JP5717302B2 - 積層微多孔膜及び非水電解質二次電池用セパレータ - Google Patents

積層微多孔膜及び非水電解質二次電池用セパレータ Download PDF

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Description

本発明は、積層微多孔膜及びその積層微多孔膜からなる非水電解質二次電池用セパレータに関する。
ポリオレフィン系微多孔膜は、精密濾過膜、電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータ、燃料電池用材料等に使用されており、特にリチウムイオン二次電池用セパレータとして使用されている。近年、リチウムイオン二次電池は、携帯電話、ノート型パソコン等の小型電子機器、さらには電気自動車、小型電動バイク等への応用も図られている。特に、今後も全世界的に急速に市場が拡大していくノート型パソコンや携帯電話用途の機器は、様々な国々で生産、使用されることから、ポリオレフィン系微多孔膜には、様々な要求特性に応えることが求められている。このような事情のもと、これまでに、機能を複合化する目的から多層構造のセパレータが提案されている。
例えば、特許文献1には、重量平均分子量500,000以上のポリエチレンを必須とするポリオレフィン系微多孔膜であって、透気性、突刺し強度に優れるポリオレフィン系微多孔膜が開示されている(樹脂と液体溶媒を押出成形した未延伸フィルム原反を、延伸し、溶媒抽出したフィルムを2枚以上重ね合せ、さらに共延伸する方法が記載されている)。
特許文献2には、重量平均分子量500,000以上の多孔質ポリプロピレン層と、融点が100〜135℃の材料からなる多孔質層とからなる多孔質積層フィルム製の電池用セパレータが開示されており、25℃での透気性(ガーレー秒数)と強度(針貫通強度)に優れると記載されている。
特許文献3には、機械強度に優れるセパレータとして延伸開孔法によるPP/PE/PPの3層構造の電池用セパレータが開示されており、その気孔率は通常30〜65%であると記載されている。また、実施例には、PP層の気孔率が41%、PE層の気孔率が44%の例が開示されている。
特許文献4には、高空隙率(気孔率)で高強度の蓄電デバイス用セパレータとして、50質量%以上の無機粉体を含む空隙率80%以上のセパレータ開示されている。
特許文献5には、厚さ、透気度、ピン刺強度、及び表面粗度が特定範囲に調整されたポリエチレン樹脂製多孔性フィルムが開示されており、フィルムの表面が適度に粗面化されているため非水電解液電池用セパレーターとして好適であることが記載されている。
特開2003−103624号公報 特開平09−219184号公報 特開2000−04894号公報 特開2007−095440号公報 特開平11−060791号公報
しかしながら、上記特許文献1〜5に記載されたセパレータは、いずれもサイクル性と安全性(過充電)とを両立する観点から、なお改良の余地を有するものであった。
上記事情に鑑み、本発明は、セパレータとして用いた場合に良好な安全性と良好なサイクル性とを兼ね備えた二次電池を実現し得る積層微多孔膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、特定の透気度、突刺し強度、平均孔径を有し、且つ、吸液性指数が特定範囲に調整された積層微多孔膜が、上記課題を解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
(A層)と、(A層)とは異なる(B層)と、を含む(A層)/(B層)/(A層)の3層構成を有する積層微多孔膜であって、
前記(A層)の気孔率(気孔率A)が35〜80%、前記(B層)の気孔率(気孔率B)が30〜60%、当該(気孔率A)−(気孔率B)が3〜40%、を満たし、
前記(B層)の厚みが、前記積層微多孔膜の全体に対して50%以上であり、
膜厚み20μm換算の透気度が300秒/100cc以下、膜厚み20μm換算の突刺し強度が300g以上、全層の平均孔径Dが0.02μm以上0.1μm以下吸液性指数(H30)が7mm以上、を満たす、積層微多孔膜。
[2]
前記気孔率Aが40〜70%であり、前記気孔率Bが30〜50%である、上記[1]記載の積層微多孔膜。
[3]
ポリオレフィン組成物を主体とする、上記[1]又は[2]記載の積層微多孔膜。
本発明により、セパレータとして用いた場合に良好な安全性と良好なサイクル性とを兼ね備えた二次電池を実現し得る積層微多孔膜を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態の積層微多孔膜は、膜厚み20μm換算の透気度が300秒/100cc以下、膜厚み20μm換算の突刺し強度が300g以上、全層の平均孔径Dが0.02以上0.1μm以下を満たす積層微多孔膜であって、吸液性指数(H30)が7mm以上である。
本実施の形態の積層微多孔膜は、膜厚み20μm換算の透気度及び突刺し強度、全層の平均孔径、及び吸液性指数が、それぞれ上記特定の範囲に調整されており、これらが相乗的に機能することにより、セパレータとして使用した際の電池の安全性とサイクル性との両立を可能にする。以下、積層微多孔膜が有する各物性について説明する。
本実施の形態の積層微多孔膜は、膜厚み20μm換算の透気度が300秒/100cc以下、膜厚み20μm換算の突刺し強度が300g以上である。透気度及び突刺し強度が上記範囲内であると、セパレータとして使用した際に電池のサイクル性と膜強度が両立する。
