===開示の概要===
媒体に画像を印刷する印刷方法であって、以下のステップを有する、
所定の移動方向に移動する複数のノズルからインクを吐出して、前記移動方向と交差する交差方向に複数のドットラインを形成して、第1階調値に基づく補正用パターンを印刷し、
前記補正用パターンの濃度を前記ドットライン毎に測定して、前記ドットライン毎に前記第1階調値に対応する第1情報を取得し、
前記第1情報と、前記第1階調値とは異なる第2階調値に対応する第2情報と、に基づいて各ドットラインを補正して、補正された複数のドットラインから構成される画像を前記媒体に印刷する。
このような印刷方法によれば、補正用パターンに基づく第1情報と、第2情報との2つの情報を用いて、ドットラインの濃度ムラを抑制するように、ドットライン毎に濃度を補正する。このため、補正された複数のドットラインから構成される画像は、従来のように1つの情報に基づいて補正された画像よりも、濃度ムラがより効果的に抑制される。よって、本印刷方法によれば、より良好な画像を印刷することが可能である。
かかる印刷方法であって、前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、各ドットラインに対応する補正値を算出し、前記補正値に基づいてそれぞれ補正された複数の前記ドットラインから構成される画像を前記媒体に印刷することが望ましい。
これにより、補正値を容易に算出することができる。従って、その補正値の算出に際し、試行錯誤を重ねずに済む。
かかる印刷方法であって、前記第2階調値に基づく補正用パターンを印刷し、この補正用パターンの濃度を前記ドットライン毎に測定して、前記ドットライン毎に前記第2階調値に対応する前記第2情報を取得することが望ましい。
これにより、2つの補正用パターンから取得した情報に基づいて、補正値を算出することができる。
かかる印刷方法であって、前記補正値は、前記第1階調値に基づく前記前記補正用パターン及び前記第2階調値に基づく補正用パターンの濃度をドットライン毎に測定し、該ドットライン毎の測定値に基づいて求められたものであることが望ましい。
これにより、同じドットラインに形成された2つの補正用パターンの濃度がそれぞれ測定されるので、ドットライン毎に2つの情報に基づいて補正値を算出することができる。
かかる印刷方法であって、前記移動方向に移動する複数のノズルとからインクを吐出して媒体にドットを形成するドット形成動作と、前記移動方向と交差する交差方向に前記媒体を搬送する搬送動作とを交互に繰り返すことによって、前記ドットラインを前記交差方向に複数形成することが望ましい。
これにより、ノズル数以上のドットラインが交差方向に連続して形成される。
かかる印刷方法であって、前記インクの色毎に前記複数のノズルが設けられ、色毎に前記補正用パターンを印刷することによって前記補正値を色毎に算出し、色毎の前記補正値に基づいて前記画像の濃度を色毎に補正することが望ましい。
これにより、多色印刷における画像の濃度ムラを有効に抑制可能となる。
かかる印刷方法であって、2つの前記補正用パターンの階調値と測定値とで対をなす2対の情報を用いて一次補間を行うことによって、濃度が目標値となるための階調値を求め、求められた階調値と、前記目標値に対応する基準階調値との偏差を該基準階調値で除算した値を前記補正値とすることが望ましい。
これにより、補正値を容易に算出することができる。従って、その補正値の算出に際し、試行錯誤を重ねずに済む。
かかる印刷方法であって、前記2対の情報のうちのいずれか一方の階調値は、前記基準値よりも大きく、他方は前記基準値よりも小さいことが望ましい。
これにより、基準値は、2つの階調値の間に位置する。従って、一次補間を内挿法によって実施できて、もって、当該一次補間によって求められる補正値の精度を高められる。
かかる印刷方法であって、前記2対の情報のうちのいずれか一方の階調値は、前記基準値と同じ値であることが望ましい。
これにより、補正用パターンの濃度の測定値として、目標値近傍の値を得ることができる。そして、この目標値近傍の測定値を用いて一次補間を行うことにより、補正値の精度が高くなる。
かかる印刷方法であって、それぞれ異なる階調値に基づく3つの前記補正用パターンの階調値と測定値とで対をなす3対の情報を取得し、濃度の目標値が、前記3対の情報のうちの2番目に大きな測定値よりも大きい場合には、この2番目に大きな測定値を有する情報と、これよりも大きい測定値を有する情報とを用いて一次補間を行うことによって、濃度が目標値となるための階調値を求め、濃度の目標値が、前記3対の情報のうちの2番目に大きな測定値よりも小さい場合には、この2番目に大きな測定値を有する情報と、これよりも小さい測定値を有する情報とを用いて一次補間を行うことによって、濃度が目標値となるための階調値を求め、求められた階調値と、前記目標値に対応する基準階調値との偏差を該基準階調値で除算した値を前記補正値とすることが望ましい。
これにより、濃度の大きな範囲と濃度の小さな範囲とにおいて、階調値の変化量に対する測定値の変化量が異なる場合であっても、前記一次補間によって、測定値が目標値と一致する指令値を正確に求めることが可能となり、よって、補正精度の高い補正値を求めることができる。
かかる印刷方法であって、前記2番目に大きな階調値は、前記基準値と同じ値であることが望ましい。
これにより、補正用パターンの濃度の測定値として、目標値近傍の値を得ることができる。そして、この目標値近傍の測定値を用いて一次補間を行うことにより、補正値の精度が高くなる。特に、一次補間を内挿法によって実施できることが保証されているので、当該一次補間によって求められる補正値の精度を高められる。
かかる印刷方法であって、前記目標値は、3つの階調値のうちの2番目の階調値に基づく補正用パターンの全ドットラインの濃度の測定値の平均値であることが望ましい。
これにより、濃度の大きな範囲と濃度の小さな範囲とにおいて、階調値の変化量に対する測定値の変化量が異なる場合であっても、前記一次補間によって、測定値が目標値と一致する指令値を正確に求めることが可能となり、よって、補正精度の高い補正値を求めることができる。
かかる印刷方法であって、前記目標値は、前記基準値の濃度を示す濃度見本の濃度の測定値であることが望ましい。
これにより、濃度見本に合わせるように、画像の濃度を補正することができる。
かかる印刷方法であって、前記基準値は、中間調領域の濃度の範囲から選ばれることが望ましい。
これにより、濃度ムラが生じ易い中間調領域において有効に濃度ムラを抑制可能となる。
かかる印刷方法であって、前記濃度の測定値は、グレイスケールの測定値であることが望ましい。
これにより、濃度の測定値から、補正値の算出に必要な色成分を抽出せずに済む。
かかる印刷方法であって、
画像を印刷するための画像データは、媒体上に形成されるドットの形成単位毎に、階調値を有しており、
前記形成単位に前記補正値が対応付けられていない場合、
前記階調値とドットの生成率とを対応付けた生成率テーブルに基づいて、前記形成単位の階調値に対応する前記生成率を読み取り、
読み取られた生成率に基づいて、媒体上の各形成単位にドットを形成し、
前記形成単位に前記補正値が対応付けられている場合、
前記生成率テーブルから階調値に対応する前記生成率を読み取る際に、前記階調値を前記補正値だけ変更した値に対応する生成率を読み取り、
読み取られた生成率に基づいて、媒体上の各形成単位にドットを形成する
ことが望ましい。
これにより、補正値が対応付けられた画像データと、対応付けられていない画像データとで、生成率テーブルを共用できる。
かかる印刷方法であって、前記ドットの生成率は、同一の階調値の所定数の前記形成単位からなる領域にドットを形成した場合に、前記領域内に形成されるドット数の前記所定数に対する割合を示すことが望ましい。
これにより、前記領域内に形成されるドット数によって、画像の濃度を表現することができる。
かかる印刷方法であって、前記ノズルは複数サイズのドットを形成可能であり、前記生成率テーブルには、前記階調値に対する前記生成率の関係が前記ドットのサイズ毎に規定されていることが望ましい。
これにより、複数サイズのドットによって濃度を表現することができるので、更に繊細な画像表現が可能となる。
かかる印刷方法であって、光学的に濃度を測定する濃度測定装置を用いて、前記補正用パターンの濃度を測定することが望ましい。
これにより、従って、濃度を、定量的に評価することが可能となり、前記補正値の信頼性が向上する。
かかる印刷方法であって、前記第1階調値及び前記第2階調値を含む特定階調値に基づいて、前記特定階調値毎にそれぞれ補正用パターンを印刷することが望ましい。
これにより、複数の補正用パターンから複数の情報を取得することができる。
かかる印刷方法であって、
前記第1階調値と前記第1階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、前記第1階調値とは異なる特定階調値とこの特定階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、を用いて一次補間を行うことによって、前記第1階調値に対応する濃度を形成するための新たな階調値を求め、求められた新たな階調値と前記第1階調値とを対応付けて前記第1情報とし、
前記第2階調値と前記第2階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、前記第2階調値とは異なる特定階調値とこの特定階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、を用いて一次補間を行うことによって、前記第2階調値に対応する濃度を形成するための新たな階調値を求め、求められた新たな階調値と前記第2階調値とを対応付けて前記第2情報とする
ことが望ましい。
これにより、補正に用いられる第1情報と第2情報とは、それぞれ実際に印刷した補正用パターンの濃度を読み取って得られた測定情報に基づいているため、実機に即した情報であり、これらの情報を用いることにより実機に適した補正を行うことが可能である。また、第1情報と第2情報を求めるための測定値は、それぞれ少なくとも2つの特定階調値の補正用パターンから得られるため、1つの測定値に基づいて得られる補正情報よりも信頼性が高い。すなわち、信頼性の高い2つの情報に基づいて補正を実行するため、より適切な補正が行われ、より効果的に濃度ムラを抑制することが可能である。
なお、一次補間とは、周知のように、2個の既知量の間又はその外側の関数値を、それら3つのプロットされた点が直線上にあるとして求める方法のことを言う。
かかる印刷方法であって、
前記第1階調値を含む特定階調値に基づいて、前記特定階調値毎にそれぞれ補正用パターンを印刷し、
前記第1階調値と前記第1階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、前記第1階調値とは異なる特定階調値とこの特定階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、を用いて一次補間を行うことによって、前記第1階調値に対応する濃度を形成するための新たな階調値を求め、求められた新たな階調値と前記第1階調値とを対応付けて前記第1情報とし、
前記第2情報は、印刷可能な階調値の最高値となる前記第2階調値に対応している
ことが望ましい。
これにより、第2階調値に基づく補正用パターンを印刷したり、その補正用パターンを測定したりしなくても、第2情報を取得することができる。
かかる印刷方法であって、
前記第1階調値を含む特定階調値に基づいて、前記特定階調値毎にそれぞれ補正用パターンを印刷し、
前記第1階調値と前記第1階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、前記第1階調値とは異なる特定階調値とこの特定階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、を用いて一次補間を行うことによって、前記第1階調値に対応する濃度を形成するための新たな階調値を求め、求められた新たな階調値と前記第1階調値とを対応付けて前記第1情報とし、
前記第2情報は、印刷可能な階調値の最低値となる前記第2階調値に対応している
ことが望ましい。
これにより、第2階調値に基づく補正用パターンを印刷したり、その補正用パターンを測定したりしなくても、第2情報を取得することができる。
かかる印刷方法であって、
前記第1階調値と前記第1階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、前記第1階調値より高い特定階調値とこの特定階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、前記第1階調値より低い特定階調値とこの特定階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、を取得し、
前記第1階調値に対応する濃度が、前記第1階調値に基づく補正用パターンの測定値より大きい場合には、前記第1階調値と前記第1階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、前記第1階調値より高い特定階調値とこの特定階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、を用いて一次補間を行い、
前記第1階調値に対応する濃度が、前記第1階調値に基づく補正用パターンの測定値より小さい場合には、前記第1階調値と前記第1階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、前記第1階調値より低い特定階調値とこの特定階調値に基づく補正用パターンの測定値とを対応付けた情報と、を用いて一次補間を行い、
前記第1階調値に対応する濃度を形成するための新たな階調値を求める
ことが望ましい。
これにより、第1階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値が大きい場合、及び小さい場合のいずれの場合であっても、確実に新たな階調値を求めることが可能である。また、第2階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値が大きい場合、及び小さい場合のいずれの場合であっても、確実に新たな階調値を求めることが可能である。さらに、階調値の変化量に対する測定値の変化量は、印刷可能な階調値の全域に亘って一定ではないので、新たな階調値を求める際に2つの情報を一次補間することは、限られた階調値の範囲における階調値の変化量に対する測定値の変化量に基づいて、新たな階調値を求めることになる。すなわち、第1階調値及び第2階調値の画像を印刷させるための新たな階調値は、第1階調値及び第2階調値近傍の特定階調値の測定情報にて求められる。このため、第1階調値及び第2階調値に適した新たな階調値が求められ、求められた新たな階調値により、より適切な補正を行うことが可能である。
かかる印刷方法であって、前記第1階調値に対応する濃度は、前記第1階調値に基づく補正用パターンを構成する各ドットラインの濃度の平均値とすることが望ましい。
これにより、実機に即した濃度にて画像を印刷させつつ濃度ムラを抑制することが可能である。
かかる印刷方法であって、前記第1階調値に対応する濃度は、濃度見本の濃度の測定値とすることが望ましい。
これにより、本来印刷されるべき濃度にて印刷されるように、画像の濃度が補正される。
かかる印刷方法であって、画像を印刷するための画像データは、媒体上に形成されるドットの形成単位毎に階調値を有しており、前記形成単位毎の階調値を補正することにより、前記ドットラインの濃度を補正することが望ましい。
これにより、元となる画像データの階調値を補正するので、画像処理のアルゴリズムを複雑にすることなく、容易に補正することが可能である。
かかる印刷方法であって、前記第1階調値及び前記第2階調値を除く階調値に対応する濃度を形成するための新たな階調値は、前記第1情報と前記第2情報とを一次補間することにより求められることが望ましい。
これにより、いずれの階調値にて印刷させる場合であっても、その階調値に対応する新たな階調値は、2つの補正情報から得られた信頼性の高い階調値となるため、いずれの階調値であっても適切な補正が行われ、良好な画像を印刷することが可能である。
かかる印刷方法であって、前記第1情報及び前記第2情報に基づいて、階調値に対するドットの生成率を補正することが望ましい。
これにより、ハーフトーン処理以外の画像処理のアルゴリズムに影響与えることなく補正することが可能であるため、画像処理のアルゴリズムを複雑にすることなく、容易に補正することが可能である。
かかる印刷方法であって、前記第1階調値及び前記第2階調値を除く階調値に対するドットの生成率は、前記第1階調値のドットの生成率と、前記第2階調値のドットの生成率とを一次補間することにより求められることが望ましい。
これにより、いずれの階調値にて印刷させる場合であっても、その階調値に対応するドット生成率は、2つの生成情報から得られた信頼性の高いドット生成率となるため、いずれの階調値であっても適切な補正が行われ、良好な画像を印刷することが可能である。
かかる印刷方法であって、前記インクの色毎に前記複数のノズルが設けられ、色毎に前記第1情報に基づく前記補正用パターンを印刷することによって、色毎に前記第1情報を取得し、色毎に前記第1情報及び前記第2情報に基づいて各ドットラインを補正することが望ましい。
これにより、多色印刷における画像の濃度ムラを有効に抑制可能である。
媒体に画像を印刷する印刷システムであって、
所定の移動方向に移動する複数のノズル、及び、
コントローラ、該コントローラは、
移動する前記複数のノズルからインクを吐出させて、前記移動方向と交差する交差方向に複数のドットラインを形成して、第1階調値に基づく補正用パターンを印刷させ、
前記補正用パターンの濃度を前記ドットライン毎に測定して、前記ドットライン毎に前記第1階調値に対応する第1情報を取得し、
前記第1情報と、前記第1階調値とは異なる第2階調値に対応する第2情報と、に基づいて各ドットラインを補正して、補正された複数のドットラインから構成される画像を前記媒体に印刷させる、
を備える。
このような印刷システムによれば、補正用パターンに基づく第1情報と、第2情報との2つの情報を用いて、ドットラインの濃度ムラを抑制するように、ドットライン毎に濃度を補正する。このため、補正された複数のドットラインから構成される画像は、従来のように1つの情報に基づいて補正された画像よりも、濃度ムラがより効果的に抑制される。よって、本印刷方法によれば、より良好な画像を印刷することが可能である。
(第1実施形態)
===(1)第1実施形態の開示の概要===
媒体に向けてインクを吐出してドットを形成するための複数のノズルを備え、所定方向に沿う複数の前記ドットから構成されたラインを、前記所定方向と交差する交差方向に複数形成して画像を印刷する印刷装置であって、前記ラインから構成される補正用パターンを印刷し、該補正用パターンの濃度をライン毎に測定し、該濃度の測定値に基づいて求められた濃度の補正値をライン毎に対応させて有し、前記画像を印刷する際に、該画像の各ラインに対応する前記補正値に基づいて、前記画像の濃度の指令値をライン毎に補正する印刷装置において、前記補正値は、濃度の指令値を異ならせて印刷された少なくとも2つの補正用パターンの濃度の測定値に基づいて求められたものであることを特徴とする印刷装置。
このような印刷装置によれば、前記少なくとも2つの補正用パターンから、指令値と測定値とで対をなす情報を少なくとも2対取得することができる。そして、これら二対の情報を用いて一次補間等を行うことにより、測定値が目標値となる指令値を容易に求めることが可能となる。そして、この求められた指令値と、前記目標値が得られるはずだった指令値との偏差に基づいて、前記補正値を容易に算出することができる。従って、その補正値の算出に際し、試行錯誤を重ねずに済む。
かかる印刷装置において、前記2つの補正用パターンにおいて、互いに対応するライン同士は、互いに異なる濃度の指令値で形成されているとともに、前記補正値は、前記2つの補正用パターンの濃度をライン毎に測定し、該ライン毎の濃度の測定値に基づいて求められたものであるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、互いに対応するライン同士は、互いに異なる指令値で形成されている。従って、前記2対の情報をライン毎に取得することができて、もって、ライン毎に、当該ラインの情報に基づいて一次補間等を行うことによって、より補正精度の高い補正値を求めることができる。その結果、濃度ムラを効果的に抑制可能となる。
かかる印刷装置において、前記媒体を搬送するための搬送ユニットを備え、前記複数のノズルは、前記交差方向に沿って整列されてノズル列を構成し、前記所定方向に移動するノズル列からインクを吐出して前記媒体にドットを形成するドット形成動作と、前記搬送ユニットにより前記媒体を前記交差方向に搬送する搬送動作とを交互に繰り返すことによって、前記所定方向に沿う複数のドットから構成されたラインを、前記交差方向に複数形成するのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記交差方向に沿って複数のノズルが整列されているので、一回のドット形成動作でドットが形成される範囲が広くなり、印刷時間の短縮化が図れる。
かかる印刷装置において、前記ノズル列を、前記インクの色毎に備えているとともに、該色毎に前記補正用パターンを印刷することによって、前記補正値を前記色毎に有し、該色毎の補正値に基づいて、前記画像の濃度を色毎に補正するのが望ましい。
このような印刷装置によれば、ノズル列をインクの色毎に備えているので、多色印刷を行うことができる。また、色毎に有する補正値に基づいて、前記画像の濃度を色毎に補正するので、多色印刷における画像の濃度ムラを有効に抑制可能となる。
かかる印刷装置において、前記2つの補正用パターンから求められた、指令値と測定値とで対をなす2対の情報を用いて一次補間を行うことによって、前記測定値が、全ラインに亘って同一の所定の目標値と一致する指令値を求め、該求められた指令値と、全ラインに亘って同一の所定の基準値との偏差を該基準値で除算した値を前記補正値とするのが望ましい。
このような印刷装置によれば、指令値と測定値とで対をなす2対の情報を用いて一次補間を行うことにより、測定値が前記目標値となる指令値を求め、この求められた指令値と、基準値との偏差を前記基準値で乗算した値を補正値とする。従って、補正値の算出に際し、試行錯誤を重ねずに済む。
また、前記目標値及び前記基準値は、それぞれに、全ラインに亘って同一の値が使用される。従って、全ラインの各測定値の値を互いに一致させるような補正値が各ラインについて得られることとなり、もって全ラインに亘って濃度差を小さくすることができる。そして、その結果、濃度ムラを小さく抑制可能となる。
なお、一次補間とは、周知のように、2個の既知量の間又はその外側の関数値を、それら3つのプロットされた点が直線上にあるとして求める方法のことを言う。
かかる印刷装置において、前記2対の情報のうちのいずれか一方の指令値は、前記基準値よりも大きく、他方は前記基準値よりも小さいのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記基準値は、2対の情報の間に位置する。従って、前述の一次補間を、内挿法によって実施できて、もって、当該一次補間によって求まる補正値の精度が高まる。
かかる印刷装置において、前記2対の情報のうちのいずれか一方の指令値は、前記基準値と同じ値であるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記基準値を指令値とするので、これによって印刷される補正用パターンの濃度の測定値として、前記目標値近傍の値を得ることができる。そして、この目標値近傍の測定値を用いて一次補間を行って、前記目標値に対応する指令値を求めるので、当該目標値と測定値とが近い分だけ一次補間の精度は高くなり、これによって、求められる指令値の補間精度は高くなる。そして、その結果、当該一次補間によって求まる補正値の精度が高まる。
かかる印刷装置において、濃度の指令値を異ならせて印刷された3つの補正用パターンに基づいて、指令値と測定値とで対をなす3対の情報を取得し、全ラインに亘って同一の所定の目標値が、前記3対の情報のなかで二番目に大きな測定値よりも大きい場合には、該二番目に大きな測定値を有する情報と、これよりも大きな測定値を有する情報とを用いて一次補間を行うことによって、前記測定値が前記目標値と一致する指令値を求める一方で、前記目標値が、前記二番目に大きな測定値よりも小さい場合には、該二番目に大きな測定値を有する情報と、これよりも小さな測定値を有する情報とを用いて一次補間を行うことによって、前記測定値が前記目標値と一致する指令値を求め、前記求められた指令値と、全ラインに亘って同一の所定の基準値との偏差を該基準値で除算した値を前記補正値とするのが望ましい。
このような印刷装置によれば、濃度の指令値を異ならせて印刷された3つの補正用パターンに基づいて、指令値と測定値とで対をなす3対の情報を取得する。そして、これら3対の情報のなかで二番目に大きな測定値と、前記目標値との大小関係に応じて、一次補間に用いる前記情報を変更する。すなわち、二番目に大きな測定値よりも目標値の方が大きい場合には、この二番目に大きな測定値を有する情報と、これよりも大きな測定値を有する情報とを用いて一次補間を行う一方、小さい場合には、この二番目に大きな測定値を有する情報と、これよりも小さな測定値を有する情報とを用いて一次補間を行う。
従って、濃度の大きな範囲と濃度の小さな範囲とにおいて、互いに、指令値の変化量に対する測定値の変化量が異なる場合であっても、前記一次補間によって、測定値が目標値と一致する指令値を正確に求めることが可能となり、よって、補正精度の高い補正値を求めることができる。
また、前記目標値及び前記基準値は、それぞれに、全ラインに亘って同一の値が使用される。従って、全ラインの各測定値の値を互いに一致させるような補正値が各ラインについて得られることとなり、もって全ラインに亘って濃度差を小さくすることができる。そして、その結果、濃度ムラを小さく抑制可能となる。
かかる印刷装置において、前記二番目に大きな指令値は、前記基準値と同じ値であるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、請求項9に記載の発明において、請求項7と同様の作用効果を奏することができる。
かかる印刷装置において、前記目標値は、前記二番目に大きな測定値の、全てのラインに亘る平均値であるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記一次補間において、指令値を求める際に使用する目標値として、前記測定値の全てのラインに亘る平均値を使用する。よって、当該一次補間によって、更に補正精度の高い補正値を求めることができる。
かかる印刷装置において、前記目標値は、前記基準値の濃度を示す濃度見本の濃度の測定値であるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記目標値は、前記基準値の濃度を示す濃度見本の濃度を測定した測定値である。従って、前記一次補間によって求められる補正値は、基準値を指令値として印刷された画像の濃度が前記基準値となるように、指令値を補正可能なものとなり、もって、この補正値によれば、印刷された画像の濃度が、指令値どおりになるような補正を実行可能となる。
かかる印刷装置において、前記基準値は、中間調領域の濃度の範囲から選ばれるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、濃度ムラが生じ易い中間調領域において有効に濃度ムラを抑制可能となる。
かかる印刷装置において、各補正用パターンの濃度の指令値は、それぞれに、その補正用パターンを構成する全てのラインに亘って同じ値であるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、全てのラインは同じ指令値で形成され、すなわち、交差方向に隣り合うライン同士は、同じ指令値で形成される。従って、当該隣り合うラインとで形成される濃度ムラ、例えば、これらラインの間隔の変化によって顕在化する濃度ムラを、前記補正用パターンによって正確に評価することができる。
かかる印刷装置において、前記濃度の測定値は、グレイスケールの測定値であるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、濃度の測定値から、補正値の算出に必要な色成分を抽出せずに済み、装置構成を簡略にできる。
かかる印刷装置において、前記画像を印刷するための画像データを備え、該画像データは、媒体上に形成されるドットの形成単位毎に、前記濃度の指令値としての階調値を有し、前記形成単位に前記補正値が対応付けられていない場合には、前記階調値とドットの生成率とを対応付けた生成率テーブルに基づいて、前記形成単位の階調値に対応する前記生成率を読み取り、読み取った生成率に基づいて、媒体上の各形成単位にドットを形成し、前記形成単位に前記補正値が対応付けられている場合には、前記生成率テーブルから階調値に対応する前記生成率を読み取る際に、前記階調値を補正値だけ変更した値に対応する生成率を読み取り、読み取った生成率に基づいて、媒体上の各形成単位にドットを形成するのが望ましい。
このような印刷装置によれば、画像データに基づいて、媒体上の前記形成単位毎にドットを形成して画像を印刷することができる。また、補正値が対応付けられた画像データと、対応付けられていない画像データとで、生成率テーブルを共用しているので、構成の簡略化が図れる。
かかる印刷装置において、前記ドットの生成率は、同一の前記階調値を有する、所定数の前記形成単位を備えた領域にドットを形成した場合に、前記領域内に形成されるドット数の前記所定数に対する割合を示しているのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記領域内に形成されるドット数によって、画像の濃度を表現することができる。
かかる印刷装置において、前記ノズルは、複数サイズのドットを形成可能であり、前記生成率テーブルには、前記階調値に対する前記生成率の関係が、前記サイズ毎に規定されているのが望ましい。
このような印刷装置によれば、複数サイズのドットによって濃度を表現することができるので、更に繊細な画像表現が可能となる。
かかる印刷装置において、前記補正用パターンの濃度を光学的に測定する濃度測定装置を備えるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記濃度測定装置を備えている。従って、濃度を、定量的に評価することが可能となり、前記補正値の信頼性が向上する。
また、媒体に向けて複数のノズルからインクを吐出して、所定方向に沿う複数のドットから構成されたラインを、前記所定方向と交差する交差方向に複数形成して画像を印刷する印刷方法であって、前記ラインから構成される少なくとも2つの補正用パターンを、互いの濃度の指令値を異ならせて印刷するステップと、前記補正用パターンの濃度をライン毎に測定するステップと、該濃度の測定値に基づいて求められた濃度の補正値をライン毎に対応させて生成するステップと、前記画像を印刷する際に、該画像の各ラインに対応する前記補正値に基づいて、前記画像の濃度の指令値をライン毎に補正するステップとを備えたことを特徴とする印刷方法の実現も可能である。
また、コンピュータと通信可能に接続された印刷装置を備え、該印刷装置は、媒体に向けてインクを吐出してドットを形成するための複数のノズルを有し、所定方向に沿う複数の前記ドットから構成されたラインを、前記所定方向と交差する交差方向に複数形成して画像を印刷し、前記ラインから構成される補正用パターンを印刷し、該補正用パターンの濃度をライン毎に測定し、該濃度の測定値に基づいて求められた濃度の補正値をライン毎に対応させて有し、前記画像を印刷する際に、該画像の各ラインに対応する前記補正値に基づいて、前記画像の濃度の指令値をライン毎に補正する印刷システムにおいて、前記補正値は、濃度の指令値を異ならせて印刷された少なくとも2つの補正用パターンの濃度の測定値に基づいて求められたものであることを特徴とする印刷システムの実現も可能である。
===(1)印刷システムの構成===
次に、印刷システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、印刷システムの外観構成を示した説明図である。この印刷システム1000は、プリンタ1と、コンピュータ1100と、表示装置1200と、入力装置1300と、記録再生装置1400とを備えている。プリンタ1は、用紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する印刷装置である。コンピュータ1100は、プリンタ1と通信可能に接続されており、プリンタ1に画像を印刷させるため、当該画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。表示装置1200は、ディスプレイを有し、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ1110(図2を参照)等のユーザインタフェースを表示する。入力装置1300は、例えばキーボード1300Aやマウス1300Bであり、表示装置1200に表示されたユーザインタフェースに沿って、アプリケーションプログラムの操作やプリンタドライバ1110の設定等に用いられる。記録再生装置1400は、例えばフレキシブルディスクドライブ装置1400AやCD−ROMドライブ装置1400Bが用いられる。
コンピュータ1100にはプリンタドライバ1110がインストールされている。プリンタドライバ1110は、表示装置1200にユーザインタフェースを表示させる機能を実現させるほか、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換する機能を実現させるためのプログラムである。このプリンタドライバ1110は、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に記録されている。又は、このプリンタドライバ1110は、インターネットを介してコンピュータ1100にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
なお、「印刷装置」とは、狭義にはプリンタ1を意味するが、広義にはプリンタ1とコンピュータ1100とのシステムを意味する。
===(1)プリンタドライバ===
<プリンタドライバについて>
図2は、プリンタドライバ1110が行う基本的な処理の概略的な説明図である。既に説明された構成要素については、同じ符号を付しているので、説明を省略する。
コンピュータ1100では、コンピュータに搭載されたオペレーティングシステムの下、ビデオドライバ1102やアプリケーションプログラム1104やプリンタドライバ1110などのコンピュータプログラムが動作している。ビデオドライバ1102は、アプリケーションプログラム1104やプリンタドライバ1110からの表示命令に従って、例えばユーザインタフェース等を表示装置1200に表示する機能を有する。アプリケーションプログラム1104は、例えば、画像編集などを行う機能を有し、画像に関するデータ(画像データ)を作成する。ユーザは、アプリケーションプログラム1104のユーザインタフェースを介して、アプリケーションプログラム1104により編集した画像を印刷する指示を与えることができる。アプリケーションプログラム1104は、印刷の指示を受けると、プリンタドライバ1110に画像データを出力する。
