JP2000328258A - 高耐食性表面処理鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高耐食性表面処理鋼板およびその製造方法

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JP2000328258A
JP2000328258A JP11131862A JP13186299A JP2000328258A JP 2000328258 A JP2000328258 A JP 2000328258A JP 11131862 A JP11131862 A JP 11131862A JP 13186299 A JP13186299 A JP 13186299A JP 2000328258 A JP2000328258 A JP 2000328258A
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steel sheet
zinc
coating
crystalline
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JP11131862A
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Shigeru Wakano
茂 若野
Yukihiro Yoshikawa
幸宏 吉川
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】無塗装耐食性、塗装後耐食性、加工性および溶
接性の全てを満足し、皮膜中に有害な6価Crを含有し
ない表面処理鋼板を提供する。 【解決手段】少なくとも一方の表面に亜鉛含有めっき層
を有する母材鋼板のめっき層面に結晶質で2結晶水のリ
ン酸亜鉛複合化成皮膜を有し、さらにその上に非晶質の
リン酸系複合皮膜を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、家電製品、建材お
よび自動車と広い分野で用いられる高耐食性表面処理鋼
板とその製造方法に関し、さらに詳しくは、特に耐食
性、加工性および溶接性に優れ、表面処理皮膜中に6価
Crを含有せず、環境汚染の問題のない表面処理鋼板に
関する。本発明の表面処理鋼板は、特に自動車の車体用
として好適である。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車車体の高耐食性化のため、
各種の表面処理鋼板が開発され、それらの適用部位も増
加している。特に、ドアやボンネットなどの袋構造部や
曲げ加工部では、成形後行われる化成処理、電着塗装が
十分に行き渡りにくいので、無塗装状態での耐食性能が
要求される。このような、部位の防錆性向上のため、有
機複合被覆鋼板または複装鋼板と称される表面処理鋼板
が広く使用されている。この鋼板は、主として、Zn-13%
Niを代表とするZn-10〜16%Ni系の電気めっき鋼板の少な
くともめっき面にクロメート処理皮膜を施し、更にその
上層に有機樹脂薄膜を設けたのもので、無塗装状態での
耐食性が優れているのが特徴である。
【0003】有機複合被覆鋼板はその耐食性向上のた
め、クロメート皮膜を有している。この皮膜の形成法は
大別すると、塗布型、反応型および電解型に分類され
る。高耐食性を発現させるためには、皮膜中に6価クロ
ムを含有させることが有効であることが知られており、
塗布型および反応型の皮膜は3価と6価のクロムの両方
を含むものである。
【0004】有機複合被覆鋼板は、純亜鉛めっきより電
位的に貴なZn-Ni合金めっき層を有し、無塗装状態での
耐食性を2層の上層皮膜によりさらに向上させたもので
ある。すなわち、クロメート皮膜は3価クロムのつくる
緻密な皮膜としてのバリアー効果と、6価クロムの持つ
