JP2016087608A - エネルギー吸収量が制御されたPbフリーAu−Ge−Sn系はんだ合金及びこれを用いて封止若しくは接合された電子部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】濡れ広がり性や接合性に優れるうえ、高い信頼性を要求される用途に使用可能な高温用のAu−Ge−Sn系はんだ合金を低コストで提供する。
【解決手段】Geを0.01質量%以上10.0質量%以下、好ましくは2.0質量%以上3.5質量%以下含有し、Snを32.0質量%以上40.0質量%以下、好ましくは34.0質量%以上39.0質量%以下含有し、必要に応じてPを0.500質量%以下含有し、残部がAu及び不可避不純物からなるAu−Ge−Sn系はんだ合金であって、その表面はJIS Z8781−4に準拠したL*a*b*表示系におけるL*が52.0以上82.0以下、a*が−10.0以上10.0以下、b*が−8.0以上15.0以下である。
【選択図】 なし
【解決手段】Geを0.01質量%以上10.0質量%以下、好ましくは2.0質量%以上3.5質量%以下含有し、Snを32.0質量%以上40.0質量%以下、好ましくは34.0質量%以上39.0質量%以下含有し、必要に応じてPを0.500質量%以下含有し、残部がAu及び不可避不純物からなるAu−Ge−Sn系はんだ合金であって、その表面はJIS Z8781−4に準拠したL*a*b*表示系におけるL*が52.0以上82.0以下、a*が−10.0以上10.0以下、b*が−8.0以上15.0以下である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、Auを主成分とするPbフリーはんだ合金に関し、特にエネルギー吸収量が制御されたPbフリーのAu−Ge−Sn系はんだ合金及びこれを用いて封止若しくは接合された電子部品に関する。
近年、環境に有害な化学物質に対する規制がますます厳しくなってきており、この規制は電子部品などを基板に接合する目的で使用されるはんだ材料に対しても例外ではない。はんだ材料には古くから鉛(Pb)が主成分として使われ続けてきたが、すでにRoHS指令などで鉛は規制対象物質になっている。このため、鉛を含まないはんだ(以降、Pbフリーはんだ又は無鉛はんだとも称する)の開発が盛んに行われている。
半導体素子を基板に接合する際に使用するはんだは、その使用限界温度によって高温用(約260℃〜400℃)と中低温用(約140℃〜230℃)とに大別され、それらのうち、中低温用のはんだに関してはSnを主成分とするもので鉛フリーはんだが実用化されている。例えば中低温用の鉛フリーはんだ材料としては、特許文献1にSnを主成分とし、Agを1.0〜4.0質量%、Cuを2.0質量%以下、Niを1.0質量%以下、Pを0.2質量%以下含有する無鉛はんだ合金組成が開示されており、特許文献2にはAgを0.5〜3.5質量%、Cuを0.5〜2.0質量%含有し、残部がSnからなる合金組成の無鉛はんだが開示されている。
一方、高温用のPbフリーはんだに関しても様々な機関で研究開発が進められており、例えば特許文献3には、Biを30〜80at%含み、溶融温度が350〜500℃のBi/Agロウ材が開示されている。また、特許文献4には、Biを含む共昌合金に2元共昌合金を加え、更に添加元素を加えたはんだ合金が開示されており、このはんだ合金は4元系以上の多元系はんだではあるものの、液相線温度の調整とばらつきの減少が可能となることが示されている。
また、Auを主成分とする高価な高温用のPbフリーはんだ材料としては、Au−Sn合金やAu−Ge合金などが水晶デバイス、SAWフィルター、MEMS(微小電子機械システム)等の電子部品を有する電子機器で使用されている。例えば、特許文献5にはAu−Ge、Au−Sb又はAu−Siの板状低融点Au合金ロウを予加熱し、次に加熱保温部を設けたプレス金型にその材料を順次送って100℃〜350℃の温度範囲でプレス加工を行うことを特徴とする板状低融点Au合金ロウのプレス加工方法について記載されている。
また、特許文献6には、半導体パッケージの外部リードのロウ付けに用いられるロウ材として、Agを10〜35wt%、In、Ge及びGaのうち少なくとも1種類を合計で3〜15wt%、及び残部のAuからなるAu合金であって、エレクトロマイグレーションテストにおいて短絡するまでの時間が1.5時間以上であることを特徴とするエレクトロマイグレーション防止性ロウ材について記載されている。このロウ材はAuを主成分とすることでエレクトロマイグレーションを防止でき、添加元素の効果としてはAgを10〜35wt%加えることでロウ付けの強度が得られ、In、Ge及びGaのうち少なくとも1種類を合計で3〜15wt%加えることで融点を下げることができると記載されている。
更に特許文献7には、Au/Ge/Snを含む3元合金のロウ材において、液相が発生し始める温度をTs、完全に液相になる温度をTlとした場合に、Tl−Ts<50度であることを特徴とするロウ材について記載されている。そして、この特許文献7によれば、Pbフリーを実現しつつ、リフロー温度で溶融せず、接合のための温度を抑えることで接着剤や部品自体に損傷を与えることがない、接合に好適なロウ材を提供できるとされている。
