JP5160096B2 - 動力伝達チェーンおよびこれを備える動力伝達装置 - Google Patents
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Description
本発明によれば、チェーン幅方向に関して、第1および第2の仕様のリンクプレートが互いに逆方向に反っている。これら互いに逆方向に反るリンクプレートを用いることにより、動力伝達チェーンの反りがチェーン幅方向の一方または他方に大きくなることを防止できる。これにより、チェーン幅方向に関して、動力伝達チェーンがプーリ等に係合する際の係合開始位置のずれを少なくして両者の滑らかな係合を達成できる。動力伝達チェーンに作用する衝撃を低減して負荷を低減することにより、実用上の耐久性の向上および騒音の低減を達成できる。
図1は、本発明の一実施の形態に係る動力伝達チェーンを備える動力伝達装置としてのチェーン式無段変速機(以下では、単に無段変速機ともいう)の要部構成を模式的に示す斜視図である。図1を参照して、無段変速機100は、自動車等の車両に搭載されるものであり、第1のプーリとしての金属(構造用鋼等)製のドライブプーリ60と、第2のプーリとしての金属(構造用鋼等)製のドリブンプーリ70と、これらの両プーリ60,70間に巻き掛けられた無端状の動力伝達チェーン1(以下では、単にチェーンともいう)とを備えている。なお、図1中のチェーン1は、理解を容易にするために一部断面を示している。
ドリブンプーリ70の可動シーブ72には、ドライブプーリ60の可動シーブ63と同様に油圧アクチュエータ(図示せず)が接続されており、変速時に、この可動シーブ72を移動させることにより溝幅を変化させるようになっている。それにより、チェーン1を移動させて、プーリ70のチェーン1に関する有効半径(以下、プーリ70の有効半径ともいう)を変更できるようになっている。
以下では、チェーン1の進行方向に沿う方向をチェーン進行方向Xといい、チェーン進行方向Xに直交し且つ連結部材50の長手方向に沿う方向をチェーン幅方向Wといい、チェーン進行方向Xおよびチェーン幅方向Wの双方に直交する方向を直交方向Vという。
前端部5および後端部6には、一対の貫通孔の一方としての前貫通孔9、および一対の貫通孔の他方としての後貫通孔10がそれぞれ形成されている。中間部7は、前貫通孔9および後貫通孔10間を仕切る柱部8を有している。この柱部8は、チェーン進行方向Xに所定の厚みを有している。
各リンクユニット51,52,53,…のそれぞれにおいて、同一リンクユニットのリンクプレート2は、チェーン進行方向Xの位置が互いに同じとなるように揃えられている。各リンクユニット51,52,53,…はチェーン進行方向Xに沿って並んで配置されている。
具体的には、第1のリンクユニット51のリンクプレート2の前貫通孔9と、第2のリンクユニット52のリンクプレート2の後貫通孔10とは、チェーン幅方向Wに並んで互いに対応しており、これらの貫通孔9,10を挿通する連結部材50によって、第1および第2のリンクユニット51,52のリンクプレート2同士がチェーン進行方向Xに屈曲可能に連結されている。
各連結部材50は、対をなす第1および第2のピン3,4を含んでおり、これら第1および第2のピン3,4は、対応するリンクプレート2同士の屈曲に伴い互いに転がり摺動接触するようになっている。なお、転がり摺動接触とは、転がり接触およびすべり接触の少なくとも一方を含む接触のことをいう。
図2および図4を参照して、これらの端面17は、各プーリ60,70の対応するシーブ面62a,63a,72a,73aに潤滑油膜を介して摩擦接触(係合)するためのものである。
第2のピン4の周面18は、チェーン幅方向Wに延びている。この周面18は、チェーン進行方向Xの後方を向く対向部としての後部19を有している。後部19は、チェーン進行方向Xと直交する平坦面を含んでいる。この後部19の平坦面は対をなす第1のピン3の前部12と対向している。
チェーン1は、所定の配置ピッチPを有している。配置ピッチPとは、直線領域のチェーン1における、隣り合う第1のピン3の接触中心点C間の距離をいう。本実施の形態では、連結ピッチPは、例えば、8mmに設定されている。
