JP2016026883A - 中低温用のBi−Sn−Zn系はんだ合金及びはんだペースト - Google Patents

中低温用のBi−Sn−Zn系はんだ合金及びはんだペースト Download PDF

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Abstract

【課題】 凝固時の膨張による残留応力や凝固温度から使用温度まで降温する際に生じうる残留応力が小さく、接合温度を従来の中低温用のはんだ合金に比べて下げることができ、接合性、応力緩和性、接合信頼性等に優れた中低温用として特に好適なBi−Sn−Zn系はんだ合金及びそのはんだペーストを提供する。【解決手段】 PbフリーのBi−Sn−Zn系はんだ合金及びこれをフラックスと混合して得たはんだペーストであって、該はんだ合金はSnを50.0質量%を超え70.0質量%以下、好ましくは55.0質量%以上65.0質量%以下含有し、Znを1.0質量%以上5.2質量%以下、好ましくは1.2質量%以上4.0質量%以下含有し、残部が製造上不可避的に含有される元素を除きBiからなる。このはんだ合金は、Ag、Ni、Sb及びPのうちの1種以上を更に含有してもよい。【選択図】 なし

Description

本発明は、中低温用として好適なPbフリーのBi−Sn−Zn系はんだ合金及びこれを含んだはんだペーストに関する。
近年、環境に有害な化学物質に対する規制がますます厳しくなってきており、この規制は電子部品などを基板に接合する目的で使用されるはんだ材料に対しても例外ではない。はんだ材料には古くからPb(鉛)が主成分として使われ続けてきたが、すでにRoHS指令などで鉛は規制対象物質になっている。このため、鉛を含まないはんだ(以降、Pbフリーはんだとも称する)の開発が盛んに行われている。
電子部品を基板に接合する際に使用するはんだは、その使用限界温度によって高温用(約260℃〜400℃)と中低温用(約140℃〜230℃)とに大別され、それらのうち、中低温用のはんだに関してはSnを主成分とするもので鉛フリーはんだが実用化されている。例えば、融点が210〜220℃程度のPbフリーはんだとして、特許文献1にはSnを主成分とし、Agを1.0〜4.0質量%、Cuを2.0質量%以下、Niを0.5質量%以下、Pを0.2質量%以下含有するPbフリーはんだ合金組成が記載されており、特許文献2にはAgを0.5〜3.5質量%、Cuを0.5〜2.0質量%含有し、残部がSnからなる合金組成のPbフリーはんだが記載されている。
さらに、低温用のPbフリーはんだとしては、Bi−42Sn系はんだ(58質量%のBiと42質量%のSnとから構成されることを意味しており、以降においても同様である)が知られており、例えば特許文献3には、「MCM基板を別の基板上に保持した電子装置では、I/Oピンの最大間隔が50mm以上、ピンピッチ(格子パターン)1.3mm以下の、例えば大型コンピュータ用MCMの場合、MCM基板(窒化アルミ)とマザーボード基板(ガラスポリイミド)の熱膨張率差による位置ずれ、あるいはMCM基板のそりが深刻な問題となる。現状のSn−37Pb系のはんだ合金を使用した場合、はんだ合金をリフローさせるのに約180℃の温度まで加熱する必要がある。しかし、このように高い温度まで加熱すると、前記熱膨張率差による位置ずれが顕著となり、接合がほとんど不可能になる。またはんだ合金の凝固後に接合部のはんだ合金に対する永続的な応力歪みが発生し、クリープ特性に問題のあるSn−37Pbでは熱疲労特性などの接合信頼性に問題が生じる。」という課題を解決するために次のような技術が開示されている。
すなわち、はんだ合金の組成として、「Snを約42〜59重量%、Biを約41〜58重量%含むはんだ合金」や「Snを約42重量%、Biを約57重量%、Agを約1重量%含むはんだ合金」を用いることにより、その作用・効果として、「接合に使用するはんだ合金の固相線温度を約150℃以下に下げることにより、はんだ合金が完全に凝固してから室温に温度雰囲気が低下するまでの温度幅を狭めることができる。その結果、各基板の熱収縮量の差により接合部の凝固したはんだ合金に加わる応力歪みを小さくすることができる。また、本発明では、ヤング率が高くて硬いSn,Biを主成分とするはんだ合金を用いることにより、接合部に生じる応力歪みによるはんだ合金の変形を抑えることができる。以上の効果により接合部の信頼性を向上させることができる。」と記載されている。
特許文献4には、電磁波シールド用に壁に張付した金属箔シート用として、「ビスマス50〜63wt%、スズ37〜50wt%、亜鉛0−6wt%からなる半田合金を金属箔テープにめっきした金属箔テープ」を用いる技術が開示されている。また、特許文献5には、回路基板のはんだ付けに使用するはんだ及びそのクリームはんだにおいて、鉛を含まない非鉛系のSn含有はんだ合金の接合強度を高めて信頼性を確保することを目的として、「重量%で、Bi50〜65%と、Cu0.1〜3.0%、In0.1〜10%、Zn0.1〜15%及びAg0.1〜4.0%より選ばれた少なくとも1種と、残部Snとを含むSn−Bi系はんだ合金及びこれを利用したクリームはんだ」が開示されている。
また、特許文献6には、「延性が高く、長期間にわたり十分な接合強度を維持できるPbフリーはんだ、そのはんだを用いた半導体装置及びはんだ付け方法を提供することを目的」として、「Sn(スズ)、Bi(ビスマス)及びZn(亜鉛)を含み、前記Znの含有量が0.01wt%乃至0.1wt%であることを特徴とするはんだ」が開示されている。
特開平11−077366号公報 特開平8−215880号公報 特許第3715438号 特開平8−298392号公報 特開平11−33775号広報 特開2012−157873号広報
