JP5344779B2 - 毛髪化粧料 - Google Patents

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Description

本発明は、皮膚表皮細胞及び毛母細胞のコレステロール合成を促進させるコレステロール合成促進剤、及びこれを含有し毛髪のダメージを防ぎ、毛髪に柔軟性、しっとり感、ツヤ、ハリ、コシを付与し、髪質を改善することができる毛髪化粧料に関する。
従来の技術及び発明が解決しようとする課題
コレステロールは広く動物細胞に存在する脂質であり、皮膚においては細胞膜の構成成分をなすとともに、表皮細胞から合成分泌され角質細胞間脂質として角質細胞間に独特のラメラ構造を形成している。また毛髪においてもコレステロールは細胞膜の構成成分をなすとともに、毛母細胞で合成され同様にラメラ構造を持つ毛髪の細胞膜複合体(CMC)を形成している。角質細胞間脂質や毛髪細胞膜複合体はそれぞれ皮膚、毛髪の保湿、バリア、細胞間接着等の重要な機能を持っているが、コレステロールはセラミド、脂肪酸とともに角質細胞間脂質や毛髪細胞膜複合体の主成分としてこれらの機能を担っている。
一方、肌荒れや乾燥肌、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、乾癬等の各種皮膚疾患においては健全な角質細胞間脂質の形成が妨げられ、皮膚の保湿機能やバリア機能の低下等を引き起こしていることが数多く報告されている。
このような皮膚疾患に対しては1)各種保湿成分の投与により皮膚の乾燥状態を防ぎ潤いを持たせる、2)角質細胞間脂質の主成分であるコレステロール、セラミド、脂肪酸等を外部から補給してバリア機能を回復させる、3)抗炎症剤による湿疹を抑制させる等の対処がなされていたが、これらの対処法では効果の持続性や経皮吸収性等の問題で不十分な点が多かった。
また、毛髪は洗髪、ブラッシング、ドライヤーによる熱、ブリーチ剤等による美容処理や、長時間の紫外線曝露、あるいは加齢等により損傷劣化し、その結果乾燥してぱさつき、枝毛、切れ毛等の増加および強度低下の原因につながることが知られている。
このような毛髪のぱさつき等においては、シリコーン油、パラフィン系オイル等の油分、低分子の多価アルコール、グリセリン等の保湿剤、天然物から抽出した各種原料を含有する毛髪化粧料を毛髪に塗布する対処がなされていた。しかし、これらの対処法は、単に毛髪表面を覆う、あるいは毛髪に塗布して毛髪内部に物質を補給するのもであるため、効果の持続性が十分ではなかった。
しかるに、毛髪を内部から、すなわち、毛髪自身が持つ水分保持機能を向上させる髪質の改善技術については全く知られていなかった。
本発明の目的は、皮膚表皮細胞及び毛母細胞のコレステロール合成を促進させ、皮膚・毛髪のバリア機能及び保湿機能を改善させるコレステロール合成促進剤、及びこれを含有し毛髪のダメージを防ぎ、毛髪に柔軟性、しっとり感、なめらかさ、ツヤ、ハリ、コシを付与し、髪質を改善することができる毛髪化粧料を提供することにある。
課題を解決するための手段
本発明者らは、当該植物又はその抽出物が皮膚表皮細胞及び毛母細胞のコレステロール合成を促進させ、新たに発育してくる毛髪の内在コレステロール量を向上させ、結果として毛髪のダメージを防ぎ、毛髪に柔軟性、しっとり感、なめらかさ、ツヤ、ハリ、コシを付与し、髪質を改善できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、ブッチャーブルーム、キキョウ、オランダガラシ、キウイ、レンゲソウ、アロエ、サイシン、コメ、ゲンチアナ、ジオウ、カッコン、スイカズラ、グレープフルーツ、トウニン、クマザサ、キョウニン及びエイジツから選ばれる1種以上、又はその抽出物を含有する毛髪化粧料、コレステロール合成促進剤及び髪質改善剤を提供するものである。
