JP2010215901A - 多孔性ポリプロピレンフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】 高い透気性、空孔率を維持したまま、フィルム中のピンホールなどの欠陥の原因となる異物を除去するためのフィルターを高精度にすることができ、蓄電デバイスのセパレータに用いた際に、短絡などの欠陥を起しにくい多孔性ポリオレフィンフィルムを提供すること。
【解決手段】 貫通孔が形成されてなり、β晶形成能が60〜90%であり、かつメルトフローレート(230℃、2.16kg)が10〜20g/10分であるポリプロピレン樹脂からなる多孔性ポリプロピレンフィルムとする。
【選択図】 なし
【解決手段】 貫通孔が形成されてなり、β晶形成能が60〜90%であり、かつメルトフローレート(230℃、2.16kg)が10〜20g/10分であるポリプロピレン樹脂からなる多孔性ポリプロピレンフィルムとする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、高透気性、高空孔率に優れるだけでなく、フィルム中の粗大ボイド、異物欠点が極めて少ない多孔性ポリプロピレンフィルムに関する。詳しくは、高精度フィルターを用いることで、フィルム中の欠陥の原因を除去し、なおかつ高い透気性、空孔率と高い機械強度を両立させた、蓄電デバイス用セパレータ用途に好適な多孔性ポリプロピレンフィルムに関する。
ポリプロピレンフィルムは優れた機械特性、熱特性、電気特性、光学特性により、工業材料用途、包装材料用途、光学材料用途、電機材料用途など多様な用途で使用されている。このポリプロピレンフィルムに空隙を設け、多孔化した多孔性ポリプロピレンフィルムについても、ポリプロピレンフィルムとしての特性に加えて、透過性や低比重などの優れた特性を併せ持つことから、電池や電解コンデンサーのセパレータや各種分離膜、衣料、医療用途における透湿防水膜、フラットパネルディスプレイの反射板や感熱転写記録シートなど多岐に渡る用途への展開が検討されている。
ポリプロピレンフィルムを多孔化する手法としては、様々な提案がなされている。多孔化の方法を大別すると湿式法と乾式法に分類することができる。湿式法とは、ポリプロピレンをマトリックス樹脂とし、シート化後に抽出する被抽出物を添加、混合し、被抽出物の良溶媒を用いて添加剤のみを抽出することで、マトリックス樹脂中に空隙を生成せしめる方法であり、種々の提案がなされている(たとえば、特許文献1参照)。一方、乾式法としては、たとえば、溶融押出時に低温押出、高ドラフト比を採用することにより、シート化した延伸前のフィルム中のラメラ構造を制御し、これを一軸延伸することでラメラ界面での開裂を発生させ、空隙を形成する方法(所謂、ラメラ延伸法)が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。また、乾式法として、無機粒子またはマトリックス樹脂であるポリプロピレンなどに非相溶な樹脂を粒子として多量添加し、シートを形成して延伸することにより粒子とポリプロピレン樹脂界面で開裂を発生させ、空隙を形成する方法も提案されている(たとえば、特許文献3参照)。さらには、ポリプロピレンの結晶多形であるα型結晶(α晶)とβ型結晶(β晶)の結晶密度の差と結晶転移を利用してフィルム中に空隙を形成させる、所謂β晶法と呼ばれる方法の提案も数多くなされている(たとえば、特許文献4〜6参照)。
上記した各種方法で製造した多孔性ポリプロピレンフィルムを蓄電デバイス、特にリチウムイオン二次電池用のセパレータとして用いる場合、特にβ晶法は通常二軸延伸により空隙を形成することから、他の方法に比較して、高い空孔率を達成することができる。そのため、電池の内部抵抗を低くすることができ、特に大電流を必要とする高出力用の蓄電デバイス用のセパレータに適しているとされている(たとえば、特許文献7参照)。しかしながら、空孔率を高くできるためにピンホールが形成し易くなり、二次電池用のセパレータとして用いる場合、短絡による発熱や自己放電しやすくなるという問題が生じやすかった。
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、高い透気性、空孔率を維持したまま、フィルム中のピンホールなどの欠陥の原因となる異物を除去するためのフィルターを高精度にすることができ、蓄電デバイスのセパレータに用いた際に、短絡などの欠陥を起しにくい多孔性ポリプロピレンフィルムを提供することにある。
上記した課題は、貫通孔が形成されてなり、β晶形成能が60〜90%であり、かつメルトフローレート(230℃、2.16g)が10〜20g/10分であるポリプロピレン樹脂からなる多孔性ポリプロピレンフィルムによって達成できる。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムは、高い透気性、空孔率を有することからリチウムイオン電池用セパレータに好適な優れたイオン電導性を発現し、なおかつフィルターを高精度にしても生産性、安全性を犠牲にすることなく製造することが可能であり、高安全・高性能なセパレータとして好適に使用することができる。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムは、フィルムの両表面を貫通し、透気性を有する孔(以下、貫通孔という)を有している。この貫通孔は、例えば二軸延伸によりフィルム中に形成することが好ましい。具体的な方法としては、β晶法を挙げることができる。これにより、均一物性、薄膜化を達成することができる。
β晶法を用いてフィルムに貫通孔を形成するためには、ポリプロピレン樹脂のβ晶形成能が60〜90%であることが好ましい。β晶形成能が60%未満ではフィルム製造時にβ晶量が少ないためにα晶への転移を利用してフィルム中に形成される空隙数が少なくなり、その結果、透過性の低いフィルムしか得られない場合がある。一方、β晶形成能が90%を超えるようにするのは、後述するβ晶核剤を多量に添加したり、使用するポリプロピレン樹脂の立体規則性を極めて高くしたりする必要があり、製膜安定性が悪化するなど工業的な実用価値が低い。工業的にはβ晶形成能は60〜85%が好ましく、65〜80%が特に好ましい。
β晶形成能を60〜90%に制御するためには、アイソタクチックインデックスの高いポリプロピレン樹脂を使用したり、β晶核剤と呼ばれる、ポリプロピレン樹脂中に添加することでβ晶を選択的に形成させる結晶化核剤を添加剤として用いたりすることが好ましい。β晶核剤としては種々の顔料系化合物やアミド系化合物などを挙げることができるが、特に特開平5−310665号公報に開示されているアミド系化合物を好ましく用いることができる。β晶核剤の添加量としては、ポリプロピレン樹脂全体を基準とした場合に、0.05〜0.5質量%であることが好ましく、0.1〜0.3質量%であればより好ましい。
