JP5267032B2 - 多孔性フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、多孔性フィルムに関する。詳しくは、非水溶媒電池に用いられるセパレーターに好適な、透気性が高く、かつ加工性の良い多孔性フィルムに関する。
リチウムイオン電池などの非水溶媒電池は、使用する電解液が有機溶媒であり、水系電池の水溶液溶媒と比較して電池の発熱に対して安全性に劣るという問題がある。そのため、従来、非水溶媒電池、中でもエネルギー密度の大きなリチウムイオン電池の安全性を改善するために、ポリエチレンを主とするオレフィン系材料の微孔性多孔膜を用いたセパレーターが使用されてきた。ポリエチレンが主として使用されるのは、ポリエチレンが有機溶媒中で使用可能なことに加え、電池が短絡などによって異常発熱した場合に適切な温度(130℃前後)でポリエチレンが溶融し、多孔構造が閉塞すること(シャットダウン)により安全性の確保が可能となるからである。
しかし、ポリエチレンを用いたセパレーターではシャットダウン温度以上、例えば140℃に加熱されると収縮が生じ易く、電極間の短絡による発熱が生じるなど耐熱性に劣ることが問題であった。そのため、ポリエチレンよりも耐熱性が高いポリプロピレンの多孔性膜を用いたセパレーターが提案されているが(たとえば特許文献1)、ポリプロピレンには適切な温度でシャットダウンする機能がないため、シャットダウン性の必要な分野では使用できないという問題があった。
この問題を解決するための手段として、たとえば、ポリプロピレン不織布の表面にポリエチレン粉末粒子を付着させたセパレーターが提案されている(たとえば特許文献2)。しかし、この場合には、繊維を構成材料とした不織布を基材としているために数十μm程度の大きな平均孔径を有していることから、樹脂が溶融して孔を塞ぐまでに時間がかかり、かつすべての孔を完全に閉塞することは極めて困難であった。
また、多孔質基材の表面から内部にまで樹脂粒子集合体を充填した複合多孔膜の提案がなされている(たとえば特許文献3)。この場合には樹脂粒子が基材表面から基材の孔内部にまで入り込んで存在しており、樹脂粒子が軟化・溶融する際に基材表面のみに樹脂粒子が存在している場合に比べて基材の無孔化がムラ無く効果的に行われる。そのため、適切なシャットダウン特性が得られる。しかし、特許文献3で用いられている樹脂粒子を塗工するだけでは静摩擦係数の値が高く、そのためセパレーターなどに用いる際の加工性が悪いという問題があった。
特開平1−103634号公報(請求項1) 特公平5−16139号公報(請求項1、p.3 15行目) 特開2006−286311号公報(請求項1)
本発明の課題は上記した問題点を解決することにある。すなわち、シャットダウン性を有し、透気性、加工性が良好であり、セパレーターとして用いた際に優れた特性を示す多孔性フィルムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、以下の特徴を有する。
[1]多孔性ポリプロピレンフィルムの表面に、接着性樹脂のバインダーと粒径が0.8〜10μmである粒子を含むコート層を有し、このコート層を有する面の剥離強度が1N/15mm以上であり、ガーレー透気度が10〜500秒/100mlであり、コート層を有する面同士の静摩擦係数が0.2〜0.5であり、コート層に含まれる粒子の軟化温度が100〜140℃であり、粒子を含むコート層の厚みが0.8〜5μmであり、平均貫通孔径が40〜150nmである多孔性フィルム。
本発明による多孔性フィルムは、シャットダウン性を有し、透気性、加工性が良好であり、セパレーターとして用いた際に優れた特性を示す多孔性フィルムとすることができる。
以下に本発明のフィルムについて説明する。
本発明の多孔性フィルムは、ポリプロピレン樹脂を含む多孔性ポリプロピレンフィルムを基材として用いる。ここでポリプロピレン樹脂(以下、単にポリプロピレンということがある)とは、プロピレンの付加重合によって得られる高分子化合物である。本発明においては、ポリプロピレンとしてプロピレンの単独重合体からなる樹脂を用いることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲であればプロピレンにプロピレン以外の単量体を共重合してもよいし、ポリプロピレンに前記共重合体をブレンドして用いてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体としては、たとえば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、アクリル酸およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明において用いるポリプロピレン樹脂には、フィルム中の熱可塑性樹脂成分を100質量%として高溶融張力ポリプロピレン樹脂を1〜20質量%含有せしめることが好ましく、2〜12質量%含有せしめることがより好ましい。高溶融張力ポリプロピレン樹脂を含有せしめることによって、製膜安定性が向上するほか、より空隙率の高い多孔性ポリプロピレンフィルムを得ることができる。ここで、高溶融張力ポリプロピレン樹脂とは高分子量成分や分岐構造を有する成分をポリプロピレン樹脂に混合したり、ポリプロピレンに長鎖分岐構造を共重合させることにより、溶融状態での張力を高めたポリプロピレン樹脂であるが、中でも長鎖分岐構造を共重合させたポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。なお、これらのポリプロピレン樹脂、共重合ポリプロピレン樹脂、高溶融張力ポリプロピレン樹脂は市販されているもの、たとえばBasell社製ポリプロピレン樹脂(タイプ名:PF−814、PF−633、PF−611)やBorealis社製ポリプロピレン樹脂(タイプ名:WB130HMS)、Dow社製ポリプロピレン樹脂(タイプ名:D114、D206)を用いることができる。