高温用の鉛フリーはんだ材料に関しては、上記した引用文献以外にもさまざまな機関で開発がなされてはいるが、未だ低コストで汎用性のあるはんだ材料は見つかっていないのが実情である。すなわち、一般的に電子部品や基板には熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの比較的耐熱温度の低い材料が多用されているため、作業温度を400℃未満、望ましくは370℃以下にする必要がある。しかしながら、例えば特許文献3に開示されているBi/Agロウ材では、液相線温度が400〜700℃と高いため、接合時の作業温度も400〜700℃以上になると推測され、接合される電子部品や基板の耐熱温度を超えてしまうことになる。
また、Au−Sn系はんだやAu−Ge系はんだの場合は非常に高価なAuを多量に使用するため、汎用のPb系はんだやSn系はんだなどに比較して非常に高価であり、実用化されてはいるものの、その用途は水晶デバイス、SAWフィルター、及びMEMSなどのとくに高い信頼性が必要とされる箇所のはんだ付けに限られている。加えて、Au系はんだは非常に硬くて加工しづらいため、例えば、シート形状に圧延加工する際に時間がかかったり、疵のつきにくい特殊な材質のロールを用いたりしなければならず、コストがかかる要因になっている。また、プレス成形時にもAu系はんだの硬くて脆い性質のため、クラックやバリが発生し易く、他のはんだに比較して収率が格段に低い。ワイヤ形状に加工する場合にも似たような深刻な問題があり、非常に圧力の高い押出機を使用しても硬いため押出速度が遅く、Pb系はんだの数百分の1程度の生産性しかない。
以上のような問題を含め、Au系はんだが抱える様々な問題に対処すべく、上記した特許文献5〜特許文献7に記載の技術が提案されている。しかしながら、特許文献5の技術には次のような問題がある。即ち、Au−Ge、Au−Sb、Au−Si等の板状(シート状)低融点Au合金ロウの素材特性は、室温においてガラス板のような脆性を示し、また方向性があるため、一般に長手方向に平行な面においては僅かな曲げに対しても破断し易く、亀裂の伝播が進み易いという問題を抱えている。この対策として、コンパウンド金型を用いたプレス加工を行うことが従来から行われているが、このコンパウンド金型技術においても金型精度の問題や金型寿命の問題がある。
特許文献5では加熱保温部を設けたプレス金型に材料を順次送って100〜350℃の温度範囲でプレス加工する技術で対処することが示されている。しかし、このような温間でのプレス加工でも課題は山積している。即ち、温間プレスでは、はんだ合金の酸化が進行してしまう。そのため、Auを多く含有するはんだであっても、その他の金属、例えばGe、Sb、又はSnなどを含んでいるAu系はんだは、これらの元素の酸化進行を防ぐことができず、常温より高い温度でプレスした時に表面が酸化して濡れ性が大きく低下してしまう。更に、温度が高い状態で処理されるので常温に比べてはんだが膨張し、工夫をしても常温でのプレスに比べて形状の精度が出せない。加えて、比較的柔らかくなったはんだは金型に張り付き易くなり、はんだが撓んだり歪んだりした状態でプレスすることになるため、バリや欠けが発生しやすくなる。また温間プレスは通常のプレスよりも設備費が高価になることも課題である。
特許文献6に記載のAu合金は、Ag−28wt%CuやAg−15wt%CuのAg系ロウ材との比較において、エレクトロマイグレーションの発生を防止でき、強固で安定したロウ付け強度が得られるロウ材として開発されたものである。そのため、1%NaCl溶液中に放置した後のろう付け強度の評価は行っているものの、濡れ広がりなどを含めた接合状態の確認は行われていない。信頼性評価には、前記接合状態を含めた応力緩和性を確認するための温度サイクル試験などを実施する必要があるが、特許文献6の技術では未実施で、高い信頼性が得られるかどうかが確認できていない。
特許文献7に記載のAu/Ge/Snを含む3元合金のロウ材は、液相線温度と固相線温度の差が50℃未満という極めて広い組成範囲を包含するものであるため、このような広い組成範囲において同様の効果や特性を示すロウ材のみが得られることはない。上記組成範囲に属するAu−12.5質量%Ge合金(共晶点の組成)とAu−20質量%Sn合金(共晶点の組成)とを比較した場合、それらの特性は明らかに異なっている。
即ち、Geは半金属であるために、Au−12.5質量%Ge合金はAu−20質量%Sn合金に比べて明らかに加工性に劣る。例えば、圧延加工する際に、クラック等の発生により収率はAu−12.5質量%Geの方が低くなる。これらにそれぞれ少量の第三元素を含有させた場合であっても、当該第三元素が固溶することで特性が大きく変わらない組成範囲が存在するため、例えばSnを少量添加したAu−12.5質量%Ge−Sn合金とGeを少量添加したAu−20質量%Sn−Ge合金は上記特許文献7の組成範囲に属するが、この2種類の3元合金ロウ材の特性は大きく異なる。
更に、Ge−Sn合金について考えた場合、固相線温度が231℃であり、高温用はんだとしては融点が低すぎる。当然、このGe−Sn合金に少量のAuが固溶した場合でも、特許文献7の特許請求の範囲に規定された液相線温度と固相線温度の差が50℃未満の領域は存在するが、高温用はんだとしては融点が低すぎることに変わりはない。
