JP5136719B2 - 液晶性ポリエステル樹脂組成物およびそれを用いた金属複合成形品 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、液晶性ポリエステル樹脂組成物およびそれを用いた金属複合成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマーが数多く開発され、市場に供されている。中でも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性を示す液晶性ポリエステルなどの液晶性樹脂は、優れた成形性と機械的性質を有する点で注目され、機械部品、電気・電子部品などに用途が拡大されつつある。このような液晶性樹脂は、特に、良流動性を必要とするコネクターなどの電気・電子部品に好適に用いられている。
【0003】
これら機械部品、電気電子部品は、近年の機器の小型化や軽量化に伴い、薄肉化や形状の複雑化が進みつつある。また、近年では、環境面の配慮から鉛フリーはんだ対応の製品が数多く見られるようになった。鉛フリーはんだは、はんだ付けに必要な温度が従来のはんだよりも非常に高く、樹脂組成物から得られる成形品にも、高温でのリフロー処理が行われる。このため、従来公知の樹脂組成物から得られる成形品は、リフロー処理によりそりが生じる課題があった。リフロー処理により生じるそり量が大きいと、はんだ密着不良の原因となる。
【0004】
リフロー処理による成形品のそりを低減する手段としては、液晶性ポリマー100重量部に対して、平均粒子径が5〜100μmであり、縦横比が3.0〜5.0であるタルクを、1〜200重量部配合してなる液晶ポリマー組成物(例えば、特許文献1参照)が提案されている。また、耐熱性、耐衝撃性に優れた液晶性ポリエステル樹脂組成物として、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、平均粒子径が2.5〜3.5μmのタルク10〜150重量部と、平均繊維径が3〜9μmのガラス繊維10〜150重量部とを配合してなる液晶性ポリエステル樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、かかる樹脂組成物を用いて得られる成形品は、リフロー処理前のそり量は低減されているものの、リフロー処理中のそり量低減効果は不十分であり、また流動バラツキが大きい課題があった。
【0005】
また、液晶性樹脂組成物を用いて得られる成形品は、金属との複合成形品として使用されることが多く、高い金属密着性が求められている。金属密着性が低いと、基板などとの脱着時に金属部分と成形品が外れてしまうなどの不具合が発生する。これらのことから、金属接着性の改善を目的に分子鎖中に芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン、ジオール成分および特定の燐化合物を含有する液晶ポリエステルが提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などとの接着性を改善することを目的に、液晶性樹脂100重量部に対して、数平均粒子径が8μm以上である鱗片状充填材を70〜150重量部配合してなる液晶性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照)。また、熱変形温度、耐ブリスター性を改善することを目的に、サーモトロピック液晶ポリマーに対して、比表面積が5m2/g以下で平均粒子径が40μm以下のタルクを5〜60重量%配合してなる液晶性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、かかる樹脂組成物を用いて得られる成形品は、流動バラツキ、リフロー処理中のそり量低減効果が不十分である課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】
特開2008−138181号公報
【特許文献2】
特開平4−76049号公報
【特許文献3】
特開2005−255914号公報
【特許文献4】
特開2007−254716号公報
【特許文献5】
特開平4−13758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の成形品の小型化・精密化により、低そり性、流動性、金属密着性を高いレベルで両立することが求められているが、従来公知の技術ではなお十分ではない。よって本発明は、上述の課題を解決し、高い流動性を有しながら流動バラツキが少なく、高い金属密着性を有し、かつ、リフロー処理中のそりを低減した成形品を得ることができる液晶性ポリエステル樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、本発明の実施形態は、以下に挙げる構成の少なくとも一部を含み得る。
【0009】
(1)(A)液晶性ポリエステル樹脂100重量部および(B)タルク10〜100重量部を含有する液晶性ポリエステル樹脂組成物である。この液晶性ポリエステル樹脂組成物は、組成物中における前記(B)タルクの吸油量(a1)ml/100gと空気透過法により測定した比表面積(a2)m2/gの比(a1/a2)が14.0〜26.0(ml・g)/(100g・m2)である。この液晶性ポリエステル樹脂組成物は、数平均粒子径が10〜30μmである。
【0010】
(2)組成物中における前記(B)タルクの空気透過法により測定した比表面積(a2)が0.9〜1.8m2/gであることを特徴とする(1)に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【0011】
ただし、上記(1)記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物において、上記比表面積(a2)は、1.0m2/g未満としても良い。また、上記(1)記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物において、上記比表面積(a2)は、1.8m2/gを超えることとしても良い。
【0012】
(3)組成物中における前記(B)タルクの45Micronふるい残分が組成物中に含まれるタルク全量に対して1.0重量%以下であることを特徴とする(1)もしくは(2)に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【0013】
ただし、上記(1)または(2)に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物において、組成物中における前記(B)タルクの45Micronふるい残分は、組成物中に含まれるタルク全量に対して1.0重量%を超えることとしても良い。
【0014】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物である。このような液晶性ポリエステル樹脂組成物は、さらに(C)ガラス繊維10〜100重量部を含有する。このような液晶性ポリエステル樹脂組成物は、組成物中における(C)ガラス繊維の数平均繊維長が30〜500μmである。
【0015】
ただし、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物において、さらに含まれるガラス繊維の含有量は、10重量部未満であっても良い。また、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物において、さらに含まれるガラス繊維の含有量は、100重量部を超えることとしても良い。
(5)前記(C)ガラス繊維の配合量(g)と前記(B)タルクの配合量(t)の比(g/t)が0.4〜0.6または1.1〜1.3であることを特徴とする(4)に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
【0016】
