JP5512487B2 - 金微粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、特に金めっき代替の導電性金ペースト材に使用される金微粒子の製造の方法に関するものである。
金微粒子の製造方法は、大別して気相法、液相法の2種類が存在する。
気相法による金微粒子の製造方法としては、真空チャンバー内で金属金を気化させ、その気体に金微粒子同士の凝集を防ぐ保護剤の蒸気を接触させた後、冷却し、金微粒子を製造するものがある(例えば、特許文献1参照)。
一方、液相法による金微粒子の製造方法としては、溶液中で金イオンを還元し、金原子の核を少しずつ成長させていくことで、金微粒子を製造するものがある(例えば、特許文献2参照)。この液相法において、金イオンを還元するエネルギー源として超音波を用いる方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
以上の手法などにより製造された金微粒子は、溶剤組成物と混合されてなる金ペースト、及び、その金ペーストを塗布、焼成してなる金被膜の材料として利用される。
金ペーストから形成される金被膜は、蒸着法やめっき法と比較して被膜の形成が容易であり、毒劇物を使用することがない。また、被膜に使用する金の量や、環境負荷を低減することが可能である。
特開2002−121606号公報 特開平5−117726号公報
Kenji Okitsu et al., Langmuir 2001, 17, p7717-7720.
ところで、従来の気相法による金微粒子の製造方法(特許文献1に記載される方法)では、真空系やチャンバー、さらに金属金を気化させるためのエネルギー源としてプラズマや電子ビーム、レーザー、誘導加熱を発生させる装置が必要となり、これらは一般的に装置価格もランニングコストも高価という問題がある。加えて、気相法は製造速度も低いために、製造にあたる人件費も拡大する。
また、従来の液相法(特許文献2に記載される方法)では、気相法ほどではないものの金微粒子の製造コストが高価であることと、得られる金微粒子の純度が低いという問題点がある。液相法は、気相法と比べて装置が汎用的であり、初期設備費やランニングコストが安価である。しかし、工業的な観点からみた場合、従来液相法の製造速度は不十分である。その理由は次のように説明される。液相法において、微細な金微粒子を得るためには、金イオンからの金微粒子の粒子成長速度を調節する必要がある。通常、金イオンは非常に還元されやすいために粒子の成長速度が速く、粒子は粗大化してしまう。金微粒子の粒子成長速度を抑制するためには、金微粒子表面に析出する単位時間あたりの金原子量を減らせばよい。そのためには反応溶液中の金イオン濃度を低濃度とすればよいが、それに伴い単位時間に得られる金微粒子量は減少する。つまり液相法では、設備費は安価であるが単位時間の製造量が少ないために、気相法ほどではないにせよ、結局、金微粒子の製造コストは高価となる。さらに液相法においては合成後の液中に原料である金属塩由来のアニオン(例えば、塩化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオン、炭酸イオンなど)が残存するため、これら不純物は金微粒子の純度を低下させ、焼結性や触媒活性などの特性を悪化させる。
一方、金イオンを含む溶液に超音波を照射して金微粒子を得る製造方法(非特許文献1に記載される方法)では、安価な超音波装置を使用し、金微粒子の製造におけるエネルギー効率も高いために、金微粒子の生産性を若干向上できる。しかしながら、イオンソースの反応である液相法では、本質的に金イオンが高濃度な条件での製造は不可能であり、不純物残存の問題も解決できない。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、高純度で安価な金微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、酸化金と金微粒子粉末と保護剤と還元性溶媒とを混合して反応溶液とし、その反応溶液中の酸化金添加量を酸化金中に含まれる金の重量(g)×100(%)/反応溶液の重量(g)(mass%)で定義したとき、酸化金添加量の値が1〜55mass%の範囲となるように反応溶液を作製し、その反応溶液に超音波を照射することで酸化金を還元し、前記保護剤によって被覆された金微粒子を析出させる金微粒子の製造方法であって、前記保護剤は、式 NH 2 1 あるいはNHR 1 2 あるいはNR 1 2 3 (式中、R 1 及びR 2 及びR 3 は、炭素数2〜16のアルキル基を表す)で示されるアミン化合物、またはポリビニルピロリドンからなり、前記還元性溶媒は、粘度が10mPa・s以下であり、還元性溶媒の物質量(mol)/酸化金の物質量(mol)で定義される還元性溶媒添加量の値が、3〜80の範囲であり、前記超音波は、その周波数が20kHz〜100kHzの範囲である金微粒子の製造方法である。
護剤の物質量(mol)/酸化金中に含まれる金の物質量(mol)で定義される保護剤添加量が、0.1〜20の範囲であるとよい。
前記還元性溶媒は、1級あるいは2級のアルコール化合物であるとよい。
前記反応溶液は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカン、シクロテトラデカン、トルエン、キシレンから選択される低極性溶媒をさらに添加されてなり、かつ、低極性溶媒の体積(cm3)×100(%)/還元性溶媒の体積(cm3)(vol.%)で定義される低極性溶媒添加量の値が、10〜1000vol.%の範囲であるとよい。
音波出力(W)/反応溶液の体積(cm3)で定義される超音波照射強度の値が、0.5W/cm3以上であるとよい。
