JP2017177122A - 高温Pbフリーはんだペースト及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ICチップ、ペルチェ素子、パワー半導体素子などの電子部品と基板との接合に十分な強度を有し、かつはんだ合金粉末の溶け残りが少なく、優れた濡れ性を持つBi系合金を用いた高温用Pbフリーはんだペースト及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 はんだ合金粉末と、フラックスと、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩と、から構成されるはんだペーストにおいて、はんだペーストの合計100質量%に対して、フラックスを5.0質量%以上20.0質量%以下含有し、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩を0.01質量%以上10.0質量%以下含有し、残部のはんだ合金粉末がBiはんだ合金粉末からなる。
【選択図】なし
【解決手段】 はんだ合金粉末と、フラックスと、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩と、から構成されるはんだペーストにおいて、はんだペーストの合計100質量%に対して、フラックスを5.0質量%以上20.0質量%以下含有し、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩を0.01質量%以上10.0質量%以下含有し、残部のはんだ合金粉末がBiはんだ合金粉末からなる。
【選択図】なし
Description
本発明は、IC、ペルチェ素子、パワー半導体素子等の電子部品を基板に接合する際に用いられるはんだペーストに関し、具体的には接合後の接合体を比較的高温の使用環境下で使用することができ、接合時においてフラックスの溶け残りが少ないことや濡れ性が優れた、Pbを含有せず、Biを主成分とする高温用Pbフリーはんだペースト及びその製造方法に関する。
はんだペーストは様々な半導体装置において半導体素子や電子部品を基板等に接合するために使用される。例えば、プリント基板印刷用のはんだペーストは、基板に塗布・印刷され、電子部品を搭載した後、リフロー炉ではんだ合金粉末を加熱・溶融させて部品等を基板上に実装するリフローはんだ付けに用いられる。はんだペーストの典型的な例としては、はんだ合金粉末をロジン、活性剤、有機溶剤などの成分からなるフラックスと混合した材料であり、基板上に塗布あるいは印刷して使われる。
はんだ合金材料は古くからPbが主成分として使われ続けてきたが、Pbは環境に有害な物質であるので、例えば廃棄された電子機器から溶け出したPbが、地下水等を経由して人体に悪い影響を及ぼすことが懸念され、すでにRoHS指令などで規制対象物質となっている。このため、Pbを含まない、はんだ(Pbフリーはんだ)の開発が盛んに行われている。最近ではPbフリーはんだ合金として、組成がSn−3.0Ag−0.5Cuで表されるAgを3.0質量%、Cuを0.5質量%含んだSn−Ag−Cu系の合金が広く実用化されている。しかし、上記のSn−Ag−Cu系のはんだ合金は、中温用(約230℃)のもので、高温用(約260℃〜400℃)のPbフリー化に関しては、様々な機関で開発が行われているが、まだ実用化されていない。
例えば、特許文献1には、実質的に固相線温度が260℃以上の高温用として使用できるZnを0.4質量%以上13.5質量%以下、Cuを0.01質量%以上2.0質量%以下及び/またはAlを0.03質量%以上0.7質量%以下含有し、残部がBiからなるはんだ合金粉末とロジンを主成分とするフラックスを混合してなるはんだペーストが開示されている。
また、還元性の強い元素が含まれるはんだ合金粉末とフラックスの反応を抑える方法に対し、例えば、特許文献2には、リフロー時はんだペーストの不具合を防止するために、はんだ合金粉体の製造方法として、はんだ合金粉体の表面に、有機酸と有機溶剤よりなる処理液の薄膜を被覆し、その後、有機溶剤を加熱乾燥または自然乾燥による蒸発させるはんだ合金粉体の製造方法が開示されている。
さらに、特許文献3には、フラックス中の活性成分と合金成分との反応を抑制するために、Sn−Zn合金、さらにBi等を含むはんだ合金粉末の表面にステアリン酸銅等の有機酸塩の飽和した溶液を連続的に落下するはんだ合金粉末に吹き付けるまたはこの溶液中にはんだ合金粉末を浸漬させることにより、はんだ合金粉末の表面を被覆する製造方法が開示されている。
上述のように、Bi系高温用Pbフリーはんだペーストに関しては、様々な機関で開発されているものの、未だ実用化の面で十分に満足できる特性を有するはんだ材料は量産化されてないのが実情である。
例えば、特許文献1に開示されているBi系はんだペーストは、固相線温度が260℃以上で高温用として使用できるBi系はんだ合金を金属成分として用いることにより、Bi系はんだ特有の課題である脆弱な機械的特性、濡れ性を解決している。また、基板の接合表面にめっき層などによりNiが存在する場合に、Bi系はんだ合金中へNiが拡散することにより脆弱なBi−Ni合金相を形成するといった問題は解決できる。しかしながら、リフロー中に酸素の量が多くなった場合、試料をリフロー炉で加熱する時、加熱時間が長い程はんだ母層中のBiが酸化され、チップや電子部品の接合界面と反応できる前に、はんだ層の酸化膜が先に生成されて、界面での接合を妨害する場合がある。
また、はんだペーストを製作する際、還元性の強いZnやAlをはんだ合金に含むため、保管中にZnやAlがフラックス中の活性剤と反応し、ペーストの粘度が変化し、基板への印刷性や、はんだ合金粉末の濡れ性が極端に劣化し、印刷不良、濡れ不良を生じる問題が起きる場合もある。このように、リフロー炉で電子部品を接合する際、はんだ合金の酸化膜やZn、Alの反応生成物が接合界面に存在することにより、接合性が低下するおそれがある。
また、はんだペーストを製作する際、還元性の強いZnやAlをはんだ合金に含むため、保管中にZnやAlがフラックス中の活性剤と反応し、ペーストの粘度が変化し、基板への印刷性や、はんだ合金粉末の濡れ性が極端に劣化し、印刷不良、濡れ不良を生じる問題が起きる場合もある。このように、リフロー炉で電子部品を接合する際、はんだ合金の酸化膜やZn、Alの反応生成物が接合界面に存在することにより、接合性が低下するおそれがある。
また、特許文献2には、はんだ合金粉末の表面に有機酸と有機溶剤よりなる処理液の薄膜を被覆し、その後、有機溶剤を加熱乾燥または自然乾燥により蒸発させるはんだ合金粉体の製造方法であって、有機酸をステアリン酸とし、リフロー法ではんだペーストの濡れ性確保及びはんだボールの発生を防止するはんだ合金粉体の製造方法の実施例が開示されている。しかしながら、有機酸とはんだ合金の組合せにより密着挙動は異なるため、実施例のないステアリン酸以外の有機酸の挙動は推測が困難であり、かつ、Bi系合金のように高温用として実用化されていない合金に対する効果は容易に推測できない。
また、特許文献3には、Sn−Znはんだ合金粉末を主に含むはんだペーストに対して、はんだ粉末表面に有機酸塩を付着させることで、フラックス中の活性成分と合金成分との反応を抑制できるとの記載がある。ステアリン酸銅等の有機酸塩の飽和した溶液はSn−Zn合金に付着しやすく、Sn−Zn系はんだ合金の様に融点が199℃と低いはんだ合金に用いる場合は、リフロー中にステアリン酸銅等の有機酸塩が失活することなく、濡れ性が向上する効果があるとされている。しかし、Bi−Zn系はんだ合金のように融点が高いはんだ合金に用いた場合もリフロー中の効果が発揮できるかは推測できず、また、Bi系合金のように高温用として実用化されていない合金に対する効果は付着のしやすさも含め容易に推測することはできない。
