JP3953709B2 - 育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法および脱毛症モデル - Google Patents

育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法および脱毛症モデル Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法および脱毛症モデルに関する。より詳しくは、実使用に於ける効果を的確に予想しうる育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法および該評価法に用いることができる脱毛症モデルに関する。
【0002】
【従来の技術】
育毛剤や養毛剤の市場における需要は高く、育毛・養毛効果を有する物質の新規探索について、研究開発がなされてきている。その結果、新規の育毛剤や養毛剤に関する特許出願は膨大な件数に上っているが、これらの内で実際に商品化されるものは極めて少ない。これは、実効性を有する新規の育毛剤又は養毛剤がそれ程多くはないことを示唆している。
【0003】
この原因としては、育毛・養毛剤成分の候補物質をスクリーニングする際の評価法が適切でないことが挙げられる。通常、この様なスクリーニング系では、マウスの剃毛部分に該候補物質を投与した群と、投与しない群を作製し、各群における毛成長を指標として比較を行い、その効果を評価している。したがって、上述したスクリーニング系では、正常な試験対象における育毛・養毛効果について評価を行っていることとなり、脱毛症における毛周期異常等は考慮されていない。
以上のことから、より的確に育毛・養毛効果を予想し得る脱毛症の生理を考慮した評価法の確立が望まれているが、未だ開発されていない。
【0004】
一方、線維芽細胞成長因子5は毛成長への関与が知られており、またそのアミノ酸配列およびmRNAの塩基配列は、例えばヒト、マウス及びラットにおいて明かにされている(Zhan X. et al. Mol. Cell. Biol 8:3487-3495, 1988;Haub O. et al. Proc. Natl. Acad. USA 87:8022-8026, 1990;Hattori Y. et al. Biochim. Biophys. Acta 1306:31-33, 1996)。しかしながら、毛成長への関与についての詳細は未だ知られておらず、また、線維芽細胞成長因子5を使用して脱毛症モデルを作製できることも、またこれを育毛剤・養毛剤成分の候補物質の評価法に利用することも知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下行われたものであり、脱毛症の生理を考慮した育毛剤や養毛剤の候補物質の評価法および該評価法に用いることができる脱毛症モデルを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは鋭意研究努力を重ねた結果、線維芽細胞成長因子5(以下、FGF-5と称する場合がある)を動物に投与することにより、投与された部位において毛周期異常が誘発され、脱毛症モデルとなりうることを見いだした。さらに、この脱毛症モデルを用いて育毛・養毛剤成分の候補物質の評価を行うことで、該候補物質のスクリーニングが可能となることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下に示すものである。
【0007】
(1)動物(ヒトを除く)、動物の毛周辺組織、および動物の毛関連細胞のいずれかに、線維芽細胞成長因子5を投与して脱毛症モデルを作製し、育毛剤又は養毛剤成分の候補物質を該脱毛症モデルに投与し、該候補物質の投与後の該脱毛症モデルにおける育毛・養毛効果を判定することを特徴とする、育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
(2)前記脱毛症モデルは、毛周期の成長期における毛成長が抑制される毛周期異常および/または毛周期の成長期から退行期への移行が促進される毛周期異常を有する、(1)記載の育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
(3)前記動物を除毛し、該除毛部位に線維芽細胞成長因子5を投与することを特徴とする、(1)または(2)記載の育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