前記金微粒子粉末は、その平均粒子径が20nm以下であり、かつ、金微粒子粉末の重量(g)×100(%)/反応溶液の重量(g)(mass%)で定義される金微粒子粉末の添加量が、10-3〜10-1mass%の範囲であるとよい。
本発明によれば、高純度で安価な金微粒子の製造方法を提供できる。
本発明の第一の実施例に係る金微粒子のXRD測定結果を示す図である。 本発明の第三の実施例に係る金微粒子のXRD測定結果を示す図である。 本発明の第三の実施例に係る金微粒子のFE−SEM写真を示す図である。 本発明の第四の実施例に係る金微粒子のXRD測定結果を示す図である。 本発明の第四の実施例に係る金微粒子のFE−SEM写真を示す図である。 本発明の第六の実施例に係る金微粒子のXRD測定結果を示す図である。 本発明の第六の実施例に係る金微粒子のFE−SEM写真を示す図である。
以下に、本発明の好適な一実施の形態について説明する。
本発明者らは、金微粒子の存在下において、酸化金と還元性溶媒と保護剤を混合した反応溶液に超音波を照射すると、超音波キャビテーションと還元性溶媒の効果により酸化金が速やかに還元されて、保護剤に被覆された微細な(平均粒子径1〜1000nmの)金微粒子が速やかに生成するという新規な事実に着目し、鋭意研究を進捗し、以下の発明を完成させた。
すなわち、本発明の金微粒子の製造方法は、酸化金と、金微粒子粉末と、保護剤と、還元性溶媒とを混合した反応溶液に対し、超音波を照射することで酸化金を還元し、保護剤によって被覆された金微粒子を析出させることを特徴とするものである。
溶液中に超音波を照射すると、キャビテーションと呼ばれる微小な気泡が発生し、そのキャビテーションは準断熱的な膨張と圧縮を繰返し、最終的に圧壊する。その過程でキャビテーションそれ自体は非常に高温・高圧となっており、さらに圧壊の際は衝撃波やジェット流も生じる。還元性溶媒中に酸化金が存在した場合、還元性溶媒中で発生したキャビテーションと酸化金の接触しているごく限られた箇所を反応場として、次のような機構で酸化金の還元反応が起こる。まず、キャビテーションと酸化金が接触すると、還元性ガスを含んだキャビテーションの高温により酸化金が還元し、金クラスターが形成する。キャビテーションの生成から消滅までの時間はおよそ10-6秒オーダーと非常に短時間であるため、金クラスターは生成直後にキャビテーションの高温から溶液温度まで急冷されることになる。キャビテーションによる加熱時間が非常に短いため、金クラスターは充分な核成長を経ないまま、微細な金微粒子が形成される。還元性溶媒中に保護剤が添加されている場合には、微細な金微粒子が保護剤で被覆され、安定化する。これらにより、形成した金クラスターの急激な成長による粗大化を抑制できるため、従来の液相法(例えば、特許文献2の方法)と比較して、本発明では金微粒子の原料となる酸化金の仕込み濃度を高濃度にできる。
本発明は使用する酸化金の相、形状、平均粒子径などを特に限定するものではなく、例えば平均粒子径1〜100μm程度の酸化金を使用でき、また水和水を有する酸化金(Au23・1.5H2O)を使用しても良い。
従来の液相法と本発明の金微粒子の製造方法の違いは次のように説明される。従来の液相法では、金イオンを含む溶液から金イオンの過飽和度を調節しながら少しずつ還元させ、金微粒子を合成する。いったん金イオンが還元し金クラスターが発生すると、金イオンの拡散や析出が非常に速いために、金クラスターは急激に成長して微粒子を超えて数μm以上の粗大粒子となってしまう。金微粒子の粒子成長速度を抑制するためには、金微粒子表面に析出する単位時間あたりの金原子量を減らせばよい。そのためには反応溶液中の金イオン濃度を低濃度とすればよいが、それに伴い金微粒子の製造効率は低下し、金微粒子の製造コストが高価となる。
これに対し、本発明の金微粒子が安価となる理由は次のように説明される。本発明に使用する金の原料である酸化金は、通常多くの溶媒に対して溶解性を示さない。反応溶液中において酸化金は固体状態で存在し、反応溶液は固体と液体の混ざった不均一な溶液となっている(より具体的には、反応溶液中で酸化金が沈降と浮遊を繰り返して分散している状態となっている)。また、酸化金が還元する反応場はキャビテーションの表面に限定されている。ある瞬間、溶液内に発生するキャビテーション数は有限であり、それに接触できる酸化金量も有限である。このことは反応溶液全体における酸化金の濃度が高くとも、実際に還元反応の起こるキャビテーション表面では酸化金濃度が低い状態が実現していることを意味している。つまり、生成した金微粒子の周囲に存在する金濃度が低いため、金微粒子は粒成長しにくくなる。かつ、キャビテーション寿命が非常に短いことも、生成した金微粒子の粒成長を抑制するのに有利にはたらく。すなわち、本発明に係る金微粒子の製造方法は、従来の液相法のような均一なイオン溶液の反応とは異なり、酸化金を高濃度に仕込んでも金微粒子の成長が進行しにくいという特徴がある。酸化金を高濃度で仕込めることは、単位時間の金微粒子の製造量が多いことを意味しており、金微粒子を安価に製造できることになる。
さらに本発明で使用する原料である酸化金(Au23)は、構成元素に金と酸素のみを含んでいるため、還元した際も有害なアニオンを発生しない。従来の液相法で使用されるような塩化金酸やシアン化金などは、塩化物イオンやシアン化物イオンを発生する。これらは環境や人体に有害であるだけでなく、金微粒子の焼結性や触媒特性などを悪化させる虞もある。塩化物イオンやシアン化物イオンなどは、専用の分離法にしたがって除去できるが、そのための装置や工程が増加するため、金微粒子の製造コストが上昇してしまう。
