JP5179478B2 - フッ素化界面活性剤 - Google Patents

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Description

本発明は、フッ素化界面活性剤、フッ素化界面活性剤を含む水性組成物、層状物品の製造法、及びフルオロポリマー分散体の調製法に関する。
フルオロポリマー類、即ち、フッ素化された骨格鎖を有するポリマー類は、昔から知られ、例えば、耐熱性、耐薬品性、耐候性、紫外線安定性等のような数種の望ましい特性のために様々な用途に使用されてきている。様々なフルオロポリマー類は、例えば「現代のフルオロポリマー(Modern Fluoropolymers)」、(編者ジョーンシャイアーズ(Jhon Scheirs)、ワイリーサイエンス社(Wiley Science)、1997年発行)に記載されている。一般に知られているまたは商業的に利用されているフルオロポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー(FEPポリマー)、ペルフルオロアルコキシコポリマー(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)コポリマー、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンと、フッ化ビニリデン(VDF)とのターポリマー(THVコポリマーと呼ばれるもの)、及びポリフッ化ビニリデンポリマー(PVDF)が挙げられる。商業的に利用されているフルオロポリマーとしてはまた、フルオロエラストマー、及び熱可塑性フルオロポリマーが挙げられる。
フルオロポリマー類を製造するための幾つかの方法が既知である。これらの方法としては、懸濁重合、水性乳化重合、溶液重合、超臨界二酸化炭素中における重合、及び気相中での重合が挙げられる。懸濁重合及び水性乳化重合は、工業的に最も幅広く用いられる技術である。懸濁重合は一般に、界面活性剤を使用せず、通常は結果的に水性乳化重合により得られるものよりも大きなポリマー粒子をもたらす。
様々な界面活性剤を使用しない水性乳化重合が述べられてきたが、フッ素化界面活性剤存在下における水性乳化重合法でのフルオロポリマー製造の必要性が依然として存在する。フッ素化界面活性剤存在下における水性乳化重合により、比較的安定なフルオロポリマー粒子分散体を高収率で得ることができ、この方法は一般に、有機溶媒中での重合よりも環境にやさしいと考えられる。
フルオロポリマーを得るための水性乳化重合は、界面活性剤としてペルフルオロアルカン酸、またはその塩を用いて行われることが多い。これら界面活性剤は、高速重合、得られるフルオロポリマーの良好な重合特性、及び良好な分散安定性をもたらすことが可能であるが、これらの界面活性剤に対する環境問題が起こっている。
本出願により、フッ素化界面活性剤としてのペルフルオロアルカン酸及びそれらの塩の使用を削減または回避可能な、新たな乳化重合法を見出す必要性が認識される。本出願により、新たな界面活性剤、特に環境に対する影響がより小さい界面活性剤の必要性が認識される。
それ故に、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される界面活性剤は、毒性が低く、及び/または生体内蓄積を示さないかわずかである。これに関連して、毒性が低いとは、体重、肝臓重量、その他臨床的徴候(例えば、異常活動、行動、及びその他正常ではない中枢神経系の疾患等)、及び死亡に関して急性毒性が低いことを意味する。更に、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される界面活性剤は良好な化学安定性及び熱安定性を有し、幅広い条件(例えば、温度及び/または圧力)において、乳化重合での使用が可能となる。本明細書に記載される界面活性剤はまた、高い重合速度、良好な分散安定性、良好なフルオロポリマー収率、及び良好な重合特性を可能とする。本明細書に記載される界面活性剤はまた、界面活性剤を利用する水性乳化重合の後に、フルオロポリマー分散体、及び/または廃水から回収することもできる。
別の実施形態では、本明細書に記載される分散体は、コーティング用途及び/または基材の含浸において、例えば、良好な被膜形成能などの良好または優れた特性を有する。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される水性乳化重合は、便利で及び費用効果の高い方法で、フッ素化モノマーの水性乳化重合において一般的に使用される装置を用いて実行できる。
一態様において、本発明は、
a)次の一般式:
[Rf 1−O−(CF2n−CO2 -ii+
(式中、Rf 1はCF3CFHであり、nは1、2、5、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する部分的にフッ素化された界面活性剤と、
b)次の一般式:
[Rf 2−O−(CF2m−CO2 -ii+
(式中、Rf 2はCF3CF2であり、mは1、3、4、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する完全フッ素化されたエチルエーテル界面活性剤と、
c)次の一般式:
[Rf 3−O−(CF2p−CO2 -ii+
(式中、Rf 3はCF3(CF23であり、pは1、4、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する完全フッ素化されたブチルエーテル界面活性剤と、から選択されるフッ素化エーテルカルボン酸または酸誘導体を含む、乳化重合用界面活性剤に関する。カチオンMi+の例としては、H+、NH4 +またはテトラアルキルアンモニウムイオンなどのアンモニウムイオン、ナトリウム、カリウム、リチウムを包含するアルカリ金属イオン、並びにカルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類カチオンのような金属カチオンが挙げられる。好ましいカチオンは、H+及びアンモニウムである。
別の態様において、本発明は、
a)次の一般式:
[Rf 1−O−(CF2n−CO2 -ii+
(式中、Rf 1はCF3CFHであり、nは1〜6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する部分的にフッ素化された界面活性剤と、
b)次の一般式:
[Rf 2−O−(CF2m−CO2 -ii+
(式中、Rf 2はCF3CF2であり、mは1、3、4、5、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する完全フッ素化されたエチルエーテル界面活性剤と、
c)次の一般式:
[Rf 3−O−(CF2p−CO2 -ii+(式中、Rf 3はCF3(CF23であり、pは1、4、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する完全フッ素化されたブチルエーテル界面活性剤と、から選択されるフッ素化界面活性剤を含む、水性組成物に関する。カチオンMi+の例としては、H+、NH4 +またはテトラアルキルアンモニウムイオンなどのアンモニウムイオン、ナトリウム及びカリウムを包含するアルカリ金属イオン、並びにカルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類カチオンのような金属カチオンが挙げられる。
更に別の態様では、本発明は、水性エマルション中での1つ以上のフッ素化モノマーの重合工程を含むフルオロポリマー分散体の調製方法に関し、この重合工程は、
a)次の一般式:
[Rf 1−O−(CF2n−CO2ii+(A)
(式中、Rf 1はCF3CFHであり、nは1〜6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する部分的にフッ素化された界面活性剤と、
b)次の一般式:
[Rf 2−O−(CF2m−CO2 -ii+(B)
(式中、Rf 2はCF3CF2であり、mは1、3、4、5、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する完全フッ素化されたエチルエーテル界面活性剤と、
c)次の一般式:
[Rf 3−O−(CF2p−CO2 -ii+(C)
(式中、Rf 3はCF3(CF23であり、pは1、4、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する完全フッ素化されたブチルエーテル界面活性剤と、から選択される1つ以上のフッ素化界面活性剤の存在下で行われる。カチオンMi+の例としては、H+、NH4 +またはテトラアルキルアンモニウムイオンなどのアンモニウムイオン、ナトリウム及びカリウムを包含するアルカリ金属イオン、並びにカルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類カチオンのような金属カチオンが挙げられる。
