JP4935175B2 - 金属微粒子分散体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
従来のミクロンサイズの金属粉末を用いた導電性ペーストでは、回路を形成させ、焼結を行う際には400℃以上の高温下で焼結を進行させる必要があったため、回路を形成する基板に制約があり、プラスチックフィルム等の基材上で回路を形成させるためには、150〜200℃以下で、さらに好ましくは150℃以下で焼結させる必要があった。一般に、金属微粒子の平均粒子径が数nm〜数10nm程度であるとき、粒子を形成する原子中において、粒子表面に存在するエネルギー状態の高い原子の占める割合が大きくなり、金属原子の表面拡散が極度に大きくなったことに起因し、バルクの金属の融点よりも格段に低い温度で焼結が起こることが知られている。近年、この現象を利用し、金属微粒子を低温で焼結させて導電性被膜を得る試みが注目を浴びており、様々な金属微粒子の製造方法が提案されている。
例えば、高分子量顔料分散剤を保護剤とし、非水性溶媒と水とを混合し、アミンで還元した後に非水性溶媒中に金属を抽出することにより微小な金属微粒子を得る方法などがあるが、この方法では熱分解温度の高い高分子量顔料分散剤を用いているため、低温での焼結が困難であった。(特許文献1)そのため、気相法を用いた合成時にオクチルアミン等のアミン化合物を保護剤として添加し、さらに酸性の分解剤を共存させておくことで保護剤の熱分解温度の低温化をはかる方法もあるが、この方法を用いても200℃以上で長時間加熱する必要があり、プラスチックフィルム上で回路を形成することは困難であった。その上、気相法を用いているためコスト的に不利であるという問題があった。(特許文献2)さらに、近年、金属微粒子の保護剤として炭素数の短い脂肪酸の金属化合物やアミンの金属錯体を添加し低温で焼結させて回路を形成する方法も報告されているが、脂肪酸の金属化合物やアミンの金属錯体は反応性が高く容易に還元されやすいため、長期保存において日光や熱により還元反応が起こり、金属微粒子が成長したり凝集体が形成されたりして分散体の安定性を損ないやすいという問題があった。また、この方法で用いている還元剤は、t−ブチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素ガス等の非常に強力な還元剤であるため、反応速度が速く粒子成長を制御することが困難である。そのため、特に炭素数が10よりも少ない脂肪酸においては凝集物が多く生成し、良好な分散体を得ることができなかった。(特許文献3)
金属微粒子の製造方法では、コスト的に液相法が有利であるといわれているが、その際、還元剤が重要な役割を果たすことが知られている。還元剤としては、一般的に水素、ジボラン、水素化ホウ素アルカリ金属塩、水素化ホウ素4級アンモニウム塩、ヒドラジン、クエン酸、アルコール類、アスコルビン酸、アミン化合物等がよく用いられている。しかし、ジボラン、水素化ホウ素アルカリ金属塩、水素化ホウ素4級アンモニウム塩、ヒドラジン等の還元剤が還元力が非常に強力で、金属化合物との反応が激しく進行するため、反応速度の制御が難しく、生成した金属微粒子が凝集沈殿してしまい、微小な金属微粒子分散体を収率良く得ることは困難であった。また、これら還元力の強い還元剤は強塩基や毒性を有するものも多く、作業上危険であった。クエン酸、アスコルビン酸、アルコール類は、緩やかに反応は進行するものの、還元時に還流などの高温条件下で反応を行う必要があり、生成した金属微粒子が高い熱エネルギーを持つため、不安定で凝集が起こりやすく、高濃度化が困難であった。比較的温和に反応が進行するアルコールアミンを用いて還元する方法も報告されているが、この方法を用いても粒子径分布が広く、収率の良い金属微粒子分散体は得られなかった。また、アミン化合物は金属種によってはアミン錯体を形成するのみで還元反応が進行しない場合があるため、使用できる金属種に制限があり、汎用性に欠けるという問題があった。いずれの還元剤も、均一で高濃度な金属微粒子分散体を得ることが困難であり、昨今、安全で還元性に優れ、粒子径分布の狭い金属微粒子を生成できる還元剤の開発が求められていた。
(式中Rは、n価の多塩基酸残基を表す。)
本発明の導電性の、樹脂組成物またはインキは、粒子径が微小かつ粒度分布が狭い金属微粒子を使用しているため、流動性や安定性に優れており、低温で低い体積抵抗値を有する導電性回路パターンなどの導電性被膜を形成することができる。そのため、フレキソ印刷、ロータリースクリーン印刷、オフセットグラビア印刷、グラビア印刷、レタープレス、インクジェット印刷といった通常の印刷方式で導電性パターンなどの導電性被膜の大量生産が可能となった。また、熱分解温度の低い脂肪酸によって微粒子が被覆されているため、塗膜の焼結を低温で行うことができるようになり、PETフィルム、紙等、各種基材上に回路を形成させることが可能となった。これらの印刷法により形成される厚さ数μm程度の導電性パターンは、例えば非接触型メディアのアンテナ回路や、電磁波シールド用回路パターンに要求される性能を十分満たすと同時に、その性能は安定し信頼性に優れている。
本発明の印刷用インキなどに用いられる樹脂組成物またはインキは、粒子径が微小かつ粒度分布の狭い金属微粒子を使用しているため、金属微粒子に特有の表面プラズモンによる吸収のスペクトルの分布が狭く、目的の波長の光をシャープに吸収することができ、着色剤が強く、光学フィルターとしての性能が優れている。そのため、印刷用インキ、樹脂組成物に添加する場合において、より少ない添加量で、良い性能を出すことが可能となり、コストパフォーマンスにも優れる。
本発明の方法で製造される金属微粒子分散体は、液状媒体中に脂肪酸の金属塩化合物を分散させたのち、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドで還元することにより製造される。
脂肪酸とは、カルボキシル基1個を有するカルボン酸RCOOHのうち、鎖式構造を有するものをいい、直鎖構造のものとアルキル基に分岐した側鎖を有するものとがあり、また、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とがある。
