JP5039327B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents

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Description

本発明は、冷媒ガス等の圧縮に用いられるスクロール圧縮機に関する。
従来より、冷媒ガス等のガス流体を圧縮する圧縮機としてスクロール圧縮機が知られている。
このようなスクロール圧縮機においては、旋回スクロール部材に作用するスラスト荷重を支持するため、旋回スクロール部材の摺動面となる端板の外面と摺接するスラストすべり軸受が設けられている。このスラストすべり軸受は、摺動面に固体潤滑剤のコーティング被膜を施したリング状の薄鋼板からなるスラストプレートであり、ハウジング側に形成されたスラスト受け面に固定設置されている。(たとえば、特許文献1参照)
また、構成部材の摺動面の一方または両方に、フッ素樹脂とポリイミド樹脂とを主成分とする樹脂被膜を形成した流体機械が提案されている。すなわち、フッ素樹脂ベースの被膜を形成するために混合する主成分や成分比率を特定することにより、長期間にわたって割れや剥がれを生じない信頼性の高い樹脂被膜の形成が可能とされる。(たとえば、特許文献2参照)
特許第3364016号公報(図1) 特開2005−325842号公報(図2)
ところで、旋回スクロール部材の摺動面を支持するスラストプレート(スラスト滑り軸受)においては、潤滑性の向上等を目的として鋼板にフッ素樹脂(PTFE)等のコーティングを施すと、コーティングの剥離が問題となる。以下では、剥離の問題を図面に基づいて具体的に説明する。
図5において、図中の符号27は旋回スクロール部材であり、低圧側となるフロントハウジング5の内部に配設されている。この旋回スクロール部材27は、端板27Aの背面が摺動面61となり、フロントハウジング5のスラスト受け面5Bに固定設置されたスラストプレート51に支持されて摺動する。
スラストプレート51は、たとえば図6に示すように、リング状とした薄鋼板51aの表面にフッ素樹脂等のコーティング層51bを形成したものである。このコーティング層51bは、摺動する旋回スクロール部材27から繰り返しのスラスト荷重を受けるため、特に両端角部の剥離が懸念される。すなわち、薄鋼板51aの両端角部は、均一で良好なコーティング層51bの形成が困難な部分であり、たとえば図7(a)に示すように、コーティング層51bが付着しにくいために角部で分離したり、あるいは、図7(b)に示すように、分離防止のため付着量を増すなどしてコーティング層51bが盛り上がった状態になりやすい。
このような背景から、スクロール圧縮機においては、スラストプレート51に施されたコーティング層51bの剥離を防止することにより、長期間にわたって所望の潤滑性を維持して信頼性や耐久性を増すことが望まれる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スラストプレートに施されたコーティング層の剥離を防止し、所望の潤滑性を長期間維持することで信頼性や耐久性を増したスクロール圧縮機を提供することにある。
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明のスクロール圧縮機は、表面にコーティングを施したスラストプレートがハウジングのスラスト受け面に固定して取り付けられ、旋回スクロール部材の摺動面が前記スラストプレートに支持されて摺動しながら旋回するスクロール圧縮機において、前記旋回スクロールの摺動範囲を前記スラストプレートの幅より小さく、かつ、スラストプレートの両端部を除いた幅の中央部に設定することにより、前記旋回スクロールの摺動禁止領域を設けたことを特徴とするものである。
このようなスクロール圧縮機によれば、旋回スクロールの摺動範囲をスラストプレートの幅より小さく、かつ、スラストプレートの両端部を除いた幅の中央部に設定することにより、旋回スクロールの摺動禁止領域を設けたので、スラストプレートの端部に作用する摺動圧力を0まで低減することができ、この結果、繰り返し作用する摺動圧力を原因として発生するコーティング層の剥離防止が可能となる。
上記の発明において、前記摺動面の端部と前記スラストプレートとの間に緩やかに変化する隙間が形成されていることが好ましく、これにより、均一で良好なコーティング層の形成が困難なスラストプレートの端部に対し、摺動面からスラストプレートに直接摺動圧力が作用することはなく、スラストプレートの端部に作用する摺動圧力を0まで低減することができる。
