JP6486621B2 - 積層微多孔性フィルム及びその製造方法、並びに電池用セパレータ - Google Patents
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Description
[1]第1の樹脂組成物からなる第1の微多孔性フィルムと、第2の樹脂組成物からなる第2の微多孔性フィルムと、を積層して備え、前記第1の樹脂組成物はポリプロピレン樹脂を前記第1の樹脂組成物の全量に対して50質量%以上含み、前記第2の樹脂組成物はポリエチレン樹脂を含み、融点が100℃〜150℃であり、前記第1の樹脂組成物及び前記第2の樹脂組成物のMFRがいずれも1.0g/10分以下であり、前記第1の樹脂組成物に含まれる樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が10以上であり、かつ、TD引張強度が160〜170kgf/cm 2 である、積層微多孔性フィルム。
[2]前記第2の樹脂組成物は、前記第1の樹脂組成物の融点TmAよりも低い融点TmBを有するものである、[1]記載の積層微多孔性フィルム。
[3]前記積層微多孔性フィルムの膜厚が16μm以下である、[1]又は[2]記載の積層微多孔性フィルム。
[4]前記積層微多孔性フィルムの透気度が、膜厚20μm当たり10〜5000秒/100ccである、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の積層微多孔性フィルム。
[5]前記第1の樹脂組成物はポリプロピレン樹脂を含む、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の積層微多孔性フィルム。
[6]前記第2の樹脂組成物はポリエチレン樹脂を含む、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の積層微多孔性フィルム。
本実施形態の積層微多孔性フィルムは、第1の樹脂組成物からなる第1の微多孔性フィルムと、第2の樹脂組成物からなる第2の微多孔性フィルムとを備える。
TmA>TmB (1)
で表される条件を満足することが好ましい。ここで、TmAは第1の樹脂組成物の融点、TmBは第2の樹脂組成物の融点をそれぞれ示す。第1の樹脂組成物の融点TmAと第2の樹脂組成物の融点TmBとの差は5℃以上であることがより好ましく、更に好ましくは10℃以上である。それらの融点の関係が上記式(1)で表される条件を満たすと、積層微多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いた場合、異常電流により電池の内部温度が上昇した際に、より低融点である第2の微多孔性フィルムが溶融してもより高融点である第1の微多孔性フィルムは溶融し難い。その結果、電池用セパレータのフィルム形状又はシート形状が保持され、安全性が向上する傾向にある。
本実施形態における第1の微多孔性フィルムは、第1の樹脂組成物からなるものであり、第1の樹脂組成物は1種又は2種以上の樹脂を含む。第1の樹脂組成物に含まれる樹脂は特に限定されないが、好ましくは熱可塑性樹脂であり、より好ましくはオレフィン系炭化水素を単量体成分として含む重合体である。第1の樹脂組成物が、好ましくは熱可塑性樹脂、より好ましくはオレフィン炭化水素を単量体成分として含む重合体を含有することにより、電池用セパレータに求められる複数の特性を兼ね備えるので好ましい。そのような重合体としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン(以下、「PP」と略す場合がある。)樹脂、ポリブテン−1樹脂、ポリ−4−メチルペンテン樹脂及びエチレン−プロピレン共重合体のようなポリオレフィン、並びにエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等のオレフィン炭化水素をそれ以外の単量体成分と共に含む共重合体が挙げられる。第1の樹脂組成物は、オレフィン炭化水素を単量体成分として含む重合体を主成分として含むことが好ましい。これにより、電池用セパレータに求められる複数の特性をより良好に兼ね備えることができる。同様の観点から、第1の樹脂組成物はポリプロピレン樹脂を主成分として含むことがより好ましい。
本実施形態における第2の微多孔性フィルムは、第2の樹脂組成物からなるものであり、第2の樹脂組成物は1種又は2種以上の樹脂を含む。第2の樹脂組成物に含まれる樹脂は特に限定されないが、好ましくは熱可塑性樹脂である。そのような樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂等のオレフィン系炭化水素を単量体成分として含む重合体であるポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂等の飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
本実施形態の積層微多孔性フィルムの気孔率は、好ましくは20%〜70%、より好ましくは35%〜65%、更に好ましくは45%〜60%である。気孔率が20%以上であると、積層微多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いた場合により十分なイオン透過性を確保し得る。一方、気孔率が70%以下であると、積層微多孔性フィルムがより十分な機械強度を確保し得る。
