JP7306200B2 - 多孔性ポリオレフィンフィルム - Google Patents
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Description
本実施形態による多孔性ポリオレフィンフィルムの製造方法は、ポリプロピレンを含む第1の樹脂材料並びに溶剤を含む第1のポリオレフィン溶液と、ポリエチレンを含む第2の樹脂材料および溶剤を含む第2のポリオレフィン溶液とを溶融状態で積層する工程と、得られた積層体を延伸して延伸成形物を形成する工程を有する。ここで第1の樹脂材料および第2の樹脂材料はそれぞれ、前述のA層およびB層を形成するための樹脂材料である。第1の樹脂材料および第2の樹脂材料の組成はそれぞれ、形成しようとするA層およびB層の組成に応じて適宜変更することができる。
(1)第1の樹脂材料と成膜用溶剤とを溶融混練し、第1のポリオレフィン溶液を調製する工程
(2)第2の樹脂材料と成膜用溶剤とを溶融混練し、第2のポリオレフィン溶液を調製する工程
(3)第1および第2のポリオレフィン溶液を共押出し、多層シートを形成した後、冷却し、ゲル状多層シートを形成する工程
(4)前記ゲル状多層シートを延伸して多孔質シートとする第1の延伸工程
(5)前記多孔質シート(延伸成形物)から成膜用溶剤を除去する工程
(6)成膜用溶剤除去後の多孔質シートを乾燥する工程
(7)乾燥後の多孔質シートを延伸する第2の延伸工程
(8)前記多孔質シートを熱処理する工程。
前記第1の樹脂材料及び前記第2の樹脂材料に、それぞれ適当な成膜用溶剤を添加した後、溶融混練し、第1及び第2のポリオレフィン溶液をそれぞれ調製する。溶融混練方法としては、例えば日本国特許第2132327号および日本国特許第3347835号の明細書に記載の二軸押出機を用いる方法を利用できる。二軸押出機を用いた溶融混練方法は、通常の方法を適用できる。
第1及び第2のポリオレフィン溶液をそれぞれ押出機から1つのダイに送給し、そこで両溶液を層状に組合せ、シート状に押し出す。
次に、得られたゲル状多層シートを少なくとも一軸方向に延伸する。ゲル状多層シートは、結晶化制御剤および成膜用溶剤を含むので、均一に延伸できる。ゲル状多層シートは、加熱後、テンター法、ロール法、インフレーション法、又はこれらの組合せにより所定の倍率で延伸するのが好ましい。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸および多段延伸(例えば同時二軸延伸および逐次延伸の組合せ)のいずれでもよい。
洗浄溶媒を用いて、成膜用溶剤の除去(洗浄)を行う。ポリオレフィン相は成膜用溶剤相と相分離しているので、成膜用溶剤を除去すると、微細な三次元網目構造を形成するフィブリルからなり、三次元的に不規則に連通する孔(空隙)を有する多孔性フィルムが得られる。洗浄溶媒およびこれを用いた成膜用溶剤の除去方法は公知であるので説明を省略する。例えば日本国特許第2132327号明細書や特開2002-256099号公報に開示の方法を利用することができる。
成膜用溶剤を除去した多孔性フィルムを、加熱乾燥法又は風乾法により乾燥する。乾燥温度は第2のポリオレフィン樹脂の結晶分散温度(Tcd)以下であるのが好ましく、特にTcdより5℃以上低いことが好ましい。乾燥は、多孔質膜を100質量%(乾燥重量)として、残存洗浄溶媒が5質量%以下になるまで行うのが好ましく、3質量%以下になるまで行うのがより好ましい
工程(7)第2の延伸工程
必要に応じて、乾燥後の多孔性フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸してもよい。多孔性フィルムの延伸は、加熱しながら上記と同様にテンター法等により行うことができる。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸および逐次延伸のいずれでもよい。
また、乾燥後の多孔性フィルムは、熱処理を行うことができる。熱処理によって結晶が安定化し、ラメラが均一化される。熱処理方法としては、熱固定処理および/又は熱緩和処理を用いることができる。熱固定処理とは、膜の寸法が変わらないように保持しながら加熱する熱処理である。熱緩和処理とは、膜を加熱中にMD方向やTD方向に熱収縮させる熱処理である。熱固定処理は、テンター方式又はロール方式により行うのが好ましい。例えば、熱緩和処理方法としては特開2002-256099号公報に開示の方法があげられる。熱処理温度はポリオレフィン樹脂のTcd~Tmの範囲内が好ましく、多孔性フィルムの延伸温度±5℃の範囲内がより好ましく、多孔性フィルムの第2の延伸温度±3℃の範囲内が特に好ましい。
