JP2010153184A - 電極形成用組成物、導電性基材の製造方法及び導電性基材 - Google Patents

電極形成用組成物、導電性基材の製造方法及び導電性基材 Download PDF

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泰助 伊勢田
Yukifumi Ochi
幸史 越智
Noriko Ikutake
範子 生武
Masahiro Iwamoto
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Abstract

【課題】透明導電膜に対して強い密着性を持ち、更に高い導電性を得る電極形成用組成物と、この組成物を用いた導電性基材の製造方法及びこれによって得られた導電性基材を提供する。
【解決手段】金属コロイド粒子、及びこの金属コロイド粒子の分散媒を含むペーストで構成された電極形成用組成物において、前記金属コロイド粒子を、金属ナノ粒子(A)と、この金属ナノ粒子(A)を被覆する保護コロイド(B)とで構成し、かつ前記保護コロイド(B)を、カルボキシル基を有する有機化合物(B1)と、高分子分散剤(B2)とで構成する。基材と、前記基材の表面に成形された透明電極膜と、前記透明電極膜の表面に形成された金属膜から構成された導電性基材の金属膜として、前記電極形成用組成物を焼結して使用する。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属コロイド粒子を含むペーストで構成された電極形成用組成物、この組成物を用いた導電性基材の製造方法及びこれによって得られた導電性基材に関する。
従来から、各種太陽電池やディスプレーの電極には透明導電膜が使用されており、その導電性を補うために銀などの導体が組み合わされている。しかし、透明導電膜であるITO(インジウムスズ酸化物)やFTO(フッ素ドープ酸化スズ)等の金属酸化と銀等の貴金属とは密着性が弱く、透明導電膜上に銀ペーストを印刷して成形した導体は充分な密着強度が得られていないという問題があった。
このため、特開2007−156482号(特許文献1)には、銀を合金化して透明導電膜との密着性を向上させる方法が記載されている。更に、特開2008−226816号(特許文献2)には、炭素骨格が炭素数1〜3である有機分子主鎖の保護剤で化学修飾させた金属ナノ粒子の分散液に、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンの共重合体、ポリビニルアルコール及びセルロースエーテルから選ばれた1種又は2種以上の有機高分子を含んだ電極形成用組成物、及びこれを基材上に湿式塗工法で成膜した後、これを焼成して電極を形成することも記載されている。これにより、透明導電膜と電極との接合界面に細やかな空気層などの空間層を形成させないようにし、かつ密着性を高めている。
しかし、有機高分子を含むことで金属ナノ粒子間の焼結による粒成長を抑制するために、透明導電膜と電極との接合界面の電極側に凹凸が発生せず、空気層などの空間が形成しない効果があるが、有機高分子が残留する可能性があるために、導体の抵抗値が高くなる不具合があった。
特開2007−156482号(特許請求の範囲) 特開2008−226816号(特許請求の範囲、段落[0043])
従って、本発明の目的は、保護コロイドに比較的低沸点の有機化合物と高分子分散剤とを用いた金属ナノ粒子ペーストを用いることにより、透明導電膜の耐熱温度以下の焼成温度で焼成することで保護コロイドが残留せず、透明導電膜に対して強い密着性を持ち、更に高い導電性を得る電極形成用組成物と、この組成物を用いた導電性基材の製造方法及びこれによって得られた導電性基材を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、金属ナノ粒子を被覆又は保護する保護コロイド(又は分散剤)を、カルボキシル基を有する有機化合物と、高分子分散剤とで構成することにより、室温下での分散性及び保存安定が高く、低温で焼成しても保護コロイドの脱離により、金属ナノ粒子の焼結が進行して低い抵抗値が得られるとともに、緻密な金属膜を形成して透明導電膜に対して高い密着性が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の電極形成用組成物は、金属コロイド粒子、及びこの金属コロイド粒子の分散媒を含むペーストで構成されたものであり、前記金属コロイド粒子が、金属ナノ粒子(A)と、この金属ナノ粒子(A)を被覆する保護コロイド(B)とで構成され、かつ前記保護コロイド(B)が、カルボキシル基を有する有機化合物(B1)と、高分子分散剤(B2)とで構成されている。前記金属ナノ粒子(A)を構成する金属は、少なくとも貴金属を含む金属であり、有機化合物(B1)は、C1−16脂肪族カルボン酸及び脂肪族ヒドロキシカルボン酸から選択された少なくとも1種(特にC1−6脂肪族カルボン酸)であり、かつ高分子分散剤(B2)は、遊離のカルボキシル基を有していてもよい。
本発明には、基材と、前記基材の表面に成形された透明電極膜と、前記透明電極膜の表面に形成された金属膜から構成された導電性基材の製造方法であり、前記金属膜が請求項1〜4のいずれかに記載の電極形成用組成物を焼結して得られた導電性基材の製造方法も含まれる。この方法において、金属膜が銀を含んでもよく、透明電極膜がITO,FTOから選ばれた少なくとも1種の金属酸化物を含んでもよい。
さらに、本発明には、前記方法により得られた導電性基材も含まれる。
本発明では、金属ナノ粒子を被覆する保護コロイドとして、特定の保護コロイドを使用するので、室温下での分散性及び保存安定が高く、低温で焼成しても保護コロイドの脱離により、金属ナノ粒子の焼結が進行して低い抵抗値が得られるとともに、緻密な金属膜を形成して透明導電膜に対して高い密着性が得られる。
[電極形成用組成物]
本発明の電極形成用組成物は、金属コロイド粒子、及びこの金属コロイド粒子の分散媒を含むペーストで構成されている。
(金属コロイド粒子)
本発明の金属コロイド粒子は、金属ナノ粒子(A)と、この金属ナノ粒子(A)を被覆する保護コロイド(B)で構成された金属コロイド粒子であって、前記保護コロイド(B)が、特定の化合物の組み合わせで構成されている。
(A)金属ナノ粒子
金属ナノ粒子(A)を構成する金属(金属原子)としては、例えば、遷移金属(例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期表第4A族金属;バナジウム、ニオブなどの周期表第5A族金属;モリブデン、タングステンなどの周期表第6A族金属;マンガンなどの周期表第7A族金属;鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金などの周期表第8族金属;銅、銀、金などの周期表第1B族金属など)、周期表第2B族金属(例えば、亜鉛、カドミウムなど)、周期表第3B族金属(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、周期表第4B族金属(例えば、ゲルマニウム、スズ、鉛など)、周期表第5B族金属(例えば、アンチモン、ビスマスなど)などが挙げられる。金属は、周期表第8族金属(鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金など)、周期表第1B族金属(銅、銀、金など)、周期表第3B族金属(アルミニウムなど)及び周期表第4B族金属(スズなど)などであってもよい。なお、金属(金属原子)は、空気中で酸化されにくい金属、例えば、白金族元素あるいは貴金属、周期表第1B族金属などである場合が多い。