(6)前記(A)液晶性ポリエステル樹脂が下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成される(1)〜(5)のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物である。このような液晶性ポリエステル樹脂組成物において、構造単位(I)は、構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対し65〜80モル%である。このような液晶性ポリエステル樹脂組成物において、構造単位(II)は、構造単位(II)および(III)の合計に対して55〜85モル%である。このような液晶性ポリエステル樹脂組成物において、構造単位(IV)は、構造単位(IV)および(V)の合計に対して50〜95モル%である。
【化1】
【0017】
ただし、(1)〜(5)のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物において、構造単位(I)は、構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対し65モル%未満であっても良い。また、構造単位(I)は、構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対し80モル%を超えることとしても良い。
(1)〜(5)のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物において、構造単位(II)は、構造単位(II)および(III)の合計に対して55モル%未満であっても良い。また、構造単位(II)は、構造単位(II)および(III)の合計に対して85モル%を超えることとしても良い。
(1)〜(5)のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物において、構造単位(IV)は、構造単位(IV)および(V)の合計に対して50モル%未満であっても良い。また、構造単位(IV)は、構造単位(IV)および(V)の合計に対して95モル%を超えることとしても良い。
また、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物を構成する液晶性ポリエステル樹脂は、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)の少なくとも一部を含まなくてもよい。
(7)少なくとも前記(A)液晶性ポリエステル樹脂および前記(B)タルクを二軸押出機に供給して溶融混練する液晶性ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、押出機駆動側の供給口から樹脂吐出部分の口金までの全長に対して、中央よりも上流側に中間供給口を設置し、前記(B)タルクを前記中間供給口から投入する製造方法で得られることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
(8)少なくとも前記(A)液晶性ポリエステル樹脂および前記(B)タルクを二軸押出機に供給して溶融混練する液晶性ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、押出機駆動側の供給口から樹脂吐出部分の口金までの全長に対して、中央よりも上流側に中間供給口を設置し、前記(B)タルクを前記中間供給口から投入することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0018】
(9)(1)〜(7)のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
【0019】
ただし、(1)〜(7)のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物を用いて、射出成形とは異なる方法により作製した成形品としても良い。
【0020】
(10)成形品が樹脂部と樹脂部に接合する金属部とを有する金属複合成形品であることを特徴とする(9)記載の成形品。
【0021】
ただし、(9)記載の成形品は、樹脂部と樹脂部に接合する金属部とを有する金属複合成形品とは異なる成形品としても良い。
【0022】
(11)成形品がコネクターもしくはリレーのいずれかであることを特徴とする(10)記載の成形品。
【0023】
ただし、上記(10)記載の成形品は、コネクターもしくはリレーのいずれか以外の部材として用いられるものとすることもできる。
【0024】
本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物によれば、高い流動性を有しながら流動バラツキが少なく、高い金属密着性を有し、かつ、リフロー処理中のそりを低減した成形品を得ることができる。本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、形状が複雑で薄肉の電気・電子部品や機械部品に好適に用いられ、特に金属との複合成形品に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例において作製したコネクター成形品の斜視図およびそり量の測定部位を示す概念図である。
【図2】実施例において使用したリフローシミュレーターの温度プロファイルである。
【図3】実施例において使用した金属密着性評価用試験片を示す概念図である。
【図4】実施例において使用した表面かたさ評価用冶具を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、液晶性樹脂ポリエステル100重量部に対して、吸油量と比表面積の比が特定の範囲であるタルクを10〜100重量部含有する。
液晶性ポリエステル樹脂は、例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル樹脂である。
【0027】
芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位が挙げられ、p−ヒドロキシ安息香酸が好ましい。芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどから生成した構造単位が挙げられ、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンが好ましい。芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などから生成した構造単位が挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0028】
液晶性ポリエステル樹脂の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジカルボン酸および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボンから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0029】
これら液晶性ポリエステル樹脂の中でも、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成される液晶性ポリエステル樹脂が好ましい。かかる液晶性ポリエステル樹脂は成形時のガス発生量が少ないことから、金属密着性をより向上させることができる。また、後述する製造方法と組み合わせることにより、液晶性ポリエステル樹脂組成物中のタルクの形状を所望の範囲により容易に調整することができる。
【化2】
【0030】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位を、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位を、構造単位(III)はハイドロキノンから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸から生成した構造単位を、構造単位(V)はイソフタル酸から生成した構造単位を各々示す。
構造単位(I)は、構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65〜80モル%が好ましい。特にガラス繊維との濡れ性が向上することから、より好ましくは68〜78モル%である。
【0031】