本発明で用いるポリプロピレン樹脂としては、メルトフローレート(以下、MFRと表記する)が2〜30g/10分のアイソタクチックポリプロピレン樹脂を用いることが押出成形性及び孔の均一な形成の観点から好ましい。ここで、MFRとはJIS K 7210(1995)で規定されている樹脂の溶融粘度を示す指標であり、ポリオレフィン樹脂の特徴を示す物性値として一般的に知られているものである。本発明においては230℃、2.16kg荷重で測定した値を指す。
また、本発明においては、ポリプロピレン樹脂のアイソタクチックインデックスが90〜99.9%の範囲であることが好ましい。アイソタクチックインデックスが90%未満の場合、樹脂の結晶性が低くなってしまい、製膜性が悪化したり、フィルムの強度が不十分となる場合がある。
本発明においては、延伸により孔を形成させることが好ましく、この場合、特に縦延伸時の延伸応力を低下させ、延伸に伴う孔の形成を促進するために、ポリプロピレン以外のポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含有せしめることが好ましい。ポリプロピレンに含有せしめうるポリマーとしては、たとえば、各種ポリオレフィン系樹脂を含むビニルポリマー樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリイミド系樹脂が挙げられるが、特に、ポリオレフィン系エラストマー樹脂を添加することが、延伸応力の低下や孔の形成を促進する観点から好ましい。ポリオレフィン系エラストマー樹脂としては、特に限定されないが、たとえば、メタロセン触媒法による超低密度ポリエチレン(以下mVLDPEと略称する)、直鎖状低密度ポリエチレン(以下mLLDPEと略称する)、エチレン・ブテンラバー、エチレン・プロピレンラバー、プロピレン・ブテンラバー、エチレン酢酸ビニル、エチレン・エタクリレート共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン−ジエン共重合体、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンラバー、水添スチレン・ブタジエンラバー、スチレン・ブチレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリプロピレン樹脂に他のポリマーを含有せしめる場合、ポリマーの含有量は、樹脂により効果が異なるため特に限定されないが、ポリプロピレン、その他のポリマー、添加剤などを含めた樹脂全体の総量に対して、0.1〜15質量%程度含有せしめることが好ましい。含有量が0.1質量%未満であると効果を発現することが困難である場合があり、含有量が15質量%を超えると、分散不良が起り、フィルムにゲル状の突起が形成される場合がある。本発明の多孔質ポリプロピレンポリマーにおいては、前記ポリマーのうち、溶融押出工程でポリプロピレン中に超微分散し、その後の延伸工程で製膜性が向上し、かつ孔の形成が促進されるなどの効果が得られることから、mVLDPEであるエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることが好ましい。当該mVLDPEの具体例としては、ダウケミカル社製“Engage(エンゲージ)”(タイプ名:8411、8452、8100など)が挙げられる。エチレン・α−オレフィン共重合体を用いる場合、その含有比率は、ポリプロピレン樹脂99.9〜85質量%とエチレン・α−オレフィン共重合体0.1〜15質量%の割合とすることが好ましい。含有量は、より好ましくは3〜10質量%、さらに好ましくは5〜10質量%であることが、製膜性と孔形成性の両立の観点から好ましい。
本発明において、多孔性ポリプロピレンフィルムを得るために、ポリプロピレン樹脂はβ晶分率が50〜100%であることが、効率的な孔の形成の観点から好ましい。より好ましくは60〜100%であり、70〜100%であることが孔形成性の観点から特に好ましい。β晶分率がかかる範囲内であるポリプロピレン樹脂を使用することで、フィルム製造時の初期段階において、β晶分率が50%以上の未延伸シートを得ることができ、延伸工程においてβ晶からα晶への結晶転移を利用することで、フィルム中に空隙を形成することができる。β晶分率が50%未満であると、フィルム製造初期の段階でβ晶分率が低く、延伸工程でβ晶からα晶へ結晶転移させてもフィルム中の空隙が形成されにくいため、セパレーターとしての特性に劣ることになる。β晶分率とは、ポリプロピレン樹脂中に形成されるβ晶の存在比率である。本発明において好ましいβ晶分率50〜100%を達成するために、ポリプロピレン樹脂に含有せしめることでβ晶の形成を助ける働きを有する添加剤、一般にβ晶核剤と呼ばれているものを使用することが好ましい。β晶核剤としては、たとえば、安息香酸ナトリウム、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、コハク酸マグネシウムなどのカルボン酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドに代表されるアミド系化合物、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどの芳香族スルホン酸化合物、イミドカルボン酸誘導体、フタロシアンニン系顔料、キナクリドン系顔料を好ましく挙げることができる。これらの中でも下記化学式(1)、(2)で示される、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドに代表されるアミド系化合物が特に好ましいβ晶核剤として挙げることができる。
