JP5848552B2 - 銅微粒子分散液の製造方法、銅微粒子の製造方法、銅微粒子分散液および銅微粒子 - Google Patents
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Description
ペースト中に、保護剤に対して反応性を有する酸無水物や有機酸を添加する方法がある(例えば、特許文献1参照)。脱離剤は、保護剤の脱離を促し、強い吸着性を示す保護剤であっても、速やかに脱離させることができる。
アルコール溶媒に還元剤、炭素数1〜6の脂肪族モノカルボン酸からなる保護剤、および、銅化合物としての銅酸化物もしくはカルボン酸銅を添加して、前記アルコール溶媒中に前記銅化合物を固体状態で分散し、
前記アルコール溶媒中で分散している前記銅化合物を還元することにより、平均粒子径が1nm以上100nm以下であり、前記炭素数1〜6の脂肪族モノカルボン酸からなる保護剤で表面が被覆されて凝集が抑制されるように構成された銅微粒子を形成し、
前記アルコール溶媒中に前記銅微粒子が分散していることを特徴とする銅微粒子分散液の製造方法である。
第1〜第3の態様のいずれかに記載の銅微粒子分散液を加熱することにより、前記脂肪族モノカルボン酸を脱離させ、前記銅微粒子の表面の銅酸化物膜を除去し、
前記銅微粒子分散液を精製して、前記脂肪族モノカルボン酸が脱離し、前記銅酸化物膜が除去された銅微粒子を得ることを特徴とする銅微粒子の製造方法である。
第5の態様の銅微粒子の製造方法により製造された銅微粒子を、前記脂肪族モノカルボン酸以外の保護剤を含む溶媒に添加して、前記脂肪族モノカルボン酸以外の前記保護剤を被覆し、前記脂肪族モノカルボン酸以外の前記保護剤で表面が被覆された前記銅微粒子が分散した銅微粒子分散液を形成し、
前記銅微粒子分散液を精製して、前記脂肪族モノカルボン酸以外の前記保護剤で被覆される前記銅微粒子を得ることを特徴とする銅微粒子の製造方法である。
アルコール溶媒中に、平均粒子径が1nm以上100nm以下であり、炭素数1〜6の脂肪族モノカルボン酸からなる保護剤で表面が被覆されて凝集が抑制されるように構成された銅微粒子が分散しており、
前記アルコール溶媒中に、前記脂肪族モノカルボン酸が存在していることを特徴とする銅微粒子分散液である。
平均粒子径が1nm以上100nm以下であり、炭素数1〜6の脂肪族モノカルボン酸からなる保護剤で表面が被覆されて凝集が抑制されるように構成されたことを特徴とする銅微粒子である。
そこで、本発明者らは、微細な銅微粒子の製造方法について、特に、銅微粒子の製造に用いる保護剤を検討した。その結果、カルボン酸は、銅に対して強い結合力(吸着性)を示し、銅微粒子の表面エネルギーを低下させ、銅微粒子の微細化(粒子径の制御)に効果的に作用することがわかった。しかも、カルボン酸は、銅微粒子の保護剤として機能するだけでなく、製造の際に、銅微粒子表面に生成する銅酸化物膜を好適に除去して、フラックス剤としても機能することがわかった。このフラックス剤は、半田で使用されるものであって、金属酸化物膜や汚れなどを除去する機能を有しており、アビエチン酸や乳酸などが含まれている。また、カルボン酸の中でも、1つのカルボキシル基を有するモノカルボン酸を用いることにより、保護剤の分解温度(脱離温度)を低減し、焼成温度を低減でき
ることがわかった。さらに、モノカルボン酸は溶媒中で容易に脱離するため、製造時に用いた保護剤としてのモノカルボン酸を、様々な特性を持つ別の保護剤に変更(置換)することができることがわかった。
そして、本発明者らは、保護剤としてモノカルボン酸を用いて銅微粒子を製造することにより、焼結性に優れ、かつ低温での焼成が可能な銅微粒子分散液を製造できることを見出し、本発明を創作するに至った。
本実施形態の銅微粒子分散液の製造方法においては、まず、溶媒に銅化合物を分散させて、この溶媒中に還元剤および保護剤を添加する。
銅化合物としては銅酸化物やカルボン酸銅が望ましい。上記銅酸化物は、除去の困難なアニオンを含まず、還元時に酸素だけを発生するため、分解温度の高い副生成物を形成しない。また、カルボン酸銅は、銅酸化物と同様にアニオンを含まず、分子中に含まれているカルボン酸をそのまま保護剤として利用できるため、製造時に添加するカルボン酸化合物の添加量を低減させ、より高い濃度で銅微粒子を製造することができる。
銅濃度(mass%)=銅質量(g)×100(mass%)/反応溶液の質量(g)