自己修復性と呼ばれる腐食環境中でのインヒビター効果
により、めっき鋼板の耐食性を向上させる。また、最上
層の有機樹脂皮膜は、クロメート皮膜中に含まれる6価
クロムの溶出を抑制し、クロメート皮膜の防食能を持続
させる。さらに、有機皮膜中に含まれるシリカ微粒子の
環境遮断効果と亜鉛腐食生成物の安定化効果が耐食性能
を向上させているものと考えられる。
【0005】このような防食機構を有する有機複合被覆
鋼板と同様の耐食性を発現させるためには、当然、めっ
き鋼板の上層に形成される皮膜の開発がポイントとな
る。しかし、クロメート皮膜と同様の厚み、すなわち、
0.1μm以下程度の薄膜で同様の耐食性を示す皮膜は
実用的なものとしては、有機系あるいは無機系を問わず
未だ開発されていない。
【0006】しかしながら、最近、環境汚染の防止とい
う観点から、有毒物質である6価クロムの使用を控えよ
うとする動きがあり、各種の代替手段の開発が行われて
いる。
【0007】例えば、特開平9−49086号公報に
は、特定量のマグネシウムイオンとニッケルイオン等を
含有するリン酸塩液で化成処理した高白色で良好な塗装
性を有する電気亜鉛めっき鋼板が開示されている。しか
し、自動車用表面処理鋼板としては耐食性がまだ不十分
である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、クロメート
皮膜を使用することなく、従来のクロメート皮膜を持つ
有機複合被覆鋼板と同等、あるいは、それ以上の耐食性
を有し、かつ、自動車車体用鋼板に要求される加工性、
溶接性、塗装性等の性能を満足する表面処理鋼板および
その製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記の
(1)、(2)および(3)である。
【0010】(1)少なくとも一方の表面に亜鉛含有め
っき層を有する母材鋼板のめっき層表面に結晶質で2結
晶水のリン酸亜鉛複合化成皮膜を有し、さらにその上に
非晶質のリン酸系複合皮膜を有することを特徴とする高
耐食性表面処理鋼板。
【0011】(2)亜鉛含有めっき層の付着量が2g/
2以上80g/m2以下、結晶質で2結晶水のリン酸亜
鉛複合化成皮膜の付着量が0.3g/m2以上3g/m2
以下、非晶質のリン酸系複合皮膜の付着量が0.1g/
2以上2g/m2以下であり、上記結晶質で2結晶水の
リン酸亜鉛複合化成処理皮膜の付着量と非晶質のリン酸
系複合皮膜の付着量との合計が0.5g/m2以上4g
/m2以下であることを特徴とする上記(1)の高耐食
性表面処理鋼板。
【0012】(3)少なくとも一方の表面に亜鉛含有め
っき層を有する母材鋼板のめっき層表面に結晶質で2結
晶水のリン酸亜鉛複合化成皮膜を有し、さらにその上に
非晶質のリン酸系複合皮膜を有することを特徴とする高
耐食性表面処理鋼板の製造方法であって、亜鉛含有めっ
き層の上に4結晶水の結晶質リン酸亜鉛複合化成処理被
膜を形成した後、120℃以上250℃以下で熱処理を
おこない2結晶水のリン酸亜鉛複合化成皮膜を生成させ
ることを特徴とする高耐食性表面処理鋼板の製造方法。
【0013】「少なくとも一方の表面に亜鉛含有めっき
層を有する母材鋼板」とは、母材鋼板の片面あるいは両
面に亜鉛含有めっき層を有する鋼板を言う。その亜鉛含
有めっき層の上には結晶質で2結晶水のリン酸亜鉛複合
化成皮膜および非晶質のリン酸系複合皮膜がある。但
し、これらの皮膜は亜鉛含有めっき層の無い面に施され
ていても差し支えない。
【0014】すなわち、本発明者らは亜鉛めっき鋼板に
広く用いられているリン酸塩系の化成処理皮膜に、さら
に特定の上層皮膜を設けるという手法によって有機複合
被覆鋼板と同等以上の耐食性を発現させ、かつ、その他
の加工性および溶接性等の性能を損なわない方法を開発