また、第2の製造方法として、下記の工程(1)~(8)を含む。
(1)第1の樹脂材料と成膜用溶剤とを溶融混練し、第1のポリオレフィン溶液を調製する工程
(2)第2の樹脂材料と成膜用溶剤とを溶融混練し、第2のポリオレフィン溶液を調製する工程
(3)第1及び第2のポリオレフィン溶液を、別々に押出機を介して別個のダイより押出した直後に積層し、冷却してゲル状多層シートを形成する工程、
(4)前記ゲル状多層シートを延伸して多孔質シートとする第1の延伸工程、
(5)前記多孔質シートから成膜用溶剤を除去して多孔質シートとする工程、
(6)成膜用溶剤除去後の多孔質シートを乾燥する工程及び
(7)乾燥後の多孔質シートを延伸する第2の延伸工程。
第3の製造方法として、下記の工程(1)~(9)を含む。
(1)第1の樹脂材料と成膜用溶剤とを溶融混練し、第1のポリオレフィン溶液を調製する工程
(2)第2の樹脂材料と成膜用溶剤とを溶融混練し、第2のポリオレフィン溶液を調製する工程
(3)第1のポリオレフィン溶液を一つのダイより押し出し、冷却して第1のゲル状シートを形成する工程
(4)第2のポリオレフィン溶液を別のダイより押し出し、冷却して第2のゲル状シートを形成する工程
(5)第1および第2のゲル状シートをそれぞれ延伸して第1および第2の多孔質シートとする工程
(6)前記第1および第2の多孔質シートを積層する工程
(7)前記積層した多孔質シートから成膜用溶剤を除去する工程
(8)成膜用溶剤除去後の積層した多孔質シートを乾燥する工程
(9)乾燥後の積層した多孔質シートを延伸する第2の延伸工程。
第4の製造方法として、下記の工程(1)~(9)を含む。
(1)第1の樹脂材料と成膜用溶剤とを溶融混練し、第1のポリオレフィン溶液を調製する工程
(2)第2の樹脂材料と成膜用溶剤とを溶融混練し、第2のポリオレフィン溶液を調製する工程
(3)第1のポリオレフィン溶液を一つのダイより押し出し、冷却して第1のゲル状シートを形成する工程
(4)第2のポリオレフィン溶液を別のダイより押し出し、冷却して第2のゲル状シートを形成する工程
(5)第1および第2のゲル状シートをそれぞれ延伸して第1および第2の多孔質シートとする工程
(6)前記第1および第2の多孔質シートから成膜用溶剤をそれぞれ除去する工程
(7)前記第1および第2の多孔質シートをそれぞれ乾燥する工程
(8)乾燥後の第1および第2の多孔質シートをそれぞれ延伸する第2の延伸工程
(9)前記第2の延伸工程後の、第1および第2の多孔質シートを積層する工程。
前記多孔性ポリオレフィンフィルムの少なくとも一方の表面に、多孔層を積層してもよい。多孔層としては、例えば、フィラーと樹脂バインダとを含むフィラー含有樹脂溶液や耐熱性樹脂溶液を用いて形成される多孔層を挙げることができる。
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、水系電解液を使用する電池、非水系電解質を使用する電池のいずれにも好適に使用できる。具体的には、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-亜鉛電池、銀-亜鉛電池、リチウム二次電池、リチウムポリマー二次電池等の二次電池のセパレータとして好ましく用いることができる。中でも、非水系電解質を使用するリチウムイオン二次電池のセパレータとして用いることが好ましい。
(1)膜厚(μm)
多孔質膜の50mm×50mmの範囲内における無作為に抽出した5点の膜厚を接触厚み計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック)により測定し、膜厚の平均値を求めた。
多孔性フィルムの重量w1とそれと等価な空孔のないポリマーの重量w2(幅、長さ、組成の同じポリマー)とを比較した、以下の式によって、空孔率を測定した。
空孔率(%)=(w2-w1)/w2×100
(3)透気抵抗度(sec/100cm3)
膜厚T1の多孔質膜に対して透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)で透気抵抗度P1を測定した。また、式:P2=(P1×20)/T1により、膜厚20μm相当での透気抵抗度P2を算出した。
パームポロメーター(PMI社製、CFP-1500A)を用いて、Dry-up、Wet-upの順で測定した。Wet-upには表面張力が既知のPMI社製Galwick(商品名)(表面張力:15.9dynes/cm)で十分に浸した微多孔質膜に圧力をかけ、空気が貫通し始める圧力から換算される孔径を最大細孔径とした。平均細孔径については、Dry-up測定で圧力、流量曲線の1/2の傾きを示す曲線と、Wet-up測定の曲線が交わる点の圧力から孔径を換算した。圧力と孔径の換算は下記の数式を用いた。
