本明細書における発明の詳細な説明の項の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
インクを吐出するためのノズルと、媒体を搬送するための搬送ユニットとを備え、所定の移動方向に移動する複数の前記ノズルからインクを吐出して前記媒体にドットを形成するドット形成動作と、前記搬送ユニットにより前記媒体を前記移動方向と交差する交差方向に搬送する搬送動作とを繰り返すことによって、前記移動方向に沿う複数のドットから構成されたラインを、前記交差方向に複数形成して画像を印刷する印刷装置であって、前記ラインを形成するノズルが、前記交差方向に関して周期的に変化するように画像を印刷する処理モードを有し、該処理モードによって画像を印刷する際に、濃度の補正値に基づいてライン毎に濃度補正を実行する印刷装置において、前記処理モードにて印刷された補正用パターンのラインの濃度の測定値に基づいて決定された補正値を、1周期において形成されるライン数の整数倍のライン数を1セットとして少なくとも1セット分記憶し、前記処理モードで画像を印刷する際に、前記少なくとも1セットの各補正値を順番に繰り返し対応させて、前記濃度補正を行うことを特徴とする印刷装置。
このような印刷装置によれば、前記補正値を少なくとも前記1セットだけ、すなわち前記ノズルが周期的に変化する1周期の整数倍の数だけ記憶すれば、前記濃度補正を実行することができる。従って、印刷する画像を構成する全てのラインに対応させて補正値を記憶せずに済み、もって、前記印刷装置の記憶部の記憶容量を小さくすることが可能となる。
かかる印刷装置において、前記処理モードで画像を印刷する際に、該画像を構成する全てのラインに亘って前記少なくとも1セットの各補正値を順番に繰り返し対応させて、前記濃度補正を行うのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記補正値を少なくとも前記1セットだけ、すなわち前記ノズルが周期的に変化する1周期の整数倍の数だけ記憶すれば、前記濃度補正を実行することができる。従って、印刷する画像を構成する全てのラインに対応させて補正値を記憶せずに済み、もって、前記印刷装置の記憶部の記憶容量を小さくすることが可能となる。
かかる印刷装置において、前記移動方向の往復移動時の両方において前記ドット形成動作を実行して画像を印刷する処理モードについては、前記1周期の2倍のライン数を1セットとして、少なくとも1セットの補正値を用いて濃度補正を行うのが望ましい。
このような印刷装置によれば、ドット形成動作が、前記移動方向を往復移動する際にドットを形成する場合である所謂双方向印刷についても対応することができる。すなわち、双方向印刷の場合には、同じノズルで形成されるラインであっても、ドット形成動作の往路と復路とで、前記交差方向におけるラインの形成位置が異なる虞があり、その場合には、往路で1周期分のラインの補正値が必要であるとともに、更に復路で1周期分のラインの補正値が必要となるが、前記印刷装置は、前記1周期の2倍のライン数を1セットとして、少なくとも1セットの補正値を用いて濃度補正を行うので、前記双方向印刷で顕在化する虞のある濃度ムラについても対処することができる。
かかる印刷装置において、前記補正用パターンとして、少なくとも複数セット分のラインを印刷するとともに、同じノズルによって形成されるラインの補正値は、前記複数セットに亘って平均して求められるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記ノズルが同じライン毎に、その補正値は平均して求められるので、補正値の精度を向上することができて、前記画像の濃度ムラを確実に抑制可能となる。
かかる印刷装置において、複数の前記ノズルは、前記交差方向に沿って整列されてノズル列を構成しているのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記交差方向にノズルが整列されているので、一回のドット形成動作でドットが形成される範囲が広くなり、印刷時間の短縮化が図れる。
かかる印刷装置において、前記ノズル列を、前記インクの色毎に備えているとともに、前記色毎に、前記補正値を有しているのが望ましい。
このような印刷装置によれば、ノズル列をインクの色毎に備えているので、多色印刷を行うことができる。また、色毎に有する補正値に基づいて、前記画像の濃度を色毎に補正するので、多色印刷における画像の濃度ムラを有効に抑制可能となる。
かかる印刷装置において、前記処理モードは、前記交差方向における前記媒体の上流側の端部と下流側の端部との間の部分に画像を印刷するための処理モードであるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記媒体の上流側の端部と下流側の端部との間の部分に生じる濃度ムラを有効に抑制可能となる。
かかる印刷装置において、前記補正用パターンにおける各セットの、前記交差方向の両端のラインのうちのいずれか一方に対応させて、前記移動方向に沿う罫線を形成するのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記セットの境界を示す目印として前記罫線を用いることによって、各セットが有するラインの位置を正確に認識可能となる。すなわち、濃度を測定すべき前記交差方向の位置を正確に認識できて、もって、各ラインの濃度を正確に測定可能となる。
かかる印刷装置において、前記画像を印刷するための画像データを備え、該画像データは、媒体上に形成されるドットの形成単位毎に、前記濃度の階調値を有し、前記形成単位に前記補正値が対応付けられていない場合には、前記階調値とドットの生成率とを対応付けた生成率テーブルに基づいて、前記形成単位の階調値に対応する前記生成率を読み取り、読み取った生成率に基づいて、媒体上の各形成単位にドットを形成し、前記形成単位に前記補正値が対応付けられている場合には、前記生成率テーブルから階調値に対応する前記生成率を読み取る際に、前記階調値を補正値だけ変更した値に対応する生成率を読み取り、読み取った生成率に基づいて、媒体上の各形成単位にドットを形成するのが望ましい。
このような印刷装置によれば、画像データに基づいて、媒体上の前記形成単位毎にドットを形成して画像を印刷することができる。また、補正値が対応付けられた画像データと、対応付けられていない画像データとで、生成率テーブルを共用しているので、構成の簡略化が図れる。
かかる印刷装置において、前記画像を印刷するための画像データを備え、該画像データは、媒体上に形成されるドットの形成単位毎に、前記濃度の階調値を有し、前記形成単位に前記補正値が対応付けられていない場合には、前記階調値とドットの生成率とを対応付けた生成率テーブルに基づいて、前記形成単位の階調値に対応する前記生成率を読み取り、読み取った生成率に基づいて、媒体上の各形成単位にドットを形成し、前記形成単位に前記補正値が対応付けられている場合には、前記生成率テーブルの前記生成率を補正値だけ変更した生成率テーブルに基づいて、前記形成単位の階調値に対応するドットの生成率を読み取り、読み取った生成率に基づいて、媒体上の各形成単位にドットを形成するのが望ましい。
このような印刷装置によれば、画像データに基づいて、媒体上の前記形成単位毎にドットを形成して画像を印刷することができる。また、補正値が対応付けられた画像データ用の生成率テーブルと、対応付けられていない画像データ用の生成率テーブルとを別々に備えている。従って、画像データの階調値を生成率に変換する際には、各々の生成率テーブルにおいて前記階調値に対応する生成率を読み取るだけで良く、もって、これら処理を短時間で実施可能となる。
かかる印刷装置において、前記ドットの生成率は、同一の前記階調値を有する、所定数の前記形成単位を備えた領域にドットを形成した場合に、前記領域内に形成されるドット数の前記所定数に対する割合を示しているのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記領域内に形成されるドット数によって、画像の濃度を表現することができる。
かかる印刷装置において、前記補正用パターンの全てのラインを、同じ階調値に基づいて印刷するのが望ましい。
このような印刷装置によれば、全てのラインは同じ階調値で印刷され、すなわち、交差方向に隣り合うライン同士は、同じ階調値で印刷される。従って、当該隣り合うラインとで形成される濃度ムラ、例えば、これらラインの間隔の変化によって顕在化する濃度ムラを、前記補正用パターンによって正確に評価することができる。
かかる印刷装置において、前記ライン毎に測定した濃度の測定値の全てのラインに亘る平均値を、濃度の目標値とし、該目標値と各ラインの濃度の測定値との偏差を、前記目標値で除算して得られる補正比率を、前記補正値とするのが望ましい。
このような印刷装置によれば、ライン同士の間の濃度のばらつきを効果的に小さくすることができる。
かかる印刷装置において、前記ノズルは、複数サイズのドットを形成可能であり、前記生成率テーブルには、前記階調値に対する前記生成率の関係が、前記サイズ毎に規定されているのが望ましい。
このような印刷装置によれば、複数サイズのドットによって濃度を表現することができるので、更に繊細な画像表現が可能となる。
また、インクを吐出するためのノズルと、媒体を搬送するための搬送ユニットとを備え、所定の移動方向に移動する複数の前記ノズルからインクを吐出して前記媒体にドットを形成するドット形成動作と、前記搬送ユニットにより前記媒体を前記移動方向と交差する交差方向に搬送する搬送動作とを繰り返すことによって、前記移動方向に沿う複数のドットから構成されたラインを、前記交差方向に複数形成して画像を印刷する印刷装置であって、前記ラインを形成するノズルが、前記交差方向に関して周期的に変化するように画像を印刷する処理モードを有し、該処理モードによって画像を印刷する際に、濃度の補正値に基づいてライン毎に濃度補正を実行する印刷装置において、前記処理モードにて印刷された補正用パターンのラインの濃度の測定値に基づいて決定された補正値を、1周期において形成されるライン数の整数倍のライン数を1セットとして少なくとも1セット分記憶し、前記処理モードで画像を印刷する際に、該画像を構成する全てのラインに亘って前記少なくとも1セットの各補正値を順番に繰り返し対応させて、前記濃度補正を行い、前記移動方向の往復移動時の両方において前記ドット形成動作を実行して画像を印刷する処理モードについては、前記1周期の2倍のライン数を1セットとして、少なくとも1セットの補正値を用いて濃度補正を行い、前記補正用パターンとして、少なくとも複数セット分のラインを印刷するとともに、同じノズルによって形成されるラインの補正値は、前記複数セットに亘って平均して求められ、複数の前記ノズルは、前記交差方向に沿って整列されてノズル列を構成し、前記ノズル列を、前記インクの色毎に備えているとともに、前記色毎に、前記補正値を有し、前記処理モードは、前記交差方向における前記媒体の上流側の端部と下流側の端部との間の部分に画像を印刷するための処理モードであり、前記補正用パターンにおける各セットの、前記交差方向の両端のラインのうちのいずれか一方に対応させて、前記移動方向に沿う罫線を形成し、前記画像を印刷するための画像データを備え、該画像データは、媒体上に形成されるドットの形成単位毎に、前記濃度の階調値を有し、前記形成単位に前記補正値が対応付けられていない場合には、前記階調値とドットの生成率とを対応付けた生成率テーブルに基づいて、前記形成単位の階調値に対応する前記生成率を読み取り、読み取った生成率に基づいて、媒体上の各形成単位にドットを形成し、前記形成単位に前記補正値が対応付けられている場合には、前記生成率テーブルから階調値に対応する前記生成率を読み取る際に、前記階調値を補正値だけ変更した値に対応する生成率を読み取り、読み取った生成率に基づいて、媒体上の各形成単位にドットを形成し、前記ドットの生成率は、同一の前記階調値を有する、所定数の前記形成単位を備えた領域にドットを形成した場合に、前記領域内に形成されるドット数の前記所定数に対する割合を示しており、前記補正用パターンの全てのラインを、同じ階調値に基づいて印刷し、前記ライン毎に測定した濃度の測定値の全てのラインに亘る平均値を、濃度の目標値とし、該目標値と各ラインの濃度の測定値との偏差を、前記目標値で除算して得られる補正比率を、前記補正値とし、前記ノズルは、複数サイズのドットを形成可能であり、前記生成率テーブルには、前記階調値に対する前記生成率の関係が、前記サイズ毎に規定されていることを特徴とする印刷装置。