本発明のブッチャーブルームはユリ科(Liliaceae)のナギイカダ Ruscus aculeatus L.、Ruscus acleatus ver. angustifolius Boss.、Ruscus hypoglossum L.、Ruscus hypophyllum L.等のナギイカダ属(Ruscus)のすべての種を用いることができ、主としてその根茎、新芽、葉が用いられる。
キキョウはキキョウ科(Campanulaceae)のキキョウ(Platycodon glandiflorum(Jacq.)A.DC.)等のキキョウ属(Platycodon)のすべての種を用いることができ、主としてその根が用いられる。
オランダガラシはアブラナ科(Brassicaceae)のオランダガラシ Nasturtium officinale R.Br.であり、主としてその全草が用いられる。
レンゲソウはマメ科(Fabaceae)のゲンゲ Astregalus sinicus L.であり、主としてその全草、種子が用いられる。
アロエはユリ科(Liliaceae)のケープアロエ Aloe ferox Mill.、Aloe africana Mill.、Aloe spicata Baker、ソコトリンアロエ Aloe perryi Baker、キュラソウアロエ Aloe vera L.、ナタールアロエ Aloe bainesii Th.Dyer.、Aloe succotrina Lam.、Aloe marlothii Berger、キダチアロエ Aloe arborescens Mill.等が用いられ、主としてその葉が用いられる。
サイシンはウマノスズクサ科(Aristolochiaceae)のウスバサイシン Asiasarum sieboldii Miq.、クロフネサイシン Asiasarum dimidiatum F.Maekawa、ケイリンサイシン Asiasarum heterotropoides var. mandshuricum F.Maekawa、ウスゲサイシン Asiasarum heterotropoides var. seoulense F.Maekawaであり、主としてその根、根茎、全草が用いられる。
コメはイネ科(Poaceae)のイネ Oryza sativa L.であり、主としてその種子が用いられる。
ゲンチアナはリンドウ科(Gentianaceae)のゲンチアナ Gentiana lutea L.であり、主としてその根、根茎が用いられる。
ジオウはゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)のアカヤジオウ Rehmannia glutinosa Libosch.であり、主としてその根が用いられる。
カッコンはマメ科(Fabaceae)のクズ Pueraria lobata Ohwiであり、主としてその根が用いられる。
スイカズラはスイカズラ科(Caprifoliaceae)のスイカズラ Lonicera japonica Thunb.であり、主としてその葉、茎が用いられる。
グレープフルーツはミカン科(Rutaceae)のグレープフルーツ Citrus paradisi Macf.であり、主としてその果実、種子、葉が用いられる。
トウニンはバラ科(Rosaceae)のモモ Prunus persica (L.) Batsch.、ノモモ Prunus persica var. davidiana Maxim.であり、主としてその種子が用いられる。
クマザサはイネ科(Poaceae)のクマザサ Sasa veitchii (Carr.) Rehd.であり、主としてその葉が用いられる。
キョウニンはバラ科(Rosaceae)のホンアンズ Prunus armeniaca L.、アンズ Prunus armeniaca var. ansu Maxim.、マンシュウアンズ Prunus mandshurica Koehne.、モウコアンズ Prunus sibirica L.であり、主としてその種子が用いられる。