膜厚み20μm換算の透気度は、機械強度、自己放電の観点から、好ましくは50秒/100cc以上、電池のサイクル特性、レート特性の観点から、好ましくは250秒/100cc以下である。膜厚み20μm換算の透気度は、より好ましくは70秒/100cc以上210秒/100cc以下、さらに好ましくは100秒/100cc以上210秒/100cc以下である。ここで、膜厚み20μm換算の透気度は、JIS P−8117に準拠し、ガーレー式透気度計「G−B2」(東洋精機製作所(株)製、商標)で測定した値をいう。また、透気度を上記範囲に調整する方法としては、微多孔膜の製法により異なるが、原料として樹脂と可塑剤を用い、製膜後に可塑剤を抽出して多孔化させる所謂「湿式法」の場合は、樹脂と可塑剤の混合比を調整する方法や、製膜工程中の延伸倍率や温度、或いは熱固定工程における延伸倍率や温度を調整する方法等が挙げられる。また、可塑剤を使わずに、結晶性樹脂を用い、ラメラ間の非晶部分の界面や、樹脂と炭酸カルシウム等の無機フィラーの界面を、低温での縦延伸により開裂させて多孔化する所謂「乾式法」の場合は、ドラフト比や延伸速度を調整することによりラメラの結晶化を制御する方法等が挙げられる。
膜厚み20μm換算の突刺強度は、300g以上であり、この範囲内であるとリチウムイオン2次電池用セパレータとして使用した際に、電極活物質の異常な突起や異物等によりセパレーターが破れることが無く過充電性が向上する。電池の組立時の強度の観点から、好ましくは400g以上であり、より好ましくは500g以上である。
なお、上限としては特に限定はないが、例えば1000g以下である。ここで、膜厚み20μm換算の突刺強度は、ハンディー圧縮試験器「KES−G5」(カトーテック製、商標)を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secの条件で突刺試験を行うことにより求めた値をいう。また、突刺強度を上記範囲に調整する方法としては、例えば、微多孔膜の配向状態を変化させる方法が挙げられ、具体的には、湿式法、乾式法のいずれの場合でも、延伸倍率や温度を調整する方法が挙げられる。また別の方法としては、原料樹脂自体に強度の高い樹脂を用いることが挙げられ、例えば、ポリオレフィンであれば重量平均分子量が50万以上、好ましくは100万以上の超高分子量ポリエチレンを混合すること等が挙げられる。
本実施の形態の積層微多孔膜は、全層の平均孔径Dが0.02μm以上0.1μm以下である。平均孔径Dが上記範囲内であると、イオン透過性と微短絡防止性が両立される観点から好ましい。平均孔径Dは、イオン透過性の観点から、好ましくは0.03μm以上であり、微短絡防止性の観点から、好ましくは0.09μm以下である。ここで、全層の平均孔径は、後述する実施例において記載された測定方法により求めることができる。また、平均孔径を上記範囲に調整する方法としては、湿式法の場合は、樹脂と可塑剤の組合せを調整し、より可塑剤の分散径が大きくなるようなものを用いる方法や、相溶性の悪い貧溶媒を用いる方法等が挙げられ、製膜条件としては、延伸工程の際に延伸倍率を調整する方法等が挙げられる。
また、本実施の形態の積層微多孔膜は、吸液性指数(H30)が7mm以上である。これにより電池のサイクル性が向上し、更には電池作成時の電解液吸液性も上がるため、生産速度が大幅に向上することにも寄与する。吸液性指数は、より好ましくは8mm以上、さらに好ましくは10mm以上である。ここで、吸液性指数は、後述する実施例において記載された測定方法により求めることができる。また、吸液性指数を上記範囲に調整する方法としては、後述するF値を調整する方法等が挙げられる。
本実施の形態の積層微多孔膜は、気孔率が30〜70%の範囲内にあることが好ましい。気孔率が上記範囲内であれば、膜強度と透過性のバランスがより良好となる傾向にある。特に、二次電池等のセパレータとして使用した際の自己放電性の抑止効果、微短絡防止、及びサイクル特性のバランスが良好となる。さらに、気孔率は、膜強度の観点から好ましくは30〜59%であり、微短絡抑止の観点から好ましくは30〜49%の範囲内である。ここで、気孔率は、後述する実施例において記載された測定方法により求めることができる。また、気孔率を上記範囲に調整する方法としては、湿式法の場合は、原料樹脂と可塑剤の混合比を調整する方法、乾式法の場合は延伸倍率を調整する方法等が挙げられる。
また、本実施の形態の積層微多孔膜は、少なくとも(A層)と、(A層)とは異なる(B層)の2層以上からなり、(A層)の気孔率(気孔率A)が35〜80%、(B層)の気孔率(気孔率B)が30〜60%、(気孔率A)−(気孔率B)が3〜40%の範囲内にあることが好ましい。ここで、(A層)は主に吸液性を受け持つ吸液層であり、(B層)は主に強度や透過性等の基本的な性能を受け持つ主体層として機能する。
なお、「(A層)とは異なる(B層)」という場合の「異なる」とは、原料の相違であっても良いし、気孔率や透気度といった物性の相違であっても良い。
気孔率Aが上記範囲内であると、吸液性が良好となり、且つ、積層微多孔膜の製膜中に(A層)が製膜不良になるおそれが低減し、良好に製膜できる傾向にある。気孔率Aは、より好ましくは40〜70%の範囲内であり、この範囲であると製膜性がより向上する傾向にある。気孔率Aは、さらに好ましくは45%〜65%の範囲内であり、この範囲であると、(A層)単独での強度も充分付加されるため高速製膜が可能になると共に、ハンドリング性が向上する傾向にある。ここで、ハンドリング性とは、作業者が積層微多孔膜を電池の捲回機の所定のパスラインに設置する際の取扱のしやすさのことを示し、具体的には、微多孔膜の弾性率に関わる腰や膜の自立性のことを言う。
また、気孔率Bが上記範囲内であると、主体層である(B層)の透過性と強度のバランスが良好となり、二次電池用セパレータに使用する際に既存の電池捲回機で良好に生産される傾向にある。気効率Bは、より好ましくは30〜50%の範囲内であり、この範囲であると、サイクル性と強度のバランスがより良好な微多孔膜が得られる傾向にある。
