸縮性部材が適度の伸縮性を有するので、使い捨ておむつの着用及びメカニカルファスナーの締結が容易であり、また、伸縮性部材には適度の柔軟性があるので、長時間のおむつ着用でも皮膚に対する悪影響が少なくてすむからである。
使い捨ておむつやその他の衛生用品で使用するため、いろいろなタイプの伸縮性部材が提案され、また、伸縮性の改善のため、いろいろな製造方法が提案されている。特に伸縮性部材の性能を向上させるため、例えば特許文献1には、第1及び第2の不織布からなる歪ゼロの延伸積層材料に、リングロールと呼ばれる方法で積層材料の縦方向に切り込みを入れ、弾性を与える方法及び装置が提案されている。また、特許文献2には、不織布に襞を入れた状態でラミネートを行う方法が提案されている。しかし、これらの製造方法の場合、エラストマーフィルムを製造する工程と、そのエラストマーフィルムを不織布と積層するラミネート工程とを別々に行うことや、ラミネート工程の前後に追加の工程が必要であるので、製造工程が複雑となり、製造コストの増加も避けることができない。また、このような製造方法を使用した場合には、得られる伸縮性部材において不織布のスリットや破断線が露出したり、毛羽立ち等が生じ、外観が損なわれる。
最近では、製造プロセスを短縮し、生産性を上げるため、エラストマーフィルムの製造工程と不織布のラミネート工程とを同時に行う溶融押出しラミネート法が提案されている。例えば特許文献3には、溶融押出しラミネート法によって、エラストマーシートのそれぞれの面に同一もしくは異なる種類の不織布を積層一体化して3層構造の伸縮性シートを製造する方法が提案されている。しかし、この製造方法の場合、エラストマーフィルムと不織布が強力に接合しているため、得られる伸縮性シートを伸ばすときにかなりの応力が必要であるため、伸縮性シートを引伸ばして塑性変形をさせて用いることが開示されている。
一般的に同時溶融押出しラミネート法により作成される伸縮性シートは、第1回延伸と第2回延伸での50%延伸時の応力比(A/B)が通常10以上になり、第2回延伸以降の繰り返し延伸時に、適切な弾力性を保持できず、問題があった。さらに、伸縮性シートを伸ばしやすくするために切り込み加工、襞加工、コルゲーション加工などを施すことが必要であり、煩雑であり、製造コストが増加し、シートの外観も損なわれる。
特表平6−505408号公報(特許請求の範囲) 特表2000−505408号公報(特許請求の範囲) 特開2004−98356号公報(特許請求の範囲)
本発明の目的は、したがって、製造工程が簡単であり、低コストで製造できるとともに、高い柔軟性と同時に、優れた積層特性及び耐久性を両立させることができ、さらには肌触り特性にもすぐれた伸縮性部材を提供することにある。本発明の目的は特に、部材を構成する芯材と不織布がフラットな構造を有するにもかかわらず、繰り返しの延伸がかかる使用中に層剥離や芯材の切れなどの欠陥を生じることがなく、また、非常に低応力で伸ばすことができ、弾力性も保持できるために、イヤータイプのおむつ等に好適な伸縮性部材を提供することにある。
また、本発明の目的は、本発明の伸縮性部材を使用することで、取り扱い性や使用感にすぐれた物品を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、着用が容易であり、肌触りがよく、しかもメカニカルファスナーの締結時に非常に低い応力で伸ばすことができ、かつイヤ部を繰り返し伸縮させても層剥離などの欠陥を生じることのない使い捨ておむつを提供することにある。
本発明の上記した目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
本発明は、その1つの面において、少なくとも一方の面に不織布が接合された芯材を含んでなる伸縮性積層部材であって、
前記芯材は、15〜45%のスチレン含率を有するスチレン系エラストマーからなり、
前記不織布は、前記芯材に連続して接合されてなり、前記積層部材を100%延伸したときに、その延伸の前後において前記芯材からの剥離又は破断を生じることがなく、かつ前記不織布の50%延伸時における応力は、CD方向で3N/25mm以下であり、そして
前記積層部材を100%延伸させ応力をフリーとして元の状態に戻した(第1回延伸)後、再び100%延伸させたとき(第2回延伸)に、第1回延伸の50%延伸時点の応力(A)と第2回延伸の50%延伸時点の応力(B)の比(A/B)が、3.0以下であることを特徴とする伸縮性積層部材にある。
