JP7333056B2 - 接合用組成物、接合体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
フラックス剤は、はんだ表面や接合させる金属表面の酸化膜を除去し、金属表面に対するはんだの濡れ広がり性を向上するなどの効果がある。
特許文献1には、所定の温度で剥離するべく予め設計された被覆材により被覆された低温焼結性を有する金属ナノ粒子と、当該剥離温度より低温の融点を有するはんだ粒子及び当該融点より低温で揮散するペースト化剤の三成分で構成された接合剤用組成物が開示されている。特許文献1によれば、はんだが融解した後に焼結現象が起きる加熱条件の下で溶融接合を行なうことにより基板へ強固に接着するとされている。特許文献1ではアルコールを被覆した銀ナノ粒子と、錫-ビスマス系はんだ粒子とを組み合わせた導電性接合材が開示されている。
特許文献2によれば化学量論的に計算された特定の配合比の場合のみ高い耐熱性能を持つとされている。
銀ナノ粒子(A)と、
スズを含むはんだ粒子(B)と、
溶媒(C)と、を含有する組成物であって、
当該組成物中の銀の質量(a)と、スズの質量(b)が下記式(1)を満たす。
{a/(a+b)}×100 ≦ 40 :式(1)
前記接合層が、前記接合用組成物の焼結体を含む。
前記第1被接合部材の接合面と、前記第2被接合部材との間に、前記本発明に係る接合用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を加熱して焼結体を形成する工程と、を有する。
本実施形態の接合用組成物(以下、本接合用組成物ということがある)は、銀ナノ粒子(A)と、スズを含むはんだ粒子(B)と、溶媒(C)と、を含有する組成物であって、当該組成物中の銀の質量(a)と、スズの質量(b)が下記式(1)を満たす。
{a/(a+b)}×100 ≦ 40 :式(1)
銀ナノ粒子と、スズを含むはんだ粒子とを含有する組成物を加熱すると、まず、銀ナノ粒子の一部が融解して焼結体を形成し始める。はんだ粒子は融解すると当該銀焼結体表面に濡れ広がりながら、当該銀焼結体が有するボイド(細孔)内を充填するというプロセスを経ていると推定される。そのため銀とスズとの合金化も銀焼結体表面付近でのみ起こり、焼結体内部の銀の合金化は進行しないものと予測された。
本発明はこのような知見に基づいて、銀に対するスズの配合割合を高めることにより完成したものである。銀とスズとを上記式(1)を満たすように配合することにより銀焼結体の細孔内をスズが充填し空隙の少ない接合層が得られる。また、銀ナノ粒子の割合が低いため銀焼結体内部に配置される銀の割合が相対的に低くなり、合金化する銀の割合が高まる結果、接合層自体の強度が高まるものと推定される。
本接合用組成物において、銀ナノ粒子(A)は低温焼結性を有するものの中から適宜選択して用いる。銀ナノ粒子(A)を用いることで、はんだ粒子が有するスズとスズ銀合金を形成して接合強度が向上する。
銀ナノ粒子(A)の形状は、真球を含む略球状、板状、棒状などいずれの形状であってもよいが、略球状が好ましい。
脂肪酸及び脂肪族アルデヒドの炭素数は、分散性の点から、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上が更に好ましい。また、加熱時の脱離性及び、はんだ粒子への作用の点から、脂肪酸及び脂肪族アルデヒドの炭素数は24以下が好ましく、16以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
好ましい脂肪酸の具体例としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。また、好ましい脂肪族アルデヒドの具体例としては、ブタナール、ヘキサナール、オクチナール、ノナナール、デカナール、ウンデシルアルデヒド、オクタデシルアルデヒド、ヘキサデセニルアルデヒドが挙げられる。脂肪酸等は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本接合用組成物において、はんだ粒子は、スズ(Sn)を含むはんだ粒子(B)を用いる。当該はんだ粒子(B)を用いることにより、前記銀ナノ粒子(A)との組合せにより、焼結時にスズ銀合金が形成されるため、得られる接合層の機械強度が向上する。