本発明は、上記した従来の事情に鑑みてなされたものであり、濡れ広がり性や接合性に優れることによって高い接合信頼性を有し、水晶デバイス、SAWフィルター等の非常に高い信頼性を要求される接合においても十分に使用することができ、しかも生産性が高くて低コストで作製可能な高温用のPbフリーAu−Ge−Sn系はんだ合金を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明が提供するAu−Ge−Sn系はんだ合金は、Geを0.01質量%以上10.0質量%以下含有し、Snを32.0質量%以上40.0質量%以下含有し、残部がAu及び不可避不純物からなるAu−Ge−Sn系はんだ合金であって、その表面はJIS Z8781−4に準拠したL*a*b*表示系におけるL*が52.0以上82.0以下、a*が−10.0以上10.0以下、b*が−8.0以上15.0以下であることを特徴としている。
本発明によれば、鉛を含有せず、従来のAu系はんだよりも優れた濡れ広がり性や接合性を有する高温用のAu−Ge−Sn系はんだ合金を提供することができる。従って、本発明のAu−Ge−Sn系はんだ合金は、一般的な接合又は封止だけでなく、水晶デバイス、SAWフィルター、MEMSなどの非常に高い信頼性を要求される用途にも使用することが可能な高温用のPbフリーAu−Ge−Sn系はんだ合金を安価に提供することができる。
本発明のAu−Ge−Sn系はんだ合金は、極めて高価な従来のAu−Ge系はんだやAu−Sn系はんだのコストを下げると共に加工性を高めるため、主成分であるAuにSn及びGeを含有させている。即ち、Au、Sn、及びGeの3元系合金において、共晶点付近の組成を基本とすることにより、優れた加工性と応力緩和性に加えて高い接合信頼性を実現している。また、レーザー照射などの際のエネルギー吸収量を制御すべく、はんだ表面の色をL*a*b*表示系におけるL*、a*、及びb*で規定している。
これにより、はんだ接合時の濡れ広がり性や接合性を著しく向上させることができ、はんだ接合時の歩留まりを向上させることができる。更にはSnとGeの含有量を多くしてAu含有量を下げることでコストを大幅に削減することができる。以下、本発明のAu−Ge−Sn系はんだ合金に含まれる必須の元素及び必要に応じて添加される任意の元素、並びにはんだ表面の色を規定するL*a*b*表示系について詳しく説明する。
<Au>
Auは本発明のはんだ合金の主成分であり、必須の元素である。Auは非常に酸化されにくい元素であるため、高い信頼性が要求される半導体素子類の接合用や封止用のはんだとして特性面では最も適している。そのため、水晶デバイスやSAWフィルターの封止用としてAu系はんだが多用されており、本発明のはんだ合金もAuを主成分とすることで、上記したような高い信頼性が要求される技術分野での使用に適したはんだを提供する。
Auは本発明のはんだ合金の主成分であり、必須の元素である。Auは非常に酸化されにくい元素であるため、高い信頼性が要求される半導体素子類の接合用や封止用のはんだとして特性面では最も適している。そのため、水晶デバイスやSAWフィルターの封止用としてAu系はんだが多用されており、本発明のはんだ合金もAuを主成分とすることで、上記したような高い信頼性が要求される技術分野での使用に適したはんだを提供する。
ただし、Auは非常に高価な金属であるため、コストの点からはできるだけ使用しないことが望ましく、従って汎用品にはほとんど使用されていない。一方、本発明のはんだ合金はAuを主成分としながら、接合性や信頼性などの特性面ではAu−20質量%SnやAu−12.5質量%Geのはんだ合金と同等であって、且つAuの含有量を減らしてコストを下げるべく、後述するようにAuにSnとGeとを両方とも含んでいる。
<Ge>
Geは本発明のはんだ合金において必須の元素である。GeはAuと共晶合金を作り、固相線温度を356℃と低くできるため、従来からAu−12.5質量%Geはんだとして実用的に使われている。しかし、Au−12.5質量%GeはんだはAuを90質量%近く含有するため非常に高価である。このAu含有量を下げるべく、Au−Ge−Sn系合金の3元系において共晶点付近の組成としたものが本発明のはんだ合金である。
Geは本発明のはんだ合金において必須の元素である。GeはAuと共晶合金を作り、固相線温度を356℃と低くできるため、従来からAu−12.5質量%Geはんだとして実用的に使われている。しかし、Au−12.5質量%GeはんだはAuを90質量%近く含有するため非常に高価である。このAu含有量を下げるべく、Au−Ge−Sn系合金の3元系において共晶点付近の組成としたものが本発明のはんだ合金である。
Au−Ge−Sn系状態図を示す図1から分かるように、Au−Ge−Snの3元系における共晶点の組成は、Au=47原子%、Ge=6原子%、Sn=47原子%付近であり、質量%基準に換算すると、Au=60.6質量%、Ge=2.8質量%、Sn=36.5質量%付近となる。この共晶点付近の組成とすることによって、加工性や応力緩和性などの諸特性に優れたはんだ合金が得られる。加えて、融点を410℃程度まで下げることが可能になるため、はんだとして非常に使い易くなる。