さらに、上述の方法に対し、はんだ合金粉末もしくは活性剤をコーティングする方法は、ペースト作製時における作業の煩雑さ並びに製造コストの増加や、ペースト中での還元性の異なる様々なはんだ合金粉末や活性剤の凝集による濃度の不均一化が懸念される。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、電子部品等と基板との接合に十分な強度を有し、実質的に固相線温度が約260℃以上であり、また接合時において、良好な塗布・印刷性を持ち、はんだ合金粉末の溶け残りが発生せず、濡れ性に優れるPbフリーBi系はんだペースト及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明者は鋭意研究を重ねた結果、はんだ合金粉末と、フラックスと、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩と、から構成されるはんだペーストにおいて、はんだペーストの合計100質量%に対して、フラックスを5.0質量%以上20.0質量%以下含有し、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩を0.01質量%以上10.0質量%以下含有し、はんだ合金粉末としてBi合金はんだ合金粉末を用いることにより、高温用として好適な融点を有し、かつボイドが発生しづらく、濡れ性や接合信頼性に優れるはんだペーストが得られることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明による高温用Pbフリーはんだペーストは、はんだ合金粉末と、フラックスと、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩と、から構成されるはんだペーストにおいて、はんだペーストの合計100質量%に対して、フラックスを5.0質量%以上20.0質量%以下含有し、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩を0.01質量%以上10.0質量%以下含有し、残部のはんだ合金粉末がBi系はんだ合金粉末であることを特徴としている。
すなわち、本発明による高温用Pbフリーはんだペーストは、はんだ合金粉末と、フラックスと、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩と、から構成されるはんだペーストにおいて、はんだペーストの合計100質量%に対して、フラックスを5.0質量%以上20.0質量%以下含有し、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩を0.01質量%以上10.0質量%以下含有し、残部のはんだ合金粉末がBi系はんだ合金粉末であることを特徴としている。
また、本発明の高温用Pbフリーはんだペーストは、前記Biはんだ合金粉末が、AgもしくはZnを必須成分として含有し、更に、Al、Cu、Ge、Sb、Sn、およびPを含有することができ、Bi系はんだ合金粉末の合計100質量%に対し、
Agを0.1質量%以上12.0質量%以下含有し、または/及びZnを0.4質量%以上13.5質量%以下含有し、
更にAlを含有する場合は0.03質量%以上1.0質量%以下含有し、
Cuを含有する場合は0.05質量%以上2.0質量%以下含有し、
Geを含有する場合は0.01質量%以上1.0質量%以下含有し、
Sbを含有する場合は0.01質量%以上1.0質量%以下含有し、
Snを含有する場合は0.01質量%以上5.0質量%以下含有し、
Pを含有する場合は0.0005質量%以上0.5質量%以下含有
するのが好ましい。
Agを0.1質量%以上12.0質量%以下含有し、または/及びZnを0.4質量%以上13.5質量%以下含有し、
更にAlを含有する場合は0.03質量%以上1.0質量%以下含有し、
Cuを含有する場合は0.05質量%以上2.0質量%以下含有し、
Geを含有する場合は0.01質量%以上1.0質量%以下含有し、
Sbを含有する場合は0.01質量%以上1.0質量%以下含有し、
Snを含有する場合は0.01質量%以上5.0質量%以下含有し、
Pを含有する場合は0.0005質量%以上0.5質量%以下含有
するのが好ましい。
また、本発明による高温用Pbフリーはんだペーストの製造方法は、はんだ合金粉末をステアリン酸または/及びステアリン酸塩と混合した後に、その混合物をフラックスと混合することを特徴としている。
本発明によれば、従来品に比べて、電子部品等を基板との接合に十分な強度を有し、固相線温度が約260℃以上であり、また接合時において、濡れ性が優れたPbフリーBi系はんだペースト及びその製造方法が得られる。また、ステアリン酸やステアリン酸塩を固体のままBiはんだ合金粉末と一緒に混合機に入れるという手間のかからない方法で製造できるので、比較的低コストで製造することができる。
実施例の説明に先立ち、本発明の作用効果について詳細に説明する。本発明の高温用Pbフリーはんだペーストは、はんだ合金粉末と、フラックスと、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩と、から構成されるはんだペーストにおいて、はんだペーストの合計100質量%に対して、フラックスを5.0質量%以上20.0質量%以下含有し、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩を0.01質量%以上10.0質量%以下含有し、残部のはんだ合金粉末がBi系はんだ合金粉末からなる。
また、本発明の高温用Pbフリーはんだペーストの製造方法は、上記本発明のいずれかの高温用Pbフリーはんだペーストを製造する方法であって、はんだペーストを混合する際、混合の順番としてBiはんだ合金粉末をステアリン酸または/及びステアリン酸塩と混合した後にその混合物をフラックスと混合する。
以下、更に詳しく説明する。
以下、更に詳しく説明する。
<ステアリン酸または/及びステアリン酸塩>
本発明のはんだペーストにステアリン酸または/及びステアリン酸塩を含有させることは必須の条件である。
ステアリン酸やステアリン酸塩の沸点は300℃以上になるため、Bi系はんだ合金の融点まで加熱しても失活することがない。そのため、Bi系はんだ合金粉末の表面にステアリン酸または酸塩が存在すると、リフローする時に酸素が若干存在しBi系はんだ合金粉末の表面が酸化しても、その酸化膜を効率良く取り除くことができるため、濡れ性が向上する。また、Biはんだ合金粉末はステアリン酸やステアリン酸塩と親和性が非常に良いため、混合機で混和するだけでステアリン酸やステアリン酸塩をBiはんだ合金粉末の表面に塗布させることができる。このBi系はんだ合金粉末の表面酸化抑制効果は、はんだ合金粉末中に酸化しやすい元素であるZnやAlなどが添加されている際にはより効果的に発揮される。また、ZnやAlなどは酸化しやすいだけでなく、フラックス中の活性剤とも反応しやすい元素であるが、この様な元素の活性剤との反応を抑制し、反応異物の形成を抑えることができる。そのため、はんだ接合する際に、接合界面に酸化物や異物などを巻き込むことが少なく、良好な接合性を得ることができる。
また、ステアリン酸やステアリン酸塩は分散剤としての働きもあり、はんだペースト中のはんだ合金粉末を均一に分散してくれる。また、リフローする時に、はんだ金属の表面に残るフラックス残渣の移動を容易にし、フラックス残渣を端に寄せる効果もあるため、接合界面から不純物を除去する効果がより発揮され、溶融はんだ合金と電子部品の接触面積が増え、十分な接合強度を得ることができる。
本発明のはんだペーストにステアリン酸または/及びステアリン酸塩を含有させることは必須の条件である。
ステアリン酸やステアリン酸塩の沸点は300℃以上になるため、Bi系はんだ合金の融点まで加熱しても失活することがない。そのため、Bi系はんだ合金粉末の表面にステアリン酸または酸塩が存在すると、リフローする時に酸素が若干存在しBi系はんだ合金粉末の表面が酸化しても、その酸化膜を効率良く取り除くことができるため、濡れ性が向上する。また、Biはんだ合金粉末はステアリン酸やステアリン酸塩と親和性が非常に良いため、混合機で混和するだけでステアリン酸やステアリン酸塩をBiはんだ合金粉末の表面に塗布させることができる。このBi系はんだ合金粉末の表面酸化抑制効果は、はんだ合金粉末中に酸化しやすい元素であるZnやAlなどが添加されている際にはより効果的に発揮される。また、ZnやAlなどは酸化しやすいだけでなく、フラックス中の活性剤とも反応しやすい元素であるが、この様な元素の活性剤との反応を抑制し、反応異物の形成を抑えることができる。そのため、はんだ接合する際に、接合界面に酸化物や異物などを巻き込むことが少なく、良好な接合性を得ることができる。
また、ステアリン酸やステアリン酸塩は分散剤としての働きもあり、はんだペースト中のはんだ合金粉末を均一に分散してくれる。また、リフローする時に、はんだ金属の表面に残るフラックス残渣の移動を容易にし、フラックス残渣を端に寄せる効果もあるため、接合界面から不純物を除去する効果がより発揮され、溶融はんだ合金と電子部品の接触面積が増え、十分な接合強度を得ることができる。