しかしながら、特許文献3のはんだ合金は、半金属であり硬くて脆いBiを多く含有するためクラック等の不良が発生し易く、一般的に多用されているPb系はんだやSn系はんだに比べると応力緩和性や接合信頼性に乏しいという問題をかかえている。Bi−Sn系はんだ合金がより広く使用されるためには、この硬くて脆い性質を改善することが必須の条件である。
また、特許文献3ではBi−Sn系はんだ合金にAgを約1重量%含むことが記載されているが、AgはSnと多くの金属間化合物を生成するため、SnとAgとを共に含有したはんだ合金はPb−Sn−Ag系はんだのようにAgSn金属間化合物を生成する。よって、57質量%Bi−42質量%Sn−1質量%Agはんだは、その組成から考えると硬さと脆さが助長されると考えられ、応力緩和性に乏しく接合信頼性の低い材料であると推察される。
また、特許文献4に開示されている56wt%ビスマス−40wt%スズ−4wt%亜鉛三元合金は、ビスマス合金が脆いので実際的には半田材料としては使用されていないと記載されており、電子部品接続用途ではなく、電磁波シールド用に壁に張付した金属箔シート用にビスマス50〜63wt%、スズ37〜50wt%、亜鉛0−6wt%からなる半田合金を金属箔テープにめっきした金属箔テープが開示されているに過ぎない。
さらに特許文献5には、Sn−Bi系はんだにおいて、Znを添加することで融点を下げることができ、機械的強度も高まると記載されているが、その理由について特に記載がなく、実施例等にもSn−Bi−Zn合金は挙げられていない。これに関し、特許文献6にはZnの含有により強度が向上する原因としては、Znを含まないSn−Bi合金の場合はCu電極とはんだ(Sn−Bi合金)との界面でSnがCuと結合し、その結果Snが欠乏して脆弱なBiリッチ層が形成されるのに対して、Sn−Bi−Zn合金の場合はZnがCuと優先的に結合するため、Snが欠乏しなくなって脆弱なBiリッチ層の形成が抑制され、これにより、長期間にわたって十分な強度を維持することができると記載されている。
Bi−Sn系はんだにZnを含有させることにより、上記した特許文献6に記載の効果が期待できると考えられるが、かかる効果を期待するにはZnの含有量に十分に注意を払う必要がある。なぜなら、上記の効果を発揮させるのに足る量のZnの添加が必要となり、これを満たしていなければ脆弱なBiリッチ層が生成するおそれがある。
またPb規制に従ってSn−37質量%PbはんだからPbフリーのSn−3質量%Ag−0.5質量%Cu系はんだに置き換えると、はんだの融点が183℃から210〜220℃程度に上がるため、電子部品等のはんだ接合温度を上げる必要が生じ、これに伴って電子部品等の耐熱温度を上げる必要がある上、はんだ接合時の電気代等のランニングコストも多くかかるようになる。これらのコストアップは、価格競争の激しい半導体業界においては受入れられにくい。
このように、中低温用のPbフリーはんだ材料に関しては、各種機関で開発が進められてはいるものの未だ課題も多く、大きな市場に成り得ていないのが実情である。本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、はんだ凝固時の膨張により生じうる残留応力や凝固温度から使用温度までの降温の際に生じうる残留応力が小さく、且つはんだ接合される各種部材等の耐熱温度の上昇や接合時の電気代等のコストアップの要因となる接合温度を従来のSn−Ag−Cu系はんだ合金やSn−Pb系はんだ合金等の中低温用のはんだ合金に比べて下げることができ、加えて接合性、応力緩和性、及び接合信頼性等に優れた中低温用として特に好適なBi−Sn−Zn系はんだ合金及びこれを含んだはんだペーストを提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明が提供するPbフリーBi−Sn−Zn系はんだ合金は、Snを50.0質量%を超え70.0質量%以下含有し、Znを1.0質量%以上5.2質量%以下含有し、残部が製造上不可避的に含有される元素を除きBiからなることを特徴としている。
上記した本発明のはんだ合金は、Snを55.0質量%以上65.0質量%以下含有し、Znを1.2質量%以上4.0質量%以下含有することが好ましい。また、上記した本発明のはんだ合金は、Ag、Ni、Sb及びPのうちの1種以上を更に含有してもよく、金属組織がラメラ組織を含んでもよい。さらに、本発明が提供するPbフリーBi−Sn−Zn系はんだペーストは、上記はんだ合金の粉末とフラックスとの混合により作製されることを特徴としている。
本発明によれば、電子部品と基板との接合などに使用される中低温用はんだとして特に優れている。すなわち、Bi−Snの二元系共晶合金にBiより格段に延性のあるZnを含有させた本発明のBi−Sn−Zn三元系共晶合金は、Bi−Snの脆い性質が大きく改善されており、且つ融点が比較的低いため残留応力が小さい上、接合される電子部品等の耐熱温度の上昇や接合時の電気代等のコストアップの要因となる接合温度を従来のSn−Ag−Cu系はんだ合金やSn−Pb系はんだ合金等の中低温用のはんだ合金に比べて下げることができ、加えて接合性、応力緩和性、及び接合信頼性等が極めて優れている。
NiめっきされたCu基板にはんだ合金を接合して得た接合体をはんだ合金側の上方から見た模式的な平面図である。 NiめっきされたCu基板のNiめっき面上にはんだ合金を介してSiチップを接合して得た接合体の模式的な縦断面図である。 NiめっきされたCu基板のNiめっき面上にはんだ合金をはんだ付けした状態を模式的に示す縦断面図である。 図3のはんだ接合体をはんだ側から見た模式的な平面図である。
本発明の一具体例のPbフリーはんだ合金は、Snを50.0質量%を超え70.0質量%以下、好ましくは55.0質量%以上65.0質量%以下含有し、Znを1.0質量%以上5.2質量%以下、好ましくは1.2質量%以上4.0質量%以下含有し、残部が製造上不可避的に含有される元素を除きBiからなることを特徴としている。この本発明の一具体例のPbフリーはんだ合金は、当該はんだ合金の諸特性を適宜調整及び/又は改善するため、Ag、Ni、Sb及びPの1種以上含有していてもよい。また、本発明のBi−Sn−Zn系はんだペーストは、上記はんだ合金の粉末とフラックスとを混合することで作製することができる。
