JPWO2017170288A1 - ポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法、電池用セパレータ並びに電池 - Google Patents

ポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法、電池用セパレータ並びに電池 Download PDF

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Abstract

本発明は、透気抵抗度を十分に低く抑えたままに低シャットダウン温度を達成できるポリオレフィン微多孔膜を提供することを目的とする。本発明は、少なくとも一方の表面の一部又は全部が、ポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂組成物からなる互いに不規則に結合した多数の湾曲した葉状構造の集合体によって形成されており、該集合体が形成される表面部分の表面粗さが40nm以上であるポリオレフィン微多孔膜である。

Description

本発明はポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法、電池用セパレータ並びに電池に関する。
ポリオレフィン微多孔膜は、物質の分離や選択透過などに用いられる分離膜、アルカリ二次電池、リチウム二次電池、燃料電池及びコンデンサーなど電気化学素子の隔離材等として広く使用されている。特にリチウムイオン二次電池用セパレータとして好適に使用されている。
リチウムイオン二次電池用セパレータには、高エネルギー密度化や、シャットダウン温度低下による安全性の向上などが求められている。そのような要求に対して、例えば、特許文献1には、押出成形して得られた、成膜用溶剤を含むポリオレフィン組成物のゲル状シートを延伸した後、その表面を熱溶剤で処理することにより、表面の細孔径が非常に大きく、平均孔径が膜厚の中心方向にむかって徐々に小さくなっている微多孔膜を開示している。
また、シャットダウン温度を低下させることを目的として、特許文献2には、主鎖中に短鎖分岐を有する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を添加することによりシャットダウン温度を低下させる方法が開示されている。これは、LLDPEの主鎖中に含まれる短鎖分岐が結晶形成を阻害し、最終的に得られる樹脂の融点を低下させるといった効果による。
しかしながら、特許文献1のように、延伸後に熱溶剤で膜を処理する方法では、微多孔膜の内部まで高温にさらされるため、膜の強度を大きく損なう恐れがある。また、特許文献2のような原料の変更は、製膜工程条件を大きく変更する必要があり、LLDPEの配合は透気抵抗度を増加(悪化)させる傾向があった。さらに、何らかの原因で孔閉塞後も昇温が続く場合、膜を構成する融解したオレフィンの粘度低下及び膜の収縮により、ある温度で破膜を生じることがある。また、一定高温下に放置すると、融解したポリオレフィンの粘度低下及び膜の収縮により、ある時間経過後に破膜を生じる可能性がある。この現象はポリオレフィンに限定された現象ではなく、他の熱可塑性樹脂を用いた場合においても、その微多孔膜を構成する樹脂の融点以上では避けることができない。
これまで微多孔膜の耐熱性向上のために様々な検討が行われてきたが、ポリオレフィン元来の物理的性質により、ポリオレフィン単体での微多孔膜としては耐熱性に限度がある。そこで、ポリオレフィン微多孔膜上に耐熱性樹脂層をコーティングした積層多孔質膜が開発されている。耐熱樹脂層としては耐熱性、耐酸化性を併せ持つフッ素系樹脂が好適に用いられている。
一般的に、基材であるポリオレフィン微多孔膜へのコーティングには、コーティング剤の「アンカー効果」が重要であり、コート剤が基材深くまで入り込むことで、基材とコート層の接着性が向上する。この接着性の向上により、複合微多孔膜としての耐熱性の向上を達成可能である。一方で、コート剤が深く浸透することで、基材中の多孔構造の穴が塞がり、電解液の浸透が妨げられることも知られており、透気抵抗度の上昇が複合微多孔膜の懸念点として挙げられる。
特許文献3には厚さ25μmのポリオレフィン多孔質膜に直接、膜厚が1μmとなるようにポリアミドイミド樹脂を塗布し、25℃の水中に浸漬した後、乾燥して得たリチウムイオン二次電池用セパレータが開示されている。
しかし、特許文献3では透気抵抗度の大幅な上昇は避けられなかった。
特許文献4には耐熱性樹脂である弗化ビニリデン系共重合体を含むドープに平均膜厚36μmのアラミド繊維からなる不織布を浸漬し、乾燥して得た電解液担持ポリマー膜が開示されている。
また、特許文献5では耐熱性樹脂であるポリフッ化ビニリデンを主成分とするドープに膜厚25.6μmのポリプロピレン微多孔膜を浸漬し、凝固漕、水洗、乾燥工程を経由して得た複合多孔膜が例示されている。
しかし、特許文献4のように耐熱性樹脂溶液中にアラミド繊維からなる不織布をディッピング(浸漬)させることによりコーティングする方法については、前記不織布の内部および両面に耐熱多孔質層を形成されるため、不織布内部の連通孔を大部分に渡って塞ぐことになり、透気抵抗度の大幅な上昇が避けられないだけでなく、セパレータの安全性を決定付ける最も重要な機能である孔閉塞機能が得られない。
また、不織布はポリオレフィン系多孔質膜に比べ薄膜化が困難であるため、今後、進むであろう電池の高容量化には適さない。
特許文献5においてもポリプロピレン微多孔膜の内部および両面に耐熱多孔質層を形成されることに変わりはなく、特許文献4と同様に透気抵抗度の大幅な上昇が避けられず、また、孔閉塞機能が得られ難い。
特開2010−059436号公報 特開2013−126765号公報 特開2005−281668号公報 特開2001−266942号公報 特開2003−171495号公報
そこで、本発明は、透気抵抗度を十分に低く抑えたままに低シャットダウン温度を達成できるポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法を提供する。
また、本発明は、多孔層の基材への十分な接着性を維持しつつ、同時に透気抵抗度上昇の抑制が可能なポリオレフィン多層多孔膜を提供する。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意研究を行った結果、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面を、ポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂組成物からなる互いに不規則に結合した多数の湾曲した葉状(花弁状)構造の集合体によって形成された状態とし、その表面粗さを特定の範囲に制御することによって上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明に係るポリオレフィン微多孔膜は、少なくとも一方の表面の一部又は全部が、ポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂組成物からなる互いに不規則に結合した多数の湾曲した葉状構造の集合体によって形成されており、前記葉状構造の集合体が形成されている表面部分の表面粗さが40nm以上であるポリオレフィン微多孔膜である。
本発明の構成により上記課題を解決できる理由は明らかではないが、次のように推測される。ポリオレフィン樹脂組成物を押出成形してなるゲル状シート中のポリオレフィン樹脂は、結晶形態として主にラメラ構造を有していると考えられる。このラメラ構造は延伸とともに減少していき、より高融点の伸びきり結晶が生成すると考えられる。本発明に係るポリオレフィン微多孔膜は、表面に葉状構造を有する。この葉状構造には、ラメラ構造といったより融点が低い構造が多く含まれる。また、この葉状構造は、低温では大きく湾曲しているため表面に大きな孔が形成され、透気抵抗を低く抑えられる。その一方、シャットダウン温度に近づくと葉状構造の面が膜の面方向に配向しやすくなり透気抵抗が上昇し、シャットダウンを起こしやすくすることができる。本発明は、表面粗さが40nm以上であれば、ラメラ構造を多く含み、かつ大きな孔が形成されている湾曲した葉状構造がポリオレフィン微多孔膜の表面に形成され、透気抵抗度を十分に低く抑えたままに低シャットダウン温度を達成できることを見出したものである。また、本発明に係るポリオレフィン微多孔膜は表面に葉状構造を有し、かつ表面粗さが40nm以上であることにより、耐熱性樹脂を基材となるポリオレフィン微多孔膜に浸透させてもポリオレフィン微多孔膜表面の孔が閉塞しにくいことが予想される。その結果として十分な接着性を有しつつもポリオレフィン微多孔膜の孔が耐熱性樹脂により閉塞することを防ぐことができると考えられる。本発明の他の一実施形態は、葉状構造の集合体が形成されている表面部分の表面粗さが40nm以上であれば、多孔層の基材への十分な接着性を維持しつつ、同時に透気抵抗度上昇の抑制が可能なポリオレフィン多層多孔膜が得られることを見出したものである。
本発明によれば、透気抵抗度を十分に小さく抑えたままで低いシャットダウン温度も有するポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法、並びに電池用セパレータ及び電池を提供することができる。
また、本発明によれば、基材への十分な接着性を維持しつつ、同時に透気抵抗度上昇の抑制が可能なポリオレフィン多層多孔膜及びその製造方法、並びに電池用セパレータ及び電池を提供することができる。
図1は、本発明のポリオレフィン微多孔膜を製造するための延伸機の一例の概略図である。 図2は、実施例及び比較例のポリオレフィン微多孔膜の表面SEM画像である。 図3は、実施例及び比較例のポリオレフィン微多孔膜の表面AFM画像である。 図4は、実施例及び比較例のポリオレフィン微多孔膜の平均面粗さとシャットダウン温度の関係を示すグラフである。 図5は、実施例及び比較例のポリオレフィン微多孔膜の平均面粗さと透気抵抗度の関係を示すグラフである。 図6は、実施例1のポリオレフィン微多孔膜のSEM断面図である。