また、ステアリン酸塩としては、還元性がZnやAlより強いアルカリ金属やアルカリ土類金属などとの金属塩は好ましくなく、ステアリン酸銅やステアリン酸亜鉛など遷移金属を含む金属塩とすることで粘度や接合性の経時変化を抑制することができ好ましい。その他、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸ビスマス、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸マンガン等を用いることが好ましい。特に塩がはんだ合金に含まれる金属と同じ金属を含むことがより好ましい。このような金属塩は、はんだ合金粉末と親和性が良く、保管中に金属塩とはんだ合金粉との反応が生じにくいため、粘度の経時変化などが生じにくくなる。例えば、Bi−Zn−Al系合金を用いる場合には、ステアリン酸亜鉛を用いるのが好ましい。
なお、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩の添加量は、0.01質量%以上10.0質量%以下である。10.0質量%を超えて添加すると、もともと還元性を持つステアリン酸または/及びステアリン酸塩が過剰にはんだペースト中に存在することにより、基板との界面において基板の金属と反応し、金属塩として析出してはんだ付け性が逆に阻害するおそれがある。0.01質量%未満では、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩の添加の効果が得られない。
<はんだ合金粉末>
本発明の高温用Pbフリーはんだペーストに用いるBiはんだ合金粉末は、AgもしくはZnを必須成分として含有し、はんだ合金粉末の総量100質量%に対し、Agを0.1質量%以上12.0質量%以下含有し、または/及びZnを0.4質量%以上13.5質量%以下含有することが好ましい。
また、更に、Al、Cu、Ge、Sb、Sn、Zn、およびPを含有することができ、前記元素を含有する場合は、Alは0.03質量%以上1.0質量%以下、Cuは0.05質量%以上2.0質量%以下、Geは0.01質量%以上1.0質量%以下、Sbは0.01質量%以上1.0質量%以下、Snは0.01質量%以上3.0質量%以下、Pは0.0005質量%以上0.5質量%以下含有するのが好ましい。
以下、本発明におけるはんだ合金粉末に使用できる元素について詳しく説明する。
本発明の高温用Pbフリーはんだペーストに用いるBiはんだ合金粉末は、AgもしくはZnを必須成分として含有し、はんだ合金粉末の総量100質量%に対し、Agを0.1質量%以上12.0質量%以下含有し、または/及びZnを0.4質量%以上13.5質量%以下含有することが好ましい。
また、更に、Al、Cu、Ge、Sb、Sn、Zn、およびPを含有することができ、前記元素を含有する場合は、Alは0.03質量%以上1.0質量%以下、Cuは0.05質量%以上2.0質量%以下、Geは0.01質量%以上1.0質量%以下、Sbは0.01質量%以上1.0質量%以下、Snは0.01質量%以上3.0質量%以下、Pは0.0005質量%以上0.5質量%以下含有するのが好ましい。
以下、本発明におけるはんだ合金粉末に使用できる元素について詳しく説明する。
<Zn>
Znは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金における主成分の一つである。Bi−Zn二元型を基本とする場合のZnの含有量は0.4質量%以上13.5質量%以下である。Bi−Zn合金はZn=2.7質量%の組成で共晶点となり共晶点温度は254℃であり、この付近の組成とすることにより結晶が微細化して柔軟性が増し接合信頼性等が向上し、はんだ合金として適した材料となる。
Znは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金における主成分の一つである。Bi−Zn二元型を基本とする場合のZnの含有量は0.4質量%以上13.5質量%以下である。Bi−Zn合金はZn=2.7質量%の組成で共晶点となり共晶点温度は254℃であり、この付近の組成とすることにより結晶が微細化して柔軟性が増し接合信頼性等が向上し、はんだ合金として適した材料となる。
さらに、ZnはNiとBiの反応を抑制する効果を有する。はんだとの接合性を高めるために、半導体素子や基板等の電子部品の接合表面にNi層が設けられている場合がある。この場合、NiとBiは非常に反応し易く、Bi−Ni金属間化合物を生成してしまう。そして、このBi−Ni金属間化合物は非常に脆いため、クラックが発生し易く、十分な接合強度を得ることができない。
Znの添加により、BiとNiの反応の抑制や、Bi系はんだ中へのNiの拡散の抑制が可能になる。Znは、BiよりもNiとの反応性が高く、Ni層の上面に薄いZn−Ni層を作り、これがバリア層となってNiの拡散を防止し、NiとBiの反応を抑えることができる。
Znの含有量が0.4質量%未満だと上記効果を得ることができない。このように優れた特性を示すZnの含有量の上限値は13.5質量%である。この値を超えると液相線温度が高くなり溶け残り部分を生じたり酸化物の生成量が多くなったりすることにより、接合信頼性が低下したり良好な濡れ広がり性が得られなくなる可能性が高くなってしまう。
Znの含有量が0.4質量%未満だと上記効果を得ることができない。このように優れた特性を示すZnの含有量の上限値は13.5質量%である。この値を超えると液相線温度が高くなり溶け残り部分を生じたり酸化物の生成量が多くなったりすることにより、接合信頼性が低下したり良好な濡れ広がり性が得られなくなる可能性が高くなってしまう。
また、ZnとAlを両方とも添加すると、これらの元素で構成される合金が部分的に電池的な作用を起し、腐食する場合がある。そのため、Zn及びAlの合計の含有量が8.0質量%を超えないようにするのが好ましい。
<Ag>
Agは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金における主成分の一つである。Bi−Ag二元型を基本とする場合のAgの含有量は0.1質量%以上12.0質量%以下である。Bi−Ag合金はAgが2.6質量%の組成で共晶点となり、共晶点温度は262℃であり、この付近の組成とすることにより結晶が微細化して柔軟性が増し接合信頼性等が向上し、はんだ合金として適した材料となる。また、Agは、はんだ合金に少量含有させることにより、各種効果を発揮する。すなわち、Agは基板等のメタライズ層に使用されることからも分かるように各種金属と合金化し易く、濡れ性向上に大きく寄与する。基板等の最上面によく使用されるCu、Niなどとは特に反応性がよく、濡れ性に優れ、高い接合強度を得ることができる。当然、半導体素子の接合面によく使用されるAgやAuなどのメタライズ層との反応性に優れることは言うまでもない。このようにAgを含有させることによって良好な接合ができ、高い接合信頼性を得ることができる。
Agの含有量が0.1質量%未満だと上記効果を得ることができない。このように優れるはんだ合金の特性向上に大きく寄与するAgの含有量の上限値は12.0質量%である。これを超えて含有させてしまうと液相線温度が高くなり過ぎて良好な接合ができず、溶け別れ現象などが発生してしまう。
Agは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金における主成分の一つである。Bi−Ag二元型を基本とする場合のAgの含有量は0.1質量%以上12.0質量%以下である。Bi−Ag合金はAgが2.6質量%の組成で共晶点となり、共晶点温度は262℃であり、この付近の組成とすることにより結晶が微細化して柔軟性が増し接合信頼性等が向上し、はんだ合金として適した材料となる。また、Agは、はんだ合金に少量含有させることにより、各種効果を発揮する。すなわち、Agは基板等のメタライズ層に使用されることからも分かるように各種金属と合金化し易く、濡れ性向上に大きく寄与する。基板等の最上面によく使用されるCu、Niなどとは特に反応性がよく、濡れ性に優れ、高い接合強度を得ることができる。当然、半導体素子の接合面によく使用されるAgやAuなどのメタライズ層との反応性に優れることは言うまでもない。このようにAgを含有させることによって良好な接合ができ、高い接合信頼性を得ることができる。
Agの含有量が0.1質量%未満だと上記効果を得ることができない。このように優れるはんだ合金の特性向上に大きく寄与するAgの含有量の上限値は12.0質量%である。これを超えて含有させてしまうと液相線温度が高くなり過ぎて良好な接合ができず、溶け別れ現象などが発生してしまう。
<Al>