エイジツはバラ科(Rosaceae)のノイバラ Rosa multiflora Thunb.、カラフトイバラ Rosa davurica Pallas.、テリハノイバラ Rosa wichuraiana Crep.であり、主としてその偽果が用いられる。
本発明で用いる植物は各種の薬効を有することが知られているものであるが、これらがコレステロール合成促進効果を有すること、又髪質改善効果を有することはについては全く知られていなかった。尚、ここでいう髪質改善とは毛髪の柔軟性、しっとり感、なめらかさ、ツヤ、ハリ、コシ等の性質のうちいずれか一以上を向上させることをいう。
本発明の毛髪化粧料、コレステロール合成促進剤及び髪質改善剤の有効成分である上記植物は、その植物の全草又は葉、根、根茎、果実、種子、花のうちの1以上をそのまま又は粉砕して用いる。また、本発明において抽出物とは、更にこれを常温又は加温下にて抽出するか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得られる各種溶剤抽出液、その希釈液、その濃縮液又はその乾燥末を意味するものである。ここで抽出物は、2種以上の植物から得られた混合物であってもよい。
抽出に用いる溶剤としては水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及ぴ環状エーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ピリジン類などが挙げられ、これらを単独又は混合物として用いることができる。
また、液々分配等の技術により、上記抽出物から不活性な爽雑物を除去して用いることもでき、本発明においてはこのようなものを用いることが好ましい。これらは、必要により公知の方法で脱臭、脱色等の処理を施してから用いてもよい。
当該植物又はその抽出物は、本発明のコレステロール合成促進剤及び髪質改善剤としてそのまま用いることもできるが、当該抽出物を希釈調製して又は濃縮若しくは凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製して、用いることもできる。
本発明のコレステロール合成促進剤及び髪質改善剤を毛髪化粧料に用いる場合には、当該毛髪化粧料中の上記植物の含有量は、一般的に0.1〜20重量%とすることが好ましく、特に0.5〜10重量%とすることが好ましい。一方、植物抽出物の含有量は、原料植物により異なるが、一般的に固形分換算で0.00001〜10重量%とすることが好ましく、特に0.0001〜5重量%とすることが好ましい。
本発明のコレステロール合成促進剤を皮膚(頭皮を除く)に用いる場合には、当該皮膚化粧料中の上記植物の含有量は、一般的に0.1〜20重量%とすることが好ましく、特に0.5〜10重量%とすることが好ましい。一方、植物油出物の含有量は、原料植物により異なるが、一般的に固形分換算で0.00001〜10重量%とすることが好ましく、特に0.0001〜5重量%とすることが好ましい。
本発明の毛髪化粧料、コレステロール合成促進剤及び髪質改善剤は、種々の形態の製剤とすることができるが、通常は、医薬品、医薬部外品、化粧品等の外用剤として用いることが好ましい。
本発明の毛髪化粧料、コレステロール合成促進剤及び髪質改善剤の剤型は、水溶液、エタノール溶液、エマルジョン、サスペンジョン、ゲル、固型、エアゾール、粉末剤等が挙げられる。頭皮及び毛髪に適用する場合の形態としてはシャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー、ヘアリキッド、ヘアトニック、養毛剤、育毛剤、ヘアスプレー等が挙げられ、中でも養毛剤、育毛剤、コンディショナー、ヘアリキッド、ヘアトニックとして用いることが効果の点から好ましい。また、コレステロール合成促進剤を皮膚(頭皮を除く)に適用する場合は、その形態として軟膏、ローション、クリーム、美溶液、化粧水、マッサージ剤、パック、ファンデーション、口紅、入浴剤、カプセル剤、錠剤、座剤、注射剤、貼付剤等が挙げられ、軟膏、ローション、クリーム、美溶液、化粧水、マッサージ剤、パック、ファンデーション、口紅として用いることが効果の点から好ましい。