酸化金の添加量は、酸化金中に含まれる金の重量(g)×100(%)/反応溶液の重量(g)(mass%)で定義したとき、その値を1〜55mass%の範囲とすることが望ましい。55mass%を超えるような条件では、微細な金微粒子を得ることが困難となる。微細な金微粒子を得るためには、反応溶液中の還元性溶媒や保護剤、低極性溶媒などを適切な量で配合する必要がある。化学量論上、酸化金を還元可能な還元性溶媒量及び生成した金微粒子を被覆可能な保護剤量を計算していくと、酸化金添加量の上限量は55mass%であり、実験上も55mass%を超えるような条件では微細な(平均粒子径1〜1000nmの)金微粒子を得られない。他方、1mass%未満では、単位時間の金微粒子の製造量が従来の液相法と変わらないため、金微粒子が安価にならない。
使用する還元性溶媒は、アルコール類、アルデヒド類、アミン類、単糖類、多糖類、などの群から選択可能であり、これらの溶媒を2種類以上組み合わせることも可能である。なお、水酸化リチウムアルミニウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素、硫化水素、ボラン、ジボラン、ヒドラジン、ヨウ化カリウム、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸などの還元剤を適宜溶媒に溶かすことで還元性溶媒とすることもできる。この場合、水酸化リチウムアルミニウム、チオ硫酸ナトリウム、硫化水素、ボラン、ジボラン、ヨウ化カリウムなどは毒性の問題や合成後の溶液に金属イオンやアニオンが残存する問題があり、過酸化水素、ヒドラジン、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸などの金属イオンを残存しない還元剤の使用が望ましい。還元性溶媒を1種類以上選択した上で、酸化金の還元反応速度や溶媒−保護剤間の親和性を調整する目的で、直鎖炭化水素や環状炭化水素やトルエン、キシレンなどの還元性を示さない溶媒を混合してもよい。
還元性溶媒の粘度は、高すぎない粘度、具体的には10mPa・s以下であるものが望ましい。粘度が高くなりすぎると、超音波照射によるキャビテーションが生成しにくくなり、それに伴い酸化金の還元反応が進行しにくくなる。
好ましくは、1級あるいは2級のアルコール化合物、その中でも毒性が低く、低粘度でキャビテーションが効率的に発生可能なエタノールを使用するとよい。
還元性溶媒の添加量は、還元性溶媒の物質量(mol)/酸化金の物質量(mol)と定義すると、その値が3〜80の範囲にあればよい。3未満では、酸化金の還元反応時間が長くなる虞や、化学量論的に酸化金を還元するのに必要な量が確保できない虞がある。他方、80を超える添加量では、相対的に酸化金や保護剤の濃度が低下する。酸化金の濃度が、従来法と変わらないほど低下すると、金微粒子の製造コストが安価とならない。保護剤の濃度がある量よりも低下すると、金微粒子を十分に被覆できなくなり、微細な金微粒子が得られない問題が生じる。
金微粒子表面を被覆するための保護剤としては、非共有電子対を有し、金属(金)の微粒子に対して配位的な吸着が可能な官能基を持つ化合物を用いることが可能である。特に窒素原子を含む官能基を持つ化合物は、金属表面に対して配位的に吸着することが可能である。窒素を含む官能基としてはアミン基(−NH2 )などがその例である。
保護剤添加量は、保護剤の物質量(mol)/酸化金中の金の物質量(mol)で定義すると、その値が0.1〜20の範囲にあることが望ましい。ただし、保護剤が高分子化合物からなる場合には、そのモノマー単位の物質量を用いて、保護剤添加量を決定する。保護剤の添加量を変えると、生成する金微粒子の粒子径が変化する。通常、保護剤添加量が増えると、より微細な金微粒子が生成する傾向がある。そのため、目的とする金微粒子の粒子径に応じて保護剤の添加量を0.1〜20の範囲で適宜調整すればよい。0.1未満では、保護剤の化学構造にもよるが、保護剤が金微粒子表面を十分に被覆することができず、微細な金微粒子を得るのが困難となる。他方、20を超える添加量では、相対的に酸化金や還元性溶媒の濃度が低下する。酸化金の濃度が、従来法と変わらないほど低下すると、金微粒子の製造コストが安価とならない。還元性溶媒の濃度が低下すると、酸化金の還元反応時間が長くなる虞や、化学量論的に酸化金を還元するのに必要な量が確保できない虞がある。
好適な保護剤としては、化学式NH21,NHR12あるいはNR123で示される1〜3級アミン化合物が挙げられる。式中のR1,R2及びR3は、炭素数C=2〜16のアルキル基から選択できる。より望ましくは、使用する還元性溶媒と親和性が高すぎないアミン化合物を選択するとよい。還元性溶媒と保護剤の親和性が高すぎると、金微粒子に吸着した保護剤が脱離してしまう虞がある。還元性溶媒と保護剤の親和性の目安としては、厳密な議論は困難であるものの、具体的には次のような例が挙げられる。還元性溶媒が比較的炭素数の少ないアルコール化合物であるエタノール(炭素数2)である場合、保護剤の炭素数が2〜8程度のものを選択すると、エタノールと保護剤の親和性が高くなり、保護剤が金微粒子から脱離しやすくなる。炭素数が8より多い保護剤を選択すると、保護剤の疎水性が増加してエタノールとの親和性が低下するため、保護剤が金微粒子から脱離しにくくなり、その結果、微細な金微粒子を得ることができる。
