JP2013163806A - 多孔質フィルムおよび蓄電デバイス用セパレータ - Google Patents

多孔質フィルムおよび蓄電デバイス用セパレータ Download PDF

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Abstract

【課題】優れた安全性を有する蓄電デバイス用セパレータとして好適な多孔質フィルムを提供すること。
【解決手段】ポリプロピレン樹脂が主成分であり、β晶形成能を有する多孔フィルムに、耐熱樹脂を主成分とする耐熱多孔層を積層した多孔質フィルムであり、多孔フィルムと耐熱多孔層の界面での剥離強度が50〜300g/25mmである多孔質フィルムとする。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気特性、安全性に優れる蓄電デバイス用セパレータに関する。詳しくは、ポリプロピレン樹脂が主成分でありβ晶形成能を有する多孔フィルムに、耐熱樹脂を主成分とする耐熱多孔層を積層したフィルムとすることにより、優れた耐熱性を有する蓄電デバイス用セパレータ用として好適な多孔質フィルムに関する。
ポリオレフィンからなる多孔フィルムは、電気絶縁性やイオン透過性に加えて、力学特性にも優れることから、特にリチウムイオン二次電池のセパレータ用途に広く用いられており、なおかつ、電池の高出力密度、高エネルギー密度化に伴い、フィルムの大孔径化、薄膜化、高空孔率化などが検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、このような方法で作られた多孔フィルムだけでは、耐熱性や寸法安定性が不足するといった点や、電池内部に混入した異物の貫通を阻止できないといった安全性に劣るという問題があった。安全性を確保するためにバインダーと耐熱粒子からなる多孔層を基材である多孔フィルムに塗工する提案がなされているが(例えば、特許文献3)、バインダーの耐熱性が低いため、セパレータとして用いた際に、200℃以上の高温状態になった場合、セパレータが破膜し電極間の絶縁を維持できないといった問題があった。上記の問題を解決するために多孔フィルムに耐熱性の樹脂を製膜時に溶融積層し、多孔フィルムの延伸時に同時に延伸・多孔化する提案がなされているが(例えば、特許文献4、5)、多孔化のために耐熱樹脂を延伸するため、積層したフィルムを過熱した際に大きく収縮が発生するといった問題があった。
特開平11−302434号公報 国際公開第2005/61599号パンフレット 国際公開第2008/149986号パンフレット 特開2009−45775号公報 特開2009−39910号公報
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、本発明の目的は、β晶形成能を有するポリプロポレン樹脂からなる多孔フィルムと耐熱樹脂よりなる耐熱多孔層を塗工により積層したフィルムとすることにより、優れた耐熱性を有することで、優れた安全性を有する蓄電デバイス用セパレータとして好適な多孔質フィルムを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明は、ポリプロピレン樹脂が主成分でありβ晶形成能を有する多孔フィルムに、耐熱樹脂を主成分とする耐熱多孔層を積層したフィルムであり、多孔フィルムと耐熱多孔層の界面での剥離強度が50〜300g/25mmである多孔質フィルムである。
本発明の多孔質フィルムは、β晶形成能を有するポリプロポレン樹脂からなる多孔フィルムと耐熱樹脂よりなる耐熱多孔層を、塗工により積層したフィルムとすることで、優れた耐熱性を有し電池のセパレータとして使用した際に優れた安全性を示すフィルムとして提供することができる。
本発明において多孔質フィルムとは多孔フィルムと耐熱多孔層よりなる積層フィルムを指す。
本発明の多孔フィルムは、ポリプロピレン樹脂を主成分として構成され、フィルムの両表面を貫通し、透気性を有する微細な貫通孔を多数有している。ここで主成分とするとはフィルムの樹脂組成のうち80質量%以上がポリプロピレン樹脂であることを言う。
本発明において、フィルムに貫通孔を形成する方法としては、湿式法、乾式法どちらでも構わないが、工程を簡略化できることから乾式法が望ましい。また、多孔フィルムは、生産性と耐熱多孔層の積層時のアンカー効果による密着性の観点と、表面の開孔率が高く、耐熱多孔層を積層した後の多孔質フィルムとしての高い透気性を維持できる観点から、β晶法と呼ばれる多孔化法を用いて製造されたポリプロピレン樹脂よりなる多孔フィルムであることが好ましい。β晶法を用いてフィルムに貫通孔を形成するためには、ポリプロピレン樹脂中にβ晶を多量に生成させることが重要となるが、そのためにはβ晶核剤と呼ばれる、ポリプロピレン樹脂中に添加することでβ晶を選択的に生成させる結晶化核剤を添加剤として用いることが好ましい。β晶核剤としては種々の顔料系化合物やアミド系化合物などを挙げることができるが、特に特開平5−310665号公報に開示されているアミド系化合物を好ましく用いることができる。β晶核剤の含有量としては、ポリプロピレン樹脂全体を100質量部とした場合、0.05〜0.5質量部であることが好ましく、0.1〜0.3質量部であればより好ましい。
多孔フィルムを構成するポリプロピレン樹脂はメルトフローレート(以下、MFRと表記する、測定条件は230℃、2.16kg)が2〜30g/10分の範囲のアイソタクチックポリプロピレン樹脂であることが好ましい。MFRが上記した好ましい範囲を外れると延伸フィルムを得ることが困難となる場合がある。より好ましくは、MFRが3〜20g/10分である。
また、アイソタクチックポリプロピレン樹脂のアイソタクチックインデックスは90〜99.9%であれば好ましい。アイソタクチックインデックスが90%未満であると、樹脂の結晶性が低く、高い透気性を達成するのが困難な場合がある。アイソタクチックポリプロピレン樹脂は市販されている樹脂を用いることができる。
多孔フィルムにはホモポリプロピレン樹脂を用いることができるのはもちろんのこと、製膜工程での安定性や造膜性、物性の均一性の観点から、ポリプロピレンにエチレン成分やブテン、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィン成分を5質量%以下の範囲で共重合してもよい。なお、ポリプロピレンへのコモノマーの導入形態としては、ランダム共重合でもブロック共重合でもいずれでも構わない。
また、上記のポリプロピレン樹脂は0.5〜5質量%の範囲で高溶融張力ポリプロピレンを含有させることが製膜性向上の点で好ましい。高溶融張力ポリプロピレンとは高分子量成分や分岐構造を有する成分をポリプロピレン樹脂中に混合したり、ポリプロピレンに長鎖分岐成分を共重合させたりすることで溶融状態での張力を高めたポリプロピレン樹脂であるが、中でも長鎖分岐成分を共重合させたポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。この高溶融張力ポリプロピレンは市販されており、たとえば、Basell社製ポリプロピレン樹脂PF814、PF633、PF611やBorealis社製ポリプロピレン樹脂WB130HMS、Dow社製ポリプロピレン樹脂D114、D206を用いることができる。
多孔フィルムを構成するポリプロピレン樹脂には、延伸時の空隙形成効率を高め、孔径が拡大することで透気性が向上することから、ポリプロピレン樹脂にエチレン・α−オレフィン共重合体を1〜10質量%添加することが好ましい。ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体としては直鎖状低密度ポリエチレンや超低密度ポリエチレンを挙げることができ、中でも、オクテン−1を共重合したエチレン・オクテン−1共重合体を好ましく用いることができる。このエチレン・オクテン−1共重合体は市販されている樹脂を用いることができる。
