JP5430922B2 - 導電性基材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基板の回路形成用素材などに利用できる金属粒子ペースト及びこのペーストを用いた導電性基材の製造方法に関する。
銀フィラー(銀粉末)を利用した導電性ペースト材料は、低温焼成型と高温焼成型とに分けられる。低温焼成型のペースト材料は、樹脂の中に銀フィラーを混合した材料であり、200℃以下の熱処理で用いられるが、銀フィラー同士の接触で導電性を得ているため、比較的比抵抗(10−4Ω・cm程度)が高い。一方、高温焼結型のペースト材料は、銀フィラー同士が融着するため、比抵抗(10−6Ω・cm程度)は低いが、500℃以上の高温で熱処理する必要があるため、対象となる基板が限定される。
例えば、特開2008−91250号公報(特許文献1)では、有機保護コロイドで覆われた金属ナノ粒子と、銀フィラーと、分散媒とを少なくとも含有し、有機保護コロイドと分散媒は、分解温度又は沸点が70〜250℃である低温焼成型銀ペーストが提案されている。この文献には、有機保護コロイド及び分散媒としては、炭素数3〜18の炭化水素が記載され、低い熱処理温度で銀コロイド粒子を介して銀フィラー間を融着させることが可能であると記載されている。
しかし、この銀ペーストを用いても、低温での焼成は充分ではなく、例えば、150℃未満の低温度における焼成によって、高度な導電性を発現させることはできない。
特開2008−91250号公報(特許請求の範囲、段落[0045][0046]、実施例)
本発明の目的は、低温(特に150℃以下程度の低温)であっても、高い導電性を有する焼結層又は焼結パターンを効率よく形成できる金属粒子ペースト及びこのペーストを用いた焼結層又は焼結パターンの形成方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、高濃度であっても、流動性が高く、室温下での分散性及び保存安定性に優れる金属粒子ペースト及びこのペーストを用いた導電性基材の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、カルボキシル基を有する有機化合物及び高分子分散剤で構成された保護コロイドで被覆された金属ナノ粒子と金属フィラーとを組み合わせてペースト(濃厚分散液)を調製することにより、低温(特に150℃以下程度の低温)であっても、高い導電性を有する焼結層又は焼結パターンを効率よく形成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の金属粒子ペーストは、金属ナノ粒子(A1)とこの金属ナノ粒子(A1)を被覆する保護コロイド(A2)とで形成された金属コロイド粒子(A)、金属フィラー(B)及び分散媒(C)を含む金属粒子ペーストであって、前記保護コロイド(A2)が、カルボキシル基を有する有機化合物(A2−1)と高分子分散剤(A2−2)とで構成されている。本発明の金属粒子ペーストにおいて、前記金属ナノ粒子(A1)を構成する金属が銀であり、カルボキシル基を有する有機化合物(A2−1)がモノカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸からなる群から選択された少なくとも一種であってもよい。前記金属フィラー(B)は、体積平均粒子径0.2〜10μmの銀フィラーであってもよい。前記カルボキシル基を有する有機化合物(A2−1)と高分子分散剤(A2−2)との割合(質量比)は、前者/後者=95/5〜50/50程度である。前記金属コロイド粒子(A)と前記金属フィラー(B)との割合(質量比)は、金属コロイド粒子(A)/金属フィラー(B)=90/10〜10/90程度である。
本発明には、基材の上に前記金属粒子ペーストで被膜を形成する工程、及びこの被膜を焼成処理する工程を含む導電性基材の製造方法も含まれる。前記基材は、有機基材であってもよく、無機基材であってもよい。前記焼成処理の温度は150℃以下であってもよい。さらに、本発明には、前記製造方法で得られた導電性基材も含まれる。
本発明では、特定の金属コロイド粒子と金属フィラーとを組み合わせているため、低温(特に150℃以下程度の低温)であっても、高い導電性を有する焼結層又は焼結パターンを効率よく形成できる。さらに、高濃度であっても、流動性が高く、室温下での分散性及び保存安定性に優れている。
[金属粒子ペースト]
本発明の金属粒子ペーストは、特定の化合物を保護コロイドとする金属コロイド粒子(A)、金属フィラー(B)及び分散媒(C)を含むペーストである。
(A)金属コロイド粒子
本発明の金属コロイド粒子(A)は、金属ナノ粒子(A1)と、この金属ナノ粒子(A1)を被覆する保護コロイド(A2)で構成されている。
(A1)金属ナノ粒子
金属ナノ粒子(A1)を構成する金属(金属原子)としては、例えば、遷移金属(例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期表第4A族金属;バナジウム、ニオブなどの周期表第5A族金属;モリブデン、タングステンなどの周期表第6A族金属;マンガンなどの周期表第7A族金属;鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金などの周期表第8族金属;銅、銀、金などの周期表第1B族金属など)、周期表第2B族金属(例えば、亜鉛、カドミウムなど)、周期表第3B族金属(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、周期表第4B族金属(例えば、ゲルマニウム、スズ、鉛など)、周期表第5B族金属(例えば、アンチモン、ビスマスなど)などが挙げられる。金属は、周期表第8族金属(鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金など)、周期表第1B族金属(銅、銀、金など)、周期表第3B族金属(アルミニウムなど)及び周期表第4B族金属(スズなど)などであってもよい。なお、金属(金属原子)は、保護コロイドに対する配位性の高い金属、例えば、周期表第8族金属、周期表第1B族金属などである場合が多い。
金属ナノ粒子(A1)は、前記金属単体、前記金属の合金、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物などであってもよい。これらの金属ナノ粒子(A1)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。金属ナノ粒子(A1)は、通常、金属単体粒子、又は金属合金粒子である場合が多い。なかでも、金属ナノ粒子(A1)を構成する金属は、少なくとも銀などの貴金属(特に周期表第1B族金属)を含む金属(金属単体及び金属合金)、特に貴金属単体(例えば、銀単体など)であるのが好ましい。
金属ナノ粒子(A1)はナノメーターサイズである。例えば、本発明の金属コロイド粒子における金属ナノ粒子(A1)の最大一次粒子径は、例えば、200nm以下、好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下であり、数平均粒子径(平均一次粒子径)は、1〜100nm、好ましくは1.5〜80nm、さらに好ましくは2〜70nm(特に3〜50nm)程度であってもよく、通常1〜40nm(例えば、2〜30nm)程度であってもよい。
なお、金属コロイド粒子の粒子径も、通常、前記金属ナノ粒子(A1)の粒子径と略同じ粒子径である。
(A2)保護コロイド
保護コロイド(A2)は、カルボキシル基を有する有機化合物(A2−1)と、高分子分散剤(A2−2)とで構成されている。
(A2−1)カルボキシル基を有する有機化合物
有機化合物(A2−1)は、カルボキシル基を有している。このようなカルボキシル基の数は、有機化合物(A2−1)1分子あたり、1以上であれば特に限定されず、例えば、1〜10、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3程度であってもよい。
なお、有機化合物(A2−1)において、一部又は全部のカルボキシル基は、塩(アミンとの塩、金属塩など)を形成していてもよい。特に、本発明では、カルボキシル基(特に、すべてのカルボキシル基)が、塩[特に、塩基性化合物との塩(アミンとの塩又はアミン塩など)]を形成していない有機化合物(すなわち、遊離のカルボキシル基を有する有機化合物)を好適に使用できる。
また、有機化合物(A2−1)は、カルボキシル基を有している限り、カルボキシル基以外の官能基(又は金属化合物又は金属ナノ粒子に対する配位性基など)を有していてもよい。このようなカルボキシル基以外の官能基(又は配位性基)としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を有する基{又は官能基、例えば、窒素原子を有する基[アミノ基、置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)、イミノ基(−NH−)、窒素環基(ピリジル基などの5〜8員窒素環基、カルバゾール基、モルホリニル基など)、アミド基(−CON<)、シアノ基、ニトロ基など]、酸素原子を有する基[ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのC1−6アルコキシ基)、ホルミル基、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、酸素環基(テトラヒドロピラニル基などの5〜8員酸素環基など)など]、硫黄原子を有する基[例えば、チオ基、チオール基、チオカルボニル基(−SO−)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基などのC1−4アルキルチオ基など)、スルホ基、スルファモイル基、スルフィニル基(−SO−)など]、これらの塩を形成した基(アンモニウム塩基など)など}などが挙げられる。これらの官能基は、単独で又は2種以上組み合わせて有機化合物(A2−1)が有していてもよい。