また、本実施の形態の金微粒子の製造方法においては、反応溶液に対して低極性溶媒を添加することができる。使用可能な低極性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカン、シクロテトラデカン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これら低極性溶媒を添加した反応溶液とすると、生成する金微粒子の分散性を高めることが可能である。その機構は次のように説明される。金微粒子に対して、非共有電子対によって吸着した保護剤は、吸着に関わる原子以外の構造の効果によって溶媒中に分散する。多くの場合、保護剤の吸着に関わる原子以外の構造はアルキル基(疎水性)であり、低極性の有機溶媒に分散しやすい。一方、本発明での使用に適する還元性溶媒は、アルコール化合物などの極性溶媒であるため、保護剤に覆われた金微粒子は溶媒中に分散せず、反応容器の底に沈殿する虞がある。沈殿箇所は金微粒子の存在密度が高いことを意味しており、この箇所に超音波キャビテーションが発生すると、金微粒子同士の粒成長や凝集が起こりやすくなり、粒子が粗大化する虞がある。微細な金微粒子を得るには、生成した金微粒子の沈殿を抑制し、溶液中に分散させる必要がある。保護剤のアルキル基との親和性が高い低極性溶媒を加えることで、保護剤で被覆された金微粒子は、溶媒中に分散しやすくなり、沈殿しにくくなる。
還元性溶媒に添加する低極性溶媒の量は、低極性溶媒の体積(cm3)×100(%)/還元性溶媒の体積(cm3)(vol.%)と定義すると、その値が10〜1000vol.%の範囲にあればよい。10vol.%未満の場合、低極性溶媒の量としては不十分であり、経験上、金微粒子の分散性を向上させる効果はほとんどない。他方、1000vol.%を超える量では、相対的に還元性溶媒の量が減少し、酸化金の還元反応時間が長くなる虞や、化学量論的に酸化金を還元するのに必要な量が確保できない虞がある。
本実施の形態に用いる超音波としては、周波数20kHzから周波数100kHzまでの周波数領域のものが使用可能である。超音波の周波数として、20kHz未満では、超音波キャビテーションの生成個数が減少し、酸化金の還元速度が遅くなる虞がある。他方、100kHzを超えると、超音波によって発生する個々のキャビテーションのエネルギーが小さくなり、酸化金の還元速度が遅くなる傾向がある。
超音波の照射強度は、酸化金の添加量、反応溶液の配合組成などによって適宜選択することができる。一般に照射強度が強くなると、単位体積中に生成するキャビテーションの個数やエネルギーも多くなるため、酸化金の還元反応速度は速くなる。しかし、ある強度以上では反応速度が飽和することがある。本発明における超音波の照射強度としては0.5W/cm3以上の超音波が使用できる。照射強度が0.5W/cm3未満では、酸化金の添加量や反応溶液の配合組成にもよるが、充分に酸化金の還元反応が進まない虞がある。超音波の照射時間は、酸化金の還元反応が完了する時間を目安とすればよいが、酸化金の還元による金微粒子生成反応と、生成した金微粒子同士の粒成長や凝集による金微粒子の粗大化反応は同時に進行するため、ある適切な反応時間が存在する。したがって、目安とする粒子径の金微粒子生成量が最大となる時間を反応時間とすればよい。
超音波を照射する際の温度条件としては、超音波圧電素子が晒される温度環境が−40℃〜75℃の範囲であれば問題ない。−40℃未満の温度や、75℃を超える温度では、超音波圧電素子故障の原因となる。実験上、望ましい反応溶液の温度としては20℃〜60℃である。この温度範囲では反応溶液中のキャビテーションの生成効率も高いため、酸化金の還元反応も十分に進行する。
超音波を照射するための装置としては特に制限されず、例えば、市販の超音波発生装置を用いることができる。
本実施の形態において予め添加しておく金微粒子粉末としては、その粒子径が20nm以下であることが望ましい。金微粒子を添加することで酸化金の還元を促進し、製造効率を向上することが可能である。その機構は金微粒子の触媒作用によって還元性溶媒の酸化が促進され、その結果、酸化金の還元反応が加速するためと考えられる。その加速効果は超音波キャビテーションによってより顕著となる。金微粒子の触媒作用は金微粒子の粒子径に依存すると言われているが、本発明における実験的な経験上、酸化金の還元反応を加速するのに有効なのは平均粒子径20nm以下の金微粒子である。平均粒子径20nmを超える金微粒子はバルク金と同様、不活性な性質となり、触媒活性は著しく低下する。予め添加する金微粒子の量は、金微粒子の重量(g)×100(%)/反応溶液の重量(g)(mass%)で定義したとき、その値が10-3〜10-1の範囲にあることが望ましい。10-3未満の場合、金微粒子の触媒能に対して反応溶液が過剰であり、酸化金の還元反応時間が長くなる虞がある。他方、10-1を超える量を加えると、相対的に酸化金の添加濃度が低くなるため、金微粒子の製造効率が下がる虞がある。さらに、予め添加する金微粒子自体が、反応の過程で超音波キャビテーションの効果によって粒成長するため、大量に入れすぎると反応溶液内に存在する粗大な金微粒子量が増加することになり好ましくない。
このようにされることで、本実施の形態に係る金微粒子の製造方法においては、安価な超音波発生装置を利用して金の原料である酸化金を高濃度に仕込むことができると共に、予め添加しておく金微粒子の触媒作用によって金微粒子を速やかに生成できるため、金微粒子を高効率且つ安価に製造することができる。
また、金微粒子の原料として金属塩を利用することがないので、金属塩由来のアニオンが金微粒子の表面に残留する虞が無く、触媒活性や焼結性に優れた金微粒子を製造できる。
さらに、反応溶液に低極性溶媒を添加した場合には、生成する金微粒子の分散性を高め、金微粒子同士の粒成長や凝集を抑制でき、金微粒子の品質を向上できる。
以上説明した、本発明に係る製造方法により得られる金微粒子は、溶剤組成物と混合することで金ペーストとして利用することができる。