具体的なGeの含有量は0.01質量%以上10.0質量%以下である。Geの含有量が0.01質量%未満では、Ge量が少なすぎるためGeを含有させた効果が実質的に現れない。一方、10.0質量%を超えると、液相線温度が高くなりすぎるため、溶融させることが困難になってしまう。また、Snを本発明の組成範囲で含有する場合においてGeの含有量が10.0質量%を超えると、はんだ合金が酸化され易くなってしまい、Au系はんだの特徴である高い信頼性を有する良好な接合ができなくなる。特に好ましいGeの含有量は、2.0質量%以上3.5質量%以下であり、この範囲内であると共晶点の組成により近いため、より加工性に優れると共に柔軟性も向上するため、より一層良好な接合が可能となる。
<Sn>
Snは本発明のはんだ合金において必須の元素であって、3元系の共晶点付近の組成とするために欠かせない元素である。Au−Ge合金やAu−Sn合金の代表的なはんだであるAu−12.5質量%GeはんだやAu−20質量%Snはんだは共晶点の組成であり、このため結晶が微細化しているので比較的柔軟である。しかし、共晶合金と言ってもGeは半金属であり、Au−20質量%Snの場合は金属間化合物から構成されるため、一般的なPb系はんだやSn系はんだに比べると遥かに硬くて脆い。そのため加工が難しく、例えば圧延によってシート状に加工する場合には、少しずつしか薄くしていくことができないため生産性が悪く、無理に加工速度を上げると圧延時に多数のクラックが入ってかえって収率が低下するおそれがある。
Snは本発明のはんだ合金において必須の元素であって、3元系の共晶点付近の組成とするために欠かせない元素である。Au−Ge合金やAu−Sn合金の代表的なはんだであるAu−12.5質量%GeはんだやAu−20質量%Snはんだは共晶点の組成であり、このため結晶が微細化しているので比較的柔軟である。しかし、共晶合金と言ってもGeは半金属であり、Au−20質量%Snの場合は金属間化合物から構成されるため、一般的なPb系はんだやSn系はんだに比べると遥かに硬くて脆い。そのため加工が難しく、例えば圧延によってシート状に加工する場合には、少しずつしか薄くしていくことができないため生産性が悪く、無理に加工速度を上げると圧延時に多数のクラックが入ってかえって収率が低下するおそれがある。
また、ボール状に加工するため、例えばアトマイズ法でボール状にする際にノズル先端が詰まりやすく、ボールの粒度分布が広くなってしまい収率が低下する。特に油中アトマイズの場合は、油の発火や劣化を防ぐためアトマイズ時の温度をAu−Ge合金の固相線温度(356℃)より十分高い温度に上げることができず、このためノズル先端に合金が偏析しやすくなり、ノズルの詰まりが起きやすくなって収率の低下を招きやすい。
SnをGeと共にAuに含有させることによって、上記した加工性や生産性の問題、更には信頼性等の問題を解決することが可能になる。即ち、SnとGeを両方とも含有させることにより、Au−Sn金属間化合物とGe固溶体の共晶組成とすることが可能になり、結晶が微細化し、加工性、生産性、応力緩和性、更には信頼性に優れたはんだ材料が得られる。しかも、SnとGeを合計で約30〜50質量%含有させることにより高価なAuの含有量を減らすことができるので、代表的なAu−12.5質量%やAu−20質量%Snよりも大幅にコストを削減することが可能になる。
具体的なSnの含有量は、32.0質量%以上40.0質量%以下である。Snの含有量が32.0質量%未満では、柔軟性向上等の効果が十分に発揮されず、また液相線温度と固相線温度の差が大きくなり、溶け別れ現象を起こしてしまう。一方、Snの含有量が40.0質量%を超えると、やはり溶け別れ現象が発生し易くなると共に、Auに比べて酸化されやすいSn含有量が多くなりすぎるため濡れ性の低下を招いてしまう可能性が高い。特に好ましいSnの含有量は34.0質量%以上39.0質量%以下であり、この範囲内であれば共晶点の組成により近くなるので、上記したSnの効果がより顕著に表れる。
<P>
Pは本発明のはんだ合金において必要に応じて含有される任意の元素であり、その効果は濡れ性の向上にある。Pが濡れ性を向上させるメカニズムは、Pは還元性が強いので、自ら酸化することによってはんだ合金表面の酸化を抑制すると共に基板面を還元し、濡れ性を向上させるものである。一般にAu系はんだは酸化されにくいため濡れ性に優れているが、接合面の酸化物を除去することはできない。ところが、Pは、はんだ表面の酸化膜の除去だけでなく、基板などの接合面の酸化膜も除去することが可能である。このはんだ表面と接合面の酸化膜除去の効果により、酸化膜によって形成される隙間(ボイド)も低減することができる。このPの効果によって、接合性や信頼性等が更に向上する。しかも、Pは、はんだ合金や基板を還元して酸化物になると同時に気化し、雰囲気ガスに流されるため、はんだや基板等に残らない。このため、Pの残渣が信頼性等に悪影響を及ぼす可能性はなく、この点からもPは優れた元素と言える。
Pは本発明のはんだ合金において必要に応じて含有される任意の元素であり、その効果は濡れ性の向上にある。Pが濡れ性を向上させるメカニズムは、Pは還元性が強いので、自ら酸化することによってはんだ合金表面の酸化を抑制すると共に基板面を還元し、濡れ性を向上させるものである。一般にAu系はんだは酸化されにくいため濡れ性に優れているが、接合面の酸化物を除去することはできない。ところが、Pは、はんだ表面の酸化膜の除去だけでなく、基板などの接合面の酸化膜も除去することが可能である。このはんだ表面と接合面の酸化膜除去の効果により、酸化膜によって形成される隙間(ボイド)も低減することができる。このPの効果によって、接合性や信頼性等が更に向上する。しかも、Pは、はんだ合金や基板を還元して酸化物になると同時に気化し、雰囲気ガスに流されるため、はんだや基板等に残らない。このため、Pの残渣が信頼性等に悪影響を及ぼす可能性はなく、この点からもPは優れた元素と言える。