ここで、芯材のスチレン含率が15%に満たないと、延伸時の応力は低すぎて容易に塑性変形を起こし易く、弾力性を失う。一方、スチレン含率が45%を超えると、延伸させる応力が高すぎて、人手で延伸することが大変であるばかりでなく、溶融押し出し時に粘度が高すぎて、押し出し工程がスムーズにできない。
また、不織布の50%延伸時におけるCD方向の応力が3N/25mmを超えると、積層部材を延伸する際に応力が高くなりすぎて、人手での延伸は大変であり、収縮時の弾力性も低くなり、保持力が低下する。
さらに、積層部材の第1回延伸の50%延伸時点の応力(A)と第2回延伸の50%延伸時点の応力(B)の比(A/B)が3.0を超えると、繰り返し延伸後の積層部材の保持力が低下しすぎ、実用上問題がある。
本発明による伸縮性積層部材において、不織布は、芯材の片面のみに接合されていてもよく、さもなければ、第1の不織布と第2の不織布とで芯材を挟持し、接合したサンドイッチ構造を有していてもよい。また、不織布は、スパンレース不織布であることが好ましい。スパンレース不織布を使用すると、肌触りもよくなる。
本発明の積層部材において、芯材の構成に用いられるスチレン系エラストマーは、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体からなるスチレン系エラストマーであることが好ましい。また、SIS共重合体において、3個以上の分岐骨格を有するSIS共重合体が5重量%以上含まれていると、積層部材の製造時に成形性が向上し、好ましい。かかるSIS共重合体を芯材に使用すると、穴をあけてもその部分からフィルムが裂けるようなことがない。
さらに加えて、本発明の積層部材は、後述する伸縮性領域と非伸縮性領域を組み合わせて有していてもよい。また、かかる積層部材は、使い捨ておむつの構成員として、メカニカルファスナーを取付けるイヤ部として使用されることが好ましい。本発明の積層部材は、芯材と不織布がフラットな構造にあるにもかかわらず、延伸してもデラミネーションが発生せず、非常に低応力で伸ばすことができ、さらには弾力性も保持できるためである。
また、本発明は、そのもう1つの面において、本発明による伸縮性積層部材を備えることを特徴とする物品にある。本発明の伸縮性積層部材とメカニカルファスナーなどの係止部材を組み合わせると、延伸して引っ張り、適当な弾力性を保った締結力が必要な部品に適用することが便利となる。
本発明による物品は、例えば、身体に使い捨てカイロなどの物品を固定するバンド、弾性包帯の基材、術衣などの固定ベルトなどに応用できる。好ましくは、使い捨ておむつのメカニカルファスナーを取付けるイヤ部において本発明の伸縮性積層部材を備えることができる。
本発明によれば、以下の詳細な説明から理解されるように、芯材であるエラストマーシートと不織布とを同時溶融押出しラミネート法によって積層しているので、製造プロセスを簡略化でき、製造エリア及び製造コストを縮小するとともに、生産性の向上を図ることができる。また、この効果は、芯材のエラストマーシートをスチレン系エラストマーの単層から形成することで、さらに高めることができる。
また、本発明の伸縮性積層部材は、伸縮性にすぐれていることはもちろんのこと、その使用時、比較的に弱い力(応力)で延伸させることができるので、取り扱い性にすぐれ、また、着用者の動きに追従でき、フィット感にすぐれている。
さらに、本発明により同時溶融押出しラミネート法によって伸縮性積層部材を製造する場合、エラストマーシートと不織布とがすぐれた積層強度及び耐久性を奏するので、積層部材を繰り返し伸縮させた場合に、エラストマーシートからの不織布の剥離が起ったり、芯材として使用しているエラストマーシートが切れたり、分離したりすることがない。さらに、用いる不織布をスパンレース不織布にすると、得られた積層部材は、その表面が肌触り特性にすぐれているので、人の皮膚に直接に触れることがあっても擦れたりかぶれたりすることがなく、不快感も引き起こさない。さらにまた、低応力で延ばしやすくするために、伸縮性積層部材の製造後にさらに追加の加工工程(例えば、スリット加工)を実施する必要がない。
さらにまた、本発明によれば、本発明の伸縮性積層部材を一構成要素として使用することで、その上述のような特徴を生かして、取り扱い性や使用感にすぐれた物品を提供することができる。
特に本発明によれば、本発明の伸縮性積層部材をイヤ部に使用することで、着用が容易であり、肌触りがよく、しかも着用時及びメカニカルファスナーの締結時にイヤ部を繰り返し伸縮させても層剥離などの欠陥を生じない弾力性を保持した使い捨ておむつを提供することができる。もちろん、本発明によれば、伸縮性積層部材をその他の衛生用品や、術衣等の衣服などに使用することで、本発明の伸縮性積層部材の特徴及び機能を十二分に発揮させることができる。例えば本発明の伸縮性積層部材を術衣の適所に備えることによって、医師の体形にフィットさせ、作業性を向上させることができる。