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されない。また、図面は説明の都合上、寸法や比率が、実際とは異なる場合がある。
1.ポリオレフィン微多孔膜
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、少なくとも一方の表面に、ポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂組成物からなり、互いに不規則に結合した複数の湾曲した葉状構造の集合体が形成されている。葉状構造の集合体が形成された表面部分は、その表面粗さが40nm以上である。
[葉状構造の集合体]
図2の上段は、本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜の表面に形成された葉状構造の集合体の一例を示す表面SEM画像である。上記葉状構造の集合体は、連続気泡体のように連続した微細孔を有する構造であり、連続気泡体の気泡壁に相当する部分が、葉状構造を形成している。この葉状構造は、不定形の湾曲した葉状、花弁状又はシート状の構造をしており、厚みに対して面積が十分に大きい不定形の湾曲した面を有する。複数の葉状構造は、それぞれが互いに入り組みながら、不規則に結合し、例えば、それぞれの面、辺を共有したり、糸状体によって互いに結合されたりして、集合体を形成している。
葉状構造一枚の厚みとしては、10〜100nm程度である。
図6は、本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜の一例を示す断面図である。図6に示されるように、葉状構造の集合体は、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面に形成される。ポリオレフィン微多孔膜の厚みに対して、葉状構造の集合体が形成されている表面部分の厚みの下限は、十分なシャットダウン低下効果を得る観点から、好ましくは3%以上であり、より好ましくは5%以上である。また、上限は、十分な強度を確保する観点から、好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下であり、さらにより好ましくは10%以下であり、特に好ましくは9%未満である。葉状構造の集合体が形成されている表面部分の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)による膜の断面画像(30000倍)から測定することができる(図6参照)。
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜の平均細孔径は、葉状構造の集合体が形成されている表面部分とそれ以外の領域とで異なっている。葉状構造の集合体が形成されている表面部分の平均細孔径は、0.10μmより大きいことが好ましく、より好ましくは0.12μm以上であり、さらに好ましくは0.15μm以上である。平均細孔径の上限は特に制限されないが、デンドライトの成長を抑制する観点から、2.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以下である。一方、葉状構造の集合体が形成されている部分以外の領域は、繊維状のフィブリルにより形成された緻密な三次元網目構造を有する。この領域の平均細孔径は、十分に低い透気抵抗を確保するために0.01μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.03μm以上である。葉状構造の集合体が形成されている表面部分以外の領域の平均細孔径の上限は、特に限定されず、0.10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.085μm以下ある。
本実施形態の微多孔膜の少なくとも一方の表面は、その一部が葉状構造の集合体で形成されていてもよく、好ましくは少なくとも一方の表面の90%以上が葉状構造の集合体で形成され、より好ましくは少なくとも一方の表面の100%が葉状構造の集合体で形成される。
本実施形態の微多孔膜の上記葉状構造の集合体が形成されている表面部分の表面粗さは、40nm以上であり、好ましくは50nm以上であり、より好ましくは70nm以上である。上記表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)を示し、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)で測定可能である(図3参照)。
上記葉状構造の集合体の形成方法は特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂組成物を押出成形して得られるゲル状シートの表面を溶融させた後、延伸する方法が例示される。また、ゲル状シート表面の溶融の条件を適宜変更することにより、葉状構造の厚さ、大きさ、及び、湾曲度、並びに、葉状構造の集合体全体の厚さ、平均細孔径、及び、表面粗さの制御が可能である。
(1)ポリオレフィン樹脂
本明細書において、「ポリオレフィン樹脂」の語は、1種類のポリオレフィン、又は2種以上のポリオレフィンの混合物を意味する。また、「ポリオレフィン樹脂組成物」の語は、ポリオレフィン微多孔膜中、ポリオレフィン樹脂、及び、ポリオレフィン以外のポリマー、添加剤などの他の成分を含む場合を意味する。さらに、「ポリオレフィン樹脂(組成物)溶液」は、ポリオレフィン微多孔膜の製造工程において、ポリオレフィン樹脂又はポリオレフィン樹脂組成物を製膜用溶剤と混ぜたものを意味する。
(ポリオレフィン)
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂又はポリオレフィン樹脂組成物からなる。ポリオレフィン樹脂又はポリオレフィン樹脂組成物に用いられるポリオレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−ペンテン−1)、エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。これらのポリオレフィンは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。これらのうち好ましくは、強度や溶融温度の観点からポリエチレン又はポリプロピレンであり、より好ましくはポリエチレンである。なお、以下「ポリエチレン樹脂」の語は、樹脂成分が、1種類のポリエチレン、又は2種以上のポリエチレンの混合物からなる樹脂、を意味する。
以下、この項においては、ポリオレフィン微多孔膜がポリエチレン樹脂を主成分とする場合について詳述する。
ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリエチレン樹脂は、ホモポリマーであってもよく、他のα−オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。これらの中でも、経済性及び膜強度の観点から、好ましくはホモポリマーである。共重合体に含まれるエチレン以外のα―オレフィンとしては、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等を使用することができる。エチレン以外のα−オレフィンの含有量は、共重合体100モル%を基準として10.0モル%以下であることが好ましい。かかる共重合体は、チーグラー・ナッタ触媒又はシングルサイト触媒を用いるプロセス等の、いずれかの都合のよい重合プロセスにより製造することができる。
また、ポリエチレン樹脂は、ポリエチレン以外の他のポリオレフィン樹脂を含んでもよく、Mwが1×10〜4×10のポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリオクテン及びMwが1×10〜1×10のポリエチレンワックスからなる群から選ばれた少なくとも一種を含んでもよい。
前記ポリエチレン以外のポリオレフィンの含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜調節できるが、前記ポリオレフィン樹脂中、10重量部以下が好ましく、5重量部未満がより好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜中、ポリエチレン樹脂の割合は、ポリオレフィン樹脂全体100重量部とした場合、90重量部未満であるのが好ましい。ポリオレフィン樹脂中のポリエチレン樹脂の含有量を5重量部未満であれば、微多孔膜の強度の観点から好ましい。
また、ポリエチレン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、延伸などの加工のし易さなどの観点からは1.5×10以下であることが好ましく、より好ましくは、5×10以下である。
ポリエチレン樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、通常1×10〜1×10の範囲内であり、好ましくは1×10〜5×10の範囲内であり、より好ましくは1×10〜4×10の範囲内である。但し、Mwが1×10未満のポリエチレン樹脂の含有量は、ポリエチレン樹脂全体100重量部に対して、5重量部未満であるのが好ましい。このような低分子量成分の含有量を5重量部未満であれば、微多孔膜の機械的強度の観点から好ましい。なお、上記ポリエチレン樹脂のMwは、原料として用いられるポリエチレン樹脂のMwを示す。
ポリエチレン樹脂としては、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンなどを用いることができる。ここで、高密度ポリエチレンは、密度が0.94g/cmを超えるポリエチレン、中密度ポリエチレンは、密度が0.93g/cm以上0.94g/cm以下のポリエチレン、低密度ポリエチレンは、0.93g/cm未満のポリエチレンをいう。