上記式において、反応溶液は、還元剤や保護剤を含む溶媒の質量となっている。銅濃度として、より望ましい範囲は1〜65mass%の範囲である。その理由は次のように説明される。銅化合物中に含まれている銅の質量を計算すると、銅濃度が89mass%以下であるものが多く、そのような銅化合物を用いた場合、89mass%を超える銅濃度で製造することは理論上不可能である。さらに、銅微粒子を製造するためには、還元剤と保護剤とが必要であり、化学量論上、銅化合物の還元に必要な還元剤量と、銅微粒子表面を保護する保護剤量を計算していくと、銅濃度の上限は89mass%以下であり、実験上も89mass%を超えるような条件では銅化合物が還元しない結果や、あるいは粗大な銅微粒子が生成する結果となる。他方、1mass%未満では、単位時間の銅微粒子製造量が少なく、製造法として実用的ではない。したがって、使用する原料の組み合わせにもよるが、微細な銅微粒子を高い効率で得るためには、銅濃度は1〜65mass%の範囲にあることが望ましい。
アミン類としては、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ジベンジルアミン、ステアリルモノエタノールアミン、デシルモノエタノールアミン、ヘキシルモノプロパノールアミン、ベンジルモノエタノールアミン、フェニルモノエタノールアミン、トリルモノプロパノールアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリステアリルアミン、トリオレイルアミン、トリベンジルアミン、ジオレイルモノエタノールアミン、ジラウリルモノプロパノールアミン、ジオクチルモノエタノールアミン、ジヘキシルモノプロパノールアミン、ジブチルモノプロパノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ステアリルジプロパノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、オクチルジプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、ベンジルジエタノールアミン、フェニルジエタノールアミン、トリルジプロパノールアミン、キシリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等を用いることができる。
ヒドラジン類としては,1,1−ジメチルヒドラジン、1−エチル−2−メチルヒドラジン、1,2−ジフェニルヒドラジン、1−メチル−1,2−ジフェニルヒドラジン、1,2−ジメチル−1,2−ジフェニルヒドラジン等がある。また、異なる化合物を2種類以上組み合わせて使用してもよい。
での分解脱離が困難である。また、乳酸は、1つのカルボキシル基を有するが、ヒドロキシル基を有し、銅微粒子表面への吸着力が強い。そのため、低温度で脱離しにくい。このような保護剤を用いると、低温で銅微粒子を焼結させても、保護剤が十分に分解脱離せず、形成される銅被膜に残存することになる。その結果、銅微粒子が効率的に焼結せず、形成される銅被膜の導電性が大きく低下する。したがって、本実施形態においては、カルボン酸の中でも、沸点や分解温度が低いモノカルボン酸を用いる。
上記還元反応においては、銅化合物(固体)を溶媒に分散した状態(固液系)で還元しており、銅化合物を溶媒に溶解させ銅イオン溶液とした状態で還元する場合と比較すると、銅金属核の生成速度が抑制され、銅微粒子の成長が抑制される。この点について、以下に説明する。
銅イオン溶液とした状態で還元する場合、還元により、銅イオンから速やかに銅金属核が生成する。また、銅イオンが溶媒中に存在しており、銅金属核の生成が溶媒全体で生じる。すなわち、銅金属核の生成は、速度が速く、かつ溶媒全体で生じるため、銅金属核の凝集が生じやすく、結果的に銅微粒子の成長が早く粗大化しやすい。これに対して、分散した状態で還元する場合、銅化合物から銅イオンを溶出させ、その銅イオンを還元するため、銅金属核の生成自体が遅い。また、溶出した銅イオンは銅化合物の周囲に存在し、そこで還元されるため、銅金属核の生成は銅化合物の周囲に限定される。
このように、分散した状態で還元する場合、銅金属核の生成自体が遅く、かつ生成が銅化合物の周囲に限定されるため、銅金属核の凝集が抑制され、銅微粒子の成長が抑制される。その結果、微細な粒子径の銅微粒子を得ることができる。また、銅化合物の銅濃度を上記数値範囲内とすることで、銅微粒子の粒子径を制御している。