−NHCO−R−CONH−R (1)
ここで、式中のRは、炭素数1〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪族ジカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和もしくは不飽和の脂環族ジカルボン酸残基または炭素数6〜28の芳香族ジカルボン酸残基を表し、R、Rは同一または異なる炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基またはこれらの誘導体である。
−CONH−R−NHCO−R (2)
ここで、式中のRは、炭素数1〜24の飽和もしくは不飽和の脂肪族ジアミン残基、炭素数4〜28の飽和もしくは不飽和の脂環族ジアミン残基または炭素数6〜12の複素環式ジアミン残基または炭素数6〜28の芳香族ジアミン残基を表し、R、Rは同一または異なる炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基またはこれらの誘導体である。
特に好ましいβ晶核剤もしくはβ晶核剤添加ポリプロピレンの具体例としては、新日本理化(株)製β晶核剤“エヌジェスター”(タイプ名:NU−100など)、などが挙げられる。
本発明の多孔性フィルムは、多孔性ポリプロピレンフィルム(基材フィルム)上に粒子を含むコート層を有している。このコート層は、粒子を含む塗液を塗布することにより形成することが可能である。本発明における粒子の素材としては、軟化又は溶融によって基材フィルムに存在する孔を閉塞することが可能な樹脂であれば特に限定されるものではないが、たとえば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン及びこれらの共重合体などのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体などのポリアクリル樹脂などが好ましく用いられる。このうち特に高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンを主体とする樹脂が、ポリプロピレン樹脂との親和性、孔の閉塞性の観点から好ましい。
また、本発明において、コート層中に含まれる粒子の粒径は0.8〜10μmである。粒径は、透気性と接着性の観点からは、2〜9.5μmであることがより好ましく、さらに3〜6μmであることがより好ましい。粒子の粒径が小さすぎると、基材フィルムの孔の中に入り込んでしまい透気性が悪化し、さらに加工性も悪化することがある。また、粒子の粒径が大きすぎると、接着性が悪化しやすい。粒径の測定方法としては、フィルム試料を電界放射走査電子顕微鏡観察用にサンプリングしたものを、日本電子(株)製JSM−6700Fの電界放射走査電子顕微鏡でコート層を有する面について表面観察を行い、JEOL PC−SEM 6700のソフト中にある「2点間測長」を用いて30個の粒子について粒径を測定することで行う。粒径は、その平均(平均孔径)をもって表す。球形ではなく変形している場合は、観察画像において最長径と最短径を測定し、その2点の平均をその粒子の粒径とする。
本発明において、コート層中には、粒子の他に、基材フィルムである多孔性ポリプロピレンフィルムとの接着性を良好にするためのバインダーが含まれていてもよい。バインダーとしては、ポリプロピレンと接着性のあるものであれば特に限定されないが、リチウムイオン電池に用いる場合、水分をセパレーター内に持ち込むと電池の組み立て工程が複雑になるため、バインダーとしては親水性の官能基を有していないものが好ましい。また、基材フィルムに含まれるポリプロピレンとの親和性に優れるプロピレン共重合体を用いることが好ましい。
本発明において、コート層を有する面の剥離強度は、1N/15mm以上である。剥離強度が1N/15mm未満では、粒子の脱落により電池抵抗が高くなったり、電池の寿命が短くなることがある。また、剥離強度測定(後述)に用いるセロハンテープと多孔性ポリプロピレンフィルム(基材フィルム)との剥離強度が3.5N/15mmであることから、測定値上限としては3.5N/15mmとなる。
ここで剥離強度とは、基材フィルムとコート層の接着強さの指標であり、剥離強度が高いほど基材フィルムとコート層の接着性が良好である。コート層を構成する粒子の粒径が好ましい範囲で小さいほど剥離強度は大きくなり、粒径が大きいほど剥離強度は小さくなる。また、固形分濃度を低下させるための希釈の時、アルコールの添加量を増加させることで剥離強度を高くすることが可能である。
本発明の多孔性フィルムは、ガーレー透気度が10〜500秒/100mlであることが好ましい。ガーレー透気度が10秒/100ml未満では粒子が軟化しても孔を完全に塞ぐことが困難であり、シャットダウン性が不十分となる。また、500秒/100mlを超えるとセパレーターとして用いた際の特性が不十分となる。より好ましくは10〜400秒/100mlであり、さらに好ましくは10〜300秒/100mlであり、特に好ましくは10〜250秒/100mlであることが、シャットダウン性とセパレーター特性の両立の観点から好ましい。