本発明で用いられる脂肪酸の金属塩化合物を形成する脂肪酸の種類としては特に限定されないが、低温分解性や非水性溶媒への親和性等を考慮すると、アルキル基の炭素数は3〜22であることが好ましい。上記脂肪酸は、原料としてだけではなく、還元反応が起こり、金属微粒子が生成した後にも金属表面近傍に存在し、微粒子の安定化を助ける分散剤としても良好に働くため好ましい。
上記の脂肪酸としては特に限定されないが、直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等があげられる。直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等があげられる。中でも、安定性や低温分解性を考慮するとカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等があげられる。
かかる脂肪酸のうち、脂肪酸の炭素数が3〜22の直鎖脂肪酸であると、親油性に優れ非水性溶剤中での安定性が向上するほか、分解温度が低く、低温焼結性に優れるため好ましい。
これらは一種類で用いても複数種を混合して用いても良い。
脂肪酸の金属塩化合物を形成しうる金属としては、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、鉄、コバルト、水銀等のVIII族およびIB族から選ばれる少なくとも一種の金属であることが好ましく、導電性インキとしての物性、低温焼結性を考慮すると金、銀、銅であることが好ましい。
脂肪酸の金属塩化合物は、公知の方法を用いて簡単に得ることができる。例えば、市販の脂肪酸ナトリウムもしくは、脂肪酸と水酸化ナトリウムを水中で混合して得られた脂肪酸ナトリウム塩を、純水中で溶解させておき、得ようとする金属の無機塩を等量添加し、析出した脂肪酸の金属塩化合物を吸引濾過して濾別し、乾燥させることで容易に脂肪酸の金属塩化合物を得ることができる。
上記金属の無機塩としては、特に限定されないが、例えば、塩化金酸、塩化白金酸、塩化銀等の塩化物、硝酸銀等の硝酸塩、酢酸銀、酢酸銅(II)等の酢酸塩、過塩素酸銀等の過塩素酸塩、硫酸銅(II)等の硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩等があげられ、所望の金属に応じて適宜選択することができる。
本発明の金属微粒子分散体の製造方法における還元剤であるカルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドは、通常は樹脂の硬化剤や改質剤として用いられている化合物であり、従来は還元剤として使用されていないが、我々は鋭意検討の中で金属化合物の還元剤としても良好に働くことを発見した。
三塩基酸トリヒドラジドとしては、例えば、クエン酸トリヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド等があげられる。四塩基酸テトラヒドラジドとしては、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等があげられる。
カルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドは、固体で添加しても、溶媒に溶解して添加しても良いが、反応がより均一に効率よく進行するためには溶媒に溶解して添加することが好ましい。
本発明の金属微粒子分散体の製造方法におけるカルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドの添加量については、金属化合物の種類や濃度によっても異なるが、通常は少なくとも金属化合物溶液から金属が還元析出するのに必要な化学量論比の量を使用すればよい。本発明の製造方法に使用される還元剤はジヒドラジド類であり、還元能のある官能基を2個以上有していることから、金属が還元析出するのに必要な化学量論比はヒドラジド基で換算して添加するのが好ましい。還元後に水相を除去する場合には、余剰の還元剤も同時に除去できるため、化学量論比以上の還元剤を使用しても良く、その上限は特に定められるものではないが、洗浄工程やコストを考えると、ヒドラジド換算の化学量論比で金属化合物を還元するのに必要な添加量の6倍以下であることが好ましい。
本発明の金属微粒子分散体の製造方法において、脂肪酸の金属塩化合物を分散させる液状媒体としては、特に限定されないが、不純物の除去等の工程を考慮すると、水と相分離する非水性溶媒が好ましく、非水性溶媒に脂肪酸の金属塩化合物を分散させた後に、還元剤であるカルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドの水溶液を添加することが好ましい。
上記非水性溶媒としては、水と相分離するものであれば特に限定されず、例えば、
クロロホルム、シクロヘキサン、ベンゼン、ノルマルヘキサン、トルエン、シクロヘキサノン、1−メトキシイソプロパノールアセテート、ジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、四塩化炭素、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、石油エーテル、シリコンオイル等があげられる。
本発明の金属微粒子分散体の製造方法では、脂肪酸の金属塩化合物を液状媒体中に分散させ、還元反応を行う過程において、脂肪酸の金属塩化合物または生成した金属微粒子に対し、原料由来の脂肪酸のみでも十分な分散効果を得ることができるが、必要に応じて分散安定化機能を有する化合物(以下「分散剤」と称する場合がある)を適宜添加してもよい。
上記分散安定化機能を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基、4級アンモニウム塩、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、チオール基、スルホン酸基等の顔料親和性基を1個または複数個有する化合物であることが好ましい。顔料親和性基は、化合物の主鎖に含まれていても、側鎖もしくは主鎖と側鎖の双方に含まれていてもよい。