本発明のスクロール圧縮機は、表面にコーティングを施したスラストプレートがハウジングのスラスト受け面に固定して取り付けられ、旋回スクロール部材の摺動面が前記スラストプレートに支持されて摺動しながら旋回するスクロール圧縮機において、可動側の前記摺動面から固定側のスラストプレートの端部に作用する摺動圧力を低減する剥離防止手段が設けられ、当該剥離防止手段は、前記スラストプレートの端部に設定された撓み領域であることを特徴とするものである。
このようなスクロール圧縮機によれば、可動側の前記摺動面から固定側のスラストプレートの端部に作用する摺動圧力を低減する剥離防止手段が設けられ、該剥離防止手段は、スラストプレートの端部に設定された撓み領域であるから、均一で良好なコーティング層の形成が困難なスラストプレート端部においては、繰り返し作用する摺動圧力の低減によりコーティング層の剥離が防止される。そして、この場合の剥離防止手段は、スラストプレートの端部に設定された摺動禁止領域であるから、均一で良好なコーティング層の形成が困難なスラストプレート端部に対し、摺動圧力が直接作用することはない。すなわち、この剥離防止手段は、スラストプレート端部に作用する摺動圧力を0まで低減することができる。
上述した本発明によれば、摺動面からスラストプレート端部に作用する摺動圧力を低減できる剥離防止手段を設けたことにより、均一で良好なコーティング層の形成が困難なスラストプレート端部においては、繰り返し作用する摺動圧力の低減が可能になる。このため、旋回スクロール部材の摺動に起因するコーティング層の剥離を防止し、長期間にわたって所望の潤滑性を維持できるようになるので、スクロール圧縮機の信頼性や耐久性が向上するという顕著な効果が得られる。
以下、本発明に係る流体機械の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、冷媒ガス等の圧縮に用いられるスクロール圧縮機1の断面図である。このスクロール圧縮機1は、冷凍ないし空調装置、特に車両用の冷凍装置や空調装置に適用される横型であり、その概略外形を構成して内部の空間に圧縮機構を収納設置するハウジング3を有する。このハウジング3は、低圧側ハウジングのフロントハウジング5と高圧側ハウジングのリアハウジング7とを備え、各々に設けたフランジ部同士がボルト9により一体的に締め付けられた状態で固定される。
フロントハウジング5の内部には、クランク軸11がメイン軸受13およびサブ軸受15を介して軸線L回りに回転自在に支持されている。クランク軸11の一端側(図において左側)は小径軸部11Aとされ、この小径軸部11Aは、フロントハウジング5を貫通して図1の左側に突出されている。小径軸部11Aの突出部には、公知の如く、動力を受ける図示省略の電磁クラッチ、プーリー等が設けられ、図示省略されたエンジン等の駆動源からVベルト等を介して動力が伝達されることとなる。
なお、メイン軸受13とサブ軸受15との間には、メカニカルシール(リップシール)17が設置されており、ハウジング3内と大気との間を気密にシールしている。
クランク軸11の他端側(図において右側)には、大径軸部11Bが設けられ、さらにこの大径軸部11Bには、クランク軸11の軸線Lより所定寸法だけ偏心した状態で偏心ピン11Cが一体に設けられている。この大径軸部11Bおよび上記小径軸部11Aが、それぞれメイン軸受13およびサブ軸受15を介してフロントハウジング5に回転自在に支持される。そして、偏心ピン11Cには、ドライブブッシュ19と、ドライブ軸受21を介して旋回スクロール部材27とが連結され、クランク軸11が回転されることで、旋回スクロール部材27が旋回駆動されるようになっている。
ドライブブッシュ19には、旋回スクロール部材27が旋回駆動されることにより生じるアンバランス荷重を除去するためのバランスウェイト19Aが一体に形成され、旋回スクロール部材27の旋回駆動と共に旋回されるようになっている。
また、ハウジング3の内部には、スクロール圧縮機構23を構成する一対の固定スクロール部材25と旋回スクロール部材27とが組み込まれる。固定スクロール部材25は、端板25Aと該端板25Aから立設された渦巻き状ラップ25Bとから構成され、一方、旋回スクロール部材27は、端板27Aと該端板27Aから立設された渦巻き状ラップ27Bとから構成される。
一対の固定スクロール部材25と旋回スクロール部材27とは、各々の中心を旋回半径分だけ離すとともに、渦巻き状ラップ25B,27B同士が180度位相をずらせて噛み合わせた状態で組み込まれる。これによって、両スクロール部材25,27間には、端板25A,27Aと渦巻き状ラップ25B,27Bとにより限界された一対の圧縮室29がスクロールの中心に対して対称に形成されることとなる。固定スクロール部材25は、リアハウジング7の内面にボルト31により固定設置され、旋回スクロール部材27は、端板27Aの背面に設けられているボス部に、前記したクランク軸11の一端側に設けられている偏心ピン11Cが連結され、旋回駆動されるようになっている。