本発明による伸縮性積層部材及び物品は、それぞれ、いろいろな形態で有利に実施することができる。以下、本発明の伸縮性積層部材を、その典型的な使用例である使い捨ておむつを参照して説明する。
図1は、本発明による伸縮性積層部材10をイヤ部110に備えたオープンタイプの使い捨ておむつ100の斜視図である。使い捨ておむつ100は、外側の液体不透過性のポリマーフィルム124と内側の液体吸収層126とを含む矩形のラミネート122から構成されている。ラミネート122の内部には、図示されないが、液体吸収性の高分子吸収体が収納されている。また、外側のポリマーフィルム124には、おむつの着用時、メカニカルファスナー120のフック材125を係止しておむつを着用者に固定するため、ループ材132が取り付けられている。ここで、フック材125は、マッシュルーム形の断面形状を有する微細な突起物の集まりからなり、また、ループ材132は、その表面組織にフック材125が絡み合い可能な織布もしくは不織布からなる。
図示の使い捨ておむつ100の場合、そのイヤ部110において本発明の伸縮性積層部材10を使用しているので、おむつの着用が容易に、すばやく可能であり、また、着用後は、伸縮性積層部材10に柔軟性があり、肌触りがよいので、乳幼児から老人、病人にいたるまで、快適に着用することができ、肌荒れなども気にしないですむ。また、使い捨ておむつ100では、ループ材132からのフック材125の引き剥がし及びフック材125の再係止を繰り返すことがあるが、伸縮性積層部材10は、繰り返しの伸縮において弾力性の低下が小さく、不織布の層剥離や芯材の裂断を生じることもない。
本発明の伸縮性積層部材10は、図2に模式的に示されるように、第1の不織布1と、第1の不織布1と同一もしくは異なる材料からなる第2の不織布2とで芯材3を挟持した構成を有することができる。第1の不織布1と第2の不織布2は、芯材3に連続して接合されている。伸縮性積層部材10は、通常、フラットな構造をもったシートの形態で提供される。伸縮性積層部材10の厚さは、その使途などに応じて広い範囲で変更することができるが、一般的には約50μm〜2mmの範囲で適宜用いられる。
伸縮性積層部材10は、以下において具体的に説明するが、第1の不織布1、芯材3及び第2の不織布2を同時溶融押出ラミネート法によって一体的に成形したものであるので、不織布1及び2ならびに芯材3を別々に作製し、その後で3者を積層するという煩雑な工程を回避できるばかりでなく、伸縮性や積層強度、耐久性などがよりすぐれた伸縮性積層部材を提供することができる。また、第2の不織布2と芯材3の2層構造の積層体も、同時溶融押出ラミネート法にて、同様に作製できる。
第1及び第2の不織布は、それぞれ、いろいろな材料を使用して、いろいろな製法で製造することができる。不織布の製造には、良好な伸長性を与えることができるので、例えばスパンボンド法、スパンレース法などを有利に使用することができる。特にスパンレース法は、得られる不織布に対して良好な肌触りを与えることができるので、本発明の実施に好適である。
第1及び第2の不織布は、それぞれ、本発明の作用効果に悪影響を及ぼさない限り、同一の不織布材料からなっていてもよく、異なる不織布材料からなっていてもよい。同様に、厚さや、目付けなども、第1及び第2の不織布において同一であってもよく、異なっていてもよい。
一般的に、第1及び第2の不織布は、それぞれ、約30μm〜1mmの厚さで使用することができる。また、一般的に、第1及び第2の不織布は、それぞれ、約20〜50gsmの目付けで使用することができる。
第1及び第2の不織布は、それぞれ、いろいろな繊維材料から形成することができるが、伸縮性積層部材において良好な伸縮性などに加えて適度な積層強度を得るため、ポリエステル繊維を主体とし、これにポリオレフィン繊維を混紡した繊維材料から形成することが推奨される。ポリエステル繊維とポリオレフィン繊維はいろいろな混紡比で混紡することができるが、本発明の実施においては特に、第1及び第2の不織布は、それぞれ、ポリエステル繊維とポリオレフィン繊維を約95:5〜約5:95の重量比で混紡した混紡繊維からなることが好ましい。ポリエステル繊維とポリオレフィン繊維の混紡比は、更に好ましくは、積層部材の延伸後の弾力性保持とデラミネーションしないバランスが適度に実現できる約85:15〜約70:30の範囲である。