プリンタドライバ1110は、アプリケーションプログラム1104から画像データを受け取り、この画像データを印刷データに変換し、印刷データをプリンタ1に出力する。画像データは、印刷される画像の画素に関するデータとして画素データを有している。そして、この画素データは、後述する各処理の段階に応じて、その階調値等が変換され、最終的に前記印刷データの段階では、用紙上に形成されるドットに関するデータ(ドットの色や大きさ等のデータ)に変換されている。なお、画素とは、インクを着弾させドットを形成する位置を規定するために、用紙上に仮想的に定められた方眼状の升目である。この画素は「ドットの形成単位」に相当する。
印刷データは、プリンタ1が解釈できる形式のデータであって、前記画素データと、各種のコマンドデータとを有するデータである。コマンドデータとは、プリンタ1に特定の動作の実行を指示するためのデータであり、例えば搬送量を示すデータである。
プリンタドライバ1110は、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データを印刷データに変換するため、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理、ラスタライズ処理などを行う。以下に、プリンタドライバ1110が行う各種の処理について説明する。
解像度変換処理は、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、用紙に画像を印刷する際の解像度(印刷するときのドットの間隔であり、以下では印刷解像度と言う)に変換する処理である。例えば、印刷解像度が720×720dpiに指定されている場合には、アプリケーションプログラム1104から受け取った画像データを720×720dpiの解像度の画像データに変換する。
その変換方法としては、例えば、画像データの解像度が、指定された印刷解像度よりも低い場合には、線形補間等を行って隣接する画素データ間に新たな画素データを生成し、逆に印刷解像度よりも高い場合には、一定の割合で画素データを間引く等して、画像データの解像度を前記印刷解像度に揃える。
また、この解像度変換処理においては、画像データに基づいて実際にインクが吐出される領域たる印刷領域のサイズ調整も行う。このサイズ調整は、後記余白形態モード、画質モード、及び用紙サイズモードに基づいて、画像データ中の用紙の端部に相当する画素データをトリミング処理等して行われる。
なお、この画像データ中の各画素データは、RGB色空間により表される多段階(例えば256段階)の階調値を有するデータである。以下、このRGBの階調値を有する画素データのことをRGB画素データと言い、また、これらRGB画素データから構成される画像データをRGB画像データと言う。
色変換処理は、前記RGB画像データの各RGB画素データを、CMYK色空間により表される多段階(例えば256段階)の階調値を有するデータに変換する処理である。このCMYKは、プリンタ1が有するインクの色である。以下、このCMYKの階調値を有する画素データのことをCMYK画素データと言い、これらCMYK画素データから構成される画像データのことをCMYK画像データと言う。この色変換処理は、RGBの階調値とCMYKの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)をプリンタドライバ1110が参照することによって行われる。
ハーフトーン処理は、多段階の階調値を有するCMYK画素データを、プリンタ1が表現可能な、少段階の階調値を有するCMYK画素データに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256段階の階調値を示すCMYK画素データが、4段階の階調値を示す2ビットのCMYK画素データに変換される。この2ビットのCMYK画素データは、各色について、例えば、「ドットの形成なし」、「小ドットの形成」、「中ドットの形成」、「大ドットの形成」を示すデータである。
このようなハーフトーン処理には、例えばディザ法等が利用され、プリンタ1がドットを分散して形成できるような2ビットのCMKY画素データを作成する。このディザ法によるハーフトーン処理については、後述する。なお、このハーフトーン処理に用いる方法は、ディザ法に限るものではなく、γ補正法や誤差拡散法等を利用しても良い。
ラスタライズ処理は、前記ハーフトーン処理がなされたCMYK画像データを、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更する処理である。ラスタライズ処理されたデータは、前記印刷データとしてプリンタ1に出力される。
<ディザ法によるハーフトーン処理について>
ここで、ディザ法によるハーフトーン処理について詳細に説明する。図3は、このディザ法によるハーフトーン処理のフローチャートであり、当該フローチャートに従って、以下のステップが実行される。
先ず、ステップS300において、プリンタドライバ1110は、CMYK画像データを取得する。このCMYK画像データは、C,M,Y,Kの各インク色につき256段階の階調値で示された画像データから構成される。すなわち、CMYK画像データは、シアン(C)に関するC画像データ、マゼンダ(M)に関するM画像データ、イエロ(Y)に関するY画像データ、及びブラック(K)に関する画像データを備えている。そして、これらC,M,Y,K画像データは、それぞれに、各インク色の階調値を示すC,M,Y,K画素データから構成されている。
なお、以下の説明は、C,M,Y,K画像データの何れについても当てはまるため、これらを代表してK画像データについて説明する。
次に、プリンタドライバ1110は、K画像データ中の全てのK画素データを対象として、ステップS301からステップS311までの処理を、処理対象のK画素データを順次変えながら実行して、K画素データ毎に、前述の「ドット形成なし」、「小ドットの形成」、「中ドットの形成」、「大ドットの形成」のいずれかを示す2ビットデータに変換する。
詳細には、先ず、ステップ301では、処理対象のK画素データの階調値に応じて、次のようにして大ドットのレベルデータLVLを設定する。図4は、大、中、小の各ドットのレベルデータの決定に利用される生成率テーブルを示す図である。図の横軸は階調値(0〜255)、左側の縦軸はドットの生成率(%)、右側の縦軸はレベルデータ(0〜255)である。ここで、「ドットの生成率」とは、一定の階調値に応じて一様な領域が再現されるときに、その領域内の画素のうちでドットが形成される画素の割合を意味する。図4中の細い実線で示されるプロファイルSDが小ドットの生成率を示しており、また、太い実線で示されるプロファイルMDが中ドットの生成率を、点線で示されるプロファイルLDが大ドットの生成率をそれぞれ示している。また、レベルデータとは、ドットの生成率を値0〜255の256段階に変換したデータをいう。
すなわち、ステップS301では、大ドット用のプロファイルLDから階調値に応じたレベルデータLVLを読み取る。例えば、図4に示した通り、処理対象のK画素データの階調値がgrであれば、レベルデータLVLはプロファイルLDを用いて1dと求められる。実際には、このプロファイルLDは、1次元のテーブルの形態でコンピュータ1100内のROM等のメモリ(不図示)に記憶されており、プリンタドライバ1110は、このテーブルを参照してレベルデータを求めている。
次に、ステップS302では、以上のようにして設定されたレベルデータLVLが閾値THLより大きいか否かを判定する。ここでは、ディザ法によるドットのオン・オフ判定を行う。閾値THLは、所謂ディザマトリクスの各画素ブロックに対して異なる値が設定されている。本実施形態では16×16の正方形の画素ブロックに、0〜254までの値が現れるマトリックスを用いている。
図5は、ディザ法によるドットのオン・オフ判定の様子を示す図である。図示の都合上、図5には、一部のK画素データについてのみ示している。先ず、図示するように、各K画素データのレベルデータLVLを、当該K画素データに対応するディザマトリクス上の画素ブロックの閾値THLと比較する。
そして、前記レベルデータLVLの方が前記閾値THLよりも大きい場合にはドットをオンにし、レベルデータLVLの方が小さい場合にはドットをオフにする。図中でハッチングを施した画素データが、ドットをオンにするK画素データである。すなわち、ステップS302において、レベルデータLVLが閾値THLよりも大きい場合には、ステップS310に進み、それ以外の場合にはステップS303に進む。ここで、ステップS310に進んだ場合には、プリンタドライバ1110は、当該処理対象のK画素データに対して、大ドットを示す2進数の値「11」を対応付けて記録し、ステップS311に進む。そして、当該ステップ311において、全てのK画素データについて処理を終了したか否かを判定し、終了している場合には、ハーフトーン処理を終了し、終了していない場合には、処理対象を未処理のK画素データに移して、ステップS301に戻る。
一方、ステップS303に進んだ場合には、プリンタドライバ1110は、中ドットのレベルデータLVMを設定する。中ドットのレベルデータLVMは、前記階調値に基づいて、前述の生成率テーブルにより設定される。設定方法は、大ドットのレベルデータLVLの設定と同じである。すなわち、図4に示す例では、レベルデータLVMは、2dとして求められる。
そして、ステップS304において、中ドットのレベルデータLVMと閾値THMの大小関係が比較されて、中ドットのオン・オフの判定が行われる。オン・オフの判定方法は、大ドットの場合と同じであるが、判定に用いる閾値THMを次に示す通り大ドットの場合の閾値THLとは異なる値としている。すなわち、大ドットと中ドットで同じディザマトリクスを用いてオン・オフの判定を行った場合、ドットがオンになりやすい画素ブロックが両者で一致する。つまり、大ドットがオフとなるときには中ドットもオフになる可能性が高くなる。その結果、中ドットの生成率は所望の生成率よりも低くなる虞が生じる。このような現象を回避するため、本実施形態では、両者でディザマトリクスを変えている。つまり、オンになりやすくなる画素ブロックを、大ドットと中ドットとで変えることで、それぞれが適切に形成されることを確保している。
図6A及び図6Bは、大ドットの判定に用いられるディザマトリクスと、中ドットの判定に用いられるディザマトリクスとの関係について示す図である。この実施形態では、大ドットについては、図6Aの第1のディザマトリクスTMを用い、中ドットについてはこの各閾値を搬送方向の中央を中心として対称に移動した図6Bの第2のディザマトリクスUMを用いている。本実施形態では先に述べたように16×16のマトリクスを用いているが、図6には図示の都合上4×4のマトリクスで示している。なお、大ドットと中ドットで全く異なるディザマトリクスを用いるようにしても良い。
そして、ステップS304において、中ドットのレベルデータLVMが、中ドットの閾値THMよりも大きい場合には、中ドットをオンにすべきと判定して、ステップS309に進み、それ以外の場合にはステップS305に進む。ここで、ステップS309に進んだ場合には、プリンタドライバ1110は、当該処理対象のK画素データに対して、中ドットを示す2進数の値「10」を対応付けて記録し、ステップS311に進む。そして、当該ステップ311において、全てのK画素データについて処理を終了したか否かを判定し、終了している場合には、ハーフトーン処理を終了し、終了していない場合には、処理対象を未処理のK画素データに移して、ステップS301に戻る。
一方、ステップS305に進んだ場合には、大ドットや中ドットのレベルデータの設定と同様にして、小ドットのレベルデータLVSを設定する。なお、小ドット用のディザマトリクスは、前述のように小ドットの生成率の低下を防ぐべく中ドットや大ドット用のものと異なるものとするのが好ましい。
そして、ステップS306において、プリンタドライバ1110は、レベルデータLVSが、小ドットの閾値THSよりも大きい場合には、ステップS308に進み、それ以外の場合にはステップS307に進む。ここで、ステップS308に進んだ場合には、当該処理対象のK画素データに対して、小ドットを示す2進数の値「01」を対応付けて記録し、ステップS311に進む。そして、当該ステップ311において、全てのK画素データについて処理を終了したか否かを判定し、終了していない場合には、処理対象を未処理のK画素データに移して、ステップS301に戻る。一方、終了している場合には、K画像データに関するハーフトーン処理を終了し、他の色の画像データについて同様にハーフトーン処理を実行する。
一方、ステップS307に進んだ場合には、プリンタドライバ1110は、当該処理対象のK画素データに対して、ドット無しを示す2進数の値「00」を対応付けて記録し、ステップS311に進む。そして、当該ステップ311において、全てのK画素データについて処理を終了したか否かを判定し、終了していない場合には、処理対象を未処理のK画素データに移して、ステップS301に戻る。一方、終了している場合には、K画像データについてのハーフトーン処理を終了し、他の色の画像データについて同様にハーフトーン処理を実行する。
<プリンタドライバの設定について>
図7は、プリンタドライバ1110のユーザインタフェースの説明図である。このプリンタドライバ1110のユーザインタフェースは、ビデオドライバ1102を介して、表示装置に表示される。ユーザは、入力装置1300を用いて、プリンタドライバ1110の各種の設定を行うことができる。基本設定としては、余白形態モードや画質モードの設定が用意され、また用紙設定としては、用紙サイズモードの設定等が用意されている。これらのモードについては後述する。
===(1)プリンタの構成===
<インクジェットプリンタの構成について>
図8は、本実施形態のプリンタの全体構成のブロック図である。また、図9は、本実施形態のプリンタの全体構成の概略図である。また、図10は、本実施形態のプリンタの全体構成の横断面図である。以下、本実施形態のプリンタの基本的な構成について説明する。
本実施形態のインクジェットプリンタ1は、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、センサ50、及びコントローラ60を有する。外部装置であるコンピュータ1100から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ1100から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、用紙に画像を形成する。プリンタ1内の状況はセンサ50によって監視されており、センサ50は、検出結果をコントローラ60に出力する。センサから検出結果を受けたコントローラは、その検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
搬送ユニット20は、媒体(例えば、用紙Sなど)を印刷可能な位置に送り込み、印刷時に所定の方向(以下では、搬送方向と言う)に所定の搬送量で用紙を搬送させるためのものである。搬送ユニット20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22(PFモータとも言う)と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された用紙をプリンタ1内に自動的に給紙するためのローラである。給紙ローラ21は、D形の断面形状をしており、円周部分の長さは搬送ローラ23までの搬送距離よりも長く設定されているので、この円周部分を用いて紙を搬送ローラ23まで搬送できる。搬送モータ22は、紙を搬送方向に搬送するためのモータであり、DCモータにより構成される。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって給紙された用紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラであり、搬送モータ22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の用紙Sを支持する。排紙ローラ25は、印刷が終了した用紙Sをプリンタ1の外部に排出するローラである。この排紙ローラ25は、搬送ローラ23と同期して回転する。
キャリッジユニット30は、キャリッジ31とキャリッジモータ32(以下では、CRモータとも言う)とを備える。キャリッジモータ32は、前記キャリッジ31を所定の方向(以下では、キャリッジ移動方向と言う)に往復移動させるためのモータであり、DCモータにより構成される。このキャリッジ31には、後記ヘッド41が保持されており、もって、前記キャリッジ31の往復移動によって、前記ヘッド41もキャリッジ移動方向に往復移動可能となっている。また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。
ヘッドユニット40は、用紙にインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、前記ヘッド41を有し、当該ヘッド41は、ノズルを複数有し、各ノズルから断続的にインクを吐出する。そして、前記キャリッジ31の移動によって、ヘッド41がキャリッジ移動方向に移動すると、当該移動中にインクを断続的に吐出することによって、キャリッジ移動方向に沿ったドットからなるラスタラインが用紙に形成される。なお、このラスタラインは、移動方向に並ぶ複数のドットから構成されるので、ドットラインとも呼ばれる。
センサ50には、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、及び紙幅センサ54等が含まれる。リニア式エンコーダ51は、キャリッジ移動方向におけるキャリッジ31の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出センサ53は、印刷される用紙の先端の位置を検出するためのものである。この紙検出センサ53は、給紙ローラ21が搬送ローラ23に向かって用紙を給紙する途中で、用紙の先端の位置を検出できる位置に設けられている。なお、紙検出センサ53は、機械的な機構によって用紙の先端を検出するメカニカルセンサである。詳しく言うと、紙検出センサ53は紙搬送方向に回転可能なレバーを有し、このレバーは用紙の搬送経路内に突出するように配置されている。そのため、用紙の先端がレバーに接触し、レバーが回転させられるので、紙検出センサ53は、このレバーの動きを検出することによって、用紙の先端の位置を検出する。紙幅センサ54は、キャリッジ31に取付けられている。紙幅センサ54は、光学センサであり、発光部から紙に照射された光の反射光を受光部が検出することにより、用紙の有無を検出する。そして、紙幅センサ54は、キャリッジ41によって移動しながら用紙の端部の位置を検出し、用紙の幅を検出する。
コントローラ60は、プリンタ1の制御を行うための制御ユニットである。コントローラ60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は、外部装置であるコンピュータ1100とプリンタ1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU62は、プリンタ1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM等の記憶手段を有する。CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
<印刷動作について>
図11は、印刷時の動作のフロー図である。以下に説明される各動作は、コントローラ60が、メモリ63内に格納されたプログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。このプログラムは、各動作を実行するためのコードを有する。
印刷命令受信(S001):コントローラ60は、コンピュータ1100からインターフェース部61を介して、印刷命令を受信する。この印刷命令は、コンピュータ1100から送信される印刷データのヘッダに含まれている。そして、コントローラ60は、受信した印刷データに含まれる各種コマンドの内容を解析し、各ユニットを用いて、以下の給紙動作、搬送動作、ドット形成動作等を行う。
給紙動作(S002):まず、コントローラ60は、給紙動作を行う。給紙動作とは、印刷すべき用紙をプリンタ1内に供給し、印刷開始位置(所謂、頭出し位置)に用紙を位置決めする処理である。コントローラ60は、給紙ローラ21を回転させ、印刷すべき用紙を搬送ローラ23まで送る。コントローラ60は、搬送ローラ23を回転させ、給紙ローラ21から送られてきた用紙を印刷開始位置に位置決めする。用紙が印刷開始位置に位置決めされたとき、ヘッド41の少なくとも一部のノズルは、用紙と対向している。
ドット形成動作(S003):次に、コントローラ60は、ドット形成動作を行う。ドット形成動作とは、キャリッジ移動方向に沿って移動するヘッド41からインクを断続的に吐出させ、用紙にドットを形成する動作である。コントローラ60は、キャリッジモータ32を駆動し、キャリッジ31をキャリッジ移動方向に移動させる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31が移動している間に、印刷データに基づいてヘッド41からインクを吐出させる。ヘッド41から吐出されたインクが用紙上に着弾すれば、用紙上にドットが形成される。
搬送動作(S004):次に、コントローラ60は、搬送動作を行う。搬送動作とは、紙をヘッド41に対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラ60は、搬送モータを駆動し、搬送ローラを回転させて用紙を搬送方向に搬送する。この搬送動作により、ヘッド41は、先ほどのドット形成動作によって形成されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。
排紙判断(S005):次に、コントローラ60は、印刷中の用紙の排紙の判断を行う。印刷中の用紙に印刷するためのデータが残っていれば、排紙は行われない。そして、コントローラ60は、印刷するためのデータがなくなるまでドット形成動作と搬送動作とを交互に繰り返し、ドットから構成される画像を徐々に用紙に印刷する。印刷中の用紙に印刷するためのデータがなくなれば、コントローラ60は、その用紙を排紙する。コントローラ60は、排紙ローラを回転させることにより、印刷した用紙を外部に排出する。なお、排紙を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいても良い。
印刷終了判断(S006):次に、コントローラ60は、印刷を続行するか否かの判断を行う。次の用紙に印刷を行うのであれば、印刷を続行し、次の用紙の給紙動作を開始する。次の用紙に印刷を行わないのであれば、印刷動作を終了する。
<ヘッドの構成について>
図12は、ヘッド41の下面におけるノズルの配列を示す説明図である。ヘッド41の下面には、ブラックインクノズル列Nkと、シアンインクノズル列Ncと、マゼンタインクノズル列Nmと、イエローインクノズル列Nyが形成されている。各ノズル列は、各色のインクを吐出するための吐出口であるノズルをn個(例えば、n=180)備えている。
各ノズル列の複数のノズルは、搬送方向に沿って、一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)でそれぞれ整列している。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ(つまり、用紙Sに形成されるドットの最高解像度での間隔)である。また、kは、1以上の整数である。例えば、ノズルピッチが180dpi(1/180インチ)であって、搬送方向のドットピッチが720dpi(1/720)である場合、k=4である。
各ノズル列のノズルは、下流側のノズルほど若い番号が付されている(♯1〜♯n)。つまり、ノズル♯1は、ノズル♯nよりも搬送方向の下流側に位置している。各ノズルには、各ノズルを駆動してインク滴を吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。
<ヘッドの駆動について>
図13は、ヘッドユニット40の駆動回路の説明図である。この駆動回路は、前述のユニット制御回路64内に設けられており、同図に示すように、原駆動信号発生部644Aと、駆動信号整形部644Bとを備えている。本実施形態では、このようなノズル♯1〜♯nの駆動回路が、ノズル列毎、即ち、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロ(Y)の各色のノズル列ごとに各々設けられ、ノズル列ごとに個別にピエゾ素子の駆動が行われるようになっている。図中に各信号名の最後に付されたかっこ内の数字は、その信号が供給されるノズルの番号を示している。
ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインク量が、インク滴となって各色の各ノズル♯1〜♯nから吐出される。
原駆動信号発生部644Aは、各ノズル♯1〜♯nに共通して用いられる原信号ODRVを生成する。この原信号ODRVは、キャリッジ31が一画素の間隔を横切る時間内に複数のパルスを含む信号である。
駆動信号整形部644Bには、原信号発生部644Aから原信号ODRVが入力されるとともに、印刷信号PRT(i)が入力される。駆動信号整形部644Bは、印刷信号PRT(i)のレベルに応じて、原信号ODRVを整形し、駆動信号DRV(i)として各ノズル♯1〜♯nのピエゾ素子に向けて出力する。各ノズル♯1〜♯nのピエゾ素子は、駆動信号整形部644Bからの駆動信号DRVに基づき駆動される。
<ヘッドの駆動信号について>
図14は、各信号の説明のためのタイミングチャートである。すなわち、同図には、原信号ODRVと、印刷信号PRT(i)と、駆動信号DRV(i)の各信号のタイミングチャートが示されている。
原信号ODRVは、原信号発生部644Aからノズル♯1〜♯nに共通に供給される信号である。本実施形態では、原信号ODRVは、前記キャリッジ31が一画素の間隔を横切る時間内において、第1パルスW1と第2パルスW2の2つのパルスを含む。なお、この原信号ODRVは、原信号発生部644Aから駆動信号整形部644Bに出力される。
印刷信号PRTは、一画素に対して割り当てられている前記画素データに対応した信号である。つまり、印刷信号PRTは、印刷データに含まれる画素データに応じた信号である。本実施形態では、印刷信号PRT(i)は、一画素に対して2ビットの情報を有する信号になる。なお、この印刷信号PRTの信号レベルに応じて、駆動信号整形部644Bは、原信号ODRVを整形し、駆動信号DRVを出力する。
駆動信号DRVは、印刷信号PRTのレベルに応じて原信号ODRVを遮断することによって得られる信号である。すなわち、すなわち、印刷信号PRTが1レベルのとき、駆動信号整形部644Bは、原信号ODRVの対応するパルスをそのまま通過させて駆動信号DRVとする。一方、印刷信号PRTが0レベルのとき、駆動信号整形部644Bは、原信号ODRVのパルスを遮断する。なお、駆動信号整形部644Bは、ノズル毎に設けられているピエゾ素子に駆動信号DRVを出力する。そして、ピエゾ素子は、この駆動信号DRVに応じて駆動される。
印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「01」に対応しているとき、第1パルスW1のみが一画素区間の前半で出力される。これにより、ノズルから小さいインク滴が吐出され、用紙には小さいドット(小ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「10」に対応しているとき、第2パルスW2のみが一画素区間の後半で出力される。これにより、ノズルから中サイズのインク滴が吐出され、用紙には中サイズのドット(中ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「11」に対応しているとき、第1パルスW1と第2パルスW2とが一画素区間で出力される。これにより、ノズルから小インク滴と中インク滴とが吐出され、用紙には大きいドット(大ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「00」に対応しているとき、第1パルスW1及び第2パルスW2のいずれも一画素区間で出力されない。これにより、ノズルからはいずれのサイズのインク滴も吐出されず、用紙にはドットが形成されない。
以上説明したとおり、一画素区間における駆動信号DRV(i)は、印刷信号PRT(i)の4つの異なる値に応じて互いに異なる4種類の波形を有するように整形されている。
===(1)印刷方式について===
ここで、図15A及び図15Bを参照して、本実施形態のプリンタ1にて実行可能な印刷方式について説明する。この印刷方式としては、インターレース方式が実行可能に用意されている。そして、この印刷方式を用いることによって、ノズルのピッチやインク吐出特性等のノズル毎の個体差を、印刷される画像上で分散緩和し、もって画質の向上を図ることができるようになっている。
図15A及び図15Bは、インターレース方式の説明図である。なお、説明の都合上、ヘッド41の代わりとして示すノズル列が、用紙Sに対して移動しているように描かれているが、同図はノズル列と用紙Sとの相対的な位置関係を示すものであって、実際には用紙Sが搬送方向に移動されている。また、同図において、黒丸で示されたノズルは、実際にインクを吐出するノズルであり、白丸で示されたノズルはインクを吐出しないノズルである。なお、図15Aは、1パス目〜4パス目におけるノズル位置と、そのノズルにてドットの形成の様子を示し、図15Bは、1パス目〜6パス目におけるノズル位置とドットの形成の様子を示している。
ここで、「インターレース方式」とは、kが2以上であって、1回のパスで記録されるラスタラインの間に記録されないラスタラインが挟まれるような印刷方式を意味する。また、「パス」とは、ノズル列がキャリッジ移動方向に1回移動することをいう。「ラスタライン」とは、キャリッジ移動方向に並ぶドットの列である。
図15A及び図15Bに示すように、インターレース方式では、用紙Sが搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインのすぐ上のラスタラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、実際にインクを吐出するノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあり、搬送量FはN・Dに設定される。
同図では、ノズル列は搬送方向に沿って配列された4つのノズルを有する。しかし、ノズル列のノズルピッチkは4なので、インターレース方式を行うための条件である「Nとkとが互いに素の関係」を満たすために、全てのノズルを用いることはできない。そこで、4つのノズルのうち、3つのノズルを用いてインターレース方式が行われる。また、3つのノズルが用いられるため、用紙Sは搬送量3・Dにて搬送される。その結果、例えば、180dpi(4・D)のノズルピッチのノズル列を用いて、720dpi(=D)のドット間隔にて用紙Sにドットが形成される。
同図では、最初のラスタラインを3パス目のノズル♯1が形成し、2番目のラスタラインを2パス目のノズル♯2が形成し、3番目のラスタラインを1パス目のノズル♯3が形成し、4番目のラスタラインを4パス目のノズル♯1が形成し、連続的なラスタラインが形成される様子を示している。なお、1パス目では、ノズル♯3のみがインクを吐出し、2パス目では、ノズル♯2とノズル♯3のみがインクを吐出している。これは、1パス目及び2パス目において全てのノズルからインクを吐出すると、連続したラスタラインを用紙Sに形成できないためである。なお、3パス目以降では、3つのノズル(♯1〜♯3)がインクを吐出し、用紙Sが一定の搬送量F(=3・D)にて搬送されて、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて形成される。
===(1)縁無し印刷及び縁有り印刷について===
本実施形態のプリンタ1では、用紙の端部に余白を形成せずに印刷する「縁無し印刷」、及び、前記端部に余白を形成して印刷する「縁有り印刷」を実行可能である。
<縁無し印刷及び縁有り印刷の概要>
縁有り印刷は、印刷データに基づいてインクを吐出する領域である印刷領域Aが、用紙S内に収まるように印刷を行う。図16に、縁有り印刷時における印刷領域Aと用紙Sとの大きさの関係を示すが、印刷領域Aは用紙S内に収まるように設定され、用紙Sの上下の端部及び左右の側端部には余白が形成される。
この縁有り印刷を行う場合には、プリンタドライバ1110は、前記解像度変換処理において、画像データの解像度を、指定の印刷解像度に変換しながら、その印刷領域Aが、用紙Sの端縁から所定幅だけ内側に収まるように画像データを加工する。例えば、前記印刷解像度で印刷すると、その画像データの印刷領域Aが前記端縁から所定幅だけ内側に収まらない場合には、前記画像の端部に対応する画素データを取り除くトリミング処理等を適宜行って、印刷領域Aを小さくする。
一方、縁無し印刷は、前記印刷領域Aが、用紙Sからはみ出すように印刷を行う。図17に、縁無し印刷時における印刷領域Aと用紙Sとの大きさの関係を示すが、用紙Sの上下の端部及び左右の側端部からはみ出す領域(以下では、打ち捨て領域Aaと言う)に対しても印刷領域Aが設定されており、この領域に対してもインクが吐出されるようになっている。そして、これによって、搬送動作の精度などが原因で用紙Sがヘッド41に対して多少の位置ズレを生じても、用紙Sの端部へ向けて確実にインクを吐出し、もって端部に余白を形成しない印刷を達成している。なお、前記打ち捨て領域Aaにおける上下の端部からはみ出す領域が、「媒体の前記交差方向における上流側の端部よりも上流側に外れると判断される領域、及び下流側の端部よりも下流側に外れると判断される領域」に相当する。
この縁無し印刷を行う場合には、プリンタドライバ1110は、前記解像度変換処理において、画像データの解像度を、指定の印刷解像度に変換しながら、その印刷領域Aが用紙Sから所定幅だけはみ出すように画像データを加工する。例えば、前記印刷解像度で印刷すると、その画像データの印刷領域Aが用紙Sから大きくはみ出してしまう場合には、前記画像データに対して前記トリミング処理等を適宜行って、用紙Sからの印刷領域Aのはみ出し代が前記所定幅となるようにする。
なお、コンピュータ1100の前記メモリには、A4サイズ等の用紙の規格寸法に関する用紙サイズ情報が予め記憶されている。この用紙サイズ情報は、例えば、キャリッジ移動方向及び搬送方向の大きさがそれぞれに何ドット(D)であるか等を示すものであり、プリンタドライバ1110のユーザインタフェースから入力される前記用紙サイズモードに対応付けられて記憶されている。そして、前記画像データの加工の際には、プリンタドライバ1110は、当該用紙サイズモードに対応する用紙サイズ情報を参照して、その用紙の大きさを把握し、前記加工を行うようになっている。