このような印刷装置によれば、既述のほぼ全ての効果を奏するため、本発明の目的が最も有効に達成される。
また、所定の移動方向に移動する複数のノズルからインクを吐出して媒体にドットを形成するドット形成動作と、前記媒体を前記移動方向と交差する交差方向に搬送する搬送動作とを繰り返すことによって、前記移動方向に沿う複数のドットから構成されたラインを、前記交差方向に複数形成して画像を印刷する印刷方法において、前記ラインを形成するノズルが、前記交差方向に関して周期的に変化するように画像を印刷する処理モードを用いて、補正用パターンを印刷するステップと、前記補正用パターンの濃度を、1周期において形成されるライン数の整数倍のライン数を1セットとして、少なくとも1セット分のラインについてライン毎に測定するステップと、前記ライン毎に測定された濃度の測定値に基づいて、前記少なくとも1セット分のラインの補正値を生成して、該補正値を記憶するステップと、前記処理モードによって画像を印刷する際に、前記少なくとも1セットの各補正値を順番に繰り返し対応させて、前記濃度補正を行うステップとを備えることを特徴とする印刷方法の実現も可能である。
また、コンピュータと印刷装置とが通信可能に接続された印刷システムであって、前記印刷装置は、インクを吐出するためのノズルと、媒体を搬送するための搬送ユニットとを備え、所定の移動方向に移動する複数の前記ノズルからインクを吐出して前記媒体にドットを形成するドット形成動作と、前記搬送ユニットにより前記媒体を前記移動方向と交差する交差方向に搬送する搬送動作とを繰り返すことによって、前記移動方向に沿う複数のドットから構成されたラインを、前記交差方向に複数形成して画像を印刷するとともに、前記ラインを形成するノズルが、前記交差方向に関して所定周期で変化するように画像を印刷する処理モードを有し、該処理モードによって画像を印刷する際に、濃度の補正値に基づいてライン毎に濃度補正を実行する印刷システムにおいて、前記印刷装置は、前記処理モードにて印刷された補正用パターンのラインの濃度の測定値に基づいて決定された補正値を、1周期において形成されるライン数の整数倍のライン数を1セットとして少なくとも1セット分記憶し、前記少なくとも1セットの各補正値を順番に繰り返し対応させて、前記濃度補正を行うことを特徴とする印刷システムの実現も可能である。
===印刷システムの構成===
次に、印刷システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、印刷システムの外観構成を示した説明図である。この印刷システム1000は、プリンタ1と、コンピュータ1100と、表示装置1200と、入力装置1300と、記録再生装置1400とを備えている。プリンタ1は、用紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する印刷装置である。コンピュータ1100は、プリンタ1と通信可能に接続されており、プリンタ1に画像を印刷させるため、当該画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。表示装置1200は、ディスプレイを有し、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ1110(図2を参照)等のユーザインタフェースを表示する。入力装置1300は、例えばキーボード1300Aやマウス1300Bであり、表示装置1200に表示されたユーザインタフェースに沿って、アプリケーションプログラムの操作やプリンタドライバ1110の設定等に用いられる。記録再生装置1400は、例えばフレキシブルディスクドライブ装置1400AやCD−ROMドライブ装置1400Bが用いられる。
コンピュータ1100にはプリンタドライバ1110がインストールされている。プリンタドライバ1110は、表示装置1200にユーザインタフェースを表示させる機能を実現させるほか、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換する機能を実現させるためのプログラムである。このプリンタドライバ1110は、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に記録されている。又は、このプリンタドライバ1110は、インターネットを介してコンピュータ1100にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
なお、「印刷装置」とは、狭義にはプリンタ1を意味するが、広義にはプリンタ1とコンピュータ1100とのシステムを意味する。
===プリンタドライバ===
<プリンタドライバについて>
図2は、プリンタドライバ1110が行う基本的な処理の概略的な説明図である。既に説明された構成要素については、同じ符号を付しているので、説明を省略する。
コンピュータ1100では、コンピュータに搭載されたオペレーティングシステムの下、ビデオドライバ1102やアプリケーションプログラム1104やプリンタドライバ1110などのコンピュータプログラムが動作している。ビデオドライバ1102は、アプリケーションプログラム1104やプリンタドライバ1110からの表示命令に従って、例えばユーザインターフェース等を表示装置1200に表示する機能を有する。アプリケーションプログラム1104は、例えば、画像編集などを行う機能を有し、画像に関するデータ(画像データ)を作成する。ユーザは、アプリケーションプログラム1104のユーザインターフェースを介して、アプリケーションプログラム1104により編集した画像を印刷する指示を与えることができる。アプリケーションプログラム1104は、印刷の指示を受けると、プリンタドライバ1110に画像データを出力する。
プリンタドライバ1110は、アプリケーションプログラム1104から画像データを受け取り、この画像データを印刷データに変換し、印刷データをプリンタ1に出力する。画像データは、印刷される画像の画素に関するデータとして画素データを有している。そして、この画素データは、後述する各処理の段階に応じて、その階調値等が変換され、最終的に前記印刷データの段階では、用紙上に形成されるドットに関するデータ(ドットの色や大きさ等のデータ)に変換されている。なお、画素とは、インクを着弾させドットを形成する位置を規定するために、用紙上に仮想的に定められた方眼状の升目である。この画素が請求項に係る「ドットの形成単位」に相当する。
印刷データは、プリンタ1が解釈できる形式のデータであって、前記画素データと、各種のコマンドデータとを有するデータである。コマンドデータとは、プリンタ1に特定の動作の実行を指示するためのデータであり、例えば搬送量を示すデータである。
プリンタドライバ1110は、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データを印刷データに変換するため、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理、ラスタライズ処理などを行う。以下に、プリンタドライバ1110が行う各種の処理について説明する。
解像度変換処理は、アプリケーションプログラム1104から出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、用紙に画像を印刷する際の解像度(印刷するときのドットの間隔であり、以下では印刷解像度と言う)に変換する処理である。例えば、印刷解像度が720×720dpiに指定されている場合には、アプリケーションプログラム1104から受け取った画像データを720×720dpiの解像度の画像データに変換する。
その変換方法としては、例えば、画像データの解像度が、指定された印刷解像度よりも低い場合には、線形補間等を行って隣接する画素データ間に新たな画素データを生成し、逆に印刷解像度よりも高い場合には、一定の割合で画素データを間引く等して、画像データの解像度を前記印刷解像度に揃える。
また、この解像度変換処理においては、画像データに基づいて実際にインクが吐出される領域たる印刷領域のサイズ調整も行う。このサイズ調整は、後記余白形態モード、画質モード、及び用紙サイズモードに基づいて、画像データ中の用紙の端部に相当する画素データをトリミング処理等して行われる。
なお、この画像データ中の各画素データは、RGB色空間により表される多段階(例えば256段階)の階調値を有するデータである。以下、このRGBの階調値を有する画素データのことをRGB画素データと言い、また、これらRGB画素データから構成される画像データをRGB画像データと言う。
色変換処理は、前記RGB画像データの各RGB画素データを、CMYK色空間により表される多段階(例えば256段階)の階調値を有するデータに変換する処理である。このCMYKは、プリンタ1が有するインクの色である。以下、このCMYKの階調値を有する画素データのことをCMYK画素データと言い、これらCMYK画素データから構成される画像データのことをCMYK画像データと言う。この色変換処理は、RGBの階調値とCMYKの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)をプリンタドライバ1110が参照することによって行われる。
ハーフトーン処理は、多段階の階調値を有するCMYK画素データを、プリンタ1が表現可能な、少段階の階調値を有するCMYK画素データに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256段階の階調値を示すCMYK画素データが、4段階の階調値を示す2ビットのCMYK画素データに変換される。この2ビットのCMYK画素データは、各色について、例えば、「ドットの形成なし」、「小ドットの形成」、「中ドットの形成」、「大ドットの形成」を示すデータである。