また、旋回スクロール部材27は、フロントハウジング5に形成されているスラスト受け面5Bにスラストプレート51を固定設置し、このスラストプレート51に対して、端板27Aの背面に設けた凸状の摺動面61が接した状態で支持されている。旋回スクロール部材27は、スラスト受け面5Bのスラストプレート51と旋回スクロール部材27の摺動面61との間に介装されているピンリングやオルダムリング等の自転阻止機構33により、自転が阻止されながら固定スクロール部材25に対して公転旋回駆動されるよう構成される。
スラストプレート51は、図6に示すように、リング状とした薄鋼板51aの表面にフッ素樹脂等のコーティング層51bを形成した部材であり、スクロール圧縮機1の運転時には旋回スクロール部材27の摺動面61から主にガスの圧縮反力による摺動圧力を受ける。
固定スクロール部材25の端板25Aの中央部には、圧縮された冷媒ガスを吐出する吐出ポート25Cが開口されており、該吐出ポート25Cには、端板25Aにリテーナ35を介して取付けられた吐出リード弁37が設けられる。さらに、固定スクロール部材25の端板25Aの背面側には、リアハウジング7の内面に密接されるようOリング等のシール部材39が介装され、リアハウジング7との間でハウジング3の内部空間から区画された吐出チャンバー41を形成している。これにより、吐出チャンバー41を除くハウジング3の内部空間が、吸入チャンバー43として機能するよう構成される。吸入チャンバー43には、フロントハウジング5に設けられている吸入口45を介して冷凍サイクルから戻ってくる冷媒ガスが吸入され、この吸入チャンバー43を経て固定スクロール部材25と旋回スクロール部材27間に形成される圧縮室29に冷媒ガスが吸い込まれるようになっている。
なお、フロントハウジング5とリアハウジング7との間の接合面には、Oリング等のシール材47が介装され、ハウジング3内に形成される吸入チャンバー43を大気から気密にシールしている。
フロントハウジング5には、スクロール圧縮機構23が収納設置される。このフロントハウジング5は、固定スクロール部材25および旋回スクロール部材27を収容する大径の胴部5Aと、この胴部5Aに続く放射状方向に径が縮小された、前記スラスト受け面5Bを形成するためのスラスト受け部5Cと、スラスト受け部5Cに続いてさらに径が縮小された、メイン軸受13を収納する軸受収納部5Dを形成するための中径の軸受支持部5Eと、この軸受支持部5Eに続くサブ軸受15およびメカニカルシール17を設置するための小径ボス部5Fとを備え、段階的に径が縮小された漏斗形状をなすものである。
リアハウジング7は、吐出チャンバー41を形成するための凹部7Aと、フロントハウジング5の胴部5Aの開口端に嵌合されるインロー部7Bとを備えた皿形状をなすものである。インロー部7Bには、上記したシール材47が介装される。このリアハウジング7は、フロントハウジング5の胴部5Aの一端開口を蓋うように接続され、ボルト9によってフロントハウジング5とリアハウジング7のフランジ部同士が一体的に締め付けられた状態で固定される。
以上のように構成されたスクロール圧縮機は、以下のように動作する。
外部駆動源から図示省略のプーリー、電磁クラッチ等を介して回転駆動力をクランク軸11に伝達し、クランク軸11を回転すると、クランク軸11の偏心ピン11Cにドライブブッシュ19およびドライブ軸受21を介して連結されている旋回スクロール部材27が、自転阻止機構33により自転を阻止されながら、固定スクロール部材25に対して公転旋回駆動される。これによって、半径方向最外方に形成される圧縮室29内に、吸入チャンバー43内の冷媒ガスが吸い込まれる。圧縮室29は、所定の旋回角位置で吸入締め切りされた後、その容積が減少されながら中心側へと移動される。この間に冷媒ガスは高圧に圧縮され、圧縮室29が吐出ポート25Cに連通する位置に達すると、吐出リード弁37が押し開かれて圧縮されたガスは吐出チャンバー41内に吐き出され、さらに吐出チャンバー41を経てスクロール圧縮機1外へと吐出される。
上述したように、表面にフッ素樹脂等のコーティングを施してコーティング層51bを形成したスラストプレート51がフロントハウジング5のスラスト受け面5Bに取り付けられ、旋回スクロール部材27の摺動面61がスラストプレート51に支持されて摺動しながら旋回するスクロール圧縮機1には、スラストプレート51の端部51C(スラストプレート端部)に旋回スクロール部材27の端板27Aが繰り返し乗り上げ、さらには旋回スクロール部材27に作用するガスの圧縮反力による摺動圧力を受けることで、コーティング層が剥離することを防止することを目的として、摺動圧力を低減するための剥離防止手段が設けられている。