上記の組成を有するPbフリーのBi−Sn−Zn系はんだ合金、又はこれを含んだはんだペーストを用いてはんだ接合を行った電子部品実装基板には、一般的な耐熱温度を有する電子部品や基板等を採用することができ、また作製時の接合温度を従来のSn−Ag−Cu系はんだ合金やSn−Pb系はんだ合金等の中低温用のはんだ合金に比べて下げることができるので、従来のものに比べて品質を下げることなく製造コストを抑えることができる。よって、この電子部品実装基板を搭載した装置は、従来と同等若しくはそれ以上の品質を有する信頼性の高い装置であるにもかかわらず製造コストを抑えることが可能になる。
以下、かかる本発明の一具体例のPbフリーはんだ合金及びこれを含んだはんだペーストについて、該はんだ合金の必須の含有元素及び必要に応じて含有される元素、並びに該はんだペーストに含まれるフラックス等の各種成分についてそれぞれ詳しく説明する。
<Bi>
Biは本発明のPbフリーはんだ合金において後述するSnと共に主成分をなす必須元素である。BiはVa族元素(N、P、As、Sb、Bi)に属し、その結晶構造は、対称性の低い三方晶(菱面体晶)であるため非常に脆い金属であり、引張試験などを行うとその破面は脆性破面であることが容易に見て取れる。つまり純Biは延性的な性質に乏しく、本発明者の実験結果ではBiの伸び率は1.0%未満であった。また、Biは凝固時に膨張する金属であり、この凝固時の収縮率(−が膨張、+が収縮を意味する)は−3.2%〜−3.4%である。この膨張により残留応力が発生し、接合強度や信頼性が低下する。
本発明においてBiを含むはんだ合金にSnとZnを含有させる一つの理由は、Biが凝固時に膨張する問題を改善するためである。すなわち、凝固時に生ずるBiの体積膨張を打ち消すように作用するSnやZnを含有することによって、Biの膨張分をSnやZnの収縮分で減じ、はんだ全体としての体積変化を小さくしている。これにより、はんだ合金の残留応力を低減することが可能となるのである。
更に、Bi−Sn−Znの三元系合金における共晶点の組成を基本とすることによって、Sn−Ag−Cu系はんだやSn−Pb共晶はんだよりも融点を下げることができる。また、共晶点温度を自在に調整できるので、溶接温度を下げることにより、溶接される各種部材の耐熱温度を下げるたり、はんだ接合時の電気代などのランニングコストを下げたりできる上、酸化の進行を抑制することもできる。加えて、極めて柔軟性に富んだはんだ合金が得られるため、応力緩和性及び接合信頼性にも優れている。
<Sn>
Snは本発明のPbフリーはんだ合金において上記したBiと共に主成分をなす必須元素である。Snを含有させる一つ目の目的は、はんだ合金の融点を大きく下げることができることである。Bi−Sn二元系合金においてBi−42質量%Snの組成が共晶点であり、その共晶点温度は139℃となる。これによって低温域まで使用できる合金を得ることができる。
Snを含有させる二つ目の目的は、共晶合金とすることによりはんだ合金に柔軟性を付与し、加工性や応力緩和性、接合信頼性等を大きく向上させることにある。すなわち共晶点付近の組成とすることにより結晶構造がラメラ組織となり、機械的特性等が向上するのである。さらにSnは基板等との反応性に優れるため、基板や半導体素子との接合強度を高め、接合信頼性の向上に寄与する。加えて、後述するZnの収縮分と共にSnの収縮分でBiの凝固時の膨張分を相殺し、はんだ全体としての凝固時の体積変化を小さくすることができる。これにより、はんだ合金の残留応力が低減し、クラック等が入りづらくなる。
本発明におけるSnの含有量は50.0質量%を超えて70.0質量%以下であり、好ましくは55.0質量%以上65.0質量%以下である。Bi−Sn−Zn系はんだ合金においてSn含有量をこのように50.0質量を超え70.0質量%以下と広い範囲内で適宜選択できるようにすることにより、共晶点温度を約150〜約180℃程度まで振ることができる。本発明の大きな特長の一つは、このようにSn含有量を上記の範囲内とすることによって中低温域をほぼカバーする広い共晶点温度を実現できることにある。
すなわち、Bi−Sn−Zn三元合金の共晶点はBi−Sn二元合金の42質量%Sn共晶点(共晶点温度:139℃)からSn−Zn二元合金の8.8質量%Zn共晶点(共晶点温度:199℃)を繋ぐ線上あり、主にSn含有量をリッチにする(Sn50.0質量%を超える)ことによって各共晶点の組成のはんだ合金を得ることができる。このように、Snの含有量を主に変化させることによって所望の共晶点温度を有するはんだ合金を得ることができる上、得られたはんだ合金はラメラ組織になるため柔軟性を有し、よって接合信頼性等が高い優れたはんだ合金を得ることができる。
加えて、主にSn含有量をSnリッチ側(Sn50.0質量%を超える)で変化させることによって機械的特性等を調整することができることも大きな特長の一つである。すなわち、Bi−42Snの共晶点とSn−8.8Znの共晶点との間の共晶点を繋ぐ線上において主にSnの含有量を変化させることにより機械的特性等が変化し、柔らかく延性のあるSnの含有量が多くなるに従って、伸び率が上がって柔らかくなり、Bi−Sn系合金の硬くて脆い性質が緩和されていく。このように、本発明のはんだ合金は、融点、機械的特性、濡れ性等の諸特性を非常に広い範囲で調整することが可能であり、これらのバランスを考えながら所望の特性に合わせて組成を調整すればよいのである。