超高分子量ポリエチレンを用いる場合、微多孔膜の強度を付与する観点からその重量平均分子量(Mw)は8×10以上であるのが好ましく、より好ましくは1×10以上である。なお、上記超高分子量ポリエチレンのMwは、原料として用いられるポリエチレン樹脂のMwを示す。
ポリエチレン樹脂としては、超高分子量ポリエチレンを含むものが好ましい。超高分子量ポリエチレンを含むポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種類のポリエチレンをさらに含むことが好ましい。より好ましくは、機械的強度及び成形加工性に優れる観点から超高分子量ポリエチレンと高密度ポリエチレンとを含むポリエチレン樹脂であり、透気抵抗度をより低下させる観点から、さらにより好ましくは超高分子量ポリエチレンと高密度ポリエチレンとからなるポリエチレン樹脂である。
用いられる高密度ポリエチレン及び中密度ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は、混成型加工性の観点から1×10以上8×10未満であるのが好ましい。用いられる低密度ポリエチレンの重量平均分子量は1×10以上5×10未満の範囲内であるのが好ましい。
ポリエチレン樹脂が超高分子量ポリエチレンを含む場合、ポリエチレン樹脂全体100重量部に対して、微多孔膜の強度向上の効果を得る観点から超高分子量ポリエチレンの含有量の下限は1重量部以上であることが好ましく、10重量部以上であることがより好ましく、30重量部以上であることが特に好ましい。また、押出成形のし易さの観点から、超高分子量ポリエチレンの含有量の上限は、ポリエチレン樹脂全体100重量部に対して、90重量部以下であることが好ましく、80重量部以下であることがより好ましく、70重量部以下であることがさらに好ましい。
ポリエチレン樹脂の分子量分布(MWD)[Mwと数平均分子量(Mn)の比:Mw/Mn]は、押出成型性、安定した結晶化制御による物性コントロールの観点から、1.0以上であるのが好ましく、より好ましくは3.0以上である。また、十分な強度を得る観点から、Mw/Mnは300以下であるのが好ましく、より好ましくは100未満であり、さらにより好ましくは10未満であり、特に好ましくは8未満である。このようなMWDの範囲に調整するために、ポリエチレン樹脂を多段重合により調製してもよい。
ポリエチレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、2.0g/10分以下であることが好ましく、0.01以上1.0g/10分以下であることがより好ましい。MFRが前記範囲内であれば、得られるポリオレフィン微多孔膜の突刺強度などの機械強度が低下することを避けることができる。なお、前記MFRは、JIS K6922−2に準拠して、190℃、2.16kg荷重にて、溶融したポリマーをダイ(長さ8mm、外径9.5mm、内径2.095mm)より押出して測定した値である。
(2)その他の樹脂成分
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、必要に応じて、その他の樹脂成分を含んでもよい。その他の樹脂成分としては、耐熱性樹脂であることが好ましく、耐熱性樹脂としては、例えば、融点が150℃以上の結晶性樹脂(部分的に結晶性である樹脂を含む)、及び/又はガラス点移転(Tg)が150℃以上の非晶性樹脂が挙げられる。ここでTgはJIS K7121に準拠して測定した値である。
その他の樹脂成分の具体例としては、ポリエステル、ポリメチルペンテン[PMP又はTPX(トランスパレントポリマーX)、融点:230〜245℃]、ポリアミド(PA、融点:215〜265℃)、ポリアリレンスルフィド(PAS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ化ビニリデン単独重合体や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ化オレフィン及びこれらの共重合体などの含フッ素樹脂;ポリスチレン(PS、融点:230℃)、ポリビニルアルコール(PVA、融点:220〜240℃)、ポリイミド(PI、Tg:280℃以上)、ポリアミドイミド(PAI、Tg:280℃)、ポリエーテルサルフォン(PES、Tg:223℃)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、融点:334℃)、ポリカーボネート(PC、融点:220〜240℃)、セルロースアセテート(融点:220℃)、セルローストリアセテート(融点:300℃)、ポリスルホン(Tg:190℃)、ポリエーテルイミド(融点:216℃)、ポリ三フッ化塩化エチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン等からなるものでもよい。その他の樹脂成分の好ましいMwは、樹脂の種類により異なるが、一般的に1×10〜1×10であり、より好ましくは1×10〜7×10である。また、前記ポリオレフィン樹脂組成物中のその他の樹脂成分の含有量は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜、調節されるが、前記ポリオレフィン樹脂組成物中おおよそ10重量部以下の範囲で含有される。
(3)結晶造核剤
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、結晶造核剤を含んでもよい。用いることができる結晶造核剤としては、特に限定はなく、ポリオレフィン樹脂用に使用されている一般的な化合物系結晶造核剤や微粒子系結晶造核剤を使用できる。結晶造核剤としては、結晶造核剤、あるいは微粒子を予めポリオレフィン樹脂に混合、分散したマスターバッチであってもよい。
結晶造核剤の配合量は特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましい。
なお、結晶造核剤が微粒子系結晶造核剤である場合には、その配合量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して0.01重量部以上10重量部以下であることが好ましく、0.01重量部以上5重量部以下であることがより好ましい。微粒子系結晶造核剤の配合量が前記範囲内であると、ポリオレフィン樹脂への分散性が良好となったり、製造プロセス上の問題が少なくなり経済性に優れたりする観点から好ましい。結晶造核剤を配合することによりその結晶化速度が促進され、得られるポリオレフィン微多孔膜の細孔構造が、より均一で緻密になり、その機械的強度と耐電圧特性が向上する。
(4)その他添加剤
なお、上述したようなポリオレフィン樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、などの各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
ポリオレフィン樹脂に結晶造核剤以外の添加剤を配合する場合、その配合量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部未満であることが好ましい。0.01重量部以上であれば、これらの添加剤の効果を十分に得ることができ、また製造時の添加量制御がしやすい。10重量部未満であれば、生産性や経済性確保の観点から好ましい。
2.ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、例えば、ポリオレフィン樹脂(組成物)溶液を押出成形してなるゲル状シートを、その一方の表面又は両方の表面部分のみを溶融した後、前記ゲル状シートを延伸処理することにより製造できる。ゲル状シート中のポリオレフィン樹脂は、ラメラ構造を多く含むが、延伸により減少し、より高融点の伸びきり結晶が増加すると考えられる。本実施形態に係るポリオレフィン微多孔は、ゲル状シートの表面部分のみを溶融することによって分子の熱運動が大きくなりラメラ構造が崩れやすくなり延伸時に伸びきり結晶の生成が起こりにくくなると考えられる。
また、ゲル状シートの表面部分のみを溶融した後延伸処理することによって、ポリオレフィン微多孔膜の厚みに占める葉状構造の集合体により形成されている表面部分の厚みの割合を小さくすることができ、ポリオレフィン微多孔膜の表面が局所的に葉状構造の集合体により形成された状態にすることができる。
(1)ポリオレフィン樹脂(組成物)溶液の調製
ポリオレフィン樹脂(組成物)溶液は、ポリオレフィン樹脂又はポリオレフィン樹脂組成物にさらに適当な製膜用溶剤を配合した後、溶融混練することにより調製された溶融混練物であってもよい。ポリオレフィン樹脂(組成物)溶液が、ポリオレフィン樹脂と製膜用溶剤との溶融混練物であれば、微多孔膜としたときの孔径の高い均一性が得られる観点から好ましい。溶融混練方法として、例えば日本国特許第2132327号及び日本国特許第3347835号の明細書に記載の二軸押出機を用いる方法を利用することができる。溶融混練方法は従来公知の方法を用いることができる。
ポリオレフィン樹脂に添加する製膜用溶剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族若しくは環式の炭化水素、沸点がこれらに対応する鉱油留分等を用いることができる。ゲル状シートに含まれる製膜用溶剤の含有量を安定させる観点から流動パラフィンのような不揮発性の製膜用溶剤を用いるのが好ましい。
ポリオレフィン樹脂と製膜用溶剤との配合割合は、特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂及び製膜用溶剤の合計100質量部に対して、ポリオレフィン樹脂20〜30重量部、製膜用溶剤70〜80重量部であることが好ましい。
(2)ゲル状シートの形成
