JP5039327B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Description
このようなスクロール圧縮機においては、旋回スクロール部材に作用するスラスト荷重を支持するため、旋回スクロール部材の摺動面となる端板の外面と摺接するスラストすべり軸受が設けられている。このスラストすべり軸受は、摺動面に固体潤滑剤のコーティング被膜を施したリング状の薄鋼板からなるスラストプレートであり、ハウジング側に形成されたスラスト受け面に固定設置されている。(たとえば、特許文献1参照)
図5において、図中の符号27は旋回スクロール部材であり、低圧側となるフロントハウジング5の内部に配設されている。この旋回スクロール部材27は、端板27Aの背面が摺動面61となり、フロントハウジング5のスラスト受け面5Bに固定設置されたスラストプレート51に支持されて摺動する。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スラストプレートに施されたコーティング層の剥離を防止し、所望の潤滑性を長期間維持することで信頼性や耐久性を増したスクロール圧縮機を提供することにある。
本発明のスクロール圧縮機は、表面にコーティングを施したスラストプレートがハウジングのスラスト受け面に固定して取り付けられ、旋回スクロール部材の摺動面が前記スラストプレートに支持されて摺動しながら旋回するスクロール圧縮機において、前記旋回スクロールの摺動範囲を前記スラストプレートの幅より小さく、かつ、スラストプレートの両端部を除いた幅の中央部に設定することにより、前記旋回スクロールの摺動禁止領域を設けたことを特徴とするものである。
図1は、冷媒ガス等の圧縮に用いられるスクロール圧縮機1の断面図である。このスクロール圧縮機1は、冷凍ないし空調装置、特に車両用の冷凍装置や空調装置に適用される横型であり、その概略外形を構成して内部の空間に圧縮機構を収納設置するハウジング3を有する。このハウジング3は、低圧側ハウジングのフロントハウジング5と高圧側ハウジングのリアハウジング7とを備え、各々に設けたフランジ部同士がボルト9により一体的に締め付けられた状態で固定される。
なお、メイン軸受13とサブ軸受15との間には、メカニカルシール(リップシール)17が設置されており、ハウジング3内と大気との間を気密にシールしている。
また、ハウジング3の内部には、スクロール圧縮機構23を構成する一対の固定スクロール部材25と旋回スクロール部材27とが組み込まれる。固定スクロール部材25は、端板25Aと該端板25Aから立設された渦巻き状ラップ25Bとから構成され、一方、旋回スクロール部材27は、端板27Aと該端板27Aから立設された渦巻き状ラップ27Bとから構成される。
スラストプレート51は、図6に示すように、リング状とした薄鋼板51aの表面にフッ素樹脂等のコーティング層51bを形成した部材であり、スクロール圧縮機1の運転時には旋回スクロール部材27の摺動面61から主にガスの圧縮反力による摺動圧力を受ける。
なお、フロントハウジング5とリアハウジング7との間の接合面には、Oリング等のシール材47が介装され、ハウジング3内に形成される吸入チャンバー43を大気から気密にシールしている。
外部駆動源から図示省略のプーリー、電磁クラッチ等を介して回転駆動力をクランク軸11に伝達し、クランク軸11を回転すると、クランク軸11の偏心ピン11Cにドライブブッシュ19およびドライブ軸受21を介して連結されている旋回スクロール部材27が、自転阻止機構33により自転を阻止されながら、固定スクロール部材25に対して公転旋回駆動される。これによって、半径方向最外方に形成される圧縮室29内に、吸入チャンバー43内の冷媒ガスが吸い込まれる。圧縮室29は、所定の旋回角位置で吸入締め切りされた後、その容積が減少されながら中心側へと移動される。この間に冷媒ガスは高圧に圧縮され、圧縮室29が吐出ポート25Cに連通する位置に達すると、吐出リード弁37が押し開かれて圧縮されたガスは吐出チャンバー41内に吐き出され、さらに吐出チャンバー41を経てスクロール圧縮機1外へと吐出される。
図示の剥離防止手段は、スラストプレート51の端部51Cに摺動禁止領域を設定したものである。すなわち、スクロール圧縮機1を運転することにより、旋回スクロール部材27は自転を阻止されながら固定スクロール部材25に対して公転旋回駆動し、軸線Lから偏心して旋回することにより、最も外側の摺動面61から最も内側の摺動面61′の範囲を移動する。従って、以下の説明において、摺動面61がスラストプレート51に接して移動する摺動範囲Sは、最も外側に移動した摺動面61の外周面から最も内側に移動した摺動面61′の内周面までとする。