ここで、本発明に用いるアミド系化合物はポリプロピレン中に針状結晶形態で存在することが多孔性ポリプロピレンフィルムを形成する観点で好ましい態様である。しかしながら、ポリプロピレン樹脂の溶融押出時の温度が240℃を超え300℃以下の範囲であると、アミド系化合物のポリプロピレン樹脂への溶解度と熱安定性の観点から、樹脂中に分散した針状結晶が短軸および長軸方向に成長し、最終的に板状結晶形態となってしまうことがある。板状結晶となったアミド系化合物はβ晶核剤としての機能は有するものの、針状結晶のものと異なり溶融押出時のせん断での流れ方向への長軸配向が起こらないため、ポリプロピレンのβ晶の特異的な結晶配向が起こらなくなり、延伸時の多孔化が充分でなくなる場合がある。加えて、フィルムに板状結晶が流出した場合、粗大ボイドや貫通ピンホールの原因となる可能性がある。したがって、本発明ではポリプロピレンを溶融押出する際の温度は200〜240℃であることが好ましい。なお、押出温度が300℃を超えた場合、ポリプロピレンの熱劣化が起こり、製膜加工性が著しく低下することがある。
通常のポリプロピレンフィルムの場合、使用するポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと表記する、測定条件は230℃、2.16kg)は1〜3g/10分のものを用いることが力学的性質などの観点から好ましく、その場合、溶融押出温度を250〜280℃に設定することが通常であった。しかしながら、上記のとおり、アミド系化合物を添加した場合、当該押出温度では板状結晶化が進行してしまいがちである。一方で、上記した本発明の好ましい押出温度である240℃以下とした場合、MFRが1〜3g/10分では溶融粘度が高くなりすぎて、フィルターでの背圧が大きくなりすぎて安全に押出を行うことが困難になる場合や、押出機の出力を超えるトルクが発生してしまい、押出機の駆動が止まってしまう可能性があった。
上記のような問題点を解消するため、本発明の多孔性ポリプロピレンを形成するポリプロピレン樹脂は、MFRが10〜20g/10分の範囲の樹脂であることが好ましく、さらにアイソタクチックポリプロピレン樹脂であることが好ましい。MFRが10g/10分未満であると、フィルター精度を高くした際にフィルターに加わる背圧が高くなりすぎてフィルター精度を劣化させる場合や、滞留時間が長くなりすぎて樹脂や添加物の熱変性を引き起こす場合があり、フィルター精度を落とすと、得たフィルム中にピンホールが形成される可能性が高くなるという問題がある。一方、MFRが20g/10分を超えると、分子量が低くなりすぎるため、延伸時のフィルム破れが起こりやすくなり、二軸延伸フィルムを得ることが困難となる場合がある。より好ましくは、MFRが12〜16g/10分である。
本発明において、上記ポリプロピレン樹脂のMFRを10〜20g/10分の範囲とするには、MFRが0.5〜5g/10分のポリプロピレン樹脂(以下、低MFR樹脂という)とMFRが15〜50g/10分のポリプロピレン樹脂(以下、高MFR樹脂という)を混合することが好ましい。このように混合した樹脂を用いることにより、製膜安定性を向上させることができる。ここで、前者の低MFR樹脂と後者の高MFR樹脂の混合比率は、混合後のMFRが10〜20g/10分となるように適宜変更可能であるが、低MFR樹脂:高MFR樹脂が10:90〜60:40(質量比)とすることが製膜安定性の観点から好ましい。このことは、同じMFRの樹脂であっても、低MFR樹脂と高MFR樹脂を混合した樹脂を用いる方が、ポリプロピレン樹脂の分子量分布が広くなり、高分子量成分がより多く存在することが製膜安定性に寄与していると推測される。一方で、分子量分布が広くなると結晶化速度のバラツキが大きくなってしまい、フィルム中でのβ晶分布にもバラツキができてしまい、その結果貫通孔形成に影響してしまい空孔率斑の原因になる場合がある。分子量分布によるバラツキを低減するためには、フィルム製造時にMFRの異なる樹脂をドライブレンドして押出するのではなく、事前に二軸押出機を使用するなどして、コンパウンドしておくことが好ましく、さらに、押出後のシート化温度をより精密に制御し、β晶を効率よく生成させることが重要となる。
また、アイソタクチックポリプロピレン樹脂を用いる場合、アイソタクチックインデックスは90〜99.9%であることが好ましい。アイソタクチックインデックスが90%未満であると、樹脂の結晶性が低く、高い透気性を達成するのが困難な場合がある。
本発明で用いるポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン樹脂を用いることができるのはもちろんのこと、製膜工程での安定性や造膜性、物性の均一性の観点から、ポリプロピレンにエチレン成分やブテン、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィン成分を5質量%以下の範囲で共重合した樹脂を用いることもできる。なお、ポリプロピレンへのコモノマー(共重合成分)の導入形態としては、ランダム共重合でもブロック共重合でもいずれでも構わない。
本発明で用いるポリプロピレン樹脂は、二軸延伸を行って貫通孔を形成する場合、延伸時の空隙形成効率の向上や、孔径が拡大することによる透気性向上の観点から、ポリプロピレン80〜99質量部とエチレン・α−オレフィン共重合体20〜1質量部の質量比率とした混合物とすることが好ましい。ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体としては直鎖状低密度ポリエチレンや超低密度ポリエチレンを挙げることができ、中でも、オクテン−1を共重合した、融点が60〜90℃の共重合ポリエチレン樹脂(共重合PE樹脂)を好ましく用いることができる。この共重合ポリエチレンは市販されている樹脂、たとえば、ダウ・ケミカル製“Engage(エンゲージ)(登録商標)”(タイプ名:8411、8452、8100など)を挙げることができる。