本発明において基材に用いる多孔フィルムはβ晶法により多孔化することが好ましいため、フィルムを構成する(含まれる)ポリプロピレン樹脂のβ晶形成能が40〜90%であることが好ましい。
ここで、β晶形成能とは以下の条件で測定される、一定条件下におけるポリプロピレン樹脂中のβ晶の存在比率を示しており、β晶をどれだけ形成する能力があるのかを示す値である。β晶形成能の測定は、ポリプロピレン樹脂あるいはポリプロピレンフィルム5mgを、示差走査熱量計を用いて窒素雰囲気下で室温から240℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)し、10分間保持した後、30℃まで10℃/分で冷却する。5分保持後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観察される融解ピークについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、それぞれ融解熱量を求め、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とする。
β晶形成能(%)=〔ΔHβ/(ΔHα+ΔHβ)〕×100
β晶形成能が40%未満ではフィルム製造時にβ晶量が少ないためにα晶への転移を利用してフィルム中に形成される空隙数が少なくなり、その結果透過性の低いフィルムしか得られない場合がある。また、β晶形成能が90%を超える場合は、粗大孔が形成され、蓄電デバイス用セパレータとしての機能を有さなくなる場合がある。β晶形成能を40〜90%の範囲内にするためには、アイソタクチックインデックスの高いポリプロピレン樹脂を使用し、かつ、上述のβ晶核剤を添加することが好ましい。β晶形成能としては45〜80%であればより好ましい。
本発明において基材に用いる多孔フィルムは少なくとも一軸方向に延伸されていることが好ましい。未延伸のフィルムを用いた場合、フィルムの空孔率や機械強度が不十分となる場合がある。多孔フィルムを少なくとも一軸方向に延伸する方法としては、加熱後、テンター法、ロール法、インフレーション法、又はこれらの組合せにより所定の倍率で延伸するのが好ましい。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸及び多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよいが、生産性の観点から、逐次二軸延伸が好ましい。
本発明において基材に用いる多孔フィルムは、組成の異なる、もしくは同一組成からなる複数の層を積層してなる積層フィルムであってもよい。積層フィルムとすると、フィルム表面特性とフィルム全体の特性を好ましい範囲に個別に制御できる場合があるので、好ましい。その場合、A|B型の2層積層や、A|B|A型の3層積層、4層以上の多層積層など、いずれの積層構造としてもかまわない。
本発明において基材に用いる多孔フィルムの厚みは10〜30μmであることが好ましく、10〜28μmであることがより好ましく、12〜25μmであることがさらに好ましい。厚みが10μmを下回ると、多孔フィルム上に耐熱多孔層を形成する工程において、シワが入りやすく、歩留まりが大きくなるため生産性に劣る場合がある。また、30μmを上回ると、耐熱多孔層を形成した後に電池のセパレータとして使用する際に、電気抵抗が高くなる場合がある。
本発明において基材に用いる多孔フィルムは、後述する耐熱多孔層を積層する面に粒子を含有する層(以下、粒子層という)を備えることが好ましい。粒子層を設けることで、多孔フィルム自体の耐熱性や多孔フィルム表面の微細な機械的強度が向上し、耐熱多孔層を形成する際の乾燥による変形や、塗剤中の溶媒の浸透・蒸発にともなう孔の変形を低減できることから、耐熱多孔層形成による透気抵抗の悪化を抑制することが可能となる。粒子層は後述する手法にて多孔フィルムの表面に形成することができる。
本発明において粒子層に用いる粒子は、アスペクト比(粒子の長径/粒子の短径)が1.5以上10以下であることが好ましく、2以上8以下であることがより好ましく、2以上6以下であることがさらに好ましい。アスペクト比が上記の範囲の粒子を用いることで、多孔フィルムに熱多孔層を積層する際の透気抵抗の悪化を効果的に抑制することができる。
本発明において粒子層に用いる粒子の平均粒子径Aは0.01〜2.0μmであることが好ましく、0.1〜1.5μmであることがより好ましく、0.1〜1.0μmであることがさらに好ましい。平均粒子径Aが2.0μmを上回ると、粒子の比表面積が小さくなり、多孔フィルムを延伸により製膜する際に粒子と多孔フィルムを形成する樹脂とのの密着性が悪化し、粒子が脱落しやすくなる場合がある。また、0.01μmを下回ると、粒子の比表面積が大きくなりすぎて、粒子の凝集が起こりやすくなる。
粒子層中の粒子のアスペクト比および平均粒子径Aは後述する手法にて確認できる。
本発明において粒子層に用いる粒子としては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックスや窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ベーマイト、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス、ガラス繊維等のセラミックスなど、有機粒子としては高分子化合物を架橋剤により架橋したもので、例えば、ポリメトキシシラン系化合物の架橋粒子、ポリスチレン系化合物の架橋粒子、アクリル系化合物の架橋粒子、ポリウレタン系化合物の架橋粒子、ポリエステル系化合物の架橋粒子、フッ化物系化合物の架橋粒子等が挙げられる。本発明においてはこれら粒子を単独で用いてもよいし、複数を混合して用いることもできる。上記の中でも、粒子と多孔フィルムを形成する樹脂への分散性・密着性および電気化学的安定性の観点から、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、ベーマイトが特に好ましい。
本発明において粒子層に用いる粒子の濃度としては粒子層を形成する樹脂組成物中、1〜50質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。粒子の濃度が50質量%より高くなると、粒子層の柔軟性が損なわれる場合がある。また、粒子の濃度が1質量%を下回ると粒子層形成による透気抵抗の悪化の抑制効果が低くなる場合がある。
本発明において粒子層の厚みとしては0.5〜10μmが好ましく1〜5μmがより好ましく、1〜3μmがさらに好ましい。厚みが10μmを上回ると、多孔フィルムのもつ柔軟性を損なう場合がある。また、0.5μmを下回ると、前述した粒子層積層の効果が発現しにくい。厚みを上記の範囲にするためには、後述するフィルムの製膜時に粒子層を形成する樹脂組成物を原料として供給した押出機からの塗出量を下げることで調整できる。粒子層の厚みは多孔質フィルムの断面を観察することで確認できる。
本発明において基材に用いる多孔フィルムには、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤や無機あるいは有機粒子からなる滑剤、さらにはブロッキング防止剤や充填剤、非相溶性ポリマーなどの各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリオレフィン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して酸化防止剤を0.01〜0.5質量部含有せしめることは好ましいことである。
