JP5554445B1 - 電池用セパレータ及び電池用セパレータの製造方法 - Google Patents
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Abstract
ポリオレフィン微多孔膜基材のシャットダウン特性を大幅に低下させることなく、かつ、物理的強度及び耐熱性をポリオレフィン微多孔膜に付与する改質多孔層とポリオレフィン微多孔膜基材との密着性を有する積層電池用セパレータ、及びその電池用セパレータの製造方法を提供する。
【解決手段】
ポリオレフィン微多孔膜基材の少なくとも片面に水溶性樹脂または水分散性樹脂と微粒子を含む改質多孔層が積層される電池用セパレータあって、該ポリオレフィン微多孔膜基材は樹脂組成物Aから構成される表層の微多孔層と、前記樹脂組成物Aよりも低い融点を有する樹脂組成物Bから構成される中間層の微多孔層とが積層された3層構造のポリオレフィン微多孔膜基材である電池用セパレータ。
【選択図】なし
Description
そこで、例えば特許文献1〜3の改質多孔層を特許文献4のポリオレフィン多孔質膜を積層することが考えられるが、単に積層しただけではシャットダウン特性の低下が避けられない。
(a)ポリオレフィン樹脂組成物Aとポリオレフィン樹脂組成物Bを、別々に成膜用溶剤を用いて溶融混練し、樹脂濃度25〜50質量%のポリオレフィン樹脂組成物溶液Aとポリオレフィン樹脂組成物溶液Bを調整する工程
(b)ポリオレフィン樹脂組成物溶液Aとポリオレフィン樹脂組成物溶液Bをポリオレフィン樹脂組成物溶液Bが中間層になるようにダイより同時に押し出し、層状の押し出し成形体を形成する工程
(c)得られた層状の押し出し成形体を冷却してゲル状シートを形成する工程
(d)前記ゲル状シートを少なくとも一軸方向に延伸し、延伸成形物を得る工程
(e)前記延伸成形物から前記成膜用溶剤を除去、乾燥、熱処理し、3層構造のポリオレフィン微多孔膜基材を得る工程
(f)前記ポリオレフィン微多孔膜基材の少なくとも片面に、水溶性樹脂または水分散性樹脂と微粒子とを含み、水溶性樹脂または水分散性樹脂が微粒子に対して体積比で2〜15%であり、水溶性樹脂または水分散性樹脂の濃度が0.8〜1%である塗工液を塗布、乾燥し改質多孔層を形成する工程を有する電池用セパレータの製造方法。
本発明の電池用セパレータについて以下に説明するが、当然これらに限定されるものではない。
本発明で用いるポリオレフィン微多孔膜基材はポリオレフィン樹脂組成物Aから構成される表層の微多孔層と、ポリオレフィン樹脂組成物Aよりも低い融点を有するポリオレフィン樹脂組成物Bから構成される中間層の微多孔層とが積層された3層構造のポリオレフィン微多孔膜基材である。
ポリオレフィン樹脂組成物Aについて詳述する。ポリオレフィン樹脂組成物Aの融点は130℃以上、140℃未満であることが好ましい。この範囲にすることによって本発明である電池用セパレータの耐熱性は保持されやすくなる。ポリオレフィン樹脂組成物Aは、シャットダウン特性の観点からポリエチレン組成物のみで構成されることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物Aの融点を130℃以上、140℃未満にするにはポリエチレンは単独物に限定されず、分子量が異なる二種以上のポリエチレン組成物であってもよい。例えば、7×105以上の質量平均分子量(以下、Mwと略記する場合がある。)を有する超高分子量ポリエチレンおよび1×104〜7×105未満のMwを有する超高分子量ポリエチレン以外のポリエチレンを適度にブレンドし、所望の融点にすることができる。
ポリオレフィン樹脂組成物Bについて詳述する。ポリオレフィン樹脂組成物Bの融点は前記ポリオレフィン樹脂組成物Aの融点より低ければ特に限定されないが、好ましくは115℃以上、130℃未満である。この範囲にすることによって本発明である電池用セパレータはすぐれたシャットダウン特性を有することができる。熱的に安定な膜の製造には115℃を超える熱処理温度(例えば熱固定温度)が用いられるが、熱固定温度がポリマーの融点以上の場合は膜透気度が低下することから、前記の好ましい範囲にすることで、膜透気度を低下させることなく熱的に安定な膜(例えば熱収縮が小さいもの)を製造することができ、かつ、高い透気度と低いシャットダウン温度の両方を有するポリオレフィン微多孔膜基材を製造することができる。