このようなハーフトーン処理には、例えばディザ法等が利用され、プリンタ1がドットを分散して形成できるような2ビットのCMKY画素データを作成する。このディザ法によるハーフトーン処理については、後述する。なお、このハーフトーン処理に用いる方法は、ディザ法に限るものではなく、γ補正法や誤差拡散法等を利用しても良い。
ラスタライズ処理は、前記ハーフトーン処理がなされたCMYK画像データを、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更する処理である。ラスタライズ処理されたデータは、前記印刷データとしてプリンタ1に出力される。
<ディザ法によるハーフトーン処理について>
ここで、ディザ法によるハーフトーン処理について詳細に説明する。図3は、このディザ法によるハーフトーン処理のフローチャートであり、当該フローチャートに従って、以下のステップが実行される。
先ず、ステップS300において、プリンタドライバ1110は、CMYK画像データを取得する。このCMYK画像データは、C,M,Y,Kの各インク色につき256段階の階調値で示された画像データから構成される。すなわち、CMYK画像データは、シアン(C)に関するC画像データ、マゼンダ(M)に関するM画像データ、イエロ(Y)に関するY画像データ、及びブラック(K)に関する画像データを備えている。そして、これらC,M,Y,K画像データは、それぞれに、各インク色の階調値を示すC,M,Y,K画素データから構成されている。
なお、以下の説明は、C,M,Y,K画像データの何れについても当てはまるため、これらを代表してK画像データについて説明する。
次に、プリンタドライバ1110は、K画像データ中の全てのK画素データを対象として、ステップS301からステップS311までの処理を、処理対象のK画素データを順次変えながら実行して、K画素データ毎に、前述の「ドット形成なし」、「小ドットの形成」、「中ドットの形成」、「大ドットの形成」のいずれかを示す2ビットデータに変換する。
詳細には、先ず、ステップ301では、処理対象のK画素データの階調値に応じて、次のようにして大ドットのレベルデータLVLを設定する。図4は、大、中、小の各ドットのレベルデータの決定に利用される生成率テーブルを示す図である。図の横軸は階調値(0〜255)、左側の縦軸はドットの生成率(%)、右側の縦軸はレベルデータ(0〜255)である。ここで、「ドットの生成率」とは、一定の階調値に応じて一様な領域が再現されるときに、その領域内の画素のうちでドットが形成される画素の割合を意味する。図4中の細い実線で示されるプロファイルSDが小ドットの生成率を示しており、また、太い実線で示されるプロファイルMDが中ドットの生成率を、点線で示されるプロファイルLDが大ドットの生成率をそれぞれ示している。また、レベルデータとは、ドットの生成率を値0〜255の256段階に変換したデータをいう。
すなわち、ステップS301では、大ドット用のプロファイルLDから階調値に応じたレベルデータLVLを読み取る。例えば、図4に示した通り、処理対象のK画素データの階調値がgrであれば、レベルデータLVLはプロファイルLDを用いて1dと求められる。実際には、このプロファイルLDは、1次元のテーブルの形態でコンピュータ1100内のROM等のメモリ(不図示)に記憶されており、プリンタドライバ1110は、このテーブルを参照してレベルデータを求めている。
次に、ステップS302では、以上のようにして設定されたレベルデータLVLが閾値THLより大きいか否かを判定する。ここでは、ディザ法によるドットのオン・オフ判定を行う。閾値THLは、所謂ディザマトリクスの各画素ブロックに対して異なる値が設定されている。本実施形態では16×16の正方形の画素ブロックに、0〜254までの値が現れるマトリックスを用いている。
図5は、ディザ法によるドットのオン・オフ判定の様子を示す図である。図示の都合上、図5には、一部のK画素データについてのみ示している。先ず、図示するように、各K画素データのレベルデータLVLを、当該K画素データに対応するディザマトリクス上の画素ブロックの閾値THLと比較する。
そして、前記レベルデータLVLの方が前記閾値THLよりも大きい場合にはドットをオンにし、レベルデータLVLの方が小さい場合にはドットをオフにする。図中でハッチングを施した画素データが、ドットをオンにするK画素データである。すなわち、ステップS302において、レベルデータLVLが閾値THLよりも大きい場合には、ステップS310に進み、それ以外の場合にはステップS303に進む。ここで、ステップS310に進んだ場合には、プリンタドライバ1110は、当該処理対象のK画素データに対して、大ドットを示す2進数の値「11」を対応付けて記録し、ステップS311に進む。そして、当該ステップ311において、全てのK画素データについて処理を終了したか否かを判定し、終了している場合には、ハーフトーン処理を終了し、終了していない場合には、処理対象を未処理のK画素データに移して、ステップS301に戻る。
一方、ステップS303に進んだ場合には、プリンタドライバ1110は、中ドットのレベルデータLVMを設定する。中ドットのレベルデータLVMは、前記階調値に基づいて、前述の生成率テーブルにより設定される。設定方法は、大ドットのレベルデータLVLの設定と同じである。すなわち、図4に示す例では、レベルデータLVMは、2dとして求められる。
そして、ステップS304において、中ドットのレベルデータLVMと閾値THMの大小関係が比較されて、中ドットのオン・オフの判定が行われる。オン・オフの判定方法は、大ドットの場合と同じであるが、判定に用いる閾値THMを次に示す通り大ドットの場合の閾値THLとは異なる値としている。すなわち、大ドットと中ドットで同じディザマトリクスを用いてオン・オフの判定を行った場合、ドットがオンになりやすい画素ブロックが両者で一致する。つまり、大ドットがオフとなるときには中ドットもオフになる可能性が高くなる。その結果、中ドットの生成率は所望の生成率よりも低くなる虞が生じる。このような現象を回避するため、本実施形態では、両者でディザマトリクスを変えている。つまり、オンになりやすくなる画素ブロックを、大ドットと中ドットとで変えることで、それぞれが適切に形成されることを確保している。
図6A及び図6Bは、大ドットの判定に用いられるディザマトリクスと、中ドットの判定に用いられるディザマトリクスとの関係について示す図である。この実施形態では、大ドットについては、図6Aの第1のディザマトリクスTMを用い、中ドットについてはこの各閾値を搬送方向の中央を中心として対称に移動した図6Bの第2のディザマトリクスUMを用いている。本実施形態では先に述べたように16×16のマトリクスを用いているが、図6には図示の都合上4×4のマトリクスで示している。なお、大ドットと中ドットで全く異なるディザマトリクスを用いるようにしても良い。
そして、ステップS304において、中ドットのレベルデータLVMが、中ドットの閾値THMよりも大きい場合には、中ドットをオンにすべきと判定して、ステップS309に進み、それ以外の場合にはステップS305に進む。ここで、ステップS309に進んだ場合には、プリンタドライバ1110は、当該処理対象のK画素データに対して、中ドットを示す2進数の値「10」を対応付けて記録し、ステップS311に進む。そして、当該ステップ311において、全てのK画素データについて処理を終了したか否かを判定し、終了している場合には、ハーフトーン処理を終了し、終了していない場合には、処理対象を未処理のK画素データに移して、ステップS301に戻る。
一方、ステップS305に進んだ場合には、大ドットや中ドットのレベルデータの設定と同様にして、小ドットのレベルデータLVSを設定する。なお、小ドット用のディザマトリクスは、前述のように小ドットの生成率の低下を防ぐべく中ドットや大ドット用のものと異なるものとするのが好ましい。
そして、ステップS306において、プリンタドライバ1110は、レベルデータLVSが、小ドットの閾値THSよりも大きい場合には、ステップS308に進み、それ以外の場合にはステップS307に進む。ここで、ステップS308に進んだ場合には、当該処理対象のK画素データに対して、小ドットを示す2進数の値「01」を対応付けて記録し、ステップS311に進む。そして、当該ステップ311において、全てのK画素データについて処理を終了したか否かを判定し、終了していない場合には、処理対象を未処理のK画素データに移して、ステップS301に戻る。一方、終了している場合には、K画像データに関するハーフトーン処理を終了し、他の色の画像データについて同様にハーフトーン処理を実行する。
一方、ステップS307に進んだ場合には、プリンタドライバ1110は、当該処理対象のK画素データに対して、ドット無しを示す2進数の値「00」を対応付けて記録し、ステップS311に進む。そして、当該ステップ311において、全てのK画素データについて処理を終了したか否かを判定し、終了していない場合には、処理対象を未処理のK画素データに移して、ステップS301に戻る。一方、終了している場合には、K画像データについてのハーフトーン処理を終了し、他の色の画像データについて同様にハーフトーン処理を実行する。
<プリンタドライバの設定について>
図7は、プリンタドライバ1110のユーザインターフェースの説明図である。このプリンタドライバ1110のユーザインターフェースは、ビデオドライバ1102を介して、表示装置に表示される。ユーザーは、入力装置1300を用いて、プリンタドライバ1110の各種の設定を行うことができる。基本設定としては、余白形態モードや画質モードの設定が用意され、また用紙設定としては、用紙サイズモードの設定等が用意されている。これらのモードについては後述する。
===プリンタの構成===
<インクジェットプリンタの構成について>
図8は、本実施形態のプリンタの全体構成のブロック図である。また、図9は、本実施形態のプリンタの全体構成の概略図である。また、図10は、本実施形態のプリンタの全体構成の横断面図である。以下、本実施形態のプリンタの基本的な構成について説明する。
本実施形態のインクジェットプリンタ1は、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、センサ50、及びコントローラ60を有する。外部装置であるコンピュータ1100から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ1100から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、用紙に画像を形成する。プリンタ1内の状況はセンサ50によって監視されており、センサ50は、検出結果をコントローラ60に出力する。センサから検出結果を受けたコントローラは、その検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