また、構造単位(II)は、構造単位(II)および(III)の合計に対して55〜85モル%が好ましい。特に寸法安定性が向上し金属密着性がより向上することから、より好ましくは55〜78モル%であり、最も好ましくは58〜73モル%である。
【0032】
また、構造単位(IV)は、構造単位(IV)および(V)の合計に対して50〜95モル%が好ましい。特に寸法安定性が向上し金属密着性がより向上することから、より好ましくは55〜90モル%であり、最も好ましくは60〜85モル%である。
【0033】
構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計は実質的に等モルであることが好ましい。ここで、「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成する構造単位として等モルであることを示す。このため、末端を構成する構造単位まで含めた場合には必ずしも等モルとはならない態様も、「実質的に等モル」の要件を満たしうる。ポリマーの末端基を調節するために、ジカルボン酸成分またはジヒドロキシ成分を過剰に加えてもよい。
【0034】
本発明の実施形態において使用する上記液晶性ポリエステル樹脂は、公知のポリエステルの重縮合法により得ることができる。例えば、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンとテレフタル酸、イソフタル酸から脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸、イソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸、イソフタル酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸およびテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
【0035】
本発明の実施形態において、液晶性ポリエステル樹脂を脱酢酸重縮合反応により製造する際に、液晶性ポリエステル樹脂が溶融する温度で減圧下反応させ、重縮合反応を完了させる溶融重合法が好ましい。例えば、所定量のp−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸、および無水酢酸を、反応容器中に仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら加熱して水酸基をアセチル化させた後、液晶性ポリエステル樹脂の溶融温度まで昇温し、減圧により重縮合して反応を完了させる方法が挙げられる。上記反応容器は、撹拌翼を備えることとしても良く、また、留出管を備えることとしても良く、また、下部に吐出口を備えることとしても良い。
【0036】
得られたポリマーは、それが溶融する温度で反応容器内を、例えば、およそ1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、反応容器下部に設けられた吐出口よりストランド状に吐出することができる。溶融重合法は均一なポリマーを製造するために有利な方法であり、ガス発生量がより少ない優れたポリマーを得ることができ、好ましい。
【0037】
液晶性ポリエステル樹脂の重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を触媒として使用することもできる。
【0038】
本発明の実施形態において、各構造単位の含有量は、液晶性ポリエステル樹脂をNMR(核磁気共鳴)試験管に量りとり、液晶性ポリエステル樹脂が可溶な溶媒(例えば、ペンタフルオロフェノール/重テトラクロロエタン−d2混合溶媒)に溶解して、1H−NMRスペクトル測定を行い、各構造単位由来のピーク面積比から算出することができる。
【0039】
本発明の実施形態において、融点(Tm)は、示差走査熱量計により測定することができる。液晶性ポリエステル樹脂を室温から40℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を融点(Tm)として算出できる。
【0040】
また、本発明の実施形態における液晶性ポリエステル樹脂の溶融粘度は1〜200Pa・sが好ましく、10〜200Pa・sがより好ましく、10〜100Pa・sが特に好ましい。なお、溶融粘度は液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃の条件で、ずり速度1,000/sの条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0041】
本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、タルクを10〜100重量部含有する。タルク含有量が10重量部未満であると、そり抑制効果が著しく低下し、得られる成形品のそりが増大する。また、成形品の異方性も大きくなるため寸法安定性が低下し、金属密着性が低下する。20重量部以上が好ましく、30重量部以上がより好ましい。一方、タルクが100重量部を超えると、流動性が低下して成形に要する圧力が高くなることから、成形品中の残留応力が大きくなり、リフロー処理中のそり量が増大する。また、成形品の表面平滑性が低下するため金属密着性が低下する。85重量部以下が好ましく、75重量部以下がより好ましい。
【0042】
また、本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物中に含まれるタルクは、吸油量(a1)ml/100gと比表面積(a2)m2/gの比(a1/a2)が14.0〜26.0(ml・g)/(100g・m2)であることが重要である。(a1/a2)は比表面積当たりの吸油量を表しており、この値が大きいと液晶性ポリエステル性樹脂との親和性が向上する。(a1/a2)が14.0(ml・g)/(100g・m2)未満になるとタルクの分散性が低下するため、成形品の異方性が大きくなることから成形収縮率が大きくなり、金属密着性が低下する。16.0以上が好ましく、18.0以上がより好ましい。一方、(a1/a2)が26.0を超えると液晶性ポリエステル樹脂とタルクとの間の摩擦が増加し、流動バラツキが大きくなる。24.0以下が好ましく、22.0以下がより好ましい。
【0043】
本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物中に含まれるタルクの吸油量(a1)は、タルクの分散性をより向上させて成形品の異方性を低減し、金属密着性をより向上させる観点から、20ml/100g以上が好ましく、23ml/100gがより好ましく、27ml/100g以上がより好ましい。一方、液晶性ポリエステル樹脂とタルクの間に発生する摩擦を抑制して流動性をより向上させる観点から、40ml/100g以下が好ましく、37ml/100g以下がより好ましく、33ml/100g以下がより好ましい。
【0044】
本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物中に含まれるタルクの比表面積(a2)は、タルクの分散性をより向上させて成形品の異方性を低減し、金属密着性を向上させる観点から、0.9m2/g以上が好ましく、1.1m2/g以上がより好ましく、1.3m2/g以上がより好ましい。一方、タルクの凝集を抑制して流動バラツキをより低減する観点から、1.8m2/g以下が好ましく、1.7m2/g以下がより好ましく、1.6m2/g以下がより好ましい。
【0045】
本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物中に含まれるタルクの数平均粒子径は、成形品のそりをより抑制する観点から、10μm以上が好ましく、13μm以上がより好ましく、15μm以上がより好ましい。一方、薄肉流動性を維持して成形時のヘジテーションを抑制し、成形安定性を向上させる観点から、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がより好ましい。
【0046】