した。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明鋼板の少なくとも一方の表
面上には亜鉛含有めっき層が設けられている。ここで、
亜鉛含有めっきには純亜鉛めっきのほか、Zn-Ni,Zn-Co,
Zn-Fe,Zn-Al等の2元系合金めっきや、Zn-Co-Cr等の3
元系合金めっき、さらにはZn-SiO2等の複合分散めっき
が含まれる。また、めっき層が複層化されているもので
もよい。例えば、鉄フラッシュとして合金化溶融亜鉛め
っきによく適用されているように、Zn-Fe合金めっき鋼
板の上層にさらにFe-ZnめっきやFe-Pめっきを施したも
のや、同じく、亜鉛含有合金めっき鋼板の上層にさらに
組成の異なる亜鉛含有合金めっきを施したものであって
もよい。このような場合でも、これらのめっき層をまと
めて、亜鉛含有めっき層と称することにする。
【0016】このめっき種の選定は、当然本発明の表面
処理鋼板の性能に大きな影響をあたえるものである。自
動車車体用鋼板としての経済性を加味したトータルバラ
ンスからは、純亜鉛めっき鋼板またはZn-13%Ni合金めっ
き鋼板などが最も好ましい。
【0017】本発明において、亜鉛含有めっき層の付着
量は2g/m2以上80g/m2以下であることが望まし
い。付着量が2g/m2未満であると、複層めっきの場
合に上層に有効な皮膜を有しても、十分な耐食性が得ら
れないことがある。また、耐食性の良好さのみを追求す
るのであれば、当然めっき付着量が多いほど性能は良好
であるので、付着量の上限の設定は不要である。しか
し、本発明の目的とする、加工性、溶接性等の他の性能
発現の観点から上限の付着量は80g/m2以下である
のが望ましい。この上限を超えた場合には、加工性、溶
接性が実用上問題となる。
【0018】このめっき鋼板の製造方法は特に限定され
るものではなく、常法である電気めっき法、溶融めっき
法、蒸着めっき法などを適宜用いることができる。
【0019】本発明において、この亜鉛含有めっき皮膜
の上には、まず結晶質で2結晶水のリン酸亜鉛系化成処
理皮膜を設ける。この結晶質化成処理皮膜とは、広く、
自動車または家電産業において塗装前処理として行われ
ている、いわゆる化成処理によって生成する4結晶水皮
膜を加熱して2結晶水にした皮膜である。
【0020】処理法はまず、めっき鋼板をアルカリ脱
脂、水洗した後、チタンコロイドを含有する前調整液に
浸漬する。その後、亜鉛イオンとリン酸イオンを含有
し、必要に応じて促進剤や他の亜鉛以外の金属イオン
(鉄イオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、コバル
トイオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオン
等)を含有する処理液を鋼板にスプレー法または浸漬法
により接触させ、亜鉛めっき表面にホパイトなどのリン
酸亜鉛複合結晶を生成させる。反応終了後水洗、乾燥を
行う。
【0021】本発明の第1の特徴は、この乾燥工程で、
通常生成するリン酸亜鉛複合化成皮膜の4結晶水を効率
的に脱水させることにより、2結晶水の皮膜とすること
である。乾燥前のリン酸亜鉛化成皮膜は化学構造式Zn
3(PO4)2・4H2Oで示され、4結晶水を有しており120℃
付近に加熱すると2個の結晶水の脱水反応を起こす。ま
た、Feイオンを含むZn2Fe(PO4)2・4H2Oは160℃付近
で2個の結晶水が脱水反応を起こす。上記鉄以外にカル
シウム、ニッケル、マンガン等も鉄イオン同様に脱水温
度を高温側にシフトさせる。従って、乾燥温度は少なく
とも120℃以上が望ましい。上限は、リン酸亜鉛複合
皮膜の性能が劣化しない温度まで許されるが、エネルギ
ーコストから250℃以下が望ましい。乾燥は熱風炉や
誘導加熱炉等の通常の方法でよい。
【0022】あらかじめ、2結晶水に脱水させることに