(4)前記動物に、線維芽細胞成長因子5を複数回投与し、線維芽細胞成長因子5を投与する毎に、育毛剤又は養毛剤成分の候補物質を投与することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか一に記載の育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
(5)動物を用いて作製された脱毛症モデルにおいては毛の生育を、動物の毛周辺組織を用いて作製された脱毛症モデルにおいては毛周辺組織の生育を、毛関連細胞を用いて作製された脱毛症モデルにおいては毛関連細胞の生育を、指標として効果を判定することを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか一に記載の育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
(6)前記動物はマウスである、(1)〜(5)のいずれか一に記載の育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
(7)前記動物は有色動物である、(1)〜(6)のいずれか一に記載の育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
(8)動物(ヒトを除く)、動物の毛周辺組織、および動物の毛関連細胞のいずれかに、線維芽細胞成長因子5を投与することにより作製された脱毛症モデル。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の育毛剤又は養毛剤成分の評価法(以下本発明の評価法と称する)は、動物、動物の毛周辺組織、および動物の毛関連細胞の内のいずれかに、線維芽細胞成長因子5(FGF-5)を投与して脱毛症モデルを作製し、育毛剤又は養毛剤成分の候補物質を該脱毛症モデルに投与し、該候補物質の投与後の育毛・養毛効果を判定することを含むことを特徴とする。
また、本発明の脱毛症モデルは、動物、動物の毛周辺組織、および動物の毛関連細胞の内のいずれかに、FGF-5を投与することによって作製される。
【0009】
本発明において、脱毛症モデルを作製する際にはFGF-5が使用される。FGF-5は、毛周期の成長期における毛成長を遅滞させ、退行期への移行を促進させるといった機能を有しており、この機能を利用して毛周期異常を有する脱毛症モデルを作製することができる。
ここで本発明の評価法は、動物を用いて脱毛症モデルを作製した場合にはイン・ビボ系で、動物の毛周辺組織または動物の毛関連細胞を用いて脱毛症モデルを作製した場合にはイン・ビトロ系で評価を行うことができる。
【0010】
本発明においては、FGF-5は、動物、動物の毛周辺組織、動物の毛関連細胞に投与したとき、これらにおいて毛周期を調節し、毛周期異常を誘発することが可能であれば、特に限定されるものではない。したがって、この様に毛周期異常を誘発することが可能であれば、FGF-5のフラグメント、FGF-5の機能的領域を含む組み換えタンパク質、FGF-5に化学修飾がされたタンパク質、FGF-5と高い相同性を有するタンパク質、例えばFGF-5のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を有するタンパク質等についても本発明のFGF-5として使用することができる。
【0011】
また、本発明で使用できるFGF-5は、Sigma社等からの市販の試薬として購入できる。
さらに、本発明で使用できるFGF-5は、以下の方法で調製することができる。
FGF-5のcDNAフラグメントは、FGF-5のopen reading frameを含んだpLTR122から、5'-CGGAATTCCATATGGGTGAAAAGCGTCTCGCCCCCAAA-3' (sense)、5'-CGCCATATGTTTATCCAAAGCGAAACTT-3' (anti-sense)というプライマーセットを用い増幅させる (Zhan et al. 1988)。増幅されたフラグメントはpBluescript SK+でクローニングし、塩基配列を確認し、制限酵素 NdeIで切断した後、pET-3cベクターのNdeI部位に挿入する (Studier et al. 1990)。この組み換えプラスミドを組み込んだBL21(DE3)pLysS系大腸菌を培養することにより、目的とするタンパクを発現させ、抽出することができる (Clements et al. 1993)。
【0012】