ポリオレフィン樹脂組成物Aとポリオレフィン樹脂組成物Bの融点の差が1℃以上、20℃以下である。
本発明で用いるポリオレフィン微多孔膜基材の好ましい製造方法は、
(a)ポリオレフィン樹脂組成物Aとポリオレフィン樹脂組成物Bを別々に、成膜用溶剤を用いて溶融混練して、樹脂濃度25〜50質量%のポリオレフィン樹脂組成物溶液Aとポリオレフィン樹脂組成物溶液Bを調整する工程
(b)ポリオレフィン樹脂組成物溶液Aとポリオレフィン樹脂組成物溶液Bを、ポリオレフィン樹脂組成物溶液Bが中間層になるようにダイより同時に押し出し、層状の押し出し成形体をする工程
(c)得られた層状の押し出し成形体を冷却してゲル状シートを形成する工程
(d)前記ゲル状シート機械方向および幅方向に延伸し、延伸成形物を得る工程
(e)前記延伸成形物から前記成膜用溶剤を除去、乾燥、熱処理し、3層構造のポリオレフィン微多孔膜を得る工程
を含むものである。
必要に応じて再延伸工程、親水化処理工程を設けてもよい。
ポリオレフィン樹脂組成物を、成膜用溶剤を用いて溶融混練して、ポリオレフィン樹脂組成物溶液を調整する。ポリオレフィン樹脂の濃度は、ポリオレフィン樹脂組成物と成膜用溶剤の合計を100質量%として、好ましくは25〜50質量%であり、より好ましくは30〜45質量%である。前記の下限値とすることでポリオレフィン樹脂溶液を押し出す際にダイス出口でスウェルやネックインを防ぐことで、押出し成形体の成形性及び自己支持性を維持でき、生産性も維持できる。また、前記の上限値とすることで押出し成形体の成形性を維持できる。
溶融混練して調整したポリオレフィン樹脂組成物溶液A及びポリオレフィン樹脂組成物溶液Bを、各押出機を介してダイから同時に押し出す。ポリオレフィン樹脂組成物溶液A及びポリオレフィン樹脂組成物溶液Bの同時押出において、両溶液を1つのダイ内で層状に組み合せてシート状に押し出す(ダイ内接着)場合には1つのダイに複数の押出機を接続し、また両溶液を別々のダイからシート状に押し出して積層(ダイ外接着)する場合には複数の押出機の各々にダイを接続する。本発明においては、ダイ内接着の方が好ましい。
同時押出にはフラットダイ法及びインフレーション法のいずれを用いてよい。いずれの方法においても、ダイ内接着する場合、溶液を多層用ダイの別々のマニホールドに供給してダイリップ入口で層状に積層する方法(多数マニホールド法)、又は溶液を予め層状の流れにしてダイに供給する方法(ブロック法)のいずれを用いてよい。多数マニホールド法及びブロック法自体は公知であるので、その詳細な説明は省略する。多層用のフラットダイ及びインフレーションダイとしては公知のものが使用できる。多層用フラットダイのギャップは0.1〜5mmの範囲内であるのが好ましい。フラットダイ法によりダイ外接着する場合、各ダイから押し出したシート状溶液を、一対のロール間に通すことにより圧接する。上記いずれの方法においても、ダイは押し出し時には140〜250℃の温度に加熱する。加熱溶液の押し出し速度は0.2〜15 m/分の範囲内であるのが好ましい。ポリオレフィン樹脂組成物溶液A及びポリオレフィン樹脂組成物溶液Bの各押出量を調節することにより、ポリオレフィン微多孔膜の表層及び中間層の厚み割合を調節することができる。以上により、層状の押し出し成形体を形成する。
ダイから押し出して得た層状の押し出し成形体を冷却することによりゲル状シートを形成する。冷却は少なくともゲル化温度まで50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。このような冷却を行うことによりポリオレフィン樹脂組成物が成膜用溶剤によりミクロに相分離された構造(ポリオレフィン樹脂組成物相と成膜用溶剤相とからなるゲル構造)を固定化できる。冷却は25℃以下まで行うのが好ましい。一般に冷却速度を遅くすると擬似細胞単位が大きくなり、得られるゲル状シートの高次構造が粗くなるが、冷却速度を速くすると密な細胞単位となる。冷却速度を50℃/分未満にすると結晶化度が上昇し、延伸に適したゲル状シートとなりにくい。冷却方法としては冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができるが、冷却ロールを用いる方法が好ましい。