有機化合物(A2−1)は、これらの官能基のうち、カルボキシル基と塩を形成可能な塩基性基(特に、アミノ基、置換アミノ基、イミノ基、アンモニウム塩基など)を有していない化合物であるのが好ましい。
代表的な有機化合物(A2−1)には、カルボン酸が含まれる。このようなカルボン酸としては、例えば、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸(又はオキシカルボン酸)などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸[飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプロン酸、ヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、デヒドロコール酸、コラン酸などのC1−34脂肪族モノカルボン酸、好ましくはC1−30脂肪族モノカルボン酸など)、不飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、アビエチン酸などのC4−34不飽和脂肪族カルボン酸、好ましくはC10−30不飽和脂肪族カルボン酸)]、芳香族モノカルボン酸(安息香酸、ナフトエ酸などのC7−12芳香族モノカルボン酸など)などが挙げられる。
ポリカルボン酸としては、例えば、脂肪族ポリカルボン酸[例えば、脂肪族飽和ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのC2−14脂肪族飽和ポリカルボン酸、好ましくはC2−10脂肪族飽和ポリカルボン酸など)、脂肪族不飽和ポリカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ソルビン酸、テトラヒドロフタル酸などのC4−14脂肪族不飽和ポリカルボン酸、好ましくはC4−10脂肪族不飽和ポリカルボン酸など)など]、芳香族ポリカルボン酸(例えば、フタル酸、トリメリット酸などのC8−12芳香族ポリカルボン酸など)などが挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシモノカルボン酸[脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、グリセリン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、12−オキソケノデオキシコール酸、グリココール酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、アポコール酸、タウロコール酸などのC2−50脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、好ましくはC2−34脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、さらに好ましくはC2−30脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸など)、芳香族ヒドロキシモノカルボン酸(サリチル酸、オキシ安息香酸、没食子酸などのC7−12芳香族ヒドロキシモノカルボン酸など)など]、ヒドロキシポリカルボン酸[脂肪族ヒドロキシポリカルボン酸(例えば、タルトロン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸などのC2−10脂肪族ヒドロキシポリカルボン酸など)など]などが挙げられる。
なお、これらのカルボン酸は、塩を形成していてもよく、無水物、水和物などであってもよい。なお、カルボン酸は、前記と同様に、塩(特に、アミンとの塩などの塩基性化合物との塩)を形成していない場合が多い。
有機化合物(A2−1)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらの有機化合物(A2−1)のうち、脂肪族カルボン酸(例えば、C1−24脂肪族カルボン酸、好ましくはC1−20脂肪族カルボン酸、さらに好ましくはC1−18脂肪族カルボン酸)や、脂肪族ヒドロキシカルボン酸(脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸および脂肪族ヒドロキシポリカルボン酸、例えば、C2−34脂肪族ヒドロキシカルボン酸)などのヒドロキシカルボン酸が好ましい。脂肪族カルボン酸の中でも、飽和脂肪族カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸などのC1−24アルカン酸(アルカンカルボン酸)、好ましくはC1−20アルカン酸、さらに好ましくはC1−18アルカン酸)が好ましい。また、脂肪族ヒドロキシカルボン酸の中でも、さらに、脂環族ヒドロキシカルボン酸(又は脂環族骨格を有するヒドロキシカルボン酸、例えば、コール酸などのC6−34脂環族ヒドロキシカルボン酸、好ましくはC10−34脂環族ヒドロキシカルボン酸、さらに好ましくはC16−30脂環族ヒドロキシカルボン酸)が好ましい。
また、コール酸などの多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸(例えば、縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、好ましくはC10−34縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、好ましくはC14−34縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、さらに好ましくはC18−30縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸)、デヒドロコール酸、コラン酸などの多環式脂肪族カルボン酸(例えば、縮合多環式脂肪族カルボン酸、好ましくはC10−34縮合多環式脂肪族カルボン酸、好ましくはC14−34縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、さらに好ましくはC18−30縮合多環式脂肪族カルボン酸)などの多環式脂肪族カルボン酸(例えば、C10−50縮合多環式脂肪族カルボン酸、好ましくはC12−40縮合多環式脂肪族カルボン酸、さらに好ましくはC14−34縮合多環式脂肪族カルボン酸、特にC18−30縮合多環式脂肪族カルボン酸)は、嵩高い構造を有しており、金属ナノ粒子の凝集を抑制する効果が大きいためか好ましい。
特に、焼成温度で金属粒子から脱離又は消失し、焼結サイトを形成することにより金属膜の連続性及び導電性を向上できる点から、遊離のカルボキシル基を有する比較的低分子の飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸などのC1−16アルカン酸(アルカンカルボン酸)、好ましくはC1−12アルカン酸(例えば、C1−6アルカン酸)、さらに好ましくはC1−4アルカン酸、特にC1−3アルカン酸(例えば、C1−2アルカン酸)であってもよい。
なお、有機化合物(A2−1)の分子量は、例えば、1000以下(例えば、46〜900程度)、好ましくは800以下(例えば、50〜500程度)、さらに好ましくは300以下(例えば、55〜200程度)であってもよい。
また、有機化合物(A2−1)のpKa値は、例えば、1以上(例えば、1〜10程度)、好ましくは2以上(例えば、2〜8程度)程度であってもよい。
(A2−2)高分子分散剤
本発明では、保護コロイドを、前記有機化合物(A2−1)と高分子分散剤(A2−2)とで組み合わせて構成する。このような組み合わせで保護コロイドを構成することにより、粗大粒子が著しく少ない金属ナノ粒子を含む金属コロイド粒子が得られる。特に、前記特定の保護コロイドの組み合わせにより、金属ナノ粒子の割合を大きくでき、金属コロイド粒子(及びそのペースト)の保存安定性にも優れている。前記組み合わせによりこのような優れた金属コロイド粒子となる理由は定かではないが、以下のような理由が考えられる。
まず、高分子分散剤は、その構造から、比較的大きな粒子を分散安定化する効果に優れているが、比較的小さな粒子の安定化効果が十分ではないため、金属ナノ粒子原料の濃度を大きくすると、生成する粒子を十分に安定化できなくなる。一方、このようなナノ粒子の合成初期段階に生成する比較的小さい粒子を、前記有機化合物が分散安定化する。このような有機化合物(A2−1)と高分子分散剤(A2−2)との相乗的な作用により、金属ナノ粒子の原料が高濃度であっても金属ナノ粒子を生成できるものと考えられる。