金ペーストを製造する際に利用可能な溶剤組成物の種類としては、水、アルコール類、アルデヒド類、アミン類、チオール類、単糖類、多糖類、直鎖の炭化水素類、脂肪酸類、芳香族類の群から選択することが可能であり、複数の溶剤を組み合わせて使用することも可能である。上記の群の中から、金微粒子を覆う保護剤と親和性のある溶剤組成物を選択することが望ましい。また、金ペーストを適正な(コーティング可能な)粘度に調整でき、室温で容易に蒸発しない、比較的高沸点な低極性溶剤あるいは非極性溶剤であることが望ましく、より具体的には、炭素数8〜16個のノルマルの炭化水素やトルエン、キシレン、1−デカノール、テルピネオールなどが好適である。また、金ペーストの成型性、粘度などを調節する目的で、溶剤中にワックスや樹脂を添加剤として微量に加えることも可能である。
金ペーストは必要な範囲のみに限定して塗布することが容易で、金ペーストを使用して金被膜を形成する際に発生する無駄が少ないので、金ペーストを使用して金被膜を形成すると、金蒸着法や金めっき法と比較して、金被膜を形成するために必要な金使用量を低減できるため好適である。バッチプロセスの金蒸着法と異なり、金ペーストは連続プロセスでの塗布が可能であることから、製品へ適用した場合に製造速度を損ねることがない。また、金めっき法におけるめっき液は毒劇物であるが、金ペーストでは微粒子合成段階からペースト組成物までの全過程で使用される薬品が比較的安全であり、全体の使用量も少ないことから、環境負荷も小さいものとなる。さらに、本発明の金ペーストは、金ペースト中の金微粒子の純度が高いことから、塗布性や焼結性に優れ、金ペーストを焼成して得られる金被膜の基本的な特性、例えば純度、体積抵抗率、反射率、密度なども良好なものとなる。
以上要するに、本発明に係る金微粒子の製造方法によれば、溶媒に不溶な酸化金を金の原料として用い、局所的な化学反応場を提供可能な超音波キャビテーションを利用することで、反応溶液中に形成される金微粒子の急激な成長・粗大化を抑制できるため、金の仕込み濃度を従来の液相法よりも高い条件とすることが可能である。従って、単位時間に多くの金微粒子を得られ、金微粒子の製造コストを従来よりも大幅に低下することができる。さらに本発明で使用する酸化金からは、金イオン溶液を使用する従来法で懸念される金以外の金属イオンやアニオンなどの発生がないため、本発明で得られる金微粒子は純度が高いものとなる。
また本発明の製造方法により得られる金微粒子と溶剤組成物とを混合してなる金ペーストは金微粒子の純度が高いため、塗布性や焼結性に優れる。さらに、本発明に係る金ペーストを焼成して得られる金被膜の特性も良好となる。
以下に本発明の実施例を説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各実施例における各物性の測定は次のようにして実施した。
(1)定性分析
金微粒子の相同定は、粉末X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)装置「RINT2000」(株式会社リガク製)を用いた。なお、XRD測定結果は原料となる酸化金の回折プロファイルと、金属金の標準ピーク(回折プロファイル)と、測定試料の回折プロファイルを、上段から順次配置して図示している。
(2)平均粒子径
金微粒子の粒子観察には、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM:Field-Emission Scanning Electron Microscope)「S−5000」(株式会社日立製作所製)を使用した。FE−SEMにより観察した粒子画像をノギスにより直接測定した。1試料につき200個程度の粒子の粒子径を測定し、体積平均粒子径dvを以下の式により算出した。
(di:それぞれ測定した粒子径,ni:測定した粒子の個数)
(3)金被膜の体積抵抗率
金被膜の体積抵抗率には、4探針電気抵抗測定装置を用いた。
[実施例1]
酸化金としてAu23・1.5H2O(小島化学薬品株式会社製、式量:468.8g/mol)を2.0g(そのうちAu重量は1.69g、物質量にして0.009mol)、還元性溶媒としてエタノール(物質量:46.07g/mol、密度0.789g/cm3)を10g(物質量にして0.217mol、体積にして12.7cm3)、低極性溶媒としてトルエン(物質量:92.14g/mol、密度0.8669g/cm3)を5.2g(物質量にして0.071mol、体積にして5.99cm3)、保護剤としてドデシルアミン(物質量:185.35g/mol、密度0.806g/cm3)を16g(物質量にして0.086mol、体積にして19.9cm3)混合して反応溶液を作製し、この反応溶液の温度を約60℃に保ちながら、周波数48kHzの超音波を出力約5.9W/cm3で60分間照射することで、Au23・1.5H2Oを還元させ、ドデシルアミンで被覆された金微粒子の分散液を得た。
この分散液を減圧蒸留し、エタノールとトルエンを除去し、粉末を得た。得られた粉末に対し、XRD測定による相同定を行った。
図1はXRD測定の結果を示す図である。図1から、原料であるAu23・1.5H2O、fcc(face-centered cubic:面心立方)構造を有する金属金の両方のピークが確認された。すなわち、Au23・1.5H2Oの一部が未反応のまま残存していることが確認された。
[実施例2]
酸化金としてAu23・1.5H2O(小島化学薬品株式会社製、式量:468.8g/mol)を2.0g(そのうちAu重量は1.69g、物質量にして0.009mol)、平均粒子径2nmの金微粒子粉末を0.01g、還元性溶媒としてエタノール(物質量:46.07g/mol、密度0.789g/cm3)を10g(物質量にして0.217mol、体積にして12.7cm3)、低極性溶媒としてトルエン(物質量:92.14g/mol、密度0.8669g/cm3)を5.2g(物質量にして0.071mol、体積にして5.99cm3)、保護剤としてドデシルアミン(物質量:185.35g/mol、密度0.806g/cm3)を16g(物質量にして0.086mol、体積にして19.9cm3)混合して反応溶液を作製し、この反応溶液の温度を約60℃に保ちながら、周波数48kHzの超音波を出力約5.9W/cm3で60分間照射することで、Au23・1.5H2Oを還元させ、ドデシルアミンで被覆された金微粒子の分散液を得た。