本発明の毛髪化粧料、コレステロール合成促進剤及び髪質改善剤には溶剤、分散媒、軟化剤、粉体、油、油状物質、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等の種々の公知の添加剤を加えることもできる。
さらに本発明の毛髪化粧料、コレステロール合成促進剤及び髪質改善剤には、それぞれの目的に応じて薬効成分(鎮痛消炎剤、鎮痒剤、殺菌消毒剤、収敏剤、皮膚軟化剤、ホルモン剤等)、界面活性剤、W/O又はO/W型乳化剤、シリコーン系油剤用の乳化剤(ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル・アルキル変性シリコーン、グリセリルエーテル変性シリコーン等)、乳化安定剤、キレート剤、増粘剤(メチルセルロール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、トラガント、寒天、ゼラチン等)、美白剤、pH調整剤、防腐剤、保湿剤、色素類、香料等を適宜配合することができる。
本発明の毛髪化粧料、コレステロール合成促進剤及び髪質改善剤は、頭皮及び毛髪に適用することにより毛母細胞に直接働いて毛母細胞自身のコレステロール合成を促進させる。これにより、新たに発育してくる毛髪の細胞膜複合体中のコレステロール量が向上し、毛髪ダメージを防ぎ、毛髪の柔軟性、しっとり感、なめらかさ、ツヤ、ハリ、コシの向上等の髪質の改善を図ることができる。また、コレステロール合成促進剤は皮膚に適用することにより皮膚表皮細胞のコレステロール合成を促進させ、皮膚のバリア機能及び保湿機能を改善することができ、荒れ肌改善、及び皮膚老化防止作用が期待される。
製造例1 ブッチャーブルーム抽出物の製造
ナギイカダ(Ruscus aculeatus L.)の乾燥根茎を細切し、その10gに30vol%エタノール水溶液100mLを加え、室温下時々攪拌しながら24時間抽出した後、濾過した。これに水100mLを加え、40℃で減圧下、約70mLまで濃縮した。この操作を3回行った後、水及びエタノールを加えて、エタノール濃度を30vol%濃度に調整し、全体を100mLとした抽出物を得た(固形分1.22%)。
製造例2 キキョウ抽出物の製造
キキョウ(Platycodon glandiflorum(Jacq.)A.DC.)の乾燥根を細切し、その10gに50vol%エタノール水溶液100mLを加え、室温下時々攪拌しながら24時間抽出した後、濾過した。これに水100mLを加え、40℃で減圧下、約70mLまで濃縮した。この操作を3回行った後、水及びエタノールを加えて、エタノール濃度を50vol%濃度に調整し、全体を100mLとした抽出物を得た(固形分5.79%)。
製造例3 オランダカラシ抽出物の製造
オランダガラシ(Nasturtium officinale R.Br.)の乾燥全草を細切し、その10gに50vol%エタノール水溶液100mLを加え、室温下時々攪拌しながら24時間抽出した後、濾過した。これに水100mLを加え、40℃で減圧下、約70mLまで濃縮した。この操作を3回行った後、水及びエタノールを加えて、エタノール濃度を50vol%濃度に調整し、全体を100mLとした抽出物を得た(固形分0.18%)。
製造例4 その他の植物抽出物の製造
その他の植物についても同様に、全草、葉、根、根茎、果実、種子又は花を細切し、その10gに適宜濃度調整した水とエタノールの混液、若しくは水と1,3−ブタンジオールの混液100mLを加え、室温下時々攪拌しながら24時間抽出した後、濾過した。これに水100mLを加え、40℃で減圧下、約70mLまで濃縮した。この操作を3回行った後、水及びエタノール、若しくは1,3−ブタンジオールを加えて、エタノール濃度、1,3−ブタンジオール濃度を適宜調整し、全体を100mLとした抽出物を得た。