本発明においてはコート層を有する面同士の静摩擦係数が0.2〜0.5であることが加工性の観点から好ましい。静摩擦係数が0.2未満であると、フィルムを製膜する際のフィルム巻き取り時にフィルムが滑りすぎて巻きずれが発生して長尺に巻き取れない場合があり、0.5を超えると、フィルムの巻き取り時に滑り性が悪く、巻き取り後のフィルムにシワなどが発生する場合があるほか、セパレーターとして使用する際に巻き出し性や加工性に劣るおそれがある。コート層を有する面同士の静摩擦係数はフィルムの取扱性の点で0.2〜0.4であることがより好ましく、フィルム片面のみにコートする場合、コート面と非コート面の静摩擦係数は0.3〜0.8であることが好ましい。コート層を構成する粒子の粒径が1〜10μmであることにより、フィルム断面を見た場合、フィルム表面から粒子が突起として存在することで、静摩擦係数を好ましい範囲で制御することが可能である。
コート層に含まれる粒子の軟化温度は、100〜140℃であることが、シャットダウン性の観点から好ましい。耐熱性とシャットダウン性の両立の観点からは、110〜140℃であることがより好ましく、更に120〜140℃であることがより好ましい。
本発明において、粒子を含むコート層の厚みは0.8〜5μmであることが好ましいが、透気性と接着性、シャットダウン性の点から1〜3μmであることがより好ましい。コート層厚みが薄すぎると粒子が脱落したり、均一にシャットダウンされないことがある。また、コート層厚みが厚すぎると透気性が低下することがある。
また、本発明においては貫通孔の平均孔径(平均貫通孔径)が40〜150nmであることが好ましい。40nm未満ではセパレーターとして用いた際の特性が不十分となり、150nmを超える場合は粒子の脱落やシャットダウン性の著しい悪化などの問題が起こるおそれがある。より好ましくは40〜100nmであることがセパレーター特性とシャットダウン性の両立の観点から好ましい。平均貫通孔径は、β晶核剤もしくはβ晶核剤添加ポリプロピレンや、mVLDPEの添加量を好ましい範囲内で増加させることにより、透気性と共に大きくなり、添加量を減少させると平均貫通孔径は小さくなる。
次に、本発明における基材フィルム製造方法について、具体的に以下に説明する。
まず、基材フィルムを構成するポリプロピレン樹脂を押出機に供給して200〜320℃の温度で溶融させ、濾過フィルターを経た後、スリット状口金から押し出し、冷却用金属ドラム(キャストドラム)にキャストしてシート状に冷却固化させて未延伸シートとする。
ここで、押出温度が200℃未満であると、口金から吐出された溶融ポリマー中に未溶融物が発生し、後の延伸工程で破れなどの工程不良を起こす原因となる場合がある。また、320℃を超えると、ポリプロピレンの熱分解が激しくなり、得られる多孔性ポリプロピレンフィルムのフィルム特性、たとえば、ヤング率、破断強度が劣る場合がある。
また、キャストドラムの温度は60〜130℃とし、フィルムを適度に徐冷条件下で結晶化させ、多量かつ均一にβ晶を生成させて、延伸後に高空孔率、高透過性の多孔性フィルムとするために高い方が好ましい。キャストドラムの温度が60℃未満であると、得られる未延伸シートのファーストランのβ晶分率が低下する場合があり、130℃を超えると、キャストドラム上でのシートの固化が不十分となり、キャストドラムからのシートの均一剥離が難しくなる場合がある。また、得られる多孔性フィルムの透過性は上記した温度範囲で上限に近いほど高くなり、下限に近いほど低い傾向にある。透過性の高い多孔性フィルムとする場合には、キャストドラム温度は、好ましくは100〜125℃である。
この際、未延伸シートがキャストドラムに接触する時間(以下、単純にキャストドラムへの接触時間と称する場合がある)は、6〜60秒であることが好ましい。ここで、キャストドラムへの接触時間とは、上記キャスト工程において、溶融ポリマーがキャストドラム上に最初に着地した時点を開始時間(=0秒)とし、未延伸シートがキャストドラムから剥離した時点までに要する時間を意味する。なお、キャスト工程が複数個のドラムで構成されている場合は、未延伸シートがそれらキャストドラムに接触した時間の総和が、キャストドラムへの接触時間となる。キャストドラムへの接触時間が6秒未満であると、温度にもよるが上記剥離時点において未延伸シートが粘着したり、未延伸シートに生成するβ晶が少ないために、二軸延伸後のフィルムの空孔率が不十分なレベルまで低くなる場合がある。キャストドラムへの接触時間が60秒を超えると、キャストドラムの大きさにもよるが、必要以上にキャストドラムの周速が低く、生産性が著しく悪化する場合がある。通常、該接触時間は10分以上は実質的に取れない場合がある。キャストドラムへの接触時間は、より好ましくは7〜45秒、さらに好ましくは8〜40秒である。
また、キャストドラムへの密着方法としては静電印加(ピンニング)法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、本発明の多孔性フィルムを得る手法としては、厚み制御性が良好で、その吹き付けエアーの温度により冷却速度を制御可能であるエアーナイフ法、静電印加法を用いることが好ましい。ここで、エアーナイフ法では、エアーは非キャストドラム面から吹き付けられ、その温度は10〜200℃とすることが好ましく、表面の冷却速度を制御することにより、表面β晶量を制御し、ひいては表面開孔率を制御でき、すなわち得られる多孔性フィルムの透過性を制御することが可能となる。
また、多孔性ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に第2、第3の層を共押出積層した積層体とする場合には、上記したポリプロピレンの他に各々所望の樹脂を必要に応じて準備し、これらの樹脂を別々の押出機に供給して所望の温度で溶融させ、濾過フィルターを経た後、短管あるいは口金内で合流せしめ、目的とするそれぞれの積層厚みでスリット状口金から押し出し、キャストドラムにキャストしてシート状に冷却固化せしめ未積層延伸シートとすることができる。