ポリオレフィン樹脂(組成物)溶液を押出機からダイに送給し、シート状に押し出す。同一又は異なる組成の複数のポリオレフィン樹脂組成物を、押出機から一つのダイに送給し、そこで層状に積層させ、シート状に押出してもよい。
押出方法はフラットダイ法及びインフレーション法のいずれでもよい。押出し温度は、使用するポリオレフィンの融点〜融点+120℃の範囲であることが好ましい。例えば、ポリオレフィンがポリエチレンである場合は、140〜250℃であることが好ましく、押出速度は0.2〜15m/分であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂(組成物)溶液の各押出量を調節することにより、ゲル状シートの厚みを調節することができる。
ゲル状シートの厚みの下限は、延伸前の加熱の際にゲル状シートの全体がポリオレフィンの融点以上の温度になることを避けるために、100μm以上であることが好ましく、より好ましくは300μm以上であり、さらに好ましくは500μm以上である。また、ゲル状シートの厚さの上限は、延伸後の膜厚を十分に薄くする観点から2000μm以下であることが好ましく、より好ましくは1800μm以下であり、さらに好ましくは1500μm以下である。
押出方法としては、例えば日本国特許第2132327号公報及び日本国特許第3347835号公報に開示の方法を利用することができる。
押出成形により得られたポリオレフィン樹脂組成物の押出成形物を冷却してゲル状のゲル状シートを形成する。ゲル状のゲル状シートの形成方法として、例えば日本国特許第2132327号公報及び日本国特許第3347835号公報に開示の方法を利用することができる。冷却は少なくともゲル化温度までは50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。冷却は25℃以下まで行うのが好ましい。
(3)ゲル状シート表面の溶融
上記押出成形により得られたゲル状シートは、延伸する前にその一方の表面又は両方の表面部分のみを溶融させる。溶融においては、図1に例示するような加熱炉を備えた延伸機を使用することが好ましい。
図1の延伸機(テンター延伸機40)は、ゲル状シートの搬送方向に3つの炉(以下、搬送方向の上流から順に第一炉10、第二炉20、第三炉30)を備えており、各炉の長さは10m程度である。各炉内には、ゲル状シートの上下且つゲル状シートの搬送方向にエアの吹き出し口が並んでおり、ゲル状シートを搬送しながら熱を加えることができる。各炉には、搬送方向に3区画程度の温度が異なる領域を設けることができる。つまり、延伸機は搬送方向の9区画程度の領域で温度を調整することができる。第一炉10で、ゲル状シート全体を延伸可能な温度領域まで昇温し、延伸前の加熱を行う。次に、第二炉20で延伸を行う。最後に、第三炉30でゲル状シートの残留応力を除去する。
まず、ゲル状シートを第一炉10に導入し、延伸前の加熱を行う。このときゲル状シート全体を延伸可能な温度領域に加熱するとともにゲル状シートの少なくとも一方の表面部分を溶融させ、表面部分以外の領域はポリオレフィンの融点以下の温度に保持されるようにする。ゲル状シートの温度は、第一炉10の設定温度、搬送速度などの条件を適宜調節することにより調節できる。
なお、製膜用溶剤を含むゲル状シートは、製膜用溶剤がポリエチレンの結晶形成を阻害し、不完全な(融点の低い)結晶を形成するため、ゲル状シート中のポリオレフィン樹脂の融点は、原料として用いたポリオレフィン樹脂そのものよりも10℃程度低くなる。よって、本明細書においては、ゲル状シート中のポリエチレン樹脂の融点とは、製膜用溶剤を含まない状態のポリエチレン樹脂の融点−10℃をいう。このため、溶融時の加熱温度の下限としては、ゲル状シート中のポリオレフィン樹脂の融点−10℃以上が好ましく、より好ましくは融点−7℃以上であり、特に好ましくは融点以上である。加熱温度の上限としては、ゲル状シート中のポリオレフィン樹脂の融点+10℃以下が好ましく、より好ましくは融点+5℃以下である。加熱温度は、例えば、第一炉10の設定温度を上記範囲に設定することにより調節することができる。ゲル状シートの表面部分のみの溶融は、搬送速度、炉の温度等を調節し、ゲル状シートの内部まで融点以上に加熱される前に通過させることにより行うことができる。
第一炉10が温度設定可能な複数区間を有する場合、少なくとも1区間が上記温度範囲内であることが好ましく、第一炉全体の平均温度が上記の温度範囲内にあることがより好ましく、第一炉の温度設定可能なすべての区間の設定温度が上記の温度範囲内にあることが特に好ましい。
加熱手段としては、特に限定されないが、例えば、所定の温度の液体もしくは気体との接触、赤外線の照射、又は、高温のロールもしくはプレートの押しつけが挙げられる。これらのうち好ましくは、ダメージや汚染が生じにくいため所定の温度の気体(エア)との接触であり、上記延伸機で採用しているように、第一炉内で所定の温度のエアをゲル状シート表面に吹き付けることが特に好ましい。なお、この際、上下両面ではなく、ゲル状シートの一方の面のみに所定の温度のエアを吹き付けてもよい。
(4)ゲル状シートの延伸
次いで、ゲル状シートを第一炉10から第二炉20に導入し表面を溶融させたゲル状シートを少なくとも一軸方向に延伸する。ゲル状シートは、加熱した状態で、テンター法、ロール法、インフレーション法、又はこれらの組合せにより所定の倍率で延伸するのが好ましい。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸及び多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよい。
ゲル状シートを延伸する際の延伸倍率(面積延伸倍率)は、一軸延伸の場合、2倍以上が好ましく、3〜30倍がより好ましい。二軸延伸の場合、9倍以上が好ましく、16倍以上がより好ましく、25倍以上が特に好ましい。また、長手及び横手方向(MD及びTD方向)のいずれでも3倍以上が好ましく、MD方向とTD方向での延伸倍率は、互いに同じでも異なってもよい。延伸倍率を9倍以上とすると、突刺強度の向上が期待できる。なお、延伸倍率とは、延伸直前のゲル状シートを基準として、延伸の次の工程に供される直前の微多孔膜の面積との比のことをいう。
延伸温度は、ポリオレフィン樹脂の結晶分散温度(Tcd)以上、Tcd+30℃以下が好ましく、Tcd+5℃以上、Tcd+28℃以下がより好ましく、Tcd+10℃以上、Tcd+26℃以下が特に好ましい。延伸温度が前記範囲内であると延伸による破膜がより抑制され、高倍率の延伸がしやすくなる。延伸温度は、延伸炉の設定温度である。
なお、その中で延伸を行う第二炉20が温度設定可能な複数区間を有する場合、少なくとも1区間が上記温度範囲内であることが好ましく、延伸炉全体の平均温度が上記の温度範囲内にあることがより好ましく、第二炉20の温度設定可能なすべての区間の設定温度が上記温度範囲内にあることが特に好ましい。
結晶分散温度(Tcd)は、ASTM D4065による動的粘弾性の温度特性測定により求められる。超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン以外のポリエチレン及びポリエチレン組成物は約90〜100℃の結晶分散温度を有するので、延伸温度は90〜130℃とするのが好ましく、より好ましくは110〜120℃であり、さらに好ましくは114〜117℃である。
以上のような延伸によりポリエチレンラメラ間に開裂が起こり、ポリエチレン相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。
次いで、延伸後のゲル状シートは、テンターに固定した状態で第三炉30において、ゲル状シート中のポリオレフィン樹脂のTcd−20℃以上、融点(T)未満で熱固定することで残留応力を除去することが好ましい。
(5)製膜用溶剤の除去
洗浄溶媒を用いて、製膜用溶剤の除去(洗浄)を行う。ポリオレフィン相は製膜用溶剤相と相分離しているので、製膜用溶剤を除去すると、微細な三次元網目構造を形成するフィブリルからなり、三次元的に不規則に連通する孔(空隙)を有する多孔質の膜が得られる。洗浄溶媒及びこれを用いた製膜用溶剤の除去方法は公知であるので説明を省略する。例えば日本国特許第2132327号明細書や特開2002−256099号公報に開示の方法を利用することができる。
(6)乾燥
製膜用溶剤を除去した微多孔膜を、加熱乾燥法又は風乾法により乾燥する。乾燥温度はポリオレフィン樹脂の結晶分散温度以下であるのが好ましく、特にTcd−5℃以下であることが好ましい。乾燥は、微多孔膜を100重量部(乾燥重量)として、残存洗浄溶媒が5重量部以下になるまで行うのが好ましく、3重量部以下になるまで行うのがより好ましい。
(7)熱処理
また、乾燥後の微多孔膜は、熱処理を行うことができる。熱処理によって結晶が安定化し、ラメラ構造の大きさが均一化される。熱処理方法としては、熱固定処理及び/又は熱緩和処理を用いることができる。熱固定処理とは、微多孔膜の寸法が変わらないように保持しながら加熱する熱処理である。熱緩和処理とは、微多孔膜を加熱中にMD方向やTD方向に熱収縮させる熱処理である。熱固定処理は、テンター方式又はロール方式により行うのが好ましい。熱固定処理温度は、ポリオレフィン樹脂のTcd−20℃以上T未満であることが好ましい。
(8)第二延伸
なお、製膜用溶剤の除去及び乾燥を行った後の微多孔膜を、少なくとも一軸方向にさらに延伸する第二延伸をしてもよい。微多孔膜の延伸は、加熱しながら前記と同様にテンター法等により行うことができる。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸及び逐次二軸延伸のいずれでもよい。
第二延伸における延伸温度は、特に限定されないが、通常90〜135℃であり、より好ましくは95〜130℃である。