本発明において多孔質フィルムの基材に用いる多孔フィルムの透気抵抗は50〜500秒/100mlであることが好ましい。透気抵抗が50秒/100ml未満ではセパレータとした際に絶縁を保つことが困難となる場合がある。また、500秒/100mlを超えると、多孔質フィルムの基材として用いた際、多孔質フィルムの透気抵抗が大きく、セパレータとして用いた場合の電池特性が悪化する傾向にある。多孔フィルムの透気抵抗は、より好ましくは80〜400秒/100ml、さらに好ましくは100〜300秒/100mlである。
本発明に用いる多孔フィルムは空孔率が50%以上80%未満であることが好ましく、65%以上75%未満であることがより好ましい。50%未満では耐熱多孔層を積層した際に、後述する耐熱多孔層と基材の空孔率の差が大きくなり、多孔質フィルムとした際に、セパレータとして用いるとの電気的特性が不十分となる場合がある。80%を超えるとセパレータ特性、および強度の観点から不十分となる場合がある。多孔フィルムの空孔率は多孔フィルムの比重(ρ)と樹脂(B)の比重(d)より下記式より求めることができる。
空孔率(%)=〔(d−ρ)/d〕×100
貫通孔、透気抵抗および空孔率をかかる好ましい範囲に制御する方法としては、樹脂(B)にポリプロピレン樹脂を用いた場合、エチレン・α−オレフィン共重合体を前述した特定比率で混合した樹脂を用いることで達成できる。さらに、後述する特定の二軸延伸条件を採用することにより効果的に達成することができる。
本発明に用いる多孔フィルムは表面孔径について、0.01μm以上0.5μm未満の孔径の孔の数(A)と0.5μm以上10μm未満の口径の孔の数(B)の比率である(A)/(B)が0.1〜4であることが好ましく、0.4〜3であることがより好ましい。(A)/(B)が4より大きいと、多孔フィルムの表面に小径の開孔部の比率が多すぎ、塗工・乾燥時に後述する耐熱樹脂を溶解した塗液が、多孔フィルムの開孔部分に入り込みにくいため、アンカー効果による十分な接着が発現しない場合がある。また(A)/(B)比率が0.1より小さいと、多孔フィルムの表面に大径の開孔部分多すぎ、塗工時に塗剤が開孔部に入り込みすぎるため透気性が低下する場合がある。
表面孔径をかかる好ましい範囲に制御する方法としては、上述のβ晶核剤を添加したポリプロプレン樹脂を後述する延伸方法で多孔化することにより達成できる。
多孔フィルムの表面口径は走査型電子顕微鏡を用いて表面画像を撮影し、画像解析を行うことで確認できる。
次に、上記のようにして得た多孔フィルムの少なくとも片面に耐熱多孔層を形成するが、その前に多孔フィルムと耐熱多孔層との接着性を向上させる目的で、多孔フィルム表面にコロナ放電処理などの易接着化のために表面処理を行うことが好ましい。表面処理としては、空気中、酸素雰囲気、窒素雰囲気などでのコロナ放電処理や、プラズマ処理等を挙げることができるが、簡便なコロナ放電処理が好ましい。
本発明の多孔質フィルムは、上記した多孔フィルムの少なくとも片面に、耐熱多孔層が設けられている。耐熱多孔層を有することにより、多孔フィルムのみでは達成できない、高温での耐熱性を発現することができる。以下に当該耐熱多孔層について、詳しく説明する。
本発明において耐熱多孔層とは耐熱樹脂を主成分とする層を指す。ここで主成分とするとは耐熱多孔層の樹脂組成のうち60質量%以上が耐熱樹脂であることをいう。
本発明において多孔質フィルムの耐熱樹脂とは、融点が150℃以上の樹脂を指す。具体的にはポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン−ジエン等のポリオレフィン系樹脂、液晶ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン(ポリスルホン)、ポリエーテルサルホンもしくはポリフェニレンサルファイド等のポリエーテル系樹脂、6ナイロン、6−6ナイロンもしくは6−12ナイロンやアラミドなどのポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミドおよびセルロース等が挙げられる。
上記の中でも、融点200℃以上のポリマーあるいは融点を有しないが分解温度が200℃以上耐熱樹脂の融点200℃以上であることが耐熱性の観点から好ましい。
また、上記の樹脂の中でも全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、液晶ポリエステル、ポリフッ化ビニリデンおよびセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂が耐熱性の観点から好ましく、耐久性および多孔質層の形成しやすさから、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリエステル、ポリスルホン、および、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、耐酸化還元性に優れるという観点から、ポリアミドおよびポリアミドイミドがさらに好ましい。
本発明の多孔質フィルムの耐熱多孔層は耐熱粒子を含むことが好ましい。耐熱樹脂を含有することで、耐熱多孔層を多孔化する際に、耐熱粒子−耐熱粒子界面でも孔形成が起きることから、多孔化が促進され透気性を向上させることができる。
本発明において耐熱粒子とは、粒子の形状が少なくとも200℃まで保持される粒子をいう。より好ましくは300℃まで形状が保持され、さらに好ましくは330℃まで形状が保持される。すなわち粒子の融点、軟化点、熱分解温度、または体積変化を伴う相転移が上記温度まで起こらないことが好ましく、具体的には、融点を示さずかつ少なくとも330℃までは形状が保持される粒子として、アルミナ、チタン酸カリウム、ウォラストナイト、ガラス繊維、酸化チタン、シリカ、ジルコニア(ルチル型)、炭酸カルシウム(カルサイト、アラゴナイト)、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、電気化学的安定性の観点からアルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化チタンが好ましい。
本発明の多孔質フィルムの耐熱多孔層に用いる耐熱粒子の平均粒子径Bは、耐熱多孔層の透気性と力学特性の両立の観点から、0.1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜8μmである。平均粒子径Bが0.1μm未満では、耐熱粒子が多孔フィルムの開孔表面からフィルム内部に浸透し、多孔フィルムの透気抵抗が高くなったり、耐熱粒子の充填効率が高まり、耐熱多孔層の空孔率が低下する場合がある。一方、平均粒子径Bが10μmを超えると、耐熱多孔層の厚みを制御できなくなる場合がある。耐熱多孔層中の平均粒子径Bは後述する手法で評価することができる。
本発明の多孔質フィルムの耐熱多孔層に含まれる上記耐熱粒子の濃度は、1質量%以上50質量%未満であることが好ましく、5質量%以上45質量%未満であることがより好ましい。1質量%未満であると、耐熱多孔層の空孔率耐熱性が劣り、多孔質フィルムとした際に収縮が著しくなる場合がある。また、50質量%以上の場合、耐熱樹脂による耐熱性改善向上効果が低くなり、耐熱性が劣る場合がある。本発明の多孔質フィルムの耐熱多孔層に含まれる上記耐熱粒子の濃度は、多孔質フィルムより耐熱多孔層を剥離・回収し、これを粉末X線解析し耐熱粒子種を同定した後、燃焼分析により有機成分を除去後の質量から無機元素の含有量を算出することで求めることができる。