上記したように、本発明においてはSn含有量を50.0質量を超え、70.0質量%以下とすることで諸特性に優れたはんだ合金を得ることができる。このSn含有量が50.0質量%以下ではBi含有量が多くなり、硬くて脆い性質が顕著になり、はんだ合金として十分な特性を得ることが難しくなる。一方、Sn含有量が70.0質量%を超えると融点が高くなり過ぎて本発明のはんだ合金の特長が限定的になったり、場合によってはSn−Ag−Cu系はんだで代替可能になったりする。なお、Sn含有量が55.0質量%以上65.0質量%以下であれば、柔らかいSnの含有量の下限が増すことによってはんだ合金の柔軟性が増し、よって本発明のはんだ合金の特長である応力緩和性、接合信頼性等がより一層顕著に現われるので好ましい。
<Zn>
Znは本発明のPbフリーはんだ合金において含有される必須元素である。Znを含有させてBi−Sn−Zn三元系合金とすることによって広い範囲の融点を選定できる上、機械的特性を自在に調整することが可能になる。例えば融点を低融点側に調整することにより、接合される各種電子部材等の耐熱温度を下げることができる上、接合時の電気コスト等を下げることができる。さらには接合時のはんだや接合させる部品等の酸化の進行をより抑えることができ、品質向上にも繋がる。さらには、すでに述べたように本発明のBi−Sn−Zn系はんだ合金の組成は共晶点付近を基本としているためラメラ組織で構成されており、加工性や応力緩和性に優れている。加えてZnはCuやNiなどとの反応性に優れるため、これらがはんだ接合面に用いられる場合は高い接合強度を得ることができ、より一層高い接合信頼性を得ることができる。
このように優れた効果を発揮させるため、Znの含有量は1.0質量%以上5.2質量%以下になっている。Zn含有量が1.0質量%未満では含有量が少なすぎて含有させた効果が実質的に現われない。一方、5.2質量%を超えると含有量が多すぎてZnの酸化が進行し、はんだ合金も濡れ性や接合信頼性を低下させてしまう恐れがある。なお、Zn含有量が1.2質量%以上4.0質量%以下であれば、上記した本発明のはんだ合金の特長がより一層顕著に現われるので好ましい。
<Ag>
Agは本発明のはんだ合金において、諸特性を改善するために必要に応じて含有される元素である。Agの含有により得られる主な効果は濡れ性や接合性の向上にある。すなわち、Agは基板等のメタライズ層に使用されることからも分かるように各種金属と合金化し易く濡れ性に優れる。基板等の最上面によく使用されるCu、Niなどとはとくに反応性がよく、濡れ性に優れ高い接合強度を得ることができる。また、半導体素子の接合面によく使用されるAgやAuなどのメタライズ層との反応性に優れることは言うまでもない。このようにAgを含有させることによって良好な接合が可能になり、よって高い接合信頼性を得ることができる。
Agの含有により上記した優れた諸特性向上の効果を発揮させるためにはAgの含有量は0.01質量%以上3.0質量%以下とするのが好ましい。Ag含有量が0.01質量%未満では含有量が少なすぎて含有することによる効果が実質的に現われない。一方、Ag含有量が3.0質量%を超えるとAgSnなどの金属間化合物が許容量を超えて生成したり、AgやAgの金属間化合物などが偏析して良好な接合を得ることができなくなるおそれがある。
<Ni>
Niは本発明のはんだ合金において、諸特性を改善するために必要に応じて含有される元素である。Niの含有により得られる主な効果は結晶微細化による接合信頼性等の向上にある。すなわち、NiはSnやBiに僅かにではあるが固溶する。そして、このように僅かにはんだ合金に含有されたNiははんだが溶融状態から冷却されて固化する際、まず高融点のNiがはんだ中に分散して生成し、そのNiを核として結晶が生成する。このため、はんだの結晶が微細化した構造となる。クラックは基本的に粒界に沿って進展していくため、このように微細結晶化されたはんだではクラックが進展しづらくなり、よってヒートサイクル試験等の信頼性が向上する。
このような優れた効果を発揮させるためにはNiの含有量は0.01質量%以上0.7質量%以下であるのが好ましい。このNi含有量が0.01質量%未満では含有量が少なすぎて効果が現れず、一方、0.7質量%を超えると逆に結晶粒が粗大になってしまい、信頼性等を低下させたり、脆いNiBi金属間化合物が許容量を超えて生成するおそれがある。
<Sb>
Sbは本発明のはんだ合金において、諸特性を改善するために必要に応じて含有される元素である。Sbの含有により得られる主な効果はNiと同様に結晶微細化による接合信頼性等の向上にある。すなわち、SbはSnやBiに僅かにではあるが固溶し、Niと同様のメカニズムで結晶微細化が起こり、接合信頼性等が向上する。SbはBiと性質が似ているため比較的多くの量を含有させることができる。
このような優れた効果を発揮させるためにはSbの含有量は0.01質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましい。このSb含有量が0.01質量%未満では含有量が少なすぎて効果が現れず、一方、5.0質量%を超えると強度が上がりすぎてチップ接合後の冷却時にはんだが収縮する際、はんだの硬さに負けてチップが割れるおそれがある。
<P>
Pは本発明のはんだ合金において、必要に応じて含有される元素であり、Pを含有することによって、Bi−Sn−Zn系はんだ合金の濡れ性および接合性をさらに向上させることができる。この効果は、Ag、Ni、Sbが含有されている場合においても同様に発揮される。Pの添加により濡れ性向上の効果が大きくなる理由は、Pは還元性が強く、自ら酸化することによりはんだ合金表面の酸化を抑制することによる。
Pを含有させることで、さらに接合時のボイドの発生を低減させる効果が得られる。これは、Pは自らが酸化しやすいため、接合時にはんだの主成分であるBiや、主成分ではないが必須成分のZnよりも優先的に酸化が進むことによる。これにより、はんだ母相の酸化が抑えられ、濡れ性を確保することができる。その結果、良好な接合が可能となり、ボイドの生成も起こりにくくなる。