上記共重合ポリエチレン樹脂は本発明のフィルムを構成するポリプロピレン樹脂全体を100質量%としたときに、1〜10質量%含有することが以下に記載する空孔率や平均貫通孔径を好ましい範囲に制御することが容易となるので好ましい。フィルムの機械特性の観点からは1〜7質量%であればより好ましい。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムはセパレータとして用いた際のイオン電導性の観点から空孔率が60〜80%であることが好ましい。空孔率が60%未満ではセパレータとして使用したときに電気抵抗が大きくなり、高出力用途に用いると発熱してしまいエネルギーを損失する場合がある。一方、空孔率が80%を超えると、フィルムの強度が低くなりすぎてしまい、電池内部に収納するために電極と共に捲回する際に破断してしまうなど、取扱性に劣る場合がある。優れた電池特性と強度を両立させる観点からフィルムの空孔率は65〜80%であればより好ましく、65〜75%であれば特に好ましい。
フィルムの空孔率をかかる好ましい範囲に制御する方法としては、β晶法によりポリプロピレンフィルムを多孔化するに際して、上述したように、ポリプロピレン樹脂と共重合ポリエチレン樹脂とを特定比率で混合した樹脂を用いることで達成しやすくなり、さらに、後述する特定の二軸延伸条件を採用することにより効果的に達成することができる。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムはセパレータとして用いた際に優れた電池特性と安全性を両立する観点から平均貫通孔径が40〜100nmであることが好ましい。平均貫通孔径が40nm未満では、電気抵抗が高くなり、エネルギーロスが大きくなる場合があり、平均貫通孔径が100nmを超えると、自己放電しやすくなる場合がある。平均貫通孔径としては、50〜90nmであればより好ましい。
平均貫通孔径をかかる好ましい範囲に制御する方法としては、上記した空孔率と同様に、ポリプロピレン樹脂と共重合ポリエチレン樹脂とを特定比率で混合した樹脂を用いることで達成しやすくなり、さらに、後述する特定の二軸延伸条件を採用することにより効果的に達成することができる。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムは、フィルム総厚みが10〜50μmであることが好ましい。総厚みが10μm未満では使用時にフィルムが破断する場合があり、50μmを超えると蓄電デバイス内に占める多孔性フィルムの体積割合が高くなりすぎてしまい、高いエネルギー密度を得ることができなくなる。フィルム総厚みは12〜30μmであればより好ましく、14〜25μmであればなお好ましい。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤や無機あるいは有機粒子からなる滑剤、さらにはブロッキング防止剤や充填剤、非相溶性ポリマーなどの各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリプロピレン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して酸化防止剤を0.01〜0.5質量部添加することは好ましいことである。
以下に本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムの製造方法を具体的に説明する。なお、本発明のフィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
まず、ポリプロピレン樹脂として、MFR2g/10分の市販のホモポリプロピレン樹脂35質量部、同じく市販のMFR30g/10分のポリプロピレン樹脂65質量部、さらにメルトインデックス18g/10分の超低密度ポリエチレン樹脂3質量部にβ晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド0.2質量部を混合し、二軸押出機を使用して予め所定の割合で混合した原料を準備する。この際、溶融温度は280〜300℃とすることが好ましい。
次に、上述の混合原料を単軸の溶融押出機に供給し、200〜230℃にて溶融押出を行う。そして、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて異物や変性ポリマーなどを除去した後、Tダイよりキャストドラム上に吐出し、未延伸シートを得る。この際、使用可能なフィルターは、使用する樹脂の溶融粘度により制限されるが、本発明のMFRを特定の範囲とすることで、高精度の、たとえば精度10μmカットのようなフィルターを用いることが可能となる。また、未延伸シートを得る際のキャストドラムは表面温度が105〜130℃であることが、未延伸シート中のβ晶分率を高く制御する観点から好ましい。この際、特にシートの端部の成形が後の延伸性に影響するため、端部にスポットエアーを吹き付けてドラムに密着させることが好ましい。また、シート全体のドラム上への密着状態に基づき、必要に応じて全面にエアナイフを用いて空気を吹き付けてもよい。
次に得られた未延伸シートを二軸延伸してフィルム中に空孔(貫通孔)を形成する。二軸延伸の方法としては、フィルム長手方向に延伸後幅方向に延伸、あるいは幅方向に延伸後長手方向に延伸する逐次二軸延伸法、またはフィルムの長手方向と幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸法などを用いることができるが、高透気性フィルムを得やすいという点で逐次二軸延伸法を採用することが好ましく、特に長手方向に延伸後、幅方向に延伸することが好ましい。
具体的な延伸条件としては、まず未延伸シートを長手方向に延伸可能な温度に制御する。温度制御の方法は、温度制御された回転ロールを用いる方法、熱風オーブンを使用する方法などを採用することができる。長手方向の延伸温度としてはフィルム特性とその均一性の観点から、110〜140℃、さらに好ましくは120〜135℃の温度を採用することが好ましい。延伸倍率としては4〜6倍、より好ましくは4.5〜5.8倍である。ここで、特に高空孔率フィルムを得ることができる長手方向の延伸温度としては、120〜125℃である。また、延伸倍率を高くするほど高空孔率化するが、6倍を超えて延伸すると、次の横延伸工程でフィルム破れが起きやすくなってしまう場合がある。
次に、一軸延伸ポリプロピレンフィルムをステンター式延伸機にフィルム端部を把持させて導入する。そして、好ましくは130〜155℃に加熱して幅方向に6〜12倍、より好ましくは6〜10倍延伸を行う。なお、このときの横延伸速度としては500〜6,000%/分で行うことが好ましく、1,000〜5,000%/分であればより好ましい。また、幅方向の延伸で高空孔率を達成するためには、特に145〜150℃で延伸することが好ましく、延伸速度が2,000%/分以下と低速にすることが特に好ましい。