Alは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Alを含有させる場合のAlの含有量は0.03質量%以上1.0質量%以下である。酸化し易いAlを含有させることによって得られる主な効果は、はんだ接合時にはんだ母相より優先的にAlが酸化することにより、生成する酸化物層が薄くなり、濡れ性を阻害する酸化物層を薄く少なく生成させることによって、濡れ性を向上させることにある。1.0質量%を超えて含有すると、Alが偏析しBiはんだ合金の加工性を阻害するため好ましくない。
また、上述したように、Znと共に添加する場合は、Zn及びAlの合計の含有量が8.0質量%を超えないようにするのが好ましい。
Alは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Alを含有させる場合のAlの含有量は0.03質量%以上1.0質量%以下である。酸化し易いAlを含有させることによって得られる主な効果は、はんだ接合時にはんだ母相より優先的にAlが酸化することにより、生成する酸化物層が薄くなり、濡れ性を阻害する酸化物層を薄く少なく生成させることによって、濡れ性を向上させることにある。1.0質量%を超えて含有すると、Alが偏析しBiはんだ合金の加工性を阻害するため好ましくない。
また、上述したように、Znと共に添加する場合は、Zn及びAlの合計の含有量が8.0質量%を超えないようにするのが好ましい。
<Cu>
Cuは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Cuを含有させる場合のCuの含有量は0.05質量%以上2.0質量%以下である。Cuを含有させることによって得られる効果は固溶強化である。Cuを少量含有させることによって強度が増し、熱応力等によってもクラックが発生、進展しづらくなり接合信頼性が向上する。2.0質量%を超えて含有すると、はんだ合金が必要以上に硬くなったり、液相線温度が高くなり過ぎてしまったりするため好ましくない。
Cuは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Cuを含有させる場合のCuの含有量は0.05質量%以上2.0質量%以下である。Cuを含有させることによって得られる効果は固溶強化である。Cuを少量含有させることによって強度が増し、熱応力等によってもクラックが発生、進展しづらくなり接合信頼性が向上する。2.0質量%を超えて含有すると、はんだ合金が必要以上に硬くなったり、液相線温度が高くなり過ぎてしまったりするため好ましくない。
<Ge>
Geは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Geを含有させる場合のGeの含有量は0.01質量%以上1.0質量%以下である。Geを含有させることによって得られる主な効果は濡れ性の向上にある。GeはBiに僅かにしか固溶せず、また比重が小さいため、はんだ接合時に溶融した状態において、溶融はんだ合金の表面に浮いてきて、はんだ合金の酸化の進行を抑制し、濡れ性を向上させる。また、Geは固溶強化の効果も有している。このように優れるGeの含有量は少量が好ましく、その上限値は1.0質量%である。これ以上含有させると半金属のGeの脆さが顕著に現れはじめてしまうので好ましくない。
Geは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Geを含有させる場合のGeの含有量は0.01質量%以上1.0質量%以下である。Geを含有させることによって得られる主な効果は濡れ性の向上にある。GeはBiに僅かにしか固溶せず、また比重が小さいため、はんだ接合時に溶融した状態において、溶融はんだ合金の表面に浮いてきて、はんだ合金の酸化の進行を抑制し、濡れ性を向上させる。また、Geは固溶強化の効果も有している。このように優れるGeの含有量は少量が好ましく、その上限値は1.0質量%である。これ以上含有させると半金属のGeの脆さが顕著に現れはじめてしまうので好ましくない。
<Sb>
Sbは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Sbを含有させる場合のSbの含有量は0.01質量%以上1.0質量%以下である。Sbを含有させることによって得られる主な効果は濡れ性向上と固溶強化にある。SbはGe同様に半金属であり、はんだ合金に含有させることによって得られる効果もGeと似ている。Sbを含有させる場合の上限値は1.0質量%である。これ以上含有させると脆くなってしまうので好ましくない。
Sbは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Sbを含有させる場合のSbの含有量は0.01質量%以上1.0質量%以下である。Sbを含有させることによって得られる主な効果は濡れ性向上と固溶強化にある。SbはGe同様に半金属であり、はんだ合金に含有させることによって得られる効果もGeと似ている。Sbを含有させる場合の上限値は1.0質量%である。これ以上含有させると脆くなってしまうので好ましくない。
<Sn>
Snは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Snを含有させる場合のSnの含有量は0.01質量%以上5.0質量%以下である。Snを含有させることによって得られる主な効果は濡れ性、接合性の向上にある。SnはCuやNiなどとの反応性に優れるため、Pb系はんだ合金などでも接合性向上を一つの目的として含有される。Bi系はんだ合金においてもPb系はんだ合金と同様であるが、Bi系はんだ合金の場合はその含有量に十分配慮する必要がある。すなわち、SnはBiと共晶組成を生成するが、その共晶点温度は139℃であり、Sn−Bi共晶組成が多く存在すると、固相線温度が低くなり過ぎてしまうので好ましくない。従って、目的に合わせて実質的にこの固相線温度が問題とならない程度の量をはんだ合金に含有させればよく、その上限が5.0質量%である。
Snは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金において、諸特性を改善するために含有してよい元素であり、Snを含有させる場合のSnの含有量は0.01質量%以上5.0質量%以下である。Snを含有させることによって得られる主な効果は濡れ性、接合性の向上にある。SnはCuやNiなどとの反応性に優れるため、Pb系はんだ合金などでも接合性向上を一つの目的として含有される。Bi系はんだ合金においてもPb系はんだ合金と同様であるが、Bi系はんだ合金の場合はその含有量に十分配慮する必要がある。すなわち、SnはBiと共晶組成を生成するが、その共晶点温度は139℃であり、Sn−Bi共晶組成が多く存在すると、固相線温度が低くなり過ぎてしまうので好ましくない。従って、目的に合わせて実質的にこの固相線温度が問題とならない程度の量をはんだ合金に含有させればよく、その上限が5.0質量%である。
<P>
Pは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金において、必要に応じて含有する元素であり、Pを含有させる場合のPの含有量は0.0005質量%以上0.5質量%以下である。Pを含有することによって、はんだ合金の濡れ性および接合性をさらに向上させることができる。この効果は、Ag、Ge、Snなどが含有されている場合においても同様に発揮される。Pは還元性が強く、接合時にはんだ表面や接合面を還元して濡れ性を向上させる。P含有量の上限値は0.5質量%である。0.5質量%を超えてPを含有させると、はんだ合金が脆くなってしまい、十分な接合信頼性を得ることは難しくなってしまうので好ましくない。
Pは本発明のPbフリーはんだペーストのはんだ合金において、必要に応じて含有する元素であり、Pを含有させる場合のPの含有量は0.0005質量%以上0.5質量%以下である。Pを含有することによって、はんだ合金の濡れ性および接合性をさらに向上させることができる。この効果は、Ag、Ge、Snなどが含有されている場合においても同様に発揮される。Pは還元性が強く、接合時にはんだ表面や接合面を還元して濡れ性を向上させる。P含有量の上限値は0.5質量%である。0.5質量%を超えてPを含有させると、はんだ合金が脆くなってしまい、十分な接合信頼性を得ることは難しくなってしまうので好ましくない。
また、はんだ合金粉末の平均粒径は、10μm〜90μmとすることが好ましい。平均粒径が小さくなればなるほど、表面積が増加し、酸化しやすくなり、接合する時にはんだ合金粉末の溶け残りが多く発生する傾向があるので10μm以上とするのが好ましい。また、電子部品の小型化が進んでいるため、接合に使用されるはんだ合金量も少なくなってきており、平均粒径が大きくなりすぎると、はんだ合金量の調整が困難となったり、分散状態による溶融時のはんだ合金量の場所によるばらつきが大きくなったりするので、90μm以下とするのが好ましい。