したがって、本実施形態においては、銅化合物を分散した状態で還元することにより、銅微粒子の成長を抑制するため、銅微粒子の粒子径を小さく制御する吸着性の強い保護剤(例えば、クエン酸など)を用いる必要性がなく、保護剤として吸着力の弱い脂肪族モノカルボン酸を用いても、微細な粒子径の銅微粒子を得ることができる。
また反応温度は、保護剤、還元剤、および溶媒の沸点よりも低いことが望ましい。保護剤などの沸点を超える反応温度では、反応の最中に溶媒、保護剤、または還元剤が蒸発する。その結果、銅化合物の還元が進行しないおそれや、微細な銅微粒子を得られないおそれがある。製造時の雰囲気としては、銅微粒子の酸化を防ぐために還元雰囲気や不活性雰囲気とすることが望ましいが、原料の組み合わせによっては大気中で製造することも可能である。
これに対して、従来の銅微粒子分散液は、銅微粒子の保護剤として、例えばアミン化合物などが用いられている。アミン化合物などは、銅微粒子表面や分散液中に存在して、焼成の際に銅微粒子の焼結を阻害し、銅被膜の導電性を低下させることになる。このため、従来においては、分散液を精製して、分散液中の溶媒に含まれる保護剤を除去する必要性があった。また、銅微粒子の表面を被覆する保護剤を除去するため、高温度で焼結させる必要性があった。
このように、本実施形態の銅微粒子分散液によれば、保護剤として、脱離温度の低い脂肪族モノカルボン酸を用いており、銅微粒子の焼成時に保護剤を除去できるため、分散液の精製工程を必要としない。
度を200℃以下とすることができる。
本発明においては、上述した銅微粒子分散液を図1に示すような処理を行うことで、図2A、図2B、図2Cに示す3種類の銅微粒子を得ることができる。図2Aは、保護剤としての脂肪族モノカルボン酸で表面が被覆された銅微粒子の断面図である。図2Bは、脂肪族モノカルボン酸が脱離するとともに、表面の銅酸化物膜が除去された銅微粒子の断面図である。図2Cは、脂肪族モノカルボン酸が脱離するとともに、表面の銅酸化物膜が除去されて、当初被覆された脂肪族モノカルボン酸以外の保護剤により被覆された銅微粒子の断面図である。以下に、それぞれの銅微粒子の製造方法について説明する。
銅微粒子分散液を加熱して、溶媒中に分散する銅微粒子の保護剤としての脂肪族モノカルボン酸を脱離、分解させる。脂肪族モノカルボン酸は、加熱により酸としての活性が高まり、銅微粒子の表面から脱離する際に、銅微粒子の表面に不可避的に生成する銅酸化物膜を除去する。そして、保護剤の脱離した銅微粒子が分散する銅微粒子分散液を精製して、保護剤で被覆されておらず、かつ銅酸化物膜が除去された銅微粒子を得る。図2Bに示すように、得られる銅微粒子1は、保護剤で被覆されていない。銅微粒子1は、脂肪族モノカルボン酸2の脱離にともなって銅酸化物膜が除去されている。
なお、銅微粒子の製造時に用いる溶媒の沸点が脂肪族モノカルボン酸よりも低い場合は、吸着している脂肪族モノカルボン酸よりも沸点の高い溶媒を添加して、加熱することが望ましい。一方、溶媒の沸点が脂肪族モノカルボン酸よりも高い場合は、新たに溶媒を加えずにそのまま加熱するだけでカルボン酸化合物を脱離することが可能である。
保護剤で被覆されておらず、かつ銅酸化物膜が除去された銅微粒子を、その他の保護剤を含む溶媒中に添加して、銅微粒子の表面に、その他の保護剤を被覆させる。図2Cに示すように、得られる銅微粒子1は、銅酸化物膜(図示せず)が除去されて、その表面がその他の保護剤3で被覆されている。すなわち、本実施形態の製造方法によれば、脂肪族モノカルボン酸で被覆される銅微粒子を出発物として、脂肪族モノカルボン酸を脱離させ、その他の保護剤で被覆しなおす(置換する)ことができる。この時、置換する保護剤の特性によって、様々な用途の銅微粒子とすることができる。
トルエンジチオール、α,α′−o−キシリレンジチオール、α,α′−m−キシリレンジチオール、α,α′−p−キシリレンジチオール、1,2,6−ヘキサントリチオール等がある。
上述した銅微粒子を含む銅ペーストについて説明する。銅ペーストは、上述した銅微粒子と溶剤組成物とを含有しており、低温度で焼成することができる銅ペーストとして用いることができる。銅微粒子としては、脂肪族モノカルボン酸で被覆された銅微粒子、脂肪族モノカルボン酸が脱離するとともに、表面の銅酸化物膜が除去された銅微粒子、表面の銅酸化物膜が除去されて、当初被覆された脂肪族モノカルボン酸以外の保護剤により被覆された銅微粒子、の3種類を用いることができる。脂肪族モノカルボン酸で被覆された銅微粒子を用いる場合、溶剤組成物中に、脂肪族モノカルボン酸をさらに添加して、フラックス効果を高めてもよい。なお、銅ペーストとしては、上述した銅微粒子分散液をそのまま用いてもよい。