また、保護コロイドは、短いタイムスケールでは、金属ナノ粒子表面に対して吸着、脱離を繰り返しているが、高分子分散剤で保護した場合、吸着した部分が瞬間的に脱離した場合であっても、立体障害が大きく、また、脱離しても、吸着に関与していた基に代わり他の基が金属ナノ粒子表面に吸着するため、粒子間の凝集や焼結が生じにくい。従って、良好な保存安定性を示す一方、その高い保護能力及び分解温度のため、焼成温度も高温でなければ金属ナノ粒子の焼結は起こらず、高分子分散剤のみでは、低抵抗の導体を得ることはできない。一方、カルボキシル基を有する有機化合物は、通常、金属ナノ粒子表面に対する吸着力は弱く、また、気化温度が低い場合が多い。そのため、低温焼成により低抵抗の導体を得やすいが、室温のような低温においても金属ナノ粒子の凝集、焼結が生じ易く、保存安定性が十分でないため、安定して金属膜などを形成することが困難である。
そこで、本発明では、高分子分散剤とカルボキシル基を有する有機化合物とを組み合わせる。このような組み合わせにより、金属ナノ粒子表面には高分子分散剤が吸着した部分、前記有機化合物が吸着した部分が形成されている。そして、前記高分子分散剤が吸着した部分は、強い表面保護能力により安定化されて、保存安定性が向上されている一方、前記有機化合物が吸着した部分は金属ナノ粒子表面から脱離し易く、低温焼結の反応サイトとしての役割を担う。このような反応サイトは、室温程度の雰囲気においては高分子分散剤の作用により保護されているが、比較的低温での焼成温度(例えば、数十度以上)においてナノ粒子間又はナノ粒子と金属フィラーとの間で焼結反応を開始し、結果として低温焼成でも低抵抗の金属膜などを得ることができるようである。特に、焼成温度が高くなれば、さらに高分子分散剤の保護能力よりも粒子間衝突や焼結性が高くなるため、導電性はバルク並になる。また、高分子分散剤は、基材に対する密着性を向上させる効果があるだけでなく、本発明では基材における高分子分散剤の残存量を小さくできる。従って、本発明では、体積収縮が小さい緻密かつ密着性の高い膜を形成できるため、これらの点も基材に対する密着性に優れるとともに基材に強固に固定され、かつ金属膜の導電性を向上できる要因となっている。
高分子分散剤(又は高分子型分散剤)(A2−2)としては、金属ナノ粒子(A1)を被覆可能であれば特に限定されないが、両親媒性の高分子分散剤(又はオリゴマー型分散剤)を好適に使用できる。
高分子分散剤としては、通常、塗料、インキ分野などで着色剤の分散に用いられている高分子分散剤が例示できる。このような分散剤には、スチレン系樹脂(スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体など)、アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸などの(メタ)アクリル酸系樹脂など)、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリルウレタン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース;エチルセルロースなどのアルキルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのアルキル−ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロースなどのセルロースエーテル類など)、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(液状のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、天然高分子(ゼラチン、デキストリンなど)、ポリエチレンスルホン酸又はその塩、ポリスチレンスルホン酸又はその塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、窒素原子含有高分子化合物[例えば、ポリアルキレンイミン(ポリエチレンイミンなど)、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエーテルポリアミン(ポリオキシエチレンポリアミンなど)などのアミノ基を有する高分子化合物]などが含まれる。
代表的な高分子分散剤(両親媒性の高分子分散剤)としては、親水性モノマーで構成された親水性ユニット(又は親水性ブロック)を含む樹脂(又は水溶性樹脂、水分散性樹脂)が含まれる。
前記親水性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基又は酸無水物基含有単量体(アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル系単量体、マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸、無水マレイン酸など)、ヒドロキシル基含有単量体(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルフェノールなど)などの付加重合系モノマー;アルキレンオキシド(エチレンオキシドなど)などの縮合系モノマーなどが例示できる。前記縮合系モノマーは、ヒドロキシル基などの活性基(例えば、前記ヒドロキシル基含有単量体など)との反応により、親水性ユニットを形成していてもよい。親水性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて親水性ユニットを形成していてもよい。
高分子分散剤は、少なくとも親水性ユニット(又は親水性ブロック)を含んでいればよく、親水性モノマーの単独又は共重合体(例えば、ポリアクリル酸又はその塩など)であってもよく、前記例示のスチレン系樹脂やアクリル系樹脂などのように、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマーであってもよい。疎水性モノマー(非イオン性モノマー)としては、(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1−20アルキル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキル、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルなどの(メタ)アクリル酸アラルキルなど]などの(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;α−C2−20オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセンなど)などのオレフィン系モノマー;酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル系モノマーなどが挙げられる。疎水性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて疎水性ユニットを構成していてもよい。
高分子分散剤がコポリマー(例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマー)である場合、コポリマーは、ランダムコポリマー、交互共重合体、ブロックコポリマー(例えば、親水性モノマーで構成された親水性ブロックと、疎水性モノマーで構成された疎水性ブロックとで構成されたコポリマー)、くし型コポリマー(又はくし型グラフトコポリマー)などであってもよい。前記ブロックコポリマーの構造は、特に限定されず、ジブロック構造、トリブロック構造(ABA型、BAB型)などであってもよい。また、前記くし型コポリマーにおいて、主鎖は、前記親水性ブロックで構成してもよく、前記疎水性ブロックで構成してもよく、親水性ブロックおよび疎水性ブロックで構成してもよい。
なお、前記のように、親水性ユニットは、アルキレンオキシド(エチレンオキシドなど)で構成された親水性ブロック(ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド)などの縮合系ブロックで構成することもできる。親水性ブロック(ポリアルキレンオキシドなど)と疎水性ブロック(ポリオレフィンブロックなど)とは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合などの連結基を介して結合していてもよい。これらの結合は、例えば、疎水性ブロック(ポリオレフィンなど)を変性剤[不飽和カルボン酸又はその無水物((無水)マレイン酸など)、ラクタム又はアミノカルボン酸、ヒドロキシルアミン、ジアミンなど]で変性した後、親水性ブロックを導入することにより形成してもよい。また、ヒドロキシル基やカルボキシル基などの親水性基を有するモノマー(前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど)から得られるポリマーと、前記縮合系の親水性モノマー(エチレンオキシドなど)とを反応(又は結合)させることにより、くし型コポリマー(主鎖が疎水性ブロックで構成されたくし型コポリマー)を形成してもよい。