本発明の伸縮性積層部材は、好ましくは、上記した第1及び第2の不織布で芯材を挟み込んだサンドイッチ構造体である。ここで、芯材としては、第1及び第2の不織布と相性のよいスチレン系のエラストマーを使用することができる。スチレン系のエラストマーは、第1及び第2の不織布の間に挟み込まれた状態において、弾性的に伸縮可能であるからである。
本発明の実施において、いろいろな種類のスチレン系のエラストマーを芯材として使用することができるが、とりわけ好適なスチレン系のエラストマーは、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体の混合物である。この混合物は、不織布に対する接合強度にすぐれるとともに、積層部材の通気性を良好にするために細孔(パーフォレーション)加工を施した後、延伸しても、エラストマーフィルム自身が引き裂けにくいからである。なお、エラストマーフィルムは、2層以上で使用してもよいが、通常は単層が好ましい。
また、エラストマーフィルムは、伸縮性積層部材において芯材として使用したとき、接合強度を最適にコントロールでき、かつ、戻り(延伸後の収縮)の応力が高く、フィルム自身が引き裂けにくいことがさらに好ましい。
エラストマーフィルムは、それを伸縮性積層部材において芯材として使用する場合、いろいろな厚さで使用することができるが、通常、約20〜150μmの厚さで使用することができる。さらに、エラストマー中に、各種の添加剤(酸化防止剤、耐候剤、オイル等)を含むこともできる。
伸縮性積層部材は、その全体を通じて同じ伸縮性を有するように構成してもよく、さもなければ、2種類もしくはそれ以上の異なる伸縮性を有する領域を組み合わせて有するように構成してもよい。また、後述するように、伸縮性を有する伸縮性領域と、伸縮性を有しない非伸縮性領域とを組み合わせて有するように構成してもよい。1つの伸縮性積層部材においてこのように伸縮性の領域をコントロールすることで、伸縮性積層部材の特性に変化を持たせたり、取り扱い性を改善することができるからである。例えば図1に示すように、伸縮性積層部材10の中央部を伸縮性領域Aとし、その両端部を非伸縮性領域Bとすると、伸縮性積層部材10の使い捨ておむつ100への取り付けやメカニカルファスナー120の取り付けを容易に行なうことができ、伸縮性積層部材10の特性や使用感なども好適に保持することができる。
本発明による伸縮性積層部材は、同時溶融押出しラミネート法によって有利に製造することができる。同時溶融押出しラミネート法は、いろいろなプロセスで実施することができるが、例えば図3に示すような一連のプロセスで製造することができる。供給ロール21には第1の不織布1が巻き取られており、矢印で示すように、一対のラミネート用のロール24及び25の間に送り出される。一方、供給ロール22には第2の不織布2が巻き取られており、矢印で示すように、冷却ロール25及びニップロール24の間に送り出される。冷却ロール25及びニップロール24は、それぞれ、ほぼ平滑な表面を有するカレンダーロール及びゴムロールから形成することができる。エラストマーフィルム3は、押出機(図示せず)に接続されたダイ(通常、Tダイ)23から溶融流の形で送り出され、第1の不織布1と第2の不織布2の間に案内され、ここで冷却され、固化される。なお、エラストマーフィルムを多層エラストマーフィルムとして使用する場合には、2個もしくはそれ以上の押出機を使用して、ダイ23からエラストマーフィルム3を多層の溶融流の形で送り出すことができる。
第1の不織布1、エラストマーフィルム3及び第2の不織布2は、図示される通り、冷却ロール25及びニップロール24により積層され、一体化される。得られたシート状の積層体は、引張りロール26によって引張り応力を与えられるので、冷却ロール25の外周を矢印の方向に案内される。このようにして製造された伸縮性積層部材10は、引張りロール26のところで方向転換させられた後、矢印の方向に案内され、巻き取りロール(図示せず)に巻き取られる。
このようにして得られる伸縮性積層部材10は、エラストマーフィルム3の製造工程と、エラストマーフィルム3と第1の不織布1及び第2の不織布2とのラミネート工程とを同時に行なうことで製造できるので、コストパフォーマンスにすぐれている。また、伸ばすときの応力と戻すときの応力の差が小さく、かつ接合強度、層剥離に対する耐性、耐久性及び弾力性の保持にすぐれているので、おむつ用途に最適に使用することができる。例えば、本発明の伸縮性積層部材をおむつ用途に使用する場合、使い捨ておむつの構成員として、メカニカルファスナーを取付けるイヤ部の形成に有利に使用することができる。また、したがって、本発明によれば、メカニカルファスナーを取付けるイヤ部として本発明の伸縮性積層部材を備えることを特徴とする使い捨ておむつも提供することができる。