本発明のはんだ合金がPを含有する場合、Pの含有量は0.500質量%以下が好ましい。Pは非常に還元性が強いため、微量を含有させれば濡れ性向上の効果が得られるが、0.500質量%を超えて含有しても濡れ性向上の効果はあまり変わらず、過剰な含有によってPやP酸化物の気体が多量に発生し、ボイド率を上げてしまったり、Pが脆弱な相を形成して偏析し、はんだ接合部を脆化して信頼性を低下させたりするおそれがある。
<L*、a*、b*>
一般的にはんだ合金をレーザー等で溶融する際、はんだ合金の表面状態によってエネルギーの吸収量が異なる。このような現象は個々のはんだ合金(例えば個々のはんだボール)間ではもちろん、1つのはんだ合金の場所によっても異なる。従って、個々の間の溶融過程が異なるのはもちろん、1つはんだ合金においても表面状態が異なることによって場所により溶融過程が異なる。その結果、はんだにエネルギーが与えられてから溶融が開始する時間や溶融完了時間、溶融後の濡れ広がり、基板等と反応して生成する合金相、金属組織などには非常に大きな違いが生ずるおそれがある。
一般的にはんだ合金をレーザー等で溶融する際、はんだ合金の表面状態によってエネルギーの吸収量が異なる。このような現象は個々のはんだ合金(例えば個々のはんだボール)間ではもちろん、1つのはんだ合金の場所によっても異なる。従って、個々の間の溶融過程が異なるのはもちろん、1つはんだ合金においても表面状態が異なることによって場所により溶融過程が異なる。その結果、はんだにエネルギーが与えられてから溶融が開始する時間や溶融完了時間、溶融後の濡れ広がり、基板等と反応して生成する合金相、金属組織などには非常に大きな違いが生ずるおそれがある。
このようなはんだ合金の溶融時及び接合後の状態を安定的に同程度にするため、はんだの表面状態を制御することが望ましい。そこで、本発明のAu−Ge−Sn系はんだ合金においては、はんだ表面の色をJIS Z8781−4で定義される色に関するL*a*b*表示系に基づいて規定しており、具体的には明度の指標であるL*を52.0以上82.0以下、色相及び彩度の指標であるa*を−10.0以上10.0以下、b*を−8.0以上15.0以下にしている。
このようびにAu−Ge−Sn系はんだ合金の表面の色をL*、a*、b*で規定することにより、レーザーなどではんだ合金を溶融する際、そのエネルギーの吸収量のバラつきを抑えて安定した溶融性や濡れ広がり性を得ることができる。そして、このように安定した溶融状態を実現することによって優れた接合性を得ることができ、高い接合信頼性が得られる。つまり、はんだ表面を測定することで得られるL*、a*、b*をそれぞれ上記範囲内にすることによって、はんだに照射したレーザーのエネルギー吸収量のバラつきが抑えられ、従ってレーザーの照射開始時からはんだ合金が溶融するまでの時間やはんだ合金が基板等に濡れ広がる際の濡れ広がり方が同じようになり、濡れ広がり面積のばらつきが抑えられ、均一な合金相の生成が可能になる。その結果、優れた接合性、接合信頼性を得ることができる。
なお、上記したようにL*を52.0以上82.0以下、a*を−10.0以上10.0以下、b*を−8.0以上15.0以下とした理由は実験結果によるものである。すなわち、実験結果ではL*、a*、b*がこれらの範囲から外れてしまうとレーザーのエネルギーや焦点などを調整しても十分に溶融せずに部分的にしか溶融しなかったり、逆に急速に溶けて濡れ広がりが不均一になったりした。特に、はんだ形状がボール状の場合は、L*を60.0以上74.0以下、a*を−5.0以上5.0以下、b*を−5.0以上12.0以下にすると、より一層均一に溶融して濡れ広がりが均一になり、良好な接合性が得られ、よって高い接合信頼性を得ることができた。
原料として、それぞれ純度99.99質量%以上のAu、Ge、Sn及びPを準備した。大きな薄片やバルク状の原料については、溶解後の合金においてサンプリング場所による組成のバラツキがなく、均一になるように留意しながら、切断及び粉砕などにより3mm以下の大きさに細かくした。次に、これら原料から所定量を秤量して、高周波溶解炉用のグラファイト製坩堝に入れた。
上記各原料の入った坩堝を高周波溶解炉に入れ、酸化を抑制するために窒素を原料1kg当たり0.7L/分以上の流量で流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、原料を加熱溶融させた。原料が溶融しはじめたら混合棒でよく撹拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混合した。十分溶融したことを確認した後、高周波電源を切り、速やかに坩堝を取り出し、坩堝内の溶湯をはんだ母合金の鋳型に流し込んだ。
鋳型には、圧延用として幅30mm×厚み5mmのものと液中アトマイズ用として直径24mmの円柱形状のものを目的に合わせて使用した。このようにして原料の混合比率を変えることにより試料1〜55のはんだ母合金を作製した。これらの試料1〜55の各はんだ母合金について、ICP発光分光分析器(SHIMAZU S−8100)を用いて組成分析を行った。得られた分析結果を下記表1及び表2に示す。