本明細書に記載される界面活性剤は、モノマー、特にフッ素化モノマーの水性乳化重合に好適であることが見出されている。水性乳化重合における使用に加えて、フッ素化界面活性剤は、例えばコーティング組成物中でまたは例えばフルオロポリマー分散体を包含する分散体を安定化させる際などに使用される別の用途に有用である。
本明細書に記載する界面活性剤は、費用効果の高い方法で容易に及び簡便に調製できることが分かった。例えば、次の一般式:
[Rf 1−O−(CF2n−CO2 -ii+
(式中、Rf 1はCF3CFHであり、nは1、2、5、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する部分的にフッ素化された界面活性剤の調製では、まずは、以下の反応スキーム(I)に開示されるような有機分子のフッ素化を行うことができる。フッ素化は、電解フッ素化(ECF)または直接フッ素化(DF)のいずれかとすることができる。例えば、以下のフッ素化反応が反応(I)に従って行われる。
Figure 0005179478
CH3OCO(CH2nCOOCH3+ECFまたはDF→FCO(CF2nCOF
(式中、反応(I)の目的において、nを任意の整数、例えば1〜6とすることができる)ECFの一般的な手順は、例えば、米国特許第2,713,593号、及びPCT国際公開特許WO98/50603号に記載される。DFの一般的な手順は、例えば、米国特許第5,488,142号に記載される。
別の方法としては、第1工程に、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのカップリング反応を含んでもよい。例えば、反応(II)に従う。
Figure 0005179478
次いで、反応(II)で形成される二塩基酸フッ化物を、水存在下で塩基を用いる脱炭酸により、部分的にフッ素化された界面活性剤に転化することができる。これは一般に、反応(III)で示すことができる。
FCOCF(CF3)−O−(CF2n+1C(O)F+H2O+(塩基)→CF3−CHF−O−(CF2n+1CO2
(式中、塩基は金属水酸化物または金属炭酸塩とすることができ、Mはナトリウム及びカリウムを包含するアルカリ金属イオン、並びにカルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類カチオンのような金属カチオンである)
いくつかの実施形態では、本発明の部分的にフッ素化された界面活性剤は次の一般式:
[Rf 1−O−(CF2n−CO2 -ii+
(式中、Rf 1はCF3CFHであり、nは1、2、5、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有してもよい。いくつかの実施形態では、nは1及び2から選択される。別の実施形態では、nは5及び6から選択される。
部分的にフッ素化された界面活性剤の具体例としては、
CF3CFH−O−CF2CO2H、
CF3CFH−O−(CF2)2CO2H、
CF3CFH−O−(CF23CO2H、
CF3CFH−O−(CF24CO2H、
CF3CFH−O−(CF25CO2H、
CF3CFH−O−(CF26CO2Hが挙げられる。
別の実施形態では、次の一般式:
[Rf 2−O−(CF2m−CO2 -ii+
(式中、Rf 2はCF3CF2であり、mは1、3、4、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する完全フッ素化されたエチルエーテル界面活性剤、並びに、次の一般式:
[Rf 3−O−(CF2p−CO2 -ii+
(式中、Rf 3はCF3(CF23であり、pは1、4、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する完全フッ素化されたブチルエーテル界面活性剤を、それぞれ適切な合成経路により調製してもよい。まずは、例えば、酸素中でエーテル前駆体とSbF5を反応することにより、酸フッ化物を調製してもよい。
f−O−(CF2xCF=CF2+SbF5(O2)→Rf−O−(CF2x+1−COF+H2O→Rf−O−(CF2x+1−COOH
(式中、RfはCF3CF2またはCF3(CF23であり、xは0〜5であり、xが0であることが好ましい)当業者は、様々なRf値、及びx値のカルボン酸エーテルを生成するこの合成調製経路が、一般的に適用性があると認識するであろう。
本発明の完全フッ素化されたエチルエーテル界面活性剤及び完全フッ素化されたブチルエーテル界面活性剤を提供する、その他の一般的に適用可能な合成経路には、以下の反応順序が含まれる。
R’f−COF+KF+Br(CH2n−CO2R→R’fCF2−O−(CH2n−CO2
(式中、R’fはCF3またはCF3(CF22であり、及びnは例えば1〜6である)生成した部分的に水素添加されたエステルを、続いてフッ素化することができ、加水分解後にカルボン酸を生ずる。
R’fCF2−O−(CH2n−CO(R)+(1)F2;(2)加水分解→R’fCF2−O−(CF2n−CO2
(式中、この式において、Rはフッ素を含むハロゲン、及び直鎖状、分枝状、または環状アルコキシ基を含むアルコキシ基から選択され、アルコキシ基はフッ素化されていなくても、または部分的にフッ素化されていてもよい)
いくつかの実施形態では、完全フッ素化されたエチルエーテル界面活性剤は次の一般式:
[Rf 2−O−(CF2m−CO2 -ii+
(式中、Rf 2はCF3CF2であり、mは1、3、4、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する。特定の実施形態では、mは3、4、及び6から選択される。
完全フッ素化されたエチルエーテル界面活性剤の具体例としては、
CF3CF2−O−CF2CO2H、
CF3CF2−O−(CF2)2CO2H、
CF3CF2−O−(CF23CO2H、
CF3CF2−O−(CF24CO2H、
CF3CF2−O−(CF25CO2H、
CF3CF2−O−(CF26CO2Hが挙げられる。
完全フッ素化されたブチルエーテル界面活性剤は、いくつかの実施形態では、次の一般式:
[Rf 3−O−(CF2p−CO2 -ii+
(式中、Rf 3はCF3(CF23であり、pは1、4、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有してもよい。特定の実施形態では、pは4及び6から選択される。
完全フッ素化されたブチルエーテル界面活性剤の具体例としては、
CF3(CF23−O−CF2CO2H、
CF3(CF23−O−(CF2)2CO2H、
CF3(CF23−O−(CF23CO2H、
CF3(CF23−O−(CF24CO2H、
CF3(CF23−O−(CF25CO2H、
CF3(CF23−O−(CF26CO2Hが挙げられる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される部分的にフッ素化された界面活性剤、完全フッ素化されたエチルエーテル界面活性剤、及び完全フッ素化されたブチルエーテル界面活性剤は、好ましい環境特性を示す。例えば、いくつかの実施形態では、界面活性剤は生体内蓄積可能性が低く、雄性ラットにおける界面活性剤の腎排泄半減期で例証されるように、哺乳類から容易に排泄される。半減期を、いくつかの実施形態では、35時間以下、30時間以下、24時間以下、または更に12時間以下とすることができる。別の実施形態では、本明細書に記載される界面活性剤は、代謝分解されない。更に、これらの界面活性剤は、雄性ラットの投与96時間後の腎からの排泄による界面活性剤の回収で例証されるように、哺乳類の生体内蓄積可能性を低くすることが可能である。回収率は、いくつかの実施形態では、30%以上、45%以上、50%以上、75%以上、または更に90%以上にまですることができる。一般に、当該化合物中のフッ素化脂肪族部分がそれぞれ3個以下の炭素原子を有するフッ素化カルボン酸は、回収率及び半減期についての前述の条件を満たす。
本発明はまた、フルオロポリマー分散体の調製法も提供する。本方法は、水性エマルション中における、1つ以上のフッ素化モノマーの重合工程を含む。一実施形態では、次の一般式:
[Rf 1−O−(CF2n−CO2ii+
(式中、Rf 1はCF3CFHであり、nは1〜6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する1つ以上の部分的にフッ素化された界面活性剤存在下で重合を行ってもよい。別の実施形態では、次の一般式:
[Rf 2−O−(CF2m−CO2 -ii+