本発明における脱毛症モデルは、動物(ヒトを除く)、動物の毛周辺組織、動物の毛関連細胞の内のいずれかに、FGF-5を投与することによって作製される。
脱毛症モデルを作製する際に用いることのできる動物(ヒトを除く)、動物の毛周辺組織、動物の毛関連細胞としては、この様な実験で使用されているものでであれば、特段の制限が無く使用することができる。
【0013】
動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギなどの齧歯類や犬、猫或いは猿などが例示できる。これらの内で特に好ましいものは、例数が多く取り扱える齧歯類であり、中でもマウスが特に好ましい。
また動物としては、個体差をある程度コントロールできることから純系のものを使用するのが好ましく、特に純系のマウスが好ましい。さらに、毛の成長を色差などでトレースすることが出来ることから、有色動物であることが好ましく、有色マウスがさらに好ましい。この様な有色の純系マウスとしては、C3H/Heマウスが好ましく例示できる。
動物の毛周辺組織としては、上述した動物などの毛包や毛乳頭を含む髭周辺組織や体毛周辺組織などが好ましく例示できる。
動物の毛関連細胞としては、上述した動物などの毛乳頭細胞や毛包ケラチノサイトが好ましく例示できる。
【0014】
動物、動物の毛周辺組織、動物の毛関連細胞にFGF-5を投与する方法としては、これらにFGF-5を投与して毛周期異常を誘発できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0015】
動物にFGF-5を投与する方法としては、例えば皮下注射、皮内注射、又は経皮注射等により投与する方法が挙げられる。
動物へのFGF-5の投与量は、その投与経路により投与量が異なるが、1〜1000ng/動物1個体程度が好ましい。使用するベヒクルとしては、通常動物試験で使用できる水性ベヒクルを使用することが出来、例えばリン酸緩衝生理食塩水などが好ましく例示できる。
また動物における投与は、1回でも数回に分けて行ってもよいが、育毛剤又は養毛剤成分の候補物質を長期間継続して投与した場合の効果を評価したい場合には、その間脱毛症モデルにおいても継続して毛周期の異常が誘発されるように、例えば一定期間毎に投与することが好ましい。
【0016】
さらに、動物におけるFGF-5の投与部位については、FGF-5投与により毛周期の異常が誘発される限り特に限定されるものではないが、本発明の評価法における操作を容易にする観点より、動物の背部周辺が好ましい。また該投与部位は、後の育毛・養毛効果の判定が容易となるように、剃毛、抜毛等により除毛されていることが好ましい。中でも抜毛による除毛は、脱毛した部位の毛包において毛周期の成長期が誘導されることより、FGF-5の投与により毛周期異常が誘発されやすく、育毛・養毛効果の判定がさらに容易となる。
【0017】
動物の毛周辺組織または動物の関連細胞にFGF-5を投与する方法としては、これらの細胞又は組織を周知の培養方法により培養し、かかる培養液にFGF-5を添加する方法が挙げられる。
投与するFGF-5のドーズとしては、使用する細胞、組織、培養条件等により異なるが、培養液中の濃度として1〜100ng/ml程度となるように添加することが好ましい。
【0018】
尚、上述したFGF-5の投与により各脱毛症モデルが確立したか否かは、例えばFGF-5投与後の各脱毛症モデルにおける、毛、毛周辺組織、毛関連組織の生育を見ることによって確認できる。この際に、FGF-5を投与しない対照群を作製しておくと、この確認は容易となる。
【0019】
育毛剤又は養毛剤成分の候補物質を各脱毛症モデルに投与する方法としては、投与後の育毛・養毛効果を判定することができる限り、特に限定されるものではない。
【0020】
動物の脱毛症モデルに育毛剤又は養毛剤成分の候補物質を投与する方法としては、実使用に準じたものが好ましく、通常は経皮投与が好ましい。具体的な例としては、上述したFGF-5の投与により毛周期異常が誘発された部位に、該候補物質を含む溶液を塗布する方法が挙げられる。これら育毛剤・養毛剤成分の候補物質のドーズは1ng〜10mg/動物1個体/1回程度が好ましい。この作業は1回のみでも、数回繰り返しても良い。
【0021】