以下、この剥離防止手段について、図1(b)を参照して第1の実施形態を具体的に説明する。
図示の剥離防止手段は、スラストプレート51の端部51Cに摺動禁止領域を設定したものである。すなわち、スクロール圧縮機1を運転することにより、旋回スクロール部材27は自転を阻止されながら固定スクロール部材25に対して公転旋回駆動し、軸線Lから偏心して旋回することにより、最も外側の摺動面61から最も内側の摺動面61′の範囲を移動する。従って、以下の説明において、摺動面61がスラストプレート51に接して移動する摺動範囲Sは、最も外側に移動した摺動面61の外周面から最も内側に移動した摺動面61′の内周面までとする。
そこで、旋回スクロール端板背面の摺動部について、端板27Aの一部分を接触させるような構造として、摺動範囲Sを、スラストプレート51の幅Wより小さく、かつ、スラストプレート51の両端部を除いた幅Wの中央部に設定することにより、摺動範囲Sの両側に摺動部61が摺動することのない摺動禁止領域を形成できる。
この摺動禁止領域は、摺動部61が全く摺動しない領域であるため、均一で良好なコーティング層51bの形成が困難なスラストプレート51の端部51Cに対し、摺動圧力が直接作用することはない。従って、摺動禁止領域を設けるという剥離防止手段は、スラストプレート51の端部51Cに作用する摺動圧力を0まで低減することができるので、繰り返し作用する摺動圧力を原因として発生するコーティング層51bの剥離防止が可能となる。
上記摺動範囲Sは、旋回スクロール部材27の端板27Aの背面を一部徐肉して構成することで調整可能である。さらに言えば、直接摺動する旋回スクロール部材27の摺動面61については、摺動範囲Sの端部に丸みをもたせておくことが望ましいことは言うまでもない。
次に、上述した剥離防止手段について、第2の実施形態を図2に基づいて説明する。
この剥離防止手段は、スラストプレート51の端部51Cに撓み領域を設定するものである。この撓み領域は、スラストプレート51の両側に設けた片持ち梁状の部分であり、たとえば平坦なスラスト受け面5Bの支持がないため、摺動面61から受ける摺動圧力を撓んで吸収することができる。すなわち、均一で良好なコーティング層51aの形成が困難なスラストプレート51においては、端部51Cの撓み領域に摺動圧力が作用すると、片持ち梁状となるスラストプレート51の端部51Cが撓んで摺動圧力を吸収することができるので、繰り返し作用する摺動圧力を原因として発生するコーティング層51bの剥離防止が可能となる。
ところで、上述した撓み領域は、平坦なスラスト受け面5Bを支持面とするよりも、たとえば図3に示す変形例のように、スラストプレート51との間に形成される隙間が両端部側程大きくなる曲面や傾斜面のように、スラストプレート51との間隔が緩やかに変化するスラスト受け面5B′を支持面とすることが好ましい。すなわち、スラストプレート51の端部51Cとスラスト受け面5B′との隙間が緩やかに変化すると、スラストプレート51の撓みも緩やかになって局部的な応力集中を回避できる。従って、旋回スクロール部材27の旋回運動により繰り返しの摺動圧力を受けて撓みを繰り返すスラストプレート51は、緩やかな形状変化の変形により耐久性が向上する。
最後に、上述した剥離防止手段について、第3の実施形態を図4に基づいて説明する。
この剥離防止手段は、摺動面61の端部に形成した曲面または面取による隙間形成部61aである。すなわち、平坦なスラスト受け面5Bに固定支持されたスラストプレート51に支持されて摺動する摺動面61は、その両端部あるいは、内周および外周のどちらかに曲面または面取を形成することにより、摺動面61の両端部とスラストプレート51との間に緩やかに変化する隙間が形成される。従って、均一で良好なコーティング層51bの形成が困難なスラストプレート51の端部51Cに対し、摺動面61からスラストプレート51に直接摺動圧力が作用することはなく、スラストプレート51の端部51Cに作用する摺動圧力を0まで低減することができる。
また、ここでスラストプレート51の大きさについて言及すれば、スラストプレート51を旋回スクロール旋回軌跡より大きく設定した場合、そもそもスラストプレート外径端部は、旋回スクロール部材27の端板27Aと摺動しないように設定することも可能であるため、プレート外径端部よりコーティング層51bが剥離するという問題には直面しないが、内径端部については本願発明が有効である。ただしその場合、スラストプレート51を無駄に大きくしているため、スクロール圧縮機本体の外径全体が大きくなってしまうというという不利益が生じてしまう。このため、本発明は、旋回スクロール旋回軌跡より小さなスラストプレートを設置する際にはさらに好適であると共に、スクロール圧縮機本体の外径も小さくした上で、信頼性を確保できるという利点を持つ。