(式中、Rf 2はCF3CF2であり、mは1、3、4、5、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する完全フッ素化されたエチルエーテル界面活性剤存在下で重合を行ってもよい。更に別の実施形態では、次の一般式:
[Rf 3−O−(CF2p−CO2 -ii+
(式中、Rf 3はCF3(CF23であり、pは1、4、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する完全フッ素化されたブチルエーテル界面活性剤存在下で重合を行ってもよい。またこのプロセスを、上述のフッ素化界面活性剤の任意の混合物の存在下で行ってもよい。
特定の実施形態では、式(I)の1つ以上のフッ素化界面活性剤は、1つ以上のフッ素化モノマー、特にガス状のフッ素化モノマーの水性乳化重合において使用される。ガス状フッ素化モノマーとは、重合条件下で気体として存在するモノマーを意味する。フッ素化モノマーの重合は、式(A)〜(C)によるフッ素化界面活性剤の存在下で開始してよい。すなわち、重合はフッ素化界面活性剤の存在下で開始される。使用されるフッ素化界面活性剤の量は、固体分の量及び粒径のような所望の特性に応じて変化させてよい。一般的にフッ素化界面活性剤の量は、重合中の水の重量を基準にして0.001重量%〜5重量%であり、例えば、0.005重量%〜2重量%である。実用的な範囲は、0.05重量%〜1重量%である。重合は一般に、フッ素化界面活性剤の存在下で開始され、重合中に更にフッ素化界面活性剤を添加することを排除はしないが、こうしたことは一般に必要ではない。それにもかかわらず、重合に水性エマルションの形態で特定モノマーを添加するのが望ましいことがある。例えば、フッ素化モノマー、及び特には重合条件下で液体の完全フッ素化されたコモノマーは、水性エマルション状(マイクロエマルションの場合もあり)での添加が有利である。このようなコモノマーのエマルションを、上記式(A)〜(C)によるフッ素化界面活性剤を乳化剤として用いて調製できる。
更に、水性分散体は、上述のフッ素化界面活性剤以外に1つ以上のフッ素化界面活性剤を更に含んでもよい。その他のフッ素化界面活性剤として、例えば、ペルフルオロアルキルカルボン酸が挙げられる。その他のフッ素化界面活性剤として更に考えられるものに、ペルフルオロポリエーテル界面活性剤がある。更なる追加の実施形態では、水性分散体は更に、1つ以上の非フッ素化界面活性剤を含んでもよい。
水性乳化重合は、10〜150℃、好ましくは20℃〜110℃の温度で、及び、典型的に200kPa(2bar)〜3000kPa(30bar)で、特に500kPa(5bar)〜2000kPa(20bar)の圧力で行うことができる。反応温度は、分子量分布に影響を与えるように、すなわち広い分子量分布が得られるように、または二峰性の若しくは多峰性の分子量分布が得られるように、重合中に変えてもよい。
重合媒体のpHは、pH2〜11、好ましくは3〜10、最も好ましくは4〜10の範囲であってよい。
水性乳化重合は、通常、フッ素化モノマーのフリーラジカル重合を開始させるために既知である任意の開始剤を含む開始剤によって開始される。好適な反応開始剤としては、過酸化物類及びアゾ化合物類並びにレドックス系反応開始剤類が挙げられる。過酸化物反応開始剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム若しくはバリウム、例えばジアセチルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド、ジスクシニルペルオキシド、ジプロピオニルペルオキシド、ジブチリルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルアセチルペルオキシド、ジグルタル酸ペルオキシド、及びジラウリルペルオキシド、並びに更なる過酸及び、例えばアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのそれらの塩が挙げられる。過酸の例としては過酢酸が挙げられる。過酸のエステルも同様に使用することができ、そしてそれらの例としては、tert.−ブチルペルオキシアセテート、及びtert.−ブチルペルオキシピバレートが挙げられる。無機物の例としては、例えば、過硫酸、過マンガン酸、もしくはマンガン酸またはマンガン酸の、アンモニウム塩、アルカリ塩またはアルカリ土塩が挙げられる。過硫酸塩反応開始剤、例えば過硫酸アンモニウム(APS)は、単独で使用することができ、または還元剤と組み合わせて使用してもよい。好適な還元剤としては、例えば、亜硫酸水素アンモニウムまたはメタ重亜硫酸ナトリウムのような亜硫酸水素塩、例えばチオ硫酸アンモニウム、カリウムまたはナトリウムのようなチオ硫酸塩、ヒドラジン、アゾジカルボキシラート、及びアゾジカルボキシルジアミド(ADA)が挙げられる。使用してよい他の還元剤としては、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(ロンガリット(Rongalit)(登録商標))または米国特許第5,285,002号に記載されるようなフルオロアルキルスルフィナート類が挙げられる。還元剤は典型的には、過硫酸塩反応開始剤の半減期を短くする。加えて、例えば銅、鉄または銀塩のような金属塩触媒を添加してもよい。反応開始剤の量は(生成されるべきフルオロポリマー固体に基づいて)0.01重量%〜1重量%であってよい。一実施形態では、反応開始剤の量は0.05重量%〜0.5重量%である。別の実施形態では、この量は0.05重量%〜0.3重量%であってよい。
水性乳化重合系は、緩衝剤、及び所望により、錯体形成剤または連鎖移動剤などの他の物質を更に含んでもよい。使用できる連鎖移動剤の例としては、ジメチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、1〜5個の炭素原子を有するアルカン類、例えばエタン、プロパン、及びn−ペンタン、ハロゲン化炭化水素類、例えばCCl4、CHCl3及びCH2Cl2、並びにCH2F−CF3(R134a)のようなヒドロフルオロカーボン化合物類が挙げられる。加えて、酢酸エチル、マロン酸エステルなどのエステルも適用可能である。
式(I)に記載のフッ素化界面活性剤を乳化剤として用いて重合してもよいフッ素化モノマーの例としては、フッ素化オレフィンを包含する部分的にまたは完全にフッ素化されたガス状モノマー、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VDF)、部分的または完全にフッ素化されたアリルエーテル、並びに部分的または完全にフッ素化されたビニルエーテルが挙げられる。重合は、エチレン及びプロピレンのような非フッ素化モノマーを更に伴ってよい。
本発明による水性乳化重合で使用してよいフッ素化モノマー類の他の例としては、次式:
CF2=CF−O−Rfに対応するものを含む。
(式中、Rfは1つ以上の酸素原子を含有してよい完全フッ素化脂肪族基を表す)で表されるものが挙げられる。好ましくは、ペルフルオロビニルエーテル類は次の一般式:
CF2=CFO(RfO)n(R’fO)mR”f
(式中、Rf及びR’fは、2〜6個の炭素原子の異なる直鎖または分子鎖ペルフルオロアルキレン基であり、m及びnは独立して0〜10であり、及びR”fは1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である)で表される。上式のペルフルオロビニルエーテルの例としては、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE−2)、ペルフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ−2−メトキシ−エチルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロ−n−プロピルビニルエーテル(PPVE−1)、及び
CF3−(CF22−O−CF(CF3)−CF2−O−CF(CF3)−CF2−O−CF=CF2、が挙げられる。
使用できるフッ素化アリルエーテルの例として、次の一般式:
CF2=CF−CF2−O−Rf
(式中、Rfは1つ以上の酸素原子を含有してよい完全フッ素化脂肪族基を表す)で表されるものが挙げられる。
なお更に、重合は、例えば、過酸化物硬化反応に関与できる基のような官能基を有するコモノマーを伴ってもよい。このような官能基としては、BrまたはIなどのハロゲン、並びにニトリル基が挙げられる。本明細書で列挙され得るこのようなコモノマーの具体例としては、以下のものが挙げられる:
(a)次式のブロモ−もしくはヨード−(ペル)フルオロアルキル−(ペル)フルオロビニルエーテル
Z−Rf−O−CX=CX2