動物の毛周辺組織又は毛関連細胞の脱毛症モデルに、育毛剤又は養毛剤成分の候補物質を投与する方法としては、例えば、これら組織または細胞が培養されているFGF-5含有培養液に、該候補物質を添加することによって行うことができる。ここで添加する育毛剤・養毛剤成分の候補物質のドーズとしては、使用する細胞、組織、培養条件等により異なるが、培養液中の濃度として1〜100ng/mlが好ましく、育毛剤・養毛剤成分の候補物質のドーズは数点設定するのが好ましい。これは添加効果を的確に判定するためにはドーズデペンデンスを検討することが好ましいからである。
【0022】
各脱毛症モデルにおける育毛・養毛効果を判定する方法としては、特に限定されるものではなく、この様な効果を判定する方法として通常知られている方法、例えば育毛剤・養毛剤成分の候補物質の投与群と該候補成分の非投与群の比較をすることにより、効果を判定する方法が挙げられる。
ここで比較する際の指標としては、動物を用いて作製された脱毛症モデルにおいては毛の生育を、動物の毛周辺組織を用いて作製された脱毛症モデルにおいては毛周辺組織の生育を、毛関連細胞を用いて作製された脱毛症モデルにおいては毛関連細胞の生育を、指標とすることが好ましい。ここで毛、毛周辺組織、毛関連細胞の生育とは、それぞれ毛、毛周辺組織、毛関連細胞の生育に関係する様々な生理現象を含むものである。
【0023】
動物の脱毛症モデルにおける育毛・養毛効果を判定する方法としては、具体的には、毛の量、毛の長さ、毛の直径、毛の成長率、毛の発毛率、脱毛本数、目視、写真、又は組織分析等による観察、毛周期等を指標として比較し、効果を判定することができる。
上述した毛周期を指標として比較し、効果を判定する方法としては、以下に示される方法が挙げられる。
毛周期の成長期に入ると、毛包メラノサイトにおいてメラニン生産が開始され、成長期の進行に伴ってメラニン産生量が増加し、皮膚の暗色化が進行する。従ってかかる皮膚の明度を測定することによって成長期の進行の程度の比較を行い、効果を判定することができる。
【0024】
動物の毛周辺組織の脱毛症モデルにおける育毛・養毛効果を判定する方法としては、具体的には以下に示される方法が挙げられる。
ラットやマウス等の動物の体毛・髭を毛包・毛乳頭が残るように外科的に切り取り、顕微鏡下で余分な組織を除去した後約一週間培養する。ここにFGF-5を加えたものは毛の成長が抑制され脱毛症モデルとなり、さらに育毛・養毛剤成分の候補物質を加え毛成長が昂進されたかどうかを見ることにより、育毛・養毛効果を判定することができる。判定の方法は、画像解析装置につないだ実体顕微鏡などを利用して、培養後の組織を観察し、毛の長さ、あるいは毛包の長さ等を比較する方法が望ましい。また、培養初日に上述した方法で個々の毛あるいは毛包の長さを測定し、一定期間培養した後再度、毛あるいは毛包の長さを測ることにより個々の組織の成長度合いを比較し、効果を判定することもできる。
【0025】
動物の毛関連細胞の脱毛症モデルにおける育毛・養毛効果を判定する方法としては、具体的には以下に示される方法が挙げられる。
ラットやマウス等の動物の体毛・髭を毛包・毛乳頭が残るように外科的に切り取り、顕微鏡下で余分な組織を除去した後、毛乳頭・毛包をメスで分ける。その後それぞれの組織を酵素処理などでばらばらにし、毛乳頭細胞・毛包ケラチノサイトを培養する。脱毛症モデルとしては、毛乳頭細胞にFGF-5を加え成長を抑制したものが挙げられる。また毛乳頭細胞の培養上清を加えたり、毛乳頭細胞と共存培養した毛包ケラチノサイトは成長が促進され、毛成長のモデルとすることができることから、この時あらかじめ毛乳頭細胞にFGF-5を加えておけば毛包ケラチノサイトの成長は加えないものに比べ抑制されて、脱毛症モデルとなる。
この時、毛乳頭細胞にFGF-5とともに育毛剤候補物質を加え、毛乳頭細胞の生育が昂進されたかどうかを見ることにより、あるいは毛乳頭細胞の培養上清を加えたり、毛乳頭細胞と共存培養した毛包ケラチノサイトの生育が昂進されたかどうかを見ることにより、育毛・養毛効果を判定することができる。効果の判定としては、それぞれの細胞数を数えたり、あるいはそれぞれの細胞に細胞増殖の指標となる物質(チミジンなど)を加え、その取り込みを見ることが挙げられる。チミジンなどの取り込みを指標とする場合には、3Hなどであらかじめ放射線ラベルしておくことが望ましい。
【0026】
本発明の評価方法は、上述した各脱毛症モデルにおける効果の判定結果をもとに評価することができるが、各脱毛症モデルにおける判定結果を合わせて評価を行うことにより、さらに的確な評価を行うことができる。
【0027】
【実施例】
以下実施例等により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれら実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