搬送ユニット20は、媒体(例えば、用紙Sなど)を印刷可能な位置に送り込み、印刷時に所定の方向(以下では、搬送方向と言う)に所定の搬送量で用紙を搬送させるためのものである。搬送ユニット20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22(PFモータとも言う)と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された用紙をプリンタ1内に自動的に給紙するためのローラである。給紙ローラ21は、D形の断面形状をしており、円周部分の長さは搬送ローラ23までの搬送距離よりも長く設定されているので、この円周部分を用いて紙を搬送ローラ23まで搬送できる。搬送モータ22は、紙を搬送方向に搬送するためのモータであり、DCモータにより構成される。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって給紙された用紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラであり、搬送モータ22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の用紙Sを支持する。排紙ローラ25は、印刷が終了した用紙Sをプリンタ1の外部に排出するローラである。この排紙ローラ25は、搬送ローラ23と同期して回転する。
キャリッジユニット30は、キャリッジ31とキャリッジモータ32(以下では、CRモータとも言う)とを備える。キャリッジモータ32は、前記キャリッジ31を所定の方向(以下では、キャリッジ移動方向と言う)に往復移動させるためのモータであり、DCモータにより構成される。このキャリッジ31には、後記ヘッド41が保持されており、もって、前記キャリッジ31の往復移動によって、前記ヘッド41もキャリッジ移動方向に往復移動可能となっている。また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。なお、前記キャリッジ移動方向が、請求項に係る「移動方向」に相当する。
ヘッドユニット40は、用紙にインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、前記ヘッド41を有し、当該ヘッド41は、ノズルを複数有し、各ノズルから断続的にインクを吐出する。そして、前記キャリッジ31の移動によって、ヘッド41がキャリッジ移動方向に移動すると、当該移動中にインクを断続的に吐出することによって、キャリッジ移動方向に沿ったドットからなるラスタラインが用紙に形成される。なお、このラスタラインが、請求項に係る「ライン」に相当する。
センサ50には、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、及び紙幅センサ54等が含まれる。リニア式エンコーダ51は、キャリッジ移動方向におけるキャリッジ31の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出センサ53は、印刷される用紙の先端の位置を検出するためのものである。この紙検出センサ53は、給紙ローラ21が搬送ローラ23に向かって用紙を給紙する途中で、用紙の先端の位置を検出できる位置に設けられている。なお、紙検出センサ53は、機械的な機構によって用紙の先端を検出するメカニカルセンサである。詳しく言うと、紙検出センサ53は紙搬送方向に回転可能なレバーを有し、このレバーは用紙の搬送経路内に突出するように配置されている。そのため、用紙の先端がレバーに接触し、レバーが回転させられるので、紙検出センサ53は、このレバーの動きを検出することによって、用紙の先端の位置を検出する。紙幅センサ54は、キャリッジ31に取付けられている。紙幅センサ54は、光学センサであり、発光部から紙に照射された光の反射光を受光部が検出することにより、用紙の有無を検出する。そして、紙幅センサ54は、キャリッジ31によって移動しながら用紙の端部の位置を検出し、用紙の幅を検出する。
コントローラ60は、プリンタ1の制御を行うための制御ユニットである。コントローラ60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は、外部装置であるコンピュータ1100とプリンタ1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU62は、プリンタ1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM等の記憶手段を有する。CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
<印刷動作について>
図11は、印刷時の動作のフロー図である。以下に説明される各動作は、コントローラ60が、メモリ63内に格納されたプログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。このプログラムは、各動作を実行するためのコードを有する。
印刷命令受信(S001):コントローラ60は、コンピュータ1100からインターフェース部61を介して、印刷命令を受信する。この印刷命令は、コンピュータ1100から送信される印刷データのヘッダに含まれている。そして、コントローラ60は、受信した印刷データに含まれる各種コマンドの内容を解析し、各ユニットを用いて、以下の給紙動作、搬送動作、ドット形成動作等を行う。
給紙動作(S002):まず、コントローラ60は、給紙動作を行う。給紙動作とは、印刷すべき用紙をプリンタ1内に供給し、印刷開始位置(所謂、頭出し位置)に用紙を位置決めする処理である。コントローラ60は、給紙ローラ21を回転させ、印刷すべき用紙を搬送ローラ23まで送る。コントローラ60は、搬送ローラ23を回転させ、給紙ローラ21から送られてきた用紙を印刷開始位置に位置決めする。用紙が印刷開始位置に位置決めされたとき、ヘッド41の少なくとも一部のノズルは、用紙と対向している。
ドット形成動作(S003):次に、コントローラ60は、ドット形成動作を行う。ドット形成動作とは、キャリッジ移動方向に沿って移動するヘッド41からインクを断続的に吐出させ、用紙にドットを形成する動作である。コントローラ60は、キャリッジモータ32を駆動し、キャリッジ31をキャリッジ移動方向に移動させる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31が移動している間に、印刷データに基づいてヘッド41からインクを吐出させる。ヘッド41から吐出されたインクが用紙上に着弾すれば、用紙上にドットが形成される。
搬送動作(S004):次に、コントローラ60は、搬送動作を行う。搬送動作とは、紙をヘッド41に対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラ60は、搬送モータを駆動し、搬送ローラを回転させて用紙を搬送方向に搬送する。この搬送動作により、ヘッド41は、先ほどのドット形成動作によって形成されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。
排紙判断(S005):次に、コントローラ60は、印刷中の用紙の排紙の判断を行う。印刷中の用紙に印刷するためのデータが残っていれば、排紙は行われない。そして、コントローラ60は、印刷するためのデータがなくなるまでドット形成動作と搬送動作とを交互に繰り返し、ドットから構成される画像を徐々に用紙に印刷する。印刷中の用紙に印刷するためのデータがなくなれば、コントローラ60は、その用紙を排紙する。コントローラ60は、排紙ローラを回転させることにより、印刷した用紙を外部に排出する。なお、排紙を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいても良い。
印刷終了判断(S006):次に、コントローラ60は、印刷を続行するか否かの判断を行う。次の用紙に印刷を行うのであれば、印刷を続行し、次の用紙の給紙動作を開始する。次の用紙に印刷を行わないのであれば、印刷動作を終了する。
<ヘッドの構成について>
図12は、ヘッド41の下面におけるノズルの配列を示す説明図である。ヘッド41の下面には、ブラックインクノズル列Nkと、シアンインクノズル列Ncと、マゼンタインクノズル列Nmと、イエローインクノズル列Nyが形成されている。各ノズル列は、各色のインクを吐出するための吐出口であるノズルをn個(例えば、n=180)備えている。
各ノズル列の複数のノズルは、搬送方向に沿って、一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)でそれぞれ整列している。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ(つまり、用紙Sに形成されるドットの最高解像度での間隔)である。また、kは、1以上の整数である。例えば、ノズルピッチが180dpi(1/180インチ)であって、搬送方向のドットピッチが720dpi(1/720)である場合、k=4である。
各ノズル列のノズルは、下流側のノズルほど若い番号が付されている(♯1〜♯n)。つまり、ノズル♯1は、ノズル♯nよりも搬送方向の下流側に位置している。各ノズルには、各ノズルを駆動してインク滴を吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。
<ヘッドの駆動について>
図13は、ヘッドユニット40の駆動回路の説明図である。この駆動回路は、前述のユニット制御回路64内に設けられており、同図に示すように、原駆動信号発生部644Aと、駆動信号整形部644Bとを備えている。本実施形態では、このようなノズル♯1〜♯nの駆動回路が、ノズル列毎、即ち、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロ(Y)の各色のノズル列ごとに各々設けられ、ノズル列ごとに個別にピエゾ素子の駆動が行われるようになっている。図中に各信号名の最後に付されたかっこ内の数字は、その信号が供給されるノズルの番号を示している。
ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインク量が、インク滴となって各色の各ノズル♯1〜♯nから吐出される。
原駆動信号発生部644Aは、各ノズル♯1〜♯nに共通して用いられる原信号ODRVを生成する。この原信号ODRVは、キャリッジ31が一画素の間隔を横切る時間内に複数のパルスを含む信号である。
駆動信号整形部644Bには、原信号発生部644Aから原信号ODRVが入力されるとともに、印刷信号PRT(i)が入力される。駆動信号整形部644Bは、印刷信号PRT(i)のレベルに応じて、原信号ODRVを整形し、駆動信号DRV(i)として各ノズル♯1〜♯nのピエゾ素子に向けて出力する。各ノズル♯1〜♯nのピエゾ素子は、駆動信号整形部644Bからの駆動信号DRVに基づき駆動される。
<ヘッドの駆動信号について>