Pは、前述したように非常に還元性が強いため、微量の添加でも濡れ性向上の効果を発揮する。逆にある含有量以上では添加しても濡れ性向上の効果は変わらず、過剰な添加ではPの酸化物がはんだ表面に生成されたり、Pが脆弱な相を作り脆化したりするおそれがある。したがって、Pは微量添加が好ましい。具体的には、はんだ合金中のP含有量の上限値は0.500質量%が好ましい。Pがこの上限値を超えると、その酸化物がはんだ表面を覆い、濡れ性が悪化するおそれがある。さらに、PはBiへの固溶量が非常に少ないため、含有量が上限値を超えると脆いP酸化物が偏析するなどして信頼性を低下させるおそれがある。とくにワイヤなどを加工する場合に、断線の原因になりやすいことを確認している。
<はんだペースト>
本発明のPbフリーBi−Sn−Zn系はんだペーストは、上記のはんだ合金を粉末状に加工してフラックスを混合することで作製することができる。はんだ合金をペースト用に粉末状にする方法はとくに限定はないが、溶融はんだを気相中又は液相中で噴霧することにより粉末状のはんだ合金を作製するアトマイズ法により作製するのが好ましい。気相中又は液相中の選択やアトマイズの際の運転条件等は、目的とするはんだ粉の粒径や粒度分布等を考慮して適宜定めればよい。一般的には生産性が高く、比較的細かい粉末を製造できるので気相中アトマイズ法が好ましい。
<フラックス>
本発明のはんだペーストに使用するフラックスの種類はとくに限定がなく、例えば、樹脂系、無機塩化物系、有機ハロゲン化物系などを用いてよい。ここでは最も一般的なフラックスである、ベース材にロジンを使用してこれに活性剤及び溶剤を添加したものについて述べる。
この一例としてのフラックスは、フラックス全量を100質量%とした場合、ベース材であるロジンが20〜30質量%、活性剤が0.2〜1質量%、溶剤が70〜80質量%程度となるように配合することが好ましく、これにより良好な濡れ性及び接合性を有するはんだペーストを得ることができる。ベース材としてのロジンには、例えばウッドレジンロジン、ガムロジン、トール油ロジンなどの天然の未変性なロジンを使用してもよいし、ロジンエステル、水素添加ロジン、ロジン変性樹脂、重合ロジンなどの変性ロジンを使用してもよい。
溶剤には、アセトン、アミルベンゼン、n−アミンアルコール、ベンゼン、四塩化炭素、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、メチルエチルケトン、トルエン、テレピン油、キシレン、シクロヘキサン、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、四塩化炭素、トリクロロエタン、アルカンジオール、アルキレングリコール、ブタジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラデカンなどを使用することができる。
活性剤には、リン酸、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、塩化第一錫、アニリン塩酸塩、ヒドラジン塩酸塩、臭化セチルピリジン、フェニルヒドラジン塩酸塩、テトラクロルナフタレン、メチルヒドラジン塩酸塩、メチルアミン塩酸塩、エチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、ブチルアミン塩酸塩、安息香酸、ステアリン酸、乳酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、ヒバシン酸、トリエタノールアミン、ジフェニルグアニジン、ジフェニルグアニジンHBr、エリトリトール、キシリトリトール、ソルボトール、リビトール、スルフォン酸エステル、ターシャリーブチルカルボン酸エステル、イソブチルカルボン酸エステル及びイソプロピルカルボン酸エステルなどを使用することができる。
上記した溶剤及び活性剤の中から目的に合った物質を選択し、それらの添加量を適宜調整することによって好適なフラックスが得られる。例えば、はんだ合金や基板等の接合面の酸化膜が強固である場合は、ロジンや活性剤を多めに添加し、溶剤で粘性や流動性を調整するのが好ましい。
本発明のはんだペーストでは、フラックスにチキソ剤を含有させてもよい。これにより、チキソ性を調整することができるので、より一層使い易いはんだペーストになり得る。チキソ剤としては、例えば、ひまし油、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ステアリン酸アミド、N.N−ジステアリルアジピン酸アミド等を用いることができる。
上記したはんだ合金とフラックスとを混合することによって得られるはんだペーストは、フラックスの作用によって非常に優れた濡れ性を備えている上、はんだ合金については加工が困難なシート形状等に加工する必要がなく、加工しやすい粉末状で使用することができる。
本発明のはんだ合金は、はんだ形状について特に限定がないので、ワイヤ、ボール、ペーストなどの任意の形状に作製することができる。以下の実施例においては、ワイヤ形状及びペースト形状について説明するが、本発明はかかる実施例の形状に限定されるものではない。まずは、ワイヤ形状のはんだ合金について説明する。
[実施例1]
原料として、それぞれ純度99.99質量%以上のBi、Sn、Zn、Ag、Ni、SbおよびPを準備した。大きな薄片やバルク状の原料については、溶解後の合金においてサンプリング場所による組成のバラツキがなく均一になるように留意しながら切断、粉砕等を行い、3mm以下の大きさに細かくした。次に、高周波溶解炉用グラファイトるつぼに、これら原料から所定量を秤量して入れた。Pは溶融し難く、また酸化して揮発しやすいうえ、第2類の危険物であり、そのまま添加すると発火してしまうため、予めSnと合金を作ってから砕いて再溶解させた。
原料の入ったるつぼを高周波溶解炉に入れ、酸化を抑制するために窒素を原料1kg当たり0.7L/分以上の流量で流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、原料を加熱溶融させた。金属が溶融しはじめたら混合棒でよく攪拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混ぜた。十分溶融したことを確認した後、高周波電源を切り、速やかにるつぼを取り出してるつぼ内の溶湯をはんだ母合金の鋳型に流し込んだ。鋳型には、はんだ合金の製造の際に一般的に使用している形状と同様のものを使用した。