(式中、Xはそれぞれ、同一または異なってよく、そしてHまたはFを表し、Zは、BrまたはIであり、Rfは、(ペル)フルオロアルキレンC1〜C12であって、任意に塩素及び/またはエーテル酸素原子を含有し;例えば、BrCF2−O−CF=CF2、BrCF2CF2−O−CF=CF2、BrCF2CF2CF2−O−CF=CF2、CF3CFBrCF2−O−CF=CF2などである)及び
(b)次式を有するものなどのブロモ−もしくはヨード含有フルオロオレフィン:
Z’−(Rf’)r−CX=CX2
(式中、Xはそれぞれ独立してHまたはFを表し、Z’はBrまたはIであり、Rf’は、ペルフルオロアルキレンC1〜C12であって、任意に塩素原子を含有し、及びrは0または1である)例えば、以下のものである:ブロモトリフルオロエチレン、4−ブロモ−ペルフルオロブテン−1など;またはブロモフルオロオレフィン、例えば1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン、及び4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1。
使用してよいニトリル含有モノマー類の例としては、次式:
CF2=CF−CF2−O−Rf−CN
CF2=CFO(CF2LCN
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]g(CF2vOCF(CF3)CN
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]kO(CF2uCN
(式中、Lは2〜12の整数を表し;gは0〜4の整数を表し;kは1または2を表し;vは0〜6の整数を表し;uは1〜6の整数を表し、Rfはペルフルオロアルキレンまたは二価のペルフルオロエーテル基である)のうちの1つで表されるものが挙げられる。ニトリル含有液体フッ素化モノマー類の具体例としては、ペルフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)、CF2=CFO(CF25CN、及びCF2=CFO(CF23OCF(CF3)CNが挙げられる。
水性乳化重合は、完全にフッ素化された主鎖を有するペルフルオロポリマー並びに部分的にフッ素化されたフルオロポリマーを包含する、様々なフルオロポリマーを製造するために使用できる。水性乳化重合はまた、溶融加工可能なフルオロポリマー、並びに例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びいわゆる変性ポリテトラフルオロエチレンなどの、溶融加工できないものを生ずることができる。重合プロセスは、フルオロエラストマー、並びにフルオロサーモプラストを製造するために硬化させることが可能なフルオロポリマーを更に生成することもできる。フルオロサーモプラストは一般に、典型的には60〜320℃または100〜320℃の範囲に、はっきりとした、そして非常に顕著な融点を有するフルオロポリマーである。それらはすなわち、実質的に結晶性の相を有する。フルオロエラストマーを製造するために使用されるフルオロポリマーは、典型的に非晶質であり、及び/または無視できる量の結晶化度を有するので、これらのフルオロポリマーには、融点が全くまたはほとんど認められない。
水性乳化重合により、結果としてフルオロポリマーの水中分散体がもたらされる。一般に、重合から直接生ずる分散体中のフルオロポリマーの固体の量は、重合条件に応じて、3重量%〜40重量%の間で変化する。典型的な範囲は、5〜30重量%、例えば、10〜25重量%である。フルオロポリマーの粒径(体積平均粒径)は典型的に、40nm〜400nmであり、典型的な粒径は60nm〜350nmである。得られる分散体中の式(I)に記載のフッ素化界面活性剤の総量は典型的に、分散体中のフルオロポリマー固体の量に対して0.001〜5重量%である。典型的な量は、0.01〜2重量%または0.02〜1重量%であってよい。
特定の実施形態に従うと、水性分散体から、例えば疑析によりフルオロポリマーを分離する。このような疑析の後、フッ素化界面活性剤の大部分は、多くの場合フルオロポリマー上に残存する。フルオロポリマーを乾燥目的で加熱すると、フッ素化界面活性剤が揮発し、乾燥機またはオーブンの排気中に運び出される。フッ素化カルボン酸の環境中への放出を避けるため、排気を、例えば、洗浄溶液または洗浄液と接触させ、排気流(排ガス流とも呼ばれる)からフッ素化界面活性剤を回収することができる。
排気流からフッ素化界面活性剤を回収し、フッ素化モノマーの乳化重合において界面活性剤を再利用することで、経済的かつ環境的利点がもたらされる。従って別の実施形態では、本発明は、本発明に記載されるフッ素化界面活性剤の排気流からの回収プロセスを提供し、このプロセスは、排気流と、フッ素化界面活性剤を排気流から少なくとも部分的に除去できる組成物との接触工程を含む。
フッ素化界面活性剤の回収として記載されるプロセスにより、フッ素化界面活性剤の「カルボン酸」の回収を可能にする。便宜上、用語「フッ素化カルボン酸」を、遊離酸並びにそれらの塩類を意味するのに用いてもよい。回収プロセスで使用されるフッ素化界面活性剤は、本出願で記載される任意のフッ素化界面活性剤としてもよい。
本発明に従うと、フッ素化界面活性剤を含有する排気流を、フッ素化界面活性剤を排気流から少なくとも部分的に除去できる組成物と接触させることができる。便宜上、フッ素化界面活性剤を少なくとも部分的に除去できる組成物を、以下では「洗浄組成物」と呼ぶ。
一実施形態に従うと、洗浄組成物は洗浄液である。通常は、洗浄液中のフッ素化界面活性剤の溶解度が最大になる温度で、排気を洗浄液と接触させる。典型的な温度は、10℃〜80℃の範囲としてよい。洗浄液としては、脱塩水、水性アルカリ溶液などの水性液体、及び、例えばグリコールエーテル溶媒などの有機溶媒が挙げられる。好適な水性アルカリ溶液としては、希釈アルカリ溶液、及び高密度アルカリ溶液が挙げられる。後者は、フッ素化界面活性剤を別の相として分離できるため、フッ素化界面活性剤を容易に回収及び再利用できる。
特定の実施形態では、フッ素化界面活性剤が沈澱槽中で高密度洗浄溶液の上部相として分離され排出されるように、アルカリ性洗浄溶液の密度を、フッ素化界面活性剤の沈澱した塩の密度より高い値に設定する。洗浄溶液を底部で取り除き、直接洗浄プロセスに戻してもよい。アルカリ性洗浄溶液の密度は、洗浄装置内の温度により、一般には1.15g/cm3を超える、好ましくは1.3g/cm3を超えるであろう。
典型的には、選択されるアルカリ性化合物は、アルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化カリウム溶液、及び特に水酸化ナトリウム溶液であり、密度が1.15g/cm3を超えるような濃度である。水酸化カリウム溶液では、一般に16%を超える濃度であり、水酸化ナトリウム溶液では、一般に14%を超える濃度である。異なるアルカリの混合物とすることもできる。
より低濃度のアルカリ金属水酸化物が望ましい場合、塩を追加して、少なくとも1.15g/cm3という洗浄溶液密度を達成することもできる。利用可能な塩は、アルカリ性環境で難溶性の水酸化物を形成しない、とても一般的な無機化合物である。これらは特に、ナトリウムまたはカリウムの塩化物、臭化物、または硫酸塩などのアルカリ金属塩である。しかし、処理装置の材料として金属が用いられている場合、塩化物イオンは腐食の原因となり得るため、洗浄溶液の密度設定には、その他の塩、例えば硫酸塩が一般に好ましい。有利には、アルカリ性化合物と同一のカチオンを有する塩が選択されるため、水酸化ナトリウム溶液が用いられる場合、好ましくは硫酸ナトリウムである。塩類の混合物とすることもできる。高度にフッ素化されたカルボン酸塩を含有する、より軽い上部相は、アルカリ性水性媒質(すなわちアルカリ金属水酸化物、及び適切な場合、添加塩も含む)が付着したままの塩ペースト状で生じる。
特定の実施形態では、少なくとも1.15g/cm3の密度を有する炭酸カリウム溶液を、洗浄組成物として使用する。密度を、例えば1.2〜1.4g/cm3としてもよい。分離した上部相を例えばタンク内で集める場合、数時間放置後、再度少なくとも2相を形成することにより、高度にフッ素化されたカルボン酸塩がより濃縮されることが一般に観察される。分析により、フッ素化界面活性剤の塩が含まれる相と、好ましくはプロセスに戻されるその他の相を確認する。
いくつかの実施形態では、アルカリ水酸化物を0.01〜10重量%の濃度で含むアルカリ水酸化物水溶液、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム溶液などを使用する。
別の実施形態では、脱塩水を洗浄液として使用する。この場合洗浄溶液は、フッ素化界面活性剤濃度が500〜5000重量百万分率(ppm)、より好ましくは1000〜4000ppm、及び最も好ましくは2000〜3000ppmに達するまで、好ましくは再循環される。洗浄システム中で発泡させると、典型的には洗浄溶液中フッ素化界面活性剤濃度の実用限界がもたらされる。