<縁無し印刷及び縁有り印刷に使用するノズルについて>
前述したように、「縁無し印刷」では、用紙の上端部及び下端部から外れる領域である打ち捨て領域に向けてもインクを吐出する。このため、これら打ち捨てられたインクがプラテン24に付着してプラテン24を汚す虞がある。そこで、前記プラテン24には、用紙Sの上端部及び下端部から外れたインクを回収するための溝部が設けられており、前記上端部及び下端部を印刷する際には、この溝部と対向するノズルのみからインクを吐出するようにノズルの使用を制限している。
図18A乃至図18Cに、プラテン24に設けられた前記溝部とノズルとの位置関係を示す。なお、説明の都合上、前記n=7のノズル列、すなわちノズル#1〜#7を備えたノズル列を例に説明する。なお、図18Aに示すように、搬送方向の上流側及び下流側は、それぞれに、用紙Sの下端側及び上端側に対応している。
図18Aに示すように、前記プラテン24には、搬送方向における下流側の部分と、上流側の部分の2箇所に溝部24a,24bが設けられており、このうちの下流の溝部24aにはノズル#1〜#3が対向し、上流の溝部24bには、ノズル#5〜#7が対向している。そして、用紙Sの上端部を印刷する際には、図18Aのように前記ノズル#1〜#3を用いて印刷し(以下では、これを上端処理と言う)、また、下端部を印刷する際には、図18Bのようにノズル#5〜#7を用いて印刷し(以下では、これを下端処理と言う)、これら上端部と下端部との間の中間部は、図18Cのようにノズル#1〜#7を使用して印刷する(以下では、これを中間処理と言う)。ここで、図18Aに示すように用紙Sの上端部を印刷する際には、当該上端部が下流の溝部24aに到達する以前から、ノズル#1〜#3はインクの吐出を開始している。しかし、その時に用紙Sに着弾せずに打ち捨てられたインクは、前記下流の溝部24a内の吸収材24cに吸収されるため、プラテン24を汚すことは無い。また、図18Bに示すように用紙Sの下端部を印刷する際には、当該下端部が上流の溝部24bを通過した後でもノズル#5〜#7はインクの吐出を継続している。しかし、その時に用紙Sに着弾せずに打ち捨てられたインクは、前記上流の溝部24b内の吸収材24dに吸収されるため、プラテン24を汚すことは無い。
一方、「縁有り印刷」においては、用紙Sの端部に余白を形成するので、用紙Sの上端部及び下端部から外れる領域である打ち捨て領域に向けてはインクを吐出しない。従って、常に、用紙Sがノズルに対向した状態でインクの吐出を開始又は終了することができるため、前記「縁無し印刷」のようなノズルの使用制限は無く、よって、用紙Sの全長に亘ってノズル#1〜#7の全ノズルを使用して印刷を行う。
===(1)処理モードについて===
ユーザは、この「縁無し印刷」及び「縁有り印刷」の選択を、プリンタドライバ1110のユーザインタフェースによって行うことができる。すなわち、前記ユーザインタフェースの画面には、図7に示すように、余白形態を規定する余白形態モードの入力ボタンとして「縁有り」及び「縁無し」の2つのボタンが表示される。
また、当該ユーザインタフェースの画面からは、画像の画質を規定する画質モードの選択も可能であり、その画面には、画質モードの入力ボタンとして「普通」及び「きれい」の2つのボタンが表示される。そして、ユーザが「普通」を入力した場合には、プリンタドライバ1110は、前述の印刷解像度を、例えば360×360dpiに指定する一方で、「きれい」を入力した場合には、前記印刷解像度を、例えば720×720dpiに指定する。
なお、図19の第1対照テーブルに示すように、これら余白モード及び画質モードの組み合わせ毎に、印刷モードが用意されている。そして、この印刷モードのそれぞれに対して、図20の第2対照テーブルに示すように、処理モードが対応付けられている。なお、これら第1及び第2対照テーブルは、コンピュータ1100の前記メモリに記憶されている。
この処理モードは、前述のドット形成動作及び搬送動作を規定するものであり、プリンタドライバ1110は、前記解像度変換処理からラスタライズ処理までの処理において、前記処理モードに応じた形式となるように、画像データを印刷データに変換する。
なお、この処理モードが異なれば、前記ドット形成動作及び前記搬送動作の少なくとも一方が異なる印刷処理を実行する。ここで、前記ドット形成動作が異なる印刷処理とは、各ドット形成動作において使用されるノズルの変化パターンが異なる印刷処理のことであり、また、前記搬送動作が異なる印刷処理とは、各搬送動作の搬送量の変化パターンが異なる印刷処理のことである。これについては、この後で具体例を挙げて説明する。
この処理モードとしては、例えば、第1上端処理モード、第1中間処理モード、第1下端処理モード、第2上端処理モード、第2中間処理モード、第2下端処理モードの6種類が用意されている。
第1上端処理モードは、前述の上端処理を720×720dpiの印刷解像度で実行するための処理モードである。すなわち、基本的にその前半のパス目においては、ノズル#1〜#3のみを用いてインターレース方式で印刷する処理モードである。なお、3つのノズルを用いることに起因して、用紙の搬送量Fは3・Dとなっている(図21Aを参照。)。
第1中間処理モードは、前述の中間処理を720×720dpiの印刷解像度で実行するための処理モードである。すなわち、全パス目に亘って、ノズル列の全ノズルたるノズル#1〜#7を用いてインターレース方式で印刷する処理モードである。なお、7つのノズルを用いることに起因して、用紙の搬送量Fは7・Dとなっている(図21A及び図21Bを参照。)。
第1下端処理モードは、前述の下端処理を720×720dpiの印刷解像度で実行するための処理モードである。すなわち、基本的にその後半のパス目においては、ノズル#5〜#7のみを用いてインターレース方式で印刷する処理モードである。なお、3つのノズルを用いることに起因して、用紙の搬送量は3・Dとなっている(図21Bを参照。)。
第2上端処理モードは、前述の上端処理を360×360dpiの印刷解像度で実行するための処理モードである。すなわち、基本的にその前半のパス目においては、ノズル#1〜#3のみを用いてインターレース方式で印刷する処理モードである。但し、印刷解像度が第1上端処理モードの半分に粗くなっていることに起因して、用紙の搬送量Fは、前記第1上端処理モードの2倍の6・Dになっている(図23Aを参照。)。
第2中間処理モードは、前述中間処理を360×360dpiの印刷解像度で実行するための処理モードである。すなわち、全パス目に亘って、ノズル列の全てのノズルたるノズル#1〜#7を用いてインターレース方式で印刷する処理モードである。但し、印刷解像度が第1中間処理モードの半分に粗くなっていることに起因して、用紙の搬送量Fは、前記第1中間処理モードの2倍の14・Dドットになっている(図23A及び図23Bを参照。)。
第2下端処理モードは、前述の上端処理を360×360dpiの印刷解像度で実行するための処理モードである。すなわち、基本的にその後半のパス目においては、ノズル#5〜#7のみを用いてインターレース方式で印刷する処理モードである。但し、印刷解像度が第1下端処理モードの半分に粗くなっていることに起因して、用紙の搬送量Fは、前記第1下端処理モードの2倍の6・Dとなっている(図23Bを参照。)。
ここで、これら処理モードによって用紙Sに画像が形成される様子を、図21A乃至図24Bを参照して説明する。なお、これらの図は何れも、図A及び図Bの一対の図によって一つの画像が形成される様子を表現している。すなわち、図Aは、画像の上側部分に係るラスタラインが、何れの処理モードの何パス目で何れのノズルによって形成されるかを示しており、また、図Bは、画像の下側部分に係るラスタラインが、何れの処理モードの何パス目で何れのノズルによって形成されるかを示している。
図21A乃至図24Bの左側部分(以下では左図と言う)には、各処理モードでの各パス目における用紙に対するノズル列の相対位置を示している。なお、この左図では、説明の都合上、ノズル列の方を各パス目につき搬送量Fずつ下方に移動させて示しているが、実際には用紙Sの方が搬送方向に移動する。また、このノズル列は、そのノズル番号を丸印で囲って示すように、ノズル#1〜#7を有し、そのノズルピッチk・Dは4・Dであるものとする。また、ドットピッチDは720dpi(1/720インチ)であるものとする。なお、このノズル列において、黒塗りで示すノズルが、インクを吐出するノズルである。
この左図の右側部分(以下では右図と言う)には、各ラスタラインを構成する画素に向けてインクを吐出してドットが形成される様子を示している。なお、前述したが、画素とは、インクを着弾させドットを形成する位置を規定するために、用紙上に仮想的に定められた方眼状の升目であり、右図中の四角の升目は、それぞれに720×720dpiの画素、すなわち前記D四方のサイズの画素を表している。各升目中に記入された番号は、その画素に向けてインクを吐出するノズル番号を示しており、番号の記入されていない升目は、インクが吐出されない画素を示している。また、右図に示すように、前記処理モードにおいて形成可能な最上端のラスタラインを第1ラスタラインR1と呼び、以下、図の下端側に向かうに従って第2ラスタラインR2、第3ラスタラインR3、…と続いているものとする。
(1)第1上端処理モード、第1中間処理モード、及び第1下端処理モードを使用して画像を印刷するケースについて
このケースは、図19及び図20に示す第1印刷モードが設定された場合、すなわち余白形態モードとしては「縁無し」が、また画質モードとしては「きれい」が設定された場合に該当する。そして、図21A及び図21Bに示すように、プリンタ1は、第1上端処理モードで8パスし、次に第1中間処理モードで9パスし、次に第1下端処理モードで8パスする。その結果、印刷領域としての第7ラスタラインR7から第127ラスタラインR127までに亘る領域R7〜R127に対して720×720dpiの印刷解像度でインクが吐出されて、搬送方向の大きさが110・Dである後記「第1サイズ」の用紙は縁無しに印刷される。
なお、前記第1上端処理モード及び第1下端処理モードのパス数は固定値であり、例えば前述の8パスから変化しないが、前記第1中間処理モードのパス数は、プリンタドライバ1110のユーザインタフェースから入力される前記用紙サイズモードに応じて変更されて設定される。これは、縁無し印刷をするためには、用紙サイズモードに対応する用紙よりも印刷領域の大きさを搬送方向に関して大きくする必要があって、この印刷領域の大きさの調整を前記中間処理モードのパス数の変更によって行っているためである。図示例にあっては、用紙サイズモードとして、搬送方向の大きさが110・Dであることを示す「第1サイズ」が入力されたものとしている。そして、前記印刷領域の搬送方向の大きさが121・Dとなるように、第1中間処理モードのパス数が前述の9パスに設定されている。なお、これについては、後で詳細に説明する。
第1上端処理モードでは、基本的には、図21Aの左図に示すように、用紙Sを3・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。この処理モードにおける前半の4パスでは、ノズル#1〜#3を使用して印刷する。また、後半の4パスでは、パスが進む毎に、使用するノズルを#4、#5、#6、及び#7ノズルの順番で一つずつ増やしながら印刷する。なお、この後半の4パスにおいて、使用するノズル数を順次増やしているのは、この直後に続けて実行される第1中間処理モードに、ノズルの使用状態を適合させるためである。
そして、この第1上端処理モードで印刷した結果、右図に示す第1ラスタラインR1から第46ラスタラインR46までの領域R1〜R46に亘ってラスタラインが形成される(右図中では、当該第1上端処理モードによって形成されたラスタラインを網掛けで示している。)。但し、この領域R1〜R46において、全ラスタラインが形成された完成状態の領域は、ラスタラインR7からラスタラインR28までの領域R7〜R28のみであり、ラスタラインR1からラスタラインR6までの領域R1〜R6、及びラスタラインR29からラスタラインR46までの領域R29〜R46については、ラスタラインの未形成部分が存在する未完成状態となっている。
このうちの前者の領域R1〜R6は、所謂印刷不可領域であり、つまり、第2、第3、第6ラスタラインR2,R3,R6に相当する部分は、何れのパス目においてもノズルが通過せず、もって、各画素にドットを形成することができない。よって、当該領域R1〜R6については、画像を記録するために使用しないものとし、前記印刷領域から除外している。一方、後者の領域R29〜R46におけるラスタラインの未形成部分は、この直後に続いて実行される第1中間処理モードによって補完的に形成され、その際に当該領域R29〜R46は完成状態となる。すなわち、この領域R29〜R46は、第1上端処理モードと第1中間処理モードとの両者によって完成される領域であり、以下では、この領域R29〜R46のことを上端中間混在領域という。また、前記第1上端処理モードのみによって形成される領域R7〜R28のことを上端単独領域という。
第1中間処理モードでは、図21A及び図21Bの左図に示すように、基本的には、用紙Sを7・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。そして、その際の1パス目から9パス目までの全パスに亘って、ノズル#1〜#7の全ノズルを使用して印刷を実行し、その結果、右図に示す第29ラスタラインR29から第109ラスタラインR109までの領域R29〜R109に亘ってラスタラインを形成する。
詳細には、前記上端中間混在領域R29〜R46については、前記第1上端処理モードで未形成だったラスタラインR29,R33,R36,R37,R40,R41,R43,R44,R45がそれぞれ補完的に形成されて、当該上端中間混在領域R29〜R46は完成状態となる。また、領域R47〜R91については、当該第1中間処理モードのドット形成動作のみによって、全ラスタラインが形成されて完成状態になる。以下では、この第1中間処理モードのみで完成される領域R47〜R91のことを中間単独領域という。領域R92〜R109については、一部にラスタラインの未形成部分が存在するが、これらは、この後に続けて実行される第1下端処理モードによって補完的に形成され、当該領域R92〜R109は完成状態となる。すなわち、この領域R92〜R109は、第1中間処理モードと第1下端処理モードとの両者によって完成される領域であり、以下では、この領域R92〜R109のことを中間下端混在領域という。なお、右図中では、第1下端処理モードによって形成されるラスタラインを網掛けで示している。
第1下端処理モードでは、図21Bに示すように、基本的には、用紙Sを3・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。この第1下端処理モードにおける後半の5パスでは、ノズル#7〜#9を使用して印刷する。また、この第1下端処理モードにおける前半の3パスでは、パスが進む毎に、使用するノズルをノズル#1、ノズル#2、ノズル#3の順番で一つずつ減らしながら印刷する。すなわち、1パス目では、ノズル#2〜#7を使用し、2パス目では、ノズル#3〜#7を使用し、3パス目ではノズル#4〜#7を使用して印刷する。なお、この前半の3パスにおいて使用するノズル数を順次減らしているのは、この直後に続けて実行される前記後半の5パスに、ノズルの使用状態に適合させるためである。
そして、この第1下端処理モードで印刷した結果、右図に示す第92ラスタラインR92から第133ラスタラインR133までの領域R92〜R133に亘ってラスタラインが形成される。
詳細には、前記中間下端混在領域R92〜R109については、前記第1中間処理モードで未形成だったラスタラインR92,R96,R99,R100,R103,R104,R106,R107,R108がそれぞれ補完的に形成されて、当該中間下端混在領域R92〜R109は完成状態となる。また、領域R110〜R127については、当該第1下端処理モードのドット形成動作のみによって、全ラスタラインが形成されて完成状態になる。以下では、この下端処理モードのみによって形成される領域R110〜R127のことを下端単独領域という。また、領域R128〜R133は、所謂印刷不可領域であり、つまり第128、第131、第132ラスタラインR128,R131,R132に相当する部分は、何れのパス目においてもノズルが通過せず、もって、その各画素にドットを形成することができない。よって、当該領域R128〜R133については、画像を記録するために使用しないものとし、前記印刷領域から除外している。
ところで、このような第1上端処理モード、第1中間処理モード、及び第1下端処理モードを用いて印刷する場合には、その印刷開始位置(印刷開始時における用紙Sの上端の目標位置)を、例えば、前記印刷領域の最上端から下端側に4番目のラスタライン(図21Aにおいては、第10ラスタラインR10)にすると良い。そして、このようにすれば、搬送誤差によって、本来の搬送量よりも用紙が多く送られてしまった場合であっても、その誤差が3・D以内であれば、用紙Sの上端は、前記印刷領域の最上端よりも下端側に位置する。従って、用紙Sの上端部に余白が形成されることはなく、確実に縁無し印刷が達成される。逆に、搬送誤差によって、本来の搬送量よりも少なく送られてしまった場合には、その量が14・D以内であれば、用紙Sの上端は、第24ラスタラインR24よりも上端側に位置することとなり、もって、用紙Sの上端は、溝部上のノズル#1〜#3のみによって印刷され、プラテン24を汚すことはない。
一方、その印刷終了位置(印刷終了時における用紙Sの下端の目標位置)は、例えば、前記印刷領域の最下端から上端側に9番目のラスタライン(図21Bにおいては、第119ラスタラインR119)にすると良い。そして、このようにすれば、搬送誤差によって、本来の搬送量よりも用紙が少なく送られてしまった場合であっても、その誤差が8・D以内であれば、用紙Sの下端は、前記印刷領域の最下端のラスタラインR127よりも上端側に位置する。従って、用紙Sの下端部に余白が形成されることはなく、確実に縁無し印刷が達成される。逆に、搬送誤差によって、本来の搬送量よりも多く送られてしまった場合には、その量が12・D以内であれば、用紙Sの下端は、第106ラスタラインR106よりも下端側に位置することとなり、もって、用紙の下端は、溝部上のノズル#5〜#7のみによって印刷され、プラテン24を汚すことはない。
なお、前述した第1中間処理モードのパス数の設定には、この印刷開始位置及び印刷終了位置が関係している。すなわち、用紙サイズモードに対応する用紙に対して、前述の印刷開始位置及び印刷終了位置の条件を満たすには、先ず、印刷領域の搬送方向の大きさを、前記用紙の上端及び下端からそれぞれに3・D及び8・Dだけはみ出す大きさに設定しなければならず、つまり、搬送方向に関して用紙よりも11・Dだけ大きく設定する必要があるためである。従って、入力された用紙サイズモードが示す搬送方向の大きさよりも11・Dだけ大きくなるように第1中間処理モードのパス数は設定される。ちなみに、前述の「第1サイズ」は、搬送方向の大きさが110・Dであるため、これよりも印刷領域が11・Dだけ大きい121・Dとなるように、第1中間処理モードのパス数は9パスに設定されているのである。
(2)第1中間処理モードのみを用いて画像を印刷するケースについて
このケースは、図19及び図20に示す第2印刷モードが設定された場合、すなわち余白形態モードとして「縁有り」が、また画質モードとして「きれい」が設定された場合に該当する。そして、図22A及び図22Bに示すように、プリンタ1は、第1中間処理モードで9パスする。その結果、印刷領域としての領域R19〜R119に対して720×720dpiの印刷解像度でインクが吐出されて、搬送方向の大きさが110・Dである前記「第1サイズ」の用紙は縁有りに印刷される。
なお、前述のケース(1)と同様に、当該第1中間処理モードのパス数は、入力された用紙サイズモードに応じて変化する。すなわち、印刷領域の大きさが、入力された用紙サイズモードの用紙の上下端部に、所定幅の余白を形成する大きさになるように、前記パス数は設定される。図示例にあっては、用紙サイズモードとして前記「第1サイズ」が入力されていて、その搬送方向の用紙の大きさは110・Dである。よって、この用紙に縁有り印刷すべく、前記印刷領域の搬送方向の大きさが101・Dとなるように、第1中間処理モードのパス数が前述の17パスに設定されている。
前述したように、この縁有り印刷は、用紙の上端部及び下端部に余白を形成して印刷するものである。従って、前記溝部24a,24bと対向するノズルのみを使用して、前記上端部及び下端部を印刷する必要はなく、もって、用紙の搬送方向の全長に亘って#1〜#7ノズルの全ノズルを使用する第1中間処理モードのみに基づいて印刷が実行される。
第1中間処理モードでは、用紙を7・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。そして、図示例では、1パス目から17パス目までの全パスに亘って、ノズル#1〜#7の全ノズルを使用し、その結果、第1ラスタラインR1から第137ラスタラインR137までの領域に亘ってラスタラインを形成する。
但し、上端側の領域R1〜R18については、例えばR18の部分のように、いずれのパス目においてもラスタラインが形成されない部分が存在するので、この領域R1〜R18は前記印刷不可領域となり、前記印刷領域から除外されている。同様に、下端側における領域R120〜R137についても、例えばR120の部分のように、いずれのパス目においてもラスタラインが形成されない部分が存在するので、この領域R120〜R137も印刷不可領域となり、前記印刷領域から除外されている。なお、残る領域R19〜R119は、第1中間処理モードのみで全ラスタラインが形成され、もって、前述の中間単独領域に該当する。
(3)第2上端処理モード、第2中間処理モード、及び第2下端処理モードを使用して画像を印刷するケースについて
このケースは、図19及び図20に示す第3印刷モードが設定された場合、すなわち余白形態モードとして「縁無し」が、また画質モードとして「普通」が設定された場合に該当する。そして、図23A及び図23Bに示すように、プリンタ1は、第2上端処理モードで4パスし、次に第2中間処理モードで5パスし、次に第2下端処理モードで3パスする。その結果、印刷領域としての領域R3〜R64に対して360×360dpiの印刷解像度でインクが吐出されて、前記「第1サイズ」の用紙は縁無しに印刷される。
なお、印刷解像度が360×360dpiであるために、右図に示す升目は、一つおきにドットで埋められており、すなわち、印刷領域のラスタラインは、升目一つおきに形成されている。
前述の(1)のケースと同様に、前記第2上端処理モード及び第2下端処理モードのパス数は固定値であって変化しないが、前記第2中間処理モードのパス数は、前記用紙サイズモードに応じて変更して設定される。すなわち、何れの用紙サイズモードの用紙に対しても、確実に縁無し印刷を達成すべく、前記用紙の大きさよりも印刷領域の大きさが14・Dだけ大きくなるように、前記第2中間処理モードのパス数は設定される。
なお、この14・Dという値は、前記印刷開始位置が、印刷領域の最上端から下端側に4番目のラスタライン(図23Aにおいては、第6ラスタラインR6)に、また、前記印刷終了位置が、印刷領域の最下端から上端側に4番目のラスタライン(図23Bにおいては、第61ラスタラインR61)となるように決定されている。図示例にあっては、「第1サイズ」が入力されているため、搬送方向の用紙の大きさは110・Dであり、もって、前記印刷領域の搬送方向の大きさが124・D(=110・D+14・D)となるように、第1中間処理モードのパス数が5パスに設定されている。
第2上端処理モードでは、基本的には、図23Aの左図に示すように、用紙を6・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。
この第2上端処理モードにおける前半の2パスでは、ノズル#1〜#3を使用して印刷する。また、後半の2パスでは、パスが進む毎に、使用するノズルを#4ノズル、#5ノズル、#6ノズル、及び#7ノズルの順番で2つずつ増やしながら印刷する。なお、この使用するノズル数を順次増やす理由は、前述の(1)のケースと同じである。
そして、この第2上端処理モードで印刷を行った結果、右図に示す領域R1〜R22に亘ってラスタラインが形成される(右図中、形成されたラスタラインを網掛けで示している。)。但し、前述の上端単独領域に該当するところの、全ラスタラインが形成された完成状態の領域は、領域R3〜R16のみであり、領域R1〜R2、及び領域R17〜R22は、一部に未形成のラスタラインが存在する未完成状態となっている。このうちの前者の領域R1〜R2は、いずれのパス目においても第2ラスタラインR2に相当する部分にラスタラインが形成されないので、前記印刷不可領域となり、前記印刷領域から除外されている。一方、後者の領域R17〜R22は、前述の上端中間混在領域に該当し、この領域R17〜R22におけるラスタラインの未形成部分は、この直後に続いて実行される第2中間処理モードによって補完的に形成されて完成状態となる。
第2中間処理モードでは、図23A及び図23Bの左図に示すように、基本的には、用紙を14・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。そして、その際の1パス目から5パス目までの全パスに亘って、ノズル#1〜#7の全ノズルを使用して印刷を実行し、その結果、右図に示す領域R17〜R57にラスタラインを形成する。詳細には、前記上端中間混在領域R17〜R22については、前記第2上端処理モードで未形成だったラスタラインR17,R19,R21がそれぞれ補完的に形成されて完成状態となる。また、領域R23〜R51は、前述の中間単独領域に該当し、この領域R23〜R51は、当該第2中間処理モードのドット形成動作のみによって、全ラスタラインが形成されて完成状態になる。領域R52〜R57は、前述の中間下端混在領域に該当し、一部にラスタラインの未形成部分が存在するが、これらは、この後に続けて実行される第2下端処理モードによって補完的に形成され、当該領域R52〜R57は完成状態となる。なお、右図では、第2下端処理モードのみによって形成されるラスタラインを網掛けで示している。
第2下端処理モードでは、図23Bに示すように、基本的には、用紙を6・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、ドット形成動作を1パスずつ行うインターレース方式の印刷を実行する。
この第2下端処理モードにおける後半の1パスでは、ノズル#7〜#9を使用して印刷する。また、この第2下端処理モードにおける前半の2パスでは、パスが進む毎に、使用するノズルをノズル#1、ノズル#2、ノズル#3、ノズル#4の順番で2つずつ減らしながら印刷する。なお、この使用するノズル数を順次減らす理由は、前述の(1)のケースと同じである。
そして、この第2下端処理モードを実行した結果、右図に示す領域R48〜R66に亘ってラスタラインが形成される。詳細には、前記中間下端混在領域R52〜R57については、前記第2中間処理モードで未形成だったラスタラインR52,R54,R56がそれぞれ補完的に形成されて完成状態となる。また、領域R58〜R64は、前述の下端単独領域に該当し、当該第2下端処理モードのドット形成動作のみによって、全ラスタラインが形成されて完成状態になる。残る領域R65〜R66は、いずれのパス目においても第65ラスタラインR65に相当する部分にラスタラインが形成されないので、前記印刷不可領域となり、前記印刷領域から除外されている。
(4)第2中間処理モードのみを用いて画像を印刷するケースについて
これは、図19及び図20に示す第4印刷モードが設定された場合、すなわち余白形態モードとして「縁有り」が、また画質モードとして「普通」が設定された場合に該当する。そして、図24A及び図24Bに示すように、プリンタ1は、第1中間処理モードで8パスする。その結果、印刷領域としての領域R7〜R56に対して360×360dpiの印刷解像度でインクが吐出されて、前記「第1サイズ」の用紙は縁有りに印刷される。
なお、前述の(2)のケースと同様に、前記第2中間処理モードのパス数は、用紙サイズモードに応じて変化する。図示例にあっては、前記「第1サイズ」が入力されていているため、この110・Dの大きさの用紙に縁有り印刷すべく、前記印刷領域の搬送方向の大きさが100・Dとなるように、第2中間処理モードのパス数が前述の8パスに設定されている。なお、この縁有り印刷において、第2中間処理モードで印刷する理由は、前述の(2)のケースと同じである。
この第2中間処理モードでは、用紙を14・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。そして、図示例では、1パス目から8パス目までの全パスに亘って、#1〜#7の全ノズルを使用し、その結果、領域R1〜R62に亘ってラスタラインが形成される。
但し、上端側における領域R1〜R6については、例えば、R6の部分のようにいずれのパス目においてもラスタラインが形成されない部分が存在するので、この領域R1〜R6は印刷不可領域となり、前記印刷領域から除外されている。同様に、下端側における領域R57〜R62についても、例えばR57の部分のように、いずれのパス目においてもラスタラインが形成されない部分が存在するので、この領域R57〜R62も印刷不可領域となり、前記印刷領域から除外されている。なお、残る領域R7〜R56は、第1中間処理モードのみで全ラスタラインが形成され、もって、前述の中間単独領域に該当する。
ちなみに、以上説明してきた、第1上端処理モード、第1中間処理モード、及び第1下端処理モード、第2上端処理モード、第2中間処理モード、及び第2下端処理モードは、それぞれに、異なる処理モードであるが、これは、これら6者の関係が、少なくともドット形成動作及び搬送動作の少なくとも一方が異なる印刷処理を実行する関係に該当しているためである。
すなわち、搬送動作が異なる印刷処理とは、前述したように、各搬送動作の搬送量F(各パスの搬送量F)の変化パターンが異なる印刷処理のことを言うが、これについては、第1中間処理モードの変化パターンが全パスに亘って7・Dであり、第2中間処理モードの変化パターンが全パスに亘って14・Dであり、第1上端処理モード及び第1下端処理モードの変化パターンが全パスに亘って3・Dであり、第1上端処理モード及び第1下端処理モードの変化パターンが全パスに亘って6・Dである。従って、第1中間処理モード及び第2中間処理モードは、この搬送量Fの変化パターンの点に関して他の何れの処理モードとも異なっており、もって、これらは、他の処理モードとは異なる処理モードとなっている。
一方、第1上端処理モードと第1下端処理モードとは、前記搬送量Fの変化パターンが共に全パスに亘って3・Dであることから、搬送動作の印刷処理については互いに異なってはいない。しかし、ドット形成動作の印刷処理については、両者は異なっており、これによって、これら両者は互いに異なる処理モードとなっている。すなわち、前記第1上端処理モードにおいて各ドット形成動作(各パス)で使用されるノズルの変化パターンは、1パス目から4パス目までについてはノズル#1〜#3を使用し、5パス目から8パス目まではパスが進む毎に、#4,#5,#6,#7の順番でノズルを1つずつ増やして使用するパターンであるが、これに対して、この第1下端処理モードの変化パターンは、1パス目から4パス目までについては、#1,#2,#3,#4の順番でノズルを1つずつ減らして使用し、5パス目から8パス目までについてはノズル#5〜#7を使用するパターンである。従って、これら第1上端処理モードと第1下端処理モードとは、前記ノズルの変化パターンに関して互いに異なっており、すなわち、ドット形成動作の印刷処理に関して互いに異なっている。そして、これによって、これら両者は、互いに異なる処理モードとなっている。
同様に、第2上端処理モードと第2下端処理モードとは、前記搬送量の変化パターンが共に全パスに亘って6・Dであることから、搬送動作の印刷処理については互いに異なってはいない。しかし、ドット形成動作の印刷処理については、両者は異なっており、これによって、両者は互いに異なる処理モードとなっている。すなわち、前記第2上端処理モードにおいて各ドット形成動作(各パス)で使用されるノズルの変化パターンは、1パス目から2パス目までについてはノズル#1〜#3を使用し、3パス目から4パス目まではパスが進む毎に、#4,#5,#6,#7の順番でノズルを2つずつ増やして使用するパターンであるが、これに対して、この第2下端処理モードの変化パターンは、1パス目では#3〜#7を使用し、3パス目から4パス目までについてはノズル#5〜#7を使用するパターンである。従って、これら第2上端処理モードと第2下端処理モードとは、前記ノズルの変化パターンに関して互いに異なっており、すなわち、ドット形成動作の印刷処理に関して互いに異なっている。そして、これによって、これら両者は、互いに異なる処理モードとなっている。
以上、各処理モードについて具体的に説明してきたが、画像形成に寄与する領域は、前記印刷領域のみであるため、以下の説明においては、ラスタライン番号を印刷領域のみにふり直すことにする。すなわち、図21A乃至図24Cの右図に示すように、印刷領域における最上端のラスタラインを第1ラスタラインr1と呼び、以下、図の下端側に向かうに従って第2ラスタラインr2、第3ラスタラインr3、…と続いているものとする。
===(1)画像中の濃度ムラの発生原因について===
CMYKのインクを用いて多色印刷された画像中に生じる濃度ムラは、基本的には、その各インク色でそれぞれに生じる濃度ムラが原因である。このため、通常は、各インク色の濃度ムラをそれぞれ別々に抑制することによって、多色印刷された画像中の濃度ムラを抑制する方法が採られている。
そこで、以下では、単色印刷された画像中に生じる濃度ムラの発生原因について説明する。図25は、単色印刷された画像中に生じる濃度ムラを説明するための図であり、すなわち、CMYKのうちの1つのインク色、例えばブラックインクで印刷した画像の濃度ムラを示している。
図示するように、ここで言う濃度ムラは、前記キャリッジ移動方向に平行に沿って縞状に見えるものである。その発生原因の主なものとしては、ノズルの加工精度が悪くインクの吐出方向が傾いていることによって、そのドット形成位置が、目標形成位置に対して搬送方向にずれていることが挙げられる。そして、その場合には、必然的に、これらドットが構成するラスタラインRの形成位置も搬送方向に関して目標形成位置からずれてしまうため、搬送方向に隣り合うラスタラインRとの間隔が、周期的に空いたり詰まったりした状態となって、これを巨視的に見ると縞状の濃度ムラとなって見えてしまうのである。すなわち、隣り合うラスタラインRとの間隔が広いラスタラインRは巨視的に薄く見え、間隔が狭いラスタラインRは巨視的に濃く見えるのである。
なお、この濃度ムラの発生原因は、他のインク色に関しても当てはまることである。そして、CMYKのうちの1色でもこの傾向があれば、多色印刷の画像中には濃度ムラが顕れてしまう。
このような濃度ムラを抑制する第1の参考例の方法としては、所定の濃度の階調値で補正用パターンを形成し、この補正用パターンから各ノズルが形成したラスタラインの濃度を測定することによってノズル毎に補正値を求め、画像を本印刷する際には、前記補正値によってノズル毎に補正する方法が挙げられる。なお、多色印刷の場合には、補正用パターンは、多色印刷に用いる例えばCMYKのインク色毎に印刷され、前記補正値はインク色毎に求められているのは言うまでもない。