次に、得られた未延伸(積層)シートを、縦−横逐次二軸延伸法を用いて二軸延伸する。まず、未延伸フィルムを所定の温度に保たれたロールに通して予熱し、引き続きそのフィルムを所定の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、縦方向に延伸して直ちに冷却する。
ここで、セパレーターとして用いる際に加工性とセパレーター性能を両立するシートを得るためには、縦方向の実効延伸倍率を3〜10倍とすることが好ましい。縦方向の実効延伸倍率が3倍未満であると、得られる多孔性フィルムの空孔率が低くなり、透過性に劣る場合がある。縦方向の実効延伸倍率が10倍を超えると、縦延伸あるいは横延伸でフィルム破れが散発し、製膜性が悪化する場合がある。縦方向の実効延伸倍率は、より好ましくは4〜9倍、さらに好ましくは5〜8倍である。この際、縦延伸速度は、生産性と安定製膜性の観点から、5,000〜500,000%/分であることが好ましい。縦延伸温度は、安定製膜性、厚みムラ抑制、空孔率や透過性の向上などの観点から、95〜120℃であることが好ましく、100〜110℃であることがより好ましい。また、縦延伸後の冷却過程において、フィルムの厚みムラや透過性が悪化しない程度に縦方向に弛緩を与えることは、縦方向の寸法安定性の観点から好ましい。さらに、縦延伸後のフィルムに所望の樹脂層を適宜押出ラミネートやコーティングなどにより設けてもよい。
引き続き、この縦延伸フィルムをテンター式延伸機に導いて、所定の温度で予熱し、横方向に延伸する。ここで、横方向の実効延伸倍率は、12倍以下であることが好ましい。横方向の実効延伸倍率が12倍を超えると、製膜性が悪化する場合がある。横延伸温度は、安定製膜性、厚みムラ抑制、空孔率や透過性の向上などの観点から、たとえば、100〜160℃であることが好ましい。また、横延伸速度は、生産性と安定製膜性の観点から、100〜10,000%/分であることが好ましい。
横方向に延伸した後、得られる多孔性フィルムの寸法安定性向上などの観点からさらに横方向に1%以上の弛緩を与えつつ100〜180℃、好ましくは130〜160℃で熱固定し、冷却することが好ましい。さらに、必要に応じ、フィルムの少なくとも片面に空気あるいは窒素あるいは炭酸ガスと窒素の混合雰囲気中で、コロナ放電処理などの表面処理を施してもよい。次いで、該フィルムを巻き取ることで、本発明の基材である多孔性ポリプロピレンフィルムが得られる。この多孔性ポリプロピレンフィルムを基材とし、例えば片面にコロナ処理などの表面処理を行い、粒子を溶媒などに分散させて作成した分散液をリバースコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スプレーコート法の公知の塗布方法によりフィルム上に塗布し、乾燥してコート層とすることにより本発明の多孔性フィルムが得られる。また、分散液を調整する際にはコート層における粒子の偏在を防止するために分散剤などを適宜添加してもよい。
本発明の多孔性フィルムは、優れた透気性、機械特性を有するだけでなく、易滑性、シャットダウン性を有していることから、特にリチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池のセパレーターとして好ましく用いることができる。
本発明の多孔性フィルムは優れた透気性と工程通過性を併せ持ち、なおかつ安全性をも有していることから、蓄電デバイスのセパレーターとして好適に使用することができる。ここで、蓄電デバイスとしては、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池や、リチウムイオンキャパシタなどを挙げることができる。このような蓄電デバイスは充放電することで繰り返し使用することができるので、産業装置や生活機器、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源装置として使用することができる。本発明の多孔性フィルムをセパレーターとして使用した蓄電デバイスは、セパレーターの優れた特性から特に出力密度を高めることが可能となり、高い出力が求められる産業機器や自動車、電車の電源装置に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
(1)コート層に含まれる粒子の粒径
コーティングしたサンプルを電界放射走査電子顕微鏡観察用にサンプリングしたものを、日本電子(株)製JSM−6700Fの電界放射走査電子顕微鏡でコート層の表面観察を行い、JEOL PC−SEM 6700のソフト中にある「2点間測長」を用いて30個の粒子について粒径を測定し、その平均値をコート層に含まれる粒子の粒径とした。球形ではなく変形している場合など通常の球形粒子でない場合は、最長径と最短径を測定し、2点の平均を1個の粒径とする。なお、測定条件は下記に示す通りである。
加速電圧:1kV
対物絞り:4
二次電子検出キー:ON
モード:2
エミッション:10μm
オートリセット:OFF
観察モード:LEM
スキャンローテーション:0
ダイナミックフォーカス:0
(2)軟化温度
粒子を熱風オーブンにて80℃で乾燥させたものを、カバーガラス上に乗せ、軟化温度(樹脂が熱によって変形し始める温度)は、(株)柳本製作所製MICRO MELTING POINT APPARATUS を用いて、10℃/minで熱をかけて樹脂が変形するのを5倍のルーペで観察し、その変形が始まる温度をもって決定した(軟化温度とした)。
(3)コート層厚み
ダイヤルゲージを用いて、基材フィルムの厚みを任意の5箇所について測定し、測定した場所がわかるようにコーティングする面と反対の面に印をつけ、コーティングを行い、乾燥後に印の付いた場所について同様に測定を行い下記式から各箇所のコート層厚みを算出し、その平均値をコート層厚みとした。
(コーティング、乾燥後の厚み)−(基材フィルムの厚み)= コート層厚み