また、(気孔率A)−(気孔率B)の差が3〜40%の範囲内であると、吸液性と膜の均質性のバランスが良好となる傾向にある。(気孔率A)−(気孔率B)は、吸液性の観点から、好ましくは5%以上であり、より好ましくは8%以上である。(気孔率A)−(気孔率B)がこの範囲であると、吸液層である(A層)の気孔率が充分大きくなり吸液性が上がると共に、主体層である(B層)の強度が充分となる傾向にある。また、(気孔率A)−(気孔率B)は、膜の均質性の観点から好ましくは30%以下であり、より好ましくは25%以下である。(気孔率A)−(気孔率B)がこの範囲であると、後述する積層微多孔膜の製造方法における好適な一実施形態である共押出しにおいて、(A層)(B層)のダイス内での合流が良好となり、層間乱れ等の膜の均質性に影響する不良現象が起こらず良好に成型できる傾向にある。
本実施の形態の積層微多孔膜は、曲路率をT(−)、平均孔径をD(μm)、気孔率をP(%)としたときに、下記式(1)で定義されるF値が、0.25≦F≦0.9を満たすことが好ましい。
F=T/(D*P)・・・(1)
F値が上記範囲内であると、吸液性が向上し、吸液性指数(H30)を7mm以上に調整するのが容易となる傾向にある。F値はその定義から明らかなように、膜の透過抵抗に関わるパラメーターである。F値は、吸液性及びイオン透過性の観点から、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下である。またF値は小さ過ぎると、膜の強度が低下する傾向にあるので、好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.4以上である。
本実施の形態の積層微多孔膜には、親水化処理や、電解液への親和性を上げるコロナ処理を行なってもよいが、F値が上記範囲内であると、親水化処理なしでも吸液性向上を達成できる傾向にある。
F値を上述した好ましい範囲内に調整するには、積層微多孔膜の平均孔径、気孔率、曲路率を公知の方法で調整することはもちろん、上述した規定の気孔率を有する(A層)及び(B層)からなる積層微多孔膜を用いることによっても調整することが可能である。
さらに(A層)の平均孔径DAは、吸液性の観点から、好ましくは0.03μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上である。また、平均孔径DAは、強度の観点から、好ましくは0.15μm以下であり、より好ましくは0.09μm以下である。同様に、B層の平均孔径DBは、好ましくは0.03〜0.1μmであり、イオン透過性と微短絡防止性、強度の観点から、より好ましくは0.04〜0.09μmである。
本実施の形態の積層微多孔膜の曲路率の範囲は、好ましくは1.0〜3.0であり、この範囲内であれば、上述したF値のバランスが取りやすい。曲路率の範囲は、より好ましくは1.5〜2.5である。ここで、曲路率は、後述する実施例において記載された測定方法により求めることができる。また、曲路率を上記範囲に調整する方法としては、湿式法の場合は、延伸倍率、延伸温度等の延伸条件を調整する方法や、樹脂と可塑剤の組合せを適宜選択する方法等が挙げられる。
本実施の形態の積層微多孔膜は、(B層)の厚みが積層微多孔膜全体に対して35%以上であることが好ましい。(B層)の厚みが上記範囲であると、積層微多孔膜全体の強度と透過性のバランスが良好となる傾向にある。(B層)の厚みは、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。上限としては特に限定されないが、100%未満であることが好ましい。
本実施の形態の積層微多孔膜の層構成の例としては、2層、3層、若しくはそれ以上の多層等、特に限定はされないが、例えば3層で構成される場合、(B層)/(A層)/(B層)、(A層)/(B層)/(A層)等が好ましい。また、積層微多孔膜は3層を超える多層構造でもよい。
本実施の形態の積層微多孔膜の各層は、通常、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物からなる。樹脂組成物は、成型加工性と電解液に対する耐溶剤性の観点から、ポリオレフィンを主成分とすることが好ましい。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等が挙げられる。また、「主成分とする」とは、特定成分が、当該特定成分を含むマトリックス成分中に占める割合が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、100質量%であってもよいことを意味する。
ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、及びこれらの混合物等が挙げられる。中でも、セパレータとして用いた場合の熱収縮を低減できる観点から、イオン重合による線状の高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、あるいはこれらの混合物の使用が好ましい。ここでいう超高分子量ポリエチレンとは、粘度平均分子量が50万以上のものを指す。超高分子量ポリエチレンが全ポリエチレン中に占める割合としては、好ましくは5〜50質量%であり、分散性の観点から、より好ましくは9〜40質量%である。
ポリエチレンの粘度平均分子量(Mv)(複数種のポリエチレンを用いる場合には、その全体の粘度平均分子量)としては、積層微多孔膜の強度を向上させる観点から、好ましくは20万以上であり、より好ましくは30万以上である。粘度平均分子量(Mv)の上限としては、押出成形性、延伸性の観点から、好ましくは1000万以下、より好ましくは500万以下である。
ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、無機粒子等を混合して混練する場合にその混練性を向上させ、無機粒子が二次凝集した粒状の欠点が発生することを抑制する観点から、好ましくは4以上であり、より好ましくは6以上である。
ポリプロピレンとしては、例えば、アイソタクティックポリプロピレン(IPP)、シンジオタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン等のプロピレンのホモ重合体や、プロピレンと、エチレンやブテン、炭素数5以上のα−オレフィンといったコモノマーとを共重合させて得られるランダム共重合体(RPP)やブロック共重合体(BPP)、ターポリマー等が挙げられる。上記の中でも、耐熱性を持たせたい場合は、結晶性の高いIPPが好ましく、強度付与の目的では、延伸の容易なRPPやBPPが好ましい。
ポリプロピレンの粘度平均分子量(Mv)は、溶融混練が容易となり、その結果、膜としたときにフィッシュアイ状の欠陥が改善される傾向にあるため、好ましくは100万以下、より好ましくは70万以下、さらに好ましくは60万以下である。さらに膜強度の観点からは好ましくは10万以上、更に好ましくは20万以上である。
また、メタロセン触媒等を利用して立体規則性を低下させたポリプロピレンや、BPP、RPPを、IPPに対して0.5〜30質量%ブレンドした樹脂組成物も好ましい。これにより、後述する湿式法にてポリプロピレンを主体とする微多孔膜を成型する際に、透過性が改良される傾向にある。
なお、ポリプロピレンの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは5〜20である。
本実施の形態においては、各層の樹脂組成物に無機フィラーを混合してもよい。用いることが可能な無機フィラーとしては、例えば、アルミナ(例えば、α−アルミナ等)、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維等が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。無機フィラーが、各層の樹脂組成物中に占める割合としては、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜55質量%である。
本実施の形態の積層微多孔膜には、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、核剤、分散助剤、帯電防止剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。
酸化防止剤としては、例えば、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、「BHT」(いずれも商標、チバスペシャリティーケミカルズ社製)等のフェノール系酸化防止剤や、リン系、イオウ系の二次酸化防止剤、ヒンダードアミン系の耐候剤等を、単独又は目的に応じて複数用いることができる。特にフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤の組合せが好適に用いられる。具体的には、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチルヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチルヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンフォスファイト等が好ましい。また、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキシフォスフェピン等も好適である。酸化防止剤の配合量は、積層微多孔膜を構成する樹脂に対して好ましくは100ppm〜10000ppmであり、フェノール系/リン系の併用の場合は、その比は好ましくは1/3〜3/1である。
本実施の形態において、積層微多孔膜を構成する樹脂としてポリプロピレンを用いる場合、その結晶性を制御し微多孔の形成を制御するために結晶核剤を使用することが好ましく、特に押出成形により微多孔膜を製造する場合に好ましい。核剤の種類としては、特に限定されないが、一般のベンジルソルビトール系、リン酸金属塩、t−ブチル安息香酸アルミニウム等のカルボン酸金属塩等が挙げられる。その具体例としては、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール,ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ビスベンジリデンソルビトール等である。核剤の配合量としては、所望の結晶化条件にもよるが、結晶化が迅速に進み、成型性が容易となる観点から、ポリプロピレンの量に対して100ppm以上であることが好ましく、過剰の核剤によるブリード過多を防止する観点から、10,000ppm以下であることが好ましい。より好ましい核剤の配合量は、ポリプロピレンに対して100〜2,000ppmである。通常の可塑剤を用いた微多孔膜の製造法においては、流動パラフィンや、フタル酸エステル系の可塑剤を用いた場合、ポリエチレンは透過性が発揮されやすいが、ポリプロピレンはポリエチレンに比べ孔が小さくなり、透過性が劣る傾向になる。このポリプロピレンの透過性を解消する手段として、孔を適当な大きさに調整する方法が効果的であり、核剤の利用により相分離速度が調整され、適当な孔構造の形成が容易となる。