より、自動車等の塗装工程で塗膜の焼き付け時に、脱水
温度以上に加熱されて起こる脱水で、上層の非晶質皮膜
が破壊し耐食性が低下するのを防止出来る。
【0023】本発明では、使用するリン酸塩種およびそ
の生成方法に限定はないが、結晶質の皮膜であることが
必要である。ここで、結晶質とは数千倍程度の電子顕微
鏡像で結晶が確認できるもの、または、通常のX線回折
法によって結晶ピークが検出できるものをいう。通常、
この化成結晶の大きさは1〜10μm程度である。
【0024】この結晶質化成処理皮膜は結晶質のもので
あるから、亜鉛含有めっき層の表面を完全に覆い尽くし
ているわけではない。この皮膜の欠陥部が腐食の起点と
なり、腐食が起こり易いので、耐食性向上の観点からは
何らかの方法で被覆する必要がある。
【0025】本発明の第2の特徴は、この皮膜の欠陥部
を補修するために、皮膜の最上層として非晶質のリン酸
系複合皮膜の層、いわゆる封孔(シーリング)層を設け
ることにある。この皮膜は結晶質化成皮膜層の欠陥を埋
め、または、その上層に欠陥部のない緻密な皮膜を形成
することにより耐食性を向上させる。この皮膜の厚さ
は、0.1〜数μm程度とするのがよく、非晶質である
必要がある。ここで非晶質とは数千倍程度の電子顕微鏡
像によって結晶が確認できないか、または視斜角X線回
折によっても独立した結晶ピークが確認できないものを
いう。
【0026】この非晶質の皮膜はリン酸またはリン酸塩
の塗布後、乾燥によって形成できる。また、例えば、リ
ン酸水溶液を塗布後、乾燥した場合、下層の結晶質化成
処理皮膜層の最表層の溶解と同時に非晶質のリン酸化合
物が生成する。この皮膜の化学組成の特定は条件により
変化するので困難であるが、化学量論的なものではな
く、下地めっきから供給される亜鉛やリン酸塩のカチオ
ンを含有するリン酸塩化合物であると推定される。リン
酸以外にリン酸水素マグネシウム、リン酸水素マンガ
ン、リン酸水素カルシウム、リン酸水素バリウムなどの
酸性水溶液の塗布乾燥によっても同様の非晶質の皮膜が
形成できるが、これらの場合には当然、皮膜中にはリン
酸、亜鉛以外にマグネシウム、マンガン、カルシウム、
バリウム等が含有される。
【0027】また、リン酸やリン酸塩水溶液にさらに、
金属亜鉛や酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウ
ム、酸化バリウムなどを添加してpHを調整してから塗
布しても良い。特に高濃度のリン酸水溶液を使用する
と、pHが低いので、下層の結晶質リン酸塩皮膜を著し
く溶解してしまい、結晶の形態が変化する場合がある。
このような場合には、pHを3程度まで上昇させたリン
酸またはリン酸塩水溶液を塗布後、乾燥をおこなうとよ
い。
【0028】リン酸またはリン酸塩水溶液の塗布法は、
スプレー法やロールコート法など常法が使用でき、乾燥
は熱風炉などで行える。乾燥温度は水分が除去される温
度として60℃以上100℃以下が望ましい。
【0029】上述の下層の結晶質リン酸亜鉛系化成処理
皮膜層の付着量は0.3g/m2以上3g/m2以下とす
るのがよい。また、その上層の欠陥部または化成処理皮
膜の上に形成される非晶質の皮膜は付着量0.1g/m
2以上2g/m2以下とするのがよい。さらに、下層の化
成処理皮膜の付着量と上層の非晶質リン酸系皮膜の付着
量は合計で0.5g/m2以上4g/m2以下とするのが
よい。
【0030】このように、付着量が上記の範囲であるこ
とが望ましい理由は以下の通りである。まず、下層の化
成処理は結晶質のものであるから、その付着量が0.3
g/m2未満であると、めっき鋼板上にまばらに結晶が
付着しているという状況になりやすく、十分な耐食性向
上、塗膜密着性向上への寄与が得られないことがある。
また、結晶質皮膜は厚ければよいというものではなく、
この付着量が3g/m2を超えると加工性および溶接性