実施例1 コレステロール合成促進試験(細胞培養系)
<ケラチノサイトの培養>
正常ヒト新生児包皮由来表皮角化細胞(KK−4009、Strain No : 8C0509、クラボウ)を試験に用いた。6穴プレートに細胞を播き込み、60〜80%コンフルエントになるまで2mLのケラチノサイト−SFM培地で培養した。培養は5%CO2、37℃条件下でおこなった。
<de novoコレステロール合成アッセイ>
60〜80%コンフルエントに達した細胞はアッセイに用いるため、実験開始24時間前に2mLの添加剤不含のケラチノサイト−SFM培地(ケラチノサイト−SFM(−)培地)に交換し、馴化させた。アッセイは、培地を新しい1mLのケラチノサイト−SFM(−)培地に交換し、20μLの[1−14C]−酢酸ナトリウム溶液、及び10μL(1vol%濃度)の上記植物抽出物を直接培地に添加することで開始した。[1−14C]−酢酸ナトリウム溶液は[1−14C]−無水酢酸ナトリウム粉末(NBC−084、250μCi、2mCi/mmol、第一化学)を2mLのケラチノサイト−SFM(−)培地で溶解したものとした。
上記植物抽出物を添加して18時間培養した後、培地を吸引除去し、PBS(−)で細胞を2回洗浄した。その後、1ウェルあたり0.5mLの0.1N水酸化ナトリウム溶液を添加して反応を停止した。このまま室温で数分間放置することで細胞を溶解し、分析に用いるまで−20℃に保存した。
300μLの細胞溶解液を10mL容蓋付きガラスチューブにとり、ここに1mLの20w/v%KOH−エタノール溶液を添加し、水浴中で85℃、3時間処理した。放冷後、0.5mLの蒸留水を添加し、1mLの石油エーテルで2回抽出した。抽出液は別の10mL容蓋付きガラスチューブにとり、窒素気流下で乾固した。抽出物に2mLのアセトン/エタノール(1:1)、10μLの10Vol%酢酸水溶液、及びキャリアステロールとして100μLの2mgコレステロール/mL アセトン/エタノール(1:1)溶液を添加して溶解し、ここに1mLの1w/v%ジギトニン(D−5628、Sigma)/50vol%エタノール溶液を添加してそのまま密栓して室温下、一夜放置した。翌日ガラスチューブを遠心した後、上清を吸引除去し、2mLのアセトン/エーテル(1:2)、及び2mLのエーテルで沈殿を洗浄した。このジギトニン/ステロール沈殿物を窒素気流下で乾固させた後、再び1.5mLの酢酸/メタノール(1:1)溶液で溶解し、標準液シンバイアルに回収した。これに10mLの液シンカクテル(Aquasol−2、Packard)を加えて混合し、液体シンチレーションカウンタ(2550TR/LL、Packard)で放射活性を測定した。
de novoコレステロール合成量は[1−14C]−酢酸のステロール画分への取込み量で表し、細胞全タンパク量で標準化した(dpm/mg protein)。細胞タンパク量の測定には50μLの細胞溶解液を用い、BCA Protein Assay Reagent(Pierce)によって求めた。
<結果>
コントロールを100としてコレステロール合成促進率を算出した結果を図1に示す。図1から明らかなように、いずれのエキスにおいてもヒトケラチノサイトに対するコレステロール合成促進効果が認められた。
実施例2 コレステロール合成促進試験(毛器官培養系)
<方法>
生後3日齢のSDラット新生仔を氷中屠殺し、ヒビテン液で体表面を洗浄した後、無菌的に髭器官を摘出し培養に用いた。髭器官の摘出部位は眼側近位の縦2列とし、左右それぞれ各8本の髭器官を摘出した。得られた髭器官はRPMI1640培地にて洗浄し、組織培養用プラスチックシャーレで培養した。シャーレ中央部の穴の上にステンレス製メッシュをのせ、その上に1シャーレあたり8本(1匹の片頬分)の髭器官をのせ、組織が浸る程度(約0.7mL)に培地を加えた。培地は、1.25mM酢酸ナトリウム(2.5μCi/mL [1−14C]−酢酸ナトリウム)を含むRPMI1640培地とした。1匹のラットから2シャーレ分(左右の髭器官)を調製し、一方をコントロール、もう片方をサンプル添加とした。サンプルはブッチャーブルーム抽出物とし、培地に1vol%濃度になるように添加した。培養は通常の5%CO2、37℃条件下でおこない、5日間培養した。