この分散液にトルエンを100g添加し、1μmの濾紙を用いて濾過し、濾液を回収した。濾液にメタノールを500g添加し、過剰なドデシルアミンを除去することで粒子を沈殿・凝集させた。この分散液を1μmの濾紙を用いて濾過し、濾紙上に粉末を得た。粉末を40℃で1時間乾燥させた。
この粉末のXRD測定を行ったところ、fcc構造を有する金属金であることが確認された。この結果から、実施例1と比較して、あらかじめ平均粒子径2nmの金微粒子を添加することで、Au23・1.5H2Oの還元反応が促進されることが確認された。この粉末をトルエン溶媒中に再分散させたところ、赤色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッド(応研商事株式会社製、STEM150Cuグリッド)に滴下し、室温で乾燥した。これをFE−SEMにより観察したところ、平均粒子径2.2nmの金微粒子が確認された。
[実施例3]
酸化金としてAu23・1.5H2O(小島化学薬品株式会社製、式量:468.8g/mol)を2.0g(そのうちAu重量は1.69g、物質量にして0.009mol)、平均粒子径2nmの金微粒子粉末を0.01g、還元性溶媒としてエタノール(物質量:46.07g/mol、密度0.789g/cm3)を10g(物質量にして0.217mol、体積にして12.7cm3)、保護剤としてドデシルアミン(物質量:185.35g/mol、密度0.806g/cm3)を16g(物質量にして0.086mol、体積にして19.9cm3)混合して反応溶液を作製し、この反応溶液の温度を約60℃に保ちながら、周波数48kHzの超音波を出力約7.0W/cm3で60分間照射することで、Au23・1.5H2Oを還元させ、ドデシルアミンで被覆された金微粒子の分散液を得た。
この分散液にトルエンを100g添加し、1μmの濾紙を用いて濾過し、濾液を回収した。濾液にメタノールを500g添加し、過剰なドデシルアミンを除去することで粒子を沈殿・凝集させた。この分散液を1μmの濾紙を用いて濾過し、濾紙上に粉末を得た。粉末を40℃で1時間乾燥させた。
この粉末のXRD測定を行ったところ、fcc構造を有する金属金であることが確認された(図2)。この粉末をトルエン溶媒中に再分散させたところ、赤色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッド(応研商事株式会社製、STEM150Cuグリッド)に滴下し、室温で乾燥した。これをFE−SEMにより観察したところ、平均粒子径9nmの金微粒子が確認された(図3)。
[実施例4]
酸化金としてAu23・1.5H2O(小島化学薬品株式会社製、式量:468.8g/mol)を2.0g(そのうちAu重量は1.69g、物質量にして0.009mol)、平均粒子径2nmの金微粒子粉末を0.01g、還元性溶媒としてエタノール(物質量:46.07g/mol、密度0.789g/cm3)を10g(物質量にして0.217mol、体積にして12.7cm3)、低極性溶媒としてトルエン(物質量:92.14g/mol、密度0.8669g/cm3)を5.2g(物質量にして0.071mol、体積にして5.99cm3)、保護剤としてトリエチルアミン(物質量:101.1g/mol、密度0.726g/cm3)を8.7g(物質量にして0.086mol、体積にして12cm3)混合して反応溶液を作製し、この反応溶液の温度を約60℃に保ちながら、周波数48kHzの超音波を出力約7.4W/cm3で60分間照射することで、Au23・1.5H2Oを還元させ、トリエチルアミンで被覆された金微粒子の分散液を得た。
この分散液にトルエンを100g添加し、1μmの濾紙を用いて濾過し、濾液を回収した。濾液にメタノールを500g添加し、過剰なトリエチルアミンを除去することで粒子を沈殿・凝集させた。この分散液を1μmの濾紙を用いて濾過し、濾紙上に粉末を得た。粉末を40℃で1時間乾燥させた。
この粉末のXRD測定を行ったところ、fcc構造を有する金属金であることが確認された(図4)。この粉末をトルエン溶媒中に再分散させたところ、紫色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッド(応研商事株式会社製、STEM150Cuグリッド)に滴下し、室温で乾燥した。これをFE−SEMにより観察したところ、平均粒子径85nmの金微粒子が凝集した状態で確認された(図5)。
[実施例5]
酸化金としてAu23・1.5H2O(小島化学薬品株式会社製、式量:468.8g/mol)を2.0g(そのうちAu重量は1.69g、物質量にして0.009mol)、平均粒子径2nmの金微粒子粉末を0.01g、還元性溶媒としてエタノール(物質量:46.07g/mol、密度0.789g/cm3)を10g(物質量にして0.217mol、体積にして12.7cm3)、低極性溶媒としてトルエン(物質量:92.14g/mol、密度0.8669g/cm3)を5.2g(物質量にして0.071mol、体積にして5.99cm3)、保護剤としてポリビニルピロリドン(モノマー単位の物質量:111.14g/mol、密度0.25g/cm3)を0.95g(物質量にして0.0085mol、体積にして3.8cm3)混合して反応溶液を作製し、この反応溶液の温度を約60℃に保ちながら、周波数48kHzの超音波を出力約10W/cm3で60分間照射することで、Au23・1.5H2Oを還元させ、ポリビニルピロリドンで被覆された金微粒子の分散液を得た。
