JP4757665B2 - ササエキス含有育毛剤組成物 - Google Patents
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Description
の一つとして、変換成長因子(TGF)βは、毛周期を成長期から退行期、休止期へ移行させる作用を示す。その作用を抑制するアンタゴニストが見出され、新規な育毛成分として提案されている。
。
F−5作用に対し、阻害作用を有するか、またはアンタゴニストとなる物質を見出すべく、鋭意研究を進めてきた。その結果、本発明者らは特定の植物抽出物がその目的に合致することを見出しており、さらに従来から提供され、使用されているササエキス製品の中で、特定の調製品についてもFGF−5作用の阻害活性のあることを見出し、本発明を完成した。
前記ササエキス調製品は、ササ原料からササエキスを調製する過程で生成する抽出液を共沸分留した際の残留液である。
前記ササエキス調製品がK-3、K-4、NK-3およびNK-4からなる群より少なくとも1種選択されることが望ましい。
育毛とは、「現在ある髪の毛を健康に保ち、抜け毛を防ぎ、強い髪にする」ことである(日本毛髪業協会による育毛の定義)。本発明における育毛作用も基本的にはこのような作用を指し、より具体的には、例えば毛髪の太さ、色艶や光沢が改善され、その作用が顕著な場合の例として、頭皮のすでに脱毛している部分に頭髪が再び見られるようになる(いわゆる発毛)ことなどを含めた、広義の作用をいう。また、本発明の育毛物質とは、以下に述べるような、そのような育毛作用に対する有効成分、またはそうした成分を含有する物質のことである。「FGF−5S様活性」とは、FGF−5を阻害するFGF−5Sと同等または類似の阻害作用をいう。
ササエキス調製品
「ササエキス調製品」とは、ササエキスとしての各種調製品の総称である。「ササエキス」は、チシマザサ、Sasa kurilensis(Rupr.)またはクマザサ、Sasa veitdin(Carr.
)Rehd. (Gramineae)の葉からエタノール溶液にて抽出して得られるエキスなどを一括し
ていう。チシマザサ、Sasa kurilensis(Rupr.)もクマザサに含めることもある。クマザサは温帯から亜熱帯にかけて生息する笹の一種で、日本でも家の周りなどに自生する植物である。したがって本発明では、チシマザサ、クマザサなどを含め、一括して「ササ」という。
されているササエキス製品には、調製工程および/または調製条件が相違するために、多
種類の調製品がある。
本発明者らの研究により、FGF−5は、毛の成長を阻害し、毛周期を成長期から退行期へ移行させる作用を有していることが明らかにされている。一方、毛包の根元にある毛乳頭は、毛母細胞の増殖や分化を調節することにより毛の成長を制御している。退行期になると毛母細胞は消失してしまうが、毛乳頭細胞は活動が低下するもののその数は減らない。次の成長期には、毛乳頭細胞が再び活性化し、その作用によって毛母細胞が新たに増殖・分化し始める。毛乳頭細胞そのものは変わっていないため、前の成長期と同じ太さの毛を作ることができる。したがって、成長期から退行期・休止期に移る引き金の役割を担っているFGF−5の作用を何らかの方法で抑制すれば、成長期だけが延長される。成長期をこのように長くする物質は、優れた育毛・養毛効果を発揮すると期待される。
される。
・培養細胞を用いるイン・ビトロ評価
本発明の育毛剤組成物に使用されるササエキス調製品に育毛作用があるかどうかを判別するためにイン・ビトロ評価を行なった。本評価は、スクリーニングの対象であるササエキス調製品が、培養細胞の増殖を促進するFGF−5作用を阻害するかどうかを測定することを骨子としている。そのイン・ビトロ評価では、FGF−5感受性の、すなわちFGF−5を添加することにより増殖が促進される培養細胞を使用する。例えばFR-Ba/F3細胞が好ましい。
は希釈倍率を変えて少なくとも数点設定するのが好ましい。
には3時間培養した後、FGF−5依存的なFR-Ba/F3細胞増殖をいずれの濃度で阻害するかどうかを調べてもよい。上記培養細胞の増殖が抑制されれば、添加した試料が、FGF−5による細胞増殖の刺激作用を阻害したこととなる。阻害の程度は、最大阻害の50%阻