さらに、共重合成分として、親水性の非イオン性モノマーを使用することにより、親水性と疎水性とのバランスを調整してもよい。このような成分としては、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(例えば、数平均分子量200〜1000程度)などのアルキレンオキシ(特にエチレンオキシ)ユニットを有するモノマー又はオリゴマーなどを例示できる。また、親水性基(カルボキシル基など)を変性(例えば、エステル化)することにより親水性と疎水性とのバランスを調整してもよい。
高分子分散剤(A2−2)は、官能基を有していてもよい。このような官能基としては、例えば、酸基(又は酸性基、例えば、カルボキシル基(又は酸無水物基)、スルホ基(スルホン酸基)など)、塩基性基(例えば、アミノ基など)、ヒドロキシル基などが挙げられる。これらの官能基は、単独で又は2種以上組み合わせて高分子分散剤(A2−2)が有していてもよい。
これらの官能基のうち、高分子分散剤(A2−2)は、酸基又は塩基性基、特に、遊離のカルボキシル基を有しているのが好ましい。
また、高分子分散剤(A2−2)が、酸基(カルボキシル基など)を有している場合、少なくとも一部又は全部の酸基(カルボキシル基など)は、塩(アミンとの塩、金属塩など)を形成していてもよいが、特に、本発明では、カルボキシル基(特に、すべてのカルボキシル基)などの酸基が、塩[特に、塩基性化合物との塩(アミンとの塩又はアミン塩など)]を形成していない高分子分散剤[すなわち、遊離の酸基(特にカルボキシル基)を有する高分子分散剤]を好適に使用できる。
酸基(特に遊離のカルボキシル基)を有する高分子分散剤(A2−2)において、酸価は、例えば、1mgKOH/g以上(例えば、2〜1500mgKOH/g程度)、好ましくは3mgKOH/g以上(例えば、4〜1200mgKOH/g程度)、さらに好ましくは5mgKOH/g以上(例えば、8〜1000mgKOH/g程度)、特に10mgKOH/g以上(例えば、12〜900mgKOH/g程度)の範囲から選択できる。特に、酸基(特にカルボキシル基)を有する高分子分散剤(A2−2)が、親水性ユニットおよび疎水性ユニットを有する化合物などである場合、酸価は、1mgKOH/g以上(例えば、2〜100mgKOH/g程度)、好ましくは3mgKOH/g以上(例えば、4〜90mgKOH/g程度)、さらに好ましくは5mgKOH/g以上(例えば、6〜80mgKOH/g程度)、特に7mgKOH/g以上(例えば、8〜70mgKOH/g程度)であってもよく、通常3〜50mgKOH/g(例えば、5〜30mgKOH/g)程度であってもよい。酸基を有する高分子分散剤(A2−2)において、アミン価は0(又はほぼ0)であってもよい。
なお、高分子分散剤において、上記のような官能基の位置は、特に限定されず、主鎖であってもよく、側鎖であってもよく、主鎖および側鎖に位置していてもよい。このような官能基は、例えば、親水性モノマー又は親水性ユニット由来の官能基(例えば、ヒドロキシル基など)であってもよく、官能基を有する共重合性モノマー(例えば、無水マレイン酸など)の共重合によりポリマー中に導入することもできる。
高分子分散剤(A2−2)は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、高分子分散剤として、特開平11−80647号公報に記載の高分子分散剤(高分子量顔料分散剤)を使用してもよい。
また、高分子分散剤は、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。以下に、市販の高分子分散剤(又は少なくとも両親媒性の分散剤で構成された分散剤)を具体的に例示すると、ソルスパース13240、ソルスパース13940、ソルスパース32550、ソルスパース31845、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース41090などのソルスパースシリーズ[アビシア(株)製];ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック184、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192、ディスパービック193、ディスパービック194、ディスパービック2001、ディスパービック2050などのディスパービックシリーズ[ビックケミー(株)製];EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49、EFKA−1501、EFKA−1502、EFKA−4540、EFKA−4550、ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453[EFKAケミカル(株)製];アジスパーPB711、アジスパーPAl11、アジスパーPB811、アジスパーPB821、アジスパーPW911などのアジスパーシリーズ[味の素(株)製];フローレンDOPA−158、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンTG−700、フローレンTG−720W、フローレン−730W、フローレン−740W、フローレン−745Wなどのフローレンシリーズ[共栄社化学(株)製];ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル62などのジョンクリルシリーズ[ジョンソンポリマー(株)製]などが挙げられる。
これらのうち、代表的な酸基を有する高分子分散剤には、ポリ(メタ)アクリル酸類[又はポリアクリル酸系樹脂、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と共重合性単量体(例えば、(メタ)アクリレート、無水マレイン酸など)との共重合体などの(メタ)アクリル酸を主成分とするポリマー、これらの塩(例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩など)など]、ディスパービック190、ディスパービック194などが挙げられる。また、代表的な塩基性基(アミノ基)を有する高分子分散剤には、ポリアルキレンイミン(ポリエチレンイミンなど)、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエーテルポリアミン(ポリオキシエチレンポリアミンなど)などが挙げられる。
高分子分散剤(A2−2)の数平均分子量は、1000〜1000000(例えば、1200〜800000)の範囲から選択でき、例えば、1500〜500000(例えば、1500〜100000)、好ましくは2000〜80000(例えば、2000〜60000)、さらに好ましくは3000〜50000(例えば、5000〜30000)、特に7000〜20000程度であってもよい。
金属コロイド粒子(A)において、保護コロイド(A2)(有機化合物(A2−1)及び高分子分散剤(A2−2)の総量)の割合は、固形分換算で、金属ナノ粒子(A1)100質量部に対して、0.01〜100質量部程度の範囲から選択でき、例えば、0.05〜50質量部、好ましくは0.1〜30質量部、さらに好ましくは0.3〜20質量部(特に0.5〜10質量部)程度であってもよい。特に、本発明の金属コロイド粒子において、保護コロイド(A2)の割合は、金属ナノ粒子(A1)100質量部に対して、5質量部以下(例えば、0.1〜5質量部)、好ましくは0.3〜4.5質量部、さらに好ましくは0.5〜4質量部(特に1〜3質量部)程度であってもよい。本発明では、前記特定の組み合わせにより保護コロイドを構成するので、上記のような比較的少ない量の保護コロイドであっても、100nm以上の粗大なナノ粒子の生成を抑制でき、かつ金属ナノ粒子を安定に分散できる。
なお、金属コロイド粒子(A)において、有機化合物(A2−1)の割合は、固形分換算で、例えば、金属ナノ粒子(A1)100質量部に対して、0.01〜70質量部程度の範囲から選択でき、例えば、0.05〜50質量部、好ましくは0.1〜40質量部、さらに好ましくは0.3〜30質量部(特に0.5〜20質量部)程度であってもよい。特に、本発明の金属コロイド粒子において、有機化合物(A2−1)の割合は、金属ナノ粒子(A1)100質量部に対して、5質量部以下(例えば、0.1〜5質量部)、好ましくは0.2〜4.5質量部、さらに好ましくは0.3〜4質量部(特に0.5〜3質量部)程度であってもよい。
また、金属コロイド粒子(A)において、高分子分散剤(A2−2)の割合は、固形分換算で、例えば、金属ナノ粒子(A1)100質量部に対して、0.005〜50質量部程度の範囲から選択でき、例えば、0.01〜30質量部、好ましくは0.05〜20質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部(特に0.1〜5質量部)程度であってもよい。特に、本発明の金属コロイド粒子において、高分子分散剤(A2−2)の割合は、金属ナノ粒子(A1)100質量部に対して、2質量部以下(例えば、0.01〜2質量部)、好ましくは0.03〜1.5質量部、さらに好ましくは0.05〜1質量部(特に0.1〜0.5質量部)程度であってもよい。