アミン化合物としては、特に限定されず、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N',N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N'−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等の脂環式アミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルキシリレンジアミン等のアラルキルアミン等、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミン等をあげることができる。中でも、アルカノールアミンの類が好ましい。これらは1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、アミン化合物とアミン以外の上記化合物を組み合わせて使用してもよい。
顔料分散剤としては、特に限定されず一般に顔料分散剤として市販されているものを使用することができ、例えば、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース17000、ソルスパース24000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース35100、ソルスパース36000、ソルスパース41000、エフカアディティブズ社製のEFKA4009、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4080、EFKA4010、EFKA4015、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4060、EFKA4330、EFKA4300、EFKA7462、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPB821、アジスパーPB711、アジスパーPB822、アジスパーPN411、アジスパーPA111、コグニスジャパン株式会社製のTEXAPHORUV20、TEXAPHORUV21、TEXAPHORP61、ビッグケミー・ジャパン株式会社製のDisperbyk−101、Disperbyk−103、Disperbyk−106、Disperbyk−110、Disperbyk−111、Disperbyk−161、Disperbyk−162、Disperbyk−163、Disperbyk−164、Disperbyk−166、Disperbyk−167、Disperbyk−168、Disperbyk−170、Disperbyk−171、Disperbyk−174、Disperbyk−180、Disperbyk−182等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの顔料分散剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、顔料分散剤と顔料分散剤以外の上記化合物を組み合わせて使用してもよい。
界面活性剤は通常極性基と非極性基を併せ持つ物質であり、極性基の構造により、陰イオン系(アニオン系)、非イオン系(ノニオン系)、両性イオン系、陽イオン系(カチオン系)に分類される。単独でもミセルを形成して溶媒中に安定に存在するほか、粒子表面に吸着して安定化を助ける働きも有しているため、顔料や無機微粒子の分散安定化剤として好適に用いられる。
また、フッ素系界面活性剤、アリル系反応性界面活性剤等の反応性活性剤、カチオン性セルロース誘導体、ポリカルボン酸、ポリスチレンスルホン酸等の高分子界面活性剤も用いることができる。これらは湿潤分散剤としても市販されており、例えば、エフカアディティブズ社製のEFKA5010、EFKA5044、EFKA5244、EFKA5054、EFKA5055、EFKA5063、EFKA5064、EFKA5065、EFKA5066、EFKA5070、EFKA5071、EFKA5207、ビッグケミー・ジャパン株式会社製のDisperbyk−101、Disperbyk−108、Disperbyk−130等があげられる。これらの界面活性剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、界面活性剤と界面活性剤以外の上記化合物を組み合わせて使用してもよい。
脂肪酸としては、特に限定されず、一般に脂肪酸として知られているものを使用することができる。例えば、
上記の脂肪酸としては、金属微粒子合成時に使用する脂肪酸と同じ脂肪酸を使用しても、異なる脂肪酸を使用してもよく、特に限定されないが、直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等があげられる。直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等があげられる。中でも、安定性や低温分解性を考慮するとカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等があげられる。
三級脂肪酸としては、例えば、ピバリン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸、エクアシッド9(出光石油化学製)、エクアシッド13(出光石油化学製)などがあげられる。
上記化合物の添加量は、特に限定されないが、好ましくは仕込み時に分散体中の金属微粒子100重量部に対し、化合物の合計で1〜2000重量部となる割合である。さらに好ましくは10〜100重量部である。添加量が1重量部未満の場合、化合物の添加による十分な効果が得られず、また、2000重量部を超える場合、安定化に寄与しない余剰の化合物が分散体中に存在することになり、コスト的に不利であるだけでなく、分散体中の金属濃度の低下や導電性の阻害等の悪影響を与える恐れがあるため好ましくない。