害濃度で比較できる。たとえば、マイクロプレートリーダーを用いて細胞数を数えることにより細胞増殖を調べることができる。あるいはそれぞれの細胞に細胞増殖の指標となる物質(チミジンなど)を加え、その取り込みを見ることによって効果を判定してもよい。増殖の程度の比較には、被検物質の代わりにベヒクルを含むものを対照とする。そうしたFGF−5作用を阻害する活性は、ベヒクルを投与した対照群に対する細胞増殖の相対割合(たとえば%)として示される。
スクリーニングにおけるイン・ビボ評価は、動物、好ましくは毛周期を強制同調させたマウスモデルに試料を塗布投与することによる。次いで適切な観察時期に毛包の形態などを測定して、育毛剤成分の候補となり得るササエキス調製品について、その発毛・育毛効果を評価する。
開始から塗布作業を開始し、最終塗布の翌日、マウスの皮膚を採取して薄切切片を作成し、毛包の形態、大きさを比較する。具体的には、光学顕微鏡下にて観察した皮膚切片像は、写真撮影およびコンピュータへの画像データの取り込みを行なって、切片中の毛包の形態および大きさを比較する。
に移行しているのに対し、当該エキスの塗布群では、毛包が長く成長期が持続しており、毛周期が成長期から退行期へ移行するのを遅延させていることを確認できれば、発毛・育毛効果があると判断できる。
ササからエキスを抽出する場合、通常、高圧圧搾、ブランチング、加水分解などの処理を行なうことにより、各種のエキス調製品が生成する。そうした処理を経て得られた液体成分は、さらに共沸分留される(図1)。この共沸分留によって留出液と分留後に残った残留液とに分かれる。本発明者は、図1に示されるササエキス調製品それぞれについて、
上記の育毛作用の評価を行った。その結果、共沸分留において生成する残留液にFGF−5作用を阻害する活性があることを見出した。それ以外のエキス調製品にはそうした活性が認められなかった。したがって、ササ原料からササエキスを調製する過程で生成する抽出液を共沸分留した際の残留液が、育毛剤組成物の有効成分として利用できる。育毛剤組成物に加えられるササエキス調製品は、図1のK-3、K-4、NK-3およびNK-4からなる群より少なくとも1種選択されることが望ましい。
発毛・育毛の生理メカニズムを担う毛乳頭細胞機能とこれを制御する分子の作用に立脚する育毛物質を有効成分に含む育毛・養毛剤でなければ、満足すべき発育毛効果を得られない。かかる観点から完成された本発明の育毛剤組成物は、上記のFGF−5の作用を阻害するササエキスを1種または2種以上、有効成分として含有する。本発明の育毛剤組成物は、含有する有効成分の作用が発毛の分子的機作に裏づけられており、しかもその成分が天然素材に由来するという特徴を有している。
は2種以上とともに、下記の成分を所定量、常法に従って混合などの操作を施すことによ
り製造することができる。
具体的には育毛剤組成物は、ヘアトニック、ヘアジェル、ヘアクリーム、ヘアトリーメントローション、ヘアフォーム、ヘアミスト、ヘアシャンプー、ヘアリンスなどの形態で提供される。
イヌ、ネコ、カナリヤ、インコといった愛玩動物の毛並み改善などにも使用できる。さらに毛を採取するか、毛皮を利用するメンヨウ、カシミヤ山羊、アルパカ、アンゴラウサギ、ミンク、キツネなどの動物にも適用して発育毛を促進し毛の色つやを良くすることで、毛または毛皮製品の品質を高める一助となる。
以下、本発明について実施例を挙げてさらに説明を加えるが、本発明がこのような実施例にのみに限定されるものではない。なお特にことわらない限り、%は、重量%である。
使用したチシマザサエキス調製品は、図1に示されたK-1、K-2、K-3(上清)、
K-4(上清)、K-4(沈殿抽出上清)、NK-2、NK-3(上清)、NK-4(沈殿抽
出上清)である。
びベヒクルである50%エタノールを添加して3日間培養した。その後、各ウェルにセルカウンティングキット(和光純薬製)を添加し、2時間培養した後、マイクロプレートリーダーを用いて細胞増殖を調べた。その結果を表1に示す。IC50値が小さいものほど、FGF−5阻害作用が強い。
及びNK-4は、選択的にFGF−5阻害活性を持つことが示された。
)、及びエタノール−水混液による抽出後の遠心分離上清部分(NK-4(沈殿抽出上清
))に存在した。このことは、FGF−5阻害活性を持つ成分が水溶性であり、上清部分にすべて溶出し、固体部分には存在していないことを意味する。なおK-3(上清)、K-4(上清)、NK-3(上清)、及びNK-4(沈殿抽出上清)の阻害活性に大きな差異はないが、K-3よりはK-4の方が、NK-3よりはNK-4の方がやや強力である傾向が観察された。