洗浄前のゲル状シートを、長手方向(MD方向)又は横方向(TD方向)の少なくとも一軸方向に延伸し、延伸成形物を得る。ゲル状シートは、加熱後、テンター法又はロール法により所定の倍率で延伸するのが好ましい。ゲル状シートは成膜用溶剤を含むので、均一に延伸できる。延伸により機械的強度が向上するとともに、細孔が拡大するので、電池用セパレータとして用いる場合に特に好ましい。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸又は多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよいが、特に同時二軸延伸が好ましい。
延伸成形物からの成膜用溶剤の除去(洗浄)には洗浄溶媒を用いる。ゲル状シート中のポリオレフィン樹脂組成物相は成膜用溶剤相と分離しているので、成膜用溶剤を除去すると微多孔の膜が得られる。成膜用溶剤の除去(洗浄)は公知の洗浄溶媒を用いて行うことができる。洗浄溶媒としては、成膜用溶剤を効果的に除去できるものであれば特に限定されない。例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、三フッ化エタン、C6F14、C7F16等の鎖状フルオロカーボン、C5H3F7等の環状ハイドロフルオロカーボン、C4F9OCH3、C4F9OC2H5等のハイドロフルオロエーテル、C4F9OCF3、C4F9OC2F5等のパーフルオロエーテル等の易揮発性溶媒が挙げられる。これらの洗浄溶媒は低い表面張力(例えば25℃で24mN/m以下)を有する。低表面張力の洗浄溶媒を用いることにより、微多孔を形成する網状組織が洗浄後の乾燥時に気−液界面の表面張力により収縮するのが抑制され、もって高い空孔率及び透過性を有する微多孔膜が得られる。
成膜用溶剤除去により得られたポリオレフィン微多孔膜を、加熱乾燥法、風乾法等により乾燥する。乾燥温度は、ポリオレフィン樹脂組成物の結晶分散温度Tcd以下であるのが好ましく、特にTcdより5℃以上低いのが好ましい。
ゲル状シートの少なくとも一面に熱ロールを接触させる処理を施してもよく、これにより微多孔膜の耐圧縮性が向上する。その具体的な方法は、例えば特開2006−248582号公報に記載されている。
ゲル状シートを熱溶剤に接触させる処理を施してもよく、これにより一層機械的強度及び透過性に優れた微多孔膜が得られる。その方法は、具体的には、WO2000/20493に記載されている。
乾燥後のポリオレフィン微多孔膜を公知の方法により熱処理、すなわち熱固定処理および/又は熱緩和処理するのが好ましい。これらはポリオレフィン微多孔膜に要求される物性に応じて適宜選択すればよい。熱固定処理によって結晶が安定化し、ラメラ層が均一化される。特に一度微多孔膜を延伸した後に熱固定処理するのが好ましい。。熱固定処理の具体的な方法は、例えば特開平10−298340号公報に記載されている。また、熱緩和処理によってポリオレフィン微多孔膜の収縮率のコントロールが可能となる。熱緩和処理の具体的な方法は、例えば特表2010−538097号公報に記載されている。
乾燥後のポリオレフィン微多孔膜を、本発明の効果を損なわない範囲で、少なくとも一軸方向に延伸してもよい。この延伸は、膜を加熱しながら、上記と同様にテンター法等により行うことができる。
乾燥後のポリオレフィン微多孔膜に対して、α線、β線、γ線、電子線等の電離放射線の照射により架橋処理を施してもよい。電子線の照射の場合、0.1〜100Mradの電子線量が好ましく、100〜300kVの加速電圧が好ましい。架橋処理により微多孔膜のメルトダウン温度が上昇する。
乾燥後のポリオレフィン微多孔膜を、公知の方法でモノマーグラフト処理、界面活性剤処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等を行うことにより親水化してもよい。
次に、本発明に用いる改質多孔層について説明する。本発明における改質多孔層は、水溶性樹脂または水分散性樹脂と微粒子を含有させることが重要である。水溶性樹脂または水分散性樹脂と微粒子とを用いることにより優れた耐熱性が得られるだけでなく、低コストが可能となり、さらに製造工程上の環境負荷の観点からも好ましい。
アクリル系樹脂は市販されているアクリルエマルジョンを用いることができ、具体的にはアクリセット(登録商標)TF−300(株式会社日本触媒製)、ポリゾールAP−4735(昭和電工株式会社製)が挙げられる。