本発明の金属微粒子分散体の製造方法における還元反応は、室温でも十分に終了するが、加熱して反応を行っても差し支えない。但し、あまり高温になると金属微粒子のブラウン運動が激しくなり、凝集が起こりやすくなる恐れや、顔料分散剤を添加した場合には、顔料分散剤が熱で変性してしまう恐れがあるため、90℃以下で還元反応を行うことが好ましい。更に好ましくは70℃以下で行うのが好ましい。
本発明の金属微粒子分散体の製造方法において、反応を通じて大気中で行っても差し支えないが、生成した金属微粒子の酸化や硫化を防ぐ、または酸素が存在することによる副反応物の生成を防ぐため、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
本発明の金属微粒子分散体は、必要に応じて水相を除去した後に加熱や減圧蒸留等の方法を用いて非水性溶媒の一部を除去し、任意の濃度まで濃縮することができる。また、非水性溶媒を完全に除去した後、目的に応じて合成時と異なる溶媒を加えて再分散させ、任意の濃度の金属微粒子分散体に調整することも可能である。このときの溶媒は非水性溶媒でも水性溶媒でも良いが、金属微粒子近傍に存在する脂肪酸、または分散剤を用いる場合には該化合物が溶解する溶媒であることが好ましい。
本発明の方法で製造される金属微粒子分散体の粒子径は、必要に応じて調節可能であるが、0.1〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは1〜100nmである。
さらに、低温で融着させて導電性被膜を形成させる場合には、1〜80nmであると好ましい。粒子径は、粒子合成時の反応条件、還元剤、分散剤、原料濃度により調整が可能である。
次に、本発明の導電性の、樹脂組成物またはインキについて説明する。
上記金属粉としては、箔状、フレーク状、球状、針状、鱗片状、板状、樹脂状、その他いずれの形状のものでもよく、これらの混合物を使用することもできる。また、他の導電性粉末、例えば、金属で被覆した無機物粉末、酸化銀、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、インジウム−錫複合酸化物等の金属酸化物、またはカーボンブラック、グラファイト等を含有させることができる。これらの導電性物質は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記樹脂、その前駆体、またはそれらの混合物からなる担体は、金属微粒子や金属粉を各種基材に固着させたり、物性を付与したり、印刷インキとしての性能を維持する働きをする。
本発明の導電性インキを用いることにより、通常の印刷方法によって導電回路が形成できるため、既存の設備を生かした設計が可能である。すなわち、絵柄等の非接触メディアの意匠性を高めるための通常の印刷を施した後に、そのまま導電回路を印刷、形成することが可能なため、従来、エッチング法や転写法で行っていた回路パターン形成法と比較して、生産性、初期投資コスト、ランニングコストの点ではるかに優れている。
[実施例1]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながらトルエン200部およびオレイン酸銀38.9部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)を添加し溶解させた。その後、20%コハク酸ジヒドラジド(以降SUDHと略記する)水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。さらに反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水相を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄・分離を繰り返し、銀微粒子分散体トルエン溶液を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は7±2nmであり、銀濃度は73%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも、粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例2]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながらトルエン200部およびプロピオン酸銀18.1部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、オレイン酸2.8部(金属1molに対し0.1mol倍)を添加し溶解させた。その後、20%SUDH水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。さらに反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水相を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返して銀微粒子分散体トルエン溶液を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は5±2nmであり、銀濃度は75%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例3]
原料の金属塩をペンタン酸銀20.9部に変更した以外は、実施例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は5±1nmであり、銀濃度は82%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例4]
原料の金属塩をヘキサン酸銀22.3部に変更した以外は、実施例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は5±2nmであり、銀濃度は80%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例5]