さらに、金属コロイド粒子(A)において、有機化合物(A2−1)と高分子分散剤(A2−2)との割合(溶媒などを含む場合は固形分の割合)は、前者/後者(質量比)=99/1〜1/99程度の範囲から選択でき、例えば、98/2〜10/90、好ましくは97/3〜30/70(例えば、86/14〜20/80)、さらに好ましくは95/5〜50/50程度であってもよい。
特に、金属コロイド粒子において、ペースト分散安定性よりも導電性を要求される場合には、有機化合物(A2−1)と高分子分散剤(A2−2)との割合は、前者/後者(質量比)=99/1〜60/40、好ましくは97/3〜80/20、さらに好ましくは95/5〜85/15程度であってもよい。高分子分散剤(A2−2)に対して、過剰量の低分子有機化合物(B2)を配合することにより、コロイド粒子の焼結サイトを大きくできるため、導電性を向上できる。
なお、前記有機化合物(A2−1)及び高分子分散剤(A2−2)の組み合わせに加えて、さらに他の保護コロイド成分を含んでいてもよい。他の保護コロイド成分は、無機化合物であってもよいが、通常、有機化合物である。
他の保護コロイド成分としては、例えば、酸素原子含有有機化合物{例えば、アルコール類[例えば、アルカノール類(ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノールなどのC6−20アルカンモノオール)、シクロアルカノール類(シクロヘキサノールなど)、アラルキルアルコール類、多価アルコール類など]、ケトン類[例えば、アルカノン類、シクロアルカノン類、ジケトン類(アセチルアセトンなどのβ−ジケトン類)など]、エステル類(例えば、脂肪酸エステル類、グリコールエーテルエステル類など)、アルデヒド類(カプリルアルデヒド、ラウリルアルデヒド、パルミトアルデヒド、ステアリルアルデヒドなどのC6−20脂肪族アルデヒド)など}、硫黄原子含有有機化合物[例えば、スルホキシド類、スルホン酸類(例えば、アルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸など)など]などが挙げられる。これらの他の保護コロイドは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
他の保護コロイド成分の割合は、前記保護コロイドの組み合わせの総量100質量部に対して、例えば、0.1〜100質量部、好ましくは0.5〜50質量部、さらに好ましくは1〜30質量部程度であってもよい。
なお、金属コロイド粒子中の有機化合物(A2−1)、高分子分散剤(A2−2)などの割合は、慣用の方法、例えば、熱分析(例えば、熱質量/示差熱同時分析など)により、測定することができる。
(B)金属フィラー(金属粉末)
本発明では、前記金属コロイド粒子(A)を金属フィラー(B)と組み合わせることにより、ペーストに流動性を付与できるとともに、焼結膜の導電性を向上できる。
金属コロイド粒子(A)を含むペーストでは、ペースト中の粒子濃度が上昇するにつれて、粒子間距離が小さくなり、粒子間又は表面に存在する保護コロイドの絡み合いなどによる相互作用が生じ、粘度が急激に上昇し、取り扱い性が低下する。本発明では、大粒径の金属フィラー(B)を添加することにより、高濃度のペーストであっても高い流動性を付与することができる。なお、流動性が発現する機構としては以下の理由が考えられる。
(1)粒子の表面間距離Dは、式:D=[{√2π/(6f)}1/3−1]×d(式中、f:ペースト中に占める微粒子の体積分率、d:粒径)で表され、同一の金属濃度のペーストで比較した場合、粒径が大きい成分を含む分散液の方が粒子表面間距離は大きくなるため、粘度が低下すると推定される。
(2)粒子の沈降速度Dは、式:D=kT/(3πηd)(式中、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、η:溶媒粘度、d:粒径)で表され、同一の金属濃度のペーストで大粒子は沈降速度が大きくなるため、分散液中に大粒子が存在すると凝集構造が破壊され易く、流動性が発現すると推定される。
さらに、本発明では、金属コロイド粒子(A)を含むペーストにさらに大粒径の金属フィラー(B)を添加することにより、ペースト中に含まれる保護コロイドの割合が減少し、焼成に際して発生する保護コロイド由来のガス量が低減され、膜中からのガス抜けによる膨れや割れの発生が抑制できる。さらに、ナノ粒子と金属フィラーとの組み合わせにより、充填効率が向上するためか、低温(例えば、150℃以下)で焼成しても、高い導電性を有する被膜が得られる。
このような金属フィラー(B)の数平均粒子径は200nm以上であればよいが、例えば、0.2〜10μm、好ましくは0.3〜8μm(例えば、0.5〜7μm)、さらに好ましくは0.7〜6μm(特に1〜5μm)程度である。金属フィラー(B)の粒径範囲は、例えば、0.1〜30μm、好ましくは0.2〜20μm(例えば、0.25〜10μm)、さらに好ましくは0.3〜8μm(特に0.5〜7μm)程度であってもよい。金属フィラーの粒子径が大きすぎると、例えば、スクリーン印刷などにおいて目詰まりが発生し易くなる。一方、粒子径が小さすぎると、金属フィラーの分散性が低下するため、保護コロイドの使用量が増加し、焼成におけるガスの発生量も増加する。
金属コロイド粒子(A)と金属フィラー(B)との平均粒径の比は、金属コロイド粒子(A)/金属フィラー(B)=1/1000/1〜1/5、好ましくは1/500〜1/10(例えば、1/300〜1/20)、さらに好ましくは1/250〜1/50(特に1/200〜1/100)程度である。両者の比がこの範囲にあると、金属コロイド粒子と金属フィラーとの充填効率が向上するため、焼成膜の導電性を向上できる。
金属フィラー(B)を構成する金属は、金属ナノ粒子(A1)の項で例示された金属単体、合金、金属化合物などが挙げられる。これらの金属のうち、少なくとも銀や金などの貴金属(特に周期表第1B族金属)を含む金属(金属単体及び金属合金)、特に貴金属単体(例えば、金単体など)であるのが好ましい。金属ナノ粒子を構成する金属と金属フィラーを構成する金属とは異なっていてもよいが、焼結し易い点から、同一又は同族の金属(特に同一の金属)であるのが好ましい。
金属コロイド粒子(A)と金属フィラー(B)との割合(質量比)は、金属コロイド粒子(A)/金属フィラー(B)=90/10〜10/90、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは70/30〜30/70(特に60/40〜40/60)程度である。両者の比がこの範囲にあると、両者の焼結が緻密に行われるため、焼成膜の導電性を向上できる。
(C)分散媒
分散媒としては、前記金属コロイド粒子(又は金属ナノ粒子)(A)及び金属フィラー(B)との組み合わせにより、ペースト(ペースト状分散液)において十分な粘度を生じさせる溶媒であれば特に限定されず、汎用の溶媒が使用できる。なお、溶媒は、新たに混合してもよく、少なくとも後述の金属コロイド粒子の製造において使用する溶媒で構成してもよく、これらを組み合わせてもよい。
溶媒としては、前記金属コロイド粒子を分散可能な限り特に限定されず、保護コロイドの種類に応じて、極性溶媒(水溶性溶媒)であっても、疎水性溶媒(非水溶性溶媒)であってもよい。
極性溶媒には、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのC1−4アルカノールなど)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなど)、アミド類(ホルムアミド、アセトアミドなどのアシルアミド類、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド,N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのN−モノ又はN,N−ジC1−4アシルアミド類など)、ケトン類(アセトンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、有機カルボン酸類(酢酸など)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのC1−4アルキルセロソルブ類など)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC1−4アルキルセロソルブアセテート類など)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトールなどのC1−4アルキルカルビトール類など)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類など)などが例示できる。これらの極性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、これらの極性溶媒の極性パラメータは、通常、後述の極性パラメータの範囲内にある場合が多い。
疎水性溶媒としては、例えば、炭化水素類(ヘキサン、トリメチルペンタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類など)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなど)などが例示できる。これらの疎水性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