図14は、各信号の説明のためのタイミングチャートである。すなわち、同図には、原信号ODRVと、印刷信号PRT(i)と、駆動信号DRV(i)の各信号のタイミングチャートが示されている。
原信号ODRVは、原信号発生部644Aからノズル♯1〜♯nに共通に供給される信号である。本実施形態では、原信号ODRVは、前記キャリッジ31が一画素の間隔を横切る時間内において、第1パルスW1と第2パルスW2の2つのパルスを含む。なお、この原信号ODRVは、原信号発生部644Aから駆動信号整形部644Bに出力される。
印刷信号PRTは、一画素に対して割り当てられている前記画素データに対応した信号である。つまり、印刷信号PRTは、印刷データに含まれる画素データに応じた信号である。本実施形態では、印刷信号PRT(i)は、一画素に対して2ビットの情報を有する信号になる。なお、この印刷信号PRTの信号レベルに応じて、駆動信号整形部644Bは、原信号ODRVを整形し、駆動信号DRVを出力する。
駆動信号DRVは、印刷信号PRTのレベルに応じて原信号ODRVを遮断することによって得られる信号である。すなわち、すなわち、印刷信号PRTが1レベルのとき、駆動信号整形部644Bは、原信号ODRVの対応するパルスをそのまま通過させて駆動信号DRVとする。一方、印刷信号PRTが0レベルのとき、駆動信号整形部644Bは、原信号ODRVのパルスを遮断する。なお、駆動信号整形部644Bは、ノズル毎に設けられているピエゾ素子に駆動信号DRVを出力する。そして、ピエゾ素子は、この駆動信号DRVに応じて駆動される。
印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「01」に対応しているとき、第1パルスW1のみが一画素区間の前半で出力される。これにより、ノズルから小さいインク滴が吐出され、用紙には小さいドット(小ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「10」に対応しているとき、第2パルスW2のみが一画素区間の後半で出力される。これにより、ノズルから中サイズのインク滴が吐出され、用紙には中サイズのドット(中ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「11」に対応しているとき、第1パルスW1と第2パルスW2とが一画素区間で出力される。これにより、ノズルから小インク滴と中インク滴とが吐出され、用紙には大きいドット(大ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「00」に対応しているとき、第1パルスW1及び第2パルスW2のいずれも一画素区間で出力されない。これにより、ノズルからはいずれのサイズのインク滴も吐出されず、用紙にはドットが形成されない。
以上説明したとおり、一画素区間における駆動信号DRV(i)は、印刷信号PRT(i)の4つの異なる値に応じて互いに異なる4種類の波形を有するように整形されている。
===印刷方式について===
ここで、図15A、図15B、図16A、及び図16Bを参照して、本実施形態のプリンタ1にて実行可能な印刷方式について説明する。この印刷方式の代表例としては、インターレース方式及びオーバーラップ方式が挙げられる。そして、いずれの印刷方式によっても、ノズルのピッチやインク吐出特性等のノズル毎の個体差を、印刷される画像上で分散緩和し、これによって画質の向上を図ることができるようになっている。
なお、本実施形態のプリンタ1にあっては、説明を簡単にする目的でインターレース方式を実行可能な前提にしているが、オーバーラップ方式を適用可能であるのは言うまでもなく、以下では、両方の印刷方式について概略説明する。
<インターレース方式について>
図15A及び図15Bはインターレース方式の説明図である。なお、説明の都合上、ヘッド41の代わりとして示すノズル列が、用紙Sに対して移動しているように描かれているが、同図はノズル列と用紙Sとの相対的な位置関係を示すものであって、実際には用紙Sが搬送方向に移動されている。また、同図において、黒丸で示されたノズルは、実際にインクを吐出するノズルであり、白丸で示されたノズルはインクを吐出しないノズルである。なお、図15Aは、1パス目〜4パス目におけるノズル位置と、そのノズルによるドットの形成の様子を示し、図15Bは、1パス目〜6パス目におけるノズル位置とドットの形成の様子を示している。
ここで、「インターレース方式」とは、kが2以上であって、1回のパスで記録されるラスタラインの間に記録されないラスタラインが挟まれるような印刷方式を意味する。また、「パス」とは、ノズル列がキャリッジ移動方向に1回移動することをいう。「ラスタライン」とは、キャリッジ移動方向に並ぶドットの列である。
図15A及び図15Bに示すように、インターレース方式では、用紙Sが搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインのすぐ上のラスタラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、実際にインクを吐出するノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあり、搬送量FはN・Dに設定される。
同図では、ノズル列は搬送方向に沿って配列された4つのノズルを有する。しかし、ノズル列のノズルピッチkは4なので、インターレース方式を行うための条件である「Nとkとが互いに素の関係」を満たすために、全てのノズルを用いることはできない。そこで、4つのノズルのうち、3つのノズルを用いてインターレース方式が行われる。また、3つのノズルが用いられるため、用紙Sは搬送量3・Dにて搬送される。その結果、例えば、180dpi(4・D)のノズルピッチのノズル列を用いて、720dpi(=D)のドット間隔にて用紙Sにドットが形成される。
同図では、最初のラスタラインを3パス目のノズル♯1が形成し、2番目のラスタラインを2パス目のノズル♯2が形成し、3番目のラスタラインを1パス目のノズル♯3が形成し、4番目のラスタラインを4パス目のノズル♯1が形成し、連続的なラスタラインが形成される様子を示している。なお、1パス目では、ノズル♯3のみがインクを吐出し、2パス目では、ノズル♯2とノズル♯3のみがインクを吐出している。これは、1パス目及び2パス目において全てのノズルからインクを吐出すると、連続したラスタラインを用紙Sに形成できないためである。なお、3パス目以降では、3つのノズル(♯1〜♯3)がインクを吐出し、用紙Sが一定の搬送量F(=3・D)にて搬送されて、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて形成される。
<オーバーラップ方式について>
図16A及び図16Bは、オーバーラップ方式の説明図である。前述のインターレース方式では、一つのラスタラインは一つのノズルにより形成されていたのに対し、当該オーバーラップ方式では、例えば、一つのラスタラインが、二つ以上のノズルにより形成されている。
このオーバーラップ方式では、用紙Sが搬送方向に搬送量Fで搬送される毎に、ラスタライン方向に移動する各ノズルが、数ドットおきに間欠的にインク滴を吐出することによって、ラスタライン方向に間欠的にドットを形成する。そして、他のパス目において、他のノズルが、既に形成されている間欠的なドットを補完するようにドットを形成することにより、1つのラスタラインが複数のノズルにより完成する。このようにM回のパスにて1つのラスタラインが完成する場合、オーバーラップ数Mと定義する。同図では、各ノズルにて、1ドットおきに間欠的にドットが形成されるので、パス毎に奇数番目の画素又は偶数番目の画素にドットが形成される。そして、1つのラスタラインが2つのノズルにより形成されているので、オーバーラップ数M=2になる。なお、前述のインターレース方式の場合、オーバーラップ数M=1になる。
このオーバーラップ方式において、搬送量Fを一定にして記録を行う場合には、(1)N/Mが整数であること、(2)N/Mはkと互いに素の関係にあること、(3)搬送量Fが(N/M)・Dに設定されること、が条件となる。
同図では、ノズル列は搬送方向に沿って配列された8つのノズルを有するものとしている。しかし、ノズル列のノズルピッチkは4なので、オーバーラップ方式を行うための条件である「N/Mとkが互いに素の関係」を満たすために、全てのノズルを用いることはできない。そこで、8つのノズルのうち、6つのノズルを用いてオーバーラップ方式が行われる。また、6つのノズルが用いられるため、用紙Sは搬送量3・Dにて搬送される。その結果、例えば、180dpi(4・D)のノズルピッチのノズル列を用いて、720dpi(=D)のドット間隔にて用紙Sにドットが形成される。また、1つのパスにおいて、各ノズルはラスタライン方向に1ドットおきに間欠的にドットを形成する。図中において、ラスタライン方向に2つのドットが描かれているラスタラインは既に完成されている。例えば、図16Aにおいて、最初のラスタラインから6番目のラスタラインまでは、既に完成されている。1つのドットが描かれているラスタラインは、1ドットおきに間欠的にドットが形成されているラスタラインである。例えば、7番目や10番目のラスタラインは、1ドットおきに間欠的にドットが形成されている。なお、1ドットおきに間欠的にドットが形成された7番目のラスタラインは、9パス目のノズル♯1が補完するようにドットを形成することによって、完成される。
同図は、最初のラスタラインは3パス目のノズル♯4及び7パス目のノズル♯1が形成し、2番目のラスタラインは2パス目のノズル♯5及び6パス目のノズル♯2が形成し、3番目のラスタラインは1パス目のノズル♯6及び5パス目のノズル♯3が形成し、4番目のラスタラインは4パス目のノズル♯4及び8パス目のノズル♯1が形成し、連続的なラスタラインが形成される様子を示している。なお、1パス目〜6パス目において、ノズル♯1〜ノズル♯6のなかにインクを吐出しないノズルが存在する。これは、1パス目〜6パス目において全てのノズルからインクを吐出すると、連続したラスタラインを用紙Sに形成できないためである。なお、7パス目以降では、6つのノズル(♯1〜♯6)がインクを吐出し、用紙Sが一定の搬送量F(=3・D)にて搬送されて、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて形成される。
表1は、それぞれのパスにおいて形成されるドットのラスタライン方向の形成位置を説明するための表である。