次に、試料1〜22、32〜45、52、53のはんだ母合金については、各々温間圧延機を用いて圧延を行いシート状に加工した後、プレスを用いて円板状の打抜き品に加工した。一方、試料23〜31、46〜51、54、55のはんだ母合金については、各々液中アトマイズ装置を用いてボール状に加工した。以下、これらの製造方法について述べる。
<打抜き品の製造方法>
幅30mm×厚さ5mm×長さ15cmの板状母合金からなる試料1〜22、32〜45、52、53の各々を温間圧延機で圧延した。圧延条件はすべての試料において同じにした。すなわち、圧延回数は5回、圧延速度は15〜30cm/秒、ロール温度は250℃とし、5回の圧延で50.0±1.2μmまで圧延した。このようにしてシート状に加工した各試料をプレス機で打抜いて、打抜き品を製造した。形状は直径0.8mmの円板形状とした。
幅30mm×厚さ5mm×長さ15cmの板状母合金からなる試料1〜22、32〜45、52、53の各々を温間圧延機で圧延した。圧延条件はすべての試料において同じにした。すなわち、圧延回数は5回、圧延速度は15〜30cm/秒、ロール温度は250℃とし、5回の圧延で50.0±1.2μmまで圧延した。このようにしてシート状に加工した各試料をプレス機で打抜いて、打抜き品を製造した。形状は直径0.8mmの円板形状とした。
<ボールの製造方法>
直径24mmの円柱状の母合金からなる試料23〜31、46〜51、54、55の各々を液中アトマイズ装置のノズルに投入し、このノズルを390℃に加熱した油の入った石英管の上部(高周波溶解コイルの中)にセットした。ノズル中の母合金を高周波により650℃まで加熱して5分保持した後、不活性ガスによりノズルに圧力を加えてアトマイズを行い、ボール状のはんだ合金とした。尚、ボール直径は設定値を0.30mmとし、予めノズル先端の直径を調整した。そして2軸分級器を用いて上記の方法により得られたボールを直径0.30±0.015mmの範囲で分級した。
直径24mmの円柱状の母合金からなる試料23〜31、46〜51、54、55の各々を液中アトマイズ装置のノズルに投入し、このノズルを390℃に加熱した油の入った石英管の上部(高周波溶解コイルの中)にセットした。ノズル中の母合金を高周波により650℃まで加熱して5分保持した後、不活性ガスによりノズルに圧力を加えてアトマイズを行い、ボール状のはんだ合金とした。尚、ボール直径は設定値を0.30mmとし、予めノズル先端の直径を調整した。そして2軸分級器を用いて上記の方法により得られたボールを直径0.30±0.015mmの範囲で分級した。
<表面状態の調整>
次に上記した試料1〜55を水素還元雰囲気中において、80〜250℃、0.1〜5.0時間の熱処理を行い、はんだ合金表面の酸化具合及び金属組織を調整し、L*、a*、b*を調整した。このように表面状態を調整した試料1〜55のはんだ合金の各々に対してL*、a*、b*を測定し、さらに各試料を基板に接合した後、接合後のはんだの縦横比を測定することで濡れ広がり性を評価すると共に、ボイド率を測定することで接合性を評価した。そして封止性を評価する試験として真空中で封止用容器を各はんだ合金試料で封止し、リーク状態を調べた。更に、上記封止性の試験で得られた封止体を用いて、ヒートサイクル試験による信頼性評価を行った。以下、L*、a*、b*の測定方法、縦横比の測定方法(濡れ広がり性評価)、ボイド率の測定方法(接合性評価)、リーク状態の確認方法(封止性評価)及びヒートサイクル試験方法(信頼性評価)について述べる。
次に上記した試料1〜55を水素還元雰囲気中において、80〜250℃、0.1〜5.0時間の熱処理を行い、はんだ合金表面の酸化具合及び金属組織を調整し、L*、a*、b*を調整した。このように表面状態を調整した試料1〜55のはんだ合金の各々に対してL*、a*、b*を測定し、さらに各試料を基板に接合した後、接合後のはんだの縦横比を測定することで濡れ広がり性を評価すると共に、ボイド率を測定することで接合性を評価した。そして封止性を評価する試験として真空中で封止用容器を各はんだ合金試料で封止し、リーク状態を調べた。更に、上記封止性の試験で得られた封止体を用いて、ヒートサイクル試験による信頼性評価を行った。以下、L*、a*、b*の測定方法、縦横比の測定方法(濡れ広がり性評価)、ボイド率の測定方法(接合性評価)、リーク状態の確認方法(封止性評価)及びヒートサイクル試験方法(信頼性評価)について述べる。
<L*、a*、b*の測定>
上記した試料1〜55について、L*、a*、b*を分光色測計(コニカミノルタオプティクス株式会社製、型式:CM−5)を用いて測定した。まず、標準光源によって装置の校正を行った。その後、各試料を測定台に載せ、蓋を閉じて自動で測定を行った。測定は正反射光を除去した測定とした(本装置においてSCEモード、正反射光を除去する測定モード)。各試料の測定結果は上記の表1及び表2に示した。
上記した試料1〜55について、L*、a*、b*を分光色測計(コニカミノルタオプティクス株式会社製、型式:CM−5)を用いて測定した。まず、標準光源によって装置の校正を行った。その後、各試料を測定台に載せ、蓋を閉じて自動で測定を行った。測定は正反射光を除去した測定とした(本装置においてSCEモード、正反射光を除去する測定モード)。各試料の測定結果は上記の表1及び表2に示した。