<フラックス>
本発明のはんだペーストに用いるフラックスに関しては特に限定がなく、例えば、樹脂系、無機塩化物系、有機ハロゲン化物系などを用いることができる。
本発明のはんだペーストに含有させるフラックスの含有量は、はんだペーストの合計100質量%に対し、5.0質量%以上20.0質量%以下である。5.0質量%未満では、はんだ合金粉末との混合で好ましいペースト状態を保つことができず、液体状態を維持できないか、液体状態であっても粘度が高くなりすぎて、はんだ接合部に適切な量のはんだペーストを精度よく供給できない場合がある。20.0質量%を超えて添加すると、リフロー時にフラックスをはんだ合金内から十分除去することができず、はんだ合金内や接合部界面にフラックス残渣を生じさせ、接合性や長期の接合信頼性を悪化させる場合がある。
フラックスの構成としては、ロジン系をベースとしたフラックスが好ましい。以下に、本発明で用いるフラックスの構成の一例について述べる。
本発明のはんだペーストに用いるフラックスに関しては特に限定がなく、例えば、樹脂系、無機塩化物系、有機ハロゲン化物系などを用いることができる。
本発明のはんだペーストに含有させるフラックスの含有量は、はんだペーストの合計100質量%に対し、5.0質量%以上20.0質量%以下である。5.0質量%未満では、はんだ合金粉末との混合で好ましいペースト状態を保つことができず、液体状態を維持できないか、液体状態であっても粘度が高くなりすぎて、はんだ接合部に適切な量のはんだペーストを精度よく供給できない場合がある。20.0質量%を超えて添加すると、リフロー時にフラックスをはんだ合金内から十分除去することができず、はんだ合金内や接合部界面にフラックス残渣を生じさせ、接合性や長期の接合信頼性を悪化させる場合がある。
フラックスの構成としては、ロジン系をベースとしたフラックスが好ましい。以下に、本発明で用いるフラックスの構成の一例について述べる。
一例にかかるフラックスは、フラックス全量を100質量%とした場合、ベース材であるロジンが20〜30質量%、活性剤が0.2〜1質量%、溶剤が70〜80質量%程度となるように配合することが好ましく、これにより良好な濡れ性および接合性を有するはんだペーストを得ることができ、またチキソ剤を含有させチキソ性を調整するとより一層使い易いはんだペーストとなり得る。
ベース材としてのロジンには、例えば、ウッドレジンロジン、ガムロジン、トール油ロジンなどの天然の未変性なロジンを使用してもよいし、ロジンエステル、水素添加ロジン、ロジン変性樹脂、重合ロジンなどの変性ロジンを使用してもよい。
ベース材としてのロジンには、例えば、ウッドレジンロジン、ガムロジン、トール油ロジンなどの天然の未変性なロジンを使用してもよいし、ロジンエステル、水素添加ロジン、ロジン変性樹脂、重合ロジンなどの変性ロジンを使用してもよい。
溶剤には、アセトン、アミルベンゼン、n−アミンアルコール、ベンゼン、四塩化炭素、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、メチルエチルケトン、トルエン、テレピン油、キシレン、シクロヘキサン、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、四塩化炭素、トリクロロエタン、アルカンジオール、アルキレングリコール、ブタジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラデカンなどを使用することができる。
活性剤には、リン酸、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、塩化第一錫、アニリン塩酸塩、ヒドラジン塩酸塩、臭化セチルピリジン、フェニルヒドラジン塩酸塩、テトラクロルナフタレン、メチルヒドラジン塩酸塩、メチルアミン塩酸塩、エチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、ブチルアミン塩酸塩、安息香酸、ステアリン酸、乳酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、ヒバシン酸、トリエタノールアミン、ジフェニルグアニジン、ジフェニルグアニジンHBr、エリトリトール、キシリトリトール、ソルボトール、リビトール、スルフォン酸エステル、ターシャリーブチルカルボン酸エステル、イソブチルカルボン酸エステル及びイソプロピルカルボン酸エステルなどを使用することができる。
またチキソ剤を含有させてチキソ性を調整するとより一層使い易いはんだペーストになり得る。例えば、チキソ剤として、ひまし油、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ステアリン酸アミド、N.N−ジステアリルアジピン酸アミド等を用いることができる。
またチキソ剤を含有させてチキソ性を調整するとより一層使い易いはんだペーストになり得る。例えば、チキソ剤として、ひまし油、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ステアリン酸アミド、N.N−ジステアリルアジピン酸アミド等を用いることができる。
これらの溶剤及び活性剤の中から目的に合った物質を選択し、それらの添加量を適宜調整することによって好適なフラックスが得られる。例えば、はんだ合金や基板等の接合面の酸化膜が強固である場合は、ロジンや活性剤を多めに添加し、溶剤で粘性や流動性を調整するのが好ましい。
<はんだペーストの製造方法>
はんだペーストを製作する時に、ステアリン酸やステアリン酸塩を、はんだ合金粉末の表面に均一に分散させるため、はんだ合金粉末とステアリン酸または/及びステアリン酸塩を混合機で混合した後にフラックスと混合する。はんだ合金粉末とステアリン酸または/及びステアリン酸塩を混合する際、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩は溶液に溶解して混合するのではなく、直接、はんだ合金粉末と、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩と、を混合するのが好ましい。溶液に溶解して塗布する場合、形成されるステアリン酸または/及びステアリン酸塩の皮膜は薄く、乾燥時に被膜が不十分な個所を生じてしまったり、最終的に乾燥する場所に多く集まってしまったりするなど膜厚のばらつきを生じることがある。ステアリン酸または/及びステアリン酸塩は、ある程度粘りのある固体であり、容易に変形させることができる。そのため、溶液に溶解することなく直接混合することにより、十分な厚みを有しながらばらつきの小さい皮膜をはんだ合金粉末表面に形成することが比較的容易にできる。
一方、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩をフラックスと同時に添加すると、フラックス中のロジンや活性剤などと反応してしまい、はんだ合金粉末表面に皮膜を形成することなく、はんだ合金表面への被覆効果が十分に得られない場合がある。
はんだペーストを製作する時に、ステアリン酸やステアリン酸塩を、はんだ合金粉末の表面に均一に分散させるため、はんだ合金粉末とステアリン酸または/及びステアリン酸塩を混合機で混合した後にフラックスと混合する。はんだ合金粉末とステアリン酸または/及びステアリン酸塩を混合する際、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩は溶液に溶解して混合するのではなく、直接、はんだ合金粉末と、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩と、を混合するのが好ましい。溶液に溶解して塗布する場合、形成されるステアリン酸または/及びステアリン酸塩の皮膜は薄く、乾燥時に被膜が不十分な個所を生じてしまったり、最終的に乾燥する場所に多く集まってしまったりするなど膜厚のばらつきを生じることがある。ステアリン酸または/及びステアリン酸塩は、ある程度粘りのある固体であり、容易に変形させることができる。そのため、溶液に溶解することなく直接混合することにより、十分な厚みを有しながらばらつきの小さい皮膜をはんだ合金粉末表面に形成することが比較的容易にできる。
一方、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩をフラックスと同時に添加すると、フラックス中のロジンや活性剤などと反応してしまい、はんだ合金粉末表面に皮膜を形成することなく、はんだ合金表面への被覆効果が十分に得られない場合がある。