塗布液を塗布する方法としては、例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、マイヤーバーコート法、パイプドクター法、ブレードコート法およびダイコート法などが挙げられ、これらの方法は単独であるいは組み合わせて行うことができる。中でもマイヤーバーコート法は比較的簡単な設備で塗工ができ、塗工厚み調整も容易であるため好ましい。中でもマイヤーバーコート法は比較的簡単な設備で塗工ができ、塗工厚み調整も容易であるため好ましい。この場合、水平方向に搬送されているポリオレフィン微多孔膜の下面側に塗工するのが好ましい。下面側に塗工することによって比較的比重の小さい樹脂成分がポリオレフィン微多孔膜界面に多くなりやすく、密着性が得られやすい。
本発明の電池用セパレータは、乾燥状態で保存することが望ましいが、絶乾状態での保存が困難な場合は、使用の直前に100℃以下の温度で減圧乾燥処理を行うことが好ましい。
また、本発明の電池用セパレータは、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、銀−亜鉛電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池等の二次電池などの電池用セパレータとして用いることができるが、特にリチウムイオン二次電池のセパレータとして用いるのが好ましい。
本発明で用いるポリオレフィン微多孔膜基材は次の物性を有する。
本発明で用いるポリオレフィン微多孔膜基材のシャットダウン温度は125℃以下が好ましい。135℃超であると、ポリオレフィン微多孔膜に改質多孔層を積層した場合に、過熱時の遮断応答性が低くなる場合がある。
本発明で用いるポリオレフィン微多孔膜の130℃における横方向の収縮率(2gfの荷重及び5℃/分の昇温速度で熱機械分析により測定)は20%以下であることが好ましい。20%を超えると、ポリオレフィン微多孔膜に改質多孔層を積層した場合に電池用セパレータの耐熱性が大幅に低下する。この熱収縮率は17%以下であるのが好ましい。
本発明に用いるポリオレフィン微多孔膜基材の厚さは25μm以下が好ましい。さらに好ましい上限は12μm、最も好ましくは10μmである。下限は5μm、好ましくは6μmである。5μmよりも薄い場合は実用的な膜強度とシャットダウン機能を保有させることが出来ないことがある。前記好ましい上限値とすることで今後、進むであろう電池の高容量化に適する。
中間層の厚みは3μm以上であることが好ましい。3μm以上あれば必要なシャットダウン特性が得られる。また両表層の厚さは特に限定されないが、実質的に同じ厚さであることが好ましい。同じ厚さであればカールすることも少なく良好な形状を保ちやすい。
本発明に用いるポリオレフィン微多孔膜基材の透気抵抗度の上限は400sec/100ccAir、より好ましくは350sec/100ccAir、さらに好ましくは150sec/100ccAirであり、下限は50sec/100ccAir、好ましくは70sec/100ccAir、さらに好ましくは100sec/100ccAirである。
本発明に用いるポリオレフィン微多孔膜の空孔率については、上限は好ましくは70%、さらに好ましくは60%、もっとも好ましくは55%である。下限は好ましくは30%、さらに好ましくは35%、もっと好ましくは40%である。透気抵抗度の前記好ましい上限値及び空孔率の前記好ましい下限値とすることで十分な電池の充放電特性、特にイオン透過性(充放電作動電圧)、電池の寿命(電解液の保持量と密接に関係する)において十分であり、電池としての機能を十分に発揮できる。また、透気抵抗度の前記好ましい下限値及び空孔率の前記好ましい上限値により、十分な機械的強度と絶縁性が得られ、充放電時に短絡が起こる可能性が低くなる。
本発明に用いるポリオレフィン微多孔膜基材のメルトダウン温度は150℃以上であることが好ましい。また、電池用セパレータは200℃以上であることが好ましい。200℃未満であると、シャットダウン後の温度上昇時の破膜防止性が悪い。
本発明に用いるポリオレフィン微多孔膜基材の平均孔径は、シャットダウン特性等に大きく影響を与えるため、好ましくは0.05〜0.30μm、より好ましくは0.07〜0.50μm、さらに好ましくは0.08〜0.13μmである。前記の好ましい歯にとすることで、水溶性樹脂または水分散性樹脂がポリオレフィン微多孔膜基材の細孔内に浸透しやすく十分な多孔質改質層の密着性が得られ、かつ、電解液浸透性とシャットダウン特性を維持することができる。