第1および第2の仕様のリンクプレート2a,2bの素材として、JIS(日本工業規格)のSK5材等の鋼板を例示することができる。この素材をダイ(雌型)およびパンチ(雄型)(図示せず)を用いて打ち抜くことで、第1および第2の仕様のリンクプレート2a,2bが形成されている。
チェーン幅方向Wに関する第1の仕様のリンクプレート2aの反り量B1は、例えば、5μm〜10μmの範囲に設定されている。第2の仕様のリンクプレート2bの反り量B2は、第1の仕様のリンクプレート2aの反り量B1と略同じである。
本実施の形態において、各リンクユニット51,52,53,…のリンク枚数は8枚とされていることにより、各リンクユニット51,52,53,…において、第1の仕様のリンクプレート2aは4枚設けられ、第2の仕様のリンクプレート2bは4枚設けられている。
同様に、図7(B)に示すように、第2の仕様のリンクプレート2bの反りの内側となる他側面22に、識別部21が付されている。この識別部21は、第2の仕様のリンクプレート2bの前端部5寄りに形成されており、チェーン進行方向Xを示す識別部としても機能する。
本実施の形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。すなわち、チェーン幅方向Wに関して、第1および第2の仕様のリンクプレート2a,2bが互いに逆方向に反っている。これら互いに逆方向に反るリンクプレート2a,2bを用いることにより、チェーン1の反りがチェーン幅方向Wの一方W1または他方W2に大きくなることを防止できる。これにより、チェーン幅方向Wに関して、チェーン1の各第1のピン3の位置を揃えることができ、第1のピン3の一対の端面17が各プーリ60,70に係合する際の、両端面の係合開始位置のずれを少なくして、第1のピン3と各プーリ60,70との滑らかな係合を達成できる。チェーン1に作用する衝撃を低減して負荷を低減することにより、実用上の耐久性の向上および騒音の低減を達成できる。
また、各リンクユニット51,52,53,…では、チェーン幅方向Wに関して、第1の仕様のリンクプレート2aと第2の仕様のリンクプレート2bとを交互に配列している。これにより、各リンクユニット51,52,53,…において、第1の仕様のリンクプレート2aと第2の仕様のリンクプレート2bの枚数を同じにでき、チェーン幅方向Wの反りを格段に少なくできる。
また、第1および第2の仕様のリンクプレート2a,2bのそれぞれに、対応する打ち抜き方向A1,A2を示す識別部21を設けている。これにより、識別部21によって各リンクプレート2a,2bの打ち抜き方向A1,A2を容易且つ確実に識別できる。
また、全てのリンクプレートの打ち抜き方向が同じであった従来のチェーンに対して、本実施の形態のチェーン1は、第1および第2のリンクプレート2a,2bの打ち抜き方向A1,A2を異ならせるという少ない変更で済み、生産効率および製造コストは、上記従来のチェーンリンクとほとんど変わらない。また、上記従来のチェーンと同じ部品点数で済み、この点からも、製造コストの上昇を抑えることができる。
図8は、本発明の別の実施の形態の要部を直交方向Vに沿ってみた図である。なお、以下では、図1〜図7に示す実施の形態と異なる点について説明し、同様の構成については図に同様の符号を付してその説明を省略する。
図8を参照して、本実施の形態の特徴とするところは、各リンクユニット51,52,53,…(図8において、リンクユニット51を例示)では、チェーン幅方向Wに関して、第1の仕様のリンクプレート2aは互いに隣接して配置され、第2の仕様のリンクプレート2bは互いに隣接して配置されている点にある。
本実施の形態によれば、同一仕様のリンクプレートを隣接して配置するという簡易な構成で、チェーン幅方向Wに関するチェーン1の反りを少なくできる。
図10(A)および図10(B)は、それぞれ、本発明のさらに別の実施の形態の要部を直交方向Vに沿ってみた図である。図10(A)および図10(B)を参照して、本実施の形態の特徴とするところは、第1の仕様のリンクプレート2aのみを含む第1の仕様のリンクユニット501(例えば、リンクユニット51)と、第2の仕様のリンクプレート2bのみを含む第2の仕様のリンクユニット502(例えば、リンクユニット52)とを設けている点にある。