第二延伸における微多孔膜の延伸の一軸方向への延伸倍率(面積延伸倍率)は、下限が1.0倍以上であるのが好ましく、より好ましくは1.1倍以上、さらに好ましくは1.2倍以上である。また、上限が1.8倍以下とするのが好ましい。一軸延伸の場合、MD方向又はTD方向に1.0〜2.0倍とする。二軸延伸の場合、面積延伸倍率は、下限が1.0倍以上であるのが好ましく、より好ましくは1.1倍以上、さらに好ましくは1.2倍以上である。上限は、3.5倍以下が好適であり、MD方向及びTD方向に各々1.0〜2.0倍とし、MD方向とTD方向での延伸倍率が互いに同じでも異なってもよい。なお、第二延伸における延伸倍率とは、第二延伸する直前の微多孔膜を基準として、第二延伸の次の工程に供される直前の微多孔膜の面積との比のことをいう。
(9)架橋処理、親水化処理
延伸後の微多孔膜に対して、さらに、架橋処理または親水化処理を行うこともできる。例えば、微多孔膜に対して、α線、β線、γ線、電子線等の電離放射線を照射することにより架橋処理を行うことができる。電子線の照射の場合、0.1〜100Mradの電子線量が好ましく、100〜300kVの加速電圧が好ましい。架橋処理により微多孔膜のメルトダウン温度が上昇する。
また、親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行うのが好ましい。
3.積層微多孔膜(多層多孔膜)
また、本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、その少なくとも一方の表面に多孔層を設け、積層多孔膜(多層多孔膜)としてもよい。多孔層としては、例えば、フィラーと樹脂バインダとを含むフィラー含有樹脂溶液や耐熱性樹脂溶液を用いて形成される多孔層を挙げることができる。本発明に係るポリオレフィン微多孔膜は、多孔層を形成するために塗布液を塗布しても透気抵抗度上昇幅を小さく抑えることができ、同時に、多孔層とポリオレフィン微多孔膜は優れた密着性を有する。このため、優れた耐熱性を有しつつ、イオン透過性に優れる。
前記フィラーとしては、従来公知の無機フィラーや架橋高分子フィラーなどの有機フィラーが使用できる。フィラーは、その耐熱性によりポリオレフィン微多孔膜を支持・補強する役割を担うため、構成する樹脂のガラス転移温度又は融点は、好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上、さらにより好ましくは200℃以上、もっとも好ましくは210℃以上であり、上限は特に設ける必要はない。ガラス転移温度が分解温度よりも高い場合には、分解温度が上記範囲内であれば良い。多孔層を構成する樹脂のガラス転移温度又は融点の下限が上記好ましい範囲であると、十分な耐熱破膜温度が得られ、高い安全性を確保できる。また、フィラーは電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
前記フィラーの平均粒径は特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上3.0μm以下である。
前記フィラーが、前記多孔層中に占める割合(質量分率)としては、耐熱性の点から、好ましくは50%以上99.99%以下である。
前記樹脂バインダとしては、前述のポリオレフィン樹脂に含まれるその他の樹脂成分の項で記載したポリオレフィンや耐熱性樹脂が好適に使用できる。
前記樹脂バインダが、前記フィラーと前記樹脂バインダとの総量に占める割合としては、両者の結着性の点から、体積分率で0.5%以上8%以下であることが好ましい。
前記耐熱性樹脂としては、前述のポリオレフィン樹脂に含まれるその他の樹脂成分の項で記載した耐熱性樹脂と同様のものが好適に使用できる。
前記フィラー含有樹脂溶液や耐熱性樹脂溶液をポリオレフィン微多孔膜の表面に塗布する方法としては、グラビアコーター法など、必要とする層厚や塗布面積を実現できる方法であれば特に限定されない。
前記フィラー含有溶液や耐熱性樹脂溶液の溶媒としては、ポリオレフィン微多孔膜に塗布した溶液から除去され得る溶媒であることが好ましく、特に限定されない。具体的には、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、水、エタノール、トルエン、熱キシレン、塩化メチレン、ヘキサンが挙げられる。
溶媒を除去する方法としては、ポリオレフィン微多孔膜に悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ポリオレフィン微多孔膜を固定しながらその融点以下の温度で乾燥する方法、減圧乾燥する方法、樹脂バインダや耐熱性樹脂の貧溶媒に浸漬して樹脂を凝固させると同時に溶媒を抽出する方法が挙げられる。
前記多孔層の厚さとしては、耐熱性向上の観点から、好ましくは0.5μm以上100μm以下である。
本実施形態の積層多孔膜において、前記多孔層の厚さが、積層多孔膜の厚さに占める割合は、目的に応じて適宜調節してもよい。具体的には、例えば15%以上80%以下であることが好ましく、20%以上75%以下がより好ましい。
また、前記多孔層は、積層多孔膜の一方の表面に形成されてもよく、両面に形成されてもよい。
本発明の電池用セパレータはポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度(Xsec/100ccAir)と積層多孔膜の透気抵抗度(Ysec/100ccAir)の差(Y−X)が20sec/100ccAir≦Y−X≦100sec/100ccAirの関係を有する。Y−Xが20sec/100ccAir未満では十分な耐熱性樹脂層の密着性が得られない。また、100sec/100ccAirを超えると透気抵抗度の大幅な上昇を招き、その結果、電池に組み込んだ際に、イオン透過性が低下するため、高性能電池には適さないセパレータとなる。
さらに電池用セパレータの透気抵抗度は、もっとも重要な特性のひとつであり、好ましくは50〜600sec/100ccAir、さらに好ましくは100〜500sec/100ccAir、もっとも好ましくは100〜400sec/100ccAirである。透気抵抗度が上記好ましい範囲であると、十分な絶縁性が得られ、異物詰まりや短絡、破膜を招きにくく、一方、膜抵抗が高過ぎず、実使用可能な範囲の充放電特性、寿命特性が得られる。
本発明において、多孔質膜Aと多孔質膜Bの界面での剥離強度F(A/B)は、F(A/B)≧1.0N/25mmであることが必要である。本発明でいう優れた密着性(接着性)とは、上記剥離強度F(A/B)が1.0N/25mm以上であることを意味し、好ましくは1.5N/25mm以上、さらに好ましくは2.0N/25mm以上である。上記F(A/B)は多孔質膜Bの多孔質膜Aに対する密着性(接着性)を意味し、1.0N/25mm未満では前記電池組み立て工程での高速加工時に耐熱性樹脂層が剥離してしまう可能性があるためである。
4.電池用セパレータ
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、水系電解液を使用する電池、非水系電解質を使用する電池のいずれにも好適に使用できる。具体的には、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、銀−亜鉛電池、リチウム二次電池、リチウムポリマー二次電池等の二次電池のセパレータとして好ましく用いることができる。中でも、リチウムイオン二次電池のセパレータとして用いるのが好ましい。
リチウムイオン二次電池は、正極と負極がセパレータを介して積層されており、セパレータが電解液(電解質)を含有している。電極の構造は特に限定されず、従来公知の構造を用いることができ、例えば、円盤状の正極及び負極が対向するように配設された電極構造(コイン型)、平板状の正極及び負極が交互に積層された電極構造(積層型)、積層された帯状の正極及び負極が巻回された電極構造(捲回型)等にすることができる。
リチウムイオン二次電池に使用される、集電体、正極、正極活物質、負極、負極活物質及び電解液は、特に限定されず、従来公知の材料を適宜組み合わせて用いることができる。
なお、本発明は、前記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
5.ポリオレフィン微多孔膜の構造と物性
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン微多孔膜の膜厚、空孔率、孔径、シャットダウン温度、透気抵抗度などの物性は、特に制限されないが、以下の範囲に調整されることが好ましい。
(1)シャットダウン温度
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、シャットダウン温度を同程度の透気抵抗度を有する従来のポリオレフィン微多孔膜に比べて顕著に低下させることができる。この理由の詳細は不明であるが、ポリオレフィン樹脂組成物を押出し、冷却して成形してなるゲル状シートの少なくとも一方の表面を溶融させた後、一軸又は二軸延伸し、少なくとも一方の面の表面粗さを40nm以上とすることなどにより、シャットダウン温度が顕著に低下すると考えられる。
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン温度としては、インピーダンス測定により評価したシャットダウン温度が134℃未満であり、好ましくは132℃未満である。シャットダウン温度が134℃未満であれば、微多孔膜をリチウム電池用セパレータとして用いた場合に、過熱時に優れた遮断応答性が得られる。
(2)表面粗さ
表面がどの程度溶融されたかの指標として、表面粗さを用いた。ゲル状シートの表面を溶融させた後、延伸して得られた本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜の溶融した面の算術平均粗さ(Ra)を原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)により測定した。算術平均粗さ(Ra)の測定は、ゲル状シートを溶融させた面について測定した。例えば、ゲル状シートの片面を溶融した場合は、溶融した面のみの算術平均粗さを測定して、指標とした。また、ゲル状シートの両面を溶融した場合は、ポリオレフィン微多孔膜の両面の算術平均粗さを測定し、平均値を求めて指標とした。