この摺動禁止領域は、摺動部61が全く摺動しない領域であるため、均一で良好なコーティング層51bの形成が困難なスラストプレート51の端部51Cに対し、摺動圧力が直接作用することはない。従って、摺動禁止領域を設けるという剥離防止手段は、スラストプレート51の端部51Cに作用する摺動圧力を0まで低減することができるので、繰り返し作用する摺動圧力を原因として発生するコーティング層51bの剥離防止が可能となる。
上記摺動範囲Sは、旋回スクロール部材27の端板27Aの背面を一部徐肉して構成することで調整可能である。さらに言えば、直接摺動する旋回スクロール部材27の摺動面61については、摺動範囲Sの端部に丸みをもたせておくことが望ましいことは言うまでもない。
この剥離防止手段は、スラストプレート51の端部51Cに撓み領域を設定するものである。この撓み領域は、スラストプレート51の両側に設けた片持ち梁状の部分であり、たとえば平坦なスラスト受け面5Bの支持がないため、摺動面61から受ける摺動圧力を撓んで吸収することができる。すなわち、均一で良好なコーティング層51aの形成が困難なスラストプレート51においては、端部51Cの撓み領域に摺動圧力が作用すると、片持ち梁状となるスラストプレート51の端部51Cが撓んで摺動圧力を吸収することができるので、繰り返し作用する摺動圧力を原因として発生するコーティング層51bの剥離防止が可能となる。
この剥離防止手段は、摺動面61の端部に形成した曲面または面取による隙間形成部61aである。すなわち、平坦なスラスト受け面5Bに固定支持されたスラストプレート51に支持されて摺動する摺動面61は、その両端部あるいは、内周および外周のどちらかに曲面または面取を形成することにより、摺動面61の両端部とスラストプレート51との間に緩やかに変化する隙間が形成される。従って、均一で良好なコーティング層51bの形成が困難なスラストプレート51の端部51Cに対し、摺動面61からスラストプレート51に直接摺動圧力が作用することはなく、スラストプレート51の端部51Cに作用する摺動圧力を0まで低減することができる。
しかし、上述した本発明を採用することにより、コーティング層51bが剥離しにくくなって信頼性を増すため膜厚を薄くすることができる。従って、たとえばスラストプレート51について、下記のように設定すればシムの廃止が可能となる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
3 ハウジング
5 フロントハウジング
5A 胴部
5B,5B′ スラスト受け面
7 リアハウジング
11 クランク軸
23 スクロール圧縮機構
25 固定スクロール部材
27 旋回スクロール部材
51 スラストプレート
51a 薄鋼板
51b コーティング層
51C 端部(スラストプレート端部)
61 摺動面
61a 隙間形成部
Claims (3)
- 表面にコーティングを施したスラストプレートがハウジングのスラスト受け面に固定して取り付けられ、旋回スクロール部材の摺動面が前記スラストプレートに支持されて摺動しながら旋回するスクロール圧縮機において、
前記旋回スクロールの摺動範囲を前記スラストプレートの幅より小さく、かつ、スラストプレートの両端部を除いた幅の中央部に設定することにより、前記旋回スクロールの摺動禁止領域を設けたことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 前記摺動面の端部と前記スラストプレートとの間に緩やかに変化する隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
- 表面にコーティングを施したスラストプレートがハウジングのスラスト受け面に固定して取り付けられ、旋回スクロール部材の摺動面が前記スラストプレートに支持されて摺動しながら旋回するスクロール圧縮機において、
可動側の前記摺動面から固定側のスラストプレートの端部に作用する摺動圧力を低減する剥離防止手段が設けられ、当該剥離防止手段は、前記スラストプレートの端部に設定された撓み領域であることを特徴とするスクロール圧縮機。
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