積層ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度の増加率は、好ましくは135%以下、より好ましくは130%以下である。積層ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度の増加率は、ポリオレフィンの微多孔膜の透気抵抗度に対する積層ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度を百分率で表したものである。
(1)シャットダウン温度差
シャットダウン温度差とは、ポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン温度と改質多孔層を積層した後の積層ポリオレフィン微多孔膜(電池用セパレータ)のシャットダウン温度との差をいう。シャットダウン温度差は、好ましくは5.0℃以下、より好ましくは4.0℃、さらに好ましくは3.0℃以下である。
(2)改質多孔層とポリオレフィン多孔質膜の接着性
改質多孔層とポリオレフィン多孔質膜の接着性は好ましくは0.8N/25mm以上、より好ましくは1.0N/25mm以上である。なお、ここでいう密着性とは、後述する実施例の(6)改質多孔層とポリオレフィン微多孔膜の剥離強度の測定方法で測定した値である。
ポリオレフィン微多孔膜および電池用セパレータについて、10cm角の試料でランダムに10点、接触厚み計により膜厚を測定し、その平均値を平均膜厚(μm)とした。
王研式透気抵抗度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)を使用してポリオレフィン微多孔膜と電池用セパレータそれぞれの試料についてシワが入らないように固定し、JIS P8117に従って測定した。試料は10cm角とし、測定点は試料の中央部と4隅の計5点として、その平均値を透気抵抗度p(sec/100ccAir)として用いた。尚、試料の1辺の長さが10cmに満たない場合は5cm間隔で5点測定した値を用いてもよい。透気抵抗度上昇率は電池用セパレータの透気抵抗度をポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度で除して%として求めた。
シャットダウン温度TSD(℃)は、ポリオレフィン微多孔膜を5℃/分の昇温速度で加熱しながら、王研式透気抵抗度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)により透気抵抗度を測定し、透気抵抗度が検出限界である1×105sec/100ccに到達した温度を求め、シャットダウン温度T(℃)とした。
上記シャットダウン温度TSDに到達後、さらに5℃/分の昇温速度で加熱を継続し、透気抵抗度が再び1×105sec/100ccとなった温度を求め、メルトダウン温度TMD(℃)とした。
ポリオレフィン微多孔膜及び電池用セパレータの耐熱性は130℃のオーブンでの60分間保管したときのMDとTDの初期寸法に対する変化率の平均値から求めた。
実施例及び比較例で得られたセパレータの改質多孔層面に粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)を貼り、幅24mm、長さ150mmに裁断し、試験用サンプルを作製した。23℃、50%RH条件下で引張り試験機(エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTM−100」)を用いて、ピール法(剥離速度500mm/分、T型剥離)にて改質多孔層とポリオレフィン微多孔膜界面の剥離強度を測定した。測定開始から測定終了までの100mmの間において、経時的に測定し、測定値の平均値を算出し、巾25mm換算して剥離強度とした。尚、前記剥離界面において、ポリオレフィン微多孔膜基材側に改質多孔層面が残存する場合があるがこの場合も改質多孔層とポリオレフィン微多孔膜基材の剥離強度として算出した。
積層ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度の増加率は、ポリオレフィンの微多孔膜の透気抵抗度に対する積層ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度を百分率で表す。
積層ポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン温度差は、ポリオレフィンの微多孔膜のシャットダウン温度から積層ポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン温度を引いた値で表す。