本発明の多孔質フィルムの耐熱多孔層の積層厚みは、1〜20μmであることが好ましく、より好ましくは3〜10μmである。1μm未満であると、耐熱多孔層を積層することによる耐熱性が発現しない場合がある。また、20μmを超えると、耐熱多孔層を積層した際の透気性の悪化が著しくなる場合がある。耐熱多孔層の積層厚みは後述する手法にて確認することができる。
本発明の多孔質フィルムは耐熱多孔層/多孔フィルム界面にて剥離することができる。耐熱多孔層/多孔フィルム界面にて剥離した際の剥離強度は50〜300g/25mm幅であることが好ましく、100〜300g/25mm幅であることがより好ましい。剥離強度が50g/25mm未満では、多孔質フィルムより耐熱多孔層が剥離しやすく、多孔質フィルムをセパレータとして使用した際に、耐熱性に劣る場合がある。剥離強度が300g/25mm幅を超える場合や、剥離試験時に耐熱多孔層/多孔フィルム界面ではなく多孔フィルムの層内で破壊が起きると、多孔質フィルムをセパレータとして使用した電池が発熱した際に、多孔フィルムと耐熱多孔層の結着性が強すぎるため、多孔フィルムの収縮・溶融により耐熱多孔層の形状維持が困難になる場合がある。剥離強度を上記の範囲にする方法としては、多孔フィルムの表面孔径を前述の範囲とすることで達成できる。
本発明の多孔質フィルムの耐熱多孔層には、フィルムにシャットダウン性を付与する観点から、融点が110〜150℃の熱可塑性樹脂粒子を添加することができる。シャットダウン性とは、多孔質フィルムをセパレータとして使用した際、電池の異常発熱時にフィルムに含まれる成分により多孔質フィルムの貫通孔を閉塞し、イオンの流れを遮断する特性をいう。熱可塑性樹脂粒子の融点が110℃未満であると、使用環境が蓄電デバイスの他の素材には問題のない110℃程度の低温でフィルムの貫通孔を遮蔽してしまい、シャットダウンしてしまう誤作動が発生してしまう。一方、融点が150℃を超えるとシャットダウンする前に蓄電デバイス内で自己発熱反応が開始してしまうことがある。シャットダウンはリチウムイオン電池で多く使用されているコバルト系正極の場合、正極の熱安定性の観点から110〜150℃で機能することが好ましいので、熱可塑性樹脂粒子の融点は110〜150℃であることがより好ましく、正極の熱安定性を考慮して融点を変更することが好ましい。なお、熱可塑性樹脂粒子が複数の融点を有する場合には、最も高温の融点が上記範囲内であればよい。
本発明の多孔質フィルムの耐熱多孔層に熱可塑性樹脂粒子を添加する場合、融点が上記範囲に入る熱可塑性樹脂から構成されていれば特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系樹脂からなる熱可塑性樹脂粒子が好ましく、特に、ポリエチレン、ポリエチレン共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂からなる熱可塑性樹脂粒子が好ましい。また、熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径としては0.5〜5μmであれば好ましく、0.8〜3μmであればより好ましい。
本発明の多孔質フィルムの耐熱多孔層に熱可塑性樹脂粒子を添加する場合、耐熱多孔層中のその濃度は10〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%がより好ましい。10質量%未満であると、多孔質フィルムをセパレータとして使用した際、発熱時に耐熱多孔層中の孔を十分に塞げず、シャットダウン性が発現しない場合がある。また、40質量%を超えると、多孔質フィルムをセパレータとして使用した際の耐熱性が低下する場合がある。
本発明において多孔質フィルムの透気抵抗は50〜500秒/100mlであることが好ましい。透気抵抗が50秒/100ml未満では電極間の絶縁が十分に保てず、安全性に劣る場合がある。また、500秒/100mlを超えると多孔質フィルムをセパレータとして用いた際の電池の出力特性が悪化する傾向にある。多孔質フィルムの透気抵抗は、用途にもよるが、好ましくは80〜450秒/100ml、より好ましくは150〜400秒/100mlである。多孔質フィルムの透気抵抗を上記の範囲にする方法としては、後述する手法にて耐熱多孔層を多孔化することで効率的に達成できる。多孔質フィルムの透気度は後述する手法にて確認することができる。
本発明において、多孔フィルムの透気抵抗と多孔質フィルムの透気抵抗から算出される透気抵抗変化率(Gd)は0〜100%であることが好ましく、0〜50%であることがより好ましく、0〜30%であることがさらに好ましく、0〜20%であることが特に好ましく、0〜15%がより好ましく、0〜10%であればさらに好ましい。
透気抵抗変化率(Gd)は下記式で定義される。
Gd={(Ga−Gb)/Gb}×100
ここで、Gdは透気抵抗変化率(%)、Gaは多孔質フィルムの透気抵抗(秒/100ml)、Gbは多孔フィルムの透気抵抗(秒/100ml)を意味する。Gdが100%を超えると耐熱多孔層を形成した際の多孔フィルム表面の孔の閉塞の程度が大きく、多孔質フィルムをセパレータとして使用した際に、電池特性が悪くなる場合がある。透気度変化率を上記の範囲にするには、前述する多孔フィルムに後述する手法にて耐熱多孔層を塗工により形成することで達成できる。
本発明の多孔質フィルムの150℃におけるフィルムの長手方向および幅方向の熱収縮率は0〜5%であることが好ましく、0〜3%であることがより好ましい。150℃におけるフィルムの長手方向および幅方向の熱収縮率が5%より大きいと電池のセパレータとして使用した際に、発生した熱によって容易に収縮し短絡を引き起こす場合があり、電池の安全性を保てないことがある。また、0%より小さいと、電池のセパレータとして使用した際に、電池自体の寸法安定性に影響を及ぼし、不具合が生じる場合がある。150℃におけるフィルムの長手方向および幅方向の熱収縮率を上記の範囲にするには、前述の剥離強度を有する耐熱多孔層を、多孔フィルムを製膜した後に、耐熱多孔層を形成するために塗液スラリーを塗工して設けることで効果的に達成できる。
多孔フィルムまたは多孔質フィルムの耐熱性は後述する手法にて確認することができる。
本発明の多孔質フィルムにおいて、多孔フィルムの片面または両面に耐熱多孔層を形成する方法として、耐熱粒子や耐熱樹脂およびその他の組成物を含有する塗液スラリーを塗布する方法が好ましく採用される。塗液スラリーを塗工する方法としては、後述する手法を用いることができる。
以下に本発明の多孔質フィルムを構成する多孔フィルムの製造方法、および、多孔質フィルムの製造方法を具体的に説明する。なお、本発明の多孔質フィルムおよび多孔フィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
ポリプロピレン樹脂として、MFR8g/10分の市販のホモポリプロピレン樹脂94.8質量部、メルトインデックス18g/10分の超低密度ポリエチレン樹脂5質量部にN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド0.2質量部を混合し、二軸押出機を使用して270〜300℃で溶融混練し、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして原料チップAを作製する。
また、粒子層用原料としてMFR8g/10分の市販のホモポリプロピレン樹脂84.8質量部、メルトインデックス18g/10分の超低密度ポリエチレン樹脂5質量部にN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド0.2質量部、市販の粒子10質量部を混合し、二軸押出機を使用して270〜300℃で溶融混練し、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして原料チップBを作製する。