図2に示した微多孔膜表面のSEM画像から、表面が溶融した実施例1〜3のポリエチレン微多孔膜の表面部分は、ポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂組成物からなる互いに不規則に結合した多数の湾曲した葉状(花弁状、シート状)構造の集合体によって形成されていることが理解できる。図2に示した微多孔膜表面のSEM画像と、図3に示したAFM画像と、図4に示した表面粗さとシャットダウン温度の関係を示すグラフと、を参照すると表面の溶融が進んだ試料(集合体を構成している葉状構造の厚みに対する面積がより大きい試料)ほど表面粗さの値が大きく、シャットダウン温度が表面粗さに反比例して低下していることが理解できる。また、図5から本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜の表面粗さは透気抵抗度には影響しないことが理解できる。さらに、図6に示したポリエチレン微多孔膜の断面図を見ると延伸前のゲル状シート表面の溶融によって膜の表面部分のみが溶融され膜の内部は緻密な構造を維持していることが理解できる。
このように本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、表面粗さを調整することによって低透気抵抗度と低シャットダウン温度を両立することができる。本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面における表面粗さの下限としては、40nm以上であり、好ましくは50nm以上であり、より好ましくは70nm以上である。表面粗さが40nm未満であると、ゲル状シートの表面の溶融が不十分でありポリオレフィン微多孔膜の表面樹脂の配向乱れが不十分となり十分にシャットダウン温度を低下させることができない。また、表面粗さの上限としては、特に限定されないが、350nm以下であることが好ましく、180nm以下であることがより好ましく、160nm以下であることがさらに好ましく、120nm以下であることがさらにより好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。表面粗さが350nm以下であれば、十分な膜強度を確保できる観点から好ましい。なお、表面粗さは後述する方法で測定した値をいう。
(3)透気抵抗度
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、低シャットダウン温度と、低い透気抵抗度を両立できる。本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度の上限は、イオン透過性の観点から、膜厚を12μmとした場合、300sec/100cc以下であることが好ましく、200sec/100cc以下であることがより好ましく、150sec/100cc以下であることがさらに好ましく、140sec/100cc以下であることがさらにより好ましい。透気抵抗度が300sec/100cc以下であれば、イオン透過性を十分に確保でき、電池用セパレータとして用いた際の電気抵抗を抑えることができる。また、透気抵抗度の下限は、30sec/100cc以上であり、50sec/100cc以上であることが好ましく、60sec/100cc以上であることがより好ましい。透気抵抗度が30sec/100cc以上であれば、膜構造が過剰に疎な状態とならず、電池用セパレータとして用いた合に電池内部の温度が上昇した際に速やかなシャットダウンが確保できる。
ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度は、混合物の結晶化速度を制御し結晶造核剤などによりポリオレフィン樹脂の結晶を微細化することや、温度や延伸条件を制御し、調整することができる。
(4)熱収縮率(105℃、8時間後)
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、熱収縮率(105℃、8時間)は特に限定さないが、機械方向(MD)及び横方向(TD)ともに8%以下が好ましく、中でもTD方向においては、5%以下がより好ましく、3%以下が特に好ましい。熱収縮率(105℃、8時間)が、8%以下であればリチウム電池用セパレータとして使用した場合に、発熱時に破膜による短絡がより発生しにくくなる。
(5)熱収縮率(120℃)
本発明に係るポリオレフィン微多孔膜は、熱収縮率(120℃)は、機械方向(MD)及び横方向(TD)ともに上限が2.0%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下であり、特に好ましくは0.1%以下である。熱収縮率(120℃)の下限として好ましくは−2.0%以上であり、より好ましくは−1.0%以上であり、さらに好ましくは−0.3%以上である。120℃は一般に充電及び放電中にリチウムイオン二次電池が達する温度範囲内であるので上記範囲であることにより、本発明に係るポリオレフィン微多孔膜がリチウムイオン電池のセパレータとして使用された際、当該電池に優れた高温安全性を付与することができる。具体的には、電池が高温状態になった場合に、電池内部でのポリオレフィン微多孔膜の収縮が十分に小さいことにより、電池内部で電極同士が接触して内部短絡することを防ぐことができる。
(6)融解熱量
本実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、その示差走査熱量分析(DSC)を実施した際に、全融解熱量(ΔHall)を100%としたとき、前記ポリオレフィンの平衡融点(T )未満の融解熱量(ΔH<Tm0)の割合の下限が95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましい。前記ポリオレフィン樹脂組成物に複数種類のポリオレフィンが含まれる場合、最も平衡融点が高いポリオレフィンの平衡融点(T )未満の融解熱量(ΔH<Tm0)の割合が95%以上であれば、シャットダウン温度をさらに低く抑える観点から好ましい。また、ΔH≧Tm0の割合は、2%以上であることが好ましく、より好ましくは2.5%以上である。ΔH≧Tm0の割合が2%以上であれば、メルトダウン温度を確保しやすく好ましい。なお、ポリオレフィンの平衡融点(T )は、ポリオレフィンの結晶厚が無限大であるときの融点を表し、ポリエチレンであれば141℃、ポリプロピレンであれば188℃である。
(7)空孔率
本実施形態のポリオレフィン微多孔膜の空孔率の上限は、膜強度、耐電圧特性向上の観点から、60%以下であることが好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。また、リチウムイオン等のイオン透過性及び電解液含有量の観点から、空孔率の下限は、20%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上であり、特に好ましくは40%以上である。空孔率を前記範囲内とすることにより、イオン透過性、膜強度及び電界液含有量のバランスが好適となり、電池反応の不均一性が解消され、その結果、デンドライト発生が抑制される。また、膜構造の欠陥が少なくなることから耐電圧特性が向上する。すなわち、本発明のポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレータとして用いたリチウムイオン二次電池には良好な安全性、強度、透過性が得られる。
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率は、従来公知の方法で調節可能であるが、混合物の結晶化速度を制御し結晶造核剤などによりポリオレフィン樹脂の結晶を微細化することや、製膜時の温度や延伸条件を制御することで調節することができる。
(8)平均流量孔径
本実施形態のポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径の上限は、膜強度、耐電圧特性向上の観点から、300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましく、40nm以下であることが特に好ましい。本実施形態のポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径の下限は特に限定されないが、後述する透気抵抗度の関係から5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、特に好ましくは20nm以上である。本実施形態のポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径が前記範囲であると、微多孔膜の構造が緻密となるため、高強度及び高耐電圧特性を有する微多孔膜を得ることができる。
(9)最大孔径
本実施形態のポリオレフィン微多孔膜の最大孔径は、膜強度、耐電圧特性向上の観点から、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることがさらに好ましい。本発明のポリオレフィン微多孔膜の最大孔径の下限は特に限定されないが、後述する透気抵抗度の関係から1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。本発明のポリオレフィン微多孔膜の最大孔径が前記範囲であると、構造が緻密な膜となり、膜強度に優れ、耐電圧特性が高い微多孔膜を得ることができる。
ポリオレフィン微多孔膜の、最大孔径、平均流量孔径は、例えばパームポロメーター(PMI社製、CFP−1500A)を用いて、Dry−up、Wet−upの順で測定することができる。Wet−upには表面張力が既知のPMI社製Galwick(商品名)で十分に浸した微多孔膜に圧力をかけ、空気が貫通し始める圧力から換算される孔径を最大孔径とする。