ところで、上記のようにして同時溶融押出しラミネート法によって本発明の伸縮性積層部材を製造する場合、不織布とエラストマーフィルムが強く接合されている部分と、不織布とエラストマーフィルムが弱く接合されている部分とを含むように積層部材を構成してもよい。その手段としては、溶融押出しによってTダイから吐き出されたエラストマーフィルムの溶融流(溶融ポリマー)を第1及び第2の不織布で挟み込み、その一面又は両面から特定の凸パターンを有するニップロールで押さえ、ポリマーを冷却固化させる方法が好ましく用いられる。このとき、凸部分によってニップされた領域は、不織布とエラストマーフィルムが強く結合される。強く結合された部分が密に存在すると、非伸縮性領域を形成し、一方、強く結合された部分が疎であると、伸縮性領域を形成することができる。また、水蒸気透過性を付与するため、得られた伸縮性積層部材に対してヒートニードル加工を施し、水蒸気透過に適度の細孔(パーフォレーション)を積層部材に付与することができる。
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでない。
実施例1〜10、比較例1
図3を参照して先に説明したような同時溶融押出しラミネート装置を使用して、エラストマーフィルムと不織布からなる伸縮性積層シートを作製した。
本例で使用したエラストマーは、下記の表に要約して示すように、スチレン含有率44%のSIS共重合体(Dexcopolymer社製、商品名「Vector 4411A」)、スチレン含有率18%のSIS共重合体(Dexcopolymer社製、商品名「Vector 4111A」)スチレン含有率17%のSIS共重合体(Kraton社製、商品名「Kraton D1117」)、スチレン含有率9%の3個以上の分岐骨格を有するSIS共重合体、スチレン含有率20%のSEBS共重合体(アロン化成社製、商品名「AR−S−4081F」)、スチレン含有率14%のSEBS共重合体(Kraton社製、商品名「Kraton G1657」)を表に示す含有率でブレンドしたものである。
また、不織布は、下記の表に示すように、ポリエステル100%のスパンレース不織布(ダイワボウポリテック社製、商品名「ST−30」)および同様に作製された、ポリエステル85%、ポリプロピレン15%のスパンレース不織布、ポリエステル70%、ポリプロピレン30%のスパンレース不織布、ポリエステル85%、ポリエチレン15%のスパンレース不織布、および、ポリプロピレン100%のスパンボンド不織布(旭化成社製、商品名「PC−8020」(目付け20g/m2)、「PC−8030」(目付け30g/m2))である。両面にラミネートしたものは、同一の不織布を用いた。
ラミネートの条件は、下記の表に示すように、押出し温度及びニップ圧である。エラストマーを、1軸押出し機に投入し、Tダイよりシート状に吐き出した。次いで、この溶融エラストマー・シートが冷却ロールとニップロールの間のニップに入る直前に、別に作製された不織布を挿入した。不織布の間で溶融エラストマー・シートが固化し、不織布/エラストマー/不織布の3層構造または不織布/エラストマーの2層構造の伸縮性積層シートが得られた。
得られた伸縮性積層シートにおいて、応力(CD方向)100%延伸サイクル、デラミネーション(不織布の剥離)及び引張強度(CD方向)、伸長保持力(フィルム裂け)の各項目について次のような手順で試験したところ、下記の表に記載する評価結果が得られた。また、ラミネート前の不織布において、引張強度(CD方向)を次のような手順で試験したところ、同じく下記の表に記載する評価結果が得られた。
応力(CD方向100%延伸サイクル)、デラミネーション
積層シートから幅25mmの試料を作成し、試料をテンサイル試験機にチャック間距離が25mmとなるような無張力で固定する。試料を300mm/分の速度で100%まで延伸し、次いで試料を300mm/分の速度で初期のチャック間距離まで戻す。次いで試料を繰り返し300mm/分の速度で100%まで延伸し、初期のチャック間距離まで戻す。
1回目の延伸時の伸度50%時の強度を1回目50%応力、2回目の延伸時の伸度50%時の強度を2回目50%応力とする。
2回延伸し戻された試料について、不織布のエラスティックフィルムから、直径1mmの針が通る程の浮き(デラミネーション)があるか観察する。また、10回伸長し戻された試料についても同様に、デラミネーションを観察する。ここで、不織布の浮きが観察されない場合、デラミネーションは○、不織布の浮きは観察されるが、直径1mmの針が通らない場合、デラミネーションは△、直径1mmの針が通る場合、デラミネーションは×とする。