金属ナノ粒子(A)は、前記金属単体、前記金属の合金、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物などであってもよい。これらの金属ナノ粒子(A)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。金属ナノ粒子(A)は、通常、金属単体粒子、又は金属合金粒子である場合が多い。なかでも、金属ナノ粒子(A)を構成する金属は、少なくとも銀などの貴金属(特に周期表第1B族金属)を含む金属(金属単体及び金属合金)、特に貴金属単体(例えば、銀単体など)であるのが好ましい。
金属ナノ粒子(A)はナノメーターサイズである。例えば、本発明の金属コロイド粒子における金属ナノ粒子(A)の平均粒子径(平均一次粒子径)は、1〜100nm、好ましくは1.5〜80nm、さらに好ましくは2〜70nm、特に3〜50nm程度であってもよく、通常1〜40nm(例えば、2〜30nm)程度であってもよい。
また、本発明の金属コロイド粒子は、粗大粒子をほとんど含んでいなくてもよい。そのため、前記金属ナノ粒子(A)の最大一次粒子径は、例えば、200nm以下、好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。さらに、金属ナノ粒子(A)(又は金属コロイド粒子)において、一次粒子径が100nm以上の粒子の割合は、金属(又は金属成分)の質量基準で、例えば、10質量%以下(例えば、0〜8質量%程度)、好ましくは5質量%以下(例えば、0.01〜3質量%)、さらに好ましくは1質量%以下(例えば、0.02〜0.5質量%程度)であってもよい。
(B)保護コロイド
保護コロイド(B)は、カルボキシル基を有する有機化合物(B1)と、高分子分散剤(B2)とで構成されている。
(B1)カルボキシル基を有する有機化合物
有機化合物(B1)は、カルボキシル基を有している。このようなカルボキシル基の数は、有機化合物(B1)1分子あたり、1以上であれば特に限定されず、例えば、1〜10、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3程度であってもよい。
なお、有機化合物(B1)において、一部又は全部のカルボキシル基は、塩(アミンとの塩、金属塩など)を形成していてもよい。特に、本発明では、カルボキシル基(特に、すべてのカルボキシル基)が、塩[特に、塩基性化合物との塩(アミンとの塩又はアミン塩など)]を形成していない有機化合物(すなわち、遊離のカルボキシル基を有する有機化合物)を好適に使用できる。
また、有機化合物(B1)は、カルボキシル基を有している限り、カルボキシル基以外の官能基(又は金属化合物又は金属ナノ粒子に対する配位性基など)を有していてもよい。このようなカルボキシル基以外の官能基(又は配位性基)としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を有する基{又は官能基、例えば、窒素原子を有する基[アミノ基、置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)、イミノ基(−NH−)、窒素環基(ピリジル基などの5〜8員窒素環基、カルバゾール基、モルホリニル基など)、アミド基(−CON<)、シアノ基、ニトロ基など]、酸素原子を有する基[ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのC1−6アルコキシ基)、ホルミル基、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、酸素環基(テトラヒドロピラニル基などの5〜8員酸素環基など)など]、硫黄原子を有する基[例えば、チオ基、チオール基、チオカルボニル基(−SO−)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基などのC1−4アルキルチオ基など)、スルホ基、スルファモイル基、スルフィニル基(−SO−)など]など}などが挙げられる。これらの官能基は、単独で又は2種以上組み合わせて有機化合物(B1)が有していてもよい。
有機化合物(B1)は、これらの官能基のうち、カルボキシル基と塩を形成可能な塩基性基(特に、アミノ基、置換アミノ基、イミノ基、アンモニウム塩基など)を有していない化合物であるのが好ましい。
代表的な有機化合物(B1)には、カルボン酸が含まれる。このようなカルボン酸としては、例えば、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸(又はオキシカルボン酸)などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸[飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプロン酸、ヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、デヒドロコール酸、コラン酸などのC1−34脂肪族モノカルボン酸、好ましくはC1−30脂肪族モノカルボン酸など)、不飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、アビエチン酸などのC4−34不飽和脂肪族カルボン酸、好ましくはC10−30不飽和脂肪族カルボン酸)]、芳香族モノカルボン酸(安息香酸、ナフトエ酸などのC7−12芳香族モノカルボン酸など)などが挙げられる。
ポリカルボン酸としては、例えば、脂肪族ポリカルボン酸[例えば、脂肪族飽和ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのC2−14脂肪族飽和ポリカルボン酸、好ましくはC2−10脂肪族飽和ポリカルボン酸など)、脂肪族不飽和ポリカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ソルビン酸、テトラヒドロフタル酸などのC4−14脂肪族不飽和ポリカルボン酸、好ましくはC4−10脂肪族不飽和ポリカルボン酸など)など]、芳香族ポリカルボン酸(例えば、フタル酸、トリメリット酸などのC8−12芳香族ポリカルボン酸など)などが挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシモノカルボン酸[脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、グリセリン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、12−オキソケノデオキシコール酸、グリココール酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、アポコール酸、タウロコール酸などのC2−50脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、好ましくはC2−34脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、さらに好ましくはC2−30脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸など)、芳香族ヒドロキシモノカルボン酸(サリチル酸、オキシ安息香酸、没食子酸などのC7−12芳香族ヒドロキシモノカルボン酸など)など]、ヒドロキシポリカルボン酸[脂肪族ヒドロキシポリカルボン酸(例えば、タルトロン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸などのC2−10脂肪族ヒドロキシポリカルボン酸など)など]などが挙げられる。
なお、これらのカルボン酸は、塩を形成していてもよく、無水物、水和物などであってもよい。なお、カルボン酸は、前記と同様に、塩(特に、アミンとの塩などの塩基性化合物との塩)を形成していない場合が多い。