本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物中に含まれるタルクは、45Micronふるい残分が組成物中に含まれるタルク全量に対して1.0重量%以下であることが好ましい。組成物中に含まれるタルク全量に対して45Micronふるい残分が1.0重量%以下であると、成形時の薄肉部での詰まりを抑制して成形安定性を向上させ、流動バラツキをより低減することができる。組成物中に含まれるタルク全量に対して0.8重量%以下が好ましく、組成物中に含まれるタルク全量に対して0.6重量%以下がより好ましい。
【0047】
なお、液晶性ポリエステル樹脂組成物中に含まれるタルクの吸油量(a1)、比表面積(a2)およびこれらの比(a1/a2)、数平均粒子径、45Micronふるい残分は、次の方法により求めることができる。まず、樹脂組成物50gを550℃で3時間加熱することにより樹脂成分を除去し、タルクを取り出す。樹脂組成物中にガラス繊維を含有する場合には、タルクとガラス繊維の混合物を取り出し、これを1,1,2,2−テトラブロモエタン(比重2.970)88体積%とエタノール(比重0.789)12体積%の混合液中に分散させ、1時間静置した後、浮遊したガラス繊維をデカンテーションで取り除き、沈降したタルクをろ過により取り出す。得られたタルクの吸油量(a1)をJIS K−5101(2004年2月20日制定)に準拠して測定する。また、比表面積(a2)を島津(株)社製「非表面積測定器SS−100型」を用いて空気透過法で測定する。また、数平均粒子径は、タルクを100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)を用いて測定する。また、45Micronふるい残分は、JIS K−5101(2004年2月20日制定)に準拠して測定する。
【0048】
タルクの製造方法としては、例えば、ミクロンミル、ロッシェミル、ジェットミルによる粉砕などが挙げられる。
【0049】
また、本発明の実施形態においては、タルクと液晶性ポリエステル樹脂との濡れ性を向上させる目的でタルクの表面をシランカップリング剤などで処理してもよい。また、不純物の除去、タルクの硬質化を目的に熱処理加工をしたタルクを用いてもよい。また、ハンドリング性を改善させる目的で圧縮したタルクを用いていてもよい。
【0050】
本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、(C)ガラス繊維を含有してもよい。ガラス繊維を含有することにより、流動性はやや低下するものの、液晶性ポリエステル樹脂組成物から得られる成形品のそり抑制効果が大きくなり、リフロー処理中のそり量をより低減することができる。また、ガラス繊維はタルクと比較して硬度が高いため、ガラス繊維を含有することで成形品の表面かたさが増すため、成形品へ衝撃が加わったときの破損を軽減することができる。
【0051】
ガラス繊維の含有量は、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、10〜100重量部が好ましい。ガラス繊維の含有量が10重量部以上であると、表面硬さが著しく向上するため好ましい。20重量部以上が好ましく、30重量部以上がより好ましい。一方、ガラス繊維が100重量部以下であれば、液晶性ポリエステル樹脂の流動性をより高く保つことができる。85重量部以下が好ましく、75重量部以下がより好ましい。
【0052】
また、ガラス繊維を充填する場合、ガラス繊維の配合量(g)とタルクの配合量(t)の比(g/t)は0.3〜1.5が好ましい。その中でも比(g/t)が0.3〜0.6であると金属密着性が著しく向上するため好ましい。一方、比(g/t)が1.1〜1.3であると表面かたさが著しく向上するため好ましい。
【0053】
本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物中に含まれるガラス繊維の数平均繊維長は、30μm以上が好ましく、液晶性ポリエステル樹脂組成物から得られる成形品の表面かたさを向上させることができる。60μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。一方、液晶性ポリエステル樹脂組成物の流動性の点から、500μm以下が好ましく、450μm以下がより好ましく、400μm以下がより好ましい。
【0054】
また、ガラス繊維の分散性が不十分であると成形品の表面かたさが小さくなる。ガラス繊維の分散性を向上させるためには樹脂との溶融混練を行うときにスクリュウ回転数をあげることやシリンダ温度を下げ、溶融樹脂の溶融粘度を大きくし、せん断力を大きくする手段などが有効である。また、樹脂との相溶性を向上させるためにガラス繊維にカップリング剤を塗布することも有効である。
【0055】
なお、液晶性ポリエステル樹脂組成物中に含まれるガラス繊維の数平均繊維長は、次の方法により求めることができる。まず、樹脂組成物を550℃で3時間加熱することで樹脂成分を除去し、液晶性ポリエステル組成物中のタルクとガラス繊維を混合物の状態で取り出す。この混合物を1,1,2,2−テトラブロモエタン(比重2.970)88体積%とエタノール(比重0.789)12体積%の混合液中に分散させ、10000r.p.mで5分間遠心分離した後、浮遊したガラス繊維をデカンテーションで分離する。次いでろ過により溶媒とガラス繊維を分離する。顕微鏡用スライドガラス上にガラス繊維を各繊維が積み重ならないように散布し、800倍の倍率で顕微鏡写真を撮影し、顕微鏡写真から無作為に選んだ500本以上の繊維長を測定し、その数平均値を求める。
【0056】
ガラス繊維の含有量は、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して10〜100重量部が好ましい。ガラス繊維の含有量が10重量部以上であれば成形品の表面かたさが大きくなり好ましい。20重量部以上が好ましく、30重量部以上がより好ましい。ガラス繊維の含有量が100重量部以下であれば、液晶性ポリエステル樹脂の流動性をより高く保つことができ、金属密着性も高く保つことができる。75重量部以下がより好ましく、50重量部以下がより好ましい。
【0057】
また、本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない程度の範囲で、ガラス繊維以外の繊維状充填材や、繊維状充填材以外の充填材を含有してもよい。繊維状充填材としては、例えば、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、チタン酸カリウム繊維、石膏繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミック繊維、ボロンウィスカー繊維、アスベスト繊維などを挙げることができる。繊維状充填材以外の充填材としては、例えば、マイカ、グラファイト、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスマイクロバルーン、クレー、ワラステナイト、酸化チタン、二硫化モリブデン等の粉状、粒状あるいは板状の無機フィラーを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
【0058】
また、本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、酸化防止剤、熱安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(例えば、レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤、離型剤(例えば、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(例えば、ニトロシンなど)または顔料(例えば、硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなど)を含む着色剤、可塑剤、および帯電防止剤から選択される通常の添加剤を配合することができる。あるいは、他の熱可塑性樹脂を配合しても良い。本発明の目的を損なわない程度の範囲で配合することにより、所定の特性を付与することができる。
【0059】