洗浄溶液を続いて濃縮してもよい。好ましくは、洗浄溶液を1つ以上の逆浸透(RO)ユニットに通すことにより達成され、フッ素化界面活性剤濃度を1〜35重量%、より好ましくは5〜30重量%、さらにより好ましくは10〜25重量%、及び最も好ましくは20±5重量%に高める。ROユニット内の膜の性質として、効率的に処理するために、洗浄溶液のpH調整を必要とする場合がある。生じる濃縮洗浄溶液は、通常はフッ化物イオンもまた数百ppm含み、有機不純物などのその他不純物の含有を示す、淡褐色から褐色までの様々な色を有することが多い。以下に記載するAPHA色相試験で測定される色相は、典型的には50〜300である。
従って、回収した濃縮洗浄溶液を好ましくはアルミナと接触させ、フッ化物濃度を減少させるべきである。これは、例えば、好ましい方法では、濃縮洗浄溶液をアルミナを充填した層に通すことにより、またはフッ素化界面活性剤溶液をアルミナとスラリーにし、続いてアルミナから溶液を分離することにより、実施することができる。この溶液を、本明細書では回収フッ素化界面活性剤溶液と呼ぶ。アルミナ処理中の濃縮洗浄溶液の温度を、5℃〜90℃、好ましくは10℃〜50℃、及びより好ましくは15℃〜30℃とすることができる。アルミナ層法が用いられる場合の接触時間は、温度に若干依存するが、5〜60分の範囲である。アルミナに送られる濃縮洗浄溶液のpHは、好ましくは4〜7、より好ましくは5〜6である。
このように得られた回収フッ素化界面活性剤を、フッ素化モノマーの重合において再利用してもよい。
あるいは、濃縮されたまたは濃縮されていない洗浄溶液を吸着粒子と接触させ、洗浄溶液からフッ素化界面活性剤を吸着させても良い。本発明に関して、用語「吸着粒子」は、物理的吸着を引き起こすイオン相互作用を非限定的に含む、物理的吸着の何らかのメカニズムにより、フッ素化界面活性剤を物理的に吸着できる粒子を意味する。それ故に、交換樹脂への吸着が、イオン交換プロセス以外の物理的吸着プロセスにより起こる可能性もあるものの、用語「吸着粒子」には、イオン交換プロセスの結果として、イオン基を有するフッ素化界面活性剤を典型的に結合するイオン交換樹脂も含まれる。
好適な吸着粒子としては、更に、活性炭、シリカゲル、粘土、及びゼオライトが挙げられる。好適に用いられるのは、活性炭粒子である。吸着粒子の形状は特に重要ではない。例えば、吸着粒子をプレート状としてもよく、球形状、円筒形とすることができ、または、棒状とすることができる。また、様々な異なる形状の吸着粒子を、混合して用いても良い。吸着粒子のサイズは、典型的には0.05mm〜20mmであり、一般には0.1〜10mmである。実用範囲は、0.5〜5mmである。吸着粒子は、典型的にはその表面でフッ素化酸界面活性剤を吸着するため、一般には、粒子の比表面積、すなわち単位重量当たりの表面積を最適化することが好ましいであろう。典型的には、吸着粒子の比表面積は、10〜5000m2/g、一般に100〜3000m2/g、実用範囲は300〜2000m2/gであろう。
更に、アニオン交換樹脂粒子を吸着粒子として使用できる。フッ素化界面活性剤の吸着に使用可能なアニオン交換樹脂の例として、強塩基性、中程度の強塩基性、並びに弱塩基性アニオン交換樹脂が挙げられる。用語、強塩基性、中程度の強塩基性及び弱塩基性アニオン交換樹脂は、エンサイクロペディアオブポリマーサイエンスアンドエンジニアリング(Encyclopedia of Polymer Science and Engineeringg)」、ジョンワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、1985、第8巻、第347頁、およびカーク−オスマー(Kirk-Othmer)」、ジョンワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、第3版、第13巻、第687頁において定義される。アニオン交換官能性として、強塩基性アニオン交換樹脂は、典型的に第四級アンモニウム基を含有し、中程度の強塩基性樹脂は、通常第三級アミン基を有し、そして弱塩基性樹脂は、通常第二級アミンを有する。本発明に使用する市販のアニオン交換樹脂の例として、アンバーライト(AMBERLITE)(登録商標)IRA−402、アンバージェット(AMBERJET)(登録商標)4200、アンバーライト(AMBERLITE)(登録商標)IRA−67、及びアンバーライト(AMBERLITE)(登録商標)、IRA−92(以上全てローム&ハース(Rohm & Haas)から市販)、ピュロライト(PUROLITE)(登録商標)A845(ピュロライト(Purolite GmbH))、及びレバチット(LEWATIT)(登録商標)MP−500(バイエル(Bayer AG))が挙げられる。
更なる実施形態によると、使用可能な水性洗浄液として、次の一般式:
4+-
(式中、各R基は独立して脂肪族または芳香族炭化水素基を表し、A-はアニオンを表す)の第四級アンモニウム塩が挙げられる。典型的なR基として、1〜16個の炭素原子のアルキル基、6〜10個の炭素原子のアリール基、または7〜11個の炭素原子のアラルキル基が挙げられる。典型的には、R基中の炭素原子の合計は、少なくとも15個である。典型的には、アニオンは、クロライドまたはブロミドなどのハロゲン化物アニオンであるが、任意のその他アニオンが同様に有用な場合もある。
上記式の第四級アンモニウム化合物の例として、例えば、ジ−n−デシルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、n−テトラデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、n−オクチルドデシルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。類似するブロミドもまた用いられてよい。典型的には、排気流がアンモニウム化合物を含有する洗浄液に接触する際、アンモニウム化合物により、フッ素化界面活性剤に対応するアンモニウム塩が生成するであろう。そのように生成されたフッ素化界面活性剤のアンモニウム塩を、続いて、有機溶媒、典型的には塩素系溶剤を用いる抽出により洗浄溶液から回収することができる。一実施形態では、抽出工程を、塩素化炭化水素液(通常の室温、すなわち約22℃で液体)を添加することにより実施する。塩素化炭化水素液の例として、例えば、ジ−またはトリ−クロロメタンが挙げられる。抽出工程は更に、室温における短時間の撹拌を含んでもよい。第四級アンモニウム塩のバルクを、塩素化炭化水素有機層内に移す。
更なる実施形態では、洗浄組成物は上述のような吸着粒子を含んでもよい。本実施形態では、従って、排気流は、フッ素化界面活性剤が吸着される吸着粒子と接触する。実用的な実施形態では、吸着粒子として、活性炭粒子、ポリフェニレンオキシド(例えば、テナックス(Tenax)(登録商標))、シリカ、粘土、及びゼオライトが挙げられる。別の実施形態では、吸着粒子はアニオン交換樹脂を含む。アニオン交換樹脂をぬれた状態に保つことにより、フッ素化界面活性剤をアニオン交換樹脂上で効果的に吸着することができる。
用いられる特定の洗浄組成物に応じて、フッ素化界面活性剤をそれらから様々な方法で回収し、引き続いて蒸留及び/またはエステル化により精製し、フッ素化モノマーの重合で再利用できるような十分に精製された形で、フッ素化界面活性剤またはその塩を再利用してもよい。一実施形態では、洗浄溶液と、フッ素化界面活性剤の吸着が可能な吸着粒子とを接触させることにより、フッ素化界面活性剤を洗浄溶液から回収してもよい。好適な吸着粒子としては、上述のものが挙げられる。
フッ素化界面活性剤を抽出、溶解することができる溶出液で吸着粒子を溶出することにより、吸着粒子上に吸着するフッ素化界面活性剤をそれらから回収できる。溶出液の性質は、典型的にはフッ素化界面活性剤が吸着される吸着粒子の性質に依存し、及びその組成は、典型的には有機溶媒を含む。
一実施形態では、フッ素化界面活性剤を、強塩基性、中程度の強塩基性、または弱塩基性アニオン交換樹脂粒子から回収してもよい。用語、強塩基性、中程度の強塩基性及び弱塩基性アニオン交換樹脂は、エンサイクロペディアオブポリマーサイエンスアンドエンジニアリング(Encyclopedia of Polymer Science and Engineeringg)」、ジョンワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、1985、第8巻、第347頁、およびカーク−オスマー(Kirk-Othmer)」、ジョンワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、第3版、第13巻、第687頁において定義される。アニオン交換官能性として、強塩基性アニオン交換樹脂は、典型的に第四級アンモニウム基を含有し、中程度の強塩基性樹脂は、通常第三級アミン基を有し、そして弱塩基性樹脂は、通常第二級アミンを有する。