分散媒は、少なくとも極性溶媒(特に非芳香族系極性溶媒又は脂肪族系極性溶媒)で構成するのが好ましい。このような溶媒の極性パラメータ(Snyderによる極性パラメータ)は、例えば、2.8〜11、好ましくは3〜10.5、さらに好ましくは3.1〜10.2程度であってもよい。
また、本発明では、溶媒としては、環境の負荷が少なく、取り扱いが簡便である点から、水溶性溶媒、特に、少なくとも水及び/又はアルコール類などの水溶性溶媒が好ましい。さらに、ペーストに対して粘性を付与できるとともに、加熱における粒子の成長を温和にできる点から、ヒドロキシル基を有する水溶性溶媒、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール(特にエチレングリコールなどの脂肪族多価アルコール)が好ましい。
このような分散媒(C)、金属コロイド粒子(A)及び金属フィラー(B)を含むペースト中において、金属コロイド粒子(A)(又は金属ナノ粒子(A1))及び金属フィラー(B)は、分散媒に対して高い分散性を有し、長期間に亘り高い分散安定性を示す。ぺースト中の金属ナノ粒子(A1)の濃度は、例えば、30〜95質量%、好ましくは50〜93質量%、さらに好ましくは70〜90質量%(特に80〜90質量%)程度であってもよい。
このような金属粒子ペーストは、高濃度で金属ナノ粒子(A1)及び金属フィラー(B)を含んでいても、沈降などを生じることなく長期安定性(保存安定性)に優れている。そのため、例えば、ペーストを長期間保存後、金属膜(焼結膜)を形成しても、金属膜において抵抗値が増大することなく、優れた導電性を維持できる。
本発明の金属粒子ペーストには、用途に応じて、慣用の添加剤、例えば、バインダー樹脂(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子など)、着色剤(染顔料など)、色相改良剤、染料定着剤、光沢付与剤、金属腐食防止剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤又は分散剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤など)、分散安定化剤、増粘剤又は粘度調整剤、保湿剤、チクソトロピー性賦与剤、レベリング剤、消泡剤、殺菌剤、充填剤などが含まれていてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
[金属粒子ペーストの製造方法]
本発明の金属粒子ペーストにおいて、金属コロイド粒子は、慣用の方法、例えば、前記金属ナノ粒子(A1)に対応する金属化合物を、保護コロイド(B)(及び必要に応じて前記他の保護コロイド)及び還元剤の存在下、溶媒中で還元することにより調製できる。
前記金属ナノ粒子(A1)に対応する金属化合物は、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物、金属酸塩[金属無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩などのオキソ酸塩など)、金属有機酸塩(酢酸塩など)など]などであってもよい。なお、金属塩の形態は、単塩、複塩又は錯塩のいずれであってもよく、多量体(例えば、2量体)などであってもよい。これらの金属化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属化合物のうち、金属ハロゲン化物、金属酸塩[金属無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩などのオキソ酸塩など)、金属有機酸塩(酢酸塩など)など]などを使用する場合が多い。なお、これらの金属化合物は、溶媒に溶解又は分散させて(例えば、水溶液などの水系溶媒の溶液の形態で)用いてもよい。
還元剤としては、慣用の成分、例えば、水素化ホウ素ナトリウム類(水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素ナトリウムなど)、水素化アルミニウムリチウム、次亜リン酸又はその塩(ナトリウム塩など)、ボラン類(ジボラン、ジメチルアミンボランなど)、ヒドラジン、ホルマリン、アミン類、アルコール類(前記例示のアルコール類、例えば、エチレングリコールなど)、フェノール性水酸基を有するカルボン酸(例えば、タンニン酸)などが例示できる。
アミン類としては、脂肪族アミン類(例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンなどのアルカンアミン;トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのポリアルキレンポリアミンなど)、脂環式アミン類(例えば、ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N′−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリンなど)、芳香族アミン類(例えば、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジンなど)、芳香脂肪族アミン類(例えば、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルキシリレンジアミンなどのアラルキルアミン)、アルコールアミン類[特にアルカノールアミン類、例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール(2−(ジメチルアミノ)エタノール)、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノールなどのC2−10アルカノールアミン、好ましくはC2−6アルカノールアミン]が挙げることができる。
これらのうち、水素化ホウ素ナトリウム、第3級アミン(例えば、2−(ジメチルアミノ)エタノール、N−メチルジエタノールアミンなどの第3級アルカノールアミン)、エチレングリコール、タンニン酸などを好適に使用できる。また、安全性などの点で、アミン類、特に、アルカノールアミン類などのアルコールアミン類が好ましい。アルカノールアミン類は、通常、水溶性である場合が多く、水又は水系溶媒を溶媒とする場合には、好適である。
これらの還元剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
還元剤の使用量は、金属原子換算で前記金属化合物1当量(又は1モル)に対して、1〜30モル(例えば、1.2〜20モル)、好ましくは1.5〜15モル、さらに好ましくは2〜10モル程度であってもよく、通常1〜5モル程度であってもよい。
還元反応は、慣用の方法、例えば、温度10〜75℃(例えば、15〜50℃、好ましくは20〜35℃)程度で行うことができる。反応系の雰囲気は、空気、不活性ガス(窒素ガスなど)であってもよく、還元性ガス(水素ガスなど)を含む雰囲気であってもよい。また、反応は、通常、攪拌下(又は攪拌しながら)で行ってもよい。
なお、反応溶媒は、前記と同様の溶媒(例えば、水など)を使用できる。反応溶媒は、前記ペーストを構成する前記溶媒を用いてもよく、前記ペーストを構成する溶媒とは異なる溶媒を用いてもよい。具体的には、反応溶媒は、保護コロイドの種類に応じて、前記極性溶媒及び疎水性溶媒の中から選択でき、通常、保護コロイドが水溶性化合物である場合には、水などの極性溶媒を用いることが多い。極性溶媒は反応系に添加される成分、例えば、還元剤などの溶媒に由来してもよい。一方、保護コロイドが非水溶性化合物である場合には、脂肪族炭化水素類(トリメチルペンタンなど)などの疎水性溶媒を用いることが多く、必要により、疎水性溶媒と極性溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、ジメチルアセトアミドなどのアミド類など)との混合溶媒を用いてもよい。
また、これらの反応溶媒のうち、環境保全性及び簡便性などの観点から、少なくとも水を含む極性溶媒であってもよい。さらに、用途に応じて、溶媒の蒸発を抑制するなどの点から、水にアルコール類(特に、エチレングリコールやグリセリンなどの脂肪族多価アルコール)を組み合わせてもよい。アルコール類の割合は、水100質量部に対して、例えば、0.1〜50質量部、好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは3〜20質量部(特に5〜15質量部)程度であってもよい。
反応溶媒中の前記金属化合物の濃度は、金属の質量換算で、例えば、5質量%以上(例えば、6〜50質量%)、好ましくは8質量%以上(例えば、9〜40質量%)、さらに好ましくは10質量%以上(例えば、12〜30質量%)、通常5〜30質量%程度の高濃度であってもよい。本発明では、このような高濃度で反応させても、100nmを超える粗大ナノ粒子の生成をおさえつつ効率よく金属ナノ粒子を得ることができる。
なお、反応溶媒の種類などに応じて反応系のpHを調製してもよい。
pH調整は、慣用の方法、例えば、酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸などの有機酸)、アルカリ[水酸化ナトリウム、アンモニアなどの無機塩基、アミン類(例えば、アルキルアミン、アルカノールアミンなどの第三級アミン類などの有機塩基)などの塩基類]を用いて行うことができる。