本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、例えば、上記液晶性ポリエステル樹脂、タルクおよびガラス繊維など必要により他の成分を溶融混練することにより得ることができる。溶融混練する方法としては、例えば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用いる方法が挙げられる。溶融混練の温度は、200〜350℃とすることが望ましい。タルクを均質に分散性良く混練するため、押出機を用いることが好ましく、二軸押出機を用いることがより好ましく、中間供給口を有する二軸押出機を用いることがより好ましい。
【0060】
液晶性ポリエステル樹脂組成物中に含まれるタルクの吸油量、比表面積、数平均粒子径、45Micronふるい残分を前述した所望の範囲にする方法としては、例えば、押出機駆動側の供給口から樹脂吐出部分の口金までの全長に対して、中央よりも上流側に中間供給口を設置し、タルクを中間供給口から投入する方法や、供給するタルクの一部を液晶性ポリエステル樹脂とあらかじめ混合して押出機駆動側の供給口から投入し、残りのタルクを中間供給口から投入する方法などが挙げられる。
【0061】
液晶性ポリエステル樹脂、タルクおよび必要により他の成分を、押出機を用いて溶融混練する場合、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対するタルクの供給量が65重量部より多い場合、押出機内でのタルク同士の摩擦が大きくなり、タルクの崩壊程度が大きくなる傾向があるが、例えば、スクリュー回転数を低減する、シリンダ温度を高くするなどの方法により、液晶性ポリエステル樹脂組成物中のタルクの形状を、前述の所望の範囲に容易に調整することができる。
【0062】
一方、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対するタルクの供給量が20重量部より少ない場合には、タルク同士の摩擦が小さくなるため、タルクの崩壊程度が小さくなる傾向があるが、例えば、スクリュー回転数を高くする、シリンダ温度を低くするなどの方法により、液晶性ポリエステル樹脂組成物中のタルクの形状を、前述の所望の範囲に容易に調整することができる。
【0063】
また、液晶性ポリエステル樹脂組成物中のタルクの形状を、前述の所望の範囲にする方法としては、例えば、スクリューアレンジメントによってタルクの崩壊程度を調整する方法や、タルクにかかるせん断力を調整することによってタルクの崩壊程度を調整する方法などを挙げることができる。剪断力を調整する手段としては、例えば、スクリュー回転数やシリンダ温度により溶融樹脂の溶融粘度を調整する方法を挙げることができる。
【0064】
液晶性ポリエステル樹脂組成物中に含まれるガラス繊維の数平均繊維長を前述した所望の範囲にする方法としては、例えば、長さの異なるガラス繊維をあらかじめブレンドして押出機に供給する方法や、一方のガラス繊維を押出機駆動側の供給口から液晶性ポリエステル樹脂と一緒に供給し、もう一方を中間供給口から供給する方法が挙げられる。長さの異なるガラス繊維としては、例えば、ミルドファイバーとガラス繊維の組み合わせが考えられ、具体的には数平均繊維長が30〜80μmのミルドファイバーと数平均カット長が3〜4mmのチョップドストランドの組み合わせなどが挙げられる。
【0065】
また、ミルドファイバーを含有する液晶性ポリエステル樹脂組成物のペレットとチョップドストランドのガラス繊維を充填した液晶性ポリエステル樹脂組成物のペレットをあらかじめブレンドして押出機に供給する方法や、一方のペレットを押出機駆動側の供給口から液晶性ポリエステル樹脂と一緒に供給し、もう一方を中間供給口から供給する方法が挙げられる。
【0066】
また、スクリューアレンジメントによってガラス繊維の折損程度を調整する方法や、ガラス繊維にかかるせん断力を調整することによってガラス繊維の折損程度を調整する方法を挙げることができる。剪断力を調整する手段としては、例えば、スクリュウ回転数やシリンダ温度により溶融樹脂の溶融粘度を調整する方法を挙げることができる。
【0067】
以上の方法で得られた液晶性ポリエステル樹脂組成物中のタルク、ガラス繊維およびその他添加剤の含有量は、一般的に液晶性ポリエステル樹脂組成物製造時の仕込み量と一致する。
【0068】
本発明の実施形態の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、公知の成形法により各種成形品に成形されるが、その優れた薄肉流動性を活かして、射出成形することが好ましい。
【0069】
かくして得られる成形品は、金属密着性に優れ、そりが低減されていることから、金属との複合成形体に好適に用いることができる。金属複合成形品は、樹脂組成物を射出成形してなる樹脂部と、それに接合する金属部とを有する。金属部は、電気・電子部品の端子部やコイル、モーターや各種センサーなどの通電部分に用いられる。金属部を構成する金属としては、加工性、耐腐食性、熱伝導性、電気伝導性の観点から、銅、銀、金、アルミニウムなどが好ましく、それらの合金でもよい。
【0070】
金属複合成形体の具体例としては、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LED用部品、液晶バックライトボビン、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、リレー用スプールおよびベース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品(プラズマ、有機EL、液晶)、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコン用モーターインシュレーター、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ECUコネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品などに用いることができる。フィルムとして用いる場合は磁気記録媒体用フィルム、シート用途としてはドアトリム、バンパーやサイドフレームの緩衝材、座席用材、ピラー、燃料タンク、ブレーキホース、ウインドウオッシャー液用ノズル、エアコン冷媒用チューブなどを挙げることができる。また、表面外観に優れることから、カメラモジュール部品、光ピックアップレンズホルダ、オートフォーカスカメラレンズモジュールなどの摺動性部品にも好適に用いることができる。
【0071】
この中でもリフロー中のそり量が小さく、かつ金属密着性に優れていることから鉛フリーはんだに使用されるコネクターに好適に用いられ、特に基板対電線、基板対基板、基板対FPCもしくは基板対FFCのプリント基板用コネクターやカード用コネクター、丸型コネクター、角型コネクター、車載コネクター、同軸コネクター、高周波用コネクターなどの電気コネクター、光コネクター及び複合コネクターなどのコネクターに好適に用いられ、またリレーケース、リレー用スプールおよびベースなどのリレー部材に好適に用いられ、特にパワーリレー、I/Oリレー、クリーンリレー、ラッチングリレー、ラチェットリレー、ソリッドステートリレー、プリント基板用リレーに好適に用いることができる。
【0072】
そのほか、上記金属との複合成形体に限らず、写真用フィルム、コンデンサー用フィルム、電気絶縁用フィルム、包装用フィルム、製図用フィルム、リボン用フィルムなどのフィルム用途、自動車内部天井、インストロメントパネルのパッド材、ボンネット裏等の吸音パッドなどのシート用途に有用である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明の効果をさらに詳細に説明する。
液晶性ポリエステルの組成分析および特性評価は以下の方法により行った。
【0074】
(1)液晶性ポリエステル樹脂の組成分析
液晶性ポリエステル樹脂の組成分析は、1H−核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)測定により実施した。液晶性ポリエステル樹脂をNMR試料管に50mg秤量し、溶媒(ペンタフルオロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2=65/35(重量比)混合溶媒)800μLに溶解して、UNITY INOVA500型NMR装置(バリアン社製)を用いて観測周波数500MHz、温度80℃で1H−NMR測定を実施し、7〜9.5ppm付近に観測される各構造単位由来のピーク面積比から組成を分析した。