次に、多孔フィルムに粒子層を形成するために、2台の単軸の押出機に原料チップAおよびBをそれぞれ供給し、各押出機の塗出量を調整することで各層の厚みを調整しながら、200〜230℃にて溶融押出しポリマー管の途中に設置したフィルターにて異物や変性ポリマーなどを除去した後、積層用マニホールド又は合流ブロックを用いて溶融状態で積層しTダイよりキャストドラム上に吐出し、未延伸シートを得る。
キャストドラムは表面温度が105〜130℃であることが、キャストフィルムのβ晶形性能を高く制御する観点から好ましい。また、特にシートの端部の成形が後の延伸性に影響するので、端部にスポットエアーを吹き付けてドラムに密着させることが好ましい。なお、シート全体のドラム上への密着状態から必要に応じて全面にエアナイフを用いて空気を吹き付ける方法や、静電印加法を用いてキャストドラムにポリマーを密着させてもよい。
次に得られた未延伸シートを二軸配向させ、フィルム中に空孔を形成する。二軸配向させる方法としては、フィルム長手方向に延伸後幅方向に延伸、あるいは幅方向に延伸後長手方向に延伸する逐次二軸延伸法、またはフィルムの長手方向と幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸法などを用いることができるが、高透気性フィルムを得やすいという点で逐次二軸延伸法を採用することが好ましく、特に長手方向に延伸後、幅方向に延伸することが好ましい。
具体的な延伸条件としては、まず未延伸シートを長手方向に延伸する温度に制御する。温度制御の方法は、温度制御された回転ロールを用いる方法、熱風オーブンを使用する方法などを採用することができる。長手方向の延伸温度としては90〜135℃、さらに好ましくは100〜120℃の温度を採用することが好ましい。延伸倍率としては3〜6倍、より好ましくは4〜5.5倍である。次に、いったん冷却後、ステンター式延伸機にフィルム端部を把持させて導入する。そして、好ましくは140〜155℃に加熱して幅方向に5〜12倍、より好ましくは6〜10倍延伸を行う。なお、このときの横延伸速度としては300〜5,000%/分で行うことが好ましく、500〜3,000%/分であればより好ましい。ついで、そのままステンター内で熱固定を行うが、その温度は横延伸温度以上165℃以下が好ましい。さらに、熱固定時にはフィルムの長手方向および/もしくは幅方向に弛緩させながら行ってもよく、特に幅方向の弛緩率を5〜35%とすることが、熱寸法安定性の観点から好ましい。
次に、上記製造方法によって作製した多孔フィルムの片面または両面に耐熱多孔層を形成する方法を説明する。
耐熱多孔層を形成するために、耐熱樹脂を溶剤に溶かした塗液スラリーを作製する。溶剤は耐熱性樹脂を溶解するものであればよく、特に限定は無いが、具体的には極性溶剤が好ましく、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。また、当該溶剤はこれらの極性溶剤に加えて耐熱樹脂に対して貧溶剤となる溶剤も加えることができる。このような貧溶剤を適用することでミクロ相分離構造が誘発され、耐熱多孔層を形成する上で多孔化が容易となる。貧溶剤としては、アルコールの類が好適であり、特にグリコールのような多価アルコールが好適である。塗液スラリー中の耐熱樹脂の濃度は1〜20質量%が好ましい。耐熱粒子を含有させる場合は、塗液スラリーに耐熱粒子を分散させて塗液スラリーとする。塗液スラリー中に耐熱粒子を分散させるに当たって、耐熱粒子の分散性が好ましくないときは、耐熱粒子をシランカップリング剤などで表面処理したり、分散剤を適宜添加することもできる。
上記のように調整した塗液スラリーを多孔フィルムの片面または両面に塗工する。
多孔フィルムに塗液スラリーを塗工する方法としては、ナイフコーター法、グラビアコーター法、スクリーン印刷法、マイヤーバー法、ダイコーター法、リバースロールコーター法、インクジェット法、スプレー法、ロールコーター法等が挙げられる。この中でも、塗膜を均一に形成するという観点において、リバースロールコーター法が好適である。多孔フィルムの両面に同時に塗工する場合は、例えば、多孔フィルムを一対のマイヤーバーの間に通すことで多孔フィルムの両面に過剰な塗液スラリーを塗布し、これを一対のリバースロールコーターの間に通して過剰な塗液スラリーを掻き落すことで精密計量するという方法が挙げられる。
次に塗液スラリーが塗工された多孔フィルムを、前記耐熱樹脂を凝固させることが可能な凝固液で処理する。これにより、耐熱樹脂を凝固させて、耐熱樹脂からなる耐熱多孔質層あるいは、耐熱樹脂中に耐熱粒子を含有させた耐熱多孔質層を形成する。凝固液で処理する方法としては、塗液スラリーを塗工した多孔フィルムに対して凝固液をスプレーで吹き付ける方法や、当該多孔フィルムを凝固液の入った浴(凝固浴)中に浸漬する方法などが挙げられる。ここで、凝固浴を設置する場合は、塗工装置の下方に設置することが好ましい。凝固液としては、当該耐熱樹脂を凝固できるものであれば特に限定されないが、水、または、塗液スラリーに用いた溶剤に水を適当量混合させたものが好ましい。ここで、水の混合量は凝固液に対して40〜80質量%が好適である。水の量が40質量%より少ないと、耐熱樹脂を凝固するのに必要な時間が長くなったり、凝固が不十分になったりという問題が生じる。また、水の量が80質量%より多いと、溶剤回収においてコスト高となったり、凝固液と接触する表面の凝固が速くなりすぎて表面が十分に多孔化されなかったりという問題が生じる。
次に、塗液スラリーが塗工された多孔フィルム凝固液を水洗することによって除去した後、水を乾燥して除去する。乾燥方法は特に限定は無いが、乾燥温度は70〜120℃が好適であり、高い乾燥温度を適用する場合は熱収縮による寸法変化が起こらないようにするためにロールに接触させるような方法を適用することが好ましい。乾燥時間は耐熱多孔層の厚みにもよるが、1〜30分が好適である。
上記の手法を用いることで、多孔フィルムの片面または両面に厚み1〜20μmの耐熱多孔層を積層させた多孔質フィルムを製造することができる。
本発明の多孔質フィルムは、優れた耐熱性透気性を有していることから、蓄電デバイスのセパレータとして好適に使用することができる。
ここで、蓄電デバイスとしては、各種電池、特にリチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池や、リチウムイオンキャパシタなどの電気二重層キャパシタなどを挙げることができる。このような蓄電デバイスは充放電することで繰り返し使用することができるので、産業装置や生活機器、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの電源装置として使用することができる。本発明の多孔質フィルムをセパレータとして使用した蓄電デバイスは、セパレータの優れた特性から産業機器や自動車の電源装置に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
(1)多孔フィルムおよび多孔質フィルムのβ晶形成能