還元反応の終了後、反応混合液を濃縮し、慣用の方法(例えば、遠心分離、メンブレンフィルタ、限外ろ過などのろ過処理など)で精製することにより、溶媒に対して分散性を有する金属コロイド粒子(A)を調製することができる。なお、本発明では、前記特定の組み合わせにより保護コロイドを構成するので、前記のように、比較的少ない量の保護コロイドであっても、粗大ナノ粒子の少ない金属ナノ粒子とすることができ、精製しなくても金属コロイド粒子(A)を調製できる。また、得られた金属コロイド粒子(A)及び溶媒を含む分散液をそのまま又は濃縮して前記ペーストとしてもよく、得られた金属コロイド粒子(A)及び溶媒を含む分散液から反応に使用した溶媒を除去し、新たな異種の溶媒(必要により他の添加剤)を加えて新たにペーストを調製してもよい。また、ペーストに、さらに新たな同種又は異種の溶媒や添加剤を加えてもよい。金属フィラー(B)の配合は、各方法におけるいずれの段階で添加してもよい。例えば、分散液から反応に使用した溶媒を除去し、新たな異種の分散媒の添加とともに、金属フィラー(B)を添加してもよい。
ペーストの調製方法としては、撹拌により調製できるが、例えば、乳鉢で金属コロイド粒子(A)と金属フィラー(B)と分散媒(C)とを混合して調製してもよい。
[導電性基材の製造方法]
本発明の金属粒子ペーストは、種々の用途に使用できる。例えば、本発明の金属粒子ペーストは、金属膜(特に導電性膜)を形成するためのペーストとして有用である。特に、本発明の金属粒子ペーストは、高濃度で金属ナノ粒子及び金属フィラーを含んでおり、比較的低温(例えば、150℃以下)で焼結可能であるため、金属膜(連続膜、焼結膜)の中でも、所定のパターン(回路パターンなど、特に導電性パターンなど)を有する焼結層を形成し、導電性基材を製造するためのペーストとして好適である。以下、前記金属粒子ペーストを用いて、導電性基材を製造する方法について詳述する。
このような方法では、通常、基材に、前記金属粒子ペースト(又は金属粒子ペーストの塗布)により、被膜(塗布層又はパターン)を形成(描画)し、形成された被膜(描画パターン)を焼成処理することにより焼結層(焼結膜、焼結パターン、金属膜、焼結体層、導体層)を形成できる。
基材(又は基板)としては、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。基材を構成する材質は、無機材料であってもよく、有機材料であってもよい。無機材料としては、例えば、ガラス類(ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、クラウンガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラス、ホウ素含有ガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、シリカガラス、石英ガラス、耐熱ガラスなど)、金属酸化物(アルミナ、サファイア、ジルコニア、チタニア、酸化イットリウム、酸化インジウム−酸化錫系複合酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)など)などが挙げられる。有機材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂[ポリアルキレンアリレート系樹脂(ポリエチレンテレタフタレートなど)、ポリアリレート系樹脂や液晶ポリマーを含む]、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロース誘導体、フッ素樹脂などが挙げられる。これらの材料は、焼成工程を経るため、耐熱性の高い材料、例えば、無機材料、エンジニアリングプラスチック(例えば、芳香族ポリエステル系樹脂(ポリアリレート系樹脂を含む)、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂など)、液晶ポリマー、フッ素樹脂などが好ましい。特に、本発明では、低温焼結可能であるため、樹脂を材質とする基材であってもパターン形成可能である。なお、基材は、表面処理されていてもよい。
基材は、易接着処理(表面処理)されていてもよい。易接着処理された基材(有機基材)を使用すると、基材に対する金属コロイド粒子(又はその金属膜)の密着性を向上でき、強固に固定された金属膜を得るのに有利である。
易接着処理としては、酸化処理[表面酸化処理、例えば、放電処理(コロナ放電処理、グロー放電など)、酸処理(クロム酸処理など)、紫外線照射処理、焔処理など]、表面凹凸処理(溶剤処理、サンドブラスト処理など)などの他、基材(基材表面)に、易接着層を形成する方法などが挙げられる。すなわち、有機基材として、易接着層が形成された基材を使用してもよい。
易接着層を構成(又は形成)する成分としては、金属コロイド粒子(又はその保護コロイド)と基材との密着性を向上できる成分であれば特に限定されず、例えば、オレフィン系樹脂[例えば、ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなど)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(エチレン−アクリル酸エチル共重合体など)、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリロニトリル−アクリル酸共重合体などのポリエチレン系樹脂、非晶性ポリプロピレン系樹脂など]、塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体など)、塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体など)、アクリル系樹脂[例えば、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル)など]の単独又は共重合体、これらの(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体(スチレン系単量体、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体、不飽和ジカルボン酸又はそのエステルなど)との共重合体など]、酢酸ビニル系樹脂[ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルと他の共重合性単量体(オレフィン系単量体(エチレンなど)、(メタ)アクリル酸エステル、不飽和ジカルボン酸又はそのエステルなど)との共重合体など]、スチレン系樹脂[例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体など]、ポリエステル系樹脂[脂肪族ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂(例えば、非晶性脂肪族又は芳香族ポリエステル)など]、ウレタン系樹脂(熱可塑性ウレタン系樹脂、イソシアネート基含有ポリマーなど)、ゴム状重合体(スチレン−ブタジエン共重合体など)、イミノ基含有ポリマー(ポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミンなど)などが挙げられる。これらの成分は、単独で又は2種以上組み合わせて易接着層を形成してもよい。
代表的な易接着層としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂などが挙げられる。
なお、易接着処理は、基材の表面の一部又は全部に対して施されていればよく、特に、基材(基材表面)のうち、金属膜を形成する部位(表面)に少なくとも形成されていてもよい。すなわち、前記基材が易接着処理された基材であり、この基材のうち易接着処理された部位に金属膜が形成されていてもよい。例えば、少なくとも一方の面に易接着層が形成された基材を使用し、この基材の易接着層が形成された面上に金属膜を形成してもよい。
塗布層(パターン)を描画するための描画法(又は印刷法)としては、パターン形成可能な印刷法であれば特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法(例えば、グラビア印刷法など)、オフセット印刷法、凹版オフセット印刷法、フレキソ印刷法などが挙げられる。
焼結層(又は焼結パターン)の平均厚みは、例えば、0.5〜30μm、好ましくは0.6〜25μm、さらに好ましくは0.8〜15μm(特に1〜12μm)程度であってもよい。本発明では、高濃度で金属ナノ粒子及び金属フィラーを含むペーストを用いるので、このようなミクロンオーダーの厚膜も効率よく形成できる。
焼成処理は、通常、塗布層を所定の焼成温度で加熱(又は焼成又は加熱処理)することにより行うことができる。焼成温度としては、金属ナノ粒子及び金属フィラーが融着して連続膜を形成できる限り特に限定されず、適宜選択できる。特に、本発明の金属粒子ペーストは、比較的低温であっても焼結するため、焼成温度は、350℃以下(例えば、50〜350℃程度)、好ましくは70〜320℃、さらに好ましくは80〜300℃(例えば、100〜280℃)程度であってもよく、通常100〜350℃程度であってもよい。特に、本発明では、150℃以下[例えば、40〜150℃、好ましくは45〜145℃(例えば、50〜140℃)、さらに好ましくは55〜135℃、特に60〜130℃程度]という低温でも焼結可能である。そのため、樹脂基板などに対しても金属膜やパターンを形成でき、適用範囲が広い。