【0075】
(2)液晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)の測定
示差走査熱量計DSC−7(パーキンエルマー製)により、液晶性ポリエステル樹脂を室温から40℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を融点(Tm)とした。
【0076】
(3)液晶性ポリエステル樹脂の溶融粘度測定
高化式フローテスターCFT−500D(オリフィス0.5φ×10mm)(島津製作所製)を用い、温度は液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃、剪断速度は1000/秒で測定した。
【0077】
各実施例および比較例に用いた(A)液晶性ポリエステル樹脂、(B)タルク、および(C)ガラス繊維を以下に示す。
【0078】
(A)液晶性ポリエステル樹脂
[参考例1] 液晶性ポリエステル樹脂(A−1)の合成
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870g(6.30モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327g(1.89モル)、ハイドロキノン89g(0.81モル)、テレフタル酸292g(1.76モル)、イソフタル酸157g(0.95モル)および無水酢酸1367g(フェノール性水酸基合計の1.03当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させた後、320℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に90分間反応を続け、撹拌に要するトルクが15kg・cmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1個持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズし、液晶性ポリエステル樹脂(A−1)を得た。
【0079】
この液晶性ポリエステル樹脂(A−1)について組成分析を行なった。液晶性ポリエステル樹脂(A−1)は、p−オキシベンゾエート単位(構造単位(I))、4,4’−ジオキシビフェニル単位(構造単位(II))、1,4−ジオキシベンゼン単位(構造単位(III))、テレフタレート単位(構造単位(IV))およびイソフタレート単位(構造単位(V))を備えていた。液晶性ポリエステル樹脂(A−1)は、p−オキシベンゾエート単位(構造単位(I))を、p−オキシベンゾエート単位(構造単位(I))、4,4’−ジオキシビフェニル単位(構造単位(II))および1,4−ジオキシベンゼン単位(構造単位(III))の合計に対して70モル%含有していた。また、4,4’−ジオキシビフェニル単位(構造単位(II))を、4,4’−ジオキシビフェニル単位(構造単位(II))および1,4−ジオキシベンゼン単位(構造単位(III))の合計に対して70モル%含有していた。また、テレフタレート単位(構造単位(IV))を、テレフタレート単位(構造単位(IV))およびイソフタレート単位(構造単位(V))の合計に対して65モル%含有していた。また、4,4’−ジオキシビフェニル単位(構造単位(II))および1,4−ジオキシベンゼン単位(構造単位(III))の合計は、全構造単位に対して23モル%であり、テレフタレート単位(構造単位(IV))およびイソフタレート単位(構造単位(V))の合計は、全構造単位に対して23モル%であった。液晶性ポリエステル樹脂(A−1)の融点(Tm)は314℃であった。高化式フローテスター(オリフィス0.5φ×10mm)を用い、温度324℃、剪断速度1,000/sで測定した溶融粘度は、20Pa・sであった。
【0080】
[参考例2] 液晶性ポリエステル樹脂(A−2)の合成
p−ヒドロキシ安息香酸994g(7.20モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126g(0.68モル)、テレフタル酸112g(0.68モル)、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート159g(1.13モル)および無水酢酸960g(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を重合容器に仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら150℃まで昇温しながら3時間反応させた、150℃から250℃まで2時間で昇温し、250℃から330℃まで1.5時間で昇温させた後、325℃、1.5時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に0.25時間撹拌を続け、撹拌に要するトルクが12kg・cmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1個持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズし、液晶性ポリエステル樹脂(A−2)を得た。
【0081】
この液晶性ポリエステル樹脂(A−2)について組成分析を行なったところ、p−オキシベンゾエート単位(構造単位(I))66.7モル%、4,4’−ジオキシビフェニル単位(構造単位(II)6.3モル%、ポリエチレンテレフタレート由来のエチレンジオキシ単位10.4モル%、テレフタレート単位(構造単位(IV))16.6モル%を有していた。融点(Tm)は314℃であった。高化式フローテスター(オリフィス0.5φ×10mm)を用い、温度324℃、剪断速度1,000/sで測定した溶融粘度は、25Pa・sであった。
【0082】
[参考例3] 液晶性ポリエステル樹脂(A−3)の合成
特開昭54−77691号公報に従って、p−アセトキシ安息香酸921重量部と6−アセトキシ−ナフトエ酸435重量部を、撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重縮合を行った。得られた液晶性ポリエステル樹脂(A−3)は、p−アセトキシ安息香酸から生成した構造単位(構造単位(I))57モル当量および6−アセトキシ−ナフトエ酸から生成した構造単位22モル当量を有していた。融点(Tm)は283℃であった。高化式フローテスター(オリフィス0.5φ×10mm)を用い、温度293℃、剪断速度1,000/sで測定した溶融粘度は、30Pa・sであった。
【0083】
(B)タルク
(B−1)富士タルク(株)社製“PKP−53”(数平均粒子径:18.5μm、タルク全量中の45Micronふるい残分:0.5重量%)
(B−2)日本タルク(株)社製“SWE”(数平均粒子径:19.0μm、タルク全量中の45Micronふるい残分:0.2重量%)
(B−3)富士タルク(株)社製“NK−48”(数平均粒子径:26.0μm、タルク全量中の45Micronふるい残分:5.0重量%)
(B−4)富士タルク(株)社製“LMS−200”(数平均粒子径:5.0μm、タルク全量中の45Micronふるい残分:0.1重量%以下)
(B−5)日本タルク(株)社製“X−50”(数平均粒子径:17.4μm、タルク全量中の45Micronふるい残分:0.2重量%)
【0084】
(C)ガラス繊維
(C−1)日本電気硝子(株)社製“チョップドストランド ECS03 T−747H”(数平均繊維長3.0mm、数平均繊維径10.5μm)
(C−2)日本電気硝子(株)社製“ミルドファイバー EPG70M−01N”(数平均繊維長70μm、数平均繊維径9μm)
【0085】
上記した(A)液晶性ポリエステル樹脂、(B)タルク、および、必要に応じて(C)ガラス繊維を用いて、実施例および比較例の液晶性ポリエステル樹脂組成物を作製した。各々の液晶性ポリエステル樹脂組成物について行なった特性の評価方法は以下の通りである。
【0086】
(1)そり量