はんだ粒子(B)としては、スズ(Sn)を含み、更に、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、銅(Cu)、インジウム(In)、銀(Ag)等の元素を含む合金が挙げられ、不可避的に混入する他の元素を含有してもよい。はんだの具体例としては、Sn-Pb系、Pb-Sn-Sb系、Sn-Sb系、Sn-Pb-Bi系、Sn-Bi系、Sn-Zn-Bi系、Sn-Zn系、Sn-Cu系、Sn-Pb-Cu系、Sn-In系、Sn-Ag系、Sn-Pb-Ag系、Pb-Ag系はんだ等が挙げられる。本実施形態においてはんだ粒子は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
はんだ粒子は所望の金属を公知の方法により混合して製造してもよく、また、はんだ粒子の市販品を用いてもよい。
前記はんだ粒子としてSn-Bi系はんだ、Sn-Zn-Bi系はんだ、又はSn-Zn系はんだを用いた場合は、はんだ粒子の融点は、例えば135~200℃の範囲内である。なおはんだ粒子の融点は、熱重量示唆熱(TG-DTA)測定により得られた吸熱ピーク温度から求めることができる。
本接合用組成物において、銀ナノ粒子(A)と、スズを含むはんだ粒子(B)との比率は、成物中の銀の質量(a)と、スズの質量(b)が下記式(1)を満たすように調製する。
{a/(a+b)}×100 ≦ 40 :式(1)
本接合用組成物において溶媒(C)は、上記各成分を溶解乃至分散可能な溶媒の中から塗膜形成方法(印刷方法)などに応じて適宜選択できる。溶媒は1種単独であっても2種以上を組み合わせた混合溶媒であってもよい。溶媒としては、中でも、脂肪族アミン系溶媒、脂肪族アルコール系溶媒、脂肪族アミノアルコール系溶媒、テルピンアセテート系溶媒、脂肪族アルカン系溶媒、カルビトール系溶媒や、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(KHネオケム株式会社製、キョーワノールM)などが挙げられる。
脂肪族アミノアルコール系溶媒としては、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、オクタノールアミン、デカノールアミン、ドデカノールアミン、オレイルアルコールアミン等が挙げられる。
脂肪族アルコール系溶媒としては、例えば、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。
テルピンアセテート系溶媒としては、例えば、1,8-テルピン-1-アセテート、1,8-テルピン-8-アセテート、1,8-テルピン-1,8-ジアセテート等が挙げられる。
脂肪族アルカン系溶媒としては、例えば、オクタン、デカン、ドデカン、流動パラフィン等が挙げられる。
また、カルビトール系溶媒としては、例えば、ブチルカルビトール、ヘキシルカルビトール、デシルカルビトール等が挙げられる。
低沸点溶媒の含有割合は、溶媒全量を100質量%として、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20%以下が更に好ましい。
本接合用組成物は、必要に応じてさらに他の成分を含有してもよい。他の成分としては、フラックス剤、還元剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤等が挙げられる。
フラックス剤等(C)は1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、たとえば、フラックス剤と還元剤とを組み合わせて用いてもよい。
ゲル化剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィンが挙げられ、これらは前記流動パラフィンをゲル化できる。中でもポリエチレンが好ましい。ポリオレフィンの重量平均分子量は、例えば、10,000以上のものの中から適宜選択することができ、10,000~5,000,000が好ましく、20,000~3,000,000がより好ましい。接合用組成物をゲル化することにより、塗膜のパターン形状を保持することができる。
流動パラフィンとゲル化剤との配合比率は、パターン保持性を向上する観点点から、流動パラフィンとゲル化剤の合計100質量%に対し、ゲル化剤が0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上12質量%以下が更に好ましい。
本発明の接合体(以下、本接合体ということがある)は、第1被接合部材と、第2被接合部材とが、接合層を介して接合された接合体であって、前記接合層が前記本接合用組成物の焼結体を含む。
本接合体は、2つの被接合部材を前記本接合用組成物により接合しているため、接合共同に優れている。