有機化合物(B1)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらの有機化合物(B1)のうち、脂肪族カルボン酸(例えば、C1−24脂肪族カルボン酸、好ましくはC1−20脂肪族カルボン酸、さらに好ましくはC1−18脂肪族カルボン酸)や、脂肪族ヒドロキシカルボン酸(脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸および脂肪族ヒドロキシポリカルボン酸、例えば、C2−34脂肪族ヒドロキシカルボン酸)などのヒドロキシカルボン酸が好ましい。また、脂肪族ヒドロキシカルボン酸の中でも、さらに、脂環族ヒドロキシカルボン酸(又は脂環族骨格を有するヒドロキシカルボン酸、例えば、コール酸などのC6−34脂環族ヒドロキシカルボン酸、好ましくはC10−34脂環族ヒドロキシカルボン酸、さらに好ましくはC16−30脂環族ヒドロキシカルボン酸)が好ましい。
また、コール酸などの多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸(例えば、縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、好ましくはC10−34縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、好ましくはC14−34縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、さらに好ましくはC18−30縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸)、デヒドロコール酸、コラン酸などの多環式脂肪族カルボン酸(例えば、縮合多環式脂肪族カルボン酸、好ましくはC10−34縮合多環式脂肪族カルボン酸、好ましくはC14−34縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、さらに好ましくはC18−30縮合多環式脂肪族カルボン酸)などの多環式脂肪族カルボン酸(例えば、C10−50縮合多環式脂肪族カルボン酸、好ましくはC12−40縮合多環式脂肪族カルボン酸、さらに好ましくはC14−34縮合多環式脂肪族カルボン酸、特にC18−30縮合多環式脂肪族カルボン酸)は、嵩高い構造を有しており、金属ナノ粒子の凝集を抑制する効果が大きい点から好ましい。
さらに、これらの有機化合物(B1)のうち、焼成温度で金属粒子から脱離又は消失し、焼結サイトを形成することにより無機素材の接合力を向上できる点から、遊離のカルボキシル基を有する比較的低分子の飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸などのC1−16アルカン酸(アルカンカルボン酸)、好ましくはC1−12アルカン酸(例えば、C1−6アルカン酸)、さらに好ましくはC1−4アルカン酸、特にC1−3アルカン酸(例えば、C1−2アルカン酸)であってもよい。
なお、有機化合物(B1)の分子量は、例えば、1000以下(例えば、46〜900程度)、好ましくは800以下(例えば、50〜700程度)、さらに好ましくは600以下(例えば、100〜500程度)であってもよい。
また、有機化合物(B1)のpKa値は、例えば、1以上(例えば、1〜10程度)、好ましくは2以上(例えば、2〜8程度)程度であってもよい。
(B2)高分子分散剤
本発明では、保護コロイドを、前記有機化合物(B1)と高分子分散剤(B2)とで組み合わせて構成する。このような組み合わせで保護コロイドを構成することにより、粗大粒子が著しく少ない金属ナノ粒子を含む金属コロイド粒子が得られる。特に、本発明では、前記特定の保護コロイドの組み合わせにより、粗大粒子が少ないにもかかわらず、金属ナノ粒子の割合を大きくでき、ペースト中における金属コロイド粒子(およびその分散液)の保存安定性にも優れている。前記組み合わせによりこのような優れた金属コロイド粒子となる理由は定かではないが、以下のような理由が考えられる。
まず、高分子分散剤は、その構造から、比較的大きな粒子を分散安定化する効果に優れているが、比較的小さな粒子の安定化効果が十分ではないため、金属ナノ粒子原料の濃度を大きくすると、生成する粒子を十分に安定化できなくなる。一方、このようなナノ粒子の合成初期段階に生成する比較的小さい粒子を、前記有機化合物が分散安定化する。このような有機化合物(B1)と高分子分散剤(B2)との相乗的な作用により、金属ナノ粒子の原料が高濃度であっても粗大粒子の生成を抑えて金属ナノ粒子を生成できるものと考えられる。
また、保護コロイドは、短いタイムスケールでは、金属ナノ粒子表面に対して吸着、脱離を繰り返しているが、高分子分散剤で保護した場合、吸着した部分が瞬間的に脱離した場合であっても、立体障害が大きく、また、脱離しても、吸着に関与していた基に代わり他の基が金属ナノ粒子表面に吸着するため、粒子間の凝集や焼結が生じにくい。従って、良好な保存安定性を示す一方、その高い保護能力及び分解温度のため、焼成温度も高温でなければ金属ナノ粒子の焼結は起こらず、高分子分散剤のみでは、無機素材の接合力を向上できない。一方、カルボキシル基を有する有機化合物は、通常、金属ナノ粒子表面に対する吸着力は弱く、また、気化温度が低い場合が多い。そのため、低温焼成により金属ナノ粒子表面から脱離又は消失し、無機素材の接合力を向上しやすいが、室温のような低温においても金属ナノ粒子の凝集、焼結が生じやすく、保存安定性が十分でないため、無機素材間の層面において安定した金属膜を形成することが困難である。
そこで、本発明では、高分子分散剤とカルボキシル基を有する有機化合物とを組み合わせる。このような組み合わせにより、金属ナノ粒子表面には高分子分散剤が吸着した部分、前記有機化合物が吸着した部分が形成されている。そして、前記高分子分散剤が吸着した部分は、強い表面保護能力により安定化されて、保存安定性が向上されている一方、前記有機化合物が吸着した部分は金属ナノ粒子表面から脱離しやすく、低温焼結の反応サイトとしての役割を担う。このような反応サイトは、室温程度の雰囲気においては高分子分散剤の作用により保護されているが、比較的低温での焼成温度(例えば、数十度以上)において焼結反応を開始し、結果として低温焼成でも金属ナノ粒子の焼結が進行して低い抵抗値が得られるとともに、緻密な金属膜を形成して透明導電膜に対して高い密着性が得られる。
高分子分散剤(又は高分子型分散剤)(B2)としては、金属ナノ粒子(A)を被覆可能であれば特に限定されないが、両親媒性の高分子分散剤(又はオリゴマー型分散剤)を好適に使用できる。
高分子分散剤としては、通常、塗料、インキ分野などで着色剤の分散に用いられている高分子分散剤が例示できる。このような分散剤には、スチレン系樹脂(スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体など)、アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸などの(メタ)アクリル酸系樹脂など)、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリルウレタン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース;エチルセルロースなどのアルキルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのアルキル−ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロースなどのセルロースエーテル類など)、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(液状のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、天然高分子(ゼラチン、デキストリンなど)、ポリエチレンスルホン酸又はその塩、ポリスチレンスルホン酸又はその塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、窒素原子含有高分子化合物[例えば、ポリアルキレンイミン(ポリエチレンイミンなど)、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエーテルポリアミン(ポリオキシエチレンポリアミンなど)などのアミノ基を有する高分子化合物]などが含まれる。
