JP5014594B2 - 表面処理鋼材 - Google Patents
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Description
ところが、亜鉛付着量が多くなると、鋼材の加工性や溶接性等の必要特性が劣化する傾向にあり、可能な限り、より低目付量で高耐食性を発揮することが求められている。
また、亜鉛自体が低腐食速度であるのは一般的な中性環境に限られており、環境が酸性またはアルカリ性に偏ると、亜鉛の溶解速度は上昇し、必ずしも防錆効果が十分ではなくなる。
例えば、特許文献1には、耐食性に優れた溶融Zn−Al−Mg系合金めっき鋼材が開示されている。この溶融Zn−Al−Mg系合金めっき鋼材においては、元々の合金成分にMgを含有し、かつ追加して添加して良い元素の選択枝の中に、WやSi、Bが含まれている。また、特許文献2や特許文献3には、合金化溶融亜鉛めっきの上層に、Mg、W、Siを含む選択肢の中から選んだ一種以上の元素を含有するめっき層を設けためっき鋼板が開示されている。
また、特許文献2や特許文献3のめっき鋼板においては、その上層として、Mg、W、Siを含む選択肢の中から選んだ一種以上の元素を含有するめっき層を設けためっき鋼板が開示されているが、それぞれの元素を組み合わせる思想がなく、両者を組み合わせた実施例の開示もない。そのため、上述の元素の単独の添加では、一方の環境では耐食性を示しても、他方の環境では耐食性を示すことができない。
本発明は、こうした知見に基づいてなされたもので、その要旨とするところは、以下のとおりである。
(2)前記酸性水溶液中で難溶性化合物を生成する元素を含有する前記表面処理層が、付着量が3g/m2以上の亜鉛系めっき層であることを特徴とする(1)に記載の表面処理鋼材。
(3)前記アルカリ性水溶液中で難溶性化合物を生成する元素を含有する前記表面処理層が、Caを含有する金属めっき層であることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面処理鋼材。
(4)前記アルカリ性水溶液中で難溶性化合物を生成する元素を含有する前記表面処理層が、Caを含有する、有機化合物からなる被覆層であることを特徴とする(1)〜(3)の何れか一項に記載の表面処理鋼材。
(5)鋼板上の皮膜の全ての厚みの合計が10μm以下であることを特徴とする(1)〜(4)の何れか一項に記載の表面処理鋼材。
(6)前記表面処理層と前記被覆層の金属中の亜鉛含有量と、前記基材中の亜鉛含有量との合計が50g/m2以下であることを特徴とする(5)の何れか一項に記載の表面処理鋼材。
発明者らは、亜鉛めっき鋼材の腐食に対する種々の元素の添加効果を詳細に検討し、特に複数の元素の添加効果において、著しい効果を見出した。つまり、酸性環境で難溶性の化合物を生成する元素と、アルカリ性環境で難溶性の化合物を生成する元素とを複合して亜鉛を主とするめっきに添加することで、種々の環境において、また、環境が経時的に著しく変化するような条件においても、耐食性が向上することを見出した。
ここで、亜鉛を主とするめっきとは、亜鉛を質量%で60%(以下、指示のない限り質量%を表す)以上含有する金属めっきであり、合金元素としてCr、Mn、Fe、Co、Ni等の遷移金属を含んでいてもよい。
尚、生成される難溶性化合物としては、これらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物などの化合物が挙げられる。本願発明では後述する理由により、酸性環境で難溶性の化合物を生成する元素としてWを含有する。
薄目付けで高耐食性を実現するという観点から、亜鉛系めっき層の付着量は少ない方がよいが、厳しい腐食環境で十分な耐食性を得るためには、酸性環境で難溶性の化合物を生成する元素を含有する亜鉛系めっき層の付着量は3g/m2以上であることが望ましい。
さらに、電気めっきによってZnめっき中へ容易に導入できる点から、Wが好ましい。この場合、電気Zn−Wめっきとして用いてもよいし、遷移金属とともに用いて、例えば、Zn−Ni−W、Zn−Co−W等とするとよい。
尚、生成される難溶性化合物としては、これらの元素の酸化物、水酸化物、窒化物などの化合物が挙げられる。
尚、亜鉛自体が、酸性環境よりもアルカリ性環境には強いため、酸性環境で難溶性の化合物を形成する元素に比較して、少量の添加でも十分に効果がある。
尚、下層は、亜鉛を主とした金属めっき層とすることが望ましい。また、アルカリ性環境で難溶性化合物を生成する元素を含有する層として、りん酸塩皮膜や有機被膜を用いる場合には、これらを上層として用いることが望ましい。
尚、コロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製の「ST−NS」を用い、Ca吸着シリカとしては、GRACE−Davison社製のシールデックスAC−3を使用した。
尚、表1および表2中のめっき種類欄における元素名の前に記載されている数字は、その元素の質量割合を示し、残部はZnの質量割合を示す。例えば、Zn−3Ta−5Hfは、Taが3質量%、Hfが5質量%、Znが残部(92質量%)であることを示す。
赤錆発生面積が0〜0.1%のものを非常に良好:◎、0.1%〜2%を良好:○、2%〜5%を軽度の腐食:△、5%以上を重度の腐食:×で表した。
尚、pHを調整した塩水を用いて塩水噴霧を行う場合は、強酸性腐食試験においては塩酸によりpHを1.5に調整し、強アルカリ性腐食試験においては水酸化ナトリウムにより12.5に調整して、試験を実施した。
めっき層の加工性は、めっき試験片のめっき層を外側にして、半径が試験片板厚の5倍の90度曲げを実施し、そのコーナー部の外側のめっき層の割れによる剥離の有無で評価した。加工後もめっき層の剥離の見られなかったものは○、加工後にめっき層の剥離が見られたものを△とした。
評価結果を表4に示す。
また、上述のような基材、表面処理層としての下層めっきおよび上層めっき、被覆層としての有機皮膜を用いて、表3に記載のとおり表面処理鋼材を作成し、比較例とした。実施例と同様に、腐食試験および溶接性試験を行った。評価結果を表4に示す。
Claims (6)
- 鋼材あるいは亜鉛系めっき鋼材からなる基材と、該基材の表面に、酸性水溶液中で難溶性化合物を生成する元素としてWを2質量%超、10質量%以下と亜鉛とを含有する金属層である表面処理層と、アルカリ性水溶液中で難溶性化合物を生成するCa、Sr、Ba、Sc、Y、Hf、ランタノイド元素、アクチノイド元素の中から選択される1種以上の元素を合計で0.02g/m 2 以上含有する表面処理層と、を有することを特徴とする表面処理鋼材。
- 前記酸性水溶液中で難溶性化合物を生成する元素を含有する前記表面処理層が、付着量が3g/m2以上の亜鉛系めっき層であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理鋼材。
- 前記アルカリ性水溶液中で難溶性化合物を生成する元素を含有する前記表面処理層が、Caを含有する金属めっき層であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面処理鋼材。
- 前記アルカリ性水溶液中で難溶性化合物を生成する元素を含有する前記表面処理層が、Caを含有する、有機化合物からなる被覆層であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の表面処理鋼材。
- 鋼板上の皮膜の全ての厚みの合計が10μm以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の表面処理鋼材。
- 前記表面処理層と前記被覆層の金属中の亜鉛含有量と、前記基材中の亜鉛含有量との合計が50g/m2以下であることを特徴とする請求項5に記載の表面処理鋼材。
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