共に劣化しやすく、自動車車体用鋼板としての実用に適
しないことがある。
【0031】また、上層の皮膜は下層の結晶質皮膜のシ
ーリング(封孔)となるものであるから、その付着量が
0.1g/m2未満であると欠陥部を覆い耐食性を向上
させる効果は発現しにくい。この皮膜の付着量が2g/
2を超えた場合、塗料との密着性や溶接性が劣化す
る。
【0032】下層の化成処理皮膜の付着量と上層の非晶
質リン酸系皮膜の付着量の合計が0.5g/m2以上4g/
2以下であることが望ましい。これは、耐食性、加工
性、溶接性等の性能は、上層、下層の個別の付着量の規
定だけでは、目的とする性能を得られない場合があるか
らであり、耐食性、加工性、溶接性等の性能には上層皮
膜と下層皮膜とを一体として評価した方がよいからであ
る。上層と下層の付着量が0.5g/m2未満であると、耐
食性が不十分な場合があり、また合計の付着量が4g/
2を超えると特に溶接性に劣ることがある。
【0033】上述のめっきとそれに続く化成処理を1つ
のラインの中で連続的に行うことを限定するものではな
く、各々別ラインで行うことも可能である。経済性から
は1つのラインでの処理が好ましい。
【0034】
【実施例】(実施例1) (1)母材 板厚0.8mmの極低炭素冷延鋼板を母材とした合金化溶融
亜鉛めっき鋼板(GA)と溶融亜鉛めっき鋼板を皮膜の
処理母材とした。片面のめっき付着量は各々45と60
g/m2で、両面に等量だけめっきしたものを用いた。
【0035】(2)下層の皮膜処理(化成処理) 下記の処理工程で下層の結晶質リン酸塩系化成処理皮膜
を形成した。
【0036】1)めっき鋼板を市販のアルカリ脱脂液
(日本パーカライジング社製のファインクリーナー43
36)を用いてスプレー脱脂した。
【0037】2)スプレー水洗にて残アルカリ分を除去
した。
【0038】3)チタンコロイド系活性処理剤(日本パ
ーカライジング社製のプレパレンZN)を用いてスプレ
ーによる表面調整処理を行った。
【0039】4)リン酸亜鉛化成処理液(日本パーカラ
イジング社製・パルボンド100)を用いてスプレー処
理にて化成皮膜を形成した後、水洗・乾燥を行った。乾
燥は100℃と200℃の2種類で行った。皮膜付着量
はクロム酸アンモニウム水溶液を用いて、化成皮膜のみ
を溶解除去した前後の重量差により求めた。
【0040】なお、比較材として、下層の皮膜処理を施
さないものも用意した(表1のNo.19)。
【0041】(3)上層の皮膜処理 上層皮膜は以下の方法で表1のように形成した。
【0042】処理液A:リン酸水溶液 処理液B:リン酸水溶液+酸化亜鉛 処理液はいずれもリン酸濃度は5wt%とし、それぞれ表
1に示したpHになるように酸化亜鉛等の添加量を調整
した。処理液の塗布はバーコーターで行い、塗布直後に
水洗することなく、設定温度150℃の電気オーブンに
て鋼板の温度が100℃になるように乾燥をおこなっ
た。各上層皮膜の付着量はクロム酸にて上層皮膜と下層
皮膜を同時に除去した後に重量測定を行い、上述の通り
にもとめた下層皮膜の付着量を差し引いて、上層皮膜の
付着量とした。
【0043】比較材として、上層皮膜を結晶質にした縮
合リン酸を含有するリン酸亜鉛処理(以下、縮合リン酸
亜鉛処理と称す)を行ったものも作製した(表1のN
o.20,21)。その処理液の浴組成(g/リット
ル)は次の通りである。
【0044】ピロリン酸:1,Zn:1,PO4:1
6,Ni:0.3,NO2:0.06,NO3:4 さらに別の比較材として、上層皮膜処理を施さないもの
も作製した(表1のNo.22)。
【0045】(4)試験方法 1)無塗装耐食性試験 試験片には予め通常の電着塗装の塗膜焼き付けに相当す
る170℃で20分加熱を施した。腐食試験は5%塩水
噴霧、乾燥、湿潤試験(湿潤雰囲気中保持)の3ステッ