塩基性アニオン交換樹脂粒子からフッ素化界面活性剤を溶出するのに好適な溶出液として、鉱酸及び水混和性有機溶媒の混合物が挙げられる。好適な鉱酸は全て、フッ素化界面活性剤の更なる吸着に適当なアニオン交換体(アニオン型)上で、塩の形態を付与するアニオンである。溶出条件下において、アニオン交換体が酸化的損傷を受けないように、一般的にはそれらの酸化強度を低くすべきであろう。使用可能な鉱酸としては、例えばオルト−、メタ−、及び二リン酸、硝酸、並びに好ましくは、塩酸及び硫酸が挙げられる。
好適な有機溶媒としては、アルコール、脂肪族または芳香族エーテル、ニトリル、アミド、スルホキシド、ケトン、及びカルボン酸エステルなどの極性有機溶媒が挙げられる。溶媒としては、実質的に水に混和できる、すなわち等量混合した際に容量で少なくとも40%が混和できるもの、または完全に水に混和できる溶媒が挙げられる。この種の溶媒として、メタノール及びエタノールなどの1〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、並びに、エチレングリコールのモノ−及びジメチルエーテル、及び、モノ−及びジエチルエーテル、または、デカエチレングリコールの長さまでの鎖長を有するポリグリコールの相当するモノエーテルが挙げられる。同様に、上述の溶媒の混合物も使用できる。
典型的な溶出液を、鉱酸及び有機溶媒から調製し、総混合物を基に算出した酸濃度が0.5〜10N、好ましくは0.5〜2Nの範囲に調整して用いてもよい。前記混合物では、鉱酸(水部分を含む)と溶媒の比は、1:0.25〜1:20、好ましくは1:3〜1:10容量部の範囲内である。
吸着したフッ素化界面活性剤を定量的に溶出するには、アニオン交換体マトリックス100部に対し、鉱酸及び有機溶媒混合物の50〜500、及び好ましくは100〜225容量部が、典型的には使用される。
溶出が終了すると溶出液は一般に2層に分離され、実際には、比重が高い下層にフッ素化界面活性剤の全量が含まれる。下層を希釈液、通常は2Nの水酸化ナトリウム溶液で中和し、フッ素化界面活性剤を典型的には小さくまとまった形で沈降させ、希塩酸で攪拌しながら中和した相を加えることにより容易に分離することができる。
別の実施形態では、アニオン交換樹脂に吸着したフッ素化界面活性剤の溶出用混合液は、a)水、b)式M−X(式中、Mはアルカリ金属またはアルキルアンモニウムイオンであり、Xはヒドロキシル、フルオライド、またはクロライドである)の化合物、並びにc)他の構成成分a)及びb)を溶解できる少なくとも1種の有機溶媒、を含み、こうして、アニオン交換体樹脂からフッ素化界面活性剤を溶出するのに十分な量のアニオンXを提供する。
本実施形態の特定の態様では、溶出液は次の組成:
a)15〜40%の水、
b)1〜10の化合物M−A、及び
c)60〜70%の溶媒、を有する。
別の態様において、溶出混合液は次の組成:
a)18〜35%の水、
b)2〜8%のM−A、及び
c)60〜70%の溶媒、を有する。
有用な溶媒としては、上述のものが挙げられる。好適なカチオンMとして、リチウム、ナトリウム、カリウム、テトラメチルアンモニウム、及びテトラエチルアンモニウムが挙げられ、好ましいアニオンAはヒドロキシルである。
更なる実施形態では、アンモニウム塩及び水混和性有機溶媒を含む溶出液を用いて、強塩基性アニオン交換樹脂からフッ素化界面活性剤を回収してもよい。アンモニウム塩は、典型的には、次の一般式:
(NH4n
(式中、Aは、OH-以外のアニオンを表し、nはAの価数である)に相当するものである。アニオンAの例として、無機並びに有機アニオンが挙げられる。無機アニオンの特定例として、例えば、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4 -などのハロゲンまたはハロゲン含有無機アニオン、リン酸、硫酸、スルホン酸、HCO3 -及びCO3 2-を含む炭酸が挙げられる。有機アニオンの例として、特に、例えばHCOO-、及びCH2COO-などのカルボン酸アニオンが挙げられる。
溶出液中のアンモニウム塩量は、一般には、アニオン交換樹脂の性質、及びアニオン交換樹脂に吸着したフッ素化界面活性剤量、及び/または望まれる回収率に依存するであろう。好適なアンモニウム塩量は、一般には少なくとも0.1重量%である。特定の実施形態によると、アンモニウム塩量は、交換樹脂の溶出に用いた組成物総量に対して0.1〜5重量%である。
溶出組成物は更に、水混和性溶媒を含む。「水混和性溶媒」は一般に、水への溶解度が、少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、または少なくとも20重量%である有機溶媒を意味する。好適な水混和性溶媒は、典型的には、例えばアルコール、ケトン、エーテル、及びこれらの混合物を含む極性溶媒である。溶媒の特定例として、例えばメタノール、エタノール、及びプロパノールなどの、1〜6個の炭素原子を有する低級アルカノール類;アルキル基が1〜4個の炭素原子を有する、グリコール類、モノ−及びジアルキルエーテル類、または、モノグリコール及びジグリコール;アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン類、が挙げられる。水混和性有機溶媒量は、大きく異なっていてもよいが、一般にはアンモニウム塩の溶解に十分な量とする。水混和性有機溶媒量は、一般には溶出組成物の総量の少なくとも50重量%である。代表的な範囲は、50〜99.9重量%、または60〜90重量%、または90〜98重量%である。
アンモニウム塩及び水混和性溶媒を含む溶出液は、アニオン交換樹脂からのフッ素化界面活性剤の回収を補助できる、追加の構成成分を含んでもよい。1つの特定の実施形態では、溶出組成物は、更に水を含む。水を、45重量%までの量、例えば0.1〜40重量%の量、または1〜15重量%の量、または4〜10重量%の量で、例えば溶出組成物中で用いてもよい。
溶出液に存在できる追加の構成成分は、塩基である。好適な塩基は、例えば水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物である。使用可能なその他の塩基として、アルカリ土類金属水酸化物、水酸化アルミニウム、または、例えばナトリウムメトキシドなどのアルコキシドが挙げられる。存在する場合、組成物中に含まれる塩基量は、一般には5重量%までである。代表的な範囲は、0.1〜5%、または0.5〜2重量%である。
その他の溶出液としては、米国特許第6,642,415号、及び欧州特許第1,323,677号に開示されるものが挙げられる。後者では、水及び有機溶媒のアルカリ性混合物を含む溶出液が開示される。米国特許第3,882,153号に開示されるようなアンモニア水溶液もまた使用できる。
更なる実施形態によると、吸着粒子とアルコール、及び場合により酸を混合することにより、フッ素化界面活性剤を回収してもよい。次いで、混合物を、フッ素化界面活性剤のエステル誘導体が形成されるように、一般的には加熱しアルコール存在下でフッ素化界面活性剤のエステル化を起こす。次いで、こうして得られた混合物を蒸留し、エステル誘導体を含む留出物を形成し、続いて留出物からエステル誘導体を分離してもよい。一般に、溶出液は水も含むであろう。
使用可能な好適なアルコールとして、特に、メタノール、エタノール、及びプロパノールなどの、1〜5個の炭素原子を有する低級脂肪族アルコールが挙げられる。しかし、芳香族アルコールも同様に使用できる。更に、アルコールを、アルコール前駆体の形式で添加してもよい。しかし、このような前駆体は、エステル化を引き起こす条件下でアルコールを形成するであろう。好適なアルコール前駆体には、吸着粒子と、溶出液またはそれらの混合物が存在する酸性条件下において、相当するアルコールを容易に形成するケタールなどの化合物を含んでもよい。溶出液と共に用いる酸は好ましくは無機酸であるが、有機酸の使用を排除するものではない。また酸は、好ましくは、例えば硫酸、塩酸、リン酸、または硝酸などの強酸である。用いる酸の量及び性質として、典型的には、溶出液及び吸着粒子の混合物のpHが4未満、好ましくは3以下、及びより好ましくは2以下になるようにする。