その他、ポリプロピレンとポリエチレンの分散助剤として、例えば、水添したスチレン-ブタジエン系エラストマーや、エチレンとプロピレンを共重合したエラストマー等も必要に応じて用いられる。これらの助剤の配合量は、特には限定されないが、ポリプロピレンとポリエチレンの合計量100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部が使用される。
さらに、帯電防止剤としては、アルキルジエタノールアミンやヒドロキシアルキルエタノールアミン等のアミン系、ステアリルジエタノールアミンモノ脂肪酸エステル等のアミンエステル類、ラウリン酸ジエタノールアミドやステアリン酸ジエタノールアミド等のアルキローアミド類、グリセリンやジグリセリンのモノ脂肪酸エステル類、アルキルベンゼンスルホン酸等のアニオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類等を単独、又は複数用いてもよい。これらの帯電防止剤の配合量としては、特に限定されないが、好ましくは積層微多孔膜を構成する樹脂に対して500〜10000ppm程度である。
本実施の形態の積層微多孔膜の製造方法は、共押出法、各層を個別に押出した後にラミネートする方法等の公知の方法を用いればよいが、上述した(A層)及び(B層)を含む積層微多孔膜である場合、好ましくは以下の(工程1)及び(工程2)を含む方法により製造する。
(工程1)(A層)の樹脂組成物Aと、(B層)の樹脂組成物Bとを共に溶融状態で押出し、(A層)と(B層)とが積層された積層膜を形成する積層膜形成工程
(工程2)前記積層膜形成工程の後、前記(A層)及び(B層)を共に微多孔化する積層微多孔膜形成工程
ここで、工程1については(A層)(B層)以外に第3の層を含んでいてもよい。
(工程1)においては、まず、(A層)の樹脂組成物Aと、(B層)の樹脂組成物Bとがそれぞれ混練される。樹脂組成物A又はBを混練する方法としては、あらかじめ原料樹脂と場合により可塑剤をヘンシェルミキサーやタンブラーミキサー等で事前混練する工程を経て、該混練物を押出機に投入し、押出機中で加熱溶融させながら必要に応じて任意の比率で所定量になるまで可塑剤を導入し、さらに混練する方法が挙げられる。このような方法は、樹脂組成の分散性がより良好なシートを得ることができる傾向にあり、各層が、高倍率でも破膜することなく延伸することができる観点から好ましい。前記(工程2)が、樹脂組成物Aと樹脂組成物Bにそれぞれ可塑剤や無機フィラーを配合し、製膜後に可塑剤や無機フィラーを抽出して多層微多孔膜を形成する工程(湿式法)である場合には、樹脂組成物A、樹脂組成物Bに可塑剤や無機フィラーを配合すればよい。前記(工程2)が、樹脂組成物Aと樹脂組成物Bの結晶界面や無機フィラーと樹脂組成物との界面を利用して開孔する工程(乾式法)である場合には、樹脂組成物A、樹脂組成物Bに可塑剤を配合しなくても開孔を実施し得る。
前記樹脂組成物A及び前記樹脂組成物Bが可塑剤を含有する場合、樹脂組成物A中の樹脂成分濃度は好ましくは25〜50質量%、前記樹脂組成物B中の樹脂成分濃度は好ましくは30〜55質量%である。(なお、樹脂成分濃度を「PC」(ポリマー濃度)と略記することがある。)(B層)のPCと(A層)のPCの差(PCB−PCA)は、好ましくは3〜20質量%である。当該比を上記範囲に設定することは、積層微多孔膜の物性を本実施の形態の特定範囲に調整する観点から好ましい。
前記(工程1)において用いられる溶融押出機としては、二軸押出機を用いることが好ましく、これにより強度のせん断が付与出来るため分散性が一層向上する。より好ましくは、二軸押出機のスクリューのL/Dが20〜70程度であり、より好ましくは30〜60である。スクリューにはフルフライトの部分と、一般にニーディングディスクやローター等の混練部分を配していてもよい。
押出機先端に装着されるダイスとしては、特に限定されないが、サーキュラーダイス、Tダイス等が用いられる。無機粒子を用いる場合や劣化し易い樹脂組成物を用いる場合には、それによる摩耗や付着を抑制する対策を講じたもの、例えば、流路やリップに、テフロン(登録商標)加工、セラミック加工、ニッケル加工、モリブデン加工、ハードクロムコートしたものが好適に用いられる。
積層膜を得る(工程1)においては共押出用ダイを用いることが好ましく、Tダイの場合は、ダイスの内部で溶融樹脂を膜状に広げてから各層を合流せしめるコートハンガー式のマルチマニホールドダイスを用いるのが、厚み制御の観点から特に好ましい。ただし、フィードブロックダイや、クロスヘッド式のダイスも用いることは可能である。サーキュラーダイスの場合はスパイラル式ダイや、多層フィルムでも5層以上の場合はスタック式のダイスが熱劣化防止の観点から好ましく、各層間の接着強度を大きくしたい場合には特に好ましい。
前記(工程1)においては、樹脂組成物Aと、樹脂組成物Bとが共に溶融状態で押出され、両者を積合し積層化するのは好ましくはダイス内であるが、ダイス外で積層化されてもよい。
ここで、前記(工程1)において、樹脂組成物A及び樹脂組成物Bが共に溶融状態で押出される際の、樹脂組成物Aの押出し温度での溶融粘度と、樹脂組成物Bの押出し温度での溶融粘度との比としては、好ましくは1/5〜5/1、より好ましくは1/2〜2/1である。当該比を上記範囲に設定することは、樹脂合流時の界面乱れ等を抑制し、偏肉を抑制する観点から好ましい。