プから構成される複合腐食試験(1サイクル:24時
間、ウェット率:85%)を使用して、無塗装平板の3
0サイクル終了後の板厚減少量で耐食性を下記の基準で
評価した。錆をクエン酸水溶液で除去後、最大腐食深さ
をポイントマイクロメーターで測定した。ここでウエッ
ト率とは、下記の式で表される、上記1サイクルの時間
に対する塩水噴霧と湿潤試験の合計時間の割合を言う。
【0046】ウエット率:(%){(塩水噴霧時間+湿潤試験時
間)/1サイクル合計時間}×100 ◎:最大腐食深さ 0.1mm未満 (合格) ○:最大腐食深さ 0.1mm〜0.2mm (合格) △:最大腐食深さ 0.2mm超え〜0.4mm (合格) ×:最大腐食深さ 0.4mm超え (不合格) 2)加工性 円筒絞り試験機を用いて防錆油塗布の状態で以下の条件
でカップ成形を行い、外面壁部のパウダリング量をテー
プ剥離した前後の重量測定によって測定した。
【0047】パンチ直径:50mm、肩R:5mm、ダイス
直径:52.4mm、肩R:5mm、ブランク直経:90mm、絞
り比:1.8 ○:パウダリング量 15mg未満 (合格) △:パウダリング量 15mg〜20mg (合格) ×:パウダリング量 20mg超え (不合格) (実施例2) (1)母材 板厚0.7mmの極低炭素系40キロ級高張力冷延鋼板を母
材とした純亜鉛電気めっき鋼板(EG)を皮膜の処理母
材とした。片面のめっき付着量は1,2,5,10,2
0,30,40,60,90g/m2ですべて両面めっ
きしたものを用いた。
【0048】(2)下層の皮膜処理(化成処理) 下記の処理工程で下層の結晶質リン酸塩系化成処理皮膜
を形成した。
【0049】1)めっき鋼板を市販のアルカリ脱脂液
(日本パーカライジング社製のファインクリーナー43
36)を用いてスプレー脱脂した。
【0050】2)スプレー水洗にて残アルカリ分を除去
した。
【0051】3)チタンコロイド系活性処理剤(日本パ
ーカライジング社製のプレパレンZN)を用いてスプレ
ーによる表面調整処理を行った。
【0052】4)リン酸亜鉛化成処理液(日本パーカラ
イジング社製・パルボンドL3020)を用いて浸漬処
理にて化成皮膜を形成した後、水洗し、乾燥を行った。
乾燥はすべて100℃で行った。皮膜付着量は実施例1
と同様にして求めた。
【0053】なお、比較材として、下層の皮膜処理を施
さないものも用意した(表2のNo.32)。
【0054】(3)上層の皮膜処理 上層皮膜は実施例1と同様に処理液A,Bを用いて表2
のように形成した。
【0055】比較材として、上層皮膜を結晶質にした縮
合リン酸を含有するリン酸亜鉛処理(以下、縮合リン酸
亜鉛処理と称す)を行ったものも作製した(表2のN
o.33)。その処理液の浴組成(g/リットル)は次
の通りである。
【0056】ピロリン酸:1,Zn:1,PO4:1
6,Ni:0.3,NO2:0.06,NO3:4 さらに別の比較材として、上層皮膜処理を施さないもの
も作製した(表2のNo.34)。
【0057】(4)試験方法 1)無塗装耐食性試験 試験片には予め通常の電着塗装の塗膜焼き付けに相当す
る170℃で20分加熱を施した。5%塩水噴霧、乾
燥、湿潤試験(湿潤雰囲気中保持)の3ステップから構
成される複合腐食試験(1サイクル:24時間、ウェッ
ト率:85%)を使用して、無塗装の平板状態での耐食
性を、5サイクル終了後の目視による白錆発生面積率で
下記の基準で評価した。。
【0058】 ◎:白錆発生面積率 0〜25 (合格) ○:白錆発生面積率 25〜50 (合格) △:白錆発生面積率 50〜75 (合格) ×:白錆発生面積率 75〜100 (不合格) 2)溶接性 以下の条件でスポット溶接における連続打点性を調査し
た。終点はナゲット径が4t1/2(t=鋼板厚み)より
小さくなるまでの打点数で評価した。
【0059】電極:ドーム型電極、加圧力:2450