ポリオレフィンの試料を、210℃で溶融プレスされた厚さ0.5mmの成形物として調製し、次いで約25℃の温度にさらしながら約24時間保存した。次いで試料を、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製Pyris Diamond DSC)の試料ホルダーに入れ、窒素雰囲気中にて25℃の温度にさらした。次いで試料を、230℃の温度に達するまで10℃/分の速度で上昇する温度にさらした(第1の加熱サイクル)。試料を230℃の温度に1分間さらし、次いで30℃の温度に達するまで10℃/分の速度で低下する温度にさらした。試料を30℃の温度に1分間さらし、次いで230℃の温度に達するまで10℃/分の速度で上昇する温度にさらした(第2の加熱サイクル)。DSCによって、第2の加熱サイクル中に試料へと流れる熱の量を記録した。
ポリオレフィンの分子量は、示差屈折計(DRI)を備えた高温サイズ排除クロマトラフ、すなわち「SEC」(GPC PL 220、ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて決定した。この装置にはトランスファーライン、カラム、およびDRI検出器が、145℃に維持されたオーブン内に含まれている。測定は、"Macromolecules, Vol. 34, No. 19, pp. 6812-6820 (2001)"に開示されている手順に従って行なった。分子量の決定には、3本のPLgel Mixed-Bカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いた。流量は0.5cm3/分とし、注入量は300μLとした。
使用するGPC溶媒は、約1000ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する、濾過済みの、アルドリッチ社製の、試薬グレードの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)とした。TCBを、SECに導入する前にオンライン脱気装置で脱気した。SEC溶離液として同じ溶媒を用いた。乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望の量のTCB溶媒を加え、次いでこの混合物を160℃で継続的に撹拌しながら約2時間加熱することにより、ポリマー溶液を調製した。ポリマー溶液の濃度は0.25〜0.75mg/mlである。なお、試料溶液は、GPCに注入する前に、モデルSP260 Sample Prep Station(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて2μmフィルターでオフラインろ過した。
<ポリオレフィン微多孔膜>
質量平均分子量(Mw)が2.5×106の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)30質量%と、Mwが3.0×105の高密度ポリエチレン(HDPE)70質量%とからなるポリエチレン(PE)組成物100質量部に、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.375質量部をドライブレンドし、ポリオレフィン樹脂組成物Aを得た。融点は135℃であった。(質量パーセントは混合物中のポリエチレンの質量が基準) 質量平均分子量(Mw)が3.8×104のポリエチレンの12.3質量%、質量平均分子量(Mw)が5.6×105のポリエチレン(HDPE)69.7質量%、ならびに質量平均分子量(Mw)1.95×106のポリエチレン(UHMWPE)18質量%とからなるポリエチレン(PE)組成物100質量部に、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.375質量部をドライブレンドし、ポリオレフィン樹脂組成物Bを得た。融点は123℃であった。
ポリオレフィン樹脂組成物Aを30質量部、強混練タイプの二軸押出機(内径58mm、L/D=42)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35 cst(40度)]70質量部を供給し、230℃及び250rpmの条件で溶融混練して、ポリオレフィン樹脂組成物溶液Aを調製した。