気孔率(%)=(体積(cm3)−質量(g)/樹脂組成物の密度(g/cm3))/体積(cm3)×100
本実施形態の積層微多孔性フィルムの製造方法は、上記の積層微多孔性フィルムの製造方法であって、例えば、好ましくはTダイやサーキュラーダイを用い、(a)複数の樹脂組成物(例えば、第1の樹脂組成物及び第2の樹脂組成物。以下同様。)を共押出法により押し出して、複数の樹脂フィルム(例えば、第1の樹脂組成物からなる樹脂フィルム及び第2の樹脂組成物からなる樹脂フィルム。以下同様。)を積層した積層フィルムを形成する工程と、その積層フィルムを乾式法により開孔して積層微多孔フィルムを形成する工程とを有する製造方法であってもよい。あるいは、Tダイやサーキュラーダイを用い、(b)複数の樹脂フィルムを別々に押出成形した後、ラミネート法により各樹脂フィルムを貼り合せて積層した積層フィルムを形成し、その後、その積層フィルム乾式法により開孔して積層微多孔フィルムを形成する方法、(c)複数の樹脂フィルムを別々に押出成形して、更に乾式法により開孔してそれぞれ微多孔性フィルムを得た後に、それらの微多孔性フィルムを貼合する方法が挙げられる。なお、上述の乾式法により開孔する方法としては、例えば、延伸して多孔化する方法が挙げられる。これらの中でも、得られる積層微多孔性フィルムに要求される物性やイニシャル/ランニングコストの観点から、共押出法により各樹脂フィルムを積層した積層フィルムを成形した後、その積層フィルムを延伸して多孔化する(a)の方法が好ましい。一方、透気性に関しては(a)の方法よりは若干劣るものの、積層微多孔性フィルムの熱収縮率を小さくできるという観点からは(c)の方法も好ましい。
(A)少なくとも1つの樹脂フィルムを少なくとも一方向に1.05倍〜2.0倍に冷延伸する冷延伸工程。
(B)上記冷延伸された少なくとも1つの樹脂フィルムを少なくとも一方向に1.05倍〜5.0倍に熱延伸する熱延伸工程。なお、熱延伸工程における延伸温度は、冷延伸工程における延伸温度よりも高い。
実施例及び比較例における各種特性の評価方法は以下の通りである。
融点は、JIS K−7121に準拠した方法により測定した。
MFRは、JIS K−7210に準拠して、ポリプロピレン樹脂については、230℃、2.16kgの条件で、ポリエチレン樹脂については、190℃、2.16kgの条件で測定した。MFRの単位はg/10分である。
樹脂組成物における樹脂の分子量分布は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)から求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnの値である。GPC測定は、東ソー社製のGPC装置(商品名「HLC−8121GPC/HT」)を用いて行った。カラムとして東ソー社製の商品名「TSKgel GMHHR−H(20)」(2本)を用い、移動相o−ジクロロベンゼン(o−DCB)、カラム温度155℃、流量1.0mL/分、試料濃度0.5mg/mL(o−DCB)、注入量500μL、試料溶解温度160℃、試料溶解時間3時間の条件で行った。分子量の校正は、ポリスチレンで行い、ポリスチレン換算分子量でMw及びMnを求め、分子量分布を導出した。
樹脂組成物の密度をJIS K−7112に準拠して測定した。密度の単位はg/cm3である。
膜厚は、ダイヤルゲージ(尾崎製作所社製、商品名「PEACOCK No.25」)を用いて測定した。
フィルムから10cm×10cm角のサンプルを切り出し、そのサンプルの体積と質量とから下記式を用いて算出した。
気孔率(%)=(体積(cm3)−質量(g)/樹脂組成物の密度(g/cm3))/体積(cm3)×100
サンプルの透気度をJIS P−8117に準拠したガーレー式透気度計にて測定した。サンプルの透気度の値を、膜厚20μm当たりに換算した値を透気度とした。
(株)カトーテック社製のハンディー圧縮試験器KES−G5型(型番)に、直径1mm、先端の曲率半径0.5mmの針を装着し、温度23±2℃、針の移動速度0.2cm/secで突刺試験を行い、サンプルの突刺強度を測定した。サンプルの突刺強度の値を、膜厚20μm当たりに換算した値を突刺強度とした。
突刺強度(N)=サンプルの突刺強度×20/膜厚
JIS K−7127に準拠し、島津製作所製の引張試験機、オートグラフAG−A型(商標)を用いて、MD及びTDサンプル(形状;幅10mm×長さ100mm)について、破断時の引張強度(単位:kg)を測定した。なお、サンプルはチャック間を50mmとし、サンプルの両端部(各25mm)の片面にセロハンテープ(日東電工包装システム(株)製、商品名:N.29)を貼ったものを用いた。また、試験中のサンプル滑りを防止するために、引張試験機のチャック内側に、厚さ1mmのフッ素ゴムを貼り付けた。
破断時の引張強度の値を試験前のサンプル断面積で除することにより、MD及びTDの引張強度(単位:kg/cm2)を求めた。