ついで、そのままステンター内で熱固定を行うが、その温度は横延伸温度以上160℃以下が好ましく、熱固定時間は5〜30秒間であることが好ましい。さらに、熱固定時にはフィルムの長手方向および/もしくは幅方向に弛緩させながら行ってもよく、特に幅方向の弛緩率を7〜12%とすることが、熱寸法安定性の観点から好ましい。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムは、優れた透気性、空孔率を有するだけでなく、フィルム中の粗大ボイド、異物欠点を極めて少なく制御することが可能であることから、特に安全性への要求の厳しい、リチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池のセパレータとして好ましく用いることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
(1)β晶形成能
樹脂またはフィルム5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から260℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)し、10分間保持した後、20℃まで10℃/分で冷却する。5分保持後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観測される融解ピークにについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、高温側の平坦部を基準に引いたベースラインとピークに囲まれる領域の面積から、それぞれの融解熱量を求め、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とする。なお、融解熱量の校正はインジウムを用いて行った。
樹脂またはフィルム5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から260℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)し、10分間保持した後、20℃まで10℃/分で冷却する。5分保持後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観測される融解ピークにについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、高温側の平坦部を基準に引いたベースラインとピークに囲まれる領域の面積から、それぞれの融解熱量を求め、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とする。なお、融解熱量の校正はインジウムを用いて行った。
β晶形成能(%) = 〔ΔHβ / (ΔHα + ΔHβ)〕 × 100
なお、ファーストランで観察される融解ピークから同様にβ晶の存在比率を算出することで、その試料の状態でのβ晶分率を算出することができる。
なお、ファーストランで観察される融解ピークから同様にβ晶の存在比率を算出することで、その試料の状態でのβ晶分率を算出することができる。
(2)メルトフローレート(MFR)
ポリプロピレン樹脂のMFRは、JIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定する。ポリエチレン樹脂は、JIS K 7210(1995)の条件D(190℃、2.16kg)に準拠して測定する。
ポリプロピレン樹脂のMFRは、JIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定する。ポリエチレン樹脂は、JIS K 7210(1995)の条件D(190℃、2.16kg)に準拠して測定する。
(3)空孔率
フィルムを30mm×40mmの大きさに切取り試料とした。電子比重計(ミラージュ貿易(株)製SD−120L)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて比重の測定を行った。測定を3回行い、平均値をそのフィルムの比重ρとした。
フィルムを30mm×40mmの大きさに切取り試料とした。電子比重計(ミラージュ貿易(株)製SD−120L)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて比重の測定を行った。測定を3回行い、平均値をそのフィルムの比重ρとした。
次に、測定したフィルムを280℃、5MPaで熱プレスを行い、その後、25℃の水で急冷して、空孔を完全に消去したシートを作成した。このシートの比重を上記した方法で同様に測定し、平均値を樹脂の比重(d)とした。なお、後述する実施例においては、いずれの場合も樹脂の比重dは0.91であった。フィルムの比重と樹脂の比重から、以下の式により空孔率を算出した。
空孔率(%) = 〔( d − ρ ) / d 〕 × 100
(4)平均貫通孔径
多孔性フィルムの平均貫通孔径は、ASTM E1294−89(1999年)(ハーフドライ法)に準じ、自動細孔径分布測定器(POROUS MATERIALS製 PERM−POROMETER)を用いて測定した。なお、測定条件は以下の通りである。
(4)平均貫通孔径
多孔性フィルムの平均貫通孔径は、ASTM E1294−89(1999年)(ハーフドライ法)に準じ、自動細孔径分布測定器(POROUS MATERIALS製 PERM−POROMETER)を用いて測定した。なお、測定条件は以下の通りである。
試験液 :3M製“フロリナート”FC−40
試験温度 :25℃
試験ガス :空気
解析ソフト:Capwin
測定条件 :Capillary Flow Porometry−Wet up, Dry downのdefault条件による自動測定
なお、本測定については、装置付属のマニュアルに詳述されている。測定は3回行い、平均値をそのフィルムの平均貫通孔径とした。
試験温度 :25℃
試験ガス :空気
解析ソフト:Capwin
測定条件 :Capillary Flow Porometry−Wet up, Dry downのdefault条件による自動測定
なお、本測定については、装置付属のマニュアルに詳述されている。測定は3回行い、平均値をそのフィルムの平均貫通孔径とした。
(5)透気性
フィルムから100mm×100mmの大きさの正方形を切取り試料とした。JIS P 8117(1998)のB形ガーレー試験器を用いて、23℃、相対湿度65%にて、100mlの空気の透過時間の測定を行った。測定は試料を替えて3回行い、透過時間の平均値をそのフィルムの透気性とした。なお、フィルムに貫通孔が形成されていることは、この透気性の値が有限値であることをもって確認できる。