代表的な高分子分散剤(両親媒性の高分子分散剤)としては、親水性モノマーで構成された親水性ユニット(又は親水性ブロック)を含む樹脂(又は水溶性樹脂、水分散性樹脂)が含まれる。
前記親水性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基又は酸無水物基含有単量体(アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル系単量体、マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸、無水マレイン酸など)、ヒドロキシル基含有単量体(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルフェノールなど)などの付加重合系モノマー;アルキレンオキシド(エチレンオキシドなど)などの縮合系モノマーなどが例示できる。前記縮合系モノマーは、ヒドロキシル基などの活性基(例えば、前記ヒドロキシル基含有単量体など)との反応により、親水性ユニットを形成していてもよい。親水性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて親水性ユニットを形成していてもよい。
高分子分散剤は、少なくとも親水性ユニット(又は親水性ブロック)を含んでいればよく、親水性モノマーの単独又は共重合体(例えば、ポリアクリル酸又はその塩など)であってもよく、前記例示のスチレン系樹脂やアクリル系樹脂などのように、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマーであってもよい。疎水性モノマー(非イオン性モノマー)としては、(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1−20アルキル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキル、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルなどの(メタ)アクリル酸アラルキルなど]などの(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;α−C2−20オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセンなど)などのオレフィン系モノマー;酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル系モノマーなどが挙げられる。疎水性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて疎水性ユニットを構成していてもよい。
高分子分散剤がコポリマー(例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマー)である場合、コポリマーは、ランダムコポリマー、交互共重合体、ブロックコポリマー(例えば、親水性モノマーで構成された親水性ブロックと、疎水性モノマーで構成された疎水性ブロックとで構成されたコポリマー)、くし型コポリマー(又はくし型グラフトコポリマー)などであってもよい。前記ブロックコポリマーの構造は、特に限定されず、ジブロック構造、トリブロック構造(ABA型、BAB型)などであってもよい。また、前記くし型コポリマーにおいて、主鎖は、前記親水性ブロックで構成してもよく、前記疎水性ブロックで構成してもよく、親水性ブロックおよび疎水性ブロックで構成してもよい。
なお、前記のように、親水性ユニットは、アルキレンオキシド(エチレンオキシドなど)で構成された親水性ブロック(ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド)などの縮合系ブロックで構成することもできる。親水性ブロック(ポリアルキレンオキシドなど)と疎水性ブロック(ポリオレフィンブロックなど)とは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合などの連結基を介して結合していてもよい。これらの結合は、例えば、疎水性ブロック(ポリオレフィンなど)を変性剤[不飽和カルボン酸又はその無水物((無水)マレイン酸など)、ラクタム又はアミノカルボン酸、ヒドロキシルアミン、ジアミンなど]で変性した後、親水性ブロックを導入することにより形成してもよい。また、ヒドロキシル基やカルボキシル基などの親水性基を有するモノマー(前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど)から得られるポリマーと、前記縮合系の親水性モノマー(エチレンオキシドなど)とを反応(又は結合)させることにより、くし型コポリマー(主鎖が疎水性ブロックで構成されたくし型コポリマー)を形成してもよい。
さらに、共重合成分として、親水性の非イオン性モノマーを使用することにより、親水性と疎水性とのバランスを調整してもよい。このような成分としては、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(例えば、数平均分子量200〜1000程度)などのアルキレンオキシ(特にエチレンオキシ)ユニットを有するモノマー又はオリゴマーなどを例示できる。また、親水性基(カルボキシル基など)を変性(例えば、エステル化)することにより親水性と疎水性とのバランスを調整してもよい。
高分子分散剤(B2)は、官能基を有していてもよい。このような官能基としては、例えば、酸基(又は酸性基、例えば、カルボキシル基(又は酸無水物基)、スルホ基(スルホン酸基)など)、塩基性基(例えば、アミノ基など)、ヒドロキシル基などが挙げられる。これらの官能基は、単独で又は2種以上組み合わせて高分子分散剤(B2)が有していてもよい。
これらの官能基のうち、高分子分散剤(B2)は、酸基又は塩基性基、特に、遊離のカルボキシル基を有しているのが好ましい。
また、高分子分散剤(B2)が、酸基(カルボキシル基など)を有している場合、少なくとも一部又は全部の酸基(カルボキシル基など)は、塩(アミンとの塩、金属塩など)を形成していてもよいが、特に、本発明では、カルボキシル基(特に、すべてのカルボキシル基)などの酸基が、塩[特に、塩基性化合物との塩(アミンとの塩又はアミン塩など)]を形成していない高分子分散剤[すなわち、遊離の酸基(特にカルボキシル基)を有する高分子分散剤]を好適に使用できる。