この方法について具体的に説明する。先ず、前記6種類の処理モードのなかから、例えば第1中間処理モードを選び、当該処理モードを用いてノズルからインクを吐出して補正用パターンを印刷する。この補正用パターンは、搬送方向の所定ピッチで形成された多数のラスタラインから構成され、また、各ラスタラインは、インクの着弾痕であるキャリッジ移動方向に並ぶ複数のドットから構成される。なお、印刷の際には、補正用パターンの全ての画素に対しては、同じ階調値の指令値が与えられてインクが吐出されている。
次に、この補正用パターンの濃度をラスタライン毎に測定し、各測定値に基づいてラスタライン毎に濃度の補正値を求める。そして、各ラスタラインを形成したノズルを割り出して、ノズル毎に前記補正値を対応付けて記録する。
最後に、当該補正値を用いて画像を本印刷するが、その際には、その画像データが有する各画素データの階調値を前記補正値分だけ補正してインクを吐出し、これによって濃度ムラを抑制する。詳細には、隣り合うラスタラインとの間隔が広いために前記測定値が小さくなったラスタラインを形成するノズルに対しては、そのインク量を増やしてラスタラインが濃く見えるようにし、逆に前記間隔が狭いために前記測定値が大きくなったラスタラインを形成するノズルに対しては、そのインク量を減らしてラスタラインが薄く見えるようにする。
しかしながら、前記濃度ムラの原因となっている、搬送方向に隣り合うラスタラインとの間隔の状態は、当該隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせによって変化する。そして、この組み合わせは、前記処理モードに応じて変化する。
従って、前記第1中間処理モードによって印刷した補正用パターンに基づく補正値は、当該第1中間処理モードによって本印刷する場合には有効であるが、これと異なる処理モードで本印刷する場合には、隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせが異なるために、当該補正値を流用できない。例えば、第1印刷モードに係る縁無し印刷の場合には、前記第1中間処理モード以外に、第1上端処理モードや第1下端処理モードを用いて画像を本印刷するが、この第1上端処理モード及び第1下端処理モードに対しては、前記第1中間処理モードの補正値を流用できないのである。
これを、図21Aの右図を参照して具体的に説明すると、前述の第1中間処理モードで本印刷する場合には、ラスタラインを形成するノズルの順番は、例えば、搬送方向に関して#2,#4,#6,#1,#3,#5,#7の順番を一巡として、これを繰り返すものである(例えば、領域r41〜r54を参照。)。一方、第1上端処理モードの場合には、そのラスタラインを形成するノズルの順番は、例えば、搬送方向に関して#1,#2,#3の順番を一巡として、これを繰り返すものである(例えば、領域r1〜r6を参照。)。
ここで、第1中間処理モードと第1上端処理モードの両者について、ノズル#1が形成するラスタラインとして例えばr44とr4に注目すると、第1中間処理モードにおいては、前記ラスタラインr44の直近上流のラスタラインr45はノズル#3により形成され、直近下流のラスタラインr43はノズル#6により形成される。このため、ノズル#1が形成するラスタラインr44の巨視的な濃度は、ノズル#3,#1,#6の組み合わせによって決まる。これに対して、第1上端処理モードにおいては、ノズル#1が形成するラスタラインr4の直近上流のラスタラインr5は、ノズル#2により形成され、直近下流のラスタラインr3はノズル#3により形成されるため、ノズル#1が形成するラスタラインr4の巨視的な濃度は、ノズル#2,#1,#3の組み合わせによって決まる。そして、この第1上端処理モードのノズル#2,#1,#3の組み合わせは、前述の第1中間処理モードのノズルの組み合わせたるノズル#3,#1,#6とは相違しており、もって、第1上端処理モードでノズル#1が形成するラスタラインr4の巨視的な濃度は、第1中間処理モードでノズル#1が形成するラスタラインr44の巨視的な濃度とは相違する。従って、第1中間処理モードの補正値を第1上端処理モードに対して流用することはできない。
そこで、以下に説明する第2の参考例にあっては、処理モード毎に補正用パターンを印刷して、処理モード毎に各ラスタラインの濃度の補正値を求めている。そして、所定の処理モードで画像を本印刷する際には、その処理モードで印刷した補正用パターンに基づいて求められた補正値を用いて、各ラスタラインの濃度補正を実行し、これによって濃度ムラを確実に抑制するようにしている。
===(1)第2の参考例の濃度ムラを抑制した画像の印刷方法===
図26は、第2の参考例に係る画像の印刷方法の全体の処理手順を示すフローチャートである。
先ず、製造ラインにおいてプリンタ1が組み立てられ(S110)、次に、検査ラインの作業者によって、濃度ムラを抑制するための濃度の補正値が前記プリンタ1に設定され(S120)、次に前記プリンタ1が出荷される(S130)。そして、当該プリンタ1を購入したユーザによって画像の本印刷が行われるが、その本印刷の際には、前記プリンタ1は前記補正値に基づいてラスタライン毎に濃度補正を実行しながら用紙に画像を印刷する(S140)。
以下では、ステップS120及びステップS140の内容について説明する。
<ステップS120:濃度ムラを抑制するための濃度の補正値の設定>
図27は、図26中のステップS120の手順を示すフローチャートである。始めに、このフローチャートを参照し、この濃度の補正値の設定手順について概略説明する。
ステップS121:先ず、検査ラインの作業者は、検査ラインのコンピュータ1100にプリンタ1を接続し、このプリンタ1によって、補正値を求めるための補正用パターンを印刷する。なお、この補正用パターンを印刷するプリンタ1は、濃度ムラの抑制対象のプリンタ1であり、つまり当該補正値の設定はプリンタ毎に行われる。また、前記補正用パターンは、インク色毎且つ各処理モード毎の区分でそれぞれに印刷される(図28を参照。)。
ステップS122:次に、印刷された全ての補正用パターンの濃度をラスタライン毎に測定し、当該測定値を、ラスタライン番号と対応付けて記録テーブルに記録する。なお、この記録テーブルは、検査ラインのコンピュータ1100のメモリに、前記インク色毎且つ処理モード毎の区分でそれぞれ用意されている(図32を参照。)。
ステップS123:次に、前記コンピュータ1100は、記録テーブルに記録された濃度の測定値に基づいて、ラスタライン毎に濃度の補正値を算出し、当該補正値を、ラスタライン番号と対応付けて補正値テーブルに記録する。なお、この補正値テーブルは、前記プリンタ1の前記メモリ63に、前記インク色毎且つ処理モード毎の区分でそれぞれ用意されている(図34を参照。)。
以下、これらステップS121乃至S123のそれぞれについて詳細に説明する。
(1)ステップS121:補正用パターンの印刷
先ず、検査ラインの作業者は、この検査ラインのコンピュータ1100等に、補正値の設定対象のプリンタ1を通信可能に接続し、図1で説明した印刷システムの状態に設定する。そして、前記コンピュータ1100の前記メモリに格納されている補正用パターンの印刷データに基づいて用紙に補正用パターンを印刷するようにプリンタ1に指示し、送信された前記印刷データに基づいてプリンタ1は用紙Sに補正用パターンを印刷する。なお、この補正用パターンの印刷データは、CMYKの各インク色の階調値を直接指定して構成されたCMYK画像データに対して、前述のハーフトーン処理及びラスタライズ処理を行って生成されたものである。前記CMYK画像データの画素データの階調値は、インク色毎に形成される補正用パターン毎に、その全画素に亘って同一の値が設定されており、もって、各補正用パターンは、それぞれに、その全域に亘って、ほぼ一定の濃度で印刷される。前記階調値は、適宜な値に設定可能であるが、濃度ムラが生じ易い範囲の濃度ムラを積極的に抑制する観点からは、CMYKの色に関して所謂中間調領域となるような階調値を選ぶのが望ましい。具体的に言えば、前記256段階の階調値の場合には、77〜128の範囲から選ぶと良い。
前記作業者の印刷の指示は、プリンタドライバ1110のユーザインタフェースによって行われる。その際には、このユーザインタフェースから、印刷モード及び用紙サイズモードが設定され、プリンタドライバ1110は、この設定に対応する前記印刷データに基づいて補正用パターンを印刷する。すなわち、前記補正用パターンの印刷データは、印刷モード毎及び用紙サイズ毎に用意されている。但し、「第1印刷モード」及び「第3印刷モード」の印刷データは必須であるが、「第2印刷モード」及び「第4印刷モード」については必須ではない。これは、「第2印刷モード」及び「第4印刷モード」の補正用パターンは、前記「第1印刷モード」又は「第3印刷モード」の補正用パターンの一部に含まれており、後述のように、流用可能であるためである。
図28に、用紙に印刷された補正用パターンを示す。この補正用パターンCPは、CMYKのインク色毎に印刷されている。図示例にあっては、キャリッジ移動方向に沿って、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の順番で、各インク色の補正用パターンCPc,CPm,CPy,CPkが一枚の用紙S上に並列されている。
なお、これら補正用パターン同士の相違点は、基本的にインク色が異なるだけであるため、以下では、これら補正用パターンCPを代表して、ブラック(K)の補正用パターンCPkについて説明する。
また、前述したように多色印刷における濃度ムラの抑制は、その多色印刷に用いるインク色毎にそれぞれ行われ、更に、それぞれ抑制に用いられる方法は同じである。このため、以下の説明においては、ブラック(K)に代表させて説明する。すなわち、以下の説明においては、ブラック(K)の一色についてだけ記載している箇所も有るが、その他のC,M,Yのインク色についても同様である。
このブラック(K)の補正用パターンCPkは、搬送方向に長い帯形状に印刷されている。そして、その搬送方向の印刷範囲は用紙Sの全域に亘っている。
また、この補正用パターンCPkは、処理モード毎に印刷されるが、図示例では、搬送方向に関して略三分割された各領域に、互いに処理モードの異なる補正用パターンCP1,CP2,CP3が一つずつ印刷されている。
ここで、この分割された各領域に、何れの処理モードの補正用パターンCP1,CP2,CP3を印刷するかという対応関係については、本印刷時の対応関係と一致させるのが望ましい。そして、このようにすれば、前記本印刷時と同じ搬送動作及びドット形成動作を、当該補正用パターンCP1,CP2,CP3の印刷時においても忠実に再現させることができるため、これら補正用パターンCP1,CP2,CP3に基づいて得られる補正値の補正精度が向上し、濃度ムラを確実に抑制可能となる。
例えば、前述の第1上端処理モード、第1中間処理モード、及び第1下端処理モードを例に説明すると、用紙Sの上端部の領域に対しては、第1上端処理モードで補正用パターン(以下、第1上端補正用パターンCP1と言う)を印刷し、用紙Sの中間部の領域に対しては、第1中間処理モードで補正用パターン(以下、第1中間補正用パターンCP2と言う)を印刷し、用紙Sの下端部の領域に対しては、第1下端処理モードで補正用パターン(以下、第1下端補正用パターンCP3と言う)を印刷すると良い。これは、本印刷時において第1印刷モードが選択された場合には、用紙Sの上端部は第1上端処理モードで本印刷され、また用紙の中間部は第1中間処理モードで、更には用紙の下端部は第1下端処理モードでそれぞれ本印刷されるからである。
ここで、当該補正用パターンCP1,CP2,CP3の形成過程を、前述の第1上端、第1中間、及び第1下端補正用パターンCP1,CP2,CP3を例に詳細に説明する。なお、以下で説明する内容は、第2上端処理モード、第2中間処理モード、及び第2下端処理モードについても当てはまり、その基本的な流れに沿って実行すれば同じように濃度補正を行えるのは明らかであるため、これらの説明については省略する。
図29A及び図29Bは、各補正用パターンCP1,CP2,CP3を構成するラスタラインが、何れのノズルによって形成されるかを示しており、図29Aは第1上端補正用パターンCP1及び第1中間補正用パターンCP2について、また、図29Bは第1中間補正用パターンCP2及び第1下端処理補正用パターンCP3について示している。なお、これら図29A及び図29Bは、前述の図21A及び図21Bと同じ様式で示している。
この図示例にあっては、印刷モードとして「第1印刷モード」が、また用紙サイズモードとして「第1サイズ」が設定されている。そして、この設定に対応する補正用パターンの印刷データが前記メモリ内から選択されて、図29A及び図29Bの右図に示すように、用紙Sの上端部、中間部、及び下端部の各領域には、それぞれに本印刷時に用いられる処理モードによって各補正用パターンCP1,CP2,CP3が印刷される。
すなわち、図21Aの本印刷時と同様に、第1上端処理モードの8パスによって、図29Aに示す用紙の上端部には、領域r1〜r40についてラスタラインが形成され、当該領域r1〜r40に形成されるラスタラインが、第1上端補正用パターンCP1を構成する。なお、この領域r1〜r40における前記上端中間混在領域r23〜r40については、前述したように、第1上端処理モードと第1中間処理モードとの両者によって形成され、その一部のラスタラインr24,r25,r26,r28,r29,r32,r33,r36,r40は、第1中間処理モードによって形成されるが、これらラスタラインも第1上端補正用パターンCP1を構成するものとして扱う。すなわち、右図に網掛けで示すように、第1上端補正用パターンCP1は、上端単独領域r1〜r22及び上端中間混在領域r23〜r40の各ラスタラインから構成されている。
また、図21A及び図21Bの本印刷時と同様に、第1中間処理モードの9パスによって、図29A及び図29Bに示す用紙の中間部には、領域r23〜r103についてラスタラインが形成される。但し、前述したように上端中間混在領域r23〜r40の各ラスタラインは、第1上端補正用パターンCP1を構成するものとして扱うとともに、後述する中間下端混在領域r86〜r103の各ラスタラインは、第1下端補正用パターンCP3を構成するものとして扱う。このため、残る中間単独領域r41〜r85の各ラスタラインが第1中間補正用パターンCP2を構成する。右図では、第1中間補正用パターンCP2を構成するラスタラインを網掛け無しで示している。
更に、図21Bに示す本印刷時と同様に、第1下端処理モードの8パスによって、図29Bに示す用紙の下端部には、領域r86〜r121についてラスタラインが形成され、当該領域r86〜r121に形成されるラスタラインが、第1下端補正用パターンCP3を構成する。なお、この領域r86〜r121における中間下端混在領域r86〜r103は、前述したように当該第1下端処理モードと前記第1中間処理モードとの両者によって形成され、その一部のラスタラインr87,r88,r89,r91,r92,r95,r96,r99,r103は、第1中間処理モードによって形成されるが、これらラスタラインも第1下端補正用パターンCP1を構成するものとして扱う。すなわち、右図に網掛けで示すように、第1下端補正用パターンCP3は、中間下端混在領域r86〜r103及び下端単独領域r104〜r121の各ラスタラインから構成されている。
ここで、これら補正用パターンCP1,CP2,CP3において隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせについて注目すると、当然ではあるが、これらの組み合わせは、本印刷時のノズルの組み合わせを示す図21A、図21Bの右図と対比してわかるように、前記本印刷時の組み合わせと同じになっている。すなわち、図29A及び図29Bの右図に示す、第1上端補正用パターンCP1に係る領域r1〜r40において隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせは、図21Aの右図に示す、本印刷時に第1上端処理モードで印刷される領域r1〜r40におけるノズルの組み合わせと同じになっている。同様に、図29A及び図29Bの右図に示す、第1中間補正用パターンCP2に係る中間単独領域r41〜r85におけるノズルの組み合わせは、図21A及び図21Bの右図に示す、本印刷時に第1中間処理モードのみで印刷される中間単独領域r41〜r85におけるノズルの組み合わせと同じである。また、図29Bの右図に示す、第1下端補正用パターンCP3に係る領域r86〜r121におけるノズルの組み合わせは、図21Bの右図に示す、本印刷時に第1下端処理で印刷される領域r86〜r121におけるノズルの組み合わせと同じである。
従って、これら処理モード毎に形成した補正用パターンCP1,CP2,CP3に基づいてラスタライン毎に濃度の補正をすることによって、本印刷時の画像の濃度ムラを確実に抑制することが可能であるのがわかる。
なお、この例で補正用パターンCPの印刷に用いた用紙サイズは、本印刷時と同じ搬送動作及びドット形成動作を再現させるべく、前記第1サイズとし、すなわち搬送方向について110・Dの大きさにしている。従って、実際には、この用紙サイズでは、印刷領域r1〜r121における最上端側及び最下端側の部分(主に打ち捨て領域に相当する部分)を印刷することができず、この部分に関する補正用パターンCPを取得できない場合がある。
しかしながら、その場合には、搬送方向に関して前記印刷領域r1〜r121を全てカバーできるように、例えば120・D以上の長さの用紙を用いれば良い。そして、打ち捨て領域に関する補正用パターンCPとしては、この120・D以上の長さの用紙に印刷した補正用パターンを用いる一方で、打ち捨て領域以外の部分の補正用パターンCPとしては、前記第1サイズの用紙に印刷した補正用パターンCPを用いれば良い。
(2)ステップS122:補正用パターンの濃度をラスタライン毎に測定
図29A及び図29Bに示す各補正用パターンCP1,CP2,CP3の濃度は、当該濃度を光学的に測定する濃度測定装置によってラスタライン毎に測定される。この濃度測定装置は、ラスタライン方向の所定数の画素の平均濃度を、ラスタライン毎に測定可能な装置であり、その一例としては、周知のスキャナ装置が挙げられる。なお、所定数の画素の平均濃度で各ラスタラインの濃度を評価する理由は、前記ハーフトーン処理によって各画素に形成されるドットの大きさは、各画素の階調値を揃えて印刷しても、画素毎に異なってしまうためであり、つまり、一つの画素に、一行のラスタラインの濃度を代表させることができないためである。
図30A及び図30Bに、このスキャナ装置の縦断面図及び平面図をそれぞれ示す。このスキャナ装置100は、原稿101を載置する原稿台ガラス102と、この原稿台ガラス102を介して前記原稿101と対面しつつ所定の移動方向に移動する読取キャリッジ104とを備えている。読取キャリッジ104には、原稿101に光を照射する露光ランプ106と、原稿101からの反射光を、前記移動方向と直交する直交方向の所定範囲に亘って受光するリニアセンサ108とを搭載している。そして、前記読取キャリッジ104を前記移動方向に移動させながら、所定の読み取り解像度で原稿101から画像を読み取るようになっている。なお、図30A中の破線は前記光の軌跡を示している。
図30Bに示すように、原稿101としての補正用パターンCPが印刷された用紙は、そのラスタライン方向を前記直交方向に揃えて原稿台ガラス102に載置され、これによって、そのラスタライン方向の所定数の画素の平均濃度を、ラスタライン毎に読み取り可能となっている。なお、前記読取キャリッジ104の前記移動方向の読み取り解像度は、前記ラスタラインのピッチの整数倍の細かさにするのが望ましく、このようにすれば、読み取った濃度の測定値とラスタラインとの対応付けが容易になる。
この補正用パターンCPkの濃度の測定値の一例を図31に示す。図31の横軸はラスタライン番号を、また縦軸には、濃度の測定値を示している。図中の実線は前記測定値であり、参考として、第2の参考例に係る濃度補正後の測定値も破線で示している。
補正用パターンCPkを構成する全てのラスタラインに亘って、同じ濃度の階調値で印刷したにも拘わらず、実線で示す測定値はラスタライン毎に上下に大きくばらついているが、これが、前述したインクの吐出方向のばらつき等に起因する濃度ムラである。すなわち、隣り合うラスタラインとの間隔が狭いラスタラインの濃度は大きく測定される一方、間隔が広いラスタラインの濃度は小さく測定されている。
この第2の参考例では、後述する濃度補正を本印刷時に行うことによって、この測定値が大きいラスタラインに対応するラスタラインについては、例えば当該ラスタラインを構成するドットの生成率(前記レベルデータに相当)を小さくしてその巨視的な濃度が小さくなるように補正する一方、逆に測定値が小さいラスタラインに対応するラスタラインについては、当該ラスタラインを構成するドットの生成率を大きくしてその巨視的な濃度が大きくなるように補正し、その結果、画像の濃度ムラを抑制する。ちなみに、後述の濃度補正を行いながら前記ブラック(K)の補正用パターンCPkを印刷したとすると、その濃度の測定結果としては、図31の破線で示すようにラスタライン毎のバラツキが小さく抑制された測定値が得られる。
ところで、このスキャナ装置100は、前記プリンタ1に通信可能に接続されている。そして、当該スキャナ装置100で読み取った補正用パターンの濃度の各測定値は、ラスタライン番号と対応付けられながら、コンピュータ1100の前記メモリに用意された記録テーブルに記録される。なお、このスキャナ装置100から出力される前記濃度の測定値は、256段階の階調値で示されたグレイスケール(色情報を持たず、明度だけで作られたデータ)である。ここで、このグレイスケールを用いる理由は、測定値が色情報を持っていると、当該測定値を対象のインク色の階調値のみで表現する処理を行わねばならず、処理が煩雑になるためである。
図32に、記録テーブルの概念図を示すが、当該記録テーブルは、インク色毎且つ処理モード毎の区分で用意されている。そして、前記各区分で印刷された補正用パターンCPの測定値が、対応する記録テーブルに記録される。
図33A乃至図33Cに、これら記録テーブルを代表してブラック(K)の第1上端処理モード用、第1中間処理モード用、第1下端処理モード用の記録テーブルをそれぞれ示す。これら記録テーブルは、測定値を記録するためのレコードを有している。各レコードには、レコード番号が付けられており、番号の小さいレコードには、対応する補正用パターンCP1,CP2,CP3における番号の小さいラスタラインの測定値が順次記録される。なお、図33A乃至図33Cに示す「***」は、レコードに測定値が記録されている状態を示しており、空欄は記録されていない状態を示している。
図33Aに示す第1上端処理モード用の記録テーブルには、第1上端補正用パターンCP1の各ラスタラインの測定値が記録される。なお、前述したように、この第1上端補正用パターンCP1は、図29Aに示す上端単独領域r1〜r22及び上端中間混在領域r23〜r40の各ラスタラインで構成されているため、この記録テーブルには上端単独領域及び中間混在領域の各ラスタラインの測定値が記録される。ちなみに、これら領域のラスタラインは40本であるため、各測定値は、前記記録テーブルの第1レコードから第40レコードまでの範囲に記録される。
図33Bに示す第1中間処理モード用の記録テーブルには、第1中間補正用パターンCP2の各ラスタラインの測定値が記録される。なお、前述したように、この第1中間補正用パターンCP2は、図29A及び図29Bに示す中間単独領域r41〜r85の各ラスタラインで構成されているため、この記録テーブルには中間単独領域の各ラスタラインの測定値が記録される。ちなみに、この領域のラスタラインは45本であるため、各測定値は、前記記録テーブルの第1レコードから第45レコードまでの範囲に記録される。
図33Cに示す第1下端処理モード用の記録テーブルには、第1下端補正用パターンCP3の各ラスタラインの測定値が記録される。なお、前述したように、この第1下端補正用パターンCP3は、図29Bに示す中間下端混在領域r86〜r103及び下端単独領域r104〜r121の各ラスタラインで構成されているため、この記録テーブルには中間下端混在領域及び下端単独領域の各ラスタラインの測定値が記録される。ちなみに、これら領域のラスタラインは36本であるため、各測定値は、前記記録テーブルの第1レコードから第36レコードまでの範囲に記録される。
(3)ステップS123:ラスタライン毎に濃度の補正値を設定
次に、コンピュータ1100は、各記録テーブルの各レコードに記録された測定値に基づいて、濃度の補正値を算出し、当該補正値を、プリンタ1の前記メモリ63内の補正値テーブルに設定する。図34に、この補正値テーブルの概念図を示すが、当該補正値テーブルは、前記記録テーブルと同じ区分で、すなわちインク色毎且つ処理モード毎の区分で用意されている。
図35A乃至図35Cに、これら補正値テーブルを代表して、ブラック(K)の第1上端処理モード用、第1中間処理モード用、第1下端処理モード用の補正値テーブルをそれぞれ示す。これら補正値テーブルは、前記補正値を記録するためのレコードを有している。各レコードにはレコード番号が付けられており、前記測定値に基づいて算出された補正値は、当該測定値のレコードと同じレコード番号のレコードに記録される。
例えば、図35Aに示す第1上端処理モード用の補正値テーブルの第1レコードから第40レコードまでに亘る各レコードには、それぞれに、前記第1上端処理モード用の記録テーブルの第1レコードから第40レコードまでに亘って記録された各測定値に基づいて算出された補正値が記録される。すなわち、この補正値テーブルには、上端単独領域及び上端中間混在領域に対応する補正値が記録される。
同様に、図35Bに示す第1中間処理モード用の補正値テーブルの第1レコードから第45レコードまでに亘る各レコードには、それぞれに、前記第1中間処理モード用の記録テーブルの第1レコードから第45レコードまでに亘って記録された各測定値に基づいて算出された補正値が記録される。すなわち、この補正値テーブルには、中間単独領域に対応する補正値が記録される。
また、図35Cに示す第1下端処理モード用の補正値テーブルの第1レコードから第36レコードまでに亘る各レコードには、それぞれに、前記第1下端処理モード用の記録テーブルの第1レコードから第36レコードまでに亘って記録された各測定値に基づいて算出された補正値が記録される。すなわち、この補正値テーブルには、中間下端混在領域及び下端単独領域に対応する補正値が記録される。
ところで、前記補正値は、濃度の階調値に対して補正する割合を示す補正比率の形式で求められ、具体的には次のようにして算出される。先ず、記録テーブルに記録された測定値の平均値Mを記録テーブル毎に算出し、算出された各平均値を各記録テーブルの濃度の目標値Mとする。そして、記録テーブルの測定値C毎に、当該目標値Mと測定値Cとの偏差ΔC(=M−C)を算出し、この偏差ΔCを前記目標値Mで除算した値を補正値Hとする。すなわち、当該補正値Hを数式で表現すれば、次の式1となる。
補正値H=ΔC/M
=(M−C)/M …(式1)
そして、この補正値Hを用いれば、目標値Mよりも測定値Cが高くなるラスタラインに対しては、当該ラスタラインの濃度が前記目標値Mまで小さくなるような補正を実行可能である。例えば、前記ラスタラインの測定値Cが105であり、目標値Mが100である場合には、補正値H(=(100−105)/100)は−0.05となり、当該ラスタラインの濃度の階調値を、その0.05倍だけ小さくして印刷することによって、印刷されたラスタラインの濃度を目標値Mの100に近づけることができる。また、目標値Mよりも測定値Cが低くなるようなラスタラインに対しては、当該ラスタラインの濃度が前記目標値Mまで大きくなるような補正を実行可能である。例えば、前記ラスタラインの測定値Cが95であり、目標値Mが100である場合には、補正値H(=(100―95)/100)は+0.05となり、当該ラスタラインの濃度の階調値を、その0.05倍だけ大きくして印刷することによって、印刷されたラスタラインの濃度を目標値Mの100に近づけることができる。
従って、この補正値Hを用いて、後述する濃度補正を実行することによって、ラスタライン毎の濃度のバラツキをインク色毎且つ処理モード毎に小さくすることが可能となり、もって濃度ムラを小さく抑制可能となる。
<ステップS140:ラスタライン毎に濃度補正をしながら画像を本印刷>
このようにして濃度の補正値が設定されると、当該プリンタ1は本印刷時に、インク色毎且つ処理モード毎に用意された補正値テーブルを用いて、ラスタライン毎に濃度補正することによって、濃度ムラを抑制した印刷を実行可能となる。なお、このラスタライン毎の濃度補正は、プリンタドライバ1110が前記RGB画像データを印刷データに変換する際に、前記補正値に基づいて各画素データを補正することによって達成される。すなわち、前述したように、画素データは、最終的には、用紙上に形成されるドットの大きさに関する2ビットの画素データとなるが、この2ビットの画素データを変更することによって、このデータに基づいて印刷されたラスタラインの巨視的な濃度を変化させる。
(1)濃度補正の手順
図36は、図26中のステップS140に係るラスタライン毎の濃度補正の手順を示すフローチャートである。このフローチャートを参照し当該濃度補正の手順について説明する。
ステップS141:先ず、ユーザは、購入したプリンタ1を、ユーザのコンピュータ1100に通信可能に接続し、図1で説明した印刷システムの状態に設定する。そして、コンピュータ1100内のプリンタドライバ1110のユーザインタフェースの画面から、余白形態モード、画質モード、及び用紙サイズモードをそれぞれ入力する。この入力によって、プリンタドライバ1110は、これらのモード等に関する情報を取得する。ここでは、画質モードとしては「きれい」が、また余白形態モードとしては「縁無し」が、更には用紙サイズモードとしては前記「第1サイズ」が入力されたものとして説明する。
ステップS142:次に、プリンタドライバ1110は、前記アプリケーションプログラム1104から出力されたRGB画像データに対して、解像度変換処理を実行する。すなわち、RGB画像データの解像度を前記画質モードに対応する印刷解像度に変換し、更には、前記RGB画像データに対して適宜トリミング処理等の加工を施すことにより、RGB画像データにおける画素数が、前記用紙サイズ及び余白形態モードに対応する印刷領域のドット数に一致するように調整する。
図37は、解像度変換処理後のRGB画像データに係る画素データの配列を示す概念図である。図中の四角の升目は、それぞれに720×720dpiのサイズの画素を示しており、各画素は画素データを有している。ここでは、画質モードに「きれい」が入力されたため、RGB画像データの解像度は720×720dpiに変換されている。また、用紙サイズモードには「第1サイズ」が、また余白形態モードには「縁無し」が入力されたため、その印刷領域は搬送方向に121・Dの大きさであり、これに対応させるべく、RGB画像データは、その搬送方向の画素数が121画素に加工されている。すなわち、RGB画像データは、ラスタライン方向に沿う複数の画素データから構成される画素データ行を、121行だけ有する状態に加工されている。
なお、各画素データ行は、前記画像の印刷領域r1〜r121における各ラスタラインを形成するためのデータである。すなわち、1行目の画素データ行は、印刷領域r1〜r121の最上端の第1ラスタラインr1のデータであり、また2行目の画素データ行は、第2ラスタラインr2のデータである。以降、各画素データ行は各ラスタラインに順次対応し、最終行である121行目の画素データ行は、印刷領域r1〜r121の最下端の第121ラスタラインr121のデータである。
ステップS143:次に、プリンタドライバ1110は、前述の色変換処理を実行して、前記RGB画像データを、CMYK画像データに変換する。このCMYK画像データは、前述したように、C画像データ、M画像データ、Y画像データ、及びK画像データを備えており、これらC,M,Y,K画像データは、それぞれに、前述と同様の121行の画素データ行から構成される。
ステップS144:次に、プリンタドライバ1110は、ハーフトーン処理を実行する。このハーフトーン処理は、C,M,Y,K画像データ中の各画素データが示す256段階の階調値を、4段階の階調値に変換する処理である。なお、この4段階の階調値の画素データは、「ドットの形成なし」、「小ドットの形成」、「中ドットの形成」、及び「大ドットの形成」を示す2ビットデータである。
そして、この第2の参考例にあっては、このハーフトーン処理において、前述のラスタライン毎の濃度補正を実行する。すなわち、各画像データを構成する各画素データを、256段階から4段階の階調値に変換する際に、前記補正値分だけ補正しながら変換する。なお、この濃度補正は、各インク色の補正値テーブルに基づいて、C,M,Y,K画像データのそれぞれに対して行われるが、ここでは、これら画像データを代表してブラック(K)に係るK画像データについて説明する。また、前述の色変換処理においては画素データの配列は変化しないため、以下の説明では、前記図37を、K画像データの画素データの配列を示す図としても使用する。
先ず、プリンタドライバ1110は、前記余白形態モード及び前記画質モードをキーとして前記第1対照テーブル(図19)を参照し、対応する印刷モードを取得する。そして、この印刷モードをキーとして前記第2対照テーブル(図20)を参照し、この画像の本印刷時に用いられる処理モードを特定する。
そして、この特定された処理モードが単数の場合には、その処理モード用の補正値テーブルを用いて、K画像データ中の画素データ行を補正する。
一方、この特定された処理モードが複数有る場合には、前記用紙サイズモードに基づいて、各処理モードによって印刷される領域をそれぞれ特定する。そして、各処理モードの補正値テーブルを用いて、各処理モードによって印刷される領域に対応する画像データ列を補正する。
なお、各処理モードによって印刷される領域に関する情報は、領域判定テーブルに記録されている。この領域判定テーブルは、コンピュータ1100内の前記メモリに記憶されており、プリンタドライバ1110は、この領域判定テーブルを参照して、各処理モードによって印刷される領域を特定する。
例えば、図21Aに示すように、第1上端処理モードによって印刷される上端単独領域及び上端中間混在領域は、前述したように固定値の8パスで形成されるため、当該領域は、印刷領域の最上端から下端側に40本分のラスタラインであることが予めわかっている。従って、前記領域判定テーブルには、第1上端処理モードに対応付けて、「印刷領域の最上端から40番目のラスタラインまでの領域」と記録されている。
同様に、図21Bに示すように、第1下端処理モードによって印刷される中間下端混在領域及び下端単独領域は、前述したように固定値の8パスで形成されるため、当該領域は、印刷領域の最下端から上端側に36本分のラスタラインであると予めわかっている。従って、前記領域判定テーブルには、第1下端処理モードに対応付けて、「印刷領域の最下端から上端側に36番目のラスタラインまでの領域」と記録されている。