このようにして各原料の混合比率を様々に変えた試料1〜27のはんだ母合金を作製した。これら試料1〜27のはんだ母合金の組成を、ICP発光分光分析器(SHIMAZU S−8100)を用いて分析した。その分析結果を下記の表1に示す。
Figure 2016026883
次に、上記表1に示す試料1〜27のはんだ母合金の各々に対して、下記に示すように、濡れ性の評価として目視による基板上でのはんだ合金の広がりの判定、接合性の第1の評価としてボイド率の測定、接合性の第2の評価としてシェア強度の測定、信頼性の評価としてヒートサイクル試験を行った。なお、はんだ合金の濡れ性等の評価は、通常、はんだ形状に依存しないため、ワイヤ、ボール、ペーストなどの形状で評価してもよいが、本実施例においては、ワイヤに成形して評価した。
<ワイヤへの加工>
上記表1に示す試料1〜27のはんだ母合金を各々押出機にセットし、外径0.70mmのワイヤを加工した。具体的には、あらかじめ押出機をはんだ組成に適した温度に加熱しておき、各はんだ母合金をセットした。押出機出口から押し出されるワイヤ状のはんだは、まだ熱く酸化が進行し易いため、押出機出口は密閉構造とし、その内部に不活性ガスを流した。これにより、可能な限り酸素濃度を下げて酸化が進まないようにした。油圧で圧力を上げていき、はんだ母合金をワイヤ形状に押し出していった。ワイヤの押出速度はワイヤが切れたり変形したりしないように予め調整しておいた速度とし、同時に自動巻取機を用いて同じ速度で巻き取るようにした。
<濡れ性の評価1>
濡れ性の評価1としては、上記ワイヤ加工により得たワイヤ状のはんだ合金を用いて行った。まず、濡れ性試験機(装置名:雰囲気制御式濡れ性試験機)を起動し、加熱するヒーター部分に2重のカバーをしてヒーター部の周囲4箇所から窒素を流した(窒素流量:各12L/分)。その後、ヒーター設定温度を融点より50℃高い温度にして加熱した。
ヒーター温度が設定温度で安定した後、Niメッキ層(膜厚:5.0μm)が形成されたCu基板(板厚:約0.70mm)をヒーター部にセッティングし、25秒加熱した。次に、はんだ合金を上記Cu基板の上に載せ、25秒加熱した。加熱が完了した後はCu基板をヒーター部から取り上げてその横の窒素雰囲気が保たれている場所に一旦移して冷却した。十分に冷却した後、図1に示すようにCu基板1のNi層2上にはんだ試料3が接合された接合体を大気中に取り出してその接合部分を目視により確認した。接合できなかった場合を「×」、接合できたが濡れ広がりが悪かった場合(はんだが盛り上がった状態)を「△」、良好に濡れ広がった状態で接合できた場合(はんだがCu基板に薄く広がった場合)を「○」と評価した。
<接合性の評価1(ボイド率の測定)>
上記濡れ性の評価の際と同様にして得た図1に示すような接合体に対して、Cu基板1上のNi層2とはんだ試料3との間のボイド率をX線透過装置(株式会社東芝製、TOSMICRON−6125)を用いて測定した。具体的には、接合体に対してはんだ試料3側からその接合面に垂直にX線を照射することでボイド面積と接合面積とを測定し、それらを下記計算式1に代入してボイド率を算出した。
[計算式1]
ボイド率(%)=ボイド面積÷(ボイド面積+はんだ合金とCu基板の接合面積)×100
<接合性の評価2(シェア強度の測定)>
はんだの接合性を確認するため、図2に示すようなCu基板1(板厚:0.3mm)上のNi層2(膜厚:3.0μm)に各はんだ試料3を介してSiチップ4が接合された接合体を作製し、そのシェア強度を測定した。接合体はダイボンダー(Westbond社製、型式:7327)を用いて行った。まず装置のヒーター部に窒素ガスを流しながら各はんだ試料の融点より50℃高い温度になるようにした後、ヒーター部に基板を乗せ15秒加熱し、その上にはんだ試料を乗せ20秒加熱し、さらに溶融したはんだの上にチップを載せスクラブを3秒かけた。スクラブ終了後、接合体を速やかに窒素ガスの流れている冷却部に移し、室温まで冷却後、大気中に取り出した。シェア強度は試料27の測定値を100%として相対評価を行った。
<信頼性の評価1(ヒートサイクル試験1)>
はんだ接合の信頼性を評価するためにヒートサイクル試験1を行った。この試験は、上記濡れ性評価1と同様にしてはんだ合金が接合されたCu基板を各試料に対して2つずつ作製し、それぞれ−55℃の冷却と125℃の加熱とからなる冷却加熱サイクルを300サイクル及び500サイクル繰り返した。その後、はんだ合金が接合されたCu基板を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(装置名:HITACHI S−4800)により接合面の観察を行った。接合面に剥がれやはんだにクラックが入っていた場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。上記の評価結果を表2に示す。
Figure 2016026883
上記表2の結果から分かるように、本発明の要件を満たす試料1〜18のはんだ合金は、各評価項目において良好な特性を示している。つまり、濡れ性の評価1では、NiめっきCu基板への濡れ性は非常に良好であり、とくにPを添加した試料は非常に濡れ広がり方が早く、試料がCu基板に接した瞬間に薄く濡れ広がった。接合性の評価1としてのボイド率の測定では全ての試料においてボイドは発生しなかった。接合性の評価2としてのシェア強度の測定では全て120%以上であり高い接合強度が得られることを確認できた。特に、はんだ合金組成がより好ましい範囲にある試料2〜3、7〜9、11〜18は125%を超える非常に高い接合強度が得られた。信頼性の評価1としてのヒートサイクル試験1においても良好な結果が得られており、いずれも500サイクル経過後も不良は現れなかった。