N、通電サイクル:12、打点電流:チリ発生電流に設
定 ○:3000打点以上 (合格) △:3000〜2000打点未満 (合格) ×:2000打点未満 (不合格) (実施例3) (1)母材 板厚0.7mmの低炭素冷延鋼板を母材とした純亜鉛電気め
っき鋼板(EG)を皮膜の処理母材とした。片面のめっ
き付着量は30g/m2で両面めっきしたものを用い
た。
【0060】(2)下層の皮膜処理(化成処理) 下記の処理工程で下層の結晶質リン酸塩系化成処理皮膜
を形成した。
【0061】1)めっき鋼板を市販のアルカリ脱脂液
(日本パーカライジング社製のファインクリーナー43
36)を用いてスプレー脱脂した。
【0062】2)スプレー水洗にて残アルカリ分を除去
した。
【0063】3)チタンコロイド系活性処理剤(日本パ
ーカライジング社製のプレパレンZN)を用いてスプレ
ーによる表面調整処理を行った。
【0064】4)リン酸亜鉛化成処理液(日本パーカラ
イジング社製のパルボンドL3020)を用いてスプレ
ー処理にて化成皮膜を形成した後、水洗し、乾燥を行っ
た。乾燥は100℃で行った。
【0065】皮膜付着量は実施例1と同様にして求め
た。
【0066】なお、比較材として、下層の皮膜処理を施
さないものも用意した(表3のNo.53)。
【0067】(3)上層の皮膜処理 上層皮膜は実施例1の処理液A,Bに加えて以下の方法
で形成した。
【0068】処理液C:リン酸水溶液+酸化マグネシウ
ム 処理液D:リン酸水溶液+アンモニア水 処理液E:リン酸水素マグネシウム水溶液 処理液F:部分還元クロメート処理液(日本パーカライ
ジング社製ZM1415A) 処理液A〜Eのリン酸濃度は5wt%とし、それぞれ表3に
示したpHになるように酸化亜鉛等の添加量を調整し
た。処理液の塗布はバーコーターで行い、塗布直後に水
洗することなく、設定温度150℃の電気オーブンにて
鋼板の温度が100℃になるように乾燥をおこなった。
各上層皮膜の付着量はクロム酸にて上層皮膜と下層皮膜
を同時に除去した後に重量測定を行い、上述の通りにも
とめた下層皮膜の付着量を差し引いて、上層皮膜の付着
量とした。
【0069】比較材として、上層皮膜を結晶質にした縮
合リン酸を含有するリン酸亜鉛処理(以下、縮合リン酸
亜鉛処理と称す)を行ったものも作製した(表3のN
o.54)。その処理液の浴組成(g/リットル)は次
の通りである。
【0070】ピロリン酸:1,Zn:1,PO4:1
6,Ni:0.3,NO2:0.06,NO3:4 また、別の比較材として、Zn-12%Ni合金めっき鋼板(片
面のめっき付着量20g/m2、両面めっき材)の片面
(耐食性評価面)に塗布型クロメート処理(Cr付着量:5
0mg/m2)を施し、さらに上層にシリカ微粒子を含有
するエポキシ樹脂皮膜を膜厚1μmとなるように設けた
有機複合被覆鋼板を使用した(表3のNo.56)。
【0071】(4)試験方法 1)無塗装耐食性試験 試験片には予め通常の電着塗装の塗膜焼き付けに相当す
る170℃で20分加熱を施した。試験法と評価基準は
実施例1と同様にして行った。
【0072】2)塗装後耐食性 5%塩水噴霧、乾燥、湿潤試験から構成される複合腐食
試験(1サイクル:8時間、ウェット率:25%))を
使用して塗装後の疵部耐食性を評価した。
【0073】塗装は供試材にリン酸亜鉛化成処理(前述
の下層リン酸亜鉛処理と同じ処理、無処理の電気亜鉛め
っき鋼板で付着量が2g/m2となる条件)を施した
後、自動車外板用の3コート塗装を施した。すなわち、
電着塗装、中塗りスプレー塗装および上塗りスプレー塗
装である。電着塗装は厚み20μmで焼き付け温度17
5℃、中塗り塗装は厚み30μmで焼き付け温度140
℃、上塗り塗装は厚み40μmで焼き付け温度140℃
とした。この塗膜にカッターナイフを用いて鋼板母材に
達するカット疵を入れた後、腐食試験に供した。評価は