ついで、ポリオレフィン樹脂組成物Bを同様にしてポリオレフィン樹脂組成物溶液Bを調製した。
得られたポリオレフィン樹脂組成物溶液A及びBを、各二軸押出機から三層用Tダイに供給し、溶液A/溶液B/溶液Aの順で積層した成形体となるように押し出した(層厚比:A/B/A=1/1/1)。押し出した成形体を、0℃に温調した冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状三層シートを形成した。テンター延伸機を用いて、117.5℃で長手方向(MD)及び横手方向(TD)ともに5倍となるようにゲル状三層シートを同時二軸延伸した。得られた延伸成形物を枠板[サイズ:20 cm×20 cm、アルミニウム製]に固定し、25℃に温調した塩化メチレンの洗浄槽中に浸漬し、100rpmで3分間揺動させながら洗浄し、流動パラフィンを除去した。洗浄した膜を室温で風乾し、テンターに固定し、125℃で1分間熱固定処理することにより厚さ12μmの3層のポリエチレン微多孔膜基材を作製した。ポリエチレン微多孔膜基材のシャットダウン温度は125℃、透気抵抗度は105sec/100ccAirであった。
<塗布液の調製>
CMC(ダイセルファインケム株式会社製、品番2200)0.8質量部に溶媒60.8質量部を加え、2時間攪拌した。続いて平均粒径0.5μmの略球形状のアルミナ微粒子を38.4質量部加え、2時間攪拌してアルミナ微粒子を十分分散させた後、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液(A)とした。この時、樹脂成分と微粒子の体積比は5:95であった。(CMCの比重1.6g/cm3、アルミナの比重4.0g/cm3として計算した。)
<改質多孔層の積層>
前記ポリオレフィン微多孔膜基材の両面にマイヤーバーにて塗布液(A)を乾燥後の厚みが片面当たり2.5μmとなるように塗布し、熱風乾燥炉(温度60℃)で20秒間乾燥し、最終厚み17μmの電池用セパレータを得た。
<塗布液の調製>
CMC(ダイセルファインケム株式会社製、品番2200)1.0質量部に溶媒50.0質量部を加え、2時間攪拌した。続いて平均粒径0.5μmの略球形状のアルミナ微粒子を49.0質量部加え、2時間攪拌してアルミナ微粒子を十分分散させた後、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液(B)とした。この時、樹脂成分と微粒子の体積比は5:95であった。
<改質多孔層の積層>
実施例1と同様のポリオレフィン微多孔膜基材に塗布液(B)を用いて実施例1と同様の方法で塗布、乾燥し、電池用セパレータを得た。
<塗布液の調製>
CMC(ダイセルファインケム株式会社製、品番2200)1.2質量部に溶媒41.2質量部を加え、2時間攪拌した。続いて平均粒径0.5μmの略球形状のアルミナ微粒子を57.6質量部加え、2時間攪拌してアルミナ微粒子を十分分散させた後、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液(C)とした。この時、樹脂成分と微粒子の体積比は5:95であった。
<改質多孔層の積層>
実施例1と同様のポリオレフィン微多孔膜基材に塗布液(C)を用いて実施例1と同様の方法で塗布、乾燥し、電池用セパレータを得た。
<塗布液の調製>
CMC(ダイセルファインケム株式会社製、品番2200)1.5質量部に溶媒28.6質量部を加え、2時間攪拌した。続いて平均粒径0.5μmの略球形状のアルミナ微粒子を70.0質量部加え、2時間攪拌してアルミナ微粒子を十分分散させた後、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液(D)とした。この時、樹脂成分と微粒子の体積比は5:95であった。
<改質多孔層の積層>
実施例1と同様のポリオレフィン微多孔膜基材に塗布液(D)を用いて実施例1と同様の方法で塗布、乾燥し、電池用セパレータを得た。
<塗布液の調製>
CMC(ダイセルファインケム株式会社製、品番2200)1.8質量部に溶媒13.0質量部を加え、2時間攪拌した。続いて平均粒径0.5μmの略球形状のアルミナ微粒子を85.2質量部加え、2時間攪拌してアルミナ微粒子を十分分散させた後、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液(E)とした。この時、樹脂成分と微粒子の体積比は5.0:95.0であった。