多孔フィルムを構成する樹脂または多孔質フィルムおよび多孔フィルムそのもの5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から280℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)し、10分間保持した後、30℃まで10℃/分で冷却する。5分保持後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観測される融解ピークにについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、高温側の平坦部を基準に引いたベースラインとピークに囲まれる領域の面積から、それぞれの融解熱量を求め、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とする。なお、融解熱量の校正はインジウムを用いて行った。
β晶形成能(%) = 〔ΔHβ / (ΔHα + ΔHβ)〕 × 100
(2)多孔質フィルム、多孔フィルム、多孔フィルムの粒子層、耐熱多孔層の厚み
走査型電子顕微鏡の試料台に固定した多孔質フィルムを、フィルム長手方向の断面がみえるようにスパッタリング装置を用いて減圧度10−3Torr、電圧0.25KV、電流12.5mAの条件にて10分間、イオンエッチング処理を施して断面を切削した後、同装置にて該表面に金スパッタを施し、走査型電子顕微鏡を用いて倍率3,000倍にて観察した。
観察により得られた画像より多孔質フィルム、多孔フィルム、耐熱多孔層の厚みを計測した。厚みの測定に用いるサンプルは長手方向に少なくとも5cm間隔で任意の場所の合計10箇所を選定し、10サンプルの計測値の平均をそのサンプルの多孔質フィルムの厚み、多孔フィルムの厚み、多孔フィルムの粒子層の厚み、耐熱多孔層の厚みとした。
(3)多孔質フィルム、多孔フィルムの透気抵抗および透気抵抗変化率
A.多孔質フィルム、多孔フィルムの透気抵抗
多孔質フィルムおよび多孔フィルムを1辺の長さ150mmの正方形を切取り試料とし、JIS P 8117(2009)のB形のガーレー試験機を用いて、23℃、相対湿度65%にて、100mlの空気の透過時間を任意の3箇所について測定した。3箇所の透過時間の平均値を多孔質フィルムの透気抵抗Ga、多孔フィルムの透気抵抗Gbとした。
B.透気抵抗変化率
また、下記に定義する透気抵抗変化率(Gd)を算出し、下記基準にて評価した。
Gd={(Ga−Gb)/Gb}×100
ここで、Gdは透気抵抗変化率(%)、Gaは多孔質フィルムの透気抵抗(秒/100ml)、Gbは多孔フィルムの透気抵抗(秒/100ml)を意味する。
◎:Gdが20%以下
○:Gdが20%より大きく、30%以下
△:Gdが30%より大きく、50%以下
△△:Gdが50%より大きく、100%以下
×:Gdが100%より大きい
(4)多孔フィルムの表面孔径および表面孔径比率
走査型電子顕微鏡の試料台に固定した多孔フィルムの表面を、スパッタリング装置を用いて金スパッタを施し、走査型電子顕微鏡を用いて倍率10,000倍にて観察した。得られた観察像について画像解析装置を用いて表面の孔による空隙部分の形状の中での最大長さおよび最小長さを求め、その平均値をその孔の孔径とした。上記の操作で観察像中の100個の孔について孔径を求めた。
求めた孔径のうち0.01μm以上0.5μm未満の孔径の孔の数を(A)、0.5μm以上10μm未満の口径の孔の数を(B)とし、下記式に当てはめ、そのサンプルの表面孔径比率を算出した。
表面孔径比率=(A)/(B)
(5)耐熱性(熱収縮率)
多孔質フィルムまたは多孔フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。サンプルに100mmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊して150℃に加熱した熱風オーブン内に40分間設置し加熱処理を行った。熱処理後、放冷し、標線間距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から熱収縮率を算出し、寸法安定性の指標とした。測定は長手方向および幅方向に5点の測定を実施して平均値で評価を行った。
(6)剥離強度
多孔質フィルムをフィルム長手方向に200mm、フィルム幅方向に25mmの短冊状にサンプリングし、その一端Aをテープ等で剥離した後、100mmまで手で剥離し、剥離した2枚の端Aを引っ張り試験機(島津製作所製“AG−100A”)のチャックにJIS K−7127に準じて固定し、速度100mm/minで剥離させたときの荷重を読み取るとともに、剥離箇所の破壊形態を目視にて確認した。上記測定を1つのサンプルにつき5点測定し、その平均について評価した。
(7)粒子層中の粒子の平均粒子径Aおよびアスペクト比AR
走査型電子顕微鏡の試料台に固定した多孔質フィルムを、フィルム長手方向の断面がみえるようにスパッタリング装置を用いて減圧度10−3Torr、電圧0.25KV、電流12.5mAの条件にて10分間、イオンエッチング処理を施して断面を切削した後、走査型電子顕微鏡SEMを用い、観察倍率1,000倍にて観察を行うとともに、微小部X線分析(EDX)を用いて粒子層中の粒子の特有の元素について分析とマッピングを行い、そのマッピング図より粒子の形状を画像化した。得られた画像について、画像解析ソフトウェアを用いて、粒子の長径および短径を求め、その値を下記式に挿入し、粒子層中の個々の粒子の粒子径Anおよびアスペクト比ARnを算出した。なお粒子径Anおよびアスペクト比ARnは粒子100個について算出し、その平均を粒子層中の粒子の平均粒子径Aおよびアスペクト比ARとした。
粒子径An=(長径+短径)/2
アスペクト比ARn=長径/短径
(8)耐熱多孔層中の粒子の平均粒子径B
走査型電子顕微鏡の試料台に固定した多孔質フィルムを、フィルム長手方向の断面がみえるようにスパッタリング装置を用いて減圧度10−3Torr、電圧0.25KV、電流12.5mAの条件にて10分間、イオンエッチング処理を施して断面を切削した後、走査型電子顕微鏡SEMを用い、観察倍率1,000倍にて観察を行うとともに、微小部X線分析(EDX)を用いて耐熱多孔層中の粒子の特有の元素について分析とマッピングを行い、そのマッピング図より粒子の形状を画像化した。得られた画像について、画像解析ソフトウェアを用いて、面積円相当径を求め、その値を耐熱粒子の粒子径Bnとした。ここで面積円相当径は個々の外接円の直径である。粒子径Bnは粒子100個について算出し、その平均を耐熱多孔層中の粒子の平均粒子径Bとした。
(実施例1)
多孔フィルムの原料として、ポリプロピレン(住友化学(株)製、FLX80E4)を94.5質量%、エチレン−オクテン−1共重合体であるダウ・ケミカル製 Engage8411(メルトインデックス:18g/10分、以下、単にPE−1と表記)を5質量%に加えて、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、Nu−100、以下、単にβ晶核剤と表記)を0.3質量%、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を、各0.1質量%をこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料Aとした。
このチップ原料Aを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、25μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして厚み230μm、幅250mmの未延伸シートを得た。ついで、120℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。一旦冷却後、次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、150℃で6倍に延伸した。そのまま、幅方向に10%のリラックスを掛けながら160℃で6秒間の熱処理を行い、厚み20μmの多孔フィルムを得た。得られた多孔フィルムの透気抵抗は150秒/100ml、空孔率は65%であった。