酸基(特に遊離のカルボキシル基)を有する高分子分散剤(B2)において、酸価は、例えば、1mgKOH/g以上(例えば、2〜1500mgKOH/g程度)、好ましくは3mgKOH/g以上(例えば、4〜1200mgKOH/g程度)、さらに好ましくは5mgKOH/g以上(例えば、8〜1000mgKOH/g程度)、特に10mgKOH/g以上(例えば、12〜900mgKOH/g程度)の範囲から選択できる。特に、酸基(特にカルボキシル基)を有する高分子分散剤(B2)が、親水性ユニットおよび疎水性ユニットを有する化合物などである場合、酸価は、1mgKOH/g以上(例えば、2〜100mgKOH/g程度)、好ましくは3mgKOH/g以上(例えば、4〜90mgKOH/g程度)、さらに好ましくは5mgKOH/g以上(例えば、6〜80mgKOH/g程度)、特に7mgKOH/g以上(例えば、8〜70mgKOH/g程度)であってもよく、通常3〜50mgKOH/g(例えば、5〜30mgKOH/g)程度であってもよい。酸基を有する高分子分散剤(B2)において、アミン価は0(又はほぼ0)であってもよい。
なお、高分子分散剤において、上記のような官能基の位置は、特に限定されず、主鎖であってもよく、側鎖であってもよく、主鎖および側鎖に位置していてもよい。このような官能基は、例えば、親水性モノマー又は親水性ユニット由来の官能基(例えば、ヒドロキシル基など)であってもよく、官能基を有する共重合性モノマー(例えば、無水マレイン酸など)の共重合によりポリマー中に導入することもできる。
高分子分散剤(B2)は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、高分子分散剤として、前記特許文献2の記載の高分子分散剤(高分子量顔料分散剤)を使用してもよい。
また、高分子分散剤は、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。以下に、市販の高分子分散剤(又は少なくとも両親媒性の分散剤で構成された分散剤)を具体的に例示すると、ソルスパース13240、ソルスパース13940、ソルスパース32550、ソルスパース31845、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース41090などのソルスパースシリーズ[アビシア(株)製];ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック184、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192、ディスパービック193、ディスパービック194、ディスパービック2001、ディスパービック2050などのディスパービックシリーズ[ビックケミー(株)製];EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49、EFKA−1501、EFKA−1502、EFKA−4540、EFKA−4550、ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453[EFKAケミカル(株)製];アジスパーPB711、アジスパーPAl11、アジスパーPB811、アジスパーPB821、アジスパーPW911などのアジスパーシリーズ[味の素(株)製];フローレンDOPA−158、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンTG−700、フローレンTG−720W、フローレン−730W、フローレン−740W、フローレン−745Wなどのフローレンシリーズ[共栄社化学(株)製];ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル62などのジョンクリルシリーズ[ジョンソンポリマー(株)製]などが挙げられる。
これらのうち、代表的な酸基を有する高分子分散剤には、ポリ(メタ)アクリル酸類[又はポリアクリル酸系樹脂、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と共重合性単量体(例えば、(メタ)アクリレート、無水マレイン酸など)との共重合体などの(メタ)アクリル酸を主成分とするポリマー、これらの塩(例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩など)など]、ディスパービック190、ディスパービック194などが挙げられる。また、代表的な塩基性基(アミノ基)を有する高分子分散剤には、ポリアルキレンイミン(ポリエチレンイミンなど)、ポリビニルピロリドン、ポリアリルアミン、ポリエーテルポリアミン(ポリオキシエチレンポリアミンなど)などが挙げられる。
高分子分散剤(B2)の数平均分子量は、1000〜1000000(例えば、1200〜800000)の範囲から選択でき、例えば、1500〜500000(例えば、1500〜100000)、好ましくは2000〜80000(例えば、2000〜60000)、さらに好ましくは3000〜50000(例えば、5000〜30000)、特に7000〜20000程度であってもよい。
金属コロイド粒子において、保護コロイド(B)(有機化合物(B1)および高分子分散剤(B2)の総量)の割合は、固形分換算で、金属ナノ粒子(A)100質量部に対して、例えば、0.1〜100質量部(例えば、0.5〜80質量部)、好ましくは1.0〜60質量部(例えば、1.5〜50質量部)、さらに好ましくは2〜40質量部(例えば、3〜30質量部)、特に4〜25質量部(例えば、5〜20質量部)程度であってもよく、通常10〜50質量部程度であってもよい。特に、本発明の金属コロイド粒子において、保護コロイド(B)の割合は、金属ナノ粒子(A)100質量部に対して、0.5〜20質量部(例えば、0.8〜18質量部)、好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは1.2〜12質量部(例えば、1.5〜10質量部)程度であってもよい。本発明では、前記特定の組み合わせにより保護コロイドを構成するので、上記のような比較的少ない量の保護コロイドであっても、粗大粒子の少ない金属ナノ粒子とすることができる。
なお、金属コロイド粒子において、有機化合物(B1)の割合は、固形分換算で、例えば、金属ナノ粒子(A)100質量部に対して、例えば、0.05〜70質量部(例えば、0.1〜50質量部)、好ましくは0.5〜40質量部(例えば、1〜30質量部)、さらに好ましくは2〜20質量部(例えば、3〜15質量部)程度であってもよい。特に、本発明の金属コロイド粒子において、有機化合物(B1)の割合は、金属ナノ粒子(A)100質量部に対して、0.05〜10質量部(例えば、0.1〜8質量部)、好ましくは0.12〜7質量部(例えば、0.15〜5質量部)、さらに好ましくは0.18〜4質量部(例えば、0.2〜3質量部)程度であってもよい。
また、金属コロイド粒子において、高分子分散剤(B2)の割合は、固形分換算で、例えば、金属ナノ粒子(A)100質量部に対して、例えば、0.01〜50質量部(例えば、0.05〜30質量部)、好ましくは0.1〜30質量部(例えば、0.5〜20質量部)、さらに好ましくは1〜15質量部(例えば、2〜10質量部)程度であってもよい。特に、本発明の金属コロイド粒子において、高分子分散剤(B2)の割合は、金属ナノ粒子(A)100質量部に対して、0.05〜15質量部(例えば、0.1〜12質量部)、好ましくは0.12〜10質量部(例えば、0.15〜8質量部)、さらに好ましくは0.18〜7質量部(例えば、0.2〜6質量部)程度であってもよい。
さらに、金属コロイド粒子において、有機化合物(B1)と高分子分散剤(B2)との割合(溶媒などを含む場合は固形分の割合)は、前者/後者(質量比)=99/1〜1/99(例えば、95/5〜5/95)、好ましくは85/15〜10/90(例えば、75/25〜15/85)、さらに好ましくは70/30〜20/80(例えば、60/40〜25/75)、特に55/45〜30/70(例えば、50/50〜35/65)程度であってもよい。特に、金属コロイド粒子において、有機化合物(B1)と高分子分散剤(B2)との割合は、前者/後者(質量比)=97/3〜1/99(例えば、96/4〜1/99)、好ましくは95/5〜2/98(例えば、93/7〜2/98)、さらに好ましくは92/8〜3/97(例えば、90/10〜3/97)、通常87/13〜3/97(例えば、86/14〜4/96)程度であってもよい。