このステアリン酸または/及びステアリン酸塩はBiやZnと良好な親和性があるため、はんだ合金粉末と一緒に先に混合することにより、はんだ合金粉末の表面を効果的に被覆することができ、その後、フラックスを添加して混合しても、ステアリン酸やステアリン酸塩がはんだ合金粉末の表面から剥離することはなく、フラックスと反応することは無い。その結果、はんだ合金粉末表面に形成されたステアリン酸または/及びステアリン酸塩の被膜が、はんだ合金粉末同士の凝集を防止するだけでなく、はんだ合金粉末中の酸化しやすいZnやAlなどの成分と、フラックス中のロジンや活性剤など強い還元性を持つ成分との反応を抑えることができる。そのため、はんだ接合時に、凝集粉末の空隙に起因するボイドの発生や、はんだ合金粉末の酸化物による溶け残り発生、不純物形成による粘度変化の発生などを抑制することができ、電子部品の接合性向上に特に効果を発揮する。
このように、本発明のはんだペーストは、十分な量のステアリン酸または/及びステアリン酸塩をはんだ合金粉末表面に有することにより、フラックスとの相互作用によって、はんだ接合時に、はんだ合金粉末同士の凝集に起因するボイドや、溶け残りが発生せず、かつ、はんだ合金粉末の表面酸化が防止されることにより、接合強度や接合信頼性の高い電子部品を製造することができる。また、ステアリン酸やステアリン酸塩を固体のままBiはんだ合金粉末と一緒に混合機で混合するという簡単な方法で製造できるので、製造コストの低減化の利点もある。
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
<はんだ母合金の製造>
まず、原料としてそれぞれ純度99.9質量%以上のBi、Ag、Zn、Al、Cu、Ge、Sb、SnおよびPを原料に用いた。大きな薄片やバルク状の原料については、溶解後の合金においてサンプリング場所による組成のバラツキがなく均一になるように留意しながら切断、粉砕等を行い、3mm以下の大きさに細かくした。次に、これらの原料を、表1に示す配合比率で高周波溶解炉用グラファイトるつぼに所定量を秤量して入れた。
原料の入ったるつぼを高周波溶解炉に入れ、酸化を防ぐために金属原料1kgあたり700ml/分以上の流量で窒素を流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、原料を加熱溶融させた。金属が溶融しはじめたら混合棒でよく攪拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混ぜた。十分溶融したことを確認した後、高周波電源を切り、速やかにるつぼを取り出し、るつぼ内の溶湯をはんだ母合金の鋳型に流し込んだ。このようにして、原料の混合比率を変えた以外は上記と同様にして、試料1〜26のはんだ母合金を製作した。
まず、原料としてそれぞれ純度99.9質量%以上のBi、Ag、Zn、Al、Cu、Ge、Sb、SnおよびPを原料に用いた。大きな薄片やバルク状の原料については、溶解後の合金においてサンプリング場所による組成のバラツキがなく均一になるように留意しながら切断、粉砕等を行い、3mm以下の大きさに細かくした。次に、これらの原料を、表1に示す配合比率で高周波溶解炉用グラファイトるつぼに所定量を秤量して入れた。
原料の入ったるつぼを高周波溶解炉に入れ、酸化を防ぐために金属原料1kgあたり700ml/分以上の流量で窒素を流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、原料を加熱溶融させた。金属が溶融しはじめたら混合棒でよく攪拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混ぜた。十分溶融したことを確認した後、高周波電源を切り、速やかにるつぼを取り出し、るつぼ内の溶湯をはんだ母合金の鋳型に流し込んだ。このようにして、原料の混合比率を変えた以外は上記と同様にして、試料1〜26のはんだ母合金を製作した。
<はんだ合金粉末の製造>
はんだ合金粉末の製造方法はとくに限定されないが、例えばアトマイズ法で製造することができる。アトマイズ法は気相中、液相中どちらで行ってもよく、目的とするはんだ合金粉末の粒径や粒度分布等を考慮し選定すればよい。本実施例及び比較例では、生産性が高く、比較的細かい粉末の製造ができる気相中アトマイズ法により、はんだ合金の粉末を作製した。
はんだ合金粉末の製造方法はとくに限定されないが、例えばアトマイズ法で製造することができる。アトマイズ法は気相中、液相中どちらで行ってもよく、目的とするはんだ合金粉末の粒径や粒度分布等を考慮し選定すればよい。本実施例及び比較例では、生産性が高く、比較的細かい粉末の製造ができる気相中アトマイズ法により、はんだ合金の粉末を作製した。
具体的には、気相中アトマイズ装置を用いて、高周波溶解方式による気相中アトマイズによってはんだ合金粉末を得た。まず、上記した試料1〜26のはんだ母合金を、それぞれ個別に投入した高周波溶解るつぼを気相中アトマイズ装置に設置し、蓋をして密閉した後、窒素フローし、実質的に酸素がない状態にした。気相中アトマイズ装置の試料排出口や回収容器部分も同様に窒素フローして酸素が無い状態にした。
この状態で高周波電源のスイッチを入れ、はんだ母合金を350℃以上に加熱し、はんだ母合金が十分溶融した状態で溶融したはんだ母合金に窒素で圧力を加え、アトマイズし粉末に加工した。このようにして製作されたはんだ合金粉末を回収容器に集め、この容器中で十分に冷却した後に大気中に取り出した。十分に冷却してから取り出す理由は、高温状態で取り出すと発火したり、はんだ合金粉末が酸化して濡れ性等の効果を下げてしまったりするからである。
このように製造した各はんだ合金粉末をそれぞれ目開きが20μmと50μmの篩で分級して、直径が20〜50μmのはんだ合金粉末試料を得た。
このように製造した各はんだ合金粉末をそれぞれ目開きが20μmと50μmの篩で分級して、直径が20〜50μmのはんだ合金粉末試料を得た。
<はんだペーストの製造>
次に、試料1〜19、21〜25のはんだ母合金からそれぞれ作製したはんだ合金粉末を、それぞれ所定のステアリン酸または/及びステアリン酸塩と混合し、最後にフラックスと混合し、はんだペーストを作製した。試料20のはんだ母合金から製作したはんだ合金粉末は、ステアリン酸やフラックスと一緒に混合した。試料26のはんだ母合金から作製したはんだ合金粉末は、ステアリン酸、ステアリン酸塩のいずれとも混合することなくフラックスとのみ混合した。
フラックスには、ベース剤としてロジンを、活性剤としてアジピン酸を、溶剤としてジエチレングリコール−モノ−ブチルエーテルを用いた。それぞれの含有量はフラックスを100質量%として、ロジンが37.5質量%、アジピン酸を7質量%、残部をジエチレングリコール−モノ−ブチルエーテルとした。このフラックスと、上記はんだ合金粉末と、ステアリン酸または/及びステアリン酸粉との混合比率、並びに混合方法を表1に示す。
次に、試料1〜19、21〜25のはんだ母合金からそれぞれ作製したはんだ合金粉末を、それぞれ所定のステアリン酸または/及びステアリン酸塩と混合し、最後にフラックスと混合し、はんだペーストを作製した。試料20のはんだ母合金から製作したはんだ合金粉末は、ステアリン酸やフラックスと一緒に混合した。試料26のはんだ母合金から作製したはんだ合金粉末は、ステアリン酸、ステアリン酸塩のいずれとも混合することなくフラックスとのみ混合した。
フラックスには、ベース剤としてロジンを、活性剤としてアジピン酸を、溶剤としてジエチレングリコール−モノ−ブチルエーテルを用いた。それぞれの含有量はフラックスを100質量%として、ロジンが37.5質量%、アジピン酸を7質量%、残部をジエチレングリコール−モノ−ブチルエーテルとした。このフラックスと、上記はんだ合金粉末と、ステアリン酸または/及びステアリン酸粉との混合比率、並びに混合方法を表1に示す。
これら試料1〜26のはんだペーストの各々に対して、下記に示す評価を行った。すなわち、濡れ性評価としてはんだ合金の濡れ広がり状態の確認を行い、接合性評価1としてボイド率の測定を行い、接合性評価2としてシェア強度の測定を行い、信頼性評価としてヒートサイクル試験を行った。
<濡れ性評価(はんだ合金の濡れ広がり状態の確認)>
濡れ性評価は、Cu基板(板厚:約0.70mm)にマスクを使ってはんだペーストを直径6.5mm、厚さ0.2mmの円盤形状に印刷し、そのはんだペーストが印刷された基板を以下のように加熱、接合して接合体を作り、光学顕微鏡ではんだ合金粉末の溶け残りの有無を確認した。まず、濡れ性試験機を起動し、加熱されるヒーター部分に2重のカバーをしてヒーター部の周囲4箇所から窒素を流した(窒素流量:各12L/分)。その後、ヒーター設定温度を340℃にして加熱した。