留出物中に存在する水分量に応じて、留出物の残部から、分離した相、典型的には下相としてエステル誘導体を分離できる。このように、エステル誘導体を留出物から容易に分離することができ、留出物の残部を蒸留される混合物中に再度投入することができる。従って、このような循環式再生プロセスは、必要な溶出液が最小量の状態で、吸着粒子の簡便な再生を可能にする。得られたエステルを、蒸留(distilllation)により更に精製することができ、次いで(than)、典型的にはアンモニアでけん化してフッ素化酸塩に変換する。溶出し精製したフッ素化界面活性剤塩は、典型的には、フッ素化モノマーの乳化重合における化合物として使用するのに十分な純度を有するだろう。効力が不経済な程度以下に落ちると吸着粒子を廃棄しなくてはならないが、それまでは吸着粒子を数回再生することができる。
上記溶出法は、当然のことながら、洗浄組成物自体が吸着粒子を含む場合においても利用できる。
回収後、所望する、水性乳化重合においてフッ素化界面活性剤の再利用が可能となる高い純度まで、フッ素化界面活性剤を精製することができる。好適な精製法は、米国特許第5,312,935号に開示される。ここでは、遊離し、脱水したカルボン酸を、約60℃から混合物の沸点までの温度で、重クロム酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、または過マンガン酸塩などの酸化剤で処理する。次いで、純粋な生成物を、例えば低温における結晶化により、または減圧下が望ましい場合は、好ましくは蒸留により分離する。あるいは、PCT国際公開特許WO2004/031141の方法を用いてもよい。
本発明の実施形態はまた、水性組成物も含む。いくつかの実施形態では、水性組成物は、次の一般式:
[Rf 1−O−(CF2n−CO2 -ii+
(式中、Rf 1はCF3CFHであり、nは1〜6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する部分的にフッ素化された界面活性剤を含む。別の実施形態では、水性組成物は、次の一般式:
[Rf 2−O−(CF2m−CO2 -ii+
(式中、Rf 2はCF3CF2であり、mは1、3、4、5、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する完全フッ素化されたエチルエーテル界面活性剤を含む。更なる追加の実施形態では、水性組成物は、次の一般式:
[Rf 3−O−(CF2p−CO2 -ii+
(式中、Rf 3はCF3(CF23であり、pは1、4、及び6から選択される整数であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する完全フッ素化されたブチルエーテル界面活性剤を含む。また水性組成物は、上述のフッ素化界面活性剤の任意の混合物を含んでもよい。
水性組成物は、例えば、フルオロポリマーの水性分散体の形態で存在してもよい。水性分散体中のフルオロポリマー粒子は、例えば、40nm以上、50nm以上、100nm以上、更には200nm以上のZ−平均粒径を有してもよい。フルオロポリマー粒子のZ−平均粒径は更に、例えば、400nmまで、300nmまで、200nmまで、更には100nmまでのZ−平均粒径を有する。
いくつかの実施形態では、フルオロポリマー粒子量は、組成物総重量に対して5〜70重量%である。乳化重合で得られた分散体を濃縮することで、高固体濃度を得てもよい。別の実施形態では、フルオロポリマー粒子量を、組成物総重量に対して5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、更には50重量%以上としてもよい。更なる追加の実施形態では、フルオロポリマー粒子量を、組成物総重量に対して70重量%まで、60重量%まで、50重量%まで、更には40重量%までとしてもよい。
更なる追加の実施形態では、水性組成物は更に、非イオン性非フッ素化界面活性剤を含んでもよい。これらの非イオン性界面活性剤は、以下に「安定化界面活性剤」として記載する。
例えば、含浸した布地、または例えば調理器具を製造するための金属基材のコーティングのような層状物品の製造に使用するために好適なフルオロポリマー分散体を得るためには、一般には、安定化界面活性剤をフルオロポリマー分散体に更に添加することが望ましい。典型的には、このような安定化界面活性剤を、フルオロポリマーの固体重量に対して1〜12重量%の量で添加することができる。添加可能な非イオン性界面活性剤の例として、次の一般式:
1−O−[CH2CH2O]n−[R2O]m−R3
(式中、これに関連して、R1は、少なくとも8個の炭素原子を有する芳香族または脂肪族炭化水素基を表し、R2は、3個の炭素原子を有するアルキレンを表し、R3は、水素またはC1〜C3アルキル基を表し、nは0〜40の値を有し、mは0〜40の値を有し、そしてn+mの合計は少なくとも2である)のものが挙げられる。
非イオン性界面活性剤の一般式において、nおよびmで示される単位はブロックとして現れてもよいし、あるいは、交互またはランダム構造で存在してもよいことは理解されるであろう。上記一般式に従う非イオン性界面活性剤の例として、エトキシ単位の数が15、10、8、7、または更に5であるエトキシ化p−イソオクチルフェノールなどの、アルキルフェノールオキシエチラートが挙げられる。
一般式の非イオン性界面活性剤の更なる例として、R1が4〜20個の炭素原子のアルキル基を表し、mが0、及びR3が水素のものが挙げられる。これらの例として、約8個のエトキシ基でエトキシ化されたイソトリデカノールが挙げられる。親水性部分がエトキシ基及びプロポキシ基のブロックコポリマーを含む、一般式による非イオン性界面活性剤も同様に使用してよい。
それ故に、本発明の実施形態には、層状物品の製造法、及び記載される方法により製造された層状物品も含まれる。このような層状物品を、例えば、コーティング法により製造してもよい。コーティング用途に関しては、フルオロポリマーの水性分散体及び界面活性剤が望ましいとき、フルオロポリマーを分散体から分離または凝固する必要はない。層状物品の製造法において水性分散体に好適な界面活性剤として、例えば、本出願による水性組成物の調製に有用として上述されるものが挙げられる。
本発明の利点及び実施形態を以下の実施例によってさらに説明するが、これら実施例において列挙される特定の材料及びそれらの量、並びにその他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。全ての部及び割合は、特に指定のない限り、重量によるものである。
試験方法:
ラテックスの粒径測定は、ISO/DIS 13321に従って、マルベルン・ゼータザイザー(Malvern Zetazizer)1000 HASによる動的光散乱を用いて行った。測定前に、重合により得られたポリマーラテックスを、0.001mol/LのKCl溶液で希釈した。全てにおいて、測定温度を25℃とした。報告された平均値がZ−平均粒径である。
SSG:標準比重は、ASTM 4894−04に従って測定した。
固形物含有量:固形物含有量の決定は、ラテックスサンプルを250℃までの温度に30分間曝すことによって行われた。
Figure 0005179478
比較例C1:CF3(CF26COONH4
TFEテロマーから調製する直鎖物質。
比較例C2:
Figure 0005179478
CF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF=CF2を、CF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF2COOCH3(13.3kPa(133mbar)における沸点91〜92℃)の転化は米国特許第4,987,254号に記載されるように実施した。エステルをアンモニア水と反応させ、蒸留によりメタノールを除去し、CF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF2COONH4を生成した。構造は全て、F−NMRスペクトルで確認した。ビニルエーテル中の異性体含量により、CF3CF2CF2OCF2CF(CF3)OCF2COOX(X=CH3、NH4)の構造を有する異性体も検出された。
(実施例1):C49−O−CF2−CF2−COONH4
PCT国際公開特許WO2005/003075に記載されるように、ペルフルオロ酪酸フルオライドとテトラフルオロオキセタンとの反応、及びアンモニウム塩への転化前のCH2基のフッ素化により、実施例1を合成した。
(実施例2):CF3−CFH−O−(CF23COONH4