また、図21A及び図21Bに示すように、第1中間処理モードのみによって印刷される中間単独領域は、前述の第1上端処理モードによって印刷される領域の下端側に続く領域であるとともに、前述の第1下端処理モードによって印刷される領域の上端側に続く領域である。このため、当該中間単独領域は、印刷領域の最上端から下端側に41番目のラスタラインと、印刷領域の最下端から上端側に37番目のラスタラインとで挟まれた領域であると予めわかっている。従って、前記領域判定テーブルには、第1中間処理モードに対応付けて、「印刷領域の最上端から下端側に41番目のラスタラインと、印刷領域の最下端から上端側に37番目のラスタラインとで挟まれた領域」と記録されている。
この例では、「縁無し」及び「きれい」であるため、図19及び図20に示す第1及び第2対照テーブルを参照し、印刷モードは「第1印刷モード」であると特定され、また、これに対応する本印刷時の処理モードは、第1上端処理モード、第1中間処理モード、及び第1下端処理モードの3つであると特定される。
また、用紙サイズモードは「第1サイズ」であるため、本印刷時の印刷領域は搬送方向に121・Dであるが、上述のように、特定された処理モードが3つであるので、各処理モードによって印刷される領域を、前記領域判定テーブルを参照して特定し、各領域に対応する画素データ行を補正する。
例えば、第1上端処理モードによって印刷される上端単独領域及び上端中間混在領域は、領域判定テーブルに基づいて、印刷領域r1〜r121における領域r1〜r40であると特定される。そして、この領域r1〜r40の各ラスタラインのデータは、K画像データ中における第1行目から第40行目までの各画素データ行である。一方、前記上端単独領域及び上端中間混在領域に対応する補正値は、第1上端処理モード用の補正値テーブルにおける第1〜第40レコードの各レコードに記録されている。従って、前記第1行目〜第40行目の各画素データ行に、第1上端処理モード用の補正値テーブルの第1から第40レコードまでの各補正値を順番に対応つけながら、各画素データ行を構成する画素データを補正する。
同様に、第1下端処理モードによって印刷される中間下端混在領域及び下端単独領域は、領域判定テーブルに基づいて、印刷領域r1〜r121における領域r86〜r121であると特定される。そして、この領域r86〜r121の各ラスタラインのデータは、K画像データ中における第86行目から第121行目までの各画素データ行である。一方、前記中間下端混在領域及び下端単独領域に対応する補正値は、第1下端処理モード用の補正値テーブルにおける第1〜第36レコードの各レコードに記録されている。従って、前記第1行目から第36行目までの各画素データ行に、第1下端処理モード用の補正値テーブルの第1〜第36レコードの各補正値を順番に対応つけながら、各画素データ行を構成する画素データを補正する。
また、第1中間処理モードのみによって印刷される中間単独領域は、領域判定テーブルに基づいて、印刷領域r1〜r121における領域r41〜r85であると特定される。そして、この領域r41〜r85の各ラスタラインのデータは、K画像データ中における第41行目から第85行目までの各画素データ行である。一方、前記中間単独領域に対応する補正値は、第1中間処理モード用の補正値テーブルにおける第1〜第45レコードの各レコードに記録されている。従って、前記第41行目から第85行目までの各画素データ行に、第1中間処理モード用の補正値テーブルの第1〜第45レコードの各補正値を順番に対応付けながら、各画素データ行を構成する画素データを補正する。
但し、前述したように、この第1中間処理モードのパス数は、前記第1上端処理モード等のような固定値ではなく、入力される用紙サイズモードに応じて変化するものであり、これに起因して前記中間単独領域に係る画素データ行の行数は変化する。ところが、前記第1中間処理モード用の補正値テーブルには、補正値が、第1レコードから第45レコードまでの45個の固定数しか用意されておらず、画素データ行への対応付けの後半で、補正値が足りなくなるという不具合が生じる虞がある。
しかし、これに対しては、隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせの周期性を利用して、対処することができる。すなわち、図21A及び図21Bの右図に示すように、第1中間処理モードのみで印刷される中間単独領域r41〜r85については、そのラスタラインを形成するノズルの順番が、#2,#4,#6,#1,#3,#5,#7の順番を1サイクルとして、当該サイクルを繰り返すようになっている。そして、このサイクルは、第1中間処理モードのパス数が1パス増加する度に1サイクルだけ増加する。従って、前記対応付けるべき補正値が無い行番号については、この1サイクル分の補正値を用いて補えば良い。すなわち、この1サイクルの補正値に該当する、例えば第1レコードから第7レコードまでの補正値を、補正値が足りない分だけ繰り返して使用すれば良い。
ところで、以上のステップS144の説明においては、前記補正値に基づく画素データの補正方法については具体的に説明していないが、これについては後述する。
ステップS145:次に、プリンタドライバ1110は、ラスタライズ処理を実行する。このラスタライズ処理された印刷データはプリンタ1に出力され、プリンタ1は、印刷データが有する画素データに従って、用紙に画像を本印刷する。なお、この画素データは、前述したように、ラスタライン毎に濃度の補正がなされているので、前記画像の濃度ムラは抑制される。
(2)補正値に基づく画素データの補正方法について
ここで、前記補正値に基づく画素データの補正方法について詳細に説明する。
前述したように、ハーフトーン処理は、256段階の階調値の画素データを、「ドットの形成なし」、「小ドットの形成」、「中ドットの形成」、「大ドットの形成」を示す4段階の階調値の画素データに変換するものである。そして、その変換の際には、前記256段階の階調値を、一旦レベルデータに置き換えてから4段階の階調値に変換する。
そこで、第2の参考例にあっては、この変換の際に、このレベルデータを前記補正値分だけ変更することによって前記4段階の階調値の画素データを補正し、これによって「補正値に基づく画素データの補正」を実現している。
なお、図3を用いて既に説明したハーフトーン処理と、第2の参考例に係るハーフトーン処理との相違点は、レベルデータを設定するステップS301,S303,S305の部分であって、これ以外の部分は同じである。従って、以下の説明では、この異なる部分を重点的に説明し、同じ部分の説明は簡単な説明に留める。また、以下の説明は、図3のフローチャート及び図4のドットの生成率テーブルを用いて行う。
先ず、通常のハーフトーン処理と同様に、ステップS300において、プリンタドライバ1110は、K画像データを取得する。なお、この時には、C,M,Y画像データも取得しているが、以下で説明する内容は、何れのC,M,Y画像データについても当てはまるので、これら画像データを代表してK画像データについて説明する。
次に、ステップS301においては、前記生成率テーブルの大ドット用プロファイルLDから、画素データ毎に、その画素データの階調値に応じたレベルデータLVLを読み取る。但し、この読み取る際に、第2の参考例にあっては、その画素データが属する画素データ行に対応付けられた補正値H分だけ階調値をずらしてレベルデータLVLを読み取る。
例えば、当該画素データの階調値がgrであるとともに、その画素データが属する画素データ行が第1行目である場合には、当該画素データ行は、第1上端処理用の補正値テーブルにおける第1レコードの補正値Hが対応付けられている。従って、この補正値Hを前記階調値grに乗算した値Δgr(=gr×H)だけ、前記階調値grをずらしてレベルデータLVLを読み取って、レベルデータLVLは、11dと求められる。
そして、ステップS302では、ディザマトリクス上で前記画素データに対応する画素ブロックの閾値THLよりも、この大ドットのレベルデータLVLが大きいか否かの大小判定を行うが、ここで、このレベルデータLVLは、前記補正値Hに基づいてΔgr(=gr×H)だけ変化している。従って、この変化分だけ、前記大小判定の結果が変化し、これによって、大ドットの形成され易さも変化する結果、前述の「補正値に基づく画素データの補正」が実現されることになる。
なお、このステップ302において、レベルデータLVLが閾値THLよりも大きい場合には、ステップS310に進み、当該画素データには、大ドットを対応付けて記録する。一方、それ以外の場合にはステップS303に進む。
このステップS303においては、前記生成率テーブルの中ドット用プロファイルMDから階調値に応じたレベルデータLVMを読み取るが、この時にも前記ステップS301と同様に、前記補正値H分だけ階調値をずらしてレベルデータLVMを読み取る。
例えば、前記補正値Hを前記階調値grに乗算した値Δgr(=gr×H)だけ、前記階調値grからずらしてレベルデータLVMを読み取って、レベルデータLVMは、12dと求められる。そして、ステップS304において、ディザマトリクス上で前記画素データに対応する画素ブロックの閾値THMよりも、この中ドットのレベルデータLVMが大きいか否かの大小判定を行うが、ここで、このレベルデータLVMは、前記補正値Hに基づいてΔgr分だけ変化している。従って、この変化分だけ、前記大小判定の結果が変化し、これによって、中ドットの形成され易さも変化する結果、前述の「補正値に基づく画素データの補正」が実現されることになる。
なお、このステップ304において、レベルデータLVMが閾値THMよりも大きい場合には、ステップS309に進み、当該画素データには、中ドットを対応付けて記録する。一方、それ以外の場合にはステップS305に進む。
このステップS305においては、前記生成率テーブルの小ドット用プロファイルSDから階調値に応じたレベルデータLVSを読み取るが、この時にも前記ステップS301と同様に、前記補正値H分だけ階調値をずらしてレベルデータLVSを読み取る。
例えば、前記補正値Hを前記階調値grに乗算した値Δgr(=gr×H)だけ、前記階調値grからずらしてレベルデータLVSを読み取って、レベルデータLVSは、13dと求められる。そして、ステップS306において、ディザマトリクス上で前記画素データに対応する画素ブロックの閾値THSよりも、この小ドットのレベルデータLVSが大きいか否かの大小判定を行うが、ここで、このレベルデータVLSは、前記補正値Hに基づいてΔgrだけ変化している。このため、この変化分だけ、前記大小判定の結果が変化し、これによって、小ドットの形成され易さも変化する結果、前述の「補正値に基づく画素データの補正」が実現されることになる。
なお、このステップ306において、レベルデータLVSが閾値THSよりも大きい場合には、ステップS308に進み、当該画素データには、小ドットを対応付けて記録する。一方、それ以外の場合にはステップS307に進んで、当該画素データには、ドット無しを対応付けて記録する。
(3)第2印刷モードが設定された場合の「濃度補正の手順」について
「(1)濃度補正の手順」の説明では、第1印刷モードが設定された場合を例にしたが、ここでは、第2印刷モードが設定された場合について説明する。
これは、ユーザが、プリンタドライバ1110のインターフェースにおいて、余白形態モードとして「縁有り」を、また画質モードとして「きれい」を入力した場合である。そして、プリンタ1は、図19に示す第1中間処理モードのみで印刷を実行し、用紙は720×720dpiの印刷解像度での縁有りに印刷される。
ステップS141:先ず、プリンタドライバ1110のユーザインターフェースからの入力によって、プリンタドライバ1110は、画質モードとしては「きれい」を、また余白形態モードとして「縁無し」を、更には用紙サイズモードとして「第1サイズ」を取得する。
ステップS142:次に、プリンタドライバ1110は、解像度変換処理を実行する。図38は、解像度変換処理後のRGB画像データに係る画素データの配列を示す概念図である。前記「きれい」に従って、RGB画像データの解像度は720×720dpiに変換されている。また、前記「第1サイズ」及び「縁有り」の印刷領域r1〜r101は搬送方向に101・Dの大きさであるため、これに対応させるべく、前記RGB画像データは、101行の画素データ行に加工されている。
ステップS143:次に、プリンタドライバ1110は、色変換処理を実行し、前記RGB画像データを、CMYK画像データに変換する。以下では、前述と同様にCMYK画像データを代表してK画像データについて説明する。なお、このK画像データは、前記RGB画像データと同じく101行の画素データ行を有する。
ステップS144:次に、プリンタドライバ1110は、ハーフトーン処理を実行する。前述の例と同様に、このハーフトーン処理において、ラスタライン毎の濃度補正を実行する。以下では、前述の図38を、K画像データの画素配列を示す図として用いて説明する。
先ず、プリンタドライバ1110は、前記「縁有り」及び「きれい」をキーとして前記第1対照テーブル(図19)を参照して、対応する印刷モードが第2印刷モードであると特定する。そして、この第2印刷モードをキーとして前記第2対照テーブル(図20)を参照し、この画像の本印刷時に用いられる処理モードが、第1中間処理モードのみであると特定する。すなわち、この場合には、印刷領域の全域に亘って中間単独領域であると特定される。このために、前記領域判定テーブルを参照して、処理モードによって印刷される領域を特定する必要は無く、もって、印刷領域の全領域のデータであるK画像データの全ての画素データ行を、前記中間単独領域に対応する補正値が記録されている前記第1中間処理モード用の補正値テーブルを用いて補正する。
ここで、図22A及び図22Bの右図を参照してわかるように、印刷領域r1〜r101におけるラスタラインを形成するノズルの並びは、前述のサイクル、すなわち、#2,#4,#6,#1,#3,#5,#7が繰り返されるようになっている。従って、前記K画像データにおける各画素データ行を補正する際には、前述の補正値テーブルにおける第1レコードから第7レコードまでの補正値を、画素データ行の第1行目から第101行目までに亘って繰り返して使用して補正する。
ステップS145:次に、プリンタドライバ1110は、ラスタライズ処理を実行する。このラスタライズ処理された印刷データはプリンタ1に出力され、プリンタ1は、印刷データが有する画素データに従って、用紙に画像を本印刷する。なお、この画素データは、前述したように、ラスタライン毎に濃度の補正がなされているので、前記画像の濃度ムラは抑制される。
===(1)第2の参考例の「濃度ムラを抑制した画像の印刷方法」の問題点について===
前述した第2の参考例の「濃度ムラを抑制した画像の印刷方法」の問題点は、前記「濃度ムラを抑制するための濃度の補正値の設定」の部分にある。更に細かく言えば、濃度の補正値の算出方法にある。
ここで、もう一度、この濃度の補正値の算出方法について簡単に説明する。前述したように、この第2の参考例にあっては、各ラスタラインの濃度の補正値を、以下の式1から求めている。
補正値H=ΔC/M
=(M−C)/M … (式1)
ここで、Cは、補正用パターンにおける各ラスタラインの濃度の測定値である。またMは、前記測定値の全てのラスタラインに亘る平均値である。
そして、この補正値Hを用いて、画像データの画素データを補正し、これによってラスタラインの濃度を補正する。なお、前記画素データの階調値が、濃度の指令値に相当する。
具体的に、画素データの階調値がMの場合を例に説明すると、補正値HがΔC/Mであるラスタラインは、その濃度の測定値Cが、補正によってΔC(=H×M)だけ変化して目標値のMになることが見込まれている。そして、このように変化させるべく、図4のドットの生成率テーブルから、画素データの階調値Mに対応するレベルデータを読み出す際には、階調値Mに補正値H(=ΔC/M)を乗算して補正量ΔCを算出するとともに、当該補正量ΔCだけ階調値Mからずらしてレベルデータを読み出すようにしている。そして、このレベルデータとディザマトリクス(図5を参照)とによって形成すべきドットの大きさを決定するが、その際に、前記ΔCによってレベルデータが変化した分だけ、形成されるドットの大きさが変化することによって、ラスタラインの濃度の測定値Cが補正される。
しかし、レベルデータを読み出す階調値MをΔCだけ変化させたからといって、最終的なラスタラインの濃度の測定値Cが確実にΔCだけ変化して目標値のMとなる保証はなく、つまり、上記補正値Hでは、測定値Cを目標値Mに近づけることは可能であるが、ほぼ一致させる程度にまで近づけることはできない。
このため、通常は、測定値Cが目標値になるまで、補正値Hを変化させての補正用パターンの印刷及びその濃度の測定からなる一連の作業を試行錯誤的に繰り返して行い、これによって、最適な補正値Hを見出しており、その作業には多大な労力がかかっていた。
そこで、本実施形態にあっては、以下で説明するように、濃度の指令値を互いに異ならせて少なくとも2つの濃度の補正用パターンを印刷するとともに、これら補正用パターンの濃度を測定し、これら測定値と指令値とで対となる2対の情報を用いて一次補間することによって、測定値Cが目標値となる補正値Hを算出する。そして、これによって、その補正値Hの算出の際し、前述の試行錯誤的な繰り返し作業を行わずに、一回の作業で補正値Hを見出すことができるようになっている。
===(1)本実施形態の「濃度ムラを抑制するための濃度の補正値の設定方法」===
以下、本実施形態の「濃度ムラを抑制するための濃度の補正値の設定方法」について説明するが、その大半の部分は、前述の第2の参考例と同じである。従って、その相違点について主に説明し、同じ部分については本実施形態の理解に必要な場合についてのみ説明する。また、これらの説明は、図27のフローチャートを用いて行う。
始めに、概略説明する。
ステップS121:先ず、検査ラインの作業者は、検査ラインのコンピュータ1100等にプリンタ1を接続し、このプリンタ1によって、CMYKのインク色毎に前記帯状の補正用パターンCPを印刷する。但し、その際には、前記補正用パターンCPは、各インク色につき少なくとも2つずつ、互いの濃度の指令値を異ならせて印刷される(図39を参照)。
ステップS122:次に、印刷された補正用パターンCPの濃度をラスタライン毎に測定し、ラスタライン番号と対応付けて前記記録テーブルに記録する。但し、前記測定は、前記濃度を異ならせた少なくとも2つの補正用パターンCP,CP毎にそれぞれ行われる。また、前記記録は、前記2つの補正用パターンCP,CPの測定値Ca,Cb同士を対応付けるとともに、各測定値Ca,Cbに、その指令値Sa,Sbを関連付けながら行われる(図40を参照)。
ステップS123:次に、前記コンピュータ1100は、記録テーブルに記録された測定値Ca,Cbに基づいて、ラスタライン毎に濃度の補正値Hを算出し、当該補正値Hをラスタライン番号と対応付けて補正値テーブルに記録する。この補正値テーブルは、図34に示す第2の参考例の補正値テーブルと同じものである。但し、前記算出に際しては、前記対応付けられた測定値Ca,Cb同士、及びこれら測定値Ca,Cbの指令値Sa,Sbを用いて一次補間を行うことによって、測定値Cが後記目標値Ss1と一致する指令値Soを求める。そして、この求められた指令値Soと、後記基準値Ssとの偏差を前記基準値Ssで除算した値を前記補正値Hとして記録する。そして、本実施形態にあっては、このように一次補間を行って補正値Hを算出するため、最適な補正値Hを一回の算出作業で求めることが可能となり、もって、第2の参考例でなされていたような試行錯誤を重ねずに済む。
以下では、この濃度の補正値の設定方法について、2つの例を示しながら詳細に説明する。
<濃度の補正値の設定方法の第1例>
図39に、第1例に係る補正用パターンCPを示すが、この第1例では、前述の互いに濃度の異なる補正用パターンCPを、CMYKの各インク色につき2つずつ印刷する。
(1)ステップS121:補正用パターンの印刷
先ず、検査ラインのコンピュータ1100等に、補正値の設定対象のプリンタ1を通信可能に接続する。そして、前記コンピュータ1100の前記メモリに格納されている補正用パターンCPの印刷データに基づいて、プリンタ1は、用紙Sに補正用パターンCPを印刷する。なお、第2の参考例と同様に、余白形態モードには「縁無し」が、画質モードには「きれい」が、また用紙サイズモードには「第1サイズ」が設定された前提で説明する。
図39に示すように、用紙Sには、CMYKの各インク色につき、帯状の補正用パターンCPが2つずつ形成されている。なお、以下では、これらインク色を代表して、ブラック(K)についてのみ説明するが、他のインク色についても同様である。
ブラック(K)の補正用パターンCPkが有する2つの補正用パターンCPka,CPkbは、互いに異なる濃度に印刷されている。
なお、これら補正用パターンCPka,CPkbを印刷する印刷データは、前述の第2の参考例で説明したように、CMYKの各インク色の階調値を直接指定して構成されており、この場合には、ブラック(K)の階調値を指定して構成されている。すなわち、この印刷データは、CMYK画像データにおける補正用パターンCPkaに対応する画素データの階調値Saと、補正用パターンCPkbに対応する画素データの階調値Sbとが互いに異なる値に設定されるとともに、このCMYK画像データに対して、前述のハーフトーン処理及びラスタライズ処理を行って生成される。なお、前記階調値Sa,Sbが、補正用パターンCPka,CPkbに係る濃度の指令値に該当する。
これらの階調値Sa,Sbは、これらの中央値が、基準値Ssとなるように設定され、例えば、基準値Ssからそれぞれ±10%の値に設定される。なお、前記基準値Ssは、補正値Hを求めるのに最適な階調値のことであり、例えば、濃度ムラが顕在化し易い階調値が選ばれる。この顕在化し易い階調値は、前述したように、CMYKの色に関して所謂中間調領域となるような階調値であり、このブラック(K)の場合には、その256段階の階調値において、77〜128の範囲の階調値が相当する。
なお、これら2つの補正用パターンCPka,CPkbは、それぞれ、搬送方向に沿って第1上端補正用パターンCP1、第1中間補正用パターンCP2、第1下端補正用パターンCP3を備えているのは言うまでもない。
(2)ステップS122:補正用パターンの濃度をラスタライン毎に測定
図39に示す2つの補正用パターンCPka,CPkbの濃度は、前記スキャナ装置100によってラスタライン毎に測定される。
なお、前述の第2の参考例と同様に、このスキャナ装置100は、測定値Ca,Cbを、256段階のグレイスケールの階調値で前記コンピュータ1100へ出力する。そして、このコンピュータ1100は、前記グレイスケールの階調値で示された測定値Ca,Cbを、そのメモリに用意された記録テーブルに記録する。
図40に示すように、本実施形態の第1例の各記録テーブルは、2つの補正用パターンCPka,CPkbの測定値Ca,Cb、及び、前記測定値Ca,Cbにそれぞれに関連付けられた指令値Sa,Sbをそれぞれ記録できるように、4つのフィールドが用意されている。そして、図中の左から1つ目のフィールド及び3つ目のフィールドの各レコードには、それぞれに、濃度が小さい方の補正用パターンCPkaの測定値Ca及びその指令値Saが記録される。また2つ目のフィールド及び4つ目のフィールドの各レコードには、それぞれに、濃度が大きい方の補正用パターンCPkbの測定値Cb及びその指令値Sbが記録される。なお、この記録の際には、これら2つの補正用パターンCPka,CPkbのラスタライン番号が同じ測定値Ca,Cb及び指令値Sa,Sbは、何れも同じレコード番号のレコードに記録されるのは言うまでもない。
(3)ステップS123:ラスタライン毎に濃度の補正値を設定
次に、前述の第2の参考例の場合と同様に、各記録テーブルの各レコードに記録された測定値Ca,Cbに基づいて、濃度の補正値Hを算出し、当該補正値Hを補正値テーブルに設定する。
但し、本実施形態の第1例にあっては、同じレコード番号のレコードに記録された指令値Sa,Sbと測定値Ca,Cbとで対をなす2対の情報(Sa,Ca)、(Sb,Cb)を用いて一次補間を行うことによって、前記問題点のところで説明した試行錯誤的な算出作業を繰り返すことなく、一回の作業で補正値を算出することができるようになっている。なお、以下で説明する補正値Hの算出手順は、レコード番号毎にそれぞれ行われるのは言うまでもない。
図41は、前記2対の情報(Sa,Ca),(Sb,Cb)を用いて行われる一次補間を説明するためのグラフである。なお、グラフの横軸には、指令値Sとしてブラック(K)の階調値を、また、縦軸には測定値Cとしてグレイスケールの階調値をそれぞれ対応付けている。以下では、このグラフ上の各点の座標を(S,C)で示す。
周知なように、一次補間とは、2個の既知量の間、又はその外側の関数値を、それら3つのプロットされた点が直線上にあるとして求めるものである。そして、この第1例にあっては、既知量は、前記2対の情報(Sa,Ca),(Sb,Cb)であり、求める関数値は、測定値Cが目標値Ss1となる指令値Sである。なお、ここで、この目標値Ss1とは、前述の基準値Ssの濃度を示すカラーサンプル(濃度見本)を、前記スキャナ装置100で読み取った際に出力されるグレイスケールの階調値である。このカラーサンプルは、濃度の絶対基準を示すものであり、すなわち、前記スキャナ装置100による測定値Cが、目標値Ss1を示せば、その測定対象は、前記基準値Ssの濃度に見えるということである。
図41に示すように、これら2対の情報(Sa,Ca),(Sb,Cb)は、それぞれにグラフ上における座標が(Sa,Ca)の点A、及び(Sb,Cb)の点Bとして表される。そして、この二点A,Bを結ぶ直線ABが、指令値Sの変化と測定値Cの変化との関係を示している。従って、この直線ABから測定値Cが目標値Ss1となる指令値Sの値Soを読み取れば、当該値Soが、濃度の測定値Cが目標値Ss1となる指令値Sを示している。そして、本来は、指令値Sを基準値Ssにすれば、測定値Cとして目標値Ss1が得られるはずのところ、指令値SをSoにしなければ測定値Cが目標値Ss1とならないことから、このSoとSsの偏差So−Ssが補正量ΔSとなる。但し、補正値Hは、前述したように、補正比率の形態で与える必要があるため、前記補正量ΔSを基準値Ssで除算した値が補正値H(=ΔS/Ss)となる。
ちなみに、上述した補正値Hを式で表現すると次のようになる。
先ず、前記直線ABは、以下に示す式2で表現できる。
C=[(Ca−Cb)/(Sa−Sb)]・(S−Sa)+Ca …式2
そして、この式2を指令値Sについて解くととともに、測定値Cに目標値Ss1を代入すれば、測定値Cが目標値Ss1となる指令値Soは、次の式3のように表せる。
So=(Ss1−Ca)/[(Ca−Cb)/(Sa−Sb)]+Sa…式3
一方、指令値Sの補正量ΔSは式4で示され、補正値は式5で表される。
ΔS=So−Ss …式4
H=ΔS/Ss=(So−Ss)/Ss …式5
従って、式3及び式5が、補正値Hを求めるための式であり、これら式3及び式5のCa,Cb,Sa,Sb,Ss,Ss1に具体的な数値を代入すれば補正値Hを求めることができる。
なお、この式3及び式5を演算するためのプログラムは、前記第1例に係る検査ラインのコンピュータ1100の前記メモリに格納されている。そして、このコンピュータ1100は、前記記録テーブルの同一レコードから2対の情報(Sa,Ca),(Sb,Cb)を読み出し、これらを式3乃至式5に代入し、算出された補正値Hを、前記補正値テーブルにおける同じレコード番号のレコードに記録するようになっている。
なお、以上説明した第1例によれば、ラスタライン毎に第1情報(Sa、Ca)及び第2情報(Sb、Cb)が得られる。そして、ラスタライン毎に、第1情報(Sa、Ca)及び第2情報(Sb、Cb)に基づいて、補正値Hが算出される。そして、画像を本印刷する際には、各ラスタラインに対応する補正値Hに基づいて、各ラスタラインの画像データの階調値が補正される。この結果、濃度が補正された複数のラスタラインから構成される画像は、濃度ムラが抑制されるのである。
<濃度の補正値の設定方法の第2例>
図42に、用紙Sに印刷された第2例に係る補正用パターンを示す。
前述の第1例では、互いに濃度の異なる補正用パターンCPを、各インク色につき2つずつ印刷したが、図42に示す第2例では、CMYKの各インク色につき3つずつ印刷し、これら3つの補正用パターンCPの濃度の測定値Ca,Cb,Ccを用いて一次補間を行う点で相違する。そして、この3つの測定値Ca,Cb,Ccを用いることによって、更に高い精度で補正値Hを算出できるようになっている。なお、この相違点以外については、前述の第1例と同様である。従って、以下の説明では、この相違点について重点的に説明し、同じ内容については簡単な説明にとどめる。また、その説明は、第1例と同様に、図27のフローチャートを用いて行う。
(1)ステップS121:補正用パターンの印刷
図42に示すように、用紙Sには、CMYKの各インク色につき、帯状の補正用パターンCPが3つずつ形成されており、これら3つの濃度は、互いに異なる濃度で印刷されている。なお、以下では、これらインク色を代表して、ブラック(K)についてのみ説明する。
図42に示すように、この3つのうちの2つの補正用パターンCPka,CPkbは、第1例と同じ濃度の指令値Sa,Sbで印刷されており、残る1つの補正用パターンCPkcは、これら指令値Sa,Sbの間の値Scを指令値として印刷されている。このように3つの濃度の指令値で補正用パターンCPka,CPkb,CPkcを印刷している理由は、濃度が大きい範囲と濃度が小さい範囲とで、前記直線ABの傾きが異なる可能性があり、その場合には、それが補間誤差となるためである。これについては、後述する。
(2)ステップ122:補正用パターンの濃度をラスタライン毎に測定
図42に示す3つの補正用パターンCPka,CPkb,CPkcの濃度は、第1例と同様に、前記スキャナ装置100によってラスタライン毎に測定される。そして、これら測定値Ca,Cb,Ccは、後記記録テーブルに記録される。
図43に、第2例の記録テーブルを示すが、各記録テーブルには、3つの補正用パターンCPka,CPkb,CPkcについての測定値Ca,Cb,Cc、及びこれら測定値に対応する指令値Sa,Sb,Scをそれぞれ記録できるように、6つのフィールドが用意されている。そして、図中の左から1つ目のフィールド及び4つ目のフィールドの各レコードには、それぞれに、濃度が小さい方の補正用パターンCPkaの測定値Ca及びその指令値Saが記録される。また3つ目のフィールド及び6つ目のフィールドの各レコードには、それぞれに、濃度が大きい方の補正用パターンCPkbの測定値Cb及びその指令値Sbが記録される。そして、2つ目のフィールド及び5つ目のフィールドの各レコードには、それぞれに、濃度が中間の補正用パターンCPkcの測定値Cc及びその指令値Scが記録される。なお、この記録の際には、これら2つの補正用パターンCPka,CPkb,CPkcのラスタライン番号が同じ測定値Ca,Cb,Cc及び指令値Sa,Sb,Scは、何れも同じレコード番号のレコードに記録されるのは言うまでもない。
(3)ステップ123:ラスタライン毎に濃度の補正値を設定
次に、前述の第1例の場合と同様に、各記録テーブルの各レコードに記録された、指令値Sa,Sb,Scと測定値Ca,Cb,Ccとで対をなす三対の情報(Sa,Ca),(Sb,Cb),(Sc,Cc)を用いて一次補間を行って補正値Hを算出し、当該補正値Hを補正値テーブルに設定する。
但し、この第2例の一次補間にあっては、3対の情報(Sa,Ca),(Sb,Cb),(Sc,Cc)を用いるので、前記第1例よりも更に高い精度で補正値Hを算出可能となっている。すなわち、一般に、濃度が大きい範囲と小さい範囲とで、前述の一次補間に用いた直線ABの傾きが異なる場合がある。そして、その場合には、前述の第1例のように、濃度の大小に拘わらず1つの直線を用いる方法では、適切な補正値Hを算出することができない。
これに対して、この第2例では、濃度が大きい範囲に関しては、情報(Sb,Cb)及び情報(Sc,Cc)の2対の情報を用いて一次補間を行う一方、濃度が小さい範囲に関しては、情報(Sa,Ca)及び情報(Sc,Cc)の2対の情報を用いて一次補間を行うようにしている。
図44は、前記3対の情報(Sa,Ca),(Sb,Cb),(Sb,Cb)を用いて行われる一次補間を説明するためのグラフである。なお、この図44は、前記図41と同じ様式で示している。
図44に示すように、これら3対の情報(Sa,Ca),(Sb,Cb),(Sc,Cc)は、それぞれにグラフ上における座標が(Sa,Ca)の点A、(Sb,Cb)の点B、(Sc,Cc)の点Cとして表される。このうちの二点B,Cを結ぶ直線BCが、濃度が大きい範囲における指令値Sの変化と測定値Cの変化との関係を示しており、また、二点A,Cを結ぶ直線ACが、濃度が小さい範囲における指令値Sの変化と測定値Cとの変化との関係を示している。
そして、この2つの直線AC,BCから構成されるグラフから、測定値Cが前記目標値Ss1となる指令値Sの値Soを読み取って補正値Hを決定する。例えば、図示例のように、前記目標値Ss1が、前記点Cの測定値Ccよりも大きい場合には、直線BCによって一次補間を行い、測定値Cが目標値Ss1となる指令値Sの値Soを求める。逆に、前記目標値Ss1が、前記点Cの測定値Ccよりも小さい場合には、直線ACによって一次補間を行い、測定値Cが目標値Ss1となる指令値Sの値Soを求める。そして、この求められた指令値Soと前記基準値Ssとの偏差が補正量ΔSであり、補正比率の形式の補正値Hは、前記補正量ΔSを基準値Ssで除算して算出される。なお、この第2例の一次補間についても、第1例で示したような定式化が可能であり、この定式化された式を、コンピュータ1100のプログラムによって演算させて補正値を算出可能なことは明らかである。よって、これについての説明は省略する。
===(1)第1実施形態のその他の例===
上記の実施形態は、主としてプリンタについて記載されているが、その中には、印刷装置、印刷方法、印刷システム等の開示が含まれていることは言うまでもない。
また、一実施形態としてのプリンタ等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<プリンタについて>
前述の実施形態では、プリンタが説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の記録装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
<インクについて>
前述の実施形態は、プリンタの実施形態だったので、染料インク又は顔料インクをノズルから吐出していた。しかし、ノズルから吐出するインクは、このようなインクに限られるものではない。
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していた。しかし、インクを吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
<印刷方式について>
前述の実施形態では、印刷方式としてインターレース方式を例に説明したが、この印刷方式は、これに限るものではなく、所謂オーバーラップ方式を用いても良い。前述のインターレースでは、1つのラスタラインは1つのノズルにより形成されるところ、当該オーバーラップ方式では、1つのラスタラインが、2つ以上のノズルにより形成される。すなわち、このオーバーラップ方式では、用紙Sが搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、キャリッジ移動方向に移動する各ノズルが、数画素おきに間欠的にインク滴を吐出することによって、キャリッジ移動方向に間欠的にドットを形成する。そして、他のパスにおいて、他のノズルが既に形成されている間欠的なドットを補完するようにドットを形成することにより、1つのラスタラインが複数のノズルにより完成する。