まず、第1の樹脂組成物(a−1)として、融点が165℃、MFRが0.5g/10分、Mw/Mnが11であるポリプロピレン樹脂を用意し、第2の樹脂組成物(b−1)として、融点が136℃、MFRが0.25g/10分、密度が0.96g/cm3であるポリエチレン樹脂を用意した。次に、上記ポリプロピレン樹脂を、口径20mm、L/D=30の、220℃に設定した単軸押出機にフィーダーを介して投入し、さらに、上記ポリエチレン樹脂を、200℃に設定した上記単軸押出機にフィーダーを介して投入し、押出機先端に設置したリップ厚3.0mmの共押Tダイからそれらの樹脂を押し出した。その後直ちに、押し出した溶融状態にある樹脂に25℃の冷風を当て、95℃に冷却したキャストロールでドロー比200倍、巻き取り速度15m/分の条件で巻き取り、両外層がより高融点である第1の樹脂フィルム(A−1)であり、それら両外層に挟まれた内層がより低融点である第2の樹脂フィルム(B−1)である構造を有する3層積層フィルム(Af−1)を成形した。この積層フィルム(Af−1)に対して130℃に加熱された熱風循環オ−ブン中で6時間アニールを施した。
第2の樹脂組成物(b−1)に代えて、第2の樹脂組成物(b−2)として融点が136℃、MFRが0.32g/10分、密度が0.96g/cm3であるポリエチレン樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層微多孔性フィルムを得た。得られた積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度及び突刺強度を求めた。その結果を表1に示す。
第1の樹脂組成物(a−1)に代えて、第1の樹脂組成物(a−2)として融点が165℃、MFRが1.7g/10分、Mw/Mnが10であるポリプロピレン樹脂を用いたこと以外は実施例2と同様にして、積層微多孔性フィルムを得た。得られた積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、突刺強度及び引張強度を求めた。その結果を表1に示す。
第1の樹脂組成物(a−1)に代えて、第1の樹脂組成物(a−3)として融点が165℃、MFRが2.1g/10分、Mw/Mnが10であるポリプロピレン樹脂を用いたこと以外は実施例2と同様にして、積層微多孔性フィルムを得た。得られた積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、突刺強度及び引張強度を求めた。その結果を表1に示す。
第2の樹脂組成物(b−2)に代えて、第2の樹脂組成物(b−3)として融点が136℃、MFRが1.3g/10分、密度が0.96g/cm3であるポリエチレン樹脂を用いたこと以外は比較例3と同様にして、積層微多孔性フィルムを得た。得られた積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、突刺強度及び引張強度を求めた。その結果を表1に示す。
第2の樹脂組成物(b−1)に代えて、第2の樹脂組成物(b−3)として融点が136℃、MFRが1.3g/10分、密度が0.96g/cm3であるポリエチレン樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層微多孔性フィルムを得た。得られた積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、突刺強度及び引張強度を求めた。その結果を表1に示す。
第1の樹脂組成物(a−1)に代えて、第1の樹脂組成物(a−4)としてとして融点が165℃、MFRが0.5g/10分、Mw/Mnが8であるポリプロピレン樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層微多孔性フィルムを得た。得られた積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、突刺強度及び引張強度を求めた。その結果を表1に示す。
Claims (6)
- 第1の樹脂組成物からなる第1の微多孔性フィルムと、第2の樹脂組成物からなる第2の微多孔性フィルムと、を積層して備え、
前記第1の樹脂組成物はポリプロピレン樹脂を前記第1の樹脂組成物の全量に対して50質量%以上含み、
前記第2の樹脂組成物はポリエチレン樹脂を含み、融点が100℃〜150℃であり、
前記第1の樹脂組成物及び前記第2の樹脂組成物のMFRがいずれも1.0g/10分以下であり、
前記第1の樹脂組成物に含まれる樹脂の分子量分布(Mw/Mn)が10以上であり、かつ、
TD引張強度が160〜170kgf/cm 2 である、
積層微多孔性フィルム。 - 前記第2の樹脂組成物は、前記第1の樹脂組成物の融点TmAよりも低い融点TmBを有するものである、請求項1記載の積層微多孔性フィルム。
- 前記積層微多孔性フィルムの膜厚が16μm以下である、請求項1又は2記載の積層微多孔性フィルム。
- 前記積層微多孔性フィルムの透気度が、膜厚20μm当たり10〜5000秒/100ccである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層微多孔性フィルム。
- 前記第1の樹脂組成物はポリプロピレン樹脂を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層微多孔性フィルム。
- 前記第2の樹脂組成物はポリエチレン樹脂を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層微多孔性フィルム。
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