(4)平均貫通孔径
POROUS MATERIALS,Inc.製自動細孔径分布測定器“PERM−POROMETER”を用いて、バブルポイントを測定した。なお、測定条件は以下の通りである。
試験液 :3M製“フロリナート”FC−40
試験温度 :25℃
試験ガス :空気
解析ソフト:Capwin
測定条件 :Capillary Flow Porometry−Wet up, Dry downのdefault条件による自動測定
なお、孔径(細孔直径)と試験圧力の間には以下の関係式が成立する。
d=Cγ/P×10
[ただし、d:細孔直径(nm)、C:定数、γ:フロリナートの表面張力(16mN/m)、P:圧力(Pa)である。]
ここでは、上記に基づき、装置付属のデータ解析ソフトを用いて、1/2半濡れ曲線から平均貫通孔径を算出した。但し、測定時の圧力上限の問題により、測定限界を37nmとした。同じサンプルについて同様の測定を、場所を変えて5回行い、得られた値の平均値を当該サンプルの平均貫通孔径とした。
(5)ガーレー透気度
テスター産業株式会社製のガーレ式デンソメーターを用いて、23℃、65%RHにて測定した(単位:秒/100ml)。同じサンプルについて同様の測定を、場所を変えて5回行い、得られたガーレー透気度の平均値を当該サンプルのガーレー透気度とした。この際、ガーレー透気度の平均値が5,000秒/100mlを超えるものについては実質的に透気性を有さないものとみなし、無限大(∞)秒/100mlとした。
(6)静摩擦係数
東洋精機(株)製スリップテスターを用いて、測定を行った。測定方法として、測定範囲の装置下段にサンプルのコート面を上にして両面テープで貼り付け、装置上段にサンプルのコート面を下にして巻き付け、測定開始場所にセットしてコート面同士を摩擦させた時の値を測定し、初期の立ち上がり抵抗値を静摩擦係数(μs)として算出した。
(7)剥離強度
幅15mmのセロハンテープ“ニチバン製15mm幅CT−15”を15cmの長さに切って、5cm折り返し長さ10cmとした。接着面の露出している部分の5cmを評価するフィルムのコート面に貼り付け、セロハンテープの幅と長さに合わせて切った。セロハンテープの貼り方は、JIS K 5600−5−6(1999)に準じて行った。次いで、(株)オリエンテック社製の引張り試験器(自動テンシロンAMF/RTA−100)を用い、接着していない方のフィルムとセロハンテープを上下のクリップに挟み(図1参照)、ヘッドスピード300mm/分にて剥離強度(N/15mm)を測定した。
(8)密着加工性
10cm×10cmのサンプルをA4サイズの厚紙に固定し、A4サイズの黒画用紙“オキナGP815”を外径3cmの円筒状にし、芯部に棒状の1kgの重りを入れ、円筒胴部の外面がサンプルと接するように、1秒間に1往復する速さでサンプルのコート面を10秒間擦り、密着性及び加工性の評価を下記のように行った。また、粒子が取れるか取れないかの判断は黒画用紙の汚れによって判断する。
◎:粒子が取れず、サンプルにしわも入らない。
○:粒子は取れないが、サンプルにしわは入る。
△:粒子は取れるが、サンプルにしわは入らない。
×:粒子が取れ、サンプルにしわも入る。
(9)加工性
コート面同士の静摩擦係数について、下記のように評価した。
◎:静摩擦係数が0.2以上0.5以下である。
○:静摩擦係数が0.5超過1.0以下である。
×:静摩擦係数が0.2未満または1.0超過である。
(10)セパレーター特性
A.貫通孔性
下記のように評価した。
◎:加熱前のガーレー透気度が10秒/100ml以上250秒/100ml以下である。
○:加熱前のガーレー透気度が250秒/100ml超過500秒/100ml以下である。
×:加熱前のガーレー透気度が10秒/100ml未満または500秒/100ml超過である。
B.シャットダウン性
60℃からからスタートして10℃きざみで150℃まで30秒間の熱処理を行い、ガーレー透気度が3,600秒/100ml以上であれば透気性が失われたと判断し、下記のようにシャットダウン性を評価した。なお、多孔性フィルムの熱処理は、当該温度に設定したギアオーブン中で4方を金属枠で固定して行った。また、粒子が溶融して孔を塞いでいることを、FE−SEMを用いて確認した。
◎:110℃で熱処理後の透気性の変化率が20%未満で、120℃以上140℃以下で透気性を失う場合。
○:110℃で熱処理後の透気性の変化率が20%以上で、120℃以上140℃以下で透気性を失う場合。
△:100℃以上120℃未満の範囲内で透気性を失う場合。
×:100℃未満や140℃超過で透気性を失う場合。
シャットダウン性は◎>○>△>×の順に悪化すると判断し、◎、○、△を合格とする。
(実施例1)
まず、下記の組成を有するポリプロピレン樹脂Aを二軸押出機でコンパウンドした。
<ポリプロピレン樹脂A>
ポリプロピレン:住友化学(株)製ポリプロピレンWF836DG3(MFR:7g/10分)89.3質量%、主鎖骨格中に長鎖分岐を有する高溶融張力ポリプロピレン:Basell製ポリプロピレンPF−814(MFR:3g/10分)0.5質量%、メタロセン触媒法による低密度ポリエチレン:ダウケミカル社製、“エンゲージ”8411(MFR:18g/10分(190℃))10質量%、β晶核剤:N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド(新日本理化(株)製、NU−100)0.2質量%
次に、ポリプロピレン樹脂Aを、一軸押出機に供給して220℃で溶融・混練し、400メッシュの単板濾過フィルターを経た後に200℃に加熱されたスリット状口金から押出し、表面温度120℃に加熱されたキャストドラムにキャストし、フィルムの非キャストドラム面側からエアーナイフを用いて120℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながら、シート状に成形し、未延伸シートを得た。なお、この際のキャストドラムとの接触時間は、40秒とした。