また、焼成処理時間(加熱時間)は、焼成温度などに応じて、例えば、10分〜6時間、好ましくは15分〜5時間、さらに好ましくは20分〜3時間程度であってもよい。
このようにして焼結層(焼結パターン)が形成される。焼結層は、金属ナノ粒子及び金属フィラーとして導電性金属を用いた場合、高い導電性を有している。
本発明の金属粒子ペーストは、高濃度で金属ナノ粒子及び金属フィラーを含んでいるため、例えば、金属膜(焼結膜)を形成するためのペーストとして有用である。特に、有機質バインダーを含まず、低温焼結可能であるため、印刷性に優れるため、基板の回路形成用素材などに利用されるペーストに適している。このようなペーストには、使用するプロセスにより、例えば、印刷用ペースト、埋め込み用ペースト、印刷エッチング用ペーストなどが含まれるが、例えば、アドレス電極・バス電極用の印刷用ペーストやダイボンディング材の原料ペーストとして有効に利用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
(銀コロイド粒子の合成)
硝酸銀66.8g、カルボキシル基を有する有機化合物(A2−1)として酢酸(和光純薬工業(株)製、沸点118℃、炭素数2)10g、高分子分散剤(A2−2)としてカルボキシル基を有する高分子分散剤(ビッグケミー製、「ディスパービック190」、親水性ユニットであるポリエチレンオキサイド鎖と疎水性ユニットであるアルキル基とを有する両親媒性分散剤、溶媒:水、不揮発成分40%、酸価10mgKOH/g、アミン価0)2gを、イオン交換水1000gに投入し、激しく撹拌した。これに2−ジメチルアミノエタノール(和光純薬工業(株)製)100gを加えた後、70℃で2時間加熱撹拌した。この反応物を高速遠心分離器(Kokusan製、H−200 SERIES)を用い、7000rpm、1時間遠心分離し、銀ナノ粒子が保護コロイドにより保護された銀コロイド粒子(個数平均粒子径20nm)が凝集した沈殿物を回収した。
(銀コロイド粒子の分析)
保護コロイドの含有量を熱重量測定装置(TG/DTA、セイコーインスツルメンツ(株)製、EXSTAR6000)で測定したところ、銀100質量部に対して3質量部の保護コロイドを含有していた。なお、TG/DTAによる測定は、一分間に10℃の速さで30℃から200℃まで昇温した時の質量減少から算出した。有機化合物(A2−1)と高分子分散剤(A2−2)との質量比は、有機化合物(A2−1)/高分子分散剤(A2−2)=35/65であった。
(銀コロイド粒子の焼成)
前記合成により調製した銀コロイド粒子6g、銀フィラー(三井金属(株)製、商品名「SPN20J」、体積基準の粒度分布曲線における積算値が10%未満の粒子径D10:1.80μm、50%未満のD50:3.16μm、90%未満のD90:5.2μm)6.3g及びエチレングリコール(極性パラメータ6.9)1.5gを乳鉢で混合し、銀粒子ペーストを調製した。このペーストを、無アルカリガラス基板(コーニング(株)製、品番1737)上に塗布し、ホットプレート上において150℃で30分間焼成し、基板上に厚み10μmの銀膜を形成した。銀膜の比抵抗を測定したところ、8.0×10−6Ω・mであった。
実施例2
銀コロイド粒子の合成において、高分子分散剤(A2−2)の使用量を7gとする以外は実施例1と同様にして、銀コロイド粒子を合成した。保護コロイドの含有量は、銀100質量部に対して5質量部であり、有機化合物(A2−1)と高分子分散剤(A2−2)との質量比は、有機化合物(A2−1)/高分子分散剤(A2−2)=18/82であった。さらに、この銀コロイド粒子を用いて、実施例1と同様にして銀粒子ペーストを調製し、銀膜の比抵抗を測定したところ、9.5×10−6Ω・mであった。
参考例3
銀コロイド粒子の合成において、有機化合物(A2−1)として、酢酸の代わりにプロピオン酸(和光純薬工業(株)製、沸点141℃、炭素数3)10gを使用する以外は実施例1と同様にして、銀コロイド粒子を合成した。保護コロイドの含有量は、銀100質量部に対して5質量部であり、有機化合物(A2−1)と高分子分散剤(A2−2)との質量比は、有機化合物(A2−1)/高分子分散剤(A2−2)=30/70であった。さらに、この銀コロイド粒子を用いて、実施例1と同様にして銀粒子ペーストを調製し、銀膜の比抵抗を測定したところ、9.0×10−6Ω・mであった。
実施例4
銀コロイド粒子の合成において、高分子分散剤(A2−2)の使用量を0.12gとする以外は実施例1と同様にして、銀コロイド粒子を合成した。保護コロイドの含有量は、銀100質量部に対して2質量部であり、有機化合物(A2−1)と高分子分散剤(A2−2)との質量比は、有機化合物(A2−1)/高分子分散剤(A2−2)=86/14であった。さらに、この銀コロイド粒子を用いて、実施例1と同様にして銀粒子ペーストを調製した。このペーストを、無アルカリガラス基板(コーニング(株)製、品番1737)上に塗布し、ホットプレート上において120℃で30分間焼成し、基板上に厚み10μmの銀膜を形成した。銀膜の比抵抗を測定したところ、7.0×10−6Ω・mであった。
実施例5
銀フィラーとして銀フィラー(三井金属(株)製、商品名「SPQ05S」、体積基準の粒度分布曲線における積算値が10%未満の粒子径D10:0.45μm、50%未満のD50:0.82μm、90%未満のD90:1.50μm)を使用する以外は実施例4と同様にして、銀粒子ペーストを調製し、銀膜の比抵抗を測定したところ、11.0×10−6Ω・mであった。
実施例6
銀フィラーとして銀フィラー(三井金属(株)製、商品名「FHD」、体積基準の粒度分布曲線における積算値が10%未満の粒子径D10:0.31μm、50%未満のD50:0.48μm、90%未満のD90:0.78μm)を使用する以外は実施例4と同様にして、銀粒子ペーストを調製し、銀膜の比抵抗を測定したところ、15.0×10−6Ω・mであった。
参考例7
銀コロイド粒子の合成において、有機化合物(A2−1)として酢酸の代わりにコール酸(和光純薬工業(株)製、分解温度198℃)2g、高分子分散剤(A2−2)としてディスパービック190の代わりにポリアクリル酸(和光純薬製、重合度5000、酸価780mgKOH/g)3gを使用する以外は実施例1と同様にして、銀コロイド粒子を合成した。保護コロイドの含有量は、銀100質量部に対して3質量部であり、有機化合物(A2−1)と高分子分散剤(A2−2)との質量比は、有機化合物(A2−1)/高分子分散剤(A2−2)=20/80であった。さらに、この銀コロイド粒子を用いて、実施例1と同様にして銀粒子ペーストを調製し、銀膜の比抵抗を測定したところ、7.0×10−6Ω・mであった。
実施例8
基材として無アルカリガラスの代わりにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡(株)製、品番A−4300、ポリエステル易接着層が表面に形成されたフィルム)上にペーストを塗布する以外は実施例4と同様にして、基板の易接着層の上に、厚み10μmの銀膜を形成した。銀膜の比抵抗を測定したところ、7.0×10−6Ω・mであった。銀膜を碁盤目状(10個×10個の合計100個)にクロスカットし、テープ剥離試験を行ったところ、剥離した枡目はなく(100/100)、強固に密着していた。

Claims (6)

  1. 基材の上に金属粒子ペーストで被膜を形成する工程、及びこの被膜を150℃以下で焼成処理する工程を含む導電性基材の製造方法であって
    前記金属粒子ペーストが、金属ナノ粒子(A1)とこの金属ナノ粒子(A1)を被覆する保護コロイド(A2)とで形成された金属コロイド粒子(A)、金属フィラー(B)及び分散媒(C)を含み、
    記保護コロイド(A2)が、酢酸(A2−1)と高分子分散剤(A2−2)とで構成され、かつ
    前記保護コロイド(A2)の割合が、前記金属ナノ粒子(A1)100質量部に対して0.1〜5質量部である製造方法
  2. 金属ナノ粒子(A1)を構成する金属が銀であり、金属フィラー(B)が体積平均粒子径0.2〜10μmの銀フィラーである請求項1記載の製造方法
  3. 酢酸(A2−1)と高分子分散剤(A2−2)との割合(質量比)が、前者/後者=95/5〜50/50である請求項1又は2記載の製造方法
  4. 金属コロイド粒子(A)と金属フィラー(B)との割合(質量比)が、金属コロイド粒子(A)/金属フィラー(B)=90/10〜10/90である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法
  5. 基材が有機基材である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 基材が無機基材である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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