ヒーター温度が設定温度で安定した後、はんだペーストを塗布したCu基板をヒーター部にセッティングし、25秒加熱した。その後、Cu基板をヒーター部から取り上げて、大気中に晒すことなくその横の窒素雰囲気が保たれている場所に一旦移して冷却した。
十分冷却した後、大気中に取り出して接合部分を確認した。はんだ合金が一つの平べったい円状に濡れ広がった状態で、周囲にはんだボールが見られなかった場合を「○」、一つの平べったい円状にはんだが濡れ広がったはんだ合金を主とし、かつ周囲に直径75μm以下のはんだボールがある場合を「△」とした。直径6.5mmの溶融はんだ本体に対し、直径75μm以下のはんだボールの形成は、ほとんどはんだ接合に影響を与えないため、接合状態を区別するものの、観察結果が「○」もしくは「△」の状態は接合性良好と判断した。また、直径75μmより大きなはんだボールが散見される場合、溶けたはんだ合金がバラバラに複数の固まりとなる場合、もしくは、はんだ合金粉末が部分的にしか溶けず、金属光沢が全面に出ない場合等、接合体として好ましくない状態になった場合を「×」とした。「×」の状態のはんだ合金は接合後に不具合を発生することが多く、接合性不良と判断した。評価結果を表2に示す。
濡れ性評価は、Cu基板(板厚:約0.70mm)にマスクを使ってはんだペーストを直径6.5mm、厚さ0.2mmの円盤形状に印刷し、そのはんだペーストが印刷された基板を以下のように加熱、接合して接合体を作り、光学顕微鏡ではんだ合金粉末の溶け残りの有無を確認した。まず、濡れ性試験機を起動し、加熱されるヒーター部分に2重のカバーをしてヒーター部の周囲4箇所から窒素を流した(窒素流量:各12L/分)。その後、ヒーター設定温度を340℃にして加熱した。
ヒーター温度が設定温度で安定した後、はんだペーストを塗布したCu基板をヒーター部にセッティングし、25秒加熱した。その後、Cu基板をヒーター部から取り上げて、大気中に晒すことなくその横の窒素雰囲気が保たれている場所に一旦移して冷却した。
十分冷却した後、大気中に取り出して接合部分を確認した。はんだ合金が一つの平べったい円状に濡れ広がった状態で、周囲にはんだボールが見られなかった場合を「○」、一つの平べったい円状にはんだが濡れ広がったはんだ合金を主とし、かつ周囲に直径75μm以下のはんだボールがある場合を「△」とした。直径6.5mmの溶融はんだ本体に対し、直径75μm以下のはんだボールの形成は、ほとんどはんだ接合に影響を与えないため、接合状態を区別するものの、観察結果が「○」もしくは「△」の状態は接合性良好と判断した。また、直径75μmより大きなはんだボールが散見される場合、溶けたはんだ合金がバラバラに複数の固まりとなる場合、もしくは、はんだ合金粉末が部分的にしか溶けず、金属光沢が全面に出ない場合等、接合体として好ましくない状態になった場合を「×」とした。「×」の状態のはんだ合金は接合後に不具合を発生することが多く、接合性不良と判断した。評価結果を表2に示す。
<接合性評価1(ボイド率の測定)>
接合性評価1として、はんだペースト試料を用いて、SiチップとCu基板(板厚:0.7mm)との接合体を作製し、ボイド率を測定した。
接合体を作製するため、まず、Cu基板にマスクを用いてはんだペーストを2.0mm×2.0mm、厚さ120μmの形状に印刷した。次に、ダイボンダーを用いて、装置のヒーター部に窒素ガスを流しながら各はんだ試料の融点より40℃高い温度になるようにした。その後、ヒーター部にはんだペーストを塗布したCu基板を載置し35秒加熱した後、溶融したはんだの上に2.0mm×2.0mmのSiチップを載置し、スクラブを5秒かけた。スクラブ終了後、接合体を速やかに窒素ガスの流れている冷却部に移し、室温まで冷却後、大気中に取り出し接合体を得た。
この様にして得た接合体のボイド率を、X線透過装置を用いて測定した。具体的には、試料(はんだ)とCu基板の接合面をはんだ合金の接合された面に対する方向で、はんだ合金が接合された面側から垂直にX線を透過し、以下の計算式1を用いてボイド率を算出した。接合体のボイド率の測定結果を表2に示す。
[計算式1]
ボイド率(%) = ボイド面積÷(ボイド面積+はんだとCu基板の接合面積)×100
接合性評価1として、はんだペースト試料を用いて、SiチップとCu基板(板厚:0.7mm)との接合体を作製し、ボイド率を測定した。
接合体を作製するため、まず、Cu基板にマスクを用いてはんだペーストを2.0mm×2.0mm、厚さ120μmの形状に印刷した。次に、ダイボンダーを用いて、装置のヒーター部に窒素ガスを流しながら各はんだ試料の融点より40℃高い温度になるようにした。その後、ヒーター部にはんだペーストを塗布したCu基板を載置し35秒加熱した後、溶融したはんだの上に2.0mm×2.0mmのSiチップを載置し、スクラブを5秒かけた。スクラブ終了後、接合体を速やかに窒素ガスの流れている冷却部に移し、室温まで冷却後、大気中に取り出し接合体を得た。
この様にして得た接合体のボイド率を、X線透過装置を用いて測定した。具体的には、試料(はんだ)とCu基板の接合面をはんだ合金の接合された面に対する方向で、はんだ合金が接合された面側から垂直にX線を透過し、以下の計算式1を用いてボイド率を算出した。接合体のボイド率の測定結果を表2に示す。
[計算式1]
ボイド率(%) = ボイド面積÷(ボイド面積+はんだとCu基板の接合面積)×100
<接合性評価2(シェア強度の相対評価)>
はんだ合金の接合性を確認するため、ボイド率の測定の際に作ったSiチップ接合体と同様の接合体を作り、そのシェア強度を評価した。シェア強度は、シェア強度試験機を用いて測定した。具体的には、前記接合体をシェア強度試験機に固定し、接合したSiチップを治具によって横方向から加圧し、チップが完全に剥離した際の強度を測定した。接合性評価2は、本発明の半田ペーストを構成する材料である各種添加元素の含有量を規定する各種範囲の略中央値を用いて作製され、十分な接合強度が確認された試料2の接合強度を100%とした場合の各試料の相対評価で行った。評価結果を表2に示す。
はんだ合金の接合性を確認するため、ボイド率の測定の際に作ったSiチップ接合体と同様の接合体を作り、そのシェア強度を評価した。シェア強度は、シェア強度試験機を用いて測定した。具体的には、前記接合体をシェア強度試験機に固定し、接合したSiチップを治具によって横方向から加圧し、チップが完全に剥離した際の強度を測定した。接合性評価2は、本発明の半田ペーストを構成する材料である各種添加元素の含有量を規定する各種範囲の略中央値を用いて作製され、十分な接合強度が確認された試料2の接合強度を100%とした場合の各試料の相対評価で行った。評価結果を表2に示す。
<信頼性評価(ヒートサイクル試験)>
はんだ接合の信頼性を評価するためにヒートサイクル試験を行った。なお、この試験は、ボイド率の測定の際に作ったSiチップ接合体と同様の接合体を作り、そのSiチップ接合体を用いて行った。まず、接合体に対して、−40℃の冷却と150℃の加熱を1サイクルとして、これを所定のサイクル繰り返した。その後、はんだ合金が接合されたCu基板を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)により接合面の観察を行った。接合面に、はがれやはんだにクラックが入っていた場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。結果を表2に示す。
はんだ接合の信頼性を評価するためにヒートサイクル試験を行った。なお、この試験は、ボイド率の測定の際に作ったSiチップ接合体と同様の接合体を作り、そのSiチップ接合体を用いて行った。まず、接合体に対して、−40℃の冷却と150℃の加熱を1サイクルとして、これを所定のサイクル繰り返した。その後、はんだ合金が接合されたCu基板を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)により接合面の観察を行った。接合面に、はがれやはんだにクラックが入っていた場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。結果を表2に示す。
上記表2から分かるように、本発明の要件を満たしている試料1〜20のはんだペーストは、すべての評価項目において良好な特性を示した。つまり、濡れ性評価では、はんだ合金粉末の溶融状態が接合体として好ましくない状態にはならず、溶融金属は良好に広がり、ボイド率は9%以下と良好な値を示し、シェア強度は試料2との相対強度で90%以上と良好な値を示し、ヒートサイクル試験では500サイクル経過しても不良が発生せず良好な結果を示した。