各実施例および比較例で得られた液晶性樹脂組成物を、ファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、シリンダ温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定し、金型温度90℃の条件で射出成形を行い、図1aに示す端子間ピッチ(Lp)が0.5mm、製品の最小肉厚部(Lt)(隔壁部3)が0.1mm、外形寸法が幅3mm×高さ1mm×長さ30mm、平均肉厚が0.2mmのコネクター型の長尺成形品(コネクター成形品1)の連続成形を行った。 図1aは上記コネクター成形品1の斜視図である。端子間ピッチ0.3mmで、0.1mmの最小肉厚部である隔壁部3を有する箱形のコネクター成形品1の片側の短尺面2に設置したピンゲートG1(ゲート径0.3mm)から液晶性ポリエステル樹脂組成物を充填し、成形品を得た。得られたコネクター成形品を用い、以下の方法でそり量を測定した。
【0087】
(リフロー前そり量)
成形直後のコネクター成形品のそり量を測定した。コネクター成形品の長尺方向の両端を結ぶ面を基準面とし、基準面からの距離の最大値を測定した。図1bは上記コネクター成形品においてそり量の測定部位を示す概念図である。長尺方向の両端を結ぶ線をA、短尺方向の両端を結ぶ線をBとし、A−B面を基準面aとして、最大変形面bとの距離をそり量とした。そり量が0.08mm以下の場合には「優れる」(◎)、0.08mmを超えて0.15mm以下の場合には「良好」(○)、0.15mmよりも大きい場合には「劣る」(×)と評価した。
【0088】
(リフロー後そり量)
成形直後のコネクター成形品を、リフローシミュレーターを用いて図2に示す温度プロファイルにてリフロー処理し、処理中のそり量を前記方法と同様に測定した。
温度パターン:STEP1 25℃から190℃まで100秒間で昇温する
STEP2 190℃で100秒間保持する
STEP3 190℃から260℃まで30秒間で昇温する
STEP4 260℃で30秒間保持する
STEP5 260℃から25℃まで200秒間で降温する
そり量が0.20mm以下の場合には「優れる」(◎)、0.20mmを超えて0.35mm以下の場合には「良好」(○)、0.35mmよりも大きい場合には「劣る」(×)と評価した。
【0089】
(2)流動性
各実施例および比較例で得られた液晶性樹脂組成物を、ファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、幅12.7mm×長さ100mm×0.3mm厚と幅12.7mm×長さ100mm×0.5mm厚の成形品を同時に成形できる金型を用い、シリンダ温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点Tm+10℃に設定し、金型温度を90℃に設定して、幅12.7mm×0.5mm厚の成形品が100mmの長さで成形できる成形条件で射出成形し、幅12.7mm×0.3mm厚の流動長を測定した。20ショット成形し、20ショット中の幅12.7mm×0.3mm厚の最大流動長と最小流動長を測定した。最大流動長と最小流動長の差が小さいものほど流動バラツキが少ないことを示している。
【0090】
(3)金属密着性
各実施例および比較例で得られた液晶性樹脂組成物を、ファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、シリンダ温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定し、金型温度90℃、射出速度100mm/sの条件で射出成形を行い、図3に示す金属密着性評価用試験片を作製した。金属板1(材質:アルミ板A5052)と樹脂部2を曲げ試験機(オリエンテック(株)社製「テンシロンRTM−500」)に固定して1mm/分の歪み速度で金属密着強度を測定した。金属密着強度が40MPaより大きい場合には「金属密着性が優れている(◎)」、40MPaから20MPaの場合には「金属密着性が良好である(○)」、20MPaより小さい場合には「金属密着性が劣っている(×)」と評価した。
【0091】
(4)表面かたさ
各実施例および比較例で得られた液晶性樹脂組成物を、ファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、シリンダ温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定し、金型温度90℃で射出成形を行い、縦80mm×横80mm×厚み1mmの角板を作製した。この角板を図4に示すR0.5mmの冶具で深さ0.20mmまで押し込むために必要な荷重を測定した。荷重の値が大きいと表面かたさはかたいといえる。
【0092】
既述した(A)液晶性ポリエステル樹脂および(B)タルクを用いて作製した実施例1〜9および比較例1〜6の液晶性ポリエステル樹脂組成物の各々について、以下に説明する。
【0093】
[実施例1、2、4、5、7〜9、比較例1、3、4、5、6]
東芝機械製TEM35B型2軸押出機(噛み合い型同方向)に、シリンダC1(元込めフィーダー側ヒーター)〜C7(ダイ側ヒーター)の、C3部に中間供給口を設置し、C5部に真空ベントを設置した。ニーディングブロックをC2部、C4部に組み込んだスクリューアレンジメントを用い、表1に示す(A)液晶性ポリエステル樹脂を元込め部(供給口1)から添加し、(B)タルクを中間供給口(供給口2)から投入した。シリンダ温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定しスクリュー回転数200r.p.mの条件で溶融混練した後、ストランドカッターによりペレットを得た。
【0094】
得られたペレットを50g秤量し、550℃で3時間加熱することで樹脂成分を除去し、液晶性ポリエステル樹脂組成物中のタルクを取り出した。吸油量(a1)をJIS K−5101(2004年2月20日制定)に準拠して測定した。また、比表面積(a2)を島津(株)社製「非表面積測定器SS−100型」を用いて空気透過法で測定した。また、数平均粒子径は、タルクを100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)を用いて測定した。また、45Micronふるい残分は、JIS K−5101(2004年2月20日制定)に準拠して測定した。
【0095】
[実施例3]
東芝機械製TEM35B型2軸押出機(噛み合い型同方向)に、シリンダC1(元込めフィーダー側ヒーター)〜C7(ダイ側ヒーター)の、C3部に中間供給口を設置し、C6部に真空ベントを設置した。ニーディングブロックをC2部、C4部に組み込んだスクリューアレンジメントを用い、表1に示す(A)液晶性ポリエステル樹脂(A−1)を元込め部(供給口1)から添加し、表1に示す(B)タルクを中間供給口(供給口2)から投入した。シリンダ温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点+20℃に設定しスクリュー回転数200r.p.mの条件で溶融混練した後、ストランドカッターによりペレットを得た。実施例1と同様の方法で、液晶性ポリエステル樹脂組成物中のタルクの吸油量(a1)、比表面積(a2)、数平均粒子径および45Micronふるい残分を測定した。
【0096】
[実施例6]
東芝機械製TEM35B型2軸押出機(噛み合い型同方向)に、シリンダC1(元込めフィーダー側ヒーター)〜C7(ダイ側ヒーター)の、C3部に中間供給口を設置し、C6部に真空ベントを設置した。ニーディングブロックをC2部、C4部に組み込んだスクリューアレンジメントを用い、表1に示す(A)液晶性ポリエステル樹脂(A−1)と(B)タルクをあらかじめドライブレンドした混合物を元込め部(供給口1)から添加し、表1に示す(B)タルクを中間供給口(供給口2)から投入した。シリンダ温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定しスクリュー回転数200r.p.mの条件で溶融混練した後、ストランドカッターによりペレットを得た。実施例1と同様の方法で、液晶性ポリエステル樹脂組成物中のタルクの吸油量(a1)、比表面積(a2)、数平均粒子径および45Micronふるい残分を測定した。
【0097】
[比較例2]