ところで、スラストプレート51のコーティング膜厚にはばらつきがあるため、スクロール圧縮機構23のスクロールチップ隙間をシム(不図示)によって微調整する必要があった。具体的には、スクロール圧縮機1の組立工程時、旋回スクロール部材27と固定スクロール部材25との隙間を微調整するため、フロントハウジング5とリアハウジング7との間に、薄板状の寸法調整用のシムを設置して構成していた。
しかし、上述した本発明を採用することにより、コーティング層51bが剥離しにくくなって信頼性を増すため膜厚を薄くすることができる。従って、たとえばスラストプレート51について、下記のように設定すればシムの廃止が可能となる。
すなわち、薄鋼板51aの板厚を0.9mm未満とし、コーティング層51bの膜厚を20μm未満に設定する。この場合に許容される公差は、板厚を0.7mm以上〜0.9mm未満とした薄鋼板51aが±0.005mm、膜厚を20μm未満としたコーティング層51bが±0.003mmであるから、スラストプレート51の薄鋼板51aにコーティング層51bの表面処理を施したまま、シムの廃止が可能となる。換言すれば、スラストプレート51により、スクロールチップ隙間の調整が可能になる。
このように、上述した本発明によれば、摺動面61からスラストプレート51の端部51Cに作用する摺動圧力を低減できる剥離防止手段を設けたことにより、均一で良好なコーティング層51bの形成が困難なスラストプレート51の端部51Cにおいては、繰り返し作用する摺動圧力の低減が可能になる。このため、旋回スクロール部材27の摺動に起因するコーティング層51bの剥離を防止し、長期間にわたって所望の潤滑性を維持できるようになるので、スクロール圧縮機1の信頼性や耐久性が向上するという顕著な効果が得られる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
本発明に係るスクロール圧縮機の一実施形態を示しており、(a)は全体構成例を示す断面図、(b)は剥離防止手段の第1の実施形態を示す要部の拡大断面図である。 剥離防止手段の第2の実施形態を示す要部の拡大断面図である。 図2に示した第2の実施形態の変形例を示す要部の拡大断面図である。 剥離防止手段の第3の実施形態を示す要部の拡大断面図である。 スラストプレート及び摺動部の従来構造を示す要部拡大断面図である。 スラストプレートの構成例を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。 スラストプレート角部のコーティング層に生ずる剥離の問題点を示す図で、(a)は角部におけるコーティング層の分離を示す図、(b)はコーティング層の盛り上がりを示す図である。
1 スクロール圧縮機
3 ハウジング
5 フロントハウジング
5A 胴部
5B,5B′ スラスト受け面
7 リアハウジング
11 クランク軸
23 スクロール圧縮機構
25 固定スクロール部材
27 旋回スクロール部材
51 スラストプレート
51a 薄鋼板
51b コーティング層
51C 端部(スラストプレート端部)
61 摺動面
61a 隙間形成部

Claims (3)

  1. 表面にコーティングを施したスラストプレートがハウジングのスラスト受け面に固定して取り付けられ、旋回スクロール部材の摺動面が前記スラストプレートに支持されて摺動しながら旋回するスクロール圧縮機において、
    前記旋回スクロールの摺動範囲を前記スラストプレートの幅より小さく、かつ、スラストプレートの両端部を除いた幅の中央部に設定することにより、前記旋回スクロールの摺動禁止領域を設けたことを特徴とするスクロール圧縮機。
  2. 前記摺動面の端部と前記スラストプレートとの間に緩やかに変化する隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
  3. 表面にコーティングを施したスラストプレートがハウジングのスラスト受け面に固定して取り付けられ、旋回スクロール部材の摺動面が前記スラストプレートに支持されて摺動しながら旋回するスクロール圧縮機において、
    可動側の前記摺動面から固定側のスラストプレートの端部に作用する摺動圧力を低減する剥離防止手段が設けられ、当該剥離防止手段は、前記スラストプレートの端部に設定された撓み領域であることを特徴とするスクロール圧縮機。
JP2006164678A 2006-06-14 2006-06-14 スクロール圧縮機 Active JP5039327B2 (ja)

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