50%延伸時の引張強度(CD方向)
不織布のみからなる幅25mmの試料を作成し、試料をテンサイル試験機にチャック間距離が25mmとなるような無張力で固定する。試料を300mm/分の速度で伸長する。50%伸長時の強度を50%伸長時強度とする。
延伸保持力(フィルム裂け)
幅50mmの試料を作成し、試料全面に、熱針で幅方向8mm、長さ方向8mmのピッチで、直径約0.8mmの貫通穴を開け、試料のCD方向に無張力状態で50mmの範囲に500gの荷重をかける。このまま40℃雰囲気で1時間放置した後、フィルムの穴の拡大や、穴からの破断の有無を目視により確認する。
フィルムの穴の拡大がない場合、延伸保持力は○、フィルムの穴が拡大または穴から裂けた場合、穴の長さが5mm以内の場合、延伸保持力は△、穴の長さが5mmを超える場合、延伸保持力は×とする。
Figure 0004889321
Figure 0004889321
Figure 0004889321
上記の表の評価結果から理解できるように、本発明の伸縮性積層部材は、柔軟性、肌触り特性に優れ、さらには繰り返しの使用時に層剥離(デラミネーション)や芯材の切れを生じず、弾力性も保持し続けることができる。
本発明による伸縮性積層部材をイヤ部に取付けた使い捨ておむつの斜視図である。 図1のイヤ部に使用した本発明の伸縮性部材の断面図である。 本発明の伸縮性部材の製造プロセスを示した模式図である。
符号の説明
1 第1の不織布
2 第2の不織布
3 芯材(エラストマーフィルム)
10 伸縮性積層部材
100 使い捨ておむつ
110 イヤ部
120 メカニカルファスナー
125 フック材
132 ループ材

Claims (8)

  1. 少なくとも一方の面に不織布が接合された芯材を含んでなる伸縮性積層部材であって、
    該伸縮性積層部材は、溶融押出しラミネート法による一体成形体であり、かつフラットな構造をもったシートの形態であり、
    前記芯材は、15〜45%のスチレン含率を有するスチレン系エラストマーからなり、
    前記不織布は、ポリエステル繊維とポリオレフィン繊維の混紡繊維からなり、かつ前記芯材に連続して接合されてなり、前記積層部材を100%延伸したときに、その延伸の前後において前記芯材からの剥離又は破断を生じることがなく、かつ前記不織布の50%延伸時における応力は、CD方向で3N/25mm以下であり、そして
    前記積層部材を100%延伸させ応力をフリーとして元の状態に戻した(第1回延伸)後、再び100%延伸させたとき(第2回延伸)に、第1回延伸の50%延伸時点での応力(A)と第2回延伸の50%延伸時点の応力(B)の比(A/B)が、3.0以下であることを特徴とする伸縮性積層部材。
  2. 第1の不織布と、第2の不織布とで前記芯材を挟持した構成を有することを特徴とする請求項1に記載の伸縮性積層部材。
  3. 前記スチレン系エラストマーは、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体からなるスチレン系エラストマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮性積層部材。
  4. ポリエステル繊維とポリオレフィン繊維の前記混紡繊維において、ポリエステル繊維とポリオレフィン繊維の混紡比(重量比)は85:15〜70:30の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸縮性積層部材。
  5. 前記不織布は、スパンレース不織布であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の伸縮性積層部材。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の伸縮性積層部材を備えることを特徴とする物品。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の伸縮性積層部材を備えることを特徴とする使い捨ておむつ。
  8. 使い捨ておむつの構成員であり、メカニカルファスナーを取付けるイヤ部として使用されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の伸縮性積層部材。
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