毛周期が休止期にある8週齢のC3H/HeN雄性マウス(日本SLC社より購入)の背部を、手指を使って抜毛し、成長期を一斉に誘導した。誘導翌日から17、18、19、または20日間、実施例1でFGF−5阻害活性が認められたK-3(上清部)10容を50%エタノ
ール溶液90容に溶解した混合液を、1日1回、抜毛した部分の皮膚約2cm2に0.05ml/cm2ず
つ塗布した。対照群のマウスには、50%エタノールを1日1回、同様に塗布した。すなわち
抜毛後18日、19日、20日、21日飼育の4パターン(パターンごとに、被検物質群
と対照群を設定)で塗布を行なった。
ートしたスライドグラス上で伸展させた。キシレンによる脱パラフィン処理、エタノール親水系列による処理後、ヘマトキシリンおよびエオシンにより、上記切片を染色し、エタノール脱水系列による処理、キシレンによる透徹を行なった後、エンテラン・ニューを用いて封入した。
および図2-2に示す。各切片像において、毛胞は真皮にある嚢状の毛球部から表皮へ向
かって伸びる構造物である。像の下部には、皮下(脂肪)組織が見られる。
エキスK-3の塗布群(図2-2)では、毛包は長く成長期が持続していた。
。
対照群であるエタノール(ベヒクル)塗布群では、毛包が次第に短くなって退行期に移行していくのに対して、上記ササエキスK-3の塗布群では、18日連続塗布(抜毛後飼
育19日間。図中で、D19)以降、平均毛包長は対照群より有意に長く維持され、成長期が持続する傾向にあった。これらの結果は、本発明の植物抽出物が、毛周期の成長期を延長しており、明らかに育毛活性を有することが示している。
すなわち脱毛防止効果を表すグラフである。17日連続塗布(抜毛後飼育18日間)における毛包長を100%として、塗布期間中の毛包長をその相対値で示す。上記ササエキスK-3の塗布群では、18日連続塗布(抜毛後飼育19日間。図中で、D19)以降、平均毛包長は対照群より有意に長く維持され、成長期が持続する傾向にあった。
エタノール55重量部、ポリオキシエチレン(8)オレイルアルコールエーテル2重量部、精製水36重量部に実施例1のササエキス調製品、K-3、1重量部を混合配合する。さらに
常法に従い、メントールなどの香料、酢酸トコフェロールなどの抗酸化剤、サリチル酸などの保存剤、着色剤、pH調整剤を適量配合して、ヘアトニックタイプの育毛剤組成物を形成する。
Claims (6)
- ササを高圧圧搾し、
得られた樹液をブランチングし、
得られたブランチング処理物から凝固成分を分離し、
得られた液体成分を共沸分留処理して残留液を得、
得られた残留液を上澄み(K−3)と底方分(K−4)とに分け、
前記上澄み(K−3)を遠心分離して得られる遠心上清部分(K−3(上清))、
および/または、
前記底方分(K−4)を遠心分離して得られる遠心上清部分(K−4(上清))
を含有する、
繊維芽細胞増殖因子5の阻害活性を有するササエキス調製品を、
少なくとも有効成分として含有することを特徴とする育毛剤組成物。 - 前記ササが、チシマザサまたはクマザサである、請求項1に記載の育毛剤組成物。
- 前記ササエキス調製品を、エキスの状態に換算して、育毛剤全量に対して0.001〜5.0重量%の量で含有することを特徴とする請求項1または2に記載の育毛剤組成物。
- ササを高圧圧搾し、
得られた樹液をブランチングし、
得られたブランチング処理物から凝固成分を分離し、
得られた液体成分を共沸分留処理して残留液を得、
得られた残留液を上澄み(K−3)と底方分(K−4)とに分け、
前記上澄み(K−3)を遠心分離して得られる遠心上清部分(K−3(上清))、
および/または、
前記底方分(K−4)を遠心分離して得られる遠心上清部分(K−4(上清))
を含有する、
繊維芽細胞増殖因子5の阻害活性を有するササエキス調製品を、
少なくとも有効成分として配合することを特徴とする育毛剤組成物の製造方法。 - 前記ササが、チシマザサまたはクマザサである、請求項4に記載の育毛剤組成物の製造方法。
- 前記ササエキス調製品を、エキスの状態に換算して、育毛剤全量に対して0.001〜5.0重量%の量で含有することを特徴とする請求項4または5に記載の育毛剤組成物の製造方法。
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