表1中の「奇数」とは、ラスタライン方向に並ぶ画素(ラスタラインの画素)のうちの奇数番目の画素にドットを形成することを意味する。また、表中の「偶数」とは、ラスタライン方向に並ぶ画素のうちの偶数番目の画素にドットを形成することを意味する。例えば、3パス目では、各ノズルは、奇数番目の画素にドットを形成する。1つのラスタラインがM個のノズルにより形成される場合、ノズルピッチ分のラスタラインが完成するためには、k×M回のパスが必要となる。例えば、図示例では、1つのラスタラインが2つのノズルにより形成されているので、4つのラスタラインが完成するためには、8回(4×2)のパスが必要となる。表1から分かるとおり、前半の4回のパスは、奇数−偶数−奇数−偶数の順にドットが形成される。この結果、前半の4回のパスが終了すると、奇数番目の画素にドットが形成されたラスタラインの隣のラスタラインには、偶数番目の画素にドットが形成されている。後半の4回のパスは、偶数−奇数−偶数−奇数の順にドットが形成される。つまり、後半の4回のパスは、前半の4回のパスと逆の順にドットが形成される。この結果、前半のパスにより形成されたドットの隙間を補完するように、ドットが形成される。
===縁無し印刷及び縁有り印刷について===
本実施形態のプリンタ1では、用紙の端部に余白を形成せずに印刷する「縁無し印刷」、及び、前記端部に余白を形成して印刷する「縁有り印刷」を実行可能である。
<縁無し印刷及び縁有り印刷の概要>
縁有り印刷は、印刷データに基づいてインクを吐出する領域である印刷領域Aが、用紙S内に収まるように印刷を行う。図17Aに、縁有り印刷時における印刷領域Aと用紙Sとの大きさの関係を示すが、印刷領域Aは用紙S内に収まるように設定され、用紙Sの上下の端部及び左右の側端部には余白が形成される。
この縁有り印刷を行う場合には、プリンタドライバ1110は、前記解像度変換処理において、画像データの解像度を、指定の印刷解像度に変換しながら、その印刷領域Aが、用紙Sの端縁から所定幅だけ内側に収まるように画像データを加工する。例えば、前記印刷解像度で印刷すると、その画像データの印刷領域Aが前記端縁から所定幅だけ内側に収まらない場合には、前記画像の端部に対応する画素データを取り除くトリミング処理等を適宜行って、印刷領域Aを小さくする。
一方、縁無し印刷は、前記印刷領域Aが、用紙Sからはみ出すように印刷を行う。図17Bに、縁無し印刷時における印刷領域Aと用紙Sとの大きさの関係を示すが、用紙Sの上下の端部及び左右の側端部からはみ出す領域(以下では、打ち捨て領域Aaと言う)に対しても印刷領域Aが設定されており、この領域に対してもインクが吐出されるようになっている。そして、これによって、搬送動作の精度などが原因で用紙Sがヘッド41に対して多少の位置ズレを生じても、用紙Sの端部へ向けて確実にインクを吐出し、もって端部に余白を形成しない印刷を達成している。なお、前記打ち捨て領域Aaにおける上下の端部からはみ出す領域が、請求項に係る「媒体の前記交差方向における上流側の端部よりも上流側に外れると判断される領域、及び下流側の端部よりも下流側に外れると判断される領域」に相当する。
この縁無し印刷を行う場合には、プリンタドライバ1110は、前記解像度変換処理において、画像データの解像度を、指定の印刷解像度に変換しながら、その印刷領域Aが用紙Sから所定幅だけはみ出すように画像データを加工する。例えば、前記印刷解像度で印刷すると、その画像データの印刷領域Aが用紙Sから大きくはみ出してしまう場合には、前記画像データに対して前記トリミング処理等を適宜行って、用紙Sからの印刷領域Aのはみ出し代が前記所定幅となるようにする。
なお、コンピュータ1100の前記メモリには、A4サイズ等の用紙の規格寸法に関する用紙サイズ情報が予め記憶されている。この用紙サイズ情報は、例えば、キャリッジ移動方向及び搬送方向の大きさがそれぞれに何ドット(D)であるか等を示すものであり、プリンタドライバ1110のユーザーインターフェースから入力される前記用紙サイズモードに対応付けられて記憶されている。そして、前記画像データの加工の際には、プリンタドライバ1110は、当該用紙サイズモードに対応する用紙サイズ情報を参照して、その用紙の大きさを把握し、前記加工を行うようになっている。
<縁無し印刷及び縁有り印刷に使用するノズルについて>
前述したように、「縁無し印刷」では、用紙の上端部及び下端部から外れる領域である打ち捨て領域に向けてもインクを吐出する。このため、これら打ち捨てられたインクがプラテン24に付着してプラテン24を汚す虞がある。そこで、前記プラテン24には、用紙Sの上端部及び下端部から外れたインクを回収するための溝部が設けられており、前記上端部及び下端部を印刷する際には、この溝部と対向するノズルのみからインクを吐出するようにノズルの使用を制限している。
図18A乃至図18Cに、プラテン24に設けられた前記溝部とノズルとの位置関係を示す。なお、説明の都合上、前記n=7のノズル列、すなわちノズル#1〜#7を備えたノズル列を例に説明する。なお、図18Aに示すように、搬送方向の上流側及び下流側は、それぞれに、用紙Sの下端側及び上端側に対応している。
図18Aに示すように、前記プラテン24には、搬送方向における下流側の部分と、上流側の部分の2箇所に溝部24a,24bが設けられており、このうちの下流の溝部24aにはノズル#1〜#3が対向し、上流の溝部24bには、ノズル#5〜#7が対向している。そして、用紙Sの上端部を印刷する際には、図18Aのように前記ノズル#1〜#3を用いて印刷し(以下では、これを上端処理と言う)、また、下端部を印刷する際には、図18Bのようにノズル#5〜#7を用いて印刷し(以下では、これを下端処理と言う)、これら上端部と下端部との間の中間部は、図18Cのようにノズル#1〜#7を使用して印刷する(以下では、これを中間処理と言う)。ここで、図18Aに示すように用紙Sの上端部を印刷する際には、当該上端部が下流の溝部24aに到達する以前から、ノズル#1〜#3はインクの吐出を開始している。しかし、その時に用紙Sに着弾せずに打ち捨てられたインクは、前記下流の溝部24a内の吸収材24cに吸収されるため、プラテン24を汚すことは無い。また、図18Bに示すように用紙Sの下端部を印刷する際には、当該下端部が上流の溝部24bを通過した後でもノズル#5〜#7はインクの吐出を継続している。しかし、その時に用紙Sに着弾せずに打ち捨てられたインクは、前記上流の溝部24b内の吸収材24dに吸収されるため、プラテン24を汚すことは無い。
一方、「縁有り印刷」においては、用紙Sの端部に余白を形成するので、用紙Sの上端部及び下端部から外れる領域である打ち捨て領域に向けてはインクを吐出しない。従って、常に、用紙Sがノズルに対向した状態でインクの吐出を開始又は終了することができるため、前記「縁無し印刷」のようなノズルの使用制限は無く、よって、用紙Sの全長に亘ってノズル#1〜#7の全ノズルを使用して印刷を行う。
===処理モードについて===
ユーザは、この「縁無し印刷」及び「縁有り印刷」の選択を、プリンタドライバ1110のユーザーインターフェースによって行うことができる。すなわち、前記ユーザインターフェースの画面には、図7に示すように、余白形態を規定する余白形態モードの入力ボタンとして「縁有り」及び「縁無し」の2つのボタンが表示される。
また、当該ユーザーインターフェースの画面からは、画像の画質を規定する画質モードの選択も可能であり、その画面には、画質モードの入力ボタンとして「普通」及び「きれい」の2つのボタンが表示される。そして、ユーザが「普通」を入力した場合には、プリンタドライバ1110は、前述の印刷解像度を、例えば360×360dpiに指定する一方で、「きれい」を入力した場合には、前記印刷解像度を、例えば720×720dpiに指定する。
なお、図19の第1対照テーブルに示すように、これら余白モード及び画質モードの組み合わせ毎に、印刷モードが用意されている。そして、この印刷モードのそれぞれに対して、図20の第2対照テーブルに示すように、処理モードが対応付けられている。なお、これら第1及び第2対照テーブルは、コンピュータ1100の前記メモリに記憶されている。
この処理モードは、前述のドット形成動作及び搬送動作を規定するものであり、プリンタドライバ1110は、前記解像度変換処理からラスタライズ処理までの処理において、前記処理モードに応じた形式となるように、画像データを印刷データに変換する。
なお、この処理モードが異なれば、前記ドット形成動作及び前記搬送動作の少なくとも一方が異なる印刷処理を実行する。ここで、前記ドット形成動作が異なる印刷処理とは、各ドット形成動作において使用されるノズルの変化パターンが異なる印刷処理のことであり、また、前記搬送動作が異なる印刷処理とは、各搬送動作の搬送量の変化パターンが異なる印刷処理のことである。これについては、この後で具体例を挙げて説明する。
この処理モードとしては、例えば、第1上端処理モード、第1中間処理モード、第1下端処理モード、第2上端処理モード、第2中間処理モード、第2下端処理モードの6種類が用意されている。
第1上端処理モードは、前述の上端処理を720×720dpiの印刷解像度で実行するための処理モードである。すなわち、基本的にその前半のパス目においては、ノズル#1〜#3のみを用いてインターレース方式で印刷する処理モードである。なお、3つのノズルを用いることに起因して、用紙の搬送量Fは3・Dとなっている(図21Aを参照。)。
第1中間処理モードは、前述の中間処理を720×720dpiの印刷解像度で実行するための処理モードである。すなわち、全パス目に亘って、ノズル列の全ノズルたるノズル#1〜#7を用いてインターレース方式で印刷する処理モードである。なお、7つのノズルを用いることに起因して、用紙の搬送量Fは7・Dとなっている(図21A及び図21Bを参照。)。
第1下端処理モードは、前述の下端処理を720×720dpiの印刷解像度で実行するための処理モードである。すなわち、基本的にその後半のパス目においては、ノズル#5〜#7のみを用いてインターレース方式で印刷する処理モードである。なお、3つのノズルを用いることに起因して、用紙の搬送量は3・Dとなっている(図21Bを参照。)。
第2上端処理モードは、前述の上端処理を360×360dpiの印刷解像度で実行するための処理モードである。すなわち、基本的にその前半のパス目においては、ノズル#1〜#3のみを用いてインターレース方式で印刷する処理モードである。但し、印刷解像度が第1上端処理モードの半分に粗くなっていることに起因して、用紙の搬送量Fは、前記第1上端処理モードの2倍の6・Dになっている(図23Aを参照。)。
第2中間処理モードは、前述中間処理を360×360dpiの印刷解像度で実行するための処理モードである。すなわち、全パス目に亘って、ノズル列の全てのノズルたるノズル#1〜#7を用いてインターレース方式で印刷する処理モードである。但し、印刷解像度が第1中間処理モードの半分に粗くなっていることに起因して、用紙の搬送量Fは、前記第1中間処理モードの2倍の14・Dドットになっている(図23A及び図23Bを参照。)。
第2下端処理モードは、前述の上端処理を360×360dpiの印刷解像度で実行するための処理モードである。すなわち、基本的にその後半のパス目においては、ノズル#5〜#7のみを用いてインターレース方式で印刷する処理モードである。但し、印刷解像度が第1下端処理モードの半分に粗くなっていることに起因して、用紙の搬送量Fは、前記第1下端処理モードの2倍の6・Dとなっている(図23Bを参照。)。