なお、本発明の金属コロイド粒子は、保護コロイドとして少なくとも前記保護コロイド(B)を含んでいればよく、他の保護コロイド成分を含んでいてもよい。他の保護コロイド成分は、無機化合物であってもよいが、通常、有機化合物である。
他の保護コロイド成分としては、例えば、酸素原子含有有機化合物{例えば、アルコール類[例えば、アルカノール類(ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノールなどのC6−20アルカンモノオール)、シクロアルカノール類(シクロヘキサノールなど)、アラルキルアルコール類、多価アルコール類など]、ケトン類[例えば、アルカノン類、シクロアルカノン類、ジケトン類(アセチルアセトンなどのβ−ジケトン類)など]、エステル類(例えば、脂肪酸エステル類、グリコールエーテルエステル類など)、アルデヒド類(カプリルアルデヒド、ラウリルアルデヒド、パルミトアルデヒド、ステアリルアルデヒドなどのC6−20脂肪族アルデヒド)など}、硫黄原子含有有機化合物[例えば、スルホキシド類、スルホン酸類(例えば、アルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸など)など]などが挙げられる。これらの他の保護コロイドは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
他の保護コロイドの割合は、前記保護コロイド(B)100質量部に対して、例えば、0.1〜100質量部、好ましくは0.5〜50質量部、さらに好ましくは1〜30質量部程度であってもよい。
なお、金属コロイド粒子中の有機化合物(B1)、高分子分散剤(B2)などの割合は、慣用の方法、例えば、熱分析(例えば、熱質量/示差熱同時分析など)により、測定することができる。
(分散媒)
分散媒としては、前記金属コロイド粒子(又は金属ナノ粒子)との組み合わせにより、ペースト(ペースト状分散液)において十分な粘度を生じさせる溶媒であれば特に限定されず、汎用の溶媒が使用できる。なお、溶媒は、新たに混合してもよく、少なくとも後述の金属コロイド粒子の製造において使用する溶媒で構成してもよく、これらを組み合わせてもよい。
溶媒としては、前記金属コロイド粒子を分散可能な限り特に限定されず、保護コロイドの種類に応じて、極性溶媒(水溶性溶媒)であっても、疎水性溶媒(非水溶性溶媒)であってもよい。
極性溶媒には、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのC1−4アルカノールなど)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなど)、アミド類(ホルムアミド、アセトアミドなどのアシルアミド類、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド,N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのN−モノ又はN,N−ジC1−4アシルアミド類など)、ケトン類(アセトンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、有機カルボン酸類(酢酸など)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのC1−4アルキルセロソルブ類など)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC1−4アルキルセロソルブアセテート類など)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトールなどのC1−4アルキルカルビトール類など)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類など)などが例示できる。これらの極性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、これらの極性溶媒の極性パラメータは、通常、後述の極性パラメータの範囲内にある場合が多い。
疎水性溶媒としては、例えば、炭化水素類(ヘキサン、トリメチルペンタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類など)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなど)などが例示できる。これらの疎水性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
分散媒は、少なくとも極性溶媒(特に非芳香族系極性溶媒又は脂肪族系極性溶媒)で構成するのが好ましい。このような溶媒の極性パラメータ(Snyderによる極性パラメータ)は、例えば、2.8〜11、好ましくは3〜10.5、さらに好ましくは3.1〜10.2程度であってもよい。
また、本発明では、溶媒としては、環境の負荷が少なく、取り扱いが簡便である点から、水溶性溶媒、特に、少なくとも水及び/又はアルコール類などの水溶性溶媒が好ましい。さらに、ペーストに対して粘性を付与できるとともに、加熱における粒子の成長を温和にできる点から、ヒドロキシル基を有する水溶性溶媒、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール(特にエチレングリコールなどの脂肪族多価アルコール)が好ましい。
このような分散媒及び金属コロイド粒子を含むペースト中において、金属コロイド粒子(又は金属ナノ粒子(A))は、分散媒に対して高い分散性を有し、長期間に亘り高い分散安定性を示す。ぺースト中の金属ナノ粒子(A)の濃度は、例えば、30〜95質量%、好ましくは50〜93質量%、さらに好ましくは70〜90質量%(特に80〜90質量%)程度であってもよい。
このようなペーストで構成された電極形成用組成物は、高濃度で金属ナノ粒子(A)を含んでいても、沈降などを生じることなく長期安定性(保存安定性)に優れている。そのため、例えば、ペーストを長期間保存後、無機素材の層間で均一な焼結膜を形成でき、無機素材の接合力を向上できる。
なお、ペースト中において、保護コロイドで被覆された金属ナノ粒子(A)もナノメーターサイズであり、その平均粒子径(平均一次粒子径)などは、前記と同様の範囲から選択できる。
なお、ペーストの(ペーストを構成する)固形分全体に対する金属ナノ粒子(A)の固形分濃度(又は金属コロイド粒子における金属ナノ粒子(A)の濃度)は、例えば、50質量%以上(例えば、55〜99.5質量%)、好ましくは60質量%以上(例えば、70〜99質量%)、さらに好ましくは80質量%以上(例えば、85〜98.5質量%)、通常90〜99質量%程度であってもよい。
[電極形成用組成物の製造方法]
本発明の電極形成用組成物において、金属コロイド粒子は、慣用の方法、例えば、前記金属ナノ粒子(A)に対応する金属化合物を、保護コロイド(B)(および必要に応じて前記他の保護コロイド)および還元剤の存在下、溶媒中で還元することにより調製できる。