得られた未延伸シートを105℃に保たれたロール群に通して予熱し、105℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、105℃で縦方向に6倍延伸後、冷却した。引き続き、この縦延伸フィルムの両端をクリップで把持しつつテンターに導入して150℃で予熱し、150℃で横方向に7倍に延伸した。次いで、テンター内で横方向に5%の弛緩を与えつつ、155℃で熱固定をし、均一に徐冷した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。この多孔性ポリプロピレンフィルムを基材とし、片面にコーティング剤として、平均粒径3μmのポリエチレン粒子の分散液であるケミパールW100(三井化学社製、固形分濃度40質量%)と接着性樹脂のバインダーであるケミパールEP150H(三井化学社製、固形分濃度45質量%)を質量比9:1の割合で混合し、固形分濃度10質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものをコーティング液としてNo.6のメタバーを用いてバーコーター方式でドライ厚み1μmとなるように塗布した。塗布後、80℃で熱風乾燥を1分間行い、ガーレー透気度、静摩擦係数、剥離強度、平均孔径を測定した。
得られたフィルムは、高いシャットダウン性とセパレーター特性、加工性を両立するものであった。
(実施例2)
コーティング剤として、平均粒径が6μmの粒子、ケミパールW308(三井化学社製、固形分濃度40質量%)と接着性樹脂のバインダーであるケミパールEP150H(三井化学社製、固形分濃度45質量%)を質量比9:1の割合で混合し、固形分濃度10質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものとした以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
得られたフィルムは、高いシャットダウン性とセパレーター特性、加工性を両立するものであった。
(実施例3)
コーティング剤として、平均粒径が2.5μmの粒子、ケミパールW500(三井化学社製、固形分濃度40質量%)と接着性樹脂のバインダーであるケミパールEP150H(三井化学社製、固形分濃度45質量%)を質量比9:1の割合で混合し、固形分濃度10質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものとした以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
得られたフィルムは、シャットダウン性とセパレーター特性、加工性を両立するものであった。
(実施例4)
コーティング剤として、平均粒径が9.5μmの粒子、ケミパールW310(三井化学社製、固形分濃度40質量%)と接着性樹脂のバインダーであるケミパールEP150H(三井化学社製、固形分濃度45質量%)を質量比9:1の割合で混合し、固形分濃度10質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものとした以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
得られたフィルムは、シャットダウン性とセパレーター特性、加工性を両立するものであった。
(実施例5)
コーティング剤として、平均粒径が1μmの粒子、ケミパールW700(三井化学社製、固形分濃度40質量%)と接着性樹脂のバインダーであるケミパールEP150H(三井化学社製、固形分濃度45質量%)を質量比9:1の割合で混合し、固形分濃度10質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものとした以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
得られたフィルムは、シャットダウン性とセパレーター特性、加工性を両立するものであった。
(実施例6)
コーティング剤として、平均粒径が1μmの粒子、ケミパールWF640(三井化学社製、固形分濃度40質量%)と接着性樹脂のバインダーであるケミパールEP150H(三井化学社製、固形分濃度45質量%)を質量比9:1の割合で混合し、固形分濃度10質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものとした以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
得られたフィルムは、シャットダウン性とセパレーター特性、加工性を両立するものであった。
(実施例7)
コーティング剤として、平均粒径が1μmの粒子、セポルジョンPA150(住友精化社製、固形分濃度40質量%)と接着性樹脂のバインダーであるケミパールEP150H(三井化学社製、固形分濃度45質量%)を質量比9:1の割合で混合し、固形分濃度10質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものとした以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
得られたフィルムは、シャットダウン性とセパレーター特性、加工性を両立するものであった。
(実施例8)