<参考例1> FGF-5の調製方法
本実施例で使用したFGF-5は以下の方法で調整した。FGF-5のcDNAフラグメントは、FGF-5のopen reading frameを含んだpLTR122から、5'-CGGAATTCCATATGGGTGAAAAGCGTCTCGCCCCCAAA-3' (sense)、5'-CGCCATATGTTTATCCAAAGCGAAACTT-3' (anti-sense)というプライマーセットを用い増幅させた。増幅されたフラグメントはpBluescript SK+にクローニングし、塩基配列を確認し、制限酵素 NdeI で切断した後、pET-3cベクターのNdeI部位に挿入した。この組換えプラスミドを組み込んだBL21(DE3)pLysS系大腸菌を培養し、目的とするタンパクを発現させ、抽出した。
【0028】
<実施例1>
(方法)
以下に示す手順によって、各群5匹のマウスからなる、FGF-5非投与マウス群(以下、対照正常群と称する)、育毛・養毛作用を有する物質が塗布されないFGF-5投与マウス群(以下、対照脱毛症モデル群と称する)、および育毛・養毛作用を有する物質であるミノキシジルが塗布されるFGF-5投与マウス群(以下、ミノキシジル塗布脱毛症モデル群と称する)を作製した。
【0029】
(a)各群のマウスとして8週齢のC3H/He雄性マウスを使用し、これらマウスの背部を抜毛し、同部位の毛包を成長期に誘導した。
(b)翌日、各群において以下の操作を行った。
対照正常群のマウスにおいては、リン酸緩衝生理食塩水を、50μl/個体で抜毛した背部皮下に注射を行った。
対照脱毛症モデル群のマウスにおいては、FGF-5含有リン酸緩衝生理食塩水(FGF-5濃度;50μg/ml)を、50μl/個体で抜毛した背部に皮下注射により投与し、その直後にアルコール水溶液(50%エタノール水溶液)を該投与部位に塗布した。
ミノキシジル塗布脱毛症モデル群のマウスにおいては、FGF-5含有リン酸緩衝生理食塩水(FGF-5濃度;50μg/ml)を、50μl/個体で抜毛した背部に皮下注射により投与し、その直後にミノキシジル含有アルコール水溶液(5重量%のミノキシジルを含有する50%エタノール水溶液)を該投与部位に塗布した。
(c)上記(b)の操作を1日1回、計7日間繰り返した。尚、皮下注射する位置は毎回同じ場所となるようにした。
【0030】
上記の操作を終了した後、その翌日に各群のマウスの背部を観察し、さらにミノルタ CR-200を使用して明度(L*値)を測定した。
また、各群のマウスの注射針を刺した部位周辺の皮膚組織を顕微鏡観察し、さらに顕微鏡下で毛包の長さを測定した。
【0031】
(結果)
各群のマウス背部の写真図を図1に示す。対照正常群のマウス(図1上)は、脱毛した背部の皮膚全体が黒っぽく見えた。対照脱毛症モデル群のマウス(図1中)では、FGF-5の毛成長阻害作用により毛包メラノサイトが十分なメラニンを作らず、投与部位周辺の皮膚が白かった。
これに対し、ミノキシジル塗布脱毛症モデル群のマウス(図1下)は、対照脱毛症モデル群のマウスに比べ投与部位周辺の皮膚が黒化していた。これは、FGF-5の毛成長阻害作用にも関わらず毛包メラノサイトが十分なメラニンを作製していることを示している。
【0032】
各群のマウスの投与部位の明度を表1に示す。対照脱毛症モデル群のマウスは、対照正常群のマウスに比べ投与部位の明度が高く、同部位の皮膚色が白いことが示された。一方、ミノキシジル塗布脱毛症モデル群のマウスでは、対照脱毛症モデル群のマウスに比べ明度が明らかに低く、対照正常群のマウスと同等なレベルまで同部位の皮膚色が黒くなっていることが示された。
尚、表1において、**は対照正常群におけるマウスに対し危険率1%未満で有為差有りを示すものである。
【0033】
【表1】
Figure 0003953709
【0034】
各群のマウスにおける投与部位周辺の皮膚切片写真図を図2に示す。尚、図2におけるスケールバーは100μmを示している。
図2における皮膚切片は、各群のマウスの皮膚を採取後10%ホルマリン固定およびパラフィン包埋し、4μm切片を作成し、脱パラフィンおよびエタノール浸水系列で処理後、ヘマトキシリン・エオジン染色を施したものである。
対照正常群のマウス(図2上)では毛包の成長が進んでいたが、対照脱毛症モデル群のマウス(図2中)は対照正常群のマウスに比べ毛包が短かくなっていた。これに対し、ミノキシジル塗布脱毛症モデル群のマウス(図2下)は、毛包の長さが対照脱毛症モデル群のマウスに比べ長くなっていた。