ペルフルオロスクシニルフルオライドのHFPOカップリングで調製された二塩基酸フッ化物、FCOCF(CF3)−O−(CF23COFの試料(503g、1.4mol)(米国特許公開第2004/0116742号に記載される方法にて)を、78℃にて、攪拌した炭酸ナトリウム(387g、3.7mol)/ジグリム650gスラリーに2時間以上かけて加え、ジ塩を生成した。この反応は、CO2ガスを遊離した。蒸留水(35g、1.9mol)を、85℃にて添加した。CO2ガスを排出しながら、混合物を165℃まで加熱し、30分間維持した。反応混合物を冷却し、硫酸(250g、2.6mol)/水1250gを加え、反応混合物を酸性にした。NaOH60g/水60gを下相に加えた。112℃/2×103Pa(15mmHg)の真空オーブンで塩を乾燥し、450gを回収した。塩に50%硫酸300gを加え、下部のフッ素性化学物質相を50%硫酸200gで1回洗浄した。真空蒸留により、111℃/2×103Pa(15mmHg)の沸点を有する、CF3−CFH−O−(CF23COOH(400g、1.3mol)を収率95%で得た。酸を苛性アルカリで処理し、続いて硫酸処理、真空蒸留を行った。これを2回繰り返し、無色の酸を得た。構造は全て、1H、及び19F NMRで確認した。208gの酸と過剰の水酸化アンモニウムとの反応及び乾燥により、64〜68℃の融点を有する界面活性剤、CF3−CFH−O−(CF23COO−NH4を定量的に得た。
(実施例3):CF3−CFH−O−(CF25COONH4
ペルフルオロアジポイルフロライドのヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)カップリングで調製された二塩基酸フッ化物、FCOCF(CF3)−O−(CF25COFの試料(500g、1.1mol)(米国特許公開第2004/0116742号に記載される方法にて)を、85℃にて、攪拌した炭酸ナトリウム(500g、4.7mol)/ジグリム500gスラリーに2時間以上かけて加え、ジ塩を生成した。この反応は、CO2ガスを遊離した。蒸留水(25g、1.4mol)を、85℃にて添加した。CO2ガスを排出しながら、混合物を168℃まで加熱し、30分間維持した。反応混合物を冷却し、硫酸(350g、3.6mol)/水1100gを加え、反応混合物を酸性にした。下相を、50%硫酸400gで洗浄し、真空蒸留により、132〜135℃/15mmの沸点を有する、CF3−CFH−O−(CF25COOH(426g、1.0mol)を収率95%で得た。続いて、NaOH46g/水63gを加えた。112℃/2×103Pa(15mmHg)の真空オーブンで塩を乾燥し、淡黄色の粘着性固体386gを得た。塩に硫酸を加え、下部のフッ素性化学物質相を真空蒸留した。前記プロセスを更に2回繰り返し、無色の酸を得た。構造は全て、1H、及び19F NMRで確認した。過剰の水酸化アンモニウムと反応した200gの酸との反応、及び乾燥によって、159〜165℃の融点を有する界面活性剤、CF3−CFH−O−(CF25COONH4を定量的に得た。
(実施例4):CF3−CF2−O−(CF25COONH4
磁性攪拌器用撹拌子、温度計、外部加熱装置、還流凝縮器、及び滴下漏斗を備えたガラスフラスコに、新たに蒸留したFOCCF(CF3)O(CF25COFを291g入れた。50.9gのSbF5を室温で加えた。気体がゆっくり発生することにより、反応の開始が示された。気体がそれ以上発生しなくなるまで、バッチを70℃に加熱した。排ガスのIRスペクトルは、明らかに一酸化炭素の発生を示した。メタノールを添加し、得られた粗エステルを水で3回洗浄した。下部エステル相を分離し(334g)GCで分析すると、C25O(CF25COOCH3(44面積%)、及びCH3OOCCFCF3O(CF25COOCH3(48面積%)の存在が示された。粗エステルの蒸留により、C25O(CF25COOCH3(沸点46℃/1×103Pa(7.5mmHg)85.5gが得られた。これは、単離収率32.4%に相当する。蒸留したエステル80gをアンモニア水と加熱することにより、アンモニウム塩に転化した。生成したメタノールを蒸留により水相から除去した。この水性アンモニウム塩溶液は、フルオロポリマー重合の乳化剤として使用できる。構造は全て、F−NMRスペクトルで確認した。
生体蓄積の測定
ラットにおける薬物動態試験において、完全フッ素化された、及び部分的にフッ素化されたカルボキシレートの尿クリアランスを評価した。目的は、尿の排出を介して排泄される親化合物の総量を測定して、排泄の速度を評価することであった。本試験は、IACUC*により承認されたものであり、スリーエム(3M Company)のAAALAC**認定施設で実施した。
この調査では、調査開始の時点で6〜8週齢及び体重およそ200〜250gのオスのスプラーグドーリーラットを使用した。表2の試験化合物を、ラット(試験化合物当たりの動物数N=3)に体重1kg当たり73マイクロモルの投与量で投与した。すべての試験化合物は、滅菌脱イオン水中で調製して、経口強制給飼によりラットに与えた。試験化合物の投与後、ラットは、尿の収集のために代謝ケージ内で個別に飼育された:0〜6時間、6〜24時間、24〜48時間、及び72〜96時間。調査全体を通して、毒性の臨床的徴候について、動物を観察した。各調査の終了時(投与後96時間)に肉眼による剖検を行い、各動物からの血清及び肝臓のサンプルを保存した。
親化合物またはそれらの代謝産物の濃度は、各動物に関する各時間点における各尿サンプルについて、フッ素NMRにより、内部添加標準物質を基準にして定量的に測定した。
上記の試験に従って得られた生体内蓄積データを表2に報告する。
*IACUC:研究機関内の動物の管理および使用に関する委員会(Institutional Animal Care and Use Committees)
**AAALAC:実験動物管理公認協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)
Figure 0005179478
表2において、T1/2は、除去速度がおよそ指数関数的である場合に、生物系内での特定物質の量が生物過程によってその値の2分の1まで減少するのに必要とされる時間である。これらの実施例では、T1/2の値は、指数関数的最小2乗曲線適合法(y=AeBx及びT1/2=0.693/B)により計算され、ここでyは、尿中の目標物質の濃度を表し、及びxは時間(時間)を表す。
重合の概要
重合実験は、インペラ攪拌器及びバッフルを備えた40Lのケトル中で行った。ケトルに30Lの脱イオン水を入れ、35℃に設定した。ケトルを繰り返し排気して酸素を除き、攪拌速度を165rpmに設定した。酸素を含まないケトルに表3に列挙した70mmolのフッ素化乳化剤を入れ(特に指定のない限り)、及び以下の物質を加えた:40mgの硫酸銅5水和物及び1mgの濃硫酸を含有する0.5mLの溶液;15gの25重量%アンモニア水溶液及び5.6gのPPVE−2(HFPOの三量体形成、酸フッ化物のアルカリ塩への転化、及び乾燥塩の熱分解によって合成(ドイツ応用化学会誌(Angew. Chem.)、24、161〜179、1985に記載)。最後に、反応器をTFEで0.2MPaに加圧し及び47gのHFPを加えた。次にTFEを用いてケトルを1.5MPaに設定し、そして二亜硫酸ナトリウム140mgを含有する反応開始剤水溶液100mL、次いでペルオキソ二硫酸アンモニウム340mgを含有する溶液100mLを反応器へポンプで送った。重合の始まりは圧力低下によって示された。重合中、TFEを連続的に供給することによって、圧力を1.5MPaに維持した。TFE3.2kgを加えた後、モノマー弁を閉じて、圧力を緩めた。得られたポリマーラテックスの特徴を表3に要約する。
このポリマー分散体1000mLを、攪拌しならが塩酸20mLを加えることによって凝固させた。凝固した物質を、ガソリンで凝集させて、繰り返し洗浄した。凝集させたポリマーを真空オーブン中、200℃で一晩乾燥させた;試験データを表3に示す。
Figure 0005179478
当業者により本発明の範囲と精神から乖離することなく本発明の様々な変形及び変更を実施することができるが、本発明は示した実施例に不当に限定されるものではない点を理解すべきである。

Claims (5)

  1. 次の一般式:
    [R −O−(CF−CO i+
    (式中、R はCFCFHであり、nは1であり、Mは価数iを有するカチオンであり、並びにiは1、2、及び3から選択される)を有する部分的にフッ素化された界面活性剤ら選択されるフッ素化エーテルカルボン酸または酸誘導体を含む、乳化重合用界面活性剤。
  2. 前記界面活性剤の、雄性ラットにおける腎排泄半減期が35時間以下である、請求項1に記載の界面活性剤。
  3. 前記界面活性剤が代謝分解を受けず、雄性ラットにおける投与96時間後の腎排泄による回収率が30%以上である、請求項1に記載の界面活性剤。
  4. 請求項1に記載のフッ素化界面活性剤を含む、水性組成物。
  5. 水性エマルション中における1つ以上のフッ素化モノマーの重合工程を含むフルオロポリマー分散体の調製方法であって、
    該重合工程が、請求項1に記載の1つ以上のフッ素化界面活性剤の存在下で行われる、
    方法。
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