d=C・γ/P
上記式中、「d(μm)」は微多孔質膜の孔径、「γ(mN/m)」は液体の表面張力、「P(Pa)」は圧力、「C」は定数とした。
動的粘弾性測定機(TAインスツルメントRSA-G2)を用いて、貯蔵弾性率を測定した。測定条件は、サンプル形状;幅10mm×長さ50mm、初期チャック間距離;20mm、初期ひずみ;0.1%、周波数;1Hz、温度走査範囲30~180℃、昇温速度;5℃/min、初期張力50gf、ひずみ自動調整プログラムとして最小ひずみ0.1%、最大ひずみ1.5%、最小張力1.0g、最大張力300.0gとする。MDとTDについて同じフィルム中の異なる箇所で、各3点ずつ試料を採取し、各試料の貯蔵弾性率E’の温度依存性を測定した。得られたE’の曲線からMD、TDそれぞれについて、80℃での貯蔵弾性率の平均値を求めE’(80)とし、150℃での貯蔵弾性率の平均値を求めE’(150)とした。
先端に球面(曲率半径R:0.5mm)を有する直径1mmの針を、平均膜厚T1(um)の多孔性フィルムに2mm/秒の速度で突刺して最大荷重L1(貫通する直前の荷重、単位:gf)を測定し、L2=(L1×20)/T1の式により、膜厚を20μmとしたときの突刺強度L2(gf/20um)を算出した。
50mm角のポリオレフィン多孔質膜を105℃にて8時間保持したときのMD方向における収縮率を3回測定し、それらの平均値をMD方向の熱収縮率とした。また、TD方向についても同様の測定を行い、TD方向の熱収縮率を求めた。
MD引張強度およびTD引張強度については、幅10mmの短冊状試験片を用いて、ASTM D882に準拠した方法により測定した。
上述した透気抵抗度を室温から5℃/分で昇温しながら測定し、透気抵抗度が10万秒に達した時の温度をシャットダウン温度とした。
50mm角のポリオレフィン多孔質膜を直径12mmの穴を有する金属製のブロック枠を用いて挟み、タングステンカーバイド製の直径10mmの球を前記多孔質膜上(ブロック枠における前記穴に重なる位置)に設置する。前記多孔質膜は水平方向に平面を有するように設置される。30℃からスタートし、5℃/分で昇温する。前記多孔質膜がボールによって破膜されたときの温度を3回測定し、平均温度をメルトダウン温度とした。
ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンのMnおよびMwは以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
・測定装置:Waters Corporation製GPC-150C
・カラム:昭和電工株式会社製Shodex UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):o-ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0 ml/分
・試料濃度:0.1 wt%(溶解条件:135℃/1h)
・インジェクション量:500μl
・検出器:Waters Corporation製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、所定の換算定数を用いて作成した。
一辺150mmの正方形のアルミニウム板上に、直径60mmの円状に切り出した膜厚T1の多孔性フィルムを置き、その上に真鍮製の直径50mm、高さ30mm、重さ500gの円柱電極を置いて、菊水電子工業製TOS5051A耐絶縁破壊特性試験器を接続した。0.2kV/秒の昇圧速度で電圧を加え、絶縁破壊したときの電圧値を絶縁破壊電圧とした。絶縁破壊電圧の測定はそれぞれ15回行い、最大値、平均値および最小値を得た。
(1)第1のポリオレフィン溶液の調製
Mwが2.0×106のポリプロピレン(PP:融点162℃)100質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部に、造核剤NA―11(ADEKA) 0.2質量部、酸化防止剤テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
Mwが2.0×106の超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)30質量%及びMwが5.6×105の高密度ポリチレン(密度0.955g/cm3)70質量%からなる第2のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