毛伸長量測定のため、培養開始直後、及び5日間の培養終了時にシャーレを実体顕微鏡下に移し、毛包をステンレス製メッシュの升目とともに写真撮影した。培養終了後、実体顕微鏡下で髭器官を毛包部と毛シャフト部に分離し、毛シャフト部のみをコレステロール合成アッセイに用い、実施例1と同様の方法でコレステロール生合成量を測定した。コレステロール生合成量は単位伸長量あたりに換算して表した。
<結果>
毛シャフト単位伸長量あたりのコレステロール合成量を図2に示す。ブッチャーブルーム抽出物は毛シャフト単位伸長量あたりのコレステロール量を有意に増加させた。このことから、ブッチャーブルーム抽出物は毛母細胞にもケラチノサイトと同様に作用してコレステロールの合成を促進し、合成されたコレステロールが毛シャフト部に蓄積されることが判明した。
実施例3 コレステロール合成促進試験(動物試験)
<動物試験>
10匹の7週齢(♂)白色モルモットの背部体毛をバリカンで毛刈りし、サンプル塗布部位として左右それぞれ3×7cmの部分をマーキングした。塗布サンプルは3vol%濃度のブッチャーブルーム抽出物、及び基剤のみのコントロールとした。
本発明品 (v/v) コントロール品 (v/v)
ブッチャーブルーム抽出物 3% エタノール 60%
エタノール 60% 水 40%
水 37%
右側背部は本発明品、左側背部はコントロール品を毛刈りの日から毎日1回、それぞれ0.3mLずつを塗布した。4日目に再度毛刈りをおこない、さらに10日間連続して塗布した。塗布終了後、モルモットを屠殺し、背部皮膚を回収し、サンプル塗布部位の範囲内で3×6cmの皮膚を正確に切り取り、再生毛を毛刈りし回収した。
<角層コレステロール量の測定>
切り取った皮膚は直ちに60℃の温浴中に60秒間浸漬し、表皮を分離した。表皮は更に0.5w/v%濃度のトリプシン(T7409、Sigma)溶液に移し、37℃で1時間処理し、角層を分離した。得られた角層は凍結乾燥し、その重量を測定した後、Bligh−Dyer法(クロロホルム:メタノール:水=4:4:3.6)による脂質抽出を行った。角層脂質抽出液は20cm×20cmのシリカゲル薄層クロマログラフィープレート(Merck, 1.11798)にアプライし、クロロホルム/メタノール/水(100:10:0.5)で3cm(2回繰り返す)、ヘキサン/酢酸(80:10)で12cm、ついで石油エーテルで15cm展開した。その後プレートを乾燥し、10w/v%硫酸銅・8w/v%リン酸水溶液に浸漬・乾燥したのち、180℃のホットプレート上で発色させ、デンシトメーター(ATTO, Lane & Spot Analyzer Ver 5.01h)でコレステロール量を求めた。
<結果>
角層重量当たりのコレステロール量を図3に示す。図3から明らかなように本発明品を塗布した角層中のコレステロール量が増加していることが認められた。
実施例4 コレステロール合成促進試験(動物試験)
<毛内在コレステロール量の測定>
実施例3で得られた再生毛は20mLの蒸留水で20分間洗浄したのち、さらに10mLのヘキサンで2分間洗浄して表面の汚れを除去した。これをさらに蒸留水で軽く濯ぎ、そのまま風乾させた。再生毛はハサミで3mm程度の長さに細切し、正確に30mgを秤量し、10mL容ガラス試験管に移した。これから以下に示す溶媒を用いて内在遊離脂質の抽出をおこなった。
5mL クロロホルム/メタノール(2:1)
室温、24時間
5mL クロロホルム/メタノール(1:1)
室温、24時間
5mL クロロホルム/メタノール(1:2)
室温、24時間