<濡れ性の評価(接合体の縦横比の測定)>
レーザーはんだ付け装置(アポロ精工社製)を起動し、窒素ガスを50L/分の流量で流した。そしてNiめっき層2(膜厚:3.0μm)を有するCu基板1(板厚:0.3mm)をレーザー照射部に自動搬送し、次にボール試料を供給して上記NiめっきされたCu基板1上に載せてレーザーにより0.3秒間、加熱・溶融し、その後該Cu基板1をレーザー照射部から自動搬送して、窒素雰囲気が保たれている搬送部で冷却し、十分に冷却した後大気中に取り出した。
レーザーはんだ付け装置(アポロ精工社製)を起動し、窒素ガスを50L/分の流量で流した。そしてNiめっき層2(膜厚:3.0μm)を有するCu基板1(板厚:0.3mm)をレーザー照射部に自動搬送し、次にボール試料を供給して上記NiめっきされたCu基板1上に載せてレーザーにより0.3秒間、加熱・溶融し、その後該Cu基板1をレーザー照射部から自動搬送して、窒素雰囲気が保たれている搬送部で冷却し、十分に冷却した後大気中に取り出した。
このようにして得た図2に示すようなCu基板1のNiめっき層2の表面上にはんだ合金試料3が接合された接合体に対して、濡れ広がったはんだ合金の縦横比を求めた。具体的には、図3に示すように最大のはんだ濡れ広がり長さ(長径:X1)と、最小のはんだ濡れ広がり長さ(短径:X2)とを測定し、下記計算式1により縦横比を算出した。
[計算式1]
縦横比=X1÷X2
縦横比=X1÷X2
上記計算式1の縦横比が1に近いほど基板上に円形状に濡れ広がっており、濡れ広がり性がよいと判断できる。1より大きくなるに従い、濡れ広がり形状が円形からずれていき、溶融はんだの移動距離にバラつきがでて反応が不均一になり合金層の厚みや成分バラつきが大きくなったりして均一で良好な接合ができなくなってしまう。さらにある方向に多くのはんだが流れるように広がってはんだ量が過剰な箇所とはんだが無い又は少ない箇所ができ、接合不良や場合よっては接合できなかったりしてしまう。
<接合性の評価(ボイド率の測定)>
上記濡れ性の評価の際と同様にして得られた図2に示す接合体に対して、はんだ合金が接合されたCu基板のボイド率をX線透過装置(株式会社東芝製、TOSMICRON−6125)を用いて測定した。具体的には、はんだ合金とCu基板の接合面を上部から垂直にX線を透過し、下記計算式2を用いてボイド率(%)を算出した。
上記濡れ性の評価の際と同様にして得られた図2に示す接合体に対して、はんだ合金が接合されたCu基板のボイド率をX線透過装置(株式会社東芝製、TOSMICRON−6125)を用いて測定した。具体的には、はんだ合金とCu基板の接合面を上部から垂直にX線を透過し、下記計算式2を用いてボイド率(%)を算出した。
[計算式2]
ボイド率=ボイド面積÷(ボイド面積+はんだ合金とCu基板の接合面積)×100
ボイド率=ボイド面積÷(ボイド面積+はんだ合金とCu基板の接合面積)×100
<封止性の評価(リーク状態の確認)>
はんだ合金による封止性を確認するため、図4に示す形状の封止用容器4を各はんだ合金試料3で封止した。封止には レーザーはんだ付け装置(アポロ精工社製)を用い、窒素ガスを50L/分の流量で流し、レーザーにより0.3秒間、加熱・溶融し、その直後に封止を行った。封止体はレーザー照射部から自動搬送して、窒素雰囲気が保たれている搬送部で冷却し、十分に冷却した後大気中に取り出した。このようにして準備した各封止体を水中に2時間浸漬し、その後、水中から封止体を取り出し、解体してリーク状態を確認した。そして、解体した封止体内部に水が入っていた場合はリークがあったと判断し、封止性の評価として「×」とした。このようなリークな無かった場合を「○」と評価した。
はんだ合金による封止性を確認するため、図4に示す形状の封止用容器4を各はんだ合金試料3で封止した。封止には レーザーはんだ付け装置(アポロ精工社製)を用い、窒素ガスを50L/分の流量で流し、レーザーにより0.3秒間、加熱・溶融し、その直後に封止を行った。封止体はレーザー照射部から自動搬送して、窒素雰囲気が保たれている搬送部で冷却し、十分に冷却した後大気中に取り出した。このようにして準備した各封止体を水中に2時間浸漬し、その後、水中から封止体を取り出し、解体してリーク状態を確認した。そして、解体した封止体内部に水が入っていた場合はリークがあったと判断し、封止性の評価として「×」とした。このようなリークな無かった場合を「○」と評価した。
<信頼性の評価(ヒートサイクル試験)>
上記濡れ性の評価の際と同様にして得た図2に示すようなNiめっきされたCu基板にはんだ合金試料が接合された接合体に対して、−40℃の冷却と250℃の加熱を1サイクルとして、所定のサイクル数だけ繰り返した。その後、該接合体を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(日立製作所製 S−4800)により接合面を観察した。そして、接合面に剥がれがある場合又ははんだ合金にクラックが入っていた場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」として評価した。この評価結果を、上記した封止性の評価結果、接合性評価、及び接合体の縦横比の測定結果と共に下記表3及び表4に示す。