270サイクル後の最大塗膜膨れ幅を用いて下記の基準
で評価した。
【0074】 ○:膨れ幅 2mm未満 (極めて良好:合格) △:膨れ幅 2mm〜3mm (良好:合格) ×:膨れ幅 3mm超え (不良:不合格) 3)加工性 実施例1と同様に行った。
【0075】4)溶接性 実施例1と同様に行った。
【0076】実施例1,2,3のの試験結果をまとめて
表1、表2および表3に示す。
【0077】本発明条件を満足する発明例は、無塗装耐
食性、塗装後耐食性、加工性および溶接性の特性が良好
で、クロメート処理した比較例No.55に劣らない。
しかし、No.55は皮膜中に6価Crを含むので、総
合評価は×とした。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【発明の効果】本発明鋼板は、無塗装耐食性、塗装後耐
食性、加工性および溶接性の全てを満足すると共に、皮
膜中に環境汚染に有害な6価Crを含有しないので、家
電、建材、自動車車体用の表面処理鋼板として最適なも
のである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K026 AA02 AA11 AA12 AA13 BA03 BA04 BA12 BB08 CA23 CA26 DA02 DA06 DA09 4K044 AA02 AB02 BA10 BA17 BB03 BB17 BC02 CA04 CA11 CA13 CA16 CA18

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも一方の表面に亜鉛含有めっき層
    を有する母材鋼板のめっき層表面に結晶質で2結晶水の
    リン酸亜鉛複合化成皮膜を有し、さらにその上に非晶質
    のリン酸系複合皮膜を有することを特徴とする高耐食性
    表面処理鋼板。
  2. 【請求項2】亜鉛含有めっき層の付着量が2g/m2
    上80g/m2以下、結晶質で2結晶水のリン酸亜鉛複
    合化成皮膜の付着量が0.3g/m2以上3g/m2
    下、非晶質のリン酸系複合皮膜の付着量が0.1g/m
    2以上2g/m2以下であり、上記結晶質で2結晶水のリ
    ン酸亜鉛複合化成処理皮膜の付着量と非晶質のリン酸系
    複合皮膜の付着量との合計が0.5g/m2以上4g/
    2以下であることを特徴とする請求項1記載の高耐食
    性表面処理鋼板。
  3. 【請求項3】少なくとも一方の表面に亜鉛含有めっき層
    を有する母材鋼板のめっき層表面に結晶質で2結晶水の
    リン酸亜鉛複合化成皮膜を有し、さらにその上に非晶質
    のリン酸系複合皮膜を有することを特徴とする高耐食性
    表面処理鋼板の製造方法であって、亜鉛含有めっき層の
    上に4結晶水の結晶質リン酸亜鉛複合化成処理被膜を形
    成した後、120℃以上250℃以下で熱処理をおこな
    い2結晶水のリン酸亜鉛複合化成皮膜を生成させること
    を特徴とする高耐食性表面処理鋼板の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005126812A (ja) * 2003-10-01 2005-05-19 Nisshin Steel Co Ltd 耐食性,塗装性,接着性に優れた亜鉛系めっき鋼板
JP2006336088A (ja) * 2005-06-03 2006-12-14 Nippon Steel Corp 表面処理鋼材
JP2008261813A (ja) * 2007-04-13 2008-10-30 Nippon Steel Corp 被覆鋼材の耐食性評価方法及び被覆鋼材の複合耐食性評価方法

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