この分散液にトルエンを100g添加し、1μmの濾紙を用いて濾過し、濾液を回収した。濾液にメタノールを500g添加し、過剰なポリビニルピロリドンを除去することで粒子を沈殿・凝集させた。この分散液を1μmの濾紙を用いて濾過し、濾紙上に粉末を得た。粉末を40℃で1時間乾燥させた。
この粉末のXRD測定を行ったところ、fcc構造を有する金属金であることが確認された。この粉末をトルエン溶媒中に再分散させたところ、濃紫色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッド(応研商事株式会社製、STEM150Cuグリッド)に滴下し、室温で乾燥した。これをFE−SEMにより観察したところ、平均粒子径660nmの金微粒子が確認された。
[実施例6]
酸化金としてAu23・1.5H2O(小島化学薬品株式会社製、式量:468.8g/mol)を2.0g(そのうちAu重量は1.69g、物質量にして0.009mol)、平均粒子径2nmの金微粒子粉末を0.01g、還元性溶媒としてエタノール(物質量:46.07g/mol、密度0.789g/cm3)を10g(物質量にして0.217mol、体積にして12.7cm3)、低極性溶媒としてトルエン(物質量:92.14g/mol、密度0.8669g/cm3)を5.2g(物質量にして0.071mol、体積にして5.99cm3)、保護剤としてポリビニルピロリドン(モノマー単位の物質量:111.14g/mol、密度0.25g/cm3)を9.5g(物質量にして0.085mol、体積にして38cm3)混合して反応溶液を作製し、この反応溶液の温度を約60℃に保ちながら、周波数48kHzの超音波を出力約4W/cm3で60分間照射することで、Au23・1.5H2Oを還元させ、ポリビニルピロリドンで被覆された金微粒子の分散液を得た。
この分散液にトルエンを100g添加し、1μmの濾紙を用いて濾過し、濾液を回収した。濾液にメタノールを500g添加し、過剰なポリビニルピロリドンを除去することで粒子を沈殿・凝集させた。この分散液を1μmの濾紙を用いて濾過し、濾紙上に粉末を得た。粉末を40℃で1時間乾燥させた。
この粉末のXRD測定を行ったところ、fcc構造を有する金属金であることが確認された(図6)。この粉末をトルエン溶媒中に再分散させたところ、赤色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッド(応研商事株式会社製、STEM150Cuグリッド)に滴下し、室温で乾燥した。これをFE−SEMにより観察したところ、平均粒子径9nmの金微粒子が確認された(図7)。
以上説明した実施例1〜6の製造条件と結果を表1にまとめて示す。
実施例1のXRD測定結果では酸化金と金属金(fcc構造)の双方のピークが確認され(図1)、酸化金の一部が超音波キャビテーションにより金属金に還元したことを確認できた。しかしながら金微粒子粉末を予め添加しない反応溶液では、酸化金の還元反応の速度が不十分であり反応溶液中に酸化金が残存した。
反応溶液に金微粒子を予め添加した実施例2では、実施例1と比較して酸化金の還元反応が促進されて、XRD測定ではfcc構造の金属金のピークのみが観察された。また、FE−SEM観察を行ったところ、平均粒子径2.2nmの金微粒子を確認できた。
低極性溶媒を添加しなかった実施例3においても、実施例2と同じくXRD測定でfcc構造の金属金のピークのみが観察された(図2)。また、平均粒子径9nmの金微粒子をFE−SEM観察から確認できた(図3)。
保護剤にトリエチルアミンを使用した実施例4では、XRD測定でfcc構造の金属金のピークのみが観察されたが(図4)、凝集した金微粒子(一次粒子径85nm)がFE−SEM観察から確認された(図5)。トリエチルアミンはアミン基に結合するアルキル基の炭素数が比較的低く、還元性溶媒(エタノール)との親和性が高いことから、金微粒子の表面を被覆したトリエチルアミンの一部が脱離するなどし、金微粒子が凝集したものと考えられる。
保護剤として比較的少量のポリビニルピロリドンを使用した実施例5では、XRD測定でfcc構造の金属金のピークのみが観察されたが、平均粒子径660nmの金微粒子がFE−SEM観察から確認された。保護剤の添加量が比較的少量であったことから、金微粒子の表面が十分に被覆されるまで、金微粒子が成長したものと考えられる。
なお、ポリビニルピロリドンの添加量を増量した実施例6では、XRD測定でfcc構造の金属金のピークのみが観察され(図6)、平均粒子径9nmの金微粒子がFE−SEM観察から確認された(図7)。保護剤の添加量が実施例5と比較して増量されたことから、微細な金微粒子の表面を保護剤が十分に被覆でき、金微粒子の成長を抑制したものと考えられる。
このように、本発明の金微粒子の製造方法では、金微粒子粉末を予め反応溶液に添加することで金微粒子の生成を促進することができ、また反応溶液の組成や、その他の製造条件を変更することにより、得られる金微粒子の平均粒子径・凝集度を任意に制御可能である。
[実施例7]
実施例3で作製した金微粒子(平均粒子径:9nm)を2.0g、溶剤としてペンタデカン3.2g、展開溶媒としてトルエン3.4g、ドデシルアミン0.6g、ノネニル無水こはく酸0.41gを混合し、減圧蒸留(20℃、4mmHg)によってトルエン溶媒を除去することで金ペーストを作製した。金ペーストの粘度は約10mPa・sであり、金含有量は32mass%であった。
この金ペーストをガラス基板上にスピンコート塗布し、温度250℃で30分間焼成した。得られた金膜の体積抵抗率は約6μΩcmであり、良好な導電性を示した。
次に、比較例を示す。
[比較例1]