前記金属ナノ粒子(A)に対応する金属化合物は、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物、金属酸塩[金属無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩などのオキソ酸塩など)、金属有機酸塩(酢酸塩など)など]などであってもよい。なお、金属塩の形態は、単塩、複塩又は錯塩のいずれであってもよく、多量体(例えば、2量体)などであってもよい。これらの金属化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属化合物のうち、金属ハロゲン化物、金属酸塩[金属無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩などのオキソ酸塩など)、金属有機酸塩(酢酸塩など)など]などを使用する場合が多い。なお、これらの金属化合物は、溶媒に溶解又は分散させて(例えば、水溶液などの水系溶媒の溶液の形態で)用いてもよい。
還元剤としては、慣用の成分、例えば、水素化ホウ素ナトリウム類(水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素ナトリウムなど)、水素化アルミニウムリチウム、次亜リン酸又はその塩(ナトリウム塩など)、ボラン類(ジボラン、ジメチルアミンボランなど)、ヒドラジン、ホルマリン、アミン類、アルコール類(前記例示のアルコール類、例えば、エチレングリコールなど)、フェノール性水酸基を有するカルボン酸(例えば、タンニン酸)などが例示できる。
アミン類としては、脂肪族アミン類(例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N',N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンなどのアルカンアミン;トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのポリアルキレンポリアミンなど)、脂環式アミン類(例えば、ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリンなど)、芳香族アミン類(例えば、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジンなど)、芳香脂肪族アミン類(例えば、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルキシリレンジアミンなどのアラルキルアミン)、アルコールアミン類[特にアルカノールアミン類、例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール(2−(ジメチルアミノ)エタノール)、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノールなどのC2−10アルカノールアミン、好ましくはC2−6アルカノールアミン]が挙げることができる。
これらのうち、水素化ホウ素ナトリウム、第3級アミン(例えば、2−(ジメチルアミノ)エタノール、N−メチルジエタノールアミンなどの第3級アルカノールアミン)、エチレングリコール、タンニン酸などを好適に使用できる。また、安全性などの点で、アミン類、特に、アルカノールアミン類などのアルコールアミン類が好ましい。アルカノールアミン類は、通常、水溶性である場合が多く、水又は水系溶媒を溶媒とする場合には、好適である。
これらの還元剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
還元剤の使用量は、金属原子換算で前記金属化合物1当量(又は1モル)に対して、1〜30モル(例えば、1.2〜20モル)、好ましくは1.5〜15モル、さらに好ましくは2〜10モル程度であってもよく、通常1〜5モル程度であってもよい。
還元反応は、慣用の方法、例えば、温度10〜75℃(例えば、15〜50℃、好ましくは20〜35℃)程度で行うことができる。反応系の雰囲気は、空気、不活性ガス(窒素ガスなど)であってもよく、還元性ガス(水素ガスなど)を含む雰囲気であってもよい。また、反応は、通常、攪拌下(又は攪拌しながら)で行ってもよい。
なお、反応溶媒は、前記と同様の溶媒(例えば、水など)を使用できる。反応溶媒は、前記ペーストを構成する前記溶媒を用いてもよく、前記ペーストを構成する溶媒とは異なる溶媒を用いてもよい。具体的には、反応溶媒は、保護コロイドの種類に応じて、前記極性溶媒及び疎水性溶媒の中から選択でき、通常、保護コロイドが水溶性化合物である場合には、水などの極性溶媒を用いることが多い。極性溶媒は反応系に添加される成分、例えば、還元剤などの溶媒に由来してもよい。一方、保護コロイドが非水溶性化合物である場合には、脂肪族炭化水素類(トリメチルペンタンなど)などの疎水性溶媒を用いることが多く、必要により、疎水性溶媒と極性溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、ジメチルアセトアミドなどのアミド類など)との混合溶媒を用いてもよい。
また、これらの反応溶媒のうち、環境保全性及び簡便性などの観点から、少なくとも水を含む極性溶媒であってもよい。さらに、用途に応じて、溶媒の蒸発を抑制するなどの点から、水にアルコール類(特に、エチレングリコールやグリセリンなどの脂肪族多価アルコール)を組み合わせてもよい。アルコール類の割合は、水100質量部に対して、例えば、0.1〜50質量部、好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは3〜20質量部(特に5〜15質量部)程度であってもよい。
反応溶媒中の前記金属化合物の濃度は、金属の質量換算で、例えば、5質量%以上(例えば、6〜50質量%)、好ましくは8質量%以上(例えば、9〜40質量%)、さらに好ましくは10質量%以上(例えば、12〜30質量%)、通常5〜30質量%程度の高濃度であってもよい。本発明では、このような高濃度で反応させても、粗大粒子の生成をおさえつつ効率よく金属ナノ粒子を得ることができる。
なお、反応溶媒の種類などに応じて反応系のpHを調製してもよい。
pH調整は、慣用の方法、例えば、酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸などの有機酸)、アルカリ[水酸化ナトリウム、アンモニアなどの無機塩基、アミン類(例えば、アルキルアミン、アルカノールアミンなどの第三級アミン類などの有機塩基)などの塩基類]を用いて行うことができる。
還元反応の終了後、反応混合液を濃縮し、慣用の方法(例えば、遠心分離、メンブレンフィルタ、限外ろ過などのろ過処理など)で精製することにより、溶媒に対して分散性を有する金属コロイド粒子を調製することができる。なお、本発明では、前記特定の組み合わせにより保護コロイドを構成するので、前記のように、比較的少ない量の保護コロイドであっても、粗大粒子の少ない金属ナノ粒子とすることができ、精製しなくても金属コロイド粒子を調製できる。また、得られた金属コロイド粒子及び溶媒を含む分散液をそのまま又は濃縮して前記ペーストとしてもよく、得られた金属コロイド粒子及び溶媒を含む分散液から反応に使用した溶媒を除去し、新たな異種の溶媒(必要により他の添加剤)を加えて新たにペーストを調製してもよい。また、ペーストに、さらに新たな同種又は異種の溶媒や添加剤を加えてもよい。
[導電性基材の製造方法及び導電性基材]
前記製造方法で得られた電極形成用組成物は、導電性基材の製造方法に用いられる。本発明の導電性基材は、基材と、前記基材の表面に成形された透明電極膜と、前記透明電極膜の表面に形成された金属膜から構成され、金属膜は電極形成用組成物を焼結して得られる。
基材としては、ガラス、有機高分子フィルム、あるいはシリカ薄膜が形成された有機高分子フィルムなどが挙げられる。