【0035】
各群のマウスにおける投与部位の平均毛包長を表2に示す。対照脱毛症モデル群のマウスは対照正常群のマウスに比べ、投与部位の毛包が短いことが示された。一方、ミノキシジル塗布脱毛症群のマウスでは、投与部位の毛包は対照脱毛症モデル群のマウスに比べ明らかに長く、対照正常群のマウスと同等なレベルまで毛包が成長していることが示された。
尚、表2において、**は対照正常群におけるマウスに対し危険率1%未満で有為差有りを示すものである。
【0036】
【表2】
Figure 0003953709
【0037】
この様に、本発明によれば、育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の育毛・養毛効果を評価することができる。
さらに本発明によれば、臨床試験において有効性が認められた育毛剤や養毛剤の効果を的確に評価できることもわかる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、脱毛の生理を考慮した育毛剤や養毛剤成分の候補物質の評価法を提供することができる。
【0039】
【配列表】
Figure 0003953709
【0040】
Figure 0003953709
【0041】
Figure 0003953709

【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1における各群のマウス背部の写真。それぞれ、FGF-5非投与マウス群(図1上)、育毛・養毛作用を有する物質が塗布されなかったFGF-5投与マウス群(図1中)、および育毛・養毛作用を有する物質であるミノキシジルが塗布されたFGF-5投与マウス群(図1下)を示している。
【図2】 実施例1における各群のマウスの投与部位周辺皮膚切片の顕微鏡写真。それぞれ、FGF-5非投与マウス群(図2上)、育毛・養毛作用を有する物質が塗布されなかったFGF-5投与マウス群(図2中)、および育毛・養毛作用を有する物質であるミノキシジルが塗布されたFGF-5投与マウス群(図2下)を示している。

Claims (8)

  1. 動物(ヒトを除く)、動物の毛周辺組織、および動物の毛関連細胞のいずれかに、線維芽細胞成長因子5を投与して脱毛症モデルを作製し、育毛剤又は養毛剤成分の候補物質を該脱毛症モデルに投与し、該候補物質の投与後の該脱毛症モデルにおける育毛・養毛効果を判定することを特徴とする、育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
  2. 前記脱毛症モデルは、毛周期の成長期における毛成長が抑制される毛周期異常および/または毛周期の成長期から退行期への移行が促進される毛周期異常を有する、請求項1記載の育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
  3. 前記動物を除毛し、該除毛部位に線維芽細胞成長因子5を投与することを特徴とする、請求項1または2記載の育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
  4. 前記動物に、線維芽細胞成長因子5を複数回投与し、線維芽細胞成長因子5を投与する毎に、育毛剤又は養毛剤成分の候補物質を投与することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
  5. 動物を用いて作製された脱毛症モデルにおいては毛の生育を、動物の毛周辺組織を用いて作製された脱毛症モデルにおいては毛周辺組織の生育を、毛関連細胞を用いて作製された脱毛症モデルにおいては毛関連細胞の生育を、指標として効果を判定することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
  6. 前記動物はマウスである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
  7. 前記動物は有色動物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の育毛剤又は養毛剤成分の候補物質の評価法。
  8. 動物(ヒトを除く)、動物の毛周辺組織、および動物の毛関連細胞のいずれかに、線維芽細胞成長因子5を投与することにより作製された脱毛症モデル。
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