フィルムから100mm×100mmの大きさの正方形を切取り試料とした。JIS P 8117(1998)のB形ガーレー試験器を用いて、23℃、相対湿度65%にて、100mlの空気の透過時間の測定を行った。測定は試料を替えて3回行い、透過時間の平均値をそのフィルムの透気性とした。なお、フィルムに貫通孔が形成されていることは、この透気性の値が有限値であることをもって確認できる。
(6)機械特性
フィルムを長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。なお、150mmの長さ方向をフィルムの長手方向に合わせた。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分としてフィルムの長手方向に引張試験を行った。サンプルが2%伸張した時にフィルムにかかっていた荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×幅(10mm))で除した値をF−2値とし、機械特性の指標とした。測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
フィルムを長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。なお、150mmの長さ方向をフィルムの長手方向に合わせた。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分としてフィルムの長手方向に引張試験を行った。サンプルが2%伸張した時にフィルムにかかっていた荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×幅(10mm))で除した値をF−2値とし、機械特性の指標とした。測定は各サンプル5回ずつ行い、その平均値で評価を行った。
なお、フィルムの厚みは以下のように測定を行った。フィルム厚みはダイヤルゲージ(測定子直径10mm、測定荷重100g)を用い、JIS K 7130(1992)A−2法に準じて、フィルムを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚みを測定した。その5ヶ所の値の平均値を10で割り、1枚あたりのフィルム厚みを算出し、その値をフィルム厚みとした。
(7)欠陥数
フィルムから100mm×100mmの大きさの正方形を切取り試料とした。試料を照明台(アズワン(株)製マイスタールーペLB型のルーペ部分を取り外して、下部ボックス照明のみ使用)に載せ、下部からの照明を当てた状態で、フィルムを肉眼観察し、輝点として識別される欠陥箇所を確認した。試料を替えて3回観察し、欠陥数の平均値を用いて以下の基準で評価を行った。
フィルムから100mm×100mmの大きさの正方形を切取り試料とした。試料を照明台(アズワン(株)製マイスタールーペLB型のルーペ部分を取り外して、下部ボックス照明のみ使用)に載せ、下部からの照明を当てた状態で、フィルムを肉眼観察し、輝点として識別される欠陥箇所を確認した。試料を替えて3回観察し、欠陥数の平均値を用いて以下の基準で評価を行った。
A級:欠陥が無かった
B級:欠陥数が3個未満
C級:欠陥数が3個以上
(8)押出安定性
溶融製膜時のフィルターに掛かる初期圧力と、フィルターの単位面積当りのポリマー押出量が640kg/m2となったときのフィルターに掛かる圧力との差をΔP(MPa)として、以下の基準で押出安定性を評価した。
B級:欠陥数が3個未満
C級:欠陥数が3個以上
(8)押出安定性
溶融製膜時のフィルターに掛かる初期圧力と、フィルターの単位面積当りのポリマー押出量が640kg/m2となったときのフィルターに掛かる圧力との差をΔP(MPa)として、以下の基準で押出安定性を評価した。
A級:ΔPが0.1MPa未満
B級:ΔPが0.1MPa以上0.3MPa未満
C級:ΔPが0.3MPa以上
(実施例1)
多孔性ポリプロピレンフィルムの原料樹脂として、MFR=2g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFSX20M1を35質量部、MFR=30g/10分のサンアロマー製ホモポリプロピレンPM900Aを65質量部に、共重合PE樹脂としてエチレン−オクテン−1共重合体(ダウ・ケミカル製 Engage8411、メルトインデックス:18g/10分)を3質量部に加えて、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15、0.1質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。得られたチップ原料のMFRは12g/10分であった。
B級:ΔPが0.1MPa以上0.3MPa未満
C級:ΔPが0.3MPa以上
(実施例1)
多孔性ポリプロピレンフィルムの原料樹脂として、MFR=2g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFSX20M1を35質量部、MFR=30g/10分のサンアロマー製ホモポリプロピレンPM900Aを65質量部に、共重合PE樹脂としてエチレン−オクテン−1共重合体(ダウ・ケミカル製 Engage8411、メルトインデックス:18g/10分)を3質量部に加えて、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15、0.1質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。得られたチップ原料のMFRは12g/10分であった。
このチップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、15μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。この時フィルターに掛かる背圧(初期圧力、以下同様)は10MPaであった。ついで、125℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、150℃で6.5倍に、延伸速度1,800%/分で延伸した。そのまま、幅方向に10%のリラックスを掛けながら155℃で7秒間の熱処理を行い、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
(実施例2)