ここで、これら処理モードによって用紙Sに画像が形成される様子を、図21A乃至図24Bを参照して説明する。なお、これらの図は何れも、図A及び図Bの一対の図によって一つの画像が形成される様子を表現している。すなわち、図Aは、画像の上側部分に係るラスタラインが、何れの処理モードの何パス目で何れのノズルによって形成されるかを示しており、また、図Bは、画像の下側部分に係るラスタラインが、何れの処理モードの何パス目で何れのノズルによって形成されるかを示している。
図21A乃至図24Bの左側部分(以下では左図と言う)には、各処理モードでの各パス目における用紙に対するノズル列の相対位置を示している。なお、この左図では、説明の都合上、ノズル列の方を各パス目につき搬送量Fずつ下方に移動させて示しているが、実際には用紙Sの方が搬送方向に移動する。また、このノズル列は、そのノズル番号を丸印で囲って示すように、ノズル#1〜#7を有し、そのノズルピッチk・Dは4・Dであるものとする。また、ドットピッチDは720dpi(1/720インチ)であるものとする。なお、このノズル列において、黒塗りで示すノズルが、インクを吐出するノズルである。
この左図の右側部分(以下では右図と言う)には、各ラスタラインを構成する画素に向けてインクを吐出してドットが形成される様子を示している。なお、前述したが、画素とは、インクを着弾させドットを形成する位置を規定するために、用紙上に仮想的に定められた方眼状の升目であり、右図中の四角の升目は、それぞれに720×720dpiの画素、すなわち前記D四方のサイズの画素を表している。各升目中に記入された番号は、その画素に向けてインクを吐出するノズル番号を示しており、番号の記入されていない升目は、インクが吐出されない画素を示している。また、右図に示すように、前記処理モードにおいて形成可能な最上端のラスタラインを第1ラスタラインR1と呼び、以下、図の下端側に向かうに従って第2ラスタラインR2、第3ラスタラインR3、…と続いているものとする。
(1)第1上端処理モード、第1中間処理モード、及び第1下端処理モードを使用して画像を印刷するケースについて
このケースは、図19及び図20に示す第1印刷モードが設定された場合、すなわち余白形態モードとしては「縁無し」が、また画質モードとしては「きれい」が設定された場合に該当する。そして、図21A及び図21Bに示すように、プリンタ1は、第1上端処理モードで8パスし、次に第1中間処理モードで9パスし、次に第1下端処理モードで8パスする。その結果、印刷領域としての第7ラスタラインR7から第127ラスタラインR127までに亘る領域R7〜R127に対して720×720dpiの印刷解像度でインクが吐出されて、搬送方向の大きさが110・Dである後記「第1サイズ」の用紙は縁無しに印刷される。
なお、前記第1上端処理モード及び第1下端処理モードのパス数は固定値であり、例えば前述の8パスから変化しないが、前記第1中間処理モードのパス数は、プリンタドライバ1110のユーザインターフェースから入力される前記用紙サイズモードに応じて変更されて設定される。これは、縁無し印刷をするためには、用紙サイズモードに対応する用紙よりも印刷領域の大きさを搬送方向に関して大きくする必要があって、この印刷領域の大きさの調整を前記中間処理モードのパス数の変更によって行っているためである。図示例にあっては、用紙サイズモードとして、搬送方向の大きさが110・Dであることを示す「第1サイズ」が入力されたものとしている。そして、前記印刷領域の搬送方向の大きさが121・Dとなるように、第1中間処理モードのパス数が前述の9パスに設定されている。なお、これについては、後で詳細に説明する。
第1上端処理モードでは、基本的には、図21Aの左図に示すように、用紙Sを3・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。この処理モードにおける前半の4パスでは、ノズル#1〜#3を使用して印刷する。また、後半の4パスでは、パスが進む毎に、使用するノズルを#4、#5、#6、及び#7の順番で一つずつ増やしながら印刷する。なお、この後半の4パスにおいて、使用するノズル数を順次増やしているのは、この直後に続けて実行される第1中間処理モードに、ノズルの使用状態を適合させるためである。
そして、この第1上端処理モードで印刷した結果、右図に示す第1ラスタラインR1から第46ラスタラインR46までの領域R1〜R46に亘ってラスタラインが形成される(右図中では、当該第1上端処理モードによって形成されたラスタラインを網掛けで示している。)。但し、この領域R1〜R46において、全ラスタラインが形成された完成状態の領域は、ラスタラインR7からラスタラインR28までの領域R7〜R28のみであり、ラスタラインR1からラスタラインR6までの領域R1〜R6、及びラスタラインR29からラスタラインR46までの領域R29〜R46については、ラスタラインの未形成部分が存在する未完成状態となっている。
このうちの前者の領域R1〜R6は、所謂印刷不可領域であり、つまり、第2、第3、第6ラスタラインR2,R3,R6に相当する部分は、何れのパス目においてもノズルが通過せず、もって、各画素にドットを形成することができない。よって、当該領域R1〜R6については、画像を記録するために使用しないものとし、前記印刷領域から除外している。一方、後者の領域R29〜R46におけるラスタラインの未形成部分は、この直後に続いて実行される第1中間処理モードによって補完的に形成され、その際に当該領域R29〜R46は完成状態となる。すなわち、この領域R29〜R46は、第1上端処理モードと第1中間処理モードとの両者によって完成される領域であり、以下では、この領域R29〜R46のことを上端中間混在領域という。また、前記第1上端処理モードのみによって形成される領域R7〜R28のことを上端単独領域という。
第1中間処理モードでは、図21A及び図21Bの左図に示すように、基本的には、用紙Sを7・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。そして、その際の1パス目から9パス目までの全パスに亘って、ノズル#1〜#7の全ノズルを使用して印刷を実行し、その結果、右図に示す第29ラスタラインR29から第109ラスタラインR109までの領域R29〜R109に亘ってラスタラインを形成する。
詳細には、前記上端中間混在領域R29〜R46については、前記第1上端処理モードで未形成だったラスタラインR29,R33,R36,R37,R40,R41,R43,R44,R45がそれぞれ補完的に形成されて、当該上端中間混在領域R29〜R46は完成状態となる。また、領域R47〜R91については、当該第1中間処理モードのドット形成動作のみによって、全ラスタラインが形成されて完成状態になる。以下では、この第1中間処理モードのみで完成される領域R47〜R91のことを中間単独領域という。領域R92〜R109については、一部にラスタラインの未形成部分が存在するが、これらは、この後に続けて実行される第1下端処理モードによって補完的に形成され、当該領域R92〜R109は完成状態となる。すなわち、この領域R92〜R109は、第1中間処理モードと第1下端処理モードとの両者によって完成される領域であり、以下では、この領域R92〜R109のことを中間下端混在領域という。なお、右図中では、第1下端処理モードによって形成されるラスタラインを網掛けで示している。
第1下端処理モードでは、図21Bに示すように、基本的には、用紙Sを3・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。この第1下端処理モードにおける後半の5パスでは、ノズル#5〜#7を使用して印刷する。また、この第1下端処理モードにおける前半の3パスでは、パスが進む毎に、使用するノズルをノズル#1、ノズル#2、ノズル#3の順番で一つずつ減らしながら印刷する。すなわち、1パス目では、ノズル#2〜#7を使用し、2パス目では、ノズル#3〜#7を使用し、3パス目ではノズル#4〜#7を使用して印刷する。なお、この前半の3パスにおいて使用するノズル数を順次減らしているのは、この直後に続けて実行される前記後半の5パスに、ノズルの使用状態を適合させるためである。
そして、この第1下端処理モードで印刷した結果、右図に示す第92ラスタラインR92から第133ラスタラインR133までの領域R92〜R133に亘ってラスタラインが形成される。
詳細には、前記中間下端混在領域R92〜R109については、前記第1中間処理モードで未形成だったラスタラインR92,R96,R99,R100,R103,R104,R106,R107,R108がそれぞれ補完的に形成されて、当該中間下端混在領域R92〜R109は完成状態となる。また、領域R110〜R127については、当該第1下端処理モードのドット形成動作のみによって、全ラスタラインが形成されて完成状態になる。以下では、この下端処理モードのみによって形成される領域R110〜R127のことを下端単独領域という。また、領域R128〜R133は、所謂印刷不可領域であり、つまり第128、第131、第132ラスタラインR128,R131,R132に相当する部分は、何れのパス目においてもノズルが通過せず、もって、その各画素にドットを形成することができない。よって、当該領域R128〜R133については、画像を記録するために使用しないものとし、前記印刷領域から除外している。
ところで、このような第1上端処理モード、第1中間処理モード、及び第1下端処理モードを用いて印刷する場合には、その印刷開始位置(印刷開始時における用紙Sの上端の目標位置)を、例えば、前記印刷領域の最上端から下端側に4番目のラスタライン(図21Aにおいては、第10ラスタラインR10)にすると良い。そして、このようにすれば、搬送誤差によって、本来の搬送量よりも用紙が多く送られてしまった場合であっても、その誤差が3・D以内であれば、用紙Sの上端は、前記印刷領域の最上端よりも下端側に位置する。従って、用紙Sの上端部に余白が形成されることはなく、確実に縁無し印刷が達成される。逆に、搬送誤差によって、本来の搬送量よりも少なく送られてしまった場合には、その量が14・D以内であれば、用紙Sの上端は、第24ラスタラインR24よりも上端側に位置することとなり、もって、用紙Sの上端は、溝部上のノズル#1〜#3のみによって印刷され、プラテン24を汚すことはない。
一方、その印刷終了位置(印刷終了時における用紙Sの下端の目標位置)は、例えば、前記印刷領域の最下端から上端側に9番目のラスタライン(図21Bにおいては、第119ラスタラインR119)にすると良い。そして、このようにすれば、搬送誤差によって、本来の搬送量よりも用紙が少なく送られてしまった場合であっても、その誤差が8・D以内であれば、用紙Sの下端は、前記印刷領域の最下端のラスタラインR127よりも上端側に位置する。従って、用紙Sの下端部に余白が形成されることはなく、確実に縁無し印刷が達成される。逆に、搬送誤差によって、本来の搬送量よりも多く送られてしまった場合には、その量が12・D以内であれば、用紙Sの下端は、第106ラスタラインR106よりも下端側に位置することとなり、もって、用紙の下端は、溝部上のノズル#5〜#7のみによって印刷され、プラテン24を汚すことはない。