平均流量孔径については、Dry−up測定で圧力、流量曲線の1/2の傾きを示す曲線と、Wet−up測定の曲線が交わる点の圧力から孔径を換算した。圧力と孔径の換算は下記の数式を用いる。
式: d=C・γ/P
(上記式中、「d(μm)」は微多孔膜の孔径、「γ(mN/m)」は液体の表面張力、「P(Pa)」は圧力、「C」は定数とする。)
ポリオレフィン微多孔膜の平均流量孔径や最大孔径は、混合物の結晶化速度を制御し結晶造核剤などによりポリオレフィン樹脂の結晶を微細化することや、温度や延伸条件を制御し、調整することができる。
(9)突刺強度
ポリオレフィン微多孔膜の膜厚を20μmとしたときの突刺強度は、リチウムイオン二次電池として電極に組み込む際にピンホールの発生を抑制する観点から300gf以上であることが好ましく、350gf以上であることがより好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜の膜厚を20μmとしたときの突刺強度は、混合物の結晶化速度を制御し結晶造核剤などによりポリオレフィン樹脂の結晶を微細化することや、温度や延伸条件を制御し、調整することができる。
(10)膜厚
本発明のポリオレフィン微多孔膜の膜厚は、好ましくは1〜30μm、より好ましくは1〜20μmである。膜厚の測定方法は後述する。
本発明が奏する効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されない。試験方法はつぎの通りである。
(1)シャットダウン温度
シャットダウン温度は昇温インピーダンス測定により求めた。ソーラトロン(solartron) SI1250(FREQUENCY RESPONSE ANALYZER)及びSI1287(ELECTROCHEMICAL INTERFACE)を使用し、サンプルとしてサイズ75(MD)×100(TD)mmのポリエチレン微多孔膜を用いてグローブボックス内にて測定を実施した。電解液にはLiPF(EC:EMC=4:6V%)の1mol/L溶液を使用した(LiPF:六フッ化リン酸リチウム、EC:炭酸エチレン、EMC:炭酸エチルメチル)。測定条件は室温から200℃まで30分で昇温した。サンプルの昇温には恒温槽を用い、温度記録計を用いて実施した。インピーダンスの値が10Ω/cmに達した時点での温度をシャットダウン温度と規定し、評価した。
(2)表面粗さ
表面粗さは、原子間力顕微鏡(SII製 AFM SPA500)を用いて算術平均粗さ(Ra)を測定した。測定範囲は4×4μmとした。ゲル状シートの段階で溶融させた表面を測定し、表面粗さとして評価した。ゲル状シートの両面を溶融した場合には、両面の表面粗さの平均値を使用した。また、ポリオレフィン微多孔膜の溶融させた面を観察することで、微多孔膜の平均表面粗さを算出した。
(3)透気抵抗度
透気抵抗度測定には、デジタル型王研式透気度試験機(EYO型、旭精工株式会社)を使用した。JIS P8117に従い測定した。
膜厚を12μmとしたときの透気抵抗度とは、膜厚T1(μm)の微多孔膜において、測定した透気抵抗度がP1であったとき、式:P2=(P1×12)/T1によって算出される透気抵抗度P2のことを指す。なお、以下では、膜厚について特に記載がない限り、「透気抵抗度」という語句を「膜厚を12μmとしたときの透気抵抗度」の意味で用いる。
(4)熱収縮率(105℃、8時間)
熱収縮率(105℃、8時間)は、TABAI製 クリーンオーブンPVHC−210を使用して測定した。ポリオレフィン微多孔膜を50mm角の正方形に打ち抜き、105℃、8時間オーブン内で熱処理を行う前後の試料のMD及びTD方向の寸法を測定し、下記の式よりMD及びTD方向それぞれの熱収縮率を求めた。
式:収縮率(%)=(元の寸法−熱収縮後の寸法)÷元の寸法×100
(5)熱収縮率(120℃)
熱収縮率(120℃)は、セイコーインスルメンツ製 TMA/SS 6100を用いて測定した。ポリオレフィン微多孔膜を幅3mm、長さ100mmに切り抜きサンプルとした。測定は一定荷重(19.6mN)の下、温度を30〜210℃まで上昇させ、120℃に達した時点でのサンプルの伸縮率をポリオレフィン微多孔膜の120℃熱収縮として評価した。
(6)示差走査熱量分析(DSC)
Parking Elmer製 PYRIS Diamond DSCを用いて、窒素条件下で実施。約5.5〜6.5mgの重量のサンプルをアルミニウム製サンプルパン中に封止する。装置にサンプルをセット後、30℃で1分間維持し、値が一定であることを確認後、10℃/minで30℃から230℃まで昇温した。40と200℃を結ぶ直線をベースラインとし、融解吸熱ピークから微多孔膜の融点(Tm)を読み取った。また、ポリエチレンの平衡融点である141℃以上の吸熱量(ΔH≧141℃)と141℃未満の吸熱量(ΔH<141℃)を求めた。各実施例及び各比較例のポリエチレン微多孔膜について、全融解熱量(ΔHall)に占めるΔH≧141℃の割合(%ΔH≧141℃)と全融解熱量(ΔHall)に占めるΔH<141℃の割合を表2に示した。
(7)空孔率
空孔率は、微多孔膜の質量w1と、微多孔膜と同じポリエチレン組成物からなる同サイズの空孔のない膜の質量w2から、下記の式により算出した。
式:空孔率(%)=(w2−w1)/w2×100
(8)突刺試験
膜厚を20μmとしたときの突刺強度は、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1mmの針で、膜厚T1(μm)の微多孔膜を2mm/秒の速度で突き刺したときの最大荷重を測定し、その最大荷重の測定値L1(gf)を、式:L2=(L1×20)/T1により、膜厚を20μmとしたときの最大荷重L2に換算して求めた。下記の指標に従い評価した。
◎(良好):突刺強度が350gf以上。
○(可) :突刺強度が300gf以上、350gf未満。
×(不可):突刺強度が300gf未満。
(9)表面の平均細孔径
微多孔膜の加熱ロール処理面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(10000倍)から、20個の細孔について、最長部の間隔(最大外接円の直径)と最短部の間隔(最大内接円の直径)を測定し、算術平均し、平均細孔径とした。
(10)最大孔径
ポリオレフィン微多孔膜の最大孔径は、ASTM F316−86に準拠した方法(バブルポイント法)によって測定した。なお、測定器としてはPMI社製のパームポロメータ(型番:CFP−1500A)を、測定液としてはGalwickを、それぞれ用いた。
(11)メルトダウン温度
ポリオレフィン微多孔膜のメルトダウン温度は、熱機械分析(TMA)により測定した。ポリオレフィン微多孔膜を幅3mm、長さ100mmに切り抜いたサンプルを長辺がTD方向のものとMD方向のものを作製し、30℃から5℃/分で昇温した。サンプルが溶融して破断した温度をメルトダウン温度と定義した。
(12)融点
エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)DSC6220を用い、窒素ガス雰囲気下でポリオレフィン微多孔膜試料5mgを昇温速度20℃/分で昇温したとき観察される融解ピークの頂点温度を融点とした。
(13)重量平均分子量(Mw)と分子量分布(MWD)
UHMWPE及びHDPEのMwは以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
・測定装置:Waters Corporation製GPC−150C
・カラム:昭和電工株式会社製Shodex UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):o−ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0 ml/分
・試料濃度:0.1 wt%(溶解条件:135℃/1h)
・インジェクション量:500μl
・検出器:Waters Corporation製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、所定の換算定数を用いて作成した。
(14)膜厚測定
微多孔膜の95mm×95mmの範囲内における5点の膜厚を接触厚み計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック)により測定し、膜厚の平均値を求めた。
(15)SEM
微多孔膜表面の観察は、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子 / JSM-6701F)を用いておこなった。微多孔膜には事前にPt蒸着(イオンスパッタリング:スパッタリング電流 20mA、時間 20秒)処理を施し、加速電圧2.00keVの条件でその表面を観察した。また、断面観察に使用した測定サンプルは、微多孔膜をイオンミリング装置(株式会社 日立ハイテクノロジーズ、IM4000)によりカットして作製した。Pt蒸着等は表面観察と同様の手法で行った。
(16)多孔層と多層多孔膜の剥離強度(テープ剥離力)
(剥離試験片の作製)
実施例、比較例で作製された積層多孔膜(機械方向120mm×幅方向25mm)をガラス板の上に空気が入らないように設置した。両面テープ(機械方向100mm×幅方向20mm,清和産業株式会社製、透明フィルム両面テープ SFR−2020)の機械方向とセパレータの機械方向が沿うように両面テープを設置し、その上から重量2kgのゴムローラー(テスター産業製SA−1003−B,手動型,ゴム強度80±5Hs)で5往復処理し圧着させた。この両面テープと積層多孔膜との積層体のセパレータ側にセロハンテープ(株式会社ニチバン製、セロテープ(登録商標)、植物系、No.405,機械方向100mm×幅方向15mm)を機械方向90mm程度貼り、残りの10mm程度の部位に機械方向120mm×幅方向25mmにカットした紙を貼った。これを2kgゴムローラーで5往復圧着した。両面テープの剥離ライナーをはがしてSUS板(厚さ3mm、長さ150mm×幅50mm)に、積層多孔膜の機械方向とSUS板長さ方向が平行になるよう貼り付け、2kgゴムローラーで2往復処理し圧着させた。これを剥離試験片とした。