<インクを吐出するキャリッジ移動方向について>
前述の実施形態では、キャリッジの往方向の移動時にのみインクを吐出する単方向印刷を例に説明したが、これに限るものではなく、キャリッジの往復たる双方向移動時にインクを吐出する所謂双方向印刷を行っても良い。
<印刷に用いるインク色について>
前述の実施形態では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の4色のインクを用紙S上に吐出してドットを形成する多色印刷を例に説明したが、インク色はこれに限るものではない。例えば、これらインク色に加えて、ライトシアン(薄いシアン、LC)及びライトマゼンタ(薄いマゼンダ、LM)等のインクを用いても良い。
また、逆に、上記4つのインク色のいずれか1つだけを用いて単色印刷を行っても良い。
<その他>
前述の第2の参考例では、第1上端処理モード、第1中間処理モード、第1下端処理モード、第2上端処理モード、第2中間処理モード、第2下端処理モードの全ての処理モードに対して補正用パターンCPを形成して各補正値テーブルに補正値を記録するようにしたが、これに限るものではない。
例えば、低い印刷解像度で画像を印刷する前記第2上端処理モード、第2中間処理モード、第2下端処理モードについては、補正用パターンCPを形成せずに、すなわち、これらに対応する補正値テーブルに補正値を記録しないようにしても良い。なお、その場合には、対応する補正値が存在しないので、前述の濃度の補正は実行されずに本印刷がなされ、前記補正を実行しない分だけ本印刷を高速で行うことができる。
前述の第1例では、2対の情報(Sa,Ca),(Sb,Cb)の間に基準値Ssが位置するようにし、測定値Cが目標値Ss1となる指令値Soを内挿法によって求めたが、これに限るものではない。例えば、前記2対の情報(Sa,Ca),(Sb,Cb)の外側に基準値Ssが位置するようにし、測定値Cが前記目標値Ss1となる指令値Soを外挿法によって求めても良い。但し、その場合には、補間精度が悪くなる。
前述の第1例では、前記基準値Ssが中央値となるように、補正用パターンCPka,CPkbの濃度の指令値Sa,Sbを設定したが、これら指令値Sa,Sbのうちの一方を基準値Ssとなるように設定しても良い。そして、このようにすれば、補正用パターンCPka,CPkbの濃度の測定値Ca,Cbの一方を、目標値Ss1の近傍の値として得ることができる。そして、この目標値Ss1の近傍の測定値を用いて一次補間を行って、目標値Ss1に対応する指令値Soを求めるので、目標値Ss1と測定値とが近い分だけ補間精度は高くなり、これによって、求められる指令値Soの精度は高くなる。その結果、当該一次補間によって求まる補正値Hの精度が高まる。
前述の第2例においては、指令値Saと指令値Sbとの間の値に設定された指令値Scを、基準値Ssとは異ならせて設定したが、基準値Ssと同じ値に設定しても良い。そして、このようにすれば、補正用パターンCPkcの濃度の測定値Ccを、前記目標値Ss1の近傍の値として得ることができる。そして、この目標値Ss1の近傍の測定値Ccを用いて一次補間を行って、前記目標値Ss1に対応する指令値Soを求めるので、目標値Ss1と測定値Ccとが近い分だけ補間精度は高くなり、これによって、求められる指令値Soの精度は高くなる。その結果、当該一次補間によって求まる補正値Hの精度が高まる。
前述の第2例においては、一次補間において指令値Soを読み取るための目標値Ss1の値として、前記基準値Ssのカラーサンプルの濃度の測定値を用いたが、これに限るものではない。例えば、この目標値Ss1として、前記3点の測定値Ca,Cb,Ccの中の間の値である測定値Ccの、全てのラスタラインに亘る平均値を用いても良い。そして、このようにすれば、前記一次補間によって、更に補正精度の高い補正値を求めることができる。
前述の実施形態では、濃度測定装置として、プリンタ1と別体のスキャナ装置100を用い、前記プリンタ1による補正用パターンCPの印刷完了後に、その濃度の測定を、前記スキャナ装置100によって行っていたが、これに限るものではない。
例えば、用紙Sの搬送方向におけるヘッド41の下流側に、光学的に濃度を測定するセンサを固設して備え、当該センサによって、補正用パターンCPの印刷動作と並行させながら、印刷された補正用パターンCPの濃度を測定するようにしても良い。
(第2実施形態)
===(2)第2実施形態の開示の概要===
所定方向に沿って配置されインクを吐出して媒体にドットを形成するための複数の吐出部を有し、印刷すべき画像データは、前記媒体に形成されるドットの形成単位毎の階調値を示しており、前記階調値に基づいて、前記複数の吐出部を前記所定方向と交差する移動方向に移動させつつインクを吐出して画像を印刷する際に、各々の前記吐出部にて前記移動方向に沿うドット列が形成されたドット列領域間の濃度ムラを抑制すべく前記ドット列領域毎に補正をしつつ前記画像データを印刷可能な印刷データに変換する印刷装置において、第1階調値に基づいて補正パターンを印刷し、前記補正用パターンの濃度の測定値を用いて得られた第1補正情報と、第2階調値に対応する第2補正情報とを用いて、前記補正を行うことを特徴とする印刷装置。
このような印刷装置によれば、補正用パターンに基づく第1補正情報と、第2補正情報との少なくとも2つの補正情報を用いて、ドット列領域間の濃度ムラを抑制すべく前記ドット列領域毎に補正をしつつ前記画像データを印刷データに変換する。このため、変換された印刷データに基づいて印刷した画像は、1つの補正情報を用いて変換された印刷データに基づいて印刷する場合より、用紙の搬送方向の濃度ムラがより効果的に抑制される。よって、より良好な画像を印刷することが可能である。
かかる印刷装置において、前記補正用パターンは、前記第1階調値と第2階調値とを含む複数の特定階調値に基づいて、前記特定階調値ごとにそれぞれ印刷されることが望ましい。
このような印刷装置によれば、補正に用いる補正情報を得るための補正用パターンは、複数の特定階調値にて印刷されており、この複数の特定階調値には第1階調値が含まれているので、第1階調値にて印刷された補正用パターンに基づいて適切な第1補正情報を得て適切な補正を実行することが可能である。また、複数の特定階調値には第2階調値も含まれているので、第2補正情報も実際に印刷した補正用パターンに基づいて取得することが可能である。このため、実際に印刷した補正用パターンを用いて得られた第1補正情報と、第2補正情報とを用いることにより、さらに適切な補正を行うことが可能である。
かかる印刷装置において、前記第1階調値を含む少なくとも2つの特定階調値の前記補正用パターンの濃度を、前記ドット列領域毎にそれぞれ測定した前記測定値としての各測定階調値と、対応する前記特定階調値とを対応させた少なくとも2つの測定情報を一次補間することにより、前記第1階調値を示す画像データに基づいて印刷させるための新たな階調値を求め、求められた新たな階調値と前記第1階調値とを対応付けて第1補正情報とし、前記第2階調値を含む少なくとも2つの特定階調値の前記補正用パターンを、前記ドット列領域毎にそれぞれ測定した前記測定値としての各測定階調値と、対応する前記特定階調値とを対応させた少なくとも2つの測定情報を一次補間することにより、前記第2階調値を示す画像データに基づいて印刷させるための新たな階調値を求め、求められた新たな階調値と前記第2階調値とを対応付けて第2補正情報とすることが望ましい。
このような印刷装置によれば、補正に用いる第1補正情報と第2補正情報とは、それぞれ実際に印刷した補正用パターンの濃度を読み取って得られた測定情報に基づいているため、実機に即した情報であり、この補正情報を用いることにより実機に適した補正を行うことが可能である。また、第1補正情報と第2補正情報を求めるための測定情報は、それぞれ少なくとも2つの特定階調値の補正用パターンから得られるため、1つの測定情報に基づいて得られる補正用報より信頼性が高い。すなわち、信頼性の高い2つの補正情報に基づいて補正を実行するため、より適切な補正が行われ、より効果的に濃度ムラを抑制することが可能である。
なお、一次補間とは、周知のように、2個の既知量の間又はその外側の関数値を、それら3つのプロットされた点が直線上にあるとして求める方法のことを言う。
かかる印刷装置において、前記補正用パターンは、前記第1階調値を含む複数の特定階調値に基づいて、前記特定階調値ごとにそれぞれ印刷され、前記第1階調値を含む少なくとも2つの前記特定階調値の前記補正用パターンを、前記ドット列領域毎にそれぞれ測定した前記測定値としての各測定階調値と、対応する前記特定階調値とを対応させた少なくとも2つの測定情報を一次補間することにより、前記第1階調値を示す画像データに基づいて印刷させるための新たな階調値を求め、求められた新たな階調値と前記第1階調値とを対応付けて第1補正情報とし、前記第2階調値は、印刷可能な階調値の最高値であり、当該最高値と、当該最高値にて印刷させるための階調値とを対応付けて第2補正情報とすることが望ましい。
このような印刷装置によれば、補正に用いる第1補正情報は、少なくとも2つの特定階調値の補正用パターンの濃度を読み取って得られた測定情報に基づいているため、実機に即した情報であるため、この補正情報を用いることにより実機に適した補正を行うことが可能である。また、第2階調値が印刷可能な階調値の最高値なので、印刷可能な最も高い階調値まで補正を行うことが可能である。また、第2階調値は、印刷可能な階調値の最高値なので、求められる新たな階調値はいずれも、印刷可能な階調値の最高値より大きくなることはない。このため、印刷可能な階調値の上限を超えない範囲にて新たな階調値が求められるので、印刷装置に適した補正を行うことが可能である。
かかる、印刷装置において、前記補正用パターンは、前記第1階調値を含む複数の特定階調値に基づいて、前記特定階調値ごとにそれぞれ印刷され、前記第1階調値を含む少なくとも2つの前記特定階調値の前記補正用パターンを、前記ドット列領域毎にそれぞれ測定した前記測定値としての各測定階調値と、対応する前記特定階調値とを対応させた少なくとも2つの測定情報を一次補間することにより、前記第1階調値を示す画像データに基づいて印刷させるための新たな階調値を求め、求められた新たな階調値と前記第1階調値とを対応付けて第1補正情報とし、前記第2階調値は、印刷可能な階調値の最低値であり、当該最低値と、当該最低値にて印刷させるための階調値とを対応付けて第2補正情報とすることが望ましい。
このような印刷装置によれば、正に用いる第1補正情報は、少なくとも2つの特定階調値の補正用パターンの濃度を読み取って得られた測定情報に基づいているため、実機に即した情報であるため、この補正情報を用いることにより実機に適した補正を行うことが可能である。また、第2階調値が印刷可能な階調値の最低値なので、印刷可能な最も低い階調値まで補正を行うことが可能である。また、第2階調値は、印刷可能な階調値の最低値なので、求められる新たな階調値はいずれも、印刷可能な階調値の最低値より小さくなることはない。このため、印刷可能な階調値の下限を超えない範囲にて新たな階調値が求められるので、印刷装置に適した補正を行うことが可能である。
かかる印刷装置において、前記第1階調値の画像を印刷させるための新たな階調値を求めるために、前記第1階調値、前記第1階調値より高い前記特定階調値、前記第1階調値より低い前記特定階調値、にそれぞれ対応する3つの前記測定情報を用い、前記第1階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値が、前記第1階調値に対応する前記測定情報の前記測定階調値より大きい場合には、前記第1階調値に対応する前記測定情報と、前記第1階調値より高い前記特定階調値に対応する前記測定情報とを用いて一次補間を行い、前記第1階調値に基づいて印刷されるべき濃度を示す階調値が、前記第1階調値に対応する前記測定情報の前記測定階調値より小さい場合には、前記第1階調値に対応する前記測定情報と、前記第1階調値より低い前記特定階調値に対応する前記測定情報とを用いて一次補間を行い、前記第2階調値の画像を印刷させるための新たな階調値を求めるために、前記第2階調値、前記第2階調値より高い前記特定階調値、前記第2階調値より低い前記特定階調値、にそれぞれ対応する3つの前記測定情報を用い、前記第2階調値に基づいて印刷されるべき濃度を示す階調値が、前記第2階調値に対応する前記測定情報の前記測定階調値より大きい場合には、前記第2階調値に対応する前記測定情報と、前記第2階調値より高い前記特定階調値に対応する前記測定情報とを用いて一次補間を行い、前記第2階調値に基づいて印刷されるべき濃度を示す階調値が、前記第2階調値に対応する前記測定情報の前記測定階調値より小さい場合には、前記第2階調値に対応する前記測定情報と、前記第2階調値より低い前記特定階調値に対応する前記測定情報とを用いて一次補間を行うことが望ましい。
第1階調値の画像を印刷させるための新たな階調値を求めるために、第1階調値、第1階調値より高い特定階調値、第1階調値より低い特定階調値、にそれぞれ対応する3つの測定情報を用いている。このため、前記第1階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値は、第1階調値より高い特定階調値に対応する測定情報の測定階調値と、第1階調値より低い特定階調値に対応する測定情報の測定階調値との間に存在することになる。そして、第1階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値が、第1階調値に対応する測定情報の測定階調値より大きい場合には、3つの測定情報のうち大きな測定階調値を有する2つの測定情報を用い、小さい場合には、3つの測定情報のうち小さな測定階調値を有する2つの測定情報を用い、一次補間を行うので、第1階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値が大きい場合、及び小さい場合のいずれの場合であっても、確実に新たな階調値を求めることが可能である。
また、第2階調値の画像を印刷させるための新たな階調値を求めるために、第2階調値、第2階調値より高い特定階調値、第2階調値より低い特定階調値、にそれぞれ対応する3つの測定情報を用いている。このため、前記第2階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値は、第2階調値より高い特定階調値に対応する測定情報の測定階調値と、第2階調値より低い特定階調値に対応する測定情報の測定階調値との間に存在することになる。そして、第2階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値が、第2階調値に対応する測定情報の測定階調値より大きい場合には、3つの測定情報のうち大きな測定階調値を有する2つの測定情報を用い、小さい場合には、3つの測定情報のうち小さな測定階調値を有する2つの測定情報を用い、一次補間を行うので、第2階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値が大きい場合、及び小さい場合のいずれの場合であっても、確実に新たな階調値を求めることが可能である。
さらに、階調値の変化量に対する測定値の変化量は、印刷可能な階調値の全域に亘って一定ではないので、新たな階調値を求める際に2つの測定情報を一次補間することは、限られた階調値の範囲における階調値の変化量に対する測定値の変化量に基づいて、新たな階調値を求めることになる。すなわち、第1階調値及び第2階調値の画像を印刷させるための新たな階調値は、第1階調値及び第2階調値近傍の特定階調値の測定情報にて求められる。このため、第1階調値及び第2階調値に適した新たな階調値が求められ、求められた新たな階調値により、より適切な補正を行うことが可能である。
かかる印刷装置において、前記第1階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値は、前記ドット列領域毎の前記第1階調値に対応する前記測定情報の前記測定階調値の平均値であり、前記第2階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値は、前記ドット列領域毎の前記第2階調値に対応する前記測定情報の前記測定階調値の平均値であることが望ましい。
補正情報を得る際に用いられる第1階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値は、ドット列領域毎の第1階調値に対応する前記測定情報の前記測定階調値の平均値であり、この平均値を基準として補正を行うことになる。また、補正情報を得る際に用いられる第2階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値は、ドット列領域毎の第2階調値に対応する前記測定情報の前記測定階調値の平均値であり、この平均値を基準として補正を行うことになる。このため、上記補正を行うことにより実機に即した濃度にて画像を印刷させつつ濃度ムラを抑制することが可能である。
かかる印刷装置において、前記第1階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値は、本来印刷されるべき前記第1階調値の濃度を有する画像と同じ濃度の濃度見本の測定階調値であり、前記第2階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値は、本来印刷されるべき前記第2階調値の濃度を有する画像と同じ濃度の濃度見本の測定階調値であることが望ましい。
補正情報を得る際に用いられる第1階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値は、本来印刷されるべき前記第1階調値の濃度を有する画像と同じ濃度の濃度見本の測定階調値であり、この濃度見本の測定階調値を基準として補正を行うことになる。また、補正情報を得る際に用いられる第2階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値は、本来印刷されるべき前記第2階調値の濃度を有する画像と同じ濃度の濃度見本の測定階調値であり、この濃度見本の測定階調値を基準として補正を行うことになる。このため、新たな階調値にて印刷された画像が、本来印刷されるべき濃度を有する画像となるような補正を行うことが可能である。
かかる印刷装置において、前記補正は、前記印刷すべき画像データを補正対象とすることが望ましい。
このような印刷装置によれば、画像データを印刷データに変換する際には、色変換処理やハーフトーン処理等の複数の画像処理が行われるが、濃度ムラを抑制するための補正対象を画像データとすることにより、元となる画像データを補正するので画像処理のアルゴリズムを複雑にすることなく、容易に補正することが可能である。
かかる印刷装置において、前記第1階調値及び前記第2階調値を除く階調値にて印刷させるための前記新たな階調値は、前記第1補正情報と前記第2補正情報とを一次補間することにより求めることが望ましい。
このような印刷装置によれば、第1階調値及び第2階調値を除く階調値にて印刷させるための新たな階調値も、第1補正情報と第2補正情報との2つの補正情報を一次補間することにより求められる。このため、いずれの階調値にて印刷させる場合であっても、その階調値に対応する新たな階調値は、2つの補正情報から得られた信頼性の高い階調値となるため、いずれの階調値であっても適切な補正が行われ、良好な画像を印刷することが可能である。
かかる印刷装置において、前記吐出部は、前記画像データにて示された前記階調値に基づいてインクを吐出することにより複数種類のサイズのドットを形成可能であり、前記画像の濃度は、所定の領域内において前記複数種類のサイズのドットをそれぞれ生成させる割合を示すドット生成率を違えることにより表現され、前記第1補正情報と前記ドット生成率とを、前記第2補正情報と前記ドット生成率とを、それぞれ対応付けるための生成率データテーブルを有し、前記補正は、前記生成率データテーブルを補正対象とすることが望ましい。
このような印刷装置によれば、第1補正情報とドット生成率とを、第2補正情報とドット生成率とを、それぞれ対応付けるための生成率データテーブルは、画像データを印刷データに変換する際のハーフトーン処理にて用いられるが、濃度ムラを抑制するための補正対象を生成率データテーブルとすることにより、ハーフトーン処理以外の画像処理のアルゴリズムに影響与えることなく補正することが可能である。このため、画像処理のアルゴリズムを複雑にすることなく、容易に補正することが可能である。
かかる印刷装置において、前記第1階調値及び前記第2階調値を除く階調値に対応するドット生成率は、前記第1補正情報と、前記ドット生成率とを対応付けた第1生成情報と、前記第2補正情報と、前記ドット生成率とを対応付けた第2生成情報とを一次補間することにより求めることが望ましい。
このような印刷装置によれば、第1階調値及び第2階調値を除く階調値に対応するドット生成率は、第1生成情報と第2生成情報との2つの生成情報を一次補間することにより求められる。このため、いずれの階調値にて印刷させる場合であっても、その階調値に対応するドット生成率は、2つの生成情報から得られた信頼性の高いドット生成率となるため、いずれの階調値であっても適切な補正が行われ、良好な画像を印刷することが可能である。
かかる印刷装置において、所定方向に沿って配置された前記複数の吐出部を、前記インクの色毎に備え、前記補正用パターンを前記色毎に印刷し、前記補正は色毎に行うことが望ましい。
このような印刷装置によれば、吐出部をインクの色毎に備えているので、多色印刷を行うことができる。また、色毎に補正を行うので、多色印刷における画像の濃度ムラを有効に抑制可能である。
また、所定方向に沿って配置されインクを吐出して媒体にドットを形成するための複数の吐出部を有し、印刷すべき画像データは、前記媒体に形成されるドットの形成単位毎の階調値を示しており、前記階調値に基づいて、前記複数の吐出部を前記所定方向と交差する移動方向に移動させつつインクを吐出して画像を印刷する際に、各々の前記吐出部にて前記移動方向に沿うドット列が形成されたドット列領域間の濃度ムラを抑制すべく前記ドット列領域毎に補正をしつつ前記画像データを印刷可能な印刷データに変換する印刷装置に、第1階調値に基づいて補正パターンを印刷し、前記補正用パターンの濃度の測定値を用いて得られた第1補正情報と、第2階調値に対応する第2補正情報とを用いて、前記補正を行わせる機能を実現させるためのコンピュータプログラムも実現可能である。
また、コンピュータ本体と、このコンピュータ本体に接続され、所定方向に沿って配置されインクを吐出して媒体にドットを形成するための複数の吐出部を有し、印刷すべき画像データは、前記媒体に形成されるドットの形成単位毎の階調値を示しており、前記階調値に基づいて、前記複数の吐出部を前記所定方向と交差する移動方向に移動させつつインクを吐出して画像を印刷する際に、各々の前記吐出部にて前記移動方向に沿うドット列が形成されたドット列領域間の濃度ムラを抑制すべく前記ドット列領域毎に補正をしつつ前記画像データを印刷可能な印刷データに変換する印刷システムにおいて、第1階調値に基づいて補正パターンを印刷し、前記補正用パターンの濃度の測定値を用いて得られた第1補正情報と、第2階調値に対応する第2補正情報とを用いて、前記補正を行うことを特徴とする印刷システムも実現可能である。
また、所定方向に沿って配置されインクを吐出して媒体にドットを形成するための複数の吐出部にて前記所定方向と交差する移動方向に沿うドット列が形成されたドット列領域間の濃度ムラを抑制すべく補正をするための補正情報を得るための補正用パターンを第1階調値に基づいて印刷するステップと、第1階調値に基づいて印刷された前記補正用パターンの濃度の測定値を用いて得られた第1補正情報と、第2階調値に対応する第2補正情報とを用い、前記媒体に形成されるドットの形成単位毎の階調値を示す印刷すべき画像データの前記階調値に基づいて、前記複数の吐出部を前記所定方向と交差する移動方向に移動させつつインクを吐出して画像を印刷する際に、各々の前記吐出部にて前記移動方向に沿うドット列が形成されたドット列領域間の濃度ムラを抑制すべく前記ドット列領域毎に補正をしつつ前記画像データを印刷可能な印刷データに変換するステップと、変換された前記印刷データに基づいて印刷するステップとを有することを特徴とする印刷方法も実現可能である。
===(2)印刷システムの構成===
次に、印刷システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図45は、印刷システムの外観構成を示した説明図である。この印刷システムは、インクジェットプリンタ2001(以下、単にプリンタ2001という。)と、コンピュータ3100と、表示装置3200と、入力装置3300と、記録再生装置3400とを備えている。プリンタ2001は、用紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する印刷装置である。なお、以下の説明では、代表的な媒体である用紙S(図47を参照。)を例に挙げて説明する。
コンピュータ3100は、プリンタ2001と通信可能に接続され、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ3110(図52を参照。)等がインストールされており、プリンタ2001に画像を印刷させるため、当該画像に応じた印刷データをプリンタ2001に出力する。入力装置3300は、例えばキーボード3300Aやマウス3300Bであり、アプリケーションプログラムの操作やプリンタドライバ3110の設定等の入力に用いられる。記録再生装置3400は、例えば、フレキシブルディスクドライブ装置3400AやCD−ROMドライブ装置3400Bが用いられる。
プリンタドライバ3110は、表示装置3200に印刷条件等を設定するための画面等を表示させる機能を実現させるほか、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換する機能を実現させるためのプログラムである。このプリンタドライバ3110は、フレキシブルディスクやCD−ROMなどの記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に記録されている。また、このプリンタドライバ3110は、インターネットを介してコンピュータ3100にダウンロードすることも可能である。そして、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
なお、「印刷装置」とは、狭義にはプリンタ2001を意味するが、広義にはプリンタ2001とコンピュータ3100とのシステムを意味する。
===(2)プリンタの構成===
<プリンタの構成について>
図46は、本実施形態のプリンタ2001の全体構成のブロック図である。図47は、本実施形態のプリンタ2001の全体構成の概略図である。図48は、本実施形態のプリンタ2001の全体構成の側断面図である。図49は、ヘッド2041の下面におけるノズルの配列を示す説明図である。以下、これらの図を参照して、本実施形態のプリンタ2001の基本的な構成について説明する。
本実施形態のインクジェットプリンタ2001は、搬送ユニット2020、キャリッジユニット2030、ヘッドユニット2040、センサ2050、及びコントローラ2060を有する。外部装置であるコンピュータ3100から印刷データを受信したプリンタ2001は、コントローラ2060によって各ユニット(搬送ユニット2020、キャリッジユニット2030、ヘッドユニット2040)を制御する。コントローラ2060は、コンピュータ3100から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、用紙Sに画像を印刷する。プリンタ2001内の状況はセンサ2050によって監視されており、センサ2050は、検出結果をコントローラ2060に出力する。コントローラ2060は、センサ2050から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
搬送ユニット2020は、用紙Sを搬送する搬送機構として機能し、用紙Sを印刷可能な位置に搬送し、また、印刷時に所定の方向(以下では、搬送方向という。)に所定の搬送量にて搬送させるためのものである。
搬送ユニット2020は、給紙ローラ2021と、搬送モータ2022(PFモータともいう。)と、搬送ローラ2023と、プラテン2024と、排紙ローラ2025とを有する。給紙ローラ2021は、紙挿入口に挿入された用紙Sをプリンタ2001内に給紙するためのローラである。給紙ローラ2021はD形の断面形状をしており、円周部分の長さは、搬送ローラ2023までの搬送距離よりも長く設定されている。このため、円周部分が用紙表面から離れた状態から給紙ローラを1回転させることにより、用紙Sを円周部分の長さだけ搬送させて用紙Sの先端を搬送ローラ2023まで到達させることが可能である。搬送モータ2022は、紙を搬送方向に搬送するためのモータであり、たとえばDCモータにより構成される。搬送ローラ2023は、給紙ローラ2021によって給紙された用紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラであり、搬送モータ2022によって駆動される。プラテン2024は、印刷中の用紙Sを、用紙Sの裏面側から支持する。排紙ローラ2025は、プラテン2024より搬送方向の下流側にて、用紙Sを搬送方向へ搬送するためのローラである。この排紙ローラ2025は、搬送ローラ2023と同期して回転する。
キャリッジユニット2030は、キャリッジ2031とキャリッジモータ2032(以下では、CRモータともいう。)とを備える。キャリッジモータ2032は、キャリッジ2031を所定の方向(以下では、キャリッジ移動方向という。)に往復移動させるためのモータであり、たとえばDCモータにより構成される。このキャリッジ2031は、インクを収容するインクカートリッジ2090を着脱可能に保持している。また、このキャリッジ2031には、吐出部としてのノズルからインクを吐出するヘッド2041が取り付けられている。このため、キャリッジ2031の往復移動によって、ヘッド2041及びノズルもキャリッジ移動方向に往復移動する。
ヘッドユニット2040は、用紙Sにインクを吐出するためのものである。このヘッドユニット2040は、ヘッド2041を有する。このヘッド2041は、複数のノズルを有しており、各ノズルから断続的にインクを吐出する。そして、ヘッド2041がキャリッジ移動方向に移動しつつ、ノズルからインクを断続的に吐出することにより、キャリッジ移動方向に沿ってドット列が用紙Sに形成される。また、キャリッジ移動方向に沿ったドット列を形成する領域は、キャリッジ移動方向に沿った画素の列として用紙上に仮想的に定めることが可能であり、仮想的に定められた領域を「ドット列領域」と表現する。ここで画素とは、吐出部としてのノズルからインクを吐出させて用紙にドットを形成する位置を規定するために、用紙上に仮想的に定められた方眼状の升目である。言い換えると、画素は、ドットを形成し得る媒体上の領域であり、「ドットの形成単位」と表現することもできる。なお、ノズルの配置、ヘッド2041の構成、このヘッド2041を駆動するための駆動回路、及びヘッド2041の駆動方法については、後で説明する。
センサ2050には、リニア式エンコーダ2051、ロータリー式エンコーダ2052、紙検出センサ2053、及び紙幅センサ2054等が含まれる。リニア式エンコーダ2051は、キャリッジ移動方向の位置を検出するためのものであり、キャリッジ移動方向に沿って架設された帯状のスリット板と、キャリッジ2031に取り付けられ、スリット板に形成されたスリットを検出するフォトインタラプタを有する。ロータリー式エンコーダ2052は、搬送ローラ2023の回転量を検出するためのものであり、搬送ローラ2023の回転に伴って回転する円盤状のスリット板と、スリット板に形成されたスリットを検出するフォトインタラプタを有する。
紙検出センサ2053は、印刷される用紙Sの先端位置を検出するためのものである。この紙検出センサ2053は、給紙ローラ2021が用紙Sを搬送ローラ2023に向かって搬送する途中で、用紙Sの先端位置を検出できる位置に設けられている。なお、紙検出センサ2053は、機械的な機構によって用紙Sの先端を検出するメカニカルセンサである。詳しく言うと、紙検出センサ2053は紙搬送方向に回転可能なレバーを有し、このレバーは用紙Sの搬送経路内に突出するように配置されている。そして、用紙Sの搬送に伴い、用紙先端がレバーに接触し、レバーが回転させられる。このため、紙検出センサ2053は、このレバーの動きをフォトインタラプタ等によって検出することで、用紙Sの先端位置及び用紙Sの有無を検出する。
紙幅センサ2054は、キャリッジ2031に取り付けられている。本実施形態では、図49に示すように、搬送方向の位置に関して、一番上流側にあるノズルとほぼ同じ位置に取り付けられている。この紙幅センサ2054は、反射型の光学センサであり、発光部から用紙Sに照射された光の反射光を受光部にて受光し、受光部での受光強度に基づいて用紙Sの有無を検出する。そして、紙幅センサ2054は、キャリッジ2031によって移動しながら用紙Sの端部の位置を検出し、用紙Sの幅を検出する。また、紙幅センサ2054は、状況に応じて、用紙Sの先端も検出できる。
コントローラ2060は、プリンタ2001の制御を行うための制御ユニットである。このコントローラ2060は、インターフェース部(I/F)2061と、CPU2062と、メモリ2063と、ユニット制御回路2064とを有する。インターフェース部2061は、外部装置であるコンピュータ3100とプリンタ2001との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU2062は、プリンタ全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ2063は、CPU2062のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM等の記憶手段を有する。そして、CPU2062は、メモリ2063に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路2064を介して各ユニット2020,2030,2040を制御する。また、本実施形態では、このメモリ2063の一部領域を、後述する補正用テーブルを格納するための補正用テーブル格納部2063aとして利用している。
<ノズルの配置及びヘッドの構成について>