上記濡れ性の評価の際と同様にして得た図2に示すようなNiめっきされたCu基板にはんだ合金試料が接合された接合体に対して、−40℃の冷却と250℃の加熱を1サイクルとして、所定のサイクル数だけ繰り返した。その後、該接合体を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(日立製作所製 S−4800)により接合面を観察した。そして、接合面に剥がれがある場合又ははんだ合金にクラックが入っていた場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」として評価した。この評価結果を、上記した封止性の評価結果、接合性評価、及び接合体の縦横比の測定結果と共に下記表3及び表4に示す。
上記表3及び表4から分かるように、本発明の要件を満たす試料1〜31のはんだ合金は、いずれも全ての評価項目において良好な特性を示している。即ち、濡れ広がり性の評価である縦横比は全て1.03以下であり、接合性の評価であるボイド率については全て0.4%以下でありほとんどボイドが発生しなかった。さらに封止性の評価であるリーク状態については全ての試料についてリークは見られず、信頼性の評価であるヒートサイクル試験では500回のサイクル試験まで不良は一切現れなかった。このように良好な結果が得られた理由は、いずれのはんだ合金試料においても本発明が規定する組成及びL*、a*、b*の要件を満たしていたため、レーザーのエネルギーを均一且つ安定的に吸収でき、よって優れた溶融性、濡れ広がり性、接合性等が得られたと考えられる。
一方、本発明の要件を満たしていない試料32〜55のはんだ合金はいずれかの評価項目において好ましくない結果になった。つまり、縦横比はいずれも1.1以上であり基板上に均一に濡れ広がらず、ボイド率はいずれも5%以上と多く発生しており、そしてリーク状態の確認では試料52〜53を除いてリークが発生し、ヒートサイクル試験ではいずれも500回までに不良が発生した。
このように、本発明の要件を満たすAu−Ge−Sn系はんだ合金は、諸特性に優れるうえ不良発生率も低く、よって非常に優れたはんだ合金であることが分かった。これにより作製時の歩留まりを向上させることができ、加えてAuの含有量が市場で現在使われているAu−Ge合金やAu−Sn合金よりも少ないのでコストを大幅に削減することが可能になる。
1 Cu基板
2 Niめっき層
3 はんだ合金試料
4 封止用容器
2 Niめっき層
3 はんだ合金試料
4 封止用容器
Claims (7)
- Geを0.01質量%以上10.0質量%以下含有し、Snを32.0質量%以上40.0質量%以下含有し、残部がAu及び不可避不純物からなるAu−Ge−Sn系はんだ合金であって、その表面はJIS Z8781−4に準拠したL*a*b*表示系におけるL*が52.0以上82.0以下、a*が−10.0以上10.0以下、b*が−8.0以上15.0以下であることを特徴とするAu−Ge−Sn系はんだ合金。
- Geを2.0質量%以上3.5質量%以下含有し、Snを34.0質量%以上39.0質量%以下含有することを特徴とする、請求項1に記載のAu−Ge−Sn系はんだ合金。
- 形状がボール状である場合は、L*が60.0以上74.0以下、a*が−5.0以上5.0以下、b*が−5.0以上12.0以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のAu−Ge−Sn系はんだ合金。
- Pを0.500質量%以下含有することを特徴とする、請求項1〜3に記載のAu−Ge−Sn系はんだ合金。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のAu−Ge−Sn系はんだ合金を用いて封止されていることを特徴とする水晶デバイス。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のAu−Ge−Sn系はんだ合金を用いて封止されていることを特徴とするSAWフィルター。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のAu−Sn系はんだ合金を用いて接合された電子部品を含むことを特徴とする電子機器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2014220872A JP2016087608A (ja) | 2014-10-29 | 2014-10-29 | エネルギー吸収量が制御されたPbフリーAu−Ge−Sn系はんだ合金及びこれを用いて封止若しくは接合された電子部品 |
Applications Claiming Priority (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016112587A (ja) * | 2014-12-15 | 2016-06-23 | 住友金属鉱山株式会社 | エネルギー吸収量が制御されたPbフリーAu−Ge系はんだ合金及びこれを用いて封止若しくは接合された電子部品 |
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-
2014
- 2014-10-29 JP JP2014220872A patent/JP2016087608A/ja active Pending
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