まず、接合対象となる第1被接合部材と、第2被接合部材とを準備する。被接合部材は接合体の用途に応じて適宜選択すればよい。被接合部材の接合面の材質は、焼結温度に対する耐熱性があればよく、例えば、金、銅等の金属類、シリコン、無機系セラミックスなどが挙げられる。
またスクリーン印刷は、所定の開口部を有するスクリーンに接合用組成物を塗布し、前記第1被接合部材上に前記スクリーンを配置し、スキージを用いて第1被接合部材にスクリーンを押し付けることで接合用組成物を所定パターンに転写する方法である。
接合用組成物の塗膜の膜厚は、例えば、1~100μmの範囲で適宜調整すればよく、2~80μmが好ましい。
なお第1被接合部材と第2被接合部材は、製造する接合体の用途に応じて適宜選択すればよい。被接合部材の接合面の材質は、焼結温度に対する耐熱性があればよく、例えば、金、銅等の金属類、シリコン、無機系セラミックスなどが挙げられる。
特開2017-179403号を参考に、銀粒子の表面にウンデカン酸が被覆密度2.5~5.2nm2で被覆した銀ナノ粒子Ag1を得た。平均一次粒径は65nmであった。
前記銀ナノ粒子Ag1を0.588質量部、SnBi合金粒子(三井金属鉱業製、ST-3, Sn:Bi=42:58(モル比), 粒子径約3μm)9.5質量部、テルソルブTHA-70(日本テルペン化学株式会社製、溶媒、沸点223℃)0.3質量部、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(KHネオケム株式会社製、キョーワノールM、溶媒)0.397質量部、エスリームC-2093I(日油社製、酸性分散剤)を混合して、実施例1の接合用組成物を得た。なお、実施例1の接合用組成物中の銀とスズの合計に対する銀の割合は11wt%(12mol%)であった。
実施例1において各成分の配合比率を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2~4の接合用組成物を得た。
実施例1において各成分の配合比率を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1~2の接合用組成物を得た。
実施例及び比較例で得られた各接合用組成物を、各々メタルマスクを用いてガラス基板上に印刷し、175℃で1時間加熱し仮固定した。次いで、仮固定した接合用組成物上に金メッキされたセラミックス基板を乗せて、0.7MPaの荷重下で175℃1分間加熱し、更に250℃で1時間加熱して積層体を得た。
また、実施例1及び比較例1の接合体をエポキシ樹脂でモールドした後、研磨をし、その断面を、走査型電子顕微鏡により観察した。結果を図2に示す。
図1は、上記せん断強度評価結果を示すグラフである。図1中の1~4はこの順番に実施例1~4に対応する。また図1中の5,6はこの順番に比較例1,2に対応する。横軸は質量比である。
銀の質量(a)と、スズの質量(b)が前記式(1)を満たす実施例1~4の接合用組成物により形成された接合層は、当該式(1)を満たさない比較例1~2の組成物に対し、せん断強度が格段に優れている。また、せん断時の状態を確認したところ、実施例3~4及び比較例1~2の接合層は凝集破壊によるせん断であったのに対し、実施例1~2の接合層は凝集破壊されず、接合界面の剥離によるせん断であった。このことは実施例1~2の接合層が特に機械強度に優れていることを示している。
Claims (3)
- 銀ナノ粒子(A)と、
スズを含むはんだ粒子(B)と、
溶媒(C)と、を含有する組成物であって、
前記銀ナノ粒子(A)が、表面に脂肪酸及び脂肪族アルデヒドより選択される1種以上が被覆した被覆層を有し、
前記溶媒(C)が、沸点が200℃以上400℃以下の溶媒を含み、
当該組成物中の銀の質量(a)と、スズの質量(b)が下記式(1)を満たす、接合用組成物。
{a/(a+b)}×100 ≦ 40 :式(1) - 第1被接合部材と、第2被接合部材とが、接合層を介して接合された接合体であって、
前記接合層が、請求項1に記載の接合用組成物の焼結体を含む、
接合体。 - 第1被接合部材と、第2被接合部材とが、接合層を介して接合された接合体の製造方法であって、
前記第1被接合部材の接合面と、前記第2被接合部材との間に、請求項1に記載の接合用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を加熱して焼結体を形成する工程と、を有する、
接合体の製造方法。
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