実施例1と同様の粒子とバインダーを用いて、固形分濃度30質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものをコーティング液としてNo.6のメタバーを用いてバーコーター方式でドライ厚み3μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
得られたフィルムは、シャットダウン性とセパレーター特性、加工性を両立するものであった。
(実施例9)
実施例5と同様の粒子とバインダーを用いて、固形分濃度10質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものをコーティング液としてNo.5のメタバーを用いてバーコーター方式でドライ厚み0.8μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
得られたフィルムは、シャットダウン性とセパレーター特性、加工性を両立するものであった。
(比較例1)
コーティング剤を塗布しなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
この場合、130℃加熱後のガーレー透気度の値が、加熱前の値と比べて変化しておらず、シャットダウンがなされていなかった。また、静摩擦係数の値が大きく、加工性も不十分であった。
(比較例2)
コーティング剤として、平均粒径が0.6μmの粒子、セポルジョンPA200(住友精化社製、固形分濃度40質量%)と接着性樹脂のバインダーであるケミパールEP150H(三井化学社製、固形分濃度45質量%)を質量比9:1の割合で混合し、固形分濃度10質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものとした以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
この場合、粒子の粒径が小さすぎるためフィルム表面の孔に粒子が入り込んでしまい、130℃加熱前のガーレー透気度が悪化した。また、静摩擦係数の値が大きいため加工性も不十分であった。
(比較例3)
コーティング剤として、平均粒径が6μm、軟化温度75℃の粒子、ケミパールM200(三井化学社製、固形分濃度40質量%)と接着性樹脂のバインダーであるケミパールEP150H(三井化学社製)を質量比9:1の割合で混合し、固形分濃度10質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものとした以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
この場合、軟化温度が低すぎるため乾燥工程で粒子が軟化し、フィルム表面の孔を塞いでしまい、130℃加熱前のガーレー透気度が悪化した。また、静摩擦係数の値が大きいため加工性も不十分であった。
(比較例4)
コーティング剤として、平均粒径が11μm、軟化温度150℃の粒子、ユニストールR−220(三井化学社製、固形分濃度20質量%)と接着性樹脂のバインダーであるケミパールEP150H(三井化学社製、固形分濃度45質量%)を質量比9:1の割合で混合し、固形分濃度10質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものとした以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
この場合、粒子の粒径が大きすぎるため剥離強度が低く、接着性が不十分であった。また、軟化温度が高すぎるため、130℃加熱後もフィルム表面の孔が塞がらずシャットダウン性が不十分であった。
(比較例5)
実施例1と同様の粒子とバインダーを用いて、固形分濃度5質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものをコーティング液としてNo.6のメタバーを用いてバーコーター方式でドライ厚み0.5μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
この場合、コート層厚みが薄すぎるため130℃加熱後もシャットダウン性が不十分であり、剥離強度も低いため粒子が脱落しやすいという問題があった。
(比較例6)
実施例1と同様の粒子とバインダーを用いて、固形分濃度30質量%になるように、蒸留水:エタノールを質量比1:1としたもので希釈し、撹拌モーターを用いて分散させたものをコーティング液としてNo.18のメタバーを用いてバーコーター方式でドライ厚み8μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様の操作を行い、各物性値を表1に示した。
この場合、コート層厚みが厚すぎるため130℃加熱前でも孔径やガーレー透気度が悪化し、静摩擦係数の値が大きいため加工性も不十分であった。
Figure 0005267032
本発明による多孔性ポリプロピレンフィルムは、透気性を有し、かつシャットダウン性が有り、加工性が良好であるセパレーター特性の良好な多孔性フィルムとして提供することができる。
剥離強度の測定法を示す断面図である。
符号の説明
1:セロハンテープ
2:粘着層
3:コート層
4:基材フィルム

Claims (1)

  1. 多孔性ポリプロピレンフィルムの表面に、接着性樹脂のバインダーと粒径が0.8〜10μmである粒子を含むコート層を有し、このコート層を有する面の剥離強度が1N/15mm以上であり、ガーレー透気度が10〜500秒/100mlであり、コート層を有する面同士の静摩擦係数が0.2〜0.5であり、コート層に含まれる粒子の軟化温度が100〜140℃であり、粒子を含むコート層の厚みが0.8〜5μmであり、平均貫通孔径が40〜150nmである多孔性フィルム。
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