一方、本発明の要件を満たしていない比較例の試料19〜27のはんだ合金は、上記評価のうち少なくともいずれかにおいて好ましくない結果となった。つまり、濡れ性の評価1では、NiめっきCu基板への濡れ性は試料23〜25で接合できなかった。接合性の評価1としてのボイド率の測定では少なくとも8%以上のボイドが発生した。接合性の評価2としてのシェア強度の測定では101%以下であった。信頼性の評価としてのヒートサイクル試験1においては全ての試料において500サイクルまでに不良が発生した。次にはんだペーストの実施例について説明する。
[実施例2]
<はんだ合金粉末の製造方法>
粉末を製造するためのアトマイズ用として直径140mmの円柱形状の母合金が作製可能な鋳型を使用した以外は上記実施例1と同様にして、原料の混合比率がそれぞれ異なる試料31〜57のはんだ母合金を作製した。これらの試料31〜57のはんだ母合金の各々に対して、ICP発光分光分析器(SHIMAZU S−8100)を用いて組成分析を行った。その分析結果を下記表3に示す。
Figure 2016026883
次に、高周波溶解方式の気相中アトマイズ装置(日新技研株式会社製)を用いて、上記した試料31〜57のはんだ母合金をそれぞれ1ロットずつ気相中アトマイズすることで粉末に加工していった。具体的には、各はんだ母合金の試料を高周波溶解るつぼに投入し、蓋をして密閉した後、窒素フローして実質的に酸素が無い状態にした。試料排出口や回収容器部分も同様に窒素フローして実質的に酸素が無い状態にした。
この状態で高周波電源のスイッチを入れ、はんだ母合金を400℃以上に加熱し、合金が十分溶融した状態で溶融したはんだ母合金に窒素で圧力を加えてアトマイズした。このようにしてアトマイズで作製されたはんだ微粉を容器に回収し、この容器中で十分に冷却してから大気中に取り出した。十分に冷却してから取り出す理由は、高温状態で取り出すと発火したり、はんだ微粉が酸化して濡れ性等の効果を下げてしまうからである。取り出した各粉末はそれぞれ目開きが20μmと50μmの篩で分級して、粒径20〜50μmのはんだ合金微粉末試料(以下、はんだ微粉とも称する)を得た。
<はんだペーストの製造方法>
次に、上記はんだ母合金の試料31〜57から作製したはんだ微粉をそれぞれフラックスと混合してはんだペーストを作製した。フラックスには、ベース材としてロジンを、活性剤としてジエチルアミン塩酸塩((CNH・HCl)を、溶剤としてエチルアルコールを用いた。それぞれの含有量はフラックスを100質量%として、ロジンが21質量%、ジエチルアミン塩酸塩が0.4質量%、残部をエチルアルコールとした。このフラックスと上記はんだ微粉とをフラックス9.1質量%、はんだ微粉90.9質量%の割合で調合し、小型ブレンダーを用いて混合してはんだペーストとした。
このようにして得た試料31〜57のはんだペーストの各々に対して、濡れ性の評価2として粉末のはんだ溶け残りの確認を行い、濡れ性の評価3として長短比の測定を行い、接合性の評価3としてボイド率の測定を行い、接合性の評価4としてシェア強度の測定を行い、信頼性の評価2としてヒートサイクル試験2を行った。以下、各評価法について詳細に説明する。
<濡れ性の評価2(はんだ粉末の溶け残りの確認)>
濡れ性の評価2として、Ni層(層厚:約2.5μm)を形成させたCu基板(板厚:約0.70mm)にマスクを使って各試料のはんだペーストを直径2.0mm、厚さ150μmの形状に印刷し、そのはんだペーストが印刷された基板を以下のように加熱、接合して接合体を作り、光学顕微鏡ではんだ粉末の溶け残りが無いか確認した。
具体的に説明すると、まず濡れ性試験機(装置名:雰囲気制御式濡れ性試験機)を起動し、加熱されるヒーター部分に2重のカバーをしてヒーター部の周囲4箇所から窒素を流した(窒素流量:各12L/分)。その後、ヒーター設定温度を各試料の融点より50℃高く設定して加熱した。ヒーター温度が設定温度で安定した後、各試料のはんだペーストを塗布したCu基板をヒーター部にセッティングし、25秒加熱した。その後、Cu基板をヒーター部から取り上げて、その横の窒素雰囲気が保たれている場所に一旦移して冷却した。十分に冷却した後、大気中に取り出した。
取り出した接合体は、はんだ粉末の溶け残りを確認するためあえて洗浄等は行わなかった。このようにして作製した各接合体に対して、はんだが接合された面をはんだ接合面に垂直な方向から光学顕微鏡で観察してはんだ粉末の溶け残りが無いか確認した。そして、はんだ粉末が残っていた場合を「×」、はんだ粉末が残っておらずはんだ粉末が溶けてきれいな金属光沢のあるはんだが基板に濡れ広がっていた場合を「○」とした。
<濡れ性の評価3(長短比の測定)>
濡れ性の評価3として、上記はんだ粉末の溶け残りの確認の際に作製した接合体と同様の接合体をはんだペーストの試料毎に作製し、その接合体をアルコールで洗浄した後、真空乾燥した。このようにして得た図3に示すようなCu基板1上のNi層2上にはんだ試料3が接合された接合体に対して、濡れ広がったはんだ試料3の長短比を求めた。具体的には、図4に示すように最大のはんだ濡れ広がり長さである長径X1、及び最小のはんだ濡れ広がり長さである短径X2を測定し、それらを下記計算式2に代入して長短比を算出した。
[計算式2]
長短比=長径X1÷短径X2
上記計算式2の長短比が1に近いほど基板上に円形状に濡れ広がっており、濡れ広がり性がよいと判断できる。逆に長短比が1より大きくなるに従って濡れ広がり形状が円形からずれていくので、溶融はんだの移動距離にバラつきがでて反応が不均一になったり合金層の厚みや成分バラつきが大きくなったりして均一で良好な接合ができなくなってしまう。さらにある方向に多くのはんだが流れるように広がってはんだ量が過剰な箇所とはんだが無い箇所ができ、接合不良や場合よっては接合できなかったりしてしまう。