、キシレン、1−デカノール、テルピネオールなどを好適に用いることができる。
上記銅微粒子分散液または銅ペーストを焼成して、銅被膜を製造する。本実施形態の銅微粒子分散液または銅ペーストによれば、銅微粒子が低温度で焼成可能であり、かつ焼結性に優れるため、形成される銅被膜は、導電性に優れる。また、銅被膜中に保護剤や副生成物が残存しないため、緻密な銅被膜となる。この銅被膜によれば、抵抗率が10−4Ω・cm以下となり、保護剤として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸を用いた場合の銅被膜は、抵抗率1.5×10−5Ω・cm以下とさらに導電性に優れたものとなる。
実施例1では、保護剤(およびフラックス剤)として酢酸を用いて、銅微粒子を製造した。
銅化合物として酸化銅(I)を0.1mol、保護剤として酢酸(沸点118℃)を50mmol、還元剤としてヒドラジンを0.1mol、溶媒としてイソプロパノールを100ml混合し、300mlのフラスコ中に加えた。この溶液を攪拌しながら、70℃で1時間加熱し、酸化銅(I)を還元させ、銅微粒子分散液を得た。この銅微粒子分散液を精製し、銅微粒子を得た。銅微粒子の製造条件を表1に示す。
置「UPA−EX150型」(日機装製)を用い、体積平均値を平均粒子径とした。
次に、得られた銅被膜の導電性を評価する。導電性は、4探針電気抵抗測定装置を用いて、銅被膜の体積抵抗率を測定した。実施例1の銅被膜の体積抵抗率を測定したところ、1.1×10−5Ω・cmを示した。測定結果を表2に示す。
比較例1では、表1に示すように、銅化合物として酸化銅(I)、溶媒としてイソプロパノール、還元剤としてヒドラジン、脂肪族モノカルボン酸は添加しなかった。300mlのフラスコに、0.1molの酸化銅(I)、100mlのイソプロパノール、0.1molのヒドラジンを加え、70℃で60分反応を行った。
得られた比較例1の銅微粒子の電子顕微鏡写真を図4Bに示す。図4Bに示すように、
保護剤を用いない場合、微細な粒子径の銅微粒子を製造することは困難であることがわかる。その平均粒子径は、400nmであった。
また、実施例1と同様にして、比較例1の銅微粒子を用いて銅被膜を製造した。得られた銅被膜の電子顕微鏡写真を図5Bに示す。図5Bに示すように、角ばった銅微粒子が観察され、この角ばりは銅微粒子の表面が焼成温度でまったく融けていない(融着してない)ことを意味している。また、製造された銅被膜の導電性を測定したところ、比較例1の銅被膜は導電性を示さなかった。比較例1の銅微粒子は、粒子径が400nmであり、融点降下現象を示さず、十分に融着が進行しなかったものと考えられる。また、銅微粒子の表面には、保護剤、フラックス剤ともに吸着していないために、酸化膜除去効果を得られないばかりか、保護剤の脱離熱を得ることができなかった。その結果、比較例1の銅微粒子は、焼結性が悪く、製造される銅被膜は導電性を示さなかった。
比較例2では、表1に示すように、実施例1の保護剤としての酢酸を、従来保護剤としてよく用いられるドデシルアミンに変更しただけで、その他の条件については実施例1と同様に製造した。比較例2の銅微粒子の粒子径は350nmであり、ドデシルアミンでは微細な粒子径の銅微粒子を製造することが困難なことがわかった。
比較例2の銅微粒子を用いて、銅被膜を製造した。得られた銅被膜の電子顕微鏡写真を図5Cに示す。図5Cに示すように、やや丸みを帯びた銅微粒子が観察された。この丸みは、焼成温度で銅微粒子の表面がわずかに融けていることを意味している。
製造された銅被膜の体積抵抗率を測定したところ、比較例2の銅被膜の体積抵抗率は1.1×10−3Ω・cmを示した。比較例2の銅微粒子は、350nmであり融点降下を示さない。ドデシルアミンは酸化膜除去効果を示さないが、ドデシルアミンの脱離にともなう熱は発生すると考えられる。その結果、比較例1よりは良好で、実施例1には及ばない銅被膜が得られたと考えられる。
比較例3では、保護剤をトリカルボン酸のクエン酸に変更しただけで、その他の条件については実施例1と同様に製造した。比較例3の銅微粒子の平均粒子径は60nmであり、実施例1と同様に、微細な粒子径の銅微粒子を製造することができた。