次に、冷却管と窒素ガス導入口が備えられた4つ口フラスコに、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物1.0モルと、o−トリジンジイソシアネート0.95モルを固形分濃度が20質量%となるようにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合し、触媒としてジアザビシクロウンデセン0.01モルを加えて攪拌し、120℃で4時間反応させてポリイミド濃度が20質量%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液10質量部と、ポリエチレングリコール(三洋化成社製、商品名「PEG−400」)12質量部とNMP78質量部をディスパーにて攪拌・混合し、塗液スラリーを得た。
A4サイズのガラス板を用意し、その上に長方形に切り取った多孔フィルムを置き、短辺部の片側をテープでガラス板に固定した。ついで該多孔フィルムの上に、直径20mmのステンレス製塗工バーを、多孔フィルムとのクリアランスが0.01mmになるように平行に配置した。塗工バー手前の多孔フィルム上に上記の塗液スラリーを供給した後、両手でバーの両端を持ち、バーを手前に動かして多孔フィルム全体に塗液スラリーを塗工した。ついで、塗布後、25℃、40%RH雰囲気中を20秒かけて通過させ、次に水浴中に浸漬し、水浴から取り出して、100℃で15分間乾燥して耐熱多孔層を形成し、多孔質フィルムを得た。
(実施例2)
耐熱樹脂として、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(帝人テクノプロダクツ社製、コーネックス)10質量%を、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)が質量比50:50となっている混合溶媒に溶解させ、塗液スラリーを調製した。
ついで、実施例1の多孔フィルム上に、実施例1に記載の手法にて上記塗液スラリーを塗工・多孔化・乾燥して耐熱多孔層を形成し、多孔質フィルムを得た。
(実施例3)
耐熱樹脂として、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(帝人テクノプロダクツ社製、コーネックス)10質量%と、耐熱粒子としてα−アルミナ(岩谷化学工業社製、SA−1、粒子径0.8μm)30質量部をジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)が質量比50:50となっている混合溶媒に溶解・分散させ、塗液スラリーを調製した。
ついで、実施例1の多孔フィルム上に、実施例1に記載の手法にて上記塗液スラリーを塗工・多孔化・乾燥して耐熱多孔層を形成し、多孔質フィルムを得た。
(実施例4)
実施例3の塗液スラリーを用いて、多孔フィルム塗工バーとのクリアランスが0.01mmになるようにした他は実施例1と同様にして耐熱多孔層を形成し、多孔質フィルムを得た。
(実施例5)
実施例3の塗液スラリーを用いて、多孔フィルム塗工バーとのクリアランスが0.1mmになるようにした他は実施例1と同様にして耐熱多孔層を形成し、多孔質フィルムを得た。
(実施例6)
実施例3のα−アルミナの代わりに、シリカ(電気化学工業(株)、SFP−30、粒子径0.7μm)30質量部を添加したほかは同様にして塗液スラリーを調製し、実施例1に記載の手法にて上記塗液スラリーを塗工・多孔化・乾燥して耐熱多孔層を形成し、多孔質フィルムを得た。
(実施例7)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に
2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸 941g(5.0モル)、4−アミノフェノール273g(2.5モル)、イソフタル酸 415.3g(2.5モル)および無水酢酸1123g(11モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。その後、留出する副生酢酸および未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下250℃で3時間保持し、固相で重合反応を進めた。得られた粉末は350℃で偏光顕微鏡により液晶相に特有のシュリーレン模様が観察された。また前記粉末(液晶ポリエステル)10gをNMP90gに加え、120℃に加熱して完全に溶解し塗液スラリーを得た。
ついで、実施例1の多孔フィルム上に、実施例1に記載の手法にて上記塗液スラリーを塗工し、ガラス板ごと、70℃のオーブン内に30分間静置し、溶媒を蒸発させた後、フィルムをガラス板から外して、樹脂製バットを用いて、通水下5分間水洗し、A4サイズの金枠に固定して、金枠ごと100℃のオーブン内で5分間乾燥して耐熱多孔層を形成し、多孔質フィルムを得た。
(実施例8)
耐熱樹脂としてポリフッ化ビニリデン(アルケマ社製、 Kyner PVDF LBG2)10質量部をアセトン90質量部と混合・溶解させて塗液スラリーを調製した。ついで、実施例1の多孔フィルム上に、実施例1に記載の手法にて上記塗液スラリーを塗工・多孔化・乾燥して耐熱多孔層を形成し、多孔質フィルムを得た。
(実施例9)
実施例1と同様にしてチップ原料Aを準備した。また、多孔フィルムの表面に形成する粒子層用の原料として、ポリプロピレン(住友化学(株)製、FLX80E4)を94.5質量%、エチレン−オクテン−1共重合体であるダウ・ケミカル製 Engage8411(メルトインデックス:18g/10分、以下、単にPE−1と表記)を5質量%に加えて、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、Nu−100、以下、単にβ晶核剤と表記)を0.3質量%、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を、各0.1質量%、ベーマイト(河合石灰工業製、セラシュールBMB、アスペクト比2.0、粒子径0.5μm)を10質量%をこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料Bとした。
次に、2台の単軸の押出機に原料チップAおよびBをそれぞれ供給し、220℃で溶融押出し、ポリマー管の途中に設置した25μmカットの焼結フィルターにて異物を除去した後、積層用マニホールドを用いて溶融状態で積層し、Tダイより120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして厚み230μm、幅250mmの未延伸シートを得た。ついで、120℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。一旦冷却後、次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、145℃で6倍に延伸した。そのまま、幅方向に10%のリラックスを掛けながら155℃で6秒間の熱処理を行い、厚み20μmの多孔フィルムを得た。得られた多孔フィルムは片面に粒子層を有しており、粒子層の厚みは2μmであった。この多孔フィルムの透気抵抗は155秒/100ml、空孔率は63%であった。
この多孔フィルムの粒子層を形成した面に、実施例1に記載の手法にて実施例3に記載の塗液スラリーを塗工・多孔化・乾燥して耐熱多孔層を形成し、多孔質フィルムを得た。
(実施例10)