<改質多孔層の積層>
実施例1と同様のポリオレフィン微多孔膜基材に塗布液(E)を用いて実施例1と同様の方法で塗布、乾燥し、電池用セパレータを得た。
<塗布液の調製>
CMC(ダイセルファインケム株式会社製、品番2200)2.0質量部に溶媒39.4質量部を加え、2時間攪拌した。続いて平均粒径0.5μmの略球形状のアルミナ微粒子を58.6質量部加え、2時間攪拌してアルミナ微粒子を十分分散させた後、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液(F)とした。この時、樹脂成分と微粒子の体積比は7.9:92.1であった。
<改質多孔層の積層>
実施例1と同様のポリオレフィン微多孔膜基材に塗布液(F)を用いて実施例1と同様の方法で塗布、乾燥し、電池用セパレータを得た。
<塗布液の調製>
CMC(ダイセルファインケム株式会社製、品番2200)2.4質量部に溶媒28.6質量部を加え、2時間攪拌した。続いて平均粒径0.5μmの略球形状のアルミナ微粒子を69.1質量部加え、2時間攪拌してアルミナ微粒子を十分分散させた後、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液(G)とした。この時、樹脂成分と微粒子の体積比は7.9:92.1であった。
<改質多孔層の積層>
実施例1と同様のポリオレフィン微多孔膜基材に塗布液(G)を用いて実施例1と同様の方法で塗布、乾燥し、電池用セパレータを得た。
<塗布液の調製>
アクリセットTF−300(株式会社日本触媒製)(固形分40%)6.3質量部に溶媒48.0質量部を加え、2時間攪拌した。続いて平均粒径0.5μmの略球形状のアルミナ微粒子を64.2質量部加え、2時間攪拌してアルミナ微粒子を十分分散させた後、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液(H)とした。この時、樹脂成分と微粒子の体積比は8:92であった。
<改質多孔層の積層>
実施例1と同様のポリオレフィン微多孔膜基材に塗布液(H)を用いて実施例1と同様の方法で塗布、乾燥し、電池用セパレータを得た
実施例1と同様のポリオレフィン微多孔膜に改質多孔層を積層せずに電池用セパレータとした。
<塗布液の調製>
CMC(ダイセルファインケム株式会社製、品番2200)6.0質量部に溶媒50.0質量部を加え、2時間攪拌した。続いて平均粒径0.5μmの略球形状のアルミナ微粒子を44.0質量部加え、2時間攪拌してアルミナ微粒子を十分分散させた後、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が10μmのフェルト型ポリプロピレン製フィルターで精密濾過し、塗布液(I)とした。この時、樹脂成分と微粒子の体積比は25.4:74.6であった。
<改質多孔層の積層>
実施例1と同様のポリオレフィン微多孔膜基材に塗布液(I)を用いて実施例1と同様の方法で塗布、乾燥し、電池用セパレータを得た。
*:ポリオレフィン微多孔膜基材のシャットダウン温度と電池用セパレータのシャットダウン温度の差を表す。
Claims (1)
- (a)ポリオレフィン樹脂組成物Aとポリオレフィン樹脂組成物Bを、別々に成膜用溶剤を用いて溶融混練し、樹脂濃度25〜50質量%のポリオレフィン樹脂組成物溶液Aとポリオレフィン樹脂組成物溶液Bを調整する工程
(b)ポリオレフィン樹脂組成物溶液Aとポリオレフィン樹脂組成物溶液Bをポリオレフィン樹脂組成物溶液Bが中間層になるようにダイより同時に押し出し、層状の押し出し成形体を形成する工程
(c)得られた層状の押し出し成形体を冷却してゲル状シートを形成する工程
(d)前記ゲル状シートを少なくとも一軸方向に延伸し、延伸成形物を得る工程
(e)前記延伸成形物から前記成膜用溶剤を除去、乾燥、熱処理し、3層構造のポリオレフィン微多孔膜基材を得る工程
(f)前記ポリオレフィン微多孔膜基材の少なくとも片面に、水溶性樹脂または水分散性樹脂と微粒子とを含み、水溶性樹脂または水分散性樹脂が微粒子に対して体積比で2〜15%であり、水溶性樹脂または水分散性樹脂の濃度が0.8〜1%である塗工液を塗布、乾燥し改質多孔層を形成する工程を有する電池用セパレータの製造方法。
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