例えば、第1の仕様のリンクユニット501と第2の仕様のリンクユニット502とをチェーン進行方向Xに隣接して並べて対にし、この対をチェーン進行方向Xに沿って順次配置することができる。
各上記実施の形態において、図6、図8、図9、図10のそれぞれに示す、第1および第2の仕様のリンクプレート2a,2bの配置パターンの2つ以上を組み合わせて複数のリンクユニット51,52,53,…を形成してもよい。
第1の仕様のリンクユニット501と第2の仕様のリンクユニット502Aは、チェーン進行方向Xに関してランダムに配列されている。なお、この場合の「ランダムに配列」とは、第1および第2の仕様のリンクユニット501,502Aの少なくとも一方が、チェーン進行方向Xの少なくとも一部の領域において不規則に配置されていることを意味するものである。なお、「不規則」とは、周期性および規則性の少なくとも一方がないことをいう。
ランダムな配列の一例として、チェーン進行方向Xに関して、第1の仕様のリンクユニット501と第2の仕様のリンクユニット502Aとが、502A,501,501,502A,501,501,501,502A,501,501,501,501,501,502A,501,501,501,501,501,501,501…の順で配列される。
また、図11に示す実施の形態において、第1の仕様のリンクユニット501の配置パターンを、図6、図8および図9に示す配置パターンの何れかにしてもよい。同様に、第2の仕様のリンクユニット502Aの配置パターンを、図6、図8および図9に示す配置パターンの何れかにしてもよい。
また、各上記実施の形態において、第1のピン3を後貫通孔10に遊嵌してもよいし、第2のピン4を前貫通孔9に遊嵌してもよい。さらに、第2のピン4が、各プーリ60,70に係合してもよい。
さらに、識別部として、図12に示すような、チェーン進行方向Xを向く矢印形状をなす識別部21Aや、図13に示すような、不等号記号に相当する形状をなす識別部21Bや、図14に示すような、三角形形状をなす識別部21Cを設けてもよい。
なお、上記各実施の形態の識別部は、人の目視はもちろん、従来公知の各種識別装置で識別することができる。
また、ドライブプーリ60およびドリブンプーリ70の双方の溝幅が変動する態様に限定されるものではなく、何れか一方の溝幅のみが変動し、他方が変動しない固定幅にした態様であっても良い。さらに、上記では溝幅が連続的(無段階)に変動する態様について説明したが、段階的に変動したり、固定式(無変速)である等の他の動力伝達装置に適用しても良い。
Claims (3)
- チェーン進行方向に並ぶ複数のリンクプレートと、これらのリンクプレートを互いに屈曲可能に連結する複数の連結部材と、チェーン進行方向に並ぶ複数のリンクユニットとを備え、
上記複数のリンクプレートは、素材からプレスにより打ち抜かれてなる第1および第2の仕様のリンクプレートを含み、
第1の仕様のリンクプレートの打ち抜き方向と、第2の仕様のリンクプレートの打ち抜き方向とが互いに逆向きにされていて、
各上記リンクユニットは、チェーン進行方向とは直交するチェーン幅方向に並ぶ複数のリンクプレートを含み、
各上記リンクユニットの複数のリンクプレートは、上記第1および第2の仕様のリンクプレートを含み、
各上記リンクユニットでは、チェーン幅方向に関して、第1の仕様のリンクプレートと第2の仕様のリンクプレートとが交互に配列されていることを特徴とする動力伝達チェーン。 - 請求項1において、上記第1および第2の仕様のリンクプレートは、それぞれ、対応する打ち抜き方向を示す識別部を含む動力伝達チェーン。
- 相対向する一対の円錐面状のシーブ面をそれぞれ有する第1および第2のプーリと、これらのプーリ間に巻き掛けられ、シーブ面に係合して動力を伝達する請求項1または2に記載の動力伝達チェーンとを備えていることを特徴とする動力伝達装置。
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