試料7の結果から、ステアリン酸の他にステアリン酸塩を用いても同様の効果が得られることが確認できた。
試料14〜19の結果から、適切な量の添加元素を含むBiはんだ合金粉末を用いても、特性に大きな差は無く各試料同等の結果が得られることが確認できた。
試料20の結果から、本発明の製造方法を用いない場合は、はんだ合金として使用できる特性や接合状態は良好であると認められる水準に到達しているものの、本発明の製造方法を用いた場合の方が、より好ましい特性や接合状態が得られることが確認できた。
一方、比較例である試料21〜26の各はんだペーストは、いずれかの特性において好ましくない結果となった。即ち、フラックスの添加量が本発明の範囲より少ない試料21、22のはんだペーストは適切な粘度を有するペースト状にならず、Cu基板上に印刷した際のBiはんだペーストの形状が悪いため、濡れ性の結果が悪く、ボイドも多く形成される結果となった。そのため、シェア強度、ヒートサイクル試験も十分な値を得られず、フラックスの割合が少なくなるほど悪化する傾向が確認された。
フラックスの添加量が本発明の範囲より多い試料23、24のはんだペーストは、フラックス残渣に起因するボイドやそれに伴うシェア強度、ヒートサイクル試験の悪化が確認された。フラックスの割合が増えるほど残渣の発生が顕著となり、それに伴い評価結果も悪化している。
フラックスの添加量が本発明の範囲内ではあるもののステアリン酸の添加量が本発明の範囲より多い試料25のはんだペーストは、濡れ性は良好であるが、シェア強度、ヒートサイクル試験の悪化が確認された。これは、接合界面に基板とステアリン酸との反応に起因する異物やボイドが形成されたためと考えられる。
はんだ合金粉表面にステアリン酸を有しない試料26のはんだペーストは、濡れ性は比較的良好であったが、ボイド発生、およびそれに伴うシェア強度やヒートサイクル試験の悪化が確認された。これは、はんだペースト内ではんだ合金粉同士が結合して歪な粗大粒子となってしまい、溶融時に微細な気泡等を巻き込むなどしてボイドを形成してしまったためと考えられる。
試料7の結果から、ステアリン酸の他にステアリン酸塩を用いても同様の効果が得られることが確認できた。
試料14〜19の結果から、適切な量の添加元素を含むBiはんだ合金粉末を用いても、特性に大きな差は無く各試料同等の結果が得られることが確認できた。
試料20の結果から、本発明の製造方法を用いない場合は、はんだ合金として使用できる特性や接合状態は良好であると認められる水準に到達しているものの、本発明の製造方法を用いた場合の方が、より好ましい特性や接合状態が得られることが確認できた。
一方、比較例である試料21〜26の各はんだペーストは、いずれかの特性において好ましくない結果となった。即ち、フラックスの添加量が本発明の範囲より少ない試料21、22のはんだペーストは適切な粘度を有するペースト状にならず、Cu基板上に印刷した際のBiはんだペーストの形状が悪いため、濡れ性の結果が悪く、ボイドも多く形成される結果となった。そのため、シェア強度、ヒートサイクル試験も十分な値を得られず、フラックスの割合が少なくなるほど悪化する傾向が確認された。
フラックスの添加量が本発明の範囲より多い試料23、24のはんだペーストは、フラックス残渣に起因するボイドやそれに伴うシェア強度、ヒートサイクル試験の悪化が確認された。フラックスの割合が増えるほど残渣の発生が顕著となり、それに伴い評価結果も悪化している。
フラックスの添加量が本発明の範囲内ではあるもののステアリン酸の添加量が本発明の範囲より多い試料25のはんだペーストは、濡れ性は良好であるが、シェア強度、ヒートサイクル試験の悪化が確認された。これは、接合界面に基板とステアリン酸との反応に起因する異物やボイドが形成されたためと考えられる。
はんだ合金粉表面にステアリン酸を有しない試料26のはんだペーストは、濡れ性は比較的良好であったが、ボイド発生、およびそれに伴うシェア強度やヒートサイクル試験の悪化が確認された。これは、はんだペースト内ではんだ合金粉同士が結合して歪な粗大粒子となってしまい、溶融時に微細な気泡等を巻き込むなどしてボイドを形成してしまったためと考えられる。
Claims (3)
- はんだ合金粉末と、フラックスと、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩と、から構成されるはんだペーストにおいて、はんだペーストの合計100質量%に対して、フラックスを5.0質量%以上20.0質量%以下含有し、ステアリン酸または/及びステアリン酸塩を0.01質量%以上10.0質量%以下含有し、残部のはんだ合金粉末がBi系はんだ合金粉末であることを特徴とする高温用Pbフリーはんだペースト。
- 前記Biはんだ合金粉末が、AgもしくはZnを必須成分として含有し、更に、Al、Cu、Ge、Sb、Sn、およびPを含有することができ、Bi系はんだ合金粉末の合計100質量%に対し、
Agを0.1質量%以上12.0質量%以下含有し、または/及びZnを0.4質量%以上13.5質量%以下含有し、
更にAlを含有する場合は0.03質量%以上1.0質量%以下含有し、
Cuを含有する場合は0.05質量%以上2.0質量%以下含有し、
Geを含有する場合は0.01質量%以上1.0質量%以下含有し、
Sbを含有する場合は0.01質量%以上1.0質量%以下含有し、
Snを含有する場合は0.01質量%以上5.0質量%以下含有し、
Pを含有する場合は0.0005質量%以上0.5質量%以下含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の高温用Pbフリーはんだペースト。 - 請求項1もしくは2のいずれかに記載の高温用Pbフリーはんだペーストを製造する方法において、Biはんだ合金粉末をステアリン酸または/及びステアリン酸塩と混合した後にその混合物をフラックスと混合することを特徴とする高温用Pbフリーはんだペーストの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016064681A JP2017177122A (ja) | 2016-03-28 | 2016-03-28 | 高温Pbフリーはんだペースト及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
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---|---|
JP2017177122A true JP2017177122A (ja) | 2017-10-05 |
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ID=60003171
Family Applications (1)
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JP2016064681A Pending JP2017177122A (ja) | 2016-03-28 | 2016-03-28 | 高温Pbフリーはんだペースト及びその製造方法 |
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JP (1) | JP2017177122A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020044650A1 (ja) * | 2018-08-31 | 2020-03-05 | Jx金属株式会社 | はんだ合金 |
CN114905183A (zh) * | 2022-05-11 | 2022-08-16 | 湘潭大学 | 一种Bi-Ag-Zn系无铅焊料及其制备方法和应用 |
-
2016
- 2016-03-28 JP JP2016064681A patent/JP2017177122A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2020044650A1 (ja) * | 2018-08-31 | 2020-03-05 | Jx金属株式会社 | はんだ合金 |
CN114905183A (zh) * | 2022-05-11 | 2022-08-16 | 湘潭大学 | 一种Bi-Ag-Zn系无铅焊料及其制备方法和应用 |
CN114905183B (zh) * | 2022-05-11 | 2024-04-09 | 湘潭大学 | 一种Bi-Ag-Zn系无铅焊料及其制备方法和应用 |
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