5mL クロロホルム/メタノール/蒸留水(18:9:1)
室温、24時間
それぞれの抽出液は別の10mL容ガラス試験管にまとめて回収し、窒素気流下で乾固させた。これをクロロホルム/メタノール混液(1:1)に溶解し、体毛内在遊離脂質抽出液とした。これを実施例3と同様の方法で分析し、コレステロール量を求めた。
<結果>
体毛重量当たりのコレステロール量を図4に示す。図4から明らかなように本発明品を塗布して新たに発育した体毛中のコレステロール量が増加していることが認められた。
実施例5 コレステロール合成促進試験(動物試験)
<体毛水分量の測定>
実施例3で得られた再生毛を実施例4に示した方法で洗浄、風乾させた。これを温度23℃、相対湿度0%の状態で10日間放置したのち、精秤した。さらに、体毛を温度23℃、相対湿度43%の状態で14日間放置したのち、精秤した。相対湿度43%時の体毛重量から相対湿度0%時の体毛重量を減じた値を温度23℃、相対湿度43%時における体毛水分量とした。
<結果>
測定結果を図5に示す。本発明品を塗布して新たに発育した体毛の水分保持機能は明らかに向上していた。
実施例6
実施例3で得られたモルモット体毛を温度23℃、相対湿度50%に一昼夜放置し、10名の専門パネラーにより、下記の評価基準に従い、ハリ・コシ、なめらかさ、しっとり感を判定した。
評価基準 評点
<体毛のハリ・コシの評価>
感触に弾力がありハリ・コシがある :+1点
どちらとも言えない : 0点
感触に弾力がなくハリ・コシがない :−1点
<体毛のなめらかさの評価>
感触になめらかさがある :+1点
どちらとも言えない : 0点
感触になめらかさがない :−1点
<体毛のしっとり感の評価>
感触にしっとり感がある :+1点
どちらとも言えない : 0点
感触にしっとり感がない :−1点
パネラー全員の評点の総和を表1に示す。本発明品で処理した体毛のハリ・コシ、なめらかさ、しっとり感がいずれも優れたものであった。
Figure 0005344779
実施例7
以下に示す組成のヘアローションを常法により製造した。
Figure 0005344779
Figure 0005344779
これらのヘアローションを使用した場合、いずれも発育した毛髪は水分保持機能に優れ、毛髪のハリ・コシ、なめらかさ、しっとり感を向上させた。
実施例8
以下に示す組成のヘアトリートメントを常法により製造した。
Figure 0005344779
Figure 0005344779
これらのヘアトリートメントを使用した場合、いずれも発育した毛髪は水分保持機能に優れ、毛髪のハリ・コシ、なめらかさ、しっとり感を向上させた。
発明の効果
本発明の毛髪化粧料、コレステロール合成促進剤及び髪質改善剤は、皮膚表皮細胞自身や毛髪の毛母細胞自身のコレステロール合成を促進させ、皮膚・毛髪のバリア機能及び保湿機能を改善させることができ、又毛髪のダメージを防ぎ、毛髪に柔軟性、しっとり感、なめらかさ、ツヤ、ハリ、コシを付与し、髪質を改善することができる。
ヒトケラノサイトのコレステロール合成促進効果を示す図である。 ラット毛器官培養のコレステロール合成促進効果を示す図である。 角層のコレステロール量増加効果を示す図である。 体毛のコレステロール量増加効果を示す図である。 体毛の水分保持性能の増加効果を示す図である。

Claims (2)

  1. ブッチャーブルーム、キキョウ、サイシン、ゲンチアナ、カッコン、スイカズラ、グレープフルーツ、クマザサ及びキョウニンから選ばれる植物又はその抽出物を有効成分とし、頭皮に適用される毛母細胞のコレステロール合成促進剤。
  2. ブッチャーブルーム又はその抽出物を有効成分とし、頭皮に適用される髪質改善剤であって、前記髪質改善が毛髪の柔軟性、しっとり感、なめらかさ、ツヤ、ハリ及びコシのうちいずれか1以上の向上である髪質改善剤。
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