透明電極膜としては、基材の表面にスパッタ法により形成される平滑な面を有し、特にテキスチャ構造を設けてアンカー効果による密着を高める必要はない。透明導電膜の材質としては、酸化インジウム系、酸化スズ系、酸化亜鉛系が挙げられる。酸化インジウム系としては、酸化インジウム、ITO、IZOがあり、酸化錫系としては、ネサ(酸化錫SnO2)、ATO、FTO(フッ素ドープ酸化錫)があり、酸化亜鉛系としては、酸化亜鉛、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、ガリウムドープ酸化亜鉛がある。好ましくは、ITO、FTOが使用される。透明電極膜の厚みは10〜500nmである。
電極形成用組成物は透明電極膜の上に塗布されるが、その方法としては、特に限定されず、慣用の方法、例えば、コーターを用いる方法、スプレーコーティング、ディッピング、スクリーン印刷などが利用できる。
電極形成用組成物を焼結するための焼成温度は、例えば、150〜400℃、好ましくは200〜350℃、さらに好ましくは250〜300℃(特に280〜300℃)程度であってもよい。
焼成処理時間は、焼成温度などに応じて、例えば、1分〜60分、好ましくは20分〜40分、さらに好ましくは30分〜40分であってもよい。
焼成後の電極形成用組成物の金属膜の厚みは、用途に応じて、1〜20μm程度の範囲から適宜選択できるが、例えば、5〜15μm、好ましくは5〜10μm程度である。本発明の場合、金属膜の厚みが5μm以上になっても透明電極膜との高い密着性を維持し、また高い導電性を有する。
本発明の電極形成用組成物は、基材と、前記基材の表面に成形された透明電極膜と、前記透明電極膜の表面に形成された金属膜から構成された導電性基材の金属膜を成形する材料に使用され、また得られた導電性基材は太陽電池やディスプレーの構成部材に使用される。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
(金属コロイド粒子の合成)
硝酸銀66.8g、カルボキシル基を有する有機化合物(B1)として酢酸(和光純薬工業(株)製、沸点118℃、炭素数2)10g、および高分子分散剤(B2)としてポリアクリル酸(和光純薬工業(株)製、重合度5000、酸価780mgKOH/g)3.0gを、イオン交換水1000gに投入し、激しく撹拌した。これに還元剤として2−ジメチルアミノエタノール(和光純薬工業(株)製)100gを加えたのち、70℃で2時間加熱撹拌した。この反応物を高速遠心分離器(Kokusan製、H−200 SERIES)を用い、7000rpm、1時間遠心分離し、銀ナノ粒子が保護コロイドにより保護された銀コロイド粒子(一次粒子径1〜100nm、個数平均粒子径20nm)が凝集した沈殿物を回収した。
(導電性基材の製造方法)
得られた銀コロイド粒子に、分散媒としてエチレングリコール(極性パラメータ6.9)を加えて銀濃度80重量%の電極形成用組成物(ペースト)を作製した。このペーストを、ITOで被覆されたアルカリガラス(10×10cm)の表面にアプリケータを用いて約2cm角に塗布した後、300℃で30分間焼成した。形成された金属膜の膜厚、比抵抗、剥離試験、そして鉛筆硬度を測定した。
(膜厚の測定)
導電性基材の金属膜を走査型電子顕微鏡により膜厚を測定した。その結果、膜厚は10μmであった。
(比抵抗の測定)
四深針法により金属膜の表面抵抗を測定し、走査型電子顕微鏡により膜厚を測定し、それぞれ測定した表面抵抗と膜厚とから計算によって比抵抗を測定した。その結果は、2.2μΩ・cmであった。
(剥離試験の方法)
JIS K5600−5−6に準じて金属膜の剥離を評価した。金属膜を基盤目に10個×10個の計100個のマスでクロスカットし、テープ剥離試験を行って剥がれ程度を観測した。その結果、100個中全てが剥がれず、金属膜は導電性基材に付着しており、剥離分離では「0」であった。
(硬度の測定)
JIS K5600−5−4に準じて金属膜の硬度を評価した。その結果、金属膜の鉛筆硬度は7H以上であった。
実施例2
実施例1で得られた銀コロイド粒子に、エチレングリコールを加えて作製した銀濃度80重量%の電極形成用組成物(ペースト)を作製した。このペーストを、FTOで被覆されたアルカリガラス(10×10cm)の表面にアプリケータを用いて約2cm角に塗布した後、300℃で30分間焼成した。形成された金属膜の膜厚は10μm、比抵抗は2.2μΩ・cm、剥離試験では剥離が認められず、剥離分類で「0」であり、鉛筆硬度は7H以上であった。
比較例1
(金属コロイド粒子の合成)
硝酸銀2.5g、n−オクチルアミン4.9g、プロピオン酸2.0gをトリメチルペンタン1リットルに加え、混合攪拌して溶解した。この混合溶液に0.03モル/リットルの水素化ホウ素ナトリウムを含むプロパノール溶液1リットルを1時間かけて滴下し、銀を還元した。さらに、3時間攪拌して黒色の液体を得た。得られた黒色の液体をエバポレータによって濃縮した後、これにメタノール2リットルを加えて褐色の沈殿物を生成させた後、吸引ろ過により沈殿物を回収した。生成した沈殿物をトリメチルペンタンに再分散させ、ろ過した後、乾燥させて、銀コロイド粒子を黒色の固体として得た。動的光散乱粒径測定(DLS:Malvern Instrument社製:Zetasizer Nano)によれば、保護コロイドを含む粒子径の分布は3.5〜15nmであった。
上記の方法で得られた銀コロイド粒子に2−エチルヘキサノールを加えて作製した銀濃度74重量%のペーストを、ITOで被覆されたアルカリガラス(10×10cm)の表面にアプリケータを用いて約2cm角に塗布した後、300℃で30分間焼成した。形成された金属膜の膜厚は5μm、比抵抗は5.5μΩ・cm、剥離試験では全て剥離し、剥離分類で「5」であった。
比較例2
比較例1で作製したペーストにポリピニルピロリドン(PVP)が1重量%になるように添加したペーストを作製した。このペーストをITOで被覆されたアルカリガラス(10×10cm)の表面にアプリケータを用いて約2cm角に塗布した後、200℃で30分間焼成した。形成された金属膜の膜厚は10μm、比抵抗を測定したところ抵抗値が高く導通がとれなかった。また、剥離試験では30%以上の剥離が確認され、剥離分類では「3」であった。
比較例3
比較例2で作製したペーストを、ITOで被覆されたアルカリガラス(10×10cm)の表面にアプリケータを用いて約2cm角に塗布した後、300℃で30分間焼成した。形成された金属膜の膜厚は6μm、比抵抗は3.7μΩ・cm、剥離試験では全て剥離し、剥離分類では「5」であった。

Claims (7)

  1. 金属コロイド粒子、及びこの金属コロイド粒子の分散媒を含むペーストで構成された電極形成用組成物であって、前記金属コロイド粒子が、金属ナノ粒子(A)と、この金属ナノ粒子(A)を被覆する保護コロイド(B)とで構成され、かつ前記保護コロイド(B)が、カルボキシル基を有する有機化合物(B1)と、高分子分散剤(B2)とで構成されている電極形成用組成物。
  2. 金属ナノ粒子(A)を構成する金属が、少なくとも貴金属を含む金属であり、有機化合物(B1)が、C1−16脂肪族カルボン酸及び脂肪族ヒドロキシカルボン酸から選択された少なくとも1種であり、かつ高分子分散剤(B2)が、遊離のカルボキシル基を有する請求項1記載の電極形成用組成物。
  3. 有機化合物(B1)が、C1−6脂肪族カルボン酸である請求項1又は2記載の電極形成用組成物。
  4. 基材と、前記基材の表面に成形された透明電極膜と、前記透明電極膜の表面に形成された金属膜から構成された導電性基材の製造方法であり、前記金属膜が請求項1〜3のいずれかに記載の電極形成用組成物を焼結して得られたことを特徴とする導電性基材の製造方法。
  5. 前記金属膜が銀からなる請求項4記載の導電性基材の製造方法。
  6. 前記透明電極膜がITO,FTOから選ばれた少なくとも1種の金属酸化物である請求項4もしくは5記載の導電性基材の製造方法。
  7. 請求項4〜6のいずれかの方法により得られた導電性基材。
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