図49に示すように、ヘッド2041の下面には、ブラックインクノズル列Nkと、シアンインクノズル列Ncと、マゼンタインクノズル列Nmと、イエローインクノズル列Nyが形成されている。各ノズル列は、各色のインクを吐出するための吐出口であるノズルを、n個(例えば、n=180)備えている。各ノズル列の複数のノズルは、キャリッジ2031の移動方向と交差する方向、すなわち用紙Sの搬送方向に沿って、一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)でそれぞれ整列している。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ、つまり、用紙Sに形成されるドットの最高解像度での間隔である。また、kは、1以上の整数である。例えば、ノズルピッチが180dpi(1/180インチ)であって、搬送方向のドットピッチが720dpi(1/720インチ)である場合、k=4である。図示の例において、各ノズル列のノズルは、下流側のノズルほど小さな数の番号が付されている(♯1〜♯n)。つまり、ノズル♯1は、ノズル♯nよりも搬送方向の下流側に位置している。そして、このようなノズル列をヘッド2041に設けると、一回のドット形成動作でドットが形成される範囲が広くなり、印刷時間の短縮化が図れる。また、これらのノズル列は、インクの色毎に備えられているので、これらの各ノズル列から適宜インクを吐出させることで、多色印刷を行うことができる。
また、各ノズルはインクを収容したインクカートリッジ2090と連通するインク流路を有しており、インク流路の途中には圧力室(図示せず)が設けられている。各圧力室は、各ノズルからインク滴を吐出させるために設けられた駆動素子としてのたとえばピエゾ素子(図示せず)により、その容積が収縮、膨張するように構成されている。
<ヘッドの駆動について>
図50は、ヘッド2041の駆動回路の説明図である。この駆動回路は、前述のユニット制御回路2064内に設けられている。図示するように、駆動回路は、原駆動信号発生部2644Aと、駆動信号整形部2644Bとを備えている。本実施形態では、この駆動回路が、ノズル列毎、即ち、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各色のノズル列ごとに各々設けられ、ノズル列ごとに個別にピエゾ素子の駆動が行われるようになっている。図中に各信号名の最後に付されたかっこ内の数字は、その信号が供給されるノズルの番号を示している。
前述したピエゾ素子は、駆動パルスW1,W2(図51を参照)が供給される毎に変形して圧力室内のインクに圧力変動を生じさせる。即ち、ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧が印加されると、電圧の印加時間に応じて変形し、圧力室の一部を区画する弾性膜(側壁)を変形させる。このピエゾ素子の変形に応じて圧力室の容積が変化し、圧力室の容積変化によって圧力室内のインクに圧力変動が生じる。そして、インクに生じた圧力変動により、対応するノズル♯1〜♯nからインク滴が吐出される。
原駆動信号発生部2644Aは、各ノズル♯1〜♯nに共通して用いられる原駆動信号ODRVを生成する。本実施形態における原駆動信号ODRVは、印刷解像度に対応する一画素分の距離をキャリッジ2031が移動する時間内に、2種類の駆動パルスW1,W2を1回ずつ出力する信号である。
駆動信号整形部2644Bには、原信号発生部から原駆動信号ODRVとともに、印刷信号PRT(i)が入力される。印刷信号PRT(i)は、前記した2ビットの印刷データに基づいてレベルが変化する信号である。駆動信号整形部2644Bは、印刷信号PRT(i)のレベルに応じて、原駆動信号ODRVを整形し、駆動信号DRV(i)として各ノズル♯1〜♯nのピエゾ素子に向けて出力する。各ノズル♯1〜♯nのピエゾ素子は、駆動信号整形部2644Bからの駆動信号DRVに基づき駆動される。
<ヘッドの駆動信号について>
図51は、各信号を説明するタイミングチャートである。すなわち、同図には、原駆動信号ODRVと、印刷信号PRT(i)と、駆動信号DRV(i)の各信号のタイミングチャートが示されている。
原駆動信号ODRVは、ノズル♯1〜♯nに対して共通に用いられる信号であり、原駆動信号発生部2644Aから駆動信号整形部2644Bに出力される。本実施形態の原駆動信号ODRVは、印刷解像度に対応する一画素分の距離をキャリッジ2031が移動する時間(以下、一画素区間という。)内において、第1パルスW1と第2パルスW2との2つのパルスを有している。そして、第1パルスW1はノズルから小サイズのインク滴(以下、小インク滴という。)を吐出させるための駆動パルスである。また、第2パルスW2はノズルから中サイズのインク滴(以下、中インク滴という。)を吐出させるための駆動パルスである。すなわち、第1パルスW1をピエゾ素子に供給することで、ノズルからは小インク滴が吐出される。そして、この小インク滴が用紙Sに着弾すると、小サイズのドット(小ドット)が形成される。同様に、第2パルスW2をピエゾ素子に供給することで、ノズルからは中インク滴が吐出される。そして、この中インク滴が用紙Sに着弾すると、中サイズのドット(中ドット)が形成される。
印刷信号PRT(i)は、コンピュータ等から転送された印刷データにおいて各画素に対して割り当てられている各画素データに対応した信号である。つまり、印刷信号PRT(i)は、印刷データに含まれる画素データに応じた信号である。本実施形態の印刷信号PRT(i)は、一画素に対して2ビットの情報を有する信号になる。なお、この印刷信号PRT(i)の信号レベルに応じて、駆動信号整形部2644Bは、原駆動信号ODRVを整形し、駆動信号DRV(i)を出力する。
この駆動信号DRVは、印刷信号PRTのレベルに応じて原駆動信号ODRVを遮断することによって得られる信号である。すなわち、印刷データが「1」のとき、印刷信号PRTはHighレベルとなり、駆動信号整形部2644Bは、原駆動信号ODRVの対応する駆動パルスをそのまま通過させて駆動信号DRV(i)とする。一方、印刷データが「0」のとき、印刷信号PRTがLowレベルとなり、駆動信号整形部2644Bは、原駆動信号ODRVの対応する駆動パルスを遮断する。そして、駆動信号整形部2644Bからの駆動信号DRV(i)は、対応するピエゾ素子に対し、個別に供給される。また、ピエゾ素子は、供給された駆動信号DRV(i)に応じて駆動される。
印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「01」に対応しているとき、第1パルスW1のみが一画素区間の前半で出力される。これにより、ノズルから小さいインク滴が吐出され、用紙Sには小ドットが形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「10」に対応しているとき、第2パルスW2のみが一画素区間の後半で出力される。これにより、ノズルから中インク滴が吐出され、用紙Sに中ドットが形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「11」に対応しているとき、第1パルスW1と第2パルスW2とが一画素区間で出力される。これにより、ノズルから小インク滴と中インク滴とが続けて吐出され、用紙Sには大サイズのドット(大ドット)が形成される。すなわち、プリンタ2001は、複数種類(ここでは3種類)のサイズのドットを形成可能である。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「00」に対応しているとき、第1パルスW1及び第2パルスW2のいずれも一画素区間で出力されない。これにより、ノズルからはいずれのサイズのインク滴も吐出されず、用紙Sにはドットが形成されない。
以上説明したとおり、一画素区間における駆動信号DRV(i)は、印刷信号PRT(i)の4つの異なる値に応じて互いに異なる4種類の波形を有するように整形されている。
===(2)プリンタドライバ===
<プリンタドライバについて>
図52は、プリンタドライバ3110が行う基本的な処理の概略的な説明図である。なお、既に説明した構成要素については、同じ符号を付して説明は省略する。
コンピュータ3100では、コンピュータ3100に搭載されたオペレーティングシステムの下、ビデオドライバ3102、アプリケーションプログラム1104、プリンタドライバ3110などのコンピュータプログラムが動作している。ビデオドライバ3102は、アプリケーションプログラム1104やプリンタドライバ3110からの表示命令に従って、所定の画面を表示装置3200に表示する機能を有する。
アプリケーションプログラム1104は、例えば、画像編集などを行う機能を有し、画像に関するデータ(画像データ)を作成する。ユーザーは、アプリケーションプログラム1104のユーザーインタフェースを介して、アプリケーションプログラム1104により編集した画像を印刷する指令を与えることができる。アプリケーションプログラム1104は、印刷の指令を受けると、プリンタドライバ3110に画像データを出力する。
プリンタドライバ3110は、アプリケーションプログラム1104から画像データを受け取り、受け取った画像データを印刷可能な印刷データに変換し、変換した印刷データをプリンタ2001に出力する。画像データは、印刷される画像の各画素に対応するデータとして画素データを有している。そして、各画素データは、RGB又はCMYK等の色ごとの階調値にて表現されており、後述する各処理の段階に応じて、階調値等が変換され、最終的に前記印刷データの段階では、用紙上に形成されるドットに対応する印刷データ(ドットの色や大きさ等のデータ)に変換される。
印刷データは、プリンタ2001が解釈できる形式のデータであって、前記画素データと、各種のコマンドデータとを有するデータである。コマンドデータとは、プリンタ2001に特定の動作の実行を指示するためのデータであり、例えば搬送量を示すデータである。
プリンタドライバ3110は、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データを印刷データに変換するため、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理、ラスタライズ処理などを行う。以下、プリンタドライバ3110が行う各種の処理について説明する。
解像度変換処理は、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、用紙Sに画像を印刷する際の解像度(印刷するときのドットの間隔であり、印刷解像度ともいう。)に変換する処理である。例えば、印刷解像度が720×720dpiに指定されている場合には、アプリケーションプログラム1104から受け取った画像データを720×720dpiの解像度の画像データに変換する。
この変換方法としては、画素データの補間や間引きなどがある。例えば、画像データの解像度が指定された印刷解像度よりも低い場合には、線形補間等を行って隣り合う画素データ同士の間に新たな画素データを生成する。逆に、画像データの解像度が印刷解像度よりも高い場合には、一定の割合で画素データを間引く等して、画像データの解像度を前記印刷解像度に揃える。
また、この解像度変換処理においては、画像データを、印刷する印刷領域(実際にインクが吐出される領域をいう。)のサイズに対応させて加工するサイズ調整も行う。
なお、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データ中の各画素データは、RGB色空間により表される多段階(例えば256段階)の階調値を示すデータである。以下、RGBの階調値を示す画素データのことをRGB画素データと言い、また、RGB画素データから構成される画像データをRGB画像データと言う。
色変換処理は、前記RGB画像データの各RGB画素データを、CMYK色空間により表される多段階(例えば256段階)の階調値を示すデータに変換する処理である。ここでCMYKとは、プリンタ2001が有するインクの色である。すなわち、Cはシアンを、Mはマゼンタを、Yはイエローを、Kはブラックをそれぞれ意味する。以下、CMYKの階調値を示す画素データのことをCMYK画素データといい、CMYK画素データから構成される画像データのことをCMYK画像データという。色変換処理は、RGBの階調値とCMYKの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)をプリンタドライバ3110が参照することによって行われる。
ハーフトーン処理は、多段階の階調値を有するCMYK画素データを、プリンタ2001が表現可能な、少段階の階調値を有するCMYK画素データに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256段階の階調値を示すCMYK画素データが、4段階の階調値を示す2ビットのCMYK画素データに変換される。この2ビットのCMYK画素データは、各色について、例えば、「ドットの形成なし」(2進数の値として「00」)、「小ドットの形成」(同じく「01」)、「中ドットの形成」(同じく「10」)、「大ドットの形成」(同じく「11」)を示すデータである。
このようなハーフトーン処理には、例えばディザ法等が利用され、プリンタ2001がドットを分散して形成できるような2ビットのCMKY画素データを作成する。なお、このディザ法によるハーフトーン処理については、後述する。また、このハーフトーン処理に用いる方法は、ディザ法に限るものではなく、γ補正法や誤差拡散法等を利用しても良い。なお、本実施形態では、このハーフトーン処理において、後述する濃度補正、すなわち、ドット列領域間の濃度ムラを抑制すべくドット列領域毎に行う補正が行われる。
ラスタライズ処理は、前記ハーフトーン処理がなされたCMYK画像データを、プリンタ2001に転送すべきデータ順に変更する処理である。ラスタライズ処理されたデータは、前記印刷データとしてプリンタ2001に出力される。
<ディザ法によるハーフトーン処理について>
ここで、ディザ法によるハーフトーン処理について詳細に説明する。図53は、このディザ法によるハーフトーン処理のフローチャートである。プリンタドライバ3110は、このフローチャートに従って、以下のステップを実行する。
まず、ステップS1300において、プリンタドライバ3110は、CMYK画像データを取得する。このCMYK画像データは、C,M,Y,Kの各インク色につき256段階の階調値で示された画像データから構成される。すなわち、CMYK画像データは、シアン(C)に関するC画像データ、マゼンタ(M)に関するM画像データ、イエロー(Y)に関するY画像データ、及びブラック(K)に関するK画像データを備えている。そして、これらC,M,Y,K画像データは、それぞれに、各インク色の階調値を示すC,M,Y,K画素データから構成されている。なお、以下の説明は、C,M,Y,K画像データの何れについてもあてはまるため、これらを代表してK画像データについて説明する。
プリンタドライバ3110は、K画像データ中の全てのK画素データを対象として、ステップS1301からステップS1311までの処理を、処理対象のK画素データを順次変えながら実行する。これらの処理により、K画像データを、K画素データ毎に、前記した4段階の階調値を示す2ビットデータに変換する。
この変換処理について詳しく説明する。まず、ステップS1301では、処理対象のK画素データの階調値に応じて、大ドットのレベルデータLVLを設定する。この設定には、たとえば生成率テーブルが用いられ、次の手順でなされる。ここで、レベルデータとは、ドットの生成率0〜100%を0〜255の256段階の値に対応させた値をいう。ここで、「ドットの生成率」とは、一定の階調値に応じて一様な領域が再現されるときに、その領域内の画素のうちでドットが形成される画素の割合を意味する。たとえば、ある階調値におけるドット生成率が、大ドット65%、中ドット25%、及び小ドット10%であり、このドット生成率で、縦方向に10画素であって横方向に10画素からなる100画素の領域内を印刷したとする。この場合には、100画素のうち大ドットが形成される画素が65個、中ドットが形成される画素が25個、小ドットが形成される画素が10個となる。
図54は、大、中、小の各ドットのレベルデータの設定に利用される生成率テーブルを示す図である。同図において、横軸は階調値(0〜255)、左側の縦軸はドットの生成率(%)、右側の縦軸はレベルデータ(0〜255)である。そして、図54中の細い実線で示されるプロファイルSDが小ドットの生成率(レベルデータ)を示している。また、太い実線で示されるプロファイルMDが中ドットの生成率(レベルデータ)を、点線で示されるプロファイルLDが大ドットの生成率(レベルデータ)をそれぞれ示している。
ステップS1301では、大ドット用のプロファイルLDから階調値に応じたレベルデータLVLを読み取る。例えば、図54に示すように、処理対象のK画素データの階調値がgrであれば、大ドットのレベルデータLVLはプロファイルLDとの交点から1dと求められる。実際には、このプロファイルLDは、1次元のテーブルの形態でコンピュータ3100内のROM等のメモリ(図示せず)に記憶されており、プリンタドライバ3110は、このテーブルを参照してレベルデータを求める。
ステップS1302では、以上のようにして設定されたレベルデータLVLが閾値THLより大きいか否かを判定する。ここでは、ディザ法によるドットのオン・オフ判定を行う。閾値THLは、所謂ディザマトリクスの各画素ブロックに対して異なる値が設定されている。本実施形態では16×16の正方形の画素ブロックに、0〜254までの値が現れるディザマトリックスを用いている。
図55は、ディザ法によるドットのオン・オフ判定を示す図である。図示の都合上、図55には、一部のK画素データについてのみ示している。まず、各K画素データのレベルデータLVLを、当該K画素データに対応するディザマトリクス上の画素ブロックの閾値THLと比較する。そして、前記レベルデータLVLの方が前記閾値THLよりも大きい場合にはドットをオンにし、レベルデータLVLの方が小さい場合にはドットをオフにする。同図においては、ドットのマトリクスにおいて網掛けを施した領域の画素データが、ドットをオンにする(つまり、ドットを形成する。)K画素データである。すなわち、ステップS1302において、レベルデータLVLが閾値THLよりも大きい場合には、ステップS1310に進み、それ以外の場合にはステップS1303に進む。ここで、ステップS1310に進んだ場合には、プリンタドライバ3110は、当該処理対象のK画素データに対して、大ドットを示す画素データ(2ビットデータ)として値「11」を対応付けて記録し、ステップS1311に進む。そして、当該ステップS1311において、全てのK画素データについて処理を終了したか否かを判定し、終了している場合には、ハーフトーン処理を終了し、終了していない場合には、処理対象を未処理のK画素データに移して、ステップS1301に戻る。
一方、ステップS1303に進んだ場合には、プリンタドライバ3110は、中ドットのレベルデータLVMを設定する。中ドットのレベルデータLVMは、前記階調値に基づいて、前述の生成率テーブルにより設定される。設定方法は、大ドットのレベルデータLVLの設定と同様である。すなわち、図54に示す例では、階調値grに対応するレベルデータLVMは、中ドットの生成率を示すプロファイルMDとの交点で示される2dとして求められる。
次に、ステップS1304では、中ドットのレベルデータLVMと閾値THMの大小関係が比較され、中ドットのオン・オフの判定が行われる。オン・オフの判定方法は、大ドットの場合と同様である。しかし、中ドットのオン・オフ判定では、判定に用いる閾値THMを、大ドットの場合の閾値THLとは異なる値としている。すなわち、大ドットと中ドットで同じディザマトリクスを用いてオン・オフの判定を行った場合、ドットがオンになりやすい画素ブロックが両者で一致する。つまり、大ドットがオフとなるときには中ドットもオフになる可能性が高くなる。その結果、中ドットの生成率は所望の生成率よりも低くなる虞が生じる。このような現象を回避するため、本実施形態では、大ドットと中ドットとでディザマトリクスを変えている。つまり、オンになり易くなる画素ブロックを、大ドットと中ドットとで変えることで、それぞれのドットが適切に形成されるようにしている。
図56A及び図56Bは、大ドットの判定に用いられるディザマトリクスと、中ドットの判定に用いられるディザマトリクスとの関係について示す図である。この実施形態では、大ドットについては、図56Aの第1のディザマトリクスTMを用いる。また、中ドットについては、図56Bの第2のディザマトリクスUMを用いる。この第2のディザマトリクスUMは、第1のディザマトリクスTMにおける各閾値を、搬送方向(図における上下方向)の中央を中心として対称に移動したものである。なお、本実施形態では、先に述べたように16×16のマトリクスを用いているが、図示の都合上、図56A,12Bには4×4のマトリクスで示している。また、大ドットと中ドットで全く異なるディザマトリクスを用いるようにしても良い。
そして、ステップS1304において、中ドットのレベルデータLVMが、中ドットの閾値THMよりも大きい場合には、中ドットをオンにすべきと判定して、ステップS1309に進み、それ以外の場合にはステップS1305に進む。ここで、ステップS1309に進んだ場合には、プリンタドライバ3110は、当該処理対象のK画素データに対して、中ドットを示す画素データ「10」を対応付けて記録し、ステップS1311に進む。そして、当該ステップS1311において、全てのK画素データについて処理を終了したか否かを判定し、終了している場合には、ハーフトーン処理を終了し、終了していない場合には、処理対象を未処理のK画素データに移して、ステップS1301に戻る。
一方、ステップS1305に進んだ場合には、大ドットや中ドットのレベルデータの設定と同様にして、小ドットのレベルデータLVSを設定する。なお、小ドット用のディザマトリクスは、前述のように小ドットの生成率の低下を防ぐため、中ドットや大ドット用のものと異なるものとするのが望ましい。
そして、ステップS1306において、プリンタドライバ3110は、レベルデータLVSと小ドットの閾値THSとを比較し、レベルデータLVSが小ドットの閾値THSよりも大きい場合には、ステップS1308に進み、それ以外の場合にはステップS1307に進む。ここで、ステップS1308に進んだ場合には、当該処理対象のK画素データに対して、小ドットを示す画素データ「01」を対応付けて記録し、ステップS1311に進む。そして、当該ステップS1311において、全てのK画素データについて処理を終了したか否かを判定し、終了していない場合には、処理対象を未処理のK画素データに移して、ステップS1301に戻る。一方、終了している場合には、K画像データに関するハーフトーン処理を終了し、他の色の画像データについて同様にハーフトーン処理を実行する。
一方、ステップS1307に進んだ場合には、プリンタドライバ3110は、当該処理対象のK画素データに対して、ドット無しを示す画素データ「00」を対応付けて記録し、ステップS1311に進む。そして、当該ステップS1311において、全てのK画素データについて処理を終了したか否かを判定し、終了していない場合には、処理対象を未処理のK画素データに移して、ステップS1301に戻る。一方、終了している場合には、K画像データについてのハーフトーン処理を終了し、他の色の画像データについて同様にハーフトーン処理を実行する。
===(2)印刷動作について===
図57は、印刷時の動作のフローチャートである。以下に説明される各動作は、コントローラ2060が、メモリ内に格納されたプログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。このプログラムは、各動作を実行するためのコードを有する。
印刷命令受信(S1001):コントローラ2060は、コンピュータ3100からインターフェース部2061を介して、印刷命令を受信する。この印刷命令は、コンピュータ3100から送信される印刷データのヘッダに含まれている。そして、コントローラ2060は、受信した印刷データに含まれる各種コマンドの内容を解析し、各ユニットを用いて、以下の給紙動作、搬送動作、ドット形成動作等を行う。
給紙動作(S1002):コントローラ2060は、給紙動作を行う。給紙動作とは、印刷対象となる用紙Sを移動させ、印刷開始位置(所謂、頭出し位置)に位置決めする処理である。すなわち、コントローラ2060は、給紙ローラ2021を回転させ、印刷すべき用紙Sを搬送ローラ2023まで送る。続いて、コントローラ2060は、搬送ローラ2023を回転させ、給紙ローラ2021から送られてきた用紙Sを印刷開始位置に位置決めする。なお、用紙Sが印刷開始位置に位置決めされたとき、ヘッド2041の少なくとも一部のノズルは、用紙Sと対向している。
ドット形成動作(S1003):コントローラ2060は、ドット形成動作を行う。ドット形成動作とは、キャリッジ移動方向に沿って移動するヘッド2041からインクを断続的に吐出させ、用紙Sにドットを形成する動作である。このときコントローラ2060は、キャリッジモータ2032を駆動し、キャリッジ2031をキャリッジ移動方向に移動させる。また、コントローラ2060は、キャリッジ2031が移動している間に、印刷データに基づいてヘッド2041からインクを吐出させる。そして、ヘッド2041から吐出されたインクが用紙S上に着弾すれば、前述したように、用紙S上にドットが形成される。このとき、キャリッジ2031を移動させつつノズルからインクを吐出させると、用紙S上に移動方向に沿ったドット列(以下、ラスタラインともいう。)が形成される。
搬送動作(S1004):コントローラ2060は、搬送動作を行う。搬送動作とは、用紙Sを、ヘッド2041に対し、搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラ2060は、搬送モータ2022を駆動し、搬送ローラ2023を回転させて用紙Sを搬送方向に搬送する。この搬送動作により、ヘッド2041は、前記したドット形成動作によって形成されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。
排紙判断(S1005):コントローラ2060は、印刷中の用紙Sについて排紙の判断を行う。この判断時において、印刷中の用紙Sに印刷するためのデータが残っていれば、排紙は行われない。そして、コントローラ2060は、印刷するためのデータがなくなるまでドット形成動作と搬送動作とを交互に繰り返し、ドットから構成される画像を徐々に用紙Sに印刷する。印刷中の用紙Sに印刷するためのデータがなくなったならば、コントローラ2060は、その用紙Sを排出する。すなわち、コントローラ2060は、排紙ローラ2025を回転させることにより、印刷した用紙Sを外部に排出する。なお、排紙を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいて行っても良い。
印刷終了判断(S1006):コントローラ2060は、印刷を続行するか否かの判断を行う。次の用紙Sに印刷を行う場合には、給紙動作(S1002)により新たな用紙を給紙し印刷を続行し、印刷を続行する。次の用紙Sに印刷を行わない場合には、印刷動作を終了する。
===(2)画像中の濃度ムラの発生原因について===
CMYKのインクを用いて多色印刷された画像中に生じる濃度ムラは、基本的には、その各インク色でそれぞれに生じる濃度ムラが原因である。このため、通常は、各インク色の濃度ムラをそれぞれ別々に抑制することによって、多色印刷された画像中の濃度ムラを抑制する方法が採られている。
そこで、以下では、単色印刷された画像中に生じる濃度ムラの発生原因について説明する。図58は、単色印刷された画像中において用紙Sの搬送方向に生じる濃度ムラを説明する図である。
図58に例示した搬送方向の濃度ムラは、キャリッジ移動方向に沿って平行な縞状(便宜上、横縞状ともいう。)に見えている。このような横縞状の濃度ムラは、たとえば、ノズル毎のインク吐出量のばらつきによって発生するが、ノズルの加工精度のばらつきによっても発生する。すなわち、ノズルの加工精度のばらつきにより、ノズルが吐出するインクの飛行方向もばらつく。この飛行方向のばらつきにより、用紙Sに着弾したインクによるドット形成位置が、目標形成位置に対して搬送方向にずれる場合がある。この場合には、必然的に、これらドットが構成するラスタラインrの形成位置も搬送方向に関して目標形成位置からずれてしまう。このため、搬送方向に隣り合うラスタラインr同士の間隔が、周期的に空いたり詰まったりした状態となる。これを巨視的に見ると横縞状の濃度ムラとなって見えてしまうのである。すなわち、隣り合うラスタラインr同士の間隔が相対的に広がったり狭くなったりすることにより、ドット列領域内に本来形成されるドットより多くのドット又はドットの一部が形成されたドット列領域は巨視的に濃く見え、ドット列領域内に本来形成されるべきドットやドットの一部が隣接するドット列領域に形成されてしまった場合には、そのドット列領域は巨視的に薄く見えるのである。ここで、ラスタラインrとは、キャリッジ2031を移動させつつインクを断続的に吐出することによって、キャリッジ移動方向に沿って形成されるドット列を示している。
なお、濃度ムラの発生原因は、他のインク色に関しても当てはまることである。そして、CMYKのうちの1色でもこの傾向があれば、多色印刷の画像中には濃度ムラが顕れてしまう。
===(2)本実施形態の画像の印刷方法について===
図59は、本実施形態の画像の印刷方法に関連する工程等の流れを示すフローチャートである。以下、このフローチャートを参照して、各工程の概略を説明する。まず、製造ラインにおいてプリンタ2001が組み立てられる(S1110)。次に、検査担当の作業者によって、濃度を補正するための補正用テーブルがプリンタ2001に設定される(S1120)。このとき設定される補正用テーブルは、濃度補正をする際に補正の対象とする値により設定される補正用テーブルが異なる。例えば、補正の対象となる値が、各画素(ドットの形成単位)の階調値を示す画像データの場合には、印刷すべき画像のデータとして供給された各画素に対応する階調値を補正するための画像データ補正用テーブルである。また、補正の対象となる値が画像データを印刷データに変換する際にハーフトーン処理にて用いるレベルデータ(ドット生成率)の場合には、各画素に対応する階調値をレベルデータに変換するための生成率テーブルが設定される。ここでは、画像データやドット生成率を補正して新たなデータに変換するための値を示す補正用テーブルを、プリンタ2001のメモリ、詳しくは、補正用テーブル格納部2063a(図46参照。)に格納する。
次に、プリンタ2001が出荷される(S1130)。そして、このプリンタ2001を購入したユーザーによって画像の本印刷が行われるが、本印刷の際には、プリンタ2001は、補正用テーブル格納部2063aに格納された補正用テーブルに基づいてラスタライン毎に濃度補正を行い、画像を用紙Sに印刷する(S1140)。ここで本印刷とは、補正用パターン等の所定のテストパターンの印刷に対し、ユーザー等が行う自然画等、所望の画像の印刷をいう。そして、本実施形態の画像の印刷方法は、補正値の設定工程(ステップS1120)、及び画像の本印刷(ステップS1140)により、実現される。従って、以下では、ステップS1120及びステップS1140の内容について説明する。
<ステップS1120:濃度ムラを抑制するための補正用テーブルの設定>
図60は、補正用テーブルの設定に使用される機器を説明するブロック図である。なお、既に説明した構成要素については、同じ符号を付し説明は省略する。図60において、コンピュータ3100Aは、検査ラインに設置されたコンピュータ3100Aであり、工程用補正プログラムが動作している。この工程用補正プログラムは、補正用テーブル生成処理を行うことができる。この補正用テーブル生成処理は、用紙Sに印刷された補正用パターンをスキャナ装置100が読み取ることで得られたデータ群(たとえば、所定解像度の256階調のグレイスケールデータ)に基づき、対象となるドット列領域について補正用テーブルを生成する。なお、補正用テーブル生成処理については、後で詳細に説明する。また、このコンピュータ3100Aで動作するアプリケーションは、指定された階調値の補正用パターンCPを印刷させるための印刷データをプリンタ2001に対して出力する。
図61は、このコンピュータ3100Aのメモリに設けられた記録テーブルの概念図である。この記録テーブルは、インク色の区分で用意されている。そして、各区分で印刷された補正用パターンCPの測定値が、対応する記録テーブルに記録される。
この記録テーブルには、例えば互いに異なる複数種類の濃度を示す複数の階調値(以下、特定階調値という。)に基づいて印刷された複数の補正用パターンCP(後述する)を測定した測定値としての測定階調値C、及び、各補正用パターンの特定階調値Sとが対応付けられて記録される。本実施形態では、色毎に8つの特定階調値に基づいて8つの補正用パターンを印刷し、各補正用パターンの濃度を測定する。
各記録テーブルには、各濃度に対して2つのフィールドが用意されている。すなわち、記録テーブルには、ドット列領域毎に、測定階調値Cと特定階調値Sとが対応付けられた8つの測定情報が記憶される。具体的には、図中の最も左のフィールド及び左から9番目のフィールドには、8種類の特定階調値のうち最も低い特定階調値に基づいて印刷された補正用パターンに基づく測定情報が記録される。すなわち、最も左のフィールドには、補正用パターンCPaの測定階調値Caが、左から9番目のフィールドには、補正用パターンCPaの特定階調値Saが、それぞれ記録される。また、左から2番目のフィールドと左から10番目のフィールドには、8種類の特定階調値のうち2番目に低い特定階調値の補正用パターンCPbの測定階調値Cbと補正用パターンCPbの特定階調値Sbが、それぞれ記録される。このように各フィールドに順次濃度に対応した測定階調値Cと特定階調値Sとが記録され、左から8番目のフィールドには、8種類の特定階調値のうち最も高い特定階調値の補正用パターンCPhの測定階調値Chが、また、最も右のフィールドには、8種類の特定階調値のうち最も高い特定階調値Shが、それぞれ記録される。
各レコードには、レコード番号が付けられており、レコードは、用紙の印刷可能な領域の搬送方向の長さに想定されるドット列領域の数分だけ設けられている。また、各濃度の補正用パターンCPa,CPb,・・・,CPhにおける、同じドット列領域に対応する測定階調値Ca,Cb,・・・,Ch及び特定階調値Sa,Sb,・・・,Shは、何れも同じレコード番号のレコードに記録される。
図62は、図59中のステップS1120の手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートを参照し、補正用テーブルの設定手順について説明する。
この設定手順は、補正用パターンCPを印刷するステップ(S1121),補正用パターンCPを読み込むステップ(S1122),各ドット列領域の画素濃度を測定するステップ(S1123),各ドット列領域に対する濃度の測定階調値に基づいて補正用テーブルを設定するステップ(S1124)を有する。以下、各ステップについて詳細に説明する。本実施形態においては、補正用パターンを印刷する特定階調値を、例えば濃度10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%に相当する8種類の階調値とする。また、印刷可能な濃度範囲は濃度0から濃度100%であり、濃度0に対応する階調値は、最低値の「0」であり、濃度100%に対応する階調値は最高値の「255」である。
(1)補正用パターンCPの印刷(S1121)について:
まず、ステップS1121において、インク色毎に補正用パターンCPを用紙Sにそれぞれ印刷する。ここでは、検査担当の作業者は、検査ラインに設置されたコンピュータ3100Aにプリンタ2001を通信可能な状態に接続し、このプリンタ2001によって補正用パターンCPを印刷する。すなわち、作業者は、コンピュータ3100Aのユーザインタフェースを介し、補正用パターンCPを印刷させる操作をする。この操作により、コンピュータ3100Aは、メモリに格納されている補正用パターンCPの印刷データを読み出し、プリンタ2001に対しを出力する。プリンタ2001は、印刷データに基づいて用紙Sに補正用パターンCPを印刷する。なお、この補正用パターンCPを印刷するプリンタ2001は、補正用テーブルの設定対象となるプリンタ2001である。つまり、補正用テーブルの設定は、プリンタ2001毎に行われる。
図63は、印刷された補正用パターンCPの一例を説明する図である。図示するように、本実施形態の補正用パターンCPは、インク色毎、濃度毎の区分でそれぞれに印刷される。この例では、インク色毎に上述した8種類の特定階調値に基づいて補正用パターンCPがそれぞれ印刷されている。そして8種類の濃度は、10%、20%、30%・・・80%であり、各濃度に相当する特定階調値に基づいて印刷される。補正用パターンCPの印刷データは、各濃度に相当する特定階調値が全画素に割り付けられたCMYK画像データを想定し、想定したCMYK画像データを、プリンタドライバにてハーフトーン処理及びラスタライズ処理した場合に生成される印刷データである。このため、メモリに格納されている補正用パターンCPの印刷データは、各濃度を示す階調値に基づいて、理想的な印刷装置にて帯形状の補正用パターンCPが印刷された際に、それぞれ均一な濃度になるように設定されている。すなわち、理想的な印刷装置にて印刷された各補正用パターンCPは、それぞれに、搬送方向の全域に亘って、ほぼ一定の濃度で印刷されることになる。ここで、理想的な印刷装置とは、設計通りに加工・製造された印刷装置であり、ノズルから吐出されたインク滴により目標位置にドットが形成される印刷装置を示している。
インク色毎の8つの補正用パターンCPでなる補正用パターン群同士の相違点は、基本的にインク色が異なるだけである。このため、以下では、補正用パターン群を代表して、ブラック(K)の8つの補正用パターンCPkでなる補正用パターン群について説明する。また、前述したように、多色印刷における濃度ムラの抑制は、その多色印刷に用いられるインク色毎にそれぞれ行われるが、それぞれ抑制に用いられる方法は同じである。このため、以下の説明は、ブラック(K)に代表させて行い、以下の説明においては、ブラック(K)の一色についてだけ記載している箇所も有るが、その他のC,M,Yのインク色についても同様である。
ブラック(K)の補正用パターンCPkは、上記8種類の特定階調値に基づいて、8種類の濃度にて各々搬送方向に長い帯形状に印刷されている。そして、搬送方向の印刷範囲は、用紙Sにおける搬送方向の全域に亘っている。すなわち、用紙Sの上端から下端に亘って一連に形成されている。また、この補正用パターンCPkは、キャリッジ移動方向に8本平行に並んだ状態で形成されている。
補正用パターンCPkは、インターレース方式やバンド送り方式といった印刷方法に応じて、それぞれ各印刷方式に応じた用紙搬送量及び各ノズルのインク吐出タイミングにて印刷される。これらインターレース方式、バンド送り方式等により印刷された画像のラスタラインと、各ラスタラインを形成するノズルは、印刷方式により異なるため、ラスタラインが形成されるべきドット列領域毎の濃度ムラを抑制するための補正用パターンは、本印刷にて実際に用いられる用紙搬送量及び各ノズルのインク吐出タイミング、すなわち各印刷方式及び各印刷処理モードにて印刷されることが望ましい。例えば、バンド送り方式であれば、ノズル列の長さ分だけ用紙を搬送し、ノズルピッチと同じピッチのラスタラインを形成する印刷処理モードにて印刷する。インターレース方式であれば、用紙の先端及び後端部分では、微少量だけ用紙を搬送して特定の僅かなノズルにて印刷する処理モードにて印刷し、先端及び後端以外の部分では、用紙を定量的に搬送しつつ可及的に多くのノズルを用いてラスタラインを形成する印刷処理モードにて印刷する。また、用紙に余白無く印刷する所謂フチ無し印刷の場合には、用紙の先端及び後端部分では、プラテン2024に設けられた溝2024a(図48参照)と対向するノズルのみにて印刷し、先端及び後端以外の部分では、用紙を定量的に搬送しつつ可及的に多くのノズルを用いてラスタラインを形成する印刷処理モードにて印刷する。このように本印刷と同じ用紙搬送量及び各ノズルのインク吐出タイミングにて各補正用パターンを印刷することにより、補正用パターンに基づいて得られる補正用テーブルを用いた濃度補正の精度が向上し、濃度ムラを確実に抑制できる。
本実施形態においては、各色8種類の階調値に基づいて印刷した補正用パターンを用いる例について説明したが、各色の階調値の種類は8種類に限らない。しかしながら、階調値の種類を多くすると、より適切な濃度補正を行うことができるが、補正用パターンを印刷する工程、補正パターン読み取って補正用テーブルを設定する工程、及び補正処理等に費やす時間が増大する。一方、階調値の種類を少なくすると、適切な補正がなされない畏れがある。
(2)補正用パターンCPの読み取り(ステップS1122)について:
図63に示す各補正用パターンCPka,CPkb,・・・,CPkhの濃度は、当該濃度を光学的に測定する濃度測定装置によってドット列領域毎に測定される。この濃度測定装置は、キャリッジの移動方向、すなわちドット列領域に沿う方向における所定数の画素の平均濃度を、ドット列領域毎に測定可能な装置である。濃度測定装置の一例としては、周知のスキャナ装置が挙げられる。なお、所定数の画素の平均濃度で各ドット列領域の濃度を評価する理由は、前記ハーフトーン処理によって各画素に形成されるドットの大きさ(非形成も含む。)は各画素の階調値を揃えた画像データに基づいて印刷しても、画素毎に異なってしまうためであり、つまり、一つの画素に、一行分のドット列領域の濃度を代表させることができないためである。
なお、本実施形態における「ドット列領域の濃度の測定」は、前述の実施形態における「ラスタラインの濃度の測定」と同じである。
図64A及び図64Bに、このスキャナ装置の縦断面図及び平面図をそれぞれ示す。このスキャナ装置100は、原稿101を載置する原稿台ガラス102と、この原稿台ガラス102を介して前記原稿101と対向しつつ所定の読取移動方向に移動する読取キャリッジ104とを備えている。読取キャリッジ104には、原稿101に光を照射する露光ランプ106と、原稿101からの反射光を、前記読取移動方向と直交する直交方向の所定範囲に亘って受光するリニアセンサ108とを搭載している。そして、前記読取キャリッジ104を前記読取移動方向に移動させながら、所定の読み取り解像度で原稿101から画像を読み取るようになっている。なお、図64A中の破線は前記光の軌跡を示している。
図64Bに示すように、原稿101としての補正用パターンCPが印刷された用紙は、そのドット列領域に沿う方向を前記直交方向に揃えて原稿台ガラス102に載置され、これによって、そのドット列領域に沿う方向における所定数の画素の平均濃度を、ドット列領域毎に読み取り可能となっている。なお、前記読取キャリッジ104の前記読取移動方向の読み取り解像度は、前記ドット列領域のピッチの整数倍の細かさにするのが望ましく、このようにすれば、読み取った濃度の測定階調値とドット列領域との対応付けが容易になる。
この補正用パターンCPkの濃度の測定階調値の一例を図65に示す。図65の横軸はドット列領域番号を、また縦軸は、濃度の測定階調値を示している。ここで、ドット列領域番号とは、用紙に仮想的に定められた各ドット列領域に用紙の先端側から付した番号である。
補正用パターンCPkを構成する全てのドット列領域に亘って、同じ濃度の階調値を示す画像データに基づいて印刷したにも拘わらず、図65に示す測定階調値はドット列領域毎に上下に大きくばらついている。このばらつきが、前述したインクの吐出方向のばらつき等に起因する濃度ムラである。すなわち、測定階調値は、ドット列領域毎に測定された値であるため、隣り合うラスタラインの間隔が狭い場合には、ドット領域内に隣接するラスタラインの一部も読み取られてしまうため、濃度は大きく測定される一方、間隔が広い場合には、本来読み取られるべきラスタラインの一部が当該ドット列領域から外れるため、濃度は小さく測定されている。
ところで、このスキャナ装置100は、前記コンピュータ3100に通信可能に接続されている。そして、当該スキャナ装置100で読み取った補正用パターンの濃度の各測定値は、ドット列領域番号と対応付けられながら、コンピュータ3100の前記メモリに用意された記録テーブルに記録される。なお、このスキャナ装置100から出力される前記濃度の測定階調値は、256段階の階調値で示されたグレイスケール(色情報を持たず、明度だけで作られたデータ)である。ここで、このグレイスケールを用いる理由は、測定階調値が色情報を持っていると、当該測定階調値を対象のインク色の階調値のみで表現する処理を行わねばならず、処理が煩雑になるためである。
8種類の階調値に基づいて印刷された各補正用パターンCPka,CPkb,・・・,CPkhの濃度は、スキャナ装置100によってドット列領域毎に測定され、測定階調値Ca,Cb,・・・,Chは、図61に示した記録テーブルに記録される。
(3)ステップS1123:ドット列領域毎の補正用テーブルの設定
搬送方向の濃度ムラを抑制すべく濃度補正を行う場合には、1つの補正情報、例えば、印刷する画像データにて示された階調値と、補正された新たな階調値とで対をなす1つの補正情報に基づいてすべての画像データを補正することも考えられる。本実施形態では、互いに異なる濃度に対応する複数の補正情報に基づいて補正することにより、より適正、且つ効率的に濃度ムラを抑制することとしている。このため、複数の補正情報を取得し、取得した複数の補正情報を用いて画像データ補正用テーブル、または、生成率テーブルを設定する。
<画像データ補正用テーブルを設定する場合>
図66は、プリンタ2001のメモリ2063に設けられた補正用テーブル格納部2063aに格納された画像データ補正用テーブルの概念図である。
図66に示す画像データ補正用テーブルは、画像データを補正の対象とする場合に補正用テーブル格納部2063aに格納されている。画像データ補正用テーブルは、インク色毎の区分でそれぞれ用意され、補正後の新たな階調値を記録するためのレコードを有している。各レコードにはレコード番号が付けられており、測定階調値等に基づいて算出された補正後の新たな階調値は、当該測定階調値のレコードと同じレコード番号のレコードに記録される。そして、このレコードもまた、用紙の印刷可能な領域の搬送方向の長さに相当するドット列領域の数分だけ設けられている。
上述した方法にて各記録テーブルの各レコードに記録された、特定階調値Sa,Sb,・・・,Shと測定階調値Ca,Cb,・・・,Chとで対をなす8対の測定情報(Sa,Ca),(Sb,Cb),・・・,(Sh,Ch)を用いて、まず複数の補正情報を取得する。画像データ補正用テーブルを設定する場合には、各ドット列領域(レコード)ごとに、所定の濃度を示す階調値と、当該濃度の補正後の新たな階調値とで対をなす情報が補正情報となる。
各階調値に対応する補正情報は、次のようにして求める。まず、8つの測定情報のうちの3つの測定情報を用いて、ある補正情報を取得する。同様にして、例えば合計4つの補正情報を取得する。次に、取得した4つの補正情報、最高階調値、最低階調値、のいずれか2つの補正情報を用いて一次補間を行い、他の階調値に対応する補正後の新たな階調値を算出する。算出した補正後の新たな階調値と各濃度を示す階調値とを対応付けて補正情報とし、画像データ補正用テーブルの前記所定の濃度に対応するフィールドに記憶する。例えば、濃度30%に対応する補正情報を取得する際には、濃度10%の補正用パターン、濃度30%の補正用パターン、濃度50%の補正用パターンの各濃度を測定し3つの測定情報を用いて一次補間を行う。また、濃度50%に対応する補正情報を取得する際には、濃度30%の補正用パターン、濃度50%の補正用パターン、濃度70%の補正用パターンの各濃度を測定した3つの測定情報を用いて一次補間を行うというように、新たな階調値を求めるべき濃度と、例えば±20%の濃度との補正用パターンから取得した3つの測定情報を用いて補正後の新たな階調値を算出する。
図67は、前記3つの補正情報を用いて行われる一次補間を説明するためのグラフである。なお、グラフの横軸は、画像データにて示されるブラック(K)の階調値(以下、データ階調値という)Sを示している。また、グラフの縦軸は、測定値Cとしてグレイスケールの階調値(以下、測定階調値という)を示している。以下では、このグラフ上の各点の座標を(S,C)で示す。
周知なように、一次補間とは、2個の既知量の間、又はその外側の関数値を、それら3つのプロットされた点が直線上にあるとして求めるものである。そして、本実施形態にあっては、既知量は、前記3対の測定情報(Sa,Ca),(Sb,Cb),(Sc,Cc)であり、求める値は、測定階調値Cが目標値Ss1となるようなデータ階調値Sである。なお、本実施形態において目標値Ss1とは、所定の階調値に基づいて印刷されるべき画像の濃度を示す階調値であり、本来印刷されるべき所定の階調値の濃度を有する画像と同じ濃度のカラーサンプル(濃度見本)の測定階調値である。ここでは、3つの測定情報のうち真ん中の値となる測定情報の階調値にて本来表現されるべき濃度と同じ濃度のカラーサンプル(濃度見本)を、前記スキャナ装置100で読み取った際に出力されるグレイスケールの測定階調値が目標値である。このカラーサンプルは、濃度の絶対基準を示すものであり、すなわち、前記スキャナ装置100による測定階調値Cが、目標値Ss1を示せば、その測定対象は、前記真ん中の値Sbの濃度に見えるということを示している。すなわち、目標値Ss1となる濃度に印刷されるべき濃度が目標濃度に相当する。この目標濃度は、必ずしもカラーサンプルの濃度とする必要はなく、例えば、各ドット列領域毎に測定した測定階調値の平均値としても良い。カラーサンプルを用いる場合には、単に濃度ムラを抑制するだけでなく、カラーサンプルの濃度を基準として、印刷される画像の濃度を補正することが可能である。また、測定階調値の平均値を用いる場合には、カラーサンプルを測定する手間がかからず、補正情報をより早く取得しつつ、濃度ムラを抑制することが可能である。
図67に示すように、8つの測定情報のうち例えば3つの測定情報(Sa,Ca),(Sb,Cb),(Sc,Cc)は、それぞれにグラフ上における座標が(Sa,Ca)の点A、(Sb,Cb)の点B、(Sc,Cc)の点Cとして表される。このうちの二点B,Cを結ぶ直線BCが、濃度が高い範囲におけるデータ階調値Sの変化と測定階調値Cの変化との関係を示している。また、二点A,Bを結ぶ直線ABが、濃度が低い範囲におけるデータ階調値Sの変化と測定階調値Cとの変化との関係を示している。
そして、この2つの直線AB,BCから構成されるグラフから、測定階調値Cが前記目標値Ss1となるデータ階調値Sの値Soを読み取って、3つの測定情報のうち真ん中の値Sbとなる測定情報の濃度の補正後の新たな階調値Soとする。例えば、図示例のように、前記目標値Ss1が、前記点Bの測定階調値Cbよりも大きい場合には、直線BCによって一次補間を行い、測定階調値Cが目標値Ss1となるデータ階調値Sに対応する補正後の新たな階調値Soとする。逆に、前記目標値Ss1が、前記点Bの測定階調値Cbよりも小さい場合には、直線ABによって一次補間を行い、測定階調値Cが目標値Ss1となるデータ階調値Sに対応する補正後の新たな階調値Soとする。
このようにして、例えば濃度10%、濃度30%、濃度50%の各補正用パターンから30%に対応する補正情報を、濃度20%、濃度40%、濃度60%の各補正用パターンから40%に対応する補正情報を、濃度30%、濃度50%、濃度70%の各補正用パターンから50%に対応する補正情報を、濃度40%、濃度60%、濃度80%の各補正用パターンから60%に対応する補正情報をそれぞれ取得する。
図68は、供給された画像データにて与えられるデータ階調値と、補正後の新たな階調値とを対応させる画像データ補正用テーブルを説明するためのグラフである。
図68のグラフにおいて、横軸は、画像データにて示されるブラック(K)のデータ階調値S、縦軸は補正後の新たな階調値である。そして、濃度30%に相当するデータ階調値(例えば77)、濃度40%に相当するデータ階調値(例えば102)、濃度50%に相当するデータ階調値(例えば128)、濃度60%に相当するデータ階調値(例えば153)に対応するデータとして、取得された補正後の新たな階調値がプロットされ、各補正情報間が直線にて繋がれている。このように、2つの補正情報間を直線にて繋ぐ場合には、繋がれた一方の補正情報が第1補正情報となり、他方が第2補正情報となる。このとき、印刷した画像にて表現可能な最低濃度、すなわち濃度0に相当する階調値「0」及び濃度0に対応する階調値So「0」と、濃度30%に対応する補正情報が直線にて繋がれている領域では、濃度30%に対応する補正情報が第1補正情報となり、濃度0に相当する階調値「0」と、濃度0に対応する階調値So「0」とが第2補正情報となる。また、最高濃度、すなわち濃度100%に相当する階調値「255」及び濃度100%に対応する階調値So「255」と、濃度60%に対応する補正情報とが直線にて繋がれている領域では、濃度60%に対応する補正情報が第1補正情報となり、濃度100%に相当する階調値「255」と、濃度100%に対応する階調値So「255」とが第2補正情報となる。
このグラフに基づいて画像データ補正用テーブルは設定される。本実施形態の場合には、濃度0、30%、40%、50%、60%に対応するフィールドに取得された補正後の新たな階調値が記憶される。そして、例えば濃度30%と濃度40%との間となる濃度、すなわち濃度30%及び濃度40%を除く濃度の補正後の新たな階調値は、濃度30%を示す階調値を第1階調値とし、濃度40%を示す階調値を第2階調値とし、濃度30%に対応付けた第1補正情報(C30,So30)と濃度40%に対応付けた第2補正情報(C40,So40)とを一次補間することにより、全てのドット列領域を同一の各濃度にて印刷させるための新たな階調値を求め、画像データ補正用テーブルの対応するフィールドに記憶される。
例えば、画像データとして濃度35%を示す階調値C35が与えられた場合には、図68のグラフに基づいて、補正後の新たな階調値としてSo35に変換されることになる。各データ階調値に対応する補正後の新たな階調値の求め方を式にて表現すると次のようになる。
濃度30%に対応付けた第1補正情報と濃度40%に対応付けた第2補正情報とを繋ぐ直線は、以下に示す式1で表現できる。
Sox=[(So30−So40)/(C30−C40)]・(Cx−C30)+So30…式1
そして、この式1の任意のデータ階調値CxにC35を代入すると、画像データの濃度35%に対する補正後の新たな階調値Soxが求められる。
補正後の新たな階調値を求める演算を行うためのプログラムは、前述した検査ラインのコンピュータ3100Aが備えるメモリに格納されている。
演算により得られた各濃度に対する補正後の新たな階調値は、図66に示す画像データ補正用テーブルの対応するフィールドに格納される(S1124b)。すなわち、コンピュータ3100Aは、まず記録テーブルの同一レコードから3つの測定情報(Sa,Ca),(Sb,Cb),(Sc,Cc)を読み出して1つの補正情報を取得する。同様にして、それぞれ3つ測定情報から合計4つの補正情報を取得する。取得した4つの補正情報と、上述した最低濃度及び最高濃度の補正情報のうち2つの補正情報を式1に代入して、2つの補正情報に対応する2つの濃度間の補正後の新たな階調値を算出し、算出した補正後の新たな階調値を画像データ補正用テーブルにおける同じレコード番号のレコードに記録する。
そして、色変換処理されたCMYK画像データの各画素データは各々、ハーフトーン処理において、画像データ補正用テーブルに基づいて補正後の新たな階調値に変換された後、前述したディザ法等による処理され、その後ラスタライズ処理が実行されて、印刷データに変換される。プリンタは、変換された印刷データに基づいて印刷することにより、用紙の搬送方向における濃度ムラを抑制した良好な画像を印刷することが可能である。
<生成率テーブルを設定する場合>
図69は、プリンタ2001のメモリ2063に設けられた補正用テーブル格納部2063aに格納された生成率テーブルの概念図である。
図69に示す生成率テーブルは、レベルデータ(ドット生成率)を補正対象とする場合に、補正用テーブル格納部2063aに格納され、記録テーブルと同様にインク色毎の区分でそれぞれ用意されている。補正用テーブルは、補正すべき値を記録するためのレコードを有している。各レコードにはレコード番号が付けられており、測定階調値等に基づいて算出された補正値は、当該測定階調値のレコードと同じレコード番号のレコードに記録される。そして、このレコードもまた、用紙の印刷可能な領域の搬送方向の長さに相当するドット列領域の数分だけ設けられている。
上述した方法にて各記録テーブルの各レコードに記録された、特定階調値Sa,Sb,・・・,Shと測定階調値Ca,Cb,・・・,Chとで対をなす8つの測定情報(Sa,Ca),(Sb,Cb),・・・,(Sh,Ch)を用いて、まず4つの補正情報を取得する。生成率テーブルを設定する場合には、8つの測定情報から取得された4つの補正情報と、各補正情報の特定階調値に対応する補正後のレベルデータとで対をなす4つの生成情報を取得する。
4つの補正情報を取得するために、8つの測定情報から、図67に示す概念に基づき所定の濃度に対する測定情報に基づいて補正後の新たな階調値を算出する方法は、上述した画像データ補正用テーブルを設定する場合と同様であるため説明を省略する。
そして、図67の2つの直線AB,直線BCを示すグラフから、測定階調値Cが前記目標値Ss1となるデータ階調値Sの値Soを読み取って、3つの測定情報のうち真ん中Sbの値となる測定情報の濃度に対応する補正後の新たな階調値Soとする。
そして、この補正後の新たな階調値Soと3つの測定情報のうち真ん中の値となる測定情報の特定階調値Sbとの偏差が補正量ΔSであり、補正量ΔSを3つの測定情報のうち真ん中の値となる測定情報の特定階調値Sbで除算して補正割合H(補正割合H=ΔS/Sb)を算出する。
ちなみに、上述した補正割合Hを式で表現すると次のようになる。
まず、図67において濃度10%の情報と濃度30%の情報とを繋いだ直線を直線ABとすると直線ABは、以下に示す式2にて表現できる。
C=[(Ca−Cb)/(Sa−Sb)]・(S−Sa)+Ca…式2
そして、この式2をデータ階調値Sについて解くととともに、測定階調値Cに目標値Ss1を代入すれば、測定階調値Cが目標値Ss1となる補正後の新たな階調値Soは、次の式3のように表せる。
So=(Ss1−Ca)/[(Ca−Cb)/(Sa−Sb)]+Sa…式3
同様に、濃度30%の情報と濃度50%の情報とを繋いだ直線を直線BCとすると直線BCは、以下に示す式4で表現できる。
C=[(Cb−Cc)/(Sb−Sc)]・(S−Sb)+Cb…式4
そして、この式4をデータ階調値Sについて解くととともに、測定階調値Cに目標値Ss1を代入すれば、測定階調値Cが目標値Ss1となる補正後の新たな階調値Soは、次の式5のように表せる。
So=(Ss1−Cb)/[(Cb−Cc)/(Sb−Sc)]+Sb…式5
一方、データ階調値Sの補正量ΔSは式6で示され、補正割合Hは式7で表される。
ΔS=So−Sb …式6
H=ΔS/Sb=(So−Sb)/Sb …式7
従って、式3、式5,及び式7が、補正割合Hを求めるための式であり、これらの各式のCa,Cb,Cc,Sa,Sb,Sc,Ss1に具体的な数値を代入すれば、所定の濃度に対する補正割合Hを求めることができる。
これらの各式の演算を行うためのプログラムは、前述した検査ラインのコンピュータ3100Aが備えるメモリに格納されている。また、演算により求められた補正割合Hも、コンピュータ3100Aが備えるメモリに格納される。すなわち、コンピュータ3100Aは、記録テーブルの同一レコードから3対の情報(Sa,Ca),(Sb,Cb),(Sc,Cc)を読み出し、これらを式3,式5,式7に代入して補正割合Hを算出し、算出した補正割合をメモリに記録する。
ステップ124にて求められた特定階調値に対応する濃度、すなわち濃度30%、濃度40%、濃度50%、濃度60%に対する補正割合Hに基づいて、前記ドットの生成率テーブルのレベルデータを補正する。例えば、濃度30%を示す階調値が「77」であるときに、濃度30%における補正割合Hが「+0.1」であり、既にメモリに記憶されているドットの生成率テーブルの階調値「77」に対応する中ドットのレベルデータLVMは中ドット用のプロファイルMDにおいて「45」、小ドットのレベルデータLVSは小ドット用のプロファイルSDにおいて「20」であったとする。このとき、中ドットのレベルデータLVM及び小ドットのレベルデータLVSはそれぞれ「+0.1」だけ補正され、中ドットのレベルデータLVMが「50」、小ドットのレベルデータが「22」に変更される。ドットの生成率テーブルの階調値「77」に対応する大ドットのレベルデータLVLは大ドット用のプロファイルLDにおいて「0」であるため補正しない。このように、特定濃度に対応する大ドット、中ドット、小ドットのレベルデータが補正される。この結果、大ドット、中ドット、小ドット毎に、特定階調値Sと、補正後のレベルデータLとが対応付けられた4つの生成情報(S,L)が生成される。ここで、大ドットの4つの生成情報は、濃度が低い方から(SL1,LL1),(SL2,LL2), (SL3,LL3),(SL4,LL4)、中ドットの4つの生成情報は、(SM1,LM1),(SM2,LM2), (SM3,LM3),(SM4,LM4)、小ドットの4つの生成情報は、(SS1,LS1),(SS2,LS2), (SS3,LS3),(SS4,LS4)と表す。
図70は、供給された画像データにて与えられるデータ階調値と、補正後のレベルデータLとを対応させる生成率テーブルを説明するためのグラフである。
図54に示した補正前の生成率テーブルと同様に、図70のグラフにおいて、横軸は画像データにて示されるブラック(K)のデータ階調値(0〜255)、左側の縦軸はドットの生成率(%)、右側の縦軸はレベルデータ(0〜255)である。また、図70では、説明の便宜上、既存の生成率テーブルを点線にて示している。そして、濃度30%に相当するデータ階調値(例えば77)、濃度40%に相当するデータ階調値(例えば102)、濃度50%に相当するデータ階調値(例えば128)、濃度60%に相当するデータ階調値(例えば153)に対応するデータとして、取得された補正後のレベルデータLがプロットされ、各補正情報間が直線にて繋がれている。このとき、印刷した画像にて表現可能な最低濃度、すなわち濃度0%に相当する階調値「0」と、濃度0に対応する補正後のレベルデータLを「0」とし、また、最高濃度、すなわち濃度100%に相当する階調値「255」と、濃度100%に対応する補正後のレベルデータLを「255」とする補正情報として、濃度30%に相当する補正情報及び濃度60%に相当する補正情報とそれぞれ直線にて繋がれる。このように、2つの生成情報間を直線にて繋ぐ場合には、繋がれた一方の生成情報が第1生成情報となり、他方が第2生成情報となる。このとき、印刷した画像にて表現可能な最低濃度、すなわち濃度0に相当する階調値「0」と及び濃度0に対応するレベルデータ「0」と、濃度30%に対応する生成情報とが直線にて繋がれている領域では、濃度30%に対応する生成情報が第1生成情報となり、濃度0に相当する階調値「0」と、濃度0に対応するレベルデータ「0」とが第2生成情報となる。また、最高濃度、すなわち濃度100%に相当する階調値「255」及び濃度100%に対応するレベルデータ「255」と、濃度60%に対応する生成情報とが直線にて繋がれている領域では、濃度60%に対応する生成情報が第1生成情報となり、濃度100%に相当する階調値「255」と、濃度100%に対応するレベルデータ「255」とが第2生成情報となる。
このグラフに基づいて生成率テーブルは設定される。本実施形態の場合には、濃度0、30%、40%、50%、60%に対応するフィールドに取得された補正後のレベルデータが大ドット、中ドット、小ドットのプロファイルに対応させて記憶される。そして、濃度30%と濃度40%との間となる濃度、すなわち、濃度30%及び濃度40%を除く濃度の補正後のレベルデータは、濃度30%を示す階調値を第1階調値とし、濃度40%を示す階調値第2階調値とし、濃度30%に対応付けた第1生成情報(C30,L30)と濃度40%に対応付けた第2生成情報(C40,L40)とを一次補間することにより求め、全てのドット列領域を同一の各濃度にて印刷させるためのレベルデータLを求め、生成率テーブルの対応するフィールドに記憶される。
例えば、画像データとして濃度35%を示す階調値C35が与えられた場合には、図70のグラフに基づいて、補正後のレベルデータとしてL35に変換されることになる。
各データ階調値に対応する補正後のレベルデータの求め方を式にて表現すると次のようになる。例えば、濃度30%に対応付けた第1生成情報と濃度40%に対応付けた第2生成情報とを繋ぐ直線は、以下に示す式8で表現できる。
Lx=[(L30−L40)/(C30−C40)]
・(Cx−C30)+L30 …式8
そして、この式7の任意のデータ階調値CxにC35を代入すると、画像データの濃度35%に対する補正後のレベルデータLxが求められる。
補正後のレベルデータLを求める演算を行うためのプログラムは、前述した検査ラインのコンピュータ3100Aが備えるメモリに格納されている。
ところで、濃度0と濃度30%との間となる濃度領域のレベルデータを求める場合には、濃度0のレベルデータを「0」とし、また、濃度60%と濃度100%との間となる濃度領域のレベルデータを求める場合には、濃度100%のレベルデータをMAXの値、「255」としてそれぞれ一次補間を行う。このように、濃度0のレベルデータを「0」とし、濃度100%のレベルデータを「255」とすることにより、補正後のレベルデータが、最小値の「0」を下回ることがなく、また、最大値の「255」を上回ることがなく、適正な補正量を設定することが可能である。このとき、例えば、濃度0と濃度30%の間となる濃度領域のレベルデータLを、隣接する濃度領域である濃度30%と濃度40%との間となる濃度領域のグラフを延長させ、濃度60%と濃度100%の間となる濃度領域のレベルデータを濃度50%と濃度60%との間となる濃度領域のグラフを延長させて求めることも可能であるが、この場合には補正後のレベルデータがプリンタにて設定可能な最大値「255」、及び、最小値「0」を超える可能性があるため、上述した補正値の求め方の方が適している。
このようにして、濃度0から濃度100%のすべての濃度に対するレベルデータが求められる。求められたレベルデータに基づいて、既にメモリに記憶されているドットの生成率テーブルの各データを置き換えて、新たなドットの生成率テーブルを生成し補正用テーブル格納部2063aに記憶する。
演算により得られた各濃度に対する補正後のレベルデータは、図69に示す生成率テーブルの対応するフィールドに格納される。すなわち、コンピュータ3100Aは、まず記録テーブルの同一レコードから3つの測定情報(Sa,Ca),(Sb,Cb),(Sc,Cc)を読み出して補正情報と補正割合Hとを取得する。同様にして合計4つの補正情報と4つの補正割合Hとを取得する。取得した4つの補正情報と補正割合Hとから補正後のレベルデータを求めて4つの生成情報を取得する。そして、4つの生成情報、最低階調値の生成情報、最高階調値の生成情報、のうち2つの生成情報を式8に代入して、2つの生成情報に対応する2つの階調値間の補正後のレベルデータを算出し、算出した補正後のレベルデータを生成率テーブルにおける同じレコード番号のレコードに記録する。
そして、アプリケーションから供給された画像データは、解像度変換処理及び色変換処理された後、ハーフトーン処理される際に、補正された生成率テーブルに基づいて、補正後のレベルデータに変換された後、ラスタライズ処理が実行されて、印刷データに変換される。プリンタは、変換された印刷データに基づいて本印刷することにより、結果的に搬送方向の濃度ムラが抑制される方向に補正される。このため、ドット列領域毎の濃度のバラツキを、インク色毎且つ処理モード毎に小さくすることが可能となり、もって濃度ムラを抑制することが可能である。
===(2)第2実施形態のその他の例===
上記の実施形態は、主としてプリンタ2001について記載されているが、その中には、印刷装置、印刷方法、印刷システム等の開示が含まれていることは言うまでもない。
また、一実施形態としてのプリンタ2001等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
また、本実施形態においては、用紙搬送方向に発生する濃度ムラを補正するプリンタ及び印刷方法について説明したが、上記補正方法は、例えばヘッドが搭載されたキャリッジの移動に伴う振動などプリンタ2001を構成する機構に起因して、搬送方向に沿う方向に発生する縦縞状の濃度ムラにも適用可能である。
<プリンタについて>
前述の実施形態では、プリンタ2001が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の記録装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
<インクについて>
前述の実施形態は、プリンタ2001の実施形態だったので、染料インク又は顔料インクをノズルから吐出していた。しかし、ノズルから吐出するインクは、このようなインクに限られるものではない。
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していた。しかし、インクを吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
<濃度補正対象等について>
前述の実施形態では、補正対象をCMYK画像データ、及び、ハーフトーン処理にて変換されるレベルデータとしたが、これに限定されるものではない。たとえば、解像度変換処理で得られたRGB画像データを、濃度補正対象としてもよい。また、上記実施形態においては、補正用テーブルをメモリに格納しておく方法について説明したが、これに限らず、特定濃度に対応した複数の補正情報と、補正後の階調値、及び、補正後のレベルデータを算出するための演算プログラムをメモリに格納しておき、画像データを印刷データに変換する際に演算処理を行ってもよい。この場合には、各画素データ毎に演算処理を実行するため、プリンタのスループットが低下する畏れがあるため、上記実施形態の方がより優れた効果を奏する。
<インクを吐出するキャリッジ移動方向について>
前述の実施形態では、キャリッジ2031の往方向の移動時にのみインクを吐出する単方向印刷を例に説明したが、これに限るものではなく、キャリッジ2031の往復たる双方向移動時にインクを吐出する所謂双方向印刷を行っても良い。
<印刷に用いるインク色について>
前述の実施形態では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の4色のインクを用紙S上に吐出してドットを形成する多色印刷を例に説明したが、インク色はこれに限るものではない。例えばこれらインク色に加えて、ライトシアン(薄いシアン、LC)及びライトマゼンタ(薄いマゼンタ、LM)等のインクを用いても良い。
また、逆に、上記4つのインク色のいずれか一つだけを用いて単色印刷を行っても良い。