第1及び第2のポリオレフィン溶液を、各二軸押出機から三層用Tダイに供給し、第1のポリオレフィン溶液/第2のポリオレフィン溶液/第1のポリオレフィン溶液の層厚比が1/10/1となるように押し出した。押出し成形体を、30℃に温調した冷却ロールで引き取り速度2m/minで、引き取りながら冷却し、ゲル状三層シートを形成した。
ゲル状三層シートを、テンター延伸機により120℃でMD方向及びTD方向ともに5倍に同時二軸延伸(第1の延伸)した。延伸後のゲル状三層シートを20cm×20cmのアルミニウム枠板に固定し、25℃に温調した塩化メチレン浴中に浸漬し、100rpmで3分間揺動しながら流動パラフィンを除去し、室温で風乾した。
得られた多孔性ポリオレフィンフィルムを第2の延伸は実施せず、125℃×10分で熱固定処理を行った。
得られた多孔性ポリオレフィンフィルムを構成する各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1に記載した。
実施例2~10では、表1に記載した条件以外は実施例1と同様にして、多孔性ポリオレフィンフィルムを作製した。
得られた多孔性ポリオレフィンフィルムを構成する各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1に記載した。
比較例1、2では、第1のポリオレフィン溶液をMwが2.0×106のポリプロピレンとMwが5.6×105の高密度ポリチレンを表2に記載した割合とし、作製条件を表2に記載した条件以外は実施例1と同様の作製法で多孔性ポリオレフィンフィルムを作製した。
比較例5、6は、表2に記載した条件および第B層を形成しなかった以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン単層多孔質膜を作製した。
得られた多孔性ポリオレフィンフィルムおよび単層多孔質膜を構成する各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2に記載した。
比較例4は高融点の原料であるポリプロピレンを用いていないことから、良好なシャットダウン温度と機械物性が得られたが、良好なメルトダウン温度と平均細孔径が得られなかった。
Claims (10)
- ポロメータによる平均細孔径が15nmより小さく、シャットダウン温度が140℃以下であり、膜厚20μm相当での透気抵抗度が1000sec/100cm3以下であり、ポリプロピレン系樹脂を80質量%以上含むA層を少なくとも1層有することを特徴とする多孔性ポリオレフィンフィルム。
- ポリエチレンを主成分とする層(B層)をさらに少なくとも各1層以上有する、請求項1に記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
- 前記A層及び前記B層の厚みが、多孔性ポリオレフィンフィルムの全体の厚みのそれぞれ10%以上である、請求項2に記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
- 150℃での貯蔵弾性率E’(150)と80℃での貯蔵弾性率E’(80)との比が長手方向、幅方向のそれぞれについて下の式を満たす、請求項1~3のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
1≦E’(80)/ E’(150)≦20 - ポロメータによる最大細孔径が1nm以上30nm以下である請求項1~4のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
- 落球法によるメルトダウン温度が170℃以上である、請求項1~5のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
- TD方向の引張強度が50MPa以上である、請求項1~6のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
- 請求項1~7のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルムを用いたことを特徴とする電池用セパレータ。
- 多孔性ポリオレフィンフィルムの少なくとも一方の表面に、多孔層を積層した請求項8に記載の電池用セパレータ。
- 請求項9に記載の電池用セパレータを用いたことを特徴とする2次電池。
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