ダイスより押し出された溶融樹脂は、例えば、キャスト装置に導入されるが、バンク成型でもバンクなしの成型でもよい。キャスト工程で得られた厚手の原反を延伸前の原反とすることができる。その後、高機械強度、縦横の物性バランス付与のため延伸されるが、その際の延伸方法としては、二軸延伸が好ましく、より好ましくは同時二軸延伸、逐次二軸延伸である。延伸温度は、使用する樹脂組成物により異なるが、一般に主体となる樹脂のヴィカット軟化点から融点の間の範囲の温度である。延伸倍率は、膜強度の観点から、好ましくは面積倍率で3〜200倍、好ましくは20〜60倍の範囲内である。
(工程2)は、積層膜形成工程の後、前記(A層)及び(B層)を共に微多孔化する積層微多孔膜形成工程であり、上述したように、湿式法もしくは乾式法により行う。可塑剤や無機フィラーの抽出は、膜を抽出溶媒に浸漬することにより行い、その後膜を十分乾燥させればよい。可塑剤のみを抽出する場合の抽出溶媒としては、ポリオレフィン、無機フィラーに対して貧溶媒であり、かつ可塑剤に対しては良溶媒であり、沸点がポリオレフィンの融点よりも低いことが好ましい。このような抽出溶媒としては、例えば、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等の塩素系溶剤;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類;ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル、環状ヒドロフルオロカーボン、ペルオロカーボン、ペルフルオロエーテル等のハロゲン系有機溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。上記の中でも、特に塩化メチレンが好ましい。またこれらの抽出溶媒を2種類以上使用してもよい。抽出工程は延伸工程の前でも後でもよく、複数の抽出槽による多段抽出でもよい。無機フィラーの抽出溶媒としては、例えば、アルカリ水等が挙げられる。
また、膜厚、透気度等の膜物性の調整、或いはフィルムの熱収縮防止のため、必要に応じて加熱延伸による熱固定を加えてもよい。可塑剤及び無機フィラー抽出後の延伸としては、一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸が挙げられ、好ましくは同時二軸延伸、逐次二軸延伸である。延伸温度は、使用する樹脂組成物により異なるが、一般に主体となる樹脂のヴィカット軟化点から融点の間の範囲の温度である。延伸倍率は、好ましくは面積倍率で1倍を超えて10倍以下である。
さらに、寸法安定化のための熱処理を行う場合は、高温雰囲気下での膜収縮を低減する観点から、例えば、二軸延伸機、一軸延伸機、あるいは両方を用いて、100℃以上150℃以下で熱処理を行うことができる。好ましくは、主体となる樹脂の融点以下の温度で、幅方向、長さ方向、あるいは両方向に、その倍率及び/又は応力を緩和することにより行う。
このようにして得られた積層微多孔膜には、適宜、コロナ処理、電子線架橋処理を施してもよく、無機層や有機層を塗工してもよい。
本実施の形態の積層微多孔膜は、孔が三次元的に入り組んでいる三次元網目構造を有していることが好ましい。三次元網目構造とは、表面が葉脈状であり、任意の三次元座標軸方向からの断面の膜構造がスポンジ状である構造を意味する。葉脈状とはフィブリルが網状構造を形成している状態である。これらは走査型電子顕微鏡で表面及び断面を観察することにより確認できる。三次元網目構造のフィブリル径は、0.01μm以上0.3μm以下であることが好ましく、これも走査型電子顕微鏡で観察することができる。
本実施の形態における積層微多孔膜は、リチウムイオン二次電池といった非水電解質二次電池用のセパレータとして好適に用いられる。その他、各種分離膜としても用いることができる。
なお、上述した各種パラメータは、特に断りのない限り、後述する実施例における測定方法に準じて測定される。
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した。判定は必用項目において行い、◎、○、△を合格とし、×を不合格とした。
(1)各層の厚み、及び合計厚み(μm)
一般の走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製 S4100)による断面観察により、積層体を構成する各層の厚みを測定した。
各層の厚みの総和を合計厚みとした。
(2)気孔率(%)
(全層の気孔率)
100mm四方の微多孔膜のサンプルの質量から目付けW(g/cm2)及び微多孔膜を構成する成分(樹脂及び添加剤)の平均密度ρ(g/cm3)を算出し、微多孔膜の厚みd(cm)から下記式にて計算した。
全層気孔率=(W/(d*ρ))*100(%)
(各層の気孔率)
断面のSEM写真を撮り、各層における空孔部分と樹脂部分の面積比により、各層の気孔率(気孔率C)とした。なお、計算された各層の気孔率と当該層の厚みを掛け合わせたものの総和を気孔率Dとし、気孔率Dと上述の全層気孔率が異なる場合は各層の気功率を下記の通りに補正した。
各層の気孔率=気孔率C*全層気孔率/気孔率D
(3)透気度 (秒/100cc)
JIS P−8117に準拠し、ガーレー式透気度計「G−B2」(東洋精機製作所(株)製、商標)で測定した。
なお、表中の値は、合計厚みを基準とした比例計算により算出した、20μm換算の透気度である。
(4)突刺し強度(g)
ハンディー圧縮試験器「KES−G5」(カトーテック製、商標)を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secの条件で突刺試験を行うことにより求めた。
なお、表中の値は、合計厚みを基準とした比例計算により算出した、20μm換算の突刺し強度である。
(5)平均孔径(μm)、曲路率