<接合性の評価3(ボイド率の測定)>
接合性の評価3として、上記のはんだ粉末の溶け残りの確認の際に作製した接合体と同様の接合体をはんだペーストの試料毎に作製し、その接合体をアルコールで洗浄した後、真空乾燥した。このようにして得た図3に示すような接合体に対して、Cu基板1上のNi層2とはんだ試料3との間のボイド率をX線透過装置(株式会社東芝製、TOSMICRON−6125)を用いて測定した。具体的には、上記実施例1の場合と同様に、接合体に対してはんだ試料3側からその接合面に垂直にX線を照射することでボイド面積と接合面積とを測定し、それらを前述した計算式1に代入してボイド率を算出した。
<接合性の評価4(シェア強度の測定)>
はんだの接合性を確認するため、図2に示すようなCu基板1(板厚:0.7mm)上のNi層2(層厚:2.5μm)に各はんだ試料3を介してSiチップ4が接合された接合体を作製し、そのシェア強度を測定した。
具体的にはダイボンダー装置(Westbond製、型式:3727C)のヒーター部に窒素ガスを流しながら各はんだ試料の融点より40℃高い温度になるように設定した後、各試料のはんだペーストをマスクを使って2.0mm×2.0mm、厚さ120μmの形状に印刷したCu基板をヒーター部に乗せて35秒加熱し、溶融したはんだの上に2.0mm×2.0mmのSiチップを載せてスクラブを5秒かけた。スクラブ終了後、得られたSiチップ接合体を速やかに窒素ガスの流れている冷却部に移し、室温まで冷却してから大気中に取り出した。このようにして得たSiチップ接合体に対してシェア強度試験を用いてシェア強度を測定した。具体的には接合体を装置に固定してSiチップを治具によって横方向から押してシェア強度を測定した。シェア強度はBi−42質量%Snはんだペーストを用いた試料57の値を100%として相対評価を行った。
<信頼性の評価2(ヒートサイクル試験2)>
はんだ接合の信頼性を評価するためにヒートサイクル試験2を行った。この試験は、上記はんだ粉末の溶け残りの確認の際に作製した接合体と同様の接合体を作製し、それらをアルコールで洗浄した後、真空乾燥したものを用いて試験した。かかる接合体は各試料に対して2つずつ作製し、それぞれ−40℃の冷却と250℃の加熱とからなる冷却加熱サイクルを300サイクル及び500サイクル繰り返した。その後、はんだ合金が接合されたCu基板を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(日立製作所製、S−4800)により接合面の観察を行った。接合面にはがれやはんだにクラックが入っていた場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。上記した評価結果を下記表4に示す。
Figure 2016026883
上記表4から分かるように、本発明の要件を満たす試料31〜48のはんだ合金を含んだはんだペーストは、各評価項目において良好な特性を示している。すなわち、濡れ性の評価2では粉末の溶け残りは全く無かった。濡れ性の評価3では長短比が全て1.01以下であり円状に均一に濡れ広がっていた。接合性の評価3ではボイドは一切発生しなかった。接合性の評価4ではBi−42質量%Snはんだペーストを用いた試料57のシェア強度100%に対して全て110%以上の高い値を示した。信頼性の評価では500サイクルまで不良が発生しなかった。このように良好な結果が得られた理由は本発明のはんだ合金が適正な組成範囲内であり、はんだペーストが適切な条件で製造されたからであると言える。
一方、比較例である試料49〜57の各はんだペーストは、上記の評価のうち少なくともいずれかにおいて好ましくない結果となった。すなわち、はんだ粉末の溶け残りは試料49〜56で発生し、長短比は1.05以上であった。さらにシェア強度は70〜100%と低く、ボイド率については4〜13%程度であってボイドがかなりの割合で発生した。信頼性の評価であるヒートサイクル試験では全ての試料において300サイクルまでに不良が発生した。
1 Cu基板
2 Ni層
3 はんだ試料
4 Siチップ


Claims (7)

  1. Snを50.0質量%を超え70.0質量%以下含有し、Znを1.0質量%以上5.2質量%以下含有し、残部が製造上不可避的に含有される元素を除きBiからなることを特徴とするPbフリーBi−Sn−Zn系はんだ合金。
  2. Snを55.0質量%以上65.0質量%以下含有し、Znを1.2質量%以上4.0質量%以下含有することを特徴とする、請求項1に記載のPbフリーBi−Sn−Zn系はんだ合金。
  3. Ag、Ni、Sb及びPのうちの1種以上を更に含有し、Agを含有する場合は0.01質量%以上3.0質量%以下、Niを含有する場合は0.01質量%以上0.7質量%以下、Sbを含有する場合は0.01質量%以上5.0質量%以下、Pを含有する場合は0.500質量%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のPbフリーBi−Sn−Zn系はんだ合金。
  4. はんだ合金の金属組織がラメラ組織を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のPbフリーBi−Sn−Zn系はんだ合金。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のBi−Sn−Zn系はんだ合金粉末とフラックスとの混合により作製されることを特徴とするBi−Sn−Zn系はんだペースト。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のBi−Sn−Zn系はんだ合金又は請求項5に記載のはんだペーストによって接合された電子部品実装基板。
  7. 請求項6に記載の電子部品が実装されている基板を搭載した装置。


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