HAuCl3・4H2Oを3.76g(そのうちAu重量は1.96g、物質量にして0.01mol)、水(物質量18g/mol、密度1g/cm3)を20g(物質量にして1.11mol、体積にして20cm3)、エタノール(物質量:46.07g/mol、密度0.789g/cm3)を15.8g(物質量にして0.342mol、体積にして20cm3)、クエン酸三ナトリウム(物質量:257.94g/mol)を0.172g(物質量にして0.67mmol)、ミリスチン酸(物質量:228.37g/mol)を0.228g(物質量にして0.001mol)混合し、金イオン溶液を調製した。金の仕込み重量濃度は約4.9mass%である。調製した金イオン溶液を温度80℃で5分間保持した。加熱とともに金粒子が析出し、最終的に目視で確認できるほど粗大な(平均粒子径が1000nmより大きな)金粒子が生成した。
すなわち、比較例1に記載した従来液相法では、本発明で示したような金仕込み重量濃度が高い条件(1〜55mass%)では微細な金微粒子を合成できなかった。
[比較例2]
HAuCl3・4H2Oを3.76g(そのうちAu重量は1.96g、物質量にして0.01mol)、水(物質量18g/mol、密度1g/cm3)を2000g(物質量にして111mol、体積にして2000cm3)、エタノール(物質量:46.07g/mol、密度0.789g/cm3)を1580g(物質量にして34.2mol、体積にして2000cm3)、クエン酸三ナトリウム(物質量:257.94g/mol)を17.2g(物質量にして0.067mol)、ミリスチン酸(物質量:228.37g/mol)を22.8g(物質量にして0.1mol)混合し、金イオン溶液を調製した。金の仕込み重量濃度は約0.054mass%である。調製した金イオン溶液を温度80℃で5分間保持することで、ミリスチン酸で被覆された金微粒子の分散液を得た。
この分散液を1μmの濾紙を用いて濾過し、濾液を回収した。濾液を減圧蒸留により除去し、粉末を得た。粉末を40℃で1時間乾燥させた。
この粉末のXRD測定を行ったところ、fcc構造を有する金属金であることが確認された。この粉末をトルエン溶媒中に再分散させたところ、赤褐色の溶液が得られた。この溶液をマイクログリッド(応研商事株式会社製、STEM150Cuグリッド)に滴下し、室温で乾燥した。これをFE−SEMにより観察したところ、平均粒子径30nmの金微粒子が確認された。
この金微粒子(平均粒子径:30nm)を2.0g、溶剤としてペンタデカン3.2g、展開溶媒としてトルエン3.4g、ドデシルアミン0.6g、ノネニル無水こはく酸0.41gを混合し、減圧蒸留(20℃、4mmHg)によってトルエン溶媒を除去することで金ペーストを作製した。金ペーストの粘度は約10mPa・sであり、金含有量は32mass%であった。
この金ペーストをガラス基板上にスピンコート塗布し、温度250℃で30分間焼成した。焼成により得られた金被膜の体積抵抗率は約12μΩcmであった。従来液相法で製造した金微粒子表面には、原料であるHAuCl3・4H2O由来の塩化物イオンやクエン酸三ナトリウム由来のナトリウムイオンなどが付着しているために、金微粒子同士の焼結性が悪化し、体積抵抗率が高くなると考えられる。
比較例2と実施例7の結果から、従来液相法の金微粒子の焼結性は、本発明の金微粒子よりも劣ることが確認された。

Claims (6)

  1. 酸化金と金微粒子粉末と保護剤と還元性溶媒とを混合して反応溶液とし、その反応溶液中の酸化金添加量を酸化金中に含まれる金の重量(g)×100(%)/反応溶液の重量(g)(mass%)で定義したとき、酸化金添加量の値が1〜55mass%の範囲となるように反応溶液を作製し、その反応溶液に超音波を照射することで酸化金を還元し、前記保護剤によって被覆された金微粒子を析出させる金微粒子の製造方法であって、
    前記保護剤は、式 NH 2 1 あるいはNHR 1 2 あるいはNR 1 2 3 (式中、R 1 及びR 2 及びR 3 は、炭素数2〜16のアルキル基を表す)で示されるアミン化合物、またはポリビニルピロリドンからなり、
    前記還元性溶媒は、粘度が10mPa・s以下であり、
    還元性溶媒の物質量(mol)/酸化金の物質量(mol)で定義される還元性溶媒添加量の値が、3〜80の範囲であり、
    前記超音波は、その周波数が20kHz〜100kHzの範囲である
    ことを特徴とする金微粒子の製造方法。
  2. 護剤の物質量(mol)/酸化金中に含まれる金の物質量(mol)で定義される保護剤添加量が、0.1〜20の範囲である請求項1に記載の金微粒子の製造方法。
  3. 前記還元性溶媒は、1級あるいは2級のアルコール化合物であ請求項1または2に記載の金微粒子の製造方法。
  4. 前記反応溶液は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカン、シクロテトラデカン、トルエン、キシレンから選択される低極性溶媒をさらに添加されてなり、かつ、低極性溶媒の体積(cm3)×100(%)/還元性溶媒の体積(cm3)(vol.%)で定義される低極性溶媒添加量の値が、10〜1000vol.%の範囲である請求項1〜のいずれかに記載の金微粒子の製造方法。
  5. 音波出力(W)/反応溶液の体積(cm3)で定義される超音波照射強度の値が、0.5W/cm3以上である請求項1〜のいずれかに記載の金微粒子の製造方法。
  6. 前記金微粒子粉末は、その平均粒子径が20nm以下であり、かつ、金微粒子粉末の重量(g)×100(%)/反応溶液の重量(g)(mass%)で定義される金微粒子粉末の添加量が、10-3〜10-1mass%の範囲である請求項1〜のいずれかに記載の金微粒子の製造方法。
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