(テープ剥離力の測定方法)
万能試験機(株式会社島津製作所製、AGS−J)を用いてセロハンテープについた機械方向120mm×幅方向25mmにカットした紙をロードセル側チャックに挟み込み、さらにSUS板側をその反対の下部チャックに挟み込み、試験速度100mm/分にて180度剥離試験を実施した。剥離試験中のストローク20mmから70mmまでの測定値を平均化した値を剥離試験片の剥離力とした。計3個の剥離試験片を測定し、剥離力の平均値をテープ剥離力とした。
尚、剥離界面において、多層多孔膜側に多孔層面が残存する場合があるがこの場合も多孔層とポリオレフィン多層微多孔膜の剥離強度として算出した。
[実施例1]
(シート厚さ1200μm、搬送速度25m/min、第一炉の設定温度135℃)
重量平均分子量(Mw)が5.6×10であり、分子量分布(MWD)が4.05である高密度ポリエチレン70重量部と、Mwが1.9×10であり、MWDが5.09である超高分子量ポリエチレン30重量部とからなるポリエチレン樹脂(融点135℃、結晶分散温度90℃)にフェノール系酸化防止剤をポリエチレン樹脂100重量部あたり0.08重量部、リン系酸化防止剤をポリエチレン樹脂100重量あたり0.08重量部加え、ポリエチレン樹脂組成物を得た。得られたポリエチレン樹脂組成物28.5重量部を二軸押出機(強混練タイプセグメント)に投入し、この二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン71.5重量部を供給し、190℃、300rpmで溶融混練して、押出機中にてポリエチレン樹脂組成物溶液を調製した。
このようにして調製したポリエチレン樹脂組成物溶液を押出機の先端に設置されたTダイから240℃で押し出し、厚み1200μmで、冷却ロールで引き取りながらゲル状シート(幅330mm)を成形した。続いて図1に示すような延伸機に導き、得られたゲル状シートを、第一炉の設定温度135℃の下で昇温した。その後、搬送速度25m/min、(設定)温度115℃で5×5倍に同時二軸延伸を行い、延伸したゲル状シートを得た。この延伸されたゲル状シートを25℃に調整された塩化メチレンの浴槽に浸し、ゲル状シート中に存在する液体パラフィンの量が、容量により1%以下になるまで液体パラフィンを除去した。その後室温での空気流れにより乾燥させた。乾燥した膜をオーブン内で120℃の条件下、10分間熱セットした。
[実施例2]
(800μm、45m/min、第一炉の設定温度135℃)
実施例1において、ゲル状シートの厚さを800μm、搬送速度を45m/minに変更した以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜を作製した。
[実施例3]
(1200μm、25m/min、第一炉の設定温度130℃)
実施例1において、第一炉の設定温度を130℃、搬送速度を45m/minとした以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜を作製した。
[実施例4]
(塗布液の調製)
フッ素系樹脂として、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VdF/HFP=92/8(重量比))(重量平均分子量が100万)を用いた。前記フッ素系樹脂及び平均粒径0.5μmのアルミナ粒子、N−メチル−2−ピロリドンをアルミナ粒子がフッ素系樹脂とアルミナ粒子の合計に対して52体積%、固形分濃度が17重量%となるように配合し、樹脂成分を完全に溶解させた後、酸化ジルコニウムビーズ(東レ(株)製、「トレセラム」(登録商標)ビーズ、直径0.5mm)と共に、ポリプロピレン製の容器に入れ、ペイントシェーカー((株)東洋精機製作所製)で6時間分散させた。次いで、濾過限界5μmのフィルターで濾過し、塗布液(a)を調合した。また、塗布液は塗工時まで極力外気に触れないように密閉保管した。
(多孔層の積層)
実施例1と同様の条件で作製したポリオレフィン微多孔膜の両面に前記塗布液(a)を浸漬コート法にて塗布し、引き続き温度25℃、微粒化した水滴が充満した湿潤ゾーン中に2秒間通過させ、連続して0.5秒後に水溶液中(凝固槽)に3秒間進入させ、純水で洗浄した後、70℃の熱風乾燥炉を通過させることで乾燥して最終厚み19.5μmの多層多孔膜を得た。
[比較例1]
実施例2において、第一炉の設定温度を123℃とした以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜を作製した。
[比較例2]
実施例2において、第一炉の設定温度を125℃とした以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜を作製した。
[比較例3]
実施例1において、第一炉の設定温度を125℃とした以外は同様にしてポリオレフィン微多孔膜を作製した。
[比較例4]
ポリオレフィン微多孔膜として比較例3と同様の条件で作製したポリオレフィン微多孔膜を使用し、実施例4と同様にして多層多孔膜を作製した。
各実施例及び比較例に係るポリオレフィン微多孔膜の作製条件を表1に、各種物性を測定した結果を表2にそれぞれ示した。
表2から明らかなように、表面粗さが40nm以上である実施例1〜3に係るポリオレフィン微多孔膜は、比較例1〜3に比べて同水準かそれ以下の透気抵抗度を有し、かつ、低いシャットダウン温度を有する。
表3は、ポリオレフィン微多孔膜である実施例1および比較例3の透気抵抗度と積層多孔膜である実施例4および比較例4の透気抵抗度の差から透気抵抗度上昇幅を求めた結果である。
同表より、実施例4と比較例4では剥離強度にはほとんど差がないが、比較例3のポリオレフィン微多孔膜は多孔層を設けると透気抵抗度が10%程度上昇するのに対して、本発明に係るポリオレフィン微多孔膜である実施例1は、多孔層を設けても透気抵抗度が2%しか上昇しておらず透気抵抗度上昇幅が小さく抑えられている。
10 第一炉
20 第二炉
30 第三炉
40 テンター延伸機

Claims (15)

  1. 少なくとも一方の表面の一部又は全部に、互いに不規則に結合した複数の湾曲した葉状構造の集合体が形成されており、
    前記葉状構造の集合体は、ポリオレフィン樹脂、または、前記ポリオレフィン樹脂とそれ以外の成分とを含むポリオレフィン樹脂組成物からなり、
    前記葉状構造の集合体が形成されている表面部分の表面粗さが40nm以上である、ポリオレフィン微多孔膜。
  2. 前記ポリオレフィン微多孔膜の厚みに対して、前記葉状構造の集合体が形成されている表面部分の厚みが3%以上20%以下である、請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  3. 前記集合体が形成されている部分の平均細孔径は、0.1μmより大きく、2μm以下であり、前記集合体が形成されている部分以外の部位は、繊維状のフィブリルにより形成された三次元網目構造を有する、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  4. 膜厚12μmに規格化した透気抵抗度が150sec/100cc以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  5. 示差走査熱量分析(DSC)で昇温速度20℃/分で230℃まで昇温した際の、全融解熱量(ΔHall)を100%としたとき、前記ポリオレフィン樹脂に含まれるポリオレフィンのうち最も平衡融点が高いポリオレフィンの平衡融点未満の融解熱量(ΔH<Tm0)の割合が95%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  6. 前記ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン樹脂である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  7. 前記ポリエチレン樹脂は、超高分子量ポリエチレンと高密度ポリエチレンとを含む、請求項6に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  8. 前記ポリオレフィン樹脂は、エチレンとエチレン以外の他のα―オレフィンとの共重合体、又は、線状低密度ポリエチレンを含まない、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面に多孔層が積層された多層多孔膜。
  10. 前記多孔層はフッ素系樹脂を含む請求項9に記載の多層多孔膜。
  11. 前記多孔層はさらにフィラーを含む請求項10に記載の多層多孔膜。
  12. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜または請求項9〜11のいずれか1項に記載の多層多孔膜を用いた電池用セパレータ。
  13. 請求項12に記載の電池用セパレータを用いた電池。
  14. ポリオレフィン樹脂(組成物)溶液を押出成形してなるゲル状シートを、その一方の表面又は両方の表面部分のみを溶融した後、前記ゲル状シートを延伸処理することを特徴とするポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
  15. 前記溶融は、前記ゲル状シートを、ゲル状シート中のポリオレフィン樹脂の融点±10℃以内の温度で加熱することにより行われる、請求項14に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。

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