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さい時はポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定する。
この場合、平均孔径D(μm)と曲路率T(無次元)は、空気の透過速度定数Rgas(m3/(m2・sec・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m3/(m2・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力Ps(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)から、次式を用いて求めることができる。
D=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3Ps)×106
T=(D×(ε/100)×ν/(3L×Ps×Rgas))1/2
ここで、Rgasは透気度(sec)から次式を用いて求められる。
gas=0.0001/(透気度×(6.424×10-4)×(0.01276×101325))
また、Rliqは透水度(cm3/(cm2・sec・Pa))から次式を用いて求められる。
liq=透水度/100
なお、透水度は次のように求められる。直径41mmのステンレス製の透液セルに、あらかじめアルコールに浸しておいた微多孔膜をセットし、該膜のアルコールを水で洗浄した後、約50000Paの差圧で水を透過させ、120sec間経過した際の透水量(cm3)より単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
また、νは気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、空気の平均分子量M(=2.896×10-2kg/mol)から次式を用いて求められる。
ν=((8R×T)/(π×M))1/2
(6)吸液性指数H30(mm)、及び吸液性
積層微多孔膜を、MD100mm、TD10mmの短冊状にサンプリングし、MD方向が鉛直になるようにスタンド等に短冊の上部5mmを固定し静置した。この際、短冊の下部95mmは鉛直下方に垂れ下がり、宙に浮いた状態とした。23℃の条件で、短冊の下端から10mmの部分まで下記の電解液模擬試薬に浸し、その浸した時刻を基準とし、30分後に試薬が上昇する液高さを測定した。液高さは、多孔膜の色が白色から半透明になることで容易に判定できる。判定は以下の通りに行った。なお、試薬への浸漬は、風の影響等を避けるためガラス瓶の中で行なった。
電解液模擬試薬:エチレンカーボネート/プロピレンカーボネート/ジメチルエ−テル=3/1/6の割合で混合したもの。
◎:9mm以上上昇した。
○:9mm未満、7mm以上上昇した。
×:7mm未満しか上昇しなかった。
(7)過充電
表面を清浄にしたΦ35mmの電極に、50mm*50mmのフィルムサンプルを挟み、電極に電圧を掛け上昇させていき、0.5mAの電流が流れてスパークする際の電圧値を測定した。この測定を、サンプルフィルムの面内で少なくとも15回測定し、その平均値を記録した。平均値が1.8KV以上を◎、1.8KV未満1.0KV以上を○、1.0KV未満0.8KV以上を△、0.8KV未満を×とした。
(8)サイクル性
電極、電解液を以下に示すように作製した後、それを用いて評価用電池を作製し、そのサイクル特性を評価した。
(i)正極の作製
正極活物質として、リチウムコバルト複合酸化物LiCoO2を100質量部、導電剤としてリン片状グラファイトとアセチレンブラックをそれぞれ2.5質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)3.5質量部をN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の両面にダイコーターで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。この時、正極の活物質塗布量は250g/m2、活物質嵩密度は3.00g/cm3となるようにした。これを電池幅に合わせて切断し、帯状にした。
(ii)負極の作製
負極活物質として、グラファイト化したメソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)90質量部とリン片状グラファイト10質量部、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量部とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス1.8質量部を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の両面にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。このとき、負極の活物質塗布量は106g/m2、活物質嵩密度は1.35g/cm3となるようにした。これを電池幅に合わせて切断し、帯状にした。
(iii)非水電解液の調製
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1.0mol/リットルとなるように溶解させて調製した。
(iv)評価用電池の作製
評価する微多孔膜セパレーター、帯状正極、及び帯状負極を、帯状負極、セパレーター、帯状正極、セパレーターの順に重ねて渦巻状に複数回捲回することで電極版積層体を作製した。この電極板積層体を平面状にプレスした後、アルミニウム製容器に収納し、アルミニウム製リードを正極集電体から導出して電池蓋に、ニッケル製リードを負極集電体から導出して容器底に溶接し、電池捲回体を作製した。