実施例1と同様にしてチップ原料Aを準備した。また、多孔フィルムの表面に形成する粒子層用の原料として、ポリプロピレン(住友化学(株)製、FLX80E4)を94.5質量%、エチレン−オクテン−1共重合体であるダウ・ケミカル製 Engage8411(メルトインデックス:18g/10分、以下、単にPE−1と表記)を5質量%に加えて、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、Nu−100、以下、単にβ晶核剤と表記)を0.3質量%、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を、各0.1質量%、アルミナ(大明化学工業製、TM−DA、アスペクト比1、粒子径0.2μm)を10質量%をこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料Cとした。
次に、2台の単軸の押出機に原料チップAおよびCをそれぞれ供給し、220℃で溶融押出し、ポリマー管の途中に設置した25μmカットの焼結フィルターにて異物を除去した後、積層用マニホールドを用いて溶融状態で積層し、Tダイより120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして厚み230μm、幅250mmの未延伸シートを得た。ついで、120℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。一旦冷却後、次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、145℃で6倍に延伸した。そのまま、幅方向に10%のリラックスを掛けながら155℃で6秒間の熱処理を行い、厚み20μmの多孔フィルムを得た。得られた多孔フィルムは片面に粒子層を有しており、粒子層の厚みは2μmであった。この多孔フィルムの透気抵抗は153秒/100ml、空孔率は64%であった。
この多孔フィルムの粒子層を形成した面に、実施例1に記載の手法にて実施例3に記載の塗液スラリーを塗工・多孔化・乾燥して耐熱多孔層を形成し、多孔質フィルムを得た。
(比較例1)
実施例1で耐熱多孔層を形成する前の多孔フィルムをそのまま評価した。
(比較例2)
ポリメチルペンテン(三井化学(株)、TPX RT−18)47.5質量%、耐熱粒子としてシリカ(電気化学工業(株)、SFP−30、粒子径0.7μm)50質量%、可塑剤(豊国精油(株)、ハイカスターワックス HCOP)2.5質量%を、テクノベル株式会社製の同方向2軸押出機(口径30mmφ、L/D=30)に投入し、280℃で混練し、耐熱多孔層用のチップ原料Bを作製した。
実施例1のチップ原料Aをテクノベル株式会社製の同方向2軸押出機(口径30mmφ、L/D=30)に、チップ原料Bを東芝機械株式会社製の同方向2軸押出機(口径40mmφ、L/D=32)に投入し、280℃で溶融混合後、2種2層のフィードブロックを通じてTダイより押出し、125℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて、幅300mm、厚み180μmの未延伸シートを得た。ついで、90℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4.0倍延伸を行った。一旦冷却後、次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、130℃で4倍に延伸した。そのまま、幅方向に5%のリラックスを掛けながら130℃で6秒間の熱処理を行い、厚み25μmの耐熱多孔層が溶融積層されたフィルムを得た。
なお、上記フィルムについてはチップ原料Aにより形成された層を多孔フィルム、チップ原料Bにより形成された層を耐熱多孔層とする。
(比較例3)
ポリプロピレン(住友化学(株)製、FLX80E4)51.85質量%、プロピレンコポリマー(三井化学(株)製、タフマーXM)47.8質量%、酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15、0.1質量%、ステアリン酸カルシウムを0.1質量%配合し、ヘンシェルミキサー(商品名)で混合後、計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料Cとした。このチップ原料Cをリップ幅120mmのTダイを装備した20mm押出機に供給し、押出温度280℃、吐出量4kg/hで溶融し、Tダイのリップより膜状に押出し、未延伸シートの厚みをTダイのリップのクリアランスで制御し、80℃のキャストドラムで、ドラムとの非接触面にエアナイフにより空冷しながら固化し、幅100mm、厚さ270μmの未延伸シートを作成した。この未延伸シートを、フィルムストレッチャーを用いて縦方向(MD方向)を拘束しながら、延伸温度23℃、変形速度200%/秒、延伸倍率6倍の条件で横方向(TD方向)に延伸したのち、更に、延伸温度100℃、変形速度1,000%/秒、延伸倍率5.5倍の条件で縦方向(MD方向)に延伸し厚み20μmの多孔フィルムを得た。得られた多孔フィルムの透気抵抗は150s/100ml、空孔率は45%であった。ついで、上記の多孔フィルム上に、実施例2に記載の塗液スラリーを実施例1の手法にて塗工・多孔化・乾燥して耐熱多孔層を形成し、多孔質フィルムを得た。
実施例1〜10、比較例1〜3のサンプルについての評価結果を表1に示す。
Figure 2013163806
本発明の多孔質フィルムは、β晶形成能を有するポリプロピレン樹脂多孔フィルムに耐熱樹脂からなる耐熱多孔層を塗工により積層することで、優れた耐熱性を有し、高い安全性を担保できることから、蓄電デバイス、特に非水電解質二次電池であるリチウムイオン電池のセパレータとして好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. ポリプロピレン樹脂が主成分であり、β晶形成能を有する多孔フィルムに、耐熱樹脂を主成分とする耐熱多孔層を積層した多孔質フィルムであり、多孔フィルムと耐熱多孔層の界面での剥離強度が50〜300g/25mmである多孔質フィルム。
  2. 次式で定義される透気抵抗変化率(Gd)が0〜100%である、請求項1に記載の多孔質フィルム。
    Gd={(Ga−Gb)/Gb}×100
    Gd:透気抵抗変化率(%)
    Ga:多孔質フィルムの透気抵抗(秒/100ml)
    Gb:多孔フィルムの透気抵抗(秒/100ml)
  3. 耐熱樹脂がポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリエステル、ポリスルホン、および、ポリフッ化ビニリデンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の多孔質フィルム。
  4. 150℃における長手方向および幅方向の収縮率の平均値が5%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質フィルム。
  5. 耐熱多孔層に耐熱粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質フィルムを用いてなるセパレータ。
  7. 請求項6に記載のセパレータを用いた電池。
  8. ポリプロピレンが主成分でありβ晶形成能を有する多孔フィルムに、耐熱樹脂を主成分とする耐熱多孔層を塗工したのち、溶媒を除去して多孔化する請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質フィルムの製造方法。
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