東芝機械製TEM35B型2軸押出機(噛み合い型同方向)に、シリンダC1(元込めフィーダー側ヒーター)〜C7(ダイ側ヒーター)の、C4部に中間供給口を設置し、C6部に真空ベントを設置した。ニーディングブロックをC3部に組み込んだスクリューアレンジメントを用い、表1に示す(A)液晶性ポリエステル樹脂(A−1)を元込め部(供給口1)から添加し、表1に示す(B)タルクを中間供給口(供給口2)から投入した。シリンダ温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定しスクリュー回転数250r.p.mの条件で溶融混練した後、ストランドカッターによりペレットを得た。実施例1と同様の方法で、液晶性ポリエステル樹脂組成物中のタルクの吸油量(a1)、比表面積(a2)、数平均粒子径および45Micronふるい残分を測定した。
【0098】
実施例1〜9および比較例1〜6の組成および評価結果を表1に示す。
【表1】
【0099】
表1からも明らかなように、本発明の実施例1〜9の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、比較例1〜6に示した液晶性ポリエステル樹脂組成物に比較して、流動性に優れ、流動性バラツキが小さく、さらに、金属密着性に優れ、リフロー前およびリフロー処理中のそり量が低減されていることがわかる。
【0100】
既述した(A)液晶性ポリエステル樹脂、(B)タルク、および(C)ガラス繊維を用いて作製した実施例10〜17および比較例7,8の液晶性ポリエステル樹脂組成物の各々について、以下に説明する。
【0101】
[実施例10〜17、比較例7]
東芝機械製TEM35B型2軸押出機(噛み合い型同方向)に、シリンダC1(元込めフィーダー側ヒーター)〜C6(ダイ側ヒーター)の、C3部に中間供給口を設置し、C5部に真空ベントを設置した。ニーディングブロックをC2部、C4部に組み込んだスクリューアレンジメントを用い、表2に示す(A)液晶性ポリエステル樹脂(A−1)を元込め部(供給口1)から添加し、表2に示す(B)タルクと(C)ガラス繊維を中間供給口(供給口2)から投入した。シリンダ温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定しスクリュー回転数120r.p.mの条件で溶融混練した後、ストランドカッターによりペレットを得た。
【0102】
得られたペレットを50g秤量し、550℃で3時間加熱することで樹脂成分を除去し、液晶性ポリエステル組成物中のタルクとガラス繊維を混合物の状態で取り出した。この混合物を1,1,2,2−テトラブロモエタン(比重2.970)88体積%とエタノール(比重0.789)12体積%の混合液中に分散させ、10000r.p.mで5分間遠心分離した後、浮遊したガラス繊維をデカンテーションで取り除き、沈降したタルクをろ過により取り出した。得られたタルクの吸油量(a1)をJIS K−5101(2004年2月20日制定)に準拠して測定した。また、比表面積(a2)を島津(株)社製「非表面積測定器SS−100型」を用いて空気透過法で測定した。また、数平均粒子径は、タルクを100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)を用いて測定した。また、45Micronふるい残分をJIS K−5101(2004年2月20日制定)に準拠して測定した。また、デカンテーションで分離したガラス繊維をろ過により溶媒と分離した。顕微鏡用スライドガラス上にガラス繊維を各繊維が積み重ならないように散布し、800倍の倍率で顕微鏡写真を撮影し、顕微鏡写真から無作為に選んだ500本以上の繊維長を測定し、その数平均値を求めた。
【0103】
[比較例8]
東芝機械製TEM35B型2軸押出機(噛み合い型同方向)に、シリンダC1(元込めフィーダー側ヒーター)〜C7(ダイ側ヒーター)の、C4部に中間供給口を設置し、C6部に真空ベントを設置した。ニーディングブロックをC3部に組み込んだスクリューアレンジメントを用い、表2に示す(A)液晶性ポリエステル樹脂(A−1)を元込め部(供給口1)から添加し、表2に示す(B)タルクおよび(C)ガラス繊維を中間供給口(供給口2)から投入した。シリンダ温度を液晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定しスクリュー回転数120r.p.mの条件で溶融混練した後、ストランドカッターによりペレットを得た。実施例11と同様の方法で、液晶性ポリエステル樹脂組成物中のタルクの吸油量(a1)、比表面積(a2)、数平均粒子径および45Micronふるい残分を測定した。
【0104】
実施例10〜17および比較例7〜8の組成および評価結果を表2に示す。
【表2】
【0105】
表2からも明らかなように、本発明の実施例10〜17の液晶性ポリエステル樹脂組成物は、比較例7〜8に示した液晶性ポリエステル樹脂組成物に比較して、流動性に優れ、流動性バラツキが小さく、さらに、金属密着性に優れ、リフロー前およびリフロー処理中のそり量が低減され、かつ表面かたさも改善されていることがわかる。
【符号の説明】
【0106】
1 コネクター成形品
2 短尺面
3 隔壁部
G1 ピンゲート
a 基準面(A−B面)
b 最大変形面
Lp 端子間ピッチ
Lt 最小肉厚部
A 長尺方向の両端を結ぶ線
B 短尺方向の両端を結ぶ線
Claims (11)
- (A)液晶性ポリエステル樹脂100重量部および(B)タルク10〜100重量部を少なくとも含有する液晶性ポリエステル樹脂組成物であって、組成物中における(B)タルクの吸油量(a1)ml/100gと空気透過法により測定した比表面積(a2)(m2/g)の比(a1/a2)が14.0〜26.0(ml・g)/(100g・m2)であり、かつ数平均粒子径が10〜30μmであることを特徴とする液晶性ポリエステル樹脂組成物。
- 組成物中における前記(B)タルクの空気透過法により測定した比表面積(a2)が0.9〜1.8m2/gであることを特徴とする請求項1に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
- 組成物中における前記(B)タルクの45Micronふるい残分が組成物中に含まれるタルク全量に対して1.0重量%以下であることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
- さらに(C)ガラス繊維10〜100重量部を含有し、組成物中における(C)ガラス繊維の数平均繊維長が30〜500μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
- 前記(C)ガラス繊維の配合量(g)と前記(B)タルクの配合量(t)の比(g/t)が0.4〜0.6または1.1〜1.3であることを特徴とする請求項4に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
- 少なくとも前記(A)液晶性ポリエステル樹脂および前記(B)タルクを二軸押出機に供給して溶融混練する液晶性ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、押出機駆動側の供給口から樹脂吐出部分の口金までの全長に対して、中央よりも上流側に中間供給口を設置し、前記(B)タルクを前記中間供給口から投入する製造方法で得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
- 少なくとも前記(A)液晶性ポリエステル樹脂および前記(B)タルクを二軸押出機に供給して溶融混練する液晶性ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、押出機駆動側の供給口から樹脂吐出部分の口金までの全長に対して、中央よりも上流側に中間供給口を設置し、前記(B)タルクを前記中間供給口から投入することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
- 成形品が樹脂部と樹脂部に接合する金属部とを有する金属複合成形品であることを特徴とする請求項9記載の成形品。
- 成形品がコネクターもしくはリレーのいずれかであることを特徴とする請求項10記載の成形品。
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