(v)サイクル特性
上記のように作製した評価用電池捲回体に、前述した非水電解液を注入して封口し、リチウムイオン電池を作製した。
この電池を温度25℃の条件下で、充電電流1Aで充電終止電圧4.2Vまで充電を行い、充電電流1Aで放電終止電圧3Vまで放電を行った。これを1サイクルとして充放電を繰り返し、初期容量に対する500サイクル後の容量保持率をサイクル特性として表した。
(9)粘度平均分子量Mv
ASTM−D4020に基づき、デカリン溶媒における135℃での極限粘度[η]を求めた。ポリエチレンのMvは次式により算出した。
[η]=6.77×10-4Mv0.67
ポリプロピレンについては、次式によりMvを算出した。
[η]=1.10×10-4Mv0.80
[実施例1]
(A層)/(B層)/(A層)の3層構成を有する積層微多孔膜の製造例を示す。実施例で使用した原料樹脂は表1に示した。表1中、HDPEは粘度平均分子量(MV)が300,000の高密度ポリエチレン、UHMWPEはMVが1000,000の超高分子量ポリエチレン、PPはMVが500,000のアイソタクティックホモポリプロピレンを示す。
表1に示す配合割合(質量部)にて原料樹脂(樹脂成分)を配合した。当該原料樹脂100質量部に対し、核剤としてビス(P−エチルベンジリデン)ソルビトールを0.5質量部、酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.3質量部、可塑剤として流動パラフィン(37.8℃における動粘度75.90cSt、密度868kg/m3)を10質量部配合した。これらの原料をヘンシェルミキサーで攪拌し原料を調製した。
次に、(A)層の原料、(B)層の原料をそれぞれ別個の二軸押出機(口径44mm、L/D=49)に投入した。両押出機のシリンダーの途中部分に、流動パラフィンを、(A)層に68質量%、(B)層に62質量%になるように注入した。
両表層((A)層)、中間層((B)層)の押出量を調整し、ダイス出口で(A)層と(B)層の厚み比が表2に記載の厚み比となるように設定した。
なお、押出機とダイスとの間には、250メッシュのスクリーンを配した。ダイスはマルチマニホールド式の共押出が可能なTダイを用いた。ダイス内では、表層がほぼ均等に等分され、中間層の両側に積合された。ダイスから出た溶融フィルム原反は、キャストロールで冷却固化させた。
このシートを同時二軸延伸機で120℃の条件で面積倍率45倍に延伸した後、塩化メチレンに浸漬して、流動パラフィンを抽出除去後、乾燥し、さらにテンター延伸機により125℃の条件で横方向に1.5倍延伸し、この延伸シートを130℃で7%幅方向に緩和して熱処理を行った。これにより、表層の二層が同一の組成で、中間層が異なる二種三層構造を有する全層で18μm(表層/中間層/表層=3μm/12μm/3μm)の微多孔膜を得た。得られた微多孔膜の物性を表2に示す。
[実施例2〜9,11及び13〜15、比較例1〜3、参考例10
表2及び3に記載した各層構成、構造因子を変化させて、実施例1と同様の方法により積層微多孔膜を成型し評価した。実施例14及び15に用いた組成6及び7の原料樹脂には、無機フィラーとしてシリカ(アエロジル社製 R972)を加えた。また、添加した流動パラフィンの量は、各例で異なるが40質量%〜80質量%の範囲内であった。同時二軸延伸機の条件は115℃〜130℃の範囲内、面積倍率45倍に延伸した。流動パラフィンを抽出除去後、乾燥し、さらにテンター延伸機により120〜130℃の条件で横方向に1.1〜2.0倍延伸し、この延伸シートを130℃で7%幅方向に緩和して熱処理を行った。得られた微多孔膜の物性を表2及び3に示す。
参考例12]
(A層)を中間層に配置し、(B層)を表層に配置し、実施例1と同様の方法により積層微多孔膜を得た。
[比較例4]
延伸開孔法による製膜例であり、(A層)と(B層)を別個に押出成型した後に積合した。具体的には、表3に示す層組成を(A層)(B層)を別々に可塑剤の添加なしに押出し、ドラフト比200で引取り原反を作成した後、得られた原反を熱処理し、(A層)(B層)を表3の配置になるように積合した。その後、冷間延伸、熱間延伸することで製膜した。評価結果を表3に示す。
Figure 0005717302
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本発明によれば、セパレータとして用いた場合に良好な安全性と良好なサイクル性とを兼ね備えた二次電池を実現し得る多層微多孔膜を提供さることができる。また本発明の応用により、高電圧下において耐酸化性に優れたリチウムイオン2次電池(LIB)等の非水電解質2次電池を提供することができる。

Claims (3)

  1. (A層)と、(A層)とは異なる(B層)と、を含む(A層)/(B層)/(A層)の3層構成を有する積層微多孔膜であって、
    前記(A層)の気孔率(気孔率A)が35〜80%、前記(B層)の気孔率(気孔率B)が30〜60%、当該(気孔率A)−(気孔率B)が3〜40%、を満たし、
    前記(B層)の厚みが、前記積層微多孔膜の全体に対して50%以上であり、
    膜厚み20μm換算の透気度が300秒/100cc以下、膜厚み20μm換算の突刺し強度が300g以上、全層の平均孔径Dが0.02μm以上0.1μm以下吸液性指数(H30)が7mm以上、を満たす、積層微多孔膜。
  2. 前記気孔率Aが40〜70%であり、前記気孔率Bが30〜50%である、請求項記載の積層微多孔膜。
  3. ポリオレフィン組成物を主体とする、請求項1又は2記載の積層微多孔膜。
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