比較例3で得られた銅微粒子に示差熱・熱重量測定を行い、銅微粒子に吸着した保護剤の脱離温度を測定した。図7は、比較例3の示差熱・熱重量測定の結果を示す。図7に示す示差熱・熱重量測定の結果によれば、比較例3の銅微粒子は、300℃付近で保護剤の酢酸が脱離し、重量の減少が停止したことがわかる。
比較例3の銅微粒子を窒素中200℃、60分で焼結し、銅被膜を製造した。図8Aに、比較例3の焼結前の銅微粒子の電子顕微鏡写真を示し、図8Bに、比較例3の銅微粒子を焼結した後の銅被膜の電子顕微鏡写真を示す。図8Aおよび図8Bによれば、焼成により、銅微粒子同士の焼結が進行していないことがわかる。これは、焼成温度200℃では、クエン酸が十分に脱離、分解されず、銅微粒子同士の焼結を阻害したためと考えられる。この結果、銅微粒子の融着が不十分で、銅被膜が緻密化されていないことがわかる。
また、製造された銅被膜の体積抵抗率を測定したところ、比較例3の銅微粒子で製造される銅被膜は、3.8×10−4Ω・cmを示した。実施例1と比較して銅被膜の抵抗率が高い原因は、200℃の焼成では、脱離温度(分解温度)が300℃付近であるクエン酸を十分に分解できず、銅被膜中にクエン酸が残存し、導電性を低下させたことが考えられる。
2 脂肪族モノカルボン酸
3 その他の保護剤
Claims (9)
- アルコール溶媒に還元剤、炭素数1〜6の脂肪族モノカルボン酸からなる保護剤、および、銅化合物としての銅酸化物もしくはカルボン酸銅を添加して、前記アルコール溶媒中に前記銅化合物を固体状態で分散し、
前記アルコール溶媒中で分散している前記銅化合物を還元することにより、平均粒子径が1nm以上100nm以下であり、前記炭素数1〜6の脂肪族モノカルボン酸からなる保護剤で表面が被覆されて凝集が抑制されるように構成され、前記アルコール溶媒中に分散する銅微粒子を形成することを特徴とする銅微粒子分散液の製造方法。 - 請求項1に記載の銅微粒子分散液の製造方法において、前記脂肪族モノカルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸のいずれかであることを特徴とする銅微粒子分散液の製造方法。
- 請求項1または2に記載の銅微粒子分散液の製造方法において、前記還元剤が、アミン類またはヒドラジン類であることを特徴とする銅微粒子分散液の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の銅微粒子分散液の製造方法により製造された銅微粒子分散液を精製して、前記脂肪族モノカルボン酸で表面が被覆された銅微粒子を得ることを特徴とする銅微粒子の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の銅微粒子分散液の製造方法により製造された銅微粒子分散液を加熱することにより、前記脂肪族モノカルボン酸を脱離させ、前記銅微粒子の表面の銅酸化物膜を除去し、
加熱後に精製することにより、前記脂肪族モノカルボン酸が脱離して前記銅酸化物膜が除去された銅微粒子を得ることを特徴とする銅微粒子の製造方法。 - 請求項5に記載の銅微粒子の製造方法により製造された銅微粒子を、前記脂肪族モノカルボン酸以外の保護剤を含む溶媒に添加して、前記脂肪族モノカルボン酸以外の前記保護剤を被覆し、前記脂肪族モノカルボン酸以外の前記保護剤で表面が被覆された前記銅微粒子が分散した銅微粒子分散液を形成し、
前記銅微粒子分散液を精製して、前記脂肪族モノカルボン酸以外の前記保護剤で被覆される前記銅微粒子を得ることを特徴とする銅微粒子の製造方法。 - アルコール溶媒中に、平均粒子径が1nm以上100nm以下であり、炭素数1〜6の脂肪族モノカルボン酸からなる保護剤で表面が被覆されて凝集が抑制されるように構成された銅微粒子が分散しており、
前記アルコール溶媒中に、前記脂肪族モノカルボン酸が存在していることを特徴とする銅微粒子分散液。 - 請求項7に記載の銅微粒子分散液において、前記脂肪族モノカルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸のいずれかであることを特徴とする銅微粒子分散液。
- 平均粒子径が1nm以上100nm以下であり、炭素数1〜6の脂肪族モノカルボン酸からなる保護剤で表面が被覆されて凝集が抑制されるように構成されたことを特徴とする銅微粒子。
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