還元剤を20%アジピン酸ジヒドラジド(ADH)水溶液を174.2部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)に変更した以外は、実施例3と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は6±2nmであり、銀濃度は75%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例6]
原料の金属塩をミリスチン酸銀33.5部に変更した以外は、実施例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は8±2nmであり、銀濃度は72%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例7]
原料の金属塩をステアリン酸銀39.1部に変更した以外は、実施例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は8±2nmであり、銀濃度は65%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[実施例8]
原料の金属塩をペンタン酸銅26.6部、還元剤を20%SUDH水溶液292.3部(金属1molに対しヒドラジド基4mol倍)に変更した以外は実施例2と同様にして赤色の銅微粒子分散体を得た。得られた銅微粒子分散体の銅微粒子の平均粒子径は7±2nmであり、銅濃度は50%であり、40℃で一ヶ月保存した後平均粒子径が10±2nmになったものの、凝集は起こらず、安定であった。
[実施例9]
原料の金属塩をペンタン酸金29.8部に変更した以外は、実施例2と同様にして赤紫色の金微粒子分散体を得た。得られた金微粒子分散体の金微粒子の平均粒子径は、10±3nmであり、金濃度は55%であり、40℃で一ヶ月保存した後でも粒子径に変化はなく安定であった。
[比較例1]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素ガスを導入しながら1M硝酸銀水溶液を100部仕込み、攪拌しながらソルスパース32000(アビシア株式会社製、重量平均分子量約50000)1.9部を、トルエン10.8部中に溶解させた溶液を滴下した。室温で30分攪拌した後、ジメチルアミノエタノール38.1部を滴下し、そのまま室温で一晩攪拌し反応を進行させた。水層を取り出し、数回蒸留水で洗浄・分離を繰返すことで過剰の還元剤と不純物の洗浄を行い、銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体は、ペースト状であり、希釈し測定すると銀微粒子の平均粒子径は25±10nmであり、銀濃度は50%であり、40℃で一ヶ月保存すると粒子径が50nmとなった。
[比較例2]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながらトルエン200部およびヘキサン酸銀22.3部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、オレイン酸2.8部(金属1molに対し0.1mol倍)を添加し溶解させた。その後、ヒドラジン3.2部(金属1molに対し2mol倍)を加えると激しく反応が起こり、沈殿物が生じた。静置、分離した後、水層を取り出すことで沈殿物、過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返して銀微粒子分散体トルエン溶液を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は20±5nmであり、銀濃度は30%であり、40℃で一ヶ月保存すると沈殿物が生じた。
[実施例10]
実施例3で得られた銀微粒子分散体のトルエンをロータリーエバポレータを用いて留去し、固形分50%に濃縮した分散体71.0部、メチルエチルケトン26.0部、ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製「バイロン300」)3.0部を混合し、ディソルバーを用いて30分攪拌し、導電性インキを得た。
[実施例11]
実施例1〜9、比較例1〜2で得られた金属微粒子分散体、および、実施例10で得られた導電性インキを用いて、PET基板上に、スピンコート法によって塗布、150℃の熱風乾燥オーブン中で一時間乾燥させて導電性被膜を得た。
[実施例12]
実施例1〜9、比較例1〜2で得られた金属微粒子分散体、および、実施例10で得られた導電性インキを用いて、ガラス基板上に、スピンコート法によって塗布、180℃の熱風乾燥オーブン中で一時間乾燥させて導電性被膜を得た。
実施例11、12で得られた導電性被膜の膜厚、体積抵抗値について以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
[膜厚]
導電性被膜の膜厚を膜厚計(株式会社仙台ニコン製「MH−15M型」)で測定した。
[体積抵抗値]
導電性被膜を3mm幅に加工した後、導電被膜を30mm感覚で4箇所はさみ、その抵抗値を四探針抵抗測定器(三和電気計器株式会社製「DR−1000CU型」)で測定し、得られた抵抗値と膜厚から体積抵抗値を算出した。
Claims (6)
- 脂肪酸が、炭素数3〜22である飽和または不飽和の脂肪酸から選ばれる一種以上である請求項1記載の金属微粒子分散体の製造方法。
- 脂肪酸の金属塩化合物を形成する金属が、VIII族およびIB族から選ばれる金属である請求項1または2記載の金属微粒子分散体の製造方法。
- 多塩基酸ポリヒドラジドが、二塩基酸ジヒドラジドである請求項1ないし3いずれか記載の金属微粒子分散体の製造方法。
- 液状媒体が、水と非水性溶媒との混合物である請求項1ないし4いずれか記載の金属微粒子分散体の製造方法。
- 還元後に水相を除去する請求項5記載の金属微粒子分散体の製造方法。
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