実施例1で使用したMFR=2g/10分のポリプロピレンを30質量部、MFR=30g/10分のポリプロピレン樹脂をMFR=20g/10分のサンアロマー製ホモポリプロピレンPM802Aを70質量部に変更する以外は実施例1に記載した原料組成、製膜条件で多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。得られたチップ原料のMFRは10g/10分であり、溶融押出時にフィルターに掛かる背圧は11MPaであった。
実施例1で使用したMFR=2g/10分のポリプロピレンを30質量部、MFR=30g/10分のポリプロピレン樹脂をMFR=20g/10分のサンアロマー製ホモポリプロピレンPM802Aを70質量部に変更する以外は実施例1に記載した原料組成、製膜条件で多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。得られたチップ原料のMFRは10g/10分であり、溶融押出時にフィルターに掛かる背圧は11MPaであった。
(実施例3)
実施例1で使用したMFR=2g/10分のポリプロピレンを15質量部、同じく実施例1で使用したMFR=30g/10分のポリプロピレンを85質量部に変更する以外は実施例1に記載した原料組成、製膜条件で多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。得られたチップ原料のMFRは20g/10分であり、溶融押出時にフィルターに掛かる背圧は8MPaであった。
実施例1で使用したMFR=2g/10分のポリプロピレンを15質量部、同じく実施例1で使用したMFR=30g/10分のポリプロピレンを85質量部に変更する以外は実施例1に記載した原料組成、製膜条件で多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。得られたチップ原料のMFRは20g/10分であり、溶融押出時にフィルターに掛かる背圧は8MPaであった。
(実施例4)
MFR=15g/10分の(株)プライムポリマー製ホモポリプロピレンJ106Gを100質量部に、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、Nu−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15、0.1質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。得られたチップ原料のMFRは16g/10分であった。
MFR=15g/10分の(株)プライムポリマー製ホモポリプロピレンJ106Gを100質量部に、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、Nu−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15、0.1質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。得られたチップ原料のMFRは16g/10分であった。
このチップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、15μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから115℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。この時フィルターに掛かる背圧は7.5MPaであった。ついで、120℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4.8倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、150℃で6倍に、延伸速度2,000%/分で延伸した。そのまま、幅方向に10%のリラックスを掛けながら155℃で6秒間の熱処理を行い、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
(実施例5)
実施例1で得たチップ原料を用いて、以下のように製膜を行った。チップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、20μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから105℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。この時フィルターに掛かる背圧は8.5MPaであった。ついで、115℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、145℃で6倍に、延伸速度1,500%/分で延伸した。そのまま、幅方向に10%のリラックスを掛けながら160℃で6秒間の熱処理を行い、厚み20μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
実施例1で得たチップ原料を用いて、以下のように製膜を行った。チップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、20μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから105℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。この時フィルターに掛かる背圧は8.5MPaであった。ついで、115℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、145℃で6倍に、延伸速度1,500%/分で延伸した。そのまま、幅方向に10%のリラックスを掛けながら160℃で6秒間の熱処理を行い、厚み20μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例1)
実施例1で使用したMFR=2g/10分のポリプロピレンを50質量部、MFR=30g/10分のポリプロピレン樹脂を50質量部に変更する以外は実施例1と同様にしてチップ原料を準備した。得られたチップの原料のMFRは8g/10分であった。
実施例1で使用したMFR=2g/10分のポリプロピレンを50質量部、MFR=30g/10分のポリプロピレン樹脂を50質量部に変更する以外は実施例1と同様にしてチップ原料を準備した。得られたチップの原料のMFRは8g/10分であった。
このチップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、30μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。この時フィルターに掛かる背圧は8MPaであった。ついで、120℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4.8倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、145℃で6.5倍に、延伸速度2,100%/分で延伸した。そのまま、幅方向に10%のリラックスを掛けながら155℃で7秒間の熱処理を行い、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例2)
MFR=7g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンWF836DG3を100質量部に、共重合PE樹脂としてエチレン−オクテン−1共重合体(ダウ・ケミカル製 Engage8411、メルトインデックス:18g/10分)を3質量部に加えて、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、Nu−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15、0.1質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。得られたチップ原料のMFRは8g/10分であった。
MFR=7g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンWF836DG3を100質量部に、共重合PE樹脂としてエチレン−オクテン−1共重合体(ダウ・ケミカル製 Engage8411、メルトインデックス:18g/10分)を3質量部に加えて、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、Nu−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15、0.1質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。得られたチップ原料のMFRは8g/10分であった。
このチップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、15μmカットの焼結フィルターで異物を除去使用としたが、フィルターに掛かる背圧が15MPaを超えたため、ポリマー管の接続部でポリマー漏れが発生してしまい、製膜することができなかった。
そこで、フィルターの精度を30μmカットの焼結フィルターとすることで、背圧を6MPaに下げることができ、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。ついで、120℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4.8倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、150℃で6.5倍に、延伸速度1,800%/分で延伸した。そのまま、幅方向に10%のリラックスを掛けながら155℃で7秒間の熱処理を行い、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例3)
実施例1で使用したMFR=2g/10分のポリプロピレンを12質量部、MFR=30g/10分のポリプロピレン樹脂を88質量部に変更する以外は実施例1と同様にしてチップ原料を準備した。得られたチップの原料のMFRは22g/10分であった。
実施例1で使用したMFR=2g/10分のポリプロピレンを12質量部、MFR=30g/10分のポリプロピレン樹脂を88質量部に変更する以外は実施例1と同様にしてチップ原料を準備した。得られたチップの原料のMFRは22g/10分であった。
このチップを単軸押出機に供給して225℃で溶融押出を行い、15μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから115℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに13秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。この時フィルターに掛かる背圧は5MPaであった。ついで、125℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.2倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、148℃で7倍に、延伸速度2,200%/分で延伸を行おうとしたが、テンター内でフィルム破断が頻発してしまい、延伸フィルムを連続で得ることができなかった。
(比較例4)
MFR=30g/10分の(株)プライムポリマー製ホモポリプロピレンF109Vを100質量部に、共重合PE樹脂としてエチレン−オクテン−1共重合体(ダウ・ケミカル製 Engage8411、メルトインデックス:18g/10分)を3質量部に加えて、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、Nu−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15、0.1質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。得られたチップ原料のMFRは30g/10分であった。
MFR=30g/10分の(株)プライムポリマー製ホモポリプロピレンF109Vを100質量部に、共重合PE樹脂としてエチレン−オクテン−1共重合体(ダウ・ケミカル製 Engage8411、メルトインデックス:18g/10分)を3質量部に加えて、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、Nu−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15、0.1質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。得られたチップ原料のMFRは30g/10分であった。
このチップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、15μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。この時フィルターに掛かる背圧は3MPaであった。ついで、125℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に延伸を行おうとしたが、延伸を行おうとすると、すぐにフィルム破断が発生してしまい、延伸フィルムを得ることができなかった。
(比較例5)
実施例1において、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドを添加せずに原料を準備した。得たチップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、15μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。この時フィルターに掛かる背圧は10MPaであった。ついで、135℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、150℃で6倍に、延伸速度2,000%/分で延伸した。そのまま、幅方向に5%のリラックスを掛けながら155℃で6秒間の熱処理を行い、厚み5μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
実施例1において、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドを添加せずに原料を準備した。得たチップを単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、15μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。この時フィルターに掛かる背圧は10MPaであった。ついで、135℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、150℃で6倍に、延伸速度2,000%/分で延伸した。そのまま、幅方向に5%のリラックスを掛けながら155℃で6秒間の熱処理を行い、厚み5μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例6)
多孔性ポリプロピレンフィルムの原料樹脂として、MFR=2g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFSX20M1を100質量部に、共重合PE樹脂としてエチレン−オクテン−1共重合体(ダウ・ケミカル製 Engage8411、メルトインデックス:18g/10分)を3質量部に加えて、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15、0.1質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。得られたチップ原料のMFRは2g/10分であった。
多孔性ポリプロピレンフィルムの原料樹脂として、MFR=2g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFSX20M1を100質量部に、共重合PE樹脂としてエチレン−オクテン−1共重合体(ダウ・ケミカル製 Engage8411、メルトインデックス:18g/10分)を3質量部に加えて、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.15、0.1質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてチップ原料とした。得られたチップ原料のMFRは2g/10分であった。
このチップを単軸押出機に供給して270℃で溶融押出を行い、15μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして未延伸シートを得た。この時フィルターに掛かる背圧は10MPaであった。ついで、128℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、150℃で6.5倍に、延伸速度1,500%/分で延伸した。そのまま、幅方向に10%のリラックスを掛けながら155℃で7秒間の熱処理を行い、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。しかし、製膜開始直後からフィルターの背圧上昇が激しく、製膜1時間で上限を超えそうになったので、押出を停止した。
本発明の要件を満足する実施例では優れた透過性と優れた機械特性に加えて、低欠陥数を達成しており、蓄電デバイス用のセパレータとして好適に用いることが可能であると考えられる。一方、比較例では、欠陥数が多い、機械特性に劣り、製膜延伸性に劣る、さらには、透過性を有していないなど、蓄電デバイス用のセパレータとして用いることが困難である。
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、リチウムイオン電池用セパレータに好適な優れたイオン電導性と、安全性に優れており、セパレータとして好適に使用することができる。
Claims (6)
- 貫通孔が形成されてなり、β晶形成能が60〜90%であり、かつメルトフローレート(230℃、2.16kg)が10〜20g/10分であるポリプロピレン樹脂からなる多孔性ポリプロピレンフィルム。
- 前記ポリプロピレン樹脂がβ晶核剤を0.05〜0.5質量%含有している、請求項1に記載の多孔性ポリプロピレンフィルム。
- 前記ポリプロピレン樹脂が、メルトフローレート(230℃、2.16kg)が0.5〜5g/10分のポリプロピレン樹脂とメルトフローレート(230℃、2.16kg)が15〜50g/10分のポリプロピレン樹脂を混合したものである、請求項1または2に記載の多孔性ポリプロピレンフィルム。
- 空孔率が60〜80%である、請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性ポリプロピレンフィルム。
- 平均貫通孔径が40〜100nmである、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔性ポリプロピレンフィルム。
- 上記ポリプロピレン樹脂全体を100質量%としたときに、該ポリプロピレン樹脂中に融点が60〜90℃の共重合ポリエチレン樹脂を1〜10質量%含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の多孔性ポリプロピレンフィルム。
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