なお、前述した第1中間処理モードのパス数の設定には、この印刷開始位置及び印刷終了位置が関係している。すなわち、用紙サイズモードに対応する用紙に対して、前述の印刷開始位置及び印刷終了位置の条件を満たすには、先ず、印刷領域の搬送方向の大きさを、前記用紙の上端及び下端からそれぞれに3・D及び8・Dだけはみ出す大きさに設定しなければならず、つまり、搬送方向に関して用紙よりも11・Dだけ大きく設定する必要があるためである。従って、入力された用紙サイズモードが示す搬送方向の大きさよりも11・Dだけ大きくなるように第1中間処理モードのパス数は設定される。ちなみに、前述の「第1サイズ」は、搬送方向の大きさが110・Dであるため、これよりも印刷領域が11・Dだけ大きい121・Dとなるように、第1中間処理モードのパス数は9パスに設定されているのである。
(2)第1中間処理モードのみを用いて画像を印刷するケースについて
このケースは、図19及び図20に示す第2印刷モードが設定された場合、すなわち余白形態モードとして「縁有り」が、また画質モードとして「きれい」が設定された場合に該当する。そして、図22A及び図22Bに示すように、プリンタ1は、第1中間処理モードで9パスする。その結果、印刷領域としての領域R19〜R119に対して720×720dpiの印刷解像度でインクが吐出されて、搬送方向の大きさが110・Dである前記「第1サイズ」の用紙は縁有りに印刷される。
なお、前述のケース(1)と同様に、当該第1中間処理モードのパス数は、入力された用紙サイズモードに応じて変化する。すなわち、印刷領域の大きさが、入力された用紙サイズモードの用紙の上下端部に、所定幅の余白を形成する大きさになるように、前記パス数は設定される。図示例にあっては、用紙サイズモードとして前記「第1サイズ」が入力されていて、その搬送方向の用紙の大きさは110・Dである。よって、この用紙に縁有り印刷すべく、前記印刷領域の搬送方向の大きさが101・Dとなるように、第1中間処理モードのパス数が前述の17パスに設定されている。
前述したように、この縁有り印刷は、用紙の上端部及び下端部に余白を形成して印刷するものである。従って、前記溝部24a,24bと対向するノズルのみを使用して、前記上端部及び下端部を印刷する必要はなく、もって、用紙の搬送方向の全長に亘ってノズル#1〜#7の全ノズルを使用する第1中間処理モードのみに基づいて印刷が実行される。
第1中間処理モードでは、用紙を7・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。そして、図示例では、1パス目から17パス目までの全パスに亘って、ノズル#1〜#7の全ノズルを使用し、その結果、第1ラスタラインR1から第137ラスタラインR137までの領域に亘ってラスタラインを形成する。
但し、上端側の領域R1〜R18については、例えばR18の部分のように、いずれのパス目においてもラスタラインが形成されない部分が存在するので、この領域R1〜R18は前記印刷不可領域となり、前記印刷領域から除外されている。同様に、下端側における領域R120〜R137についても、例えばR120の部分のように、いずれのパス目においてもラスタラインが形成されない部分が存在するので、この領域R120〜R137も印刷不可領域となり、前記印刷領域から除外されている。なお、残る領域R19〜R119は、第1中間処理モードのみで全ラスタラインが形成され、もって、前述の中間単独領域に該当する。
(3)第2上端処理モード、第2中間処理モード、及び第2下端処理モードを使用して画像を印刷するケースについて
このケースは、図19及び図20に示す第3印刷モードが設定された場合、すなわち余白形態モードとして「縁無し」が、また画質モードとして「普通」が設定された場合に該当する。そして、図23A及び図23Bに示すように、プリンタ1は、第2上端処理モードで4パスし、次に第2中間処理モードで5パスし、次に第2下端処理モードで3パスする。その結果、印刷領域としての領域R3〜R64に対して360×360dpiの印刷解像度でインクが吐出されて、前記「第1サイズ」の用紙は縁無しに印刷される。
なお、印刷解像度が360×360dpiであるために、右図に示す升目は、一つおきにドットで埋められており、すなわち、印刷領域のラスタラインは、升目一つおきに形成されている。
前述の(1)のケースと同様に、前記第2上端処理モード及び第2下端処理モードのパス数は固定値であって変化しないが、前記第2中間処理モードのパス数は、前記用紙サイズモードに応じて変更して設定される。すなわち、何れの用紙サイズモードの用紙に対しても、確実に縁無し印刷を達成すべく、前記用紙の大きさよりも印刷領域の大きさが14・Dだけ大きくなるように、前記第2中間処理モードのパス数は設定される。なお、この14・Dという値は、前記印刷開始位置が、印刷領域の最上端から下端側に4番目のラスタライン(図23Aにおいては、第6ラスタラインR6)に、また、前記印刷終了位置が、印刷領域の最下端から上端側に4番目のラスタライン(図23Bにおいては、第61ラスタラインR61)となるように決定されている。図示例にあっては、「第1サイズ」が入力されているため、搬送方向の用紙の大きさは110・Dであり、もって、前記印刷領域の搬送方向の大きさが124・D(=110・D+14・D)となるように、第1中間処理モードのパス数が5パスに設定されている。
第2上端処理モードでは、基本的には、図23Aの左図に示すように、用紙を6・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。
この第2上端処理モードにおける前半の2パスでは、ノズル#1〜#3を使用して印刷する。また、後半の2パスでは、パスが進む毎に、使用するノズルをノズル#4、ノズル#5、ノズル#6、及びノズル#7の順番で2つずつ増やしながら印刷する。なお、この使用するノズル数を順次増やす理由は、前述の(1)のケースと同じである。
そして、この第2上端処理モードで印刷を行った結果、右図に示す領域R1〜R22に亘ってラスタラインが形成される(右図中、形成されたラスタラインを網掛けで示している。)。但し、前述の上端単独領域に該当するところの、全ラスタラインが形成された完成状態の領域は、領域R3〜R16のみであり、領域R1〜R2、及び領域R17〜R22は、一部に未形成のラスタラインが存在する未完成状態となっている。このうちの前者の領域R1〜R2は、いずれのパス目においても第2ラスタラインR2に相当する部分にラスタラインが形成されないので、前記印刷不可領域となり、前記印刷領域から除外されている。一方、後者の領域R17〜R22は、前述の上端中間混在領域に該当し、この領域R17〜R22におけるラスタラインの未形成部分は、この直後に続いて実行される第2中間処理モードによって補完的に形成されて完成状態となる。
第2中間処理モードでは、図23A及び図23Bの左図に示すように、基本的には、用紙を14・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。そして、その際の1パス目から5パス目までの全パスに亘って、ノズル#1〜#7の全ノズルを使用して印刷を実行し、その結果、右図に示す領域R17〜R57にラスタラインを形成する。詳細には、前記上端中間混在領域R17〜R22については、前記第2上端処理モードで未形成だったラスタラインR17,R19,R21がそれぞれ補完的に形成されて完成状態となる。また、領域R23〜R51は、前述の中間単独領域に該当し、この領域R23〜R51は、当該第2中間処理モードのドット形成動作のみによって、全ラスタラインが形成されて完成状態になる。領域R52〜R57は、前述の中間下端混在領域に該当し、一部にラスタラインの未形成部分が存在するが、これらは、この後に続けて実行される第2下端処理モードによって補完的に形成され、当該領域R52〜R57は完成状態となる。なお、右図では、第2下端処理モードのみによって形成されるラスタラインを網掛けで示している。
第2下端処理モードでは、図23Bに示すように、基本的には、用紙を6・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、ドット形成動作を1パスずつ行うインターレース方式の印刷を実行する。
この第2下端処理モードにおける後半の1パスでは、ノズル#5〜#7を使用して印刷する。また、この第2下端処理モードにおける前半の2パスでは、パスが進む毎に、使用するノズルをノズル#1、ノズル#2、ノズル#3、ノズル#4の順番で2つずつ減らしながら印刷する。なお、この使用するノズル数を順次減らす理由は、前述の(1)のケースと同じである。
そして、この第2下端処理モードを実行した結果、右図に示す領域R48〜R66に亘ってラスタラインが形成される。詳細には、前記中間下端混在領域R52〜R57については、前記第2中間処理モードで未形成だったラスタラインR52,R54,R56がそれぞれ補完的に形成されて完成状態となる。また、領域R58〜R64は、前述の下端単独領域に該当し、当該第2下端処理モードのドット形成動作のみによって、全ラスタラインが形成されて完成状態になる。残る領域R65〜R66は、いずれのパス目においても第65ラスタラインR65に相当する部分にラスタラインが形成されないので、前記印刷不可領域となり、前記印刷領域から除外されている。
(4)第2中間処理モードのみを用いて画像を印刷するケースについて
これは、図19及び図20に示す第4印刷モードが設定された場合、すなわち余白形態モードとして「縁有り」が、また画質モードとして「普通」が設定された場合に該当する。そして、図24A及び図24Bに示すように、プリンタ1は、第1中間処理モードで8パスする。その結果、印刷領域としての領域R7〜R56に対して360×360dpiの印刷解像度でインクが吐出されて、前記「第1サイズ」の用紙は縁有りに印刷される。
なお、前述の(2)のケースと同様に、前記第2中間処理モードのパス数は、用紙サイズモードに応じて変化する。図示例にあっては、前記「第1サイズ」が入力されていているため、この110・Dの大きさの用紙に縁有り印刷すべく、前記印刷領域の搬送方向の大きさが100・Dとなるように、第2中間処理モードのパス数が前述の8パスに設定されている。なお、この縁有り印刷において、第2中間処理モードで印刷する理由は、前述の(2)のケースと同じである。
この第2中間処理モードでは、用紙を14・Dずつ搬送する搬送動作の合間に、1パスのドット形成動作をインターレース方式で実行する。そして、図示例では、1パス目から8パス目までの全パスに亘って、#1〜#7の全ノズルを使用し、その結果、領域R1〜R62に亘ってラスタラインが形成される。
但し、上端側における領域R1〜R6については、例えば、R6の部分のようにいずれのパス目においてもラスタラインが形成されない部分が存在するので、この領域R1〜R6は印刷不可領域となり、前記印刷領域から除外されている。同様に、下端側における領域R57〜R62についても、例えばR57の部分のように、いずれのパス目においてもラスタラインが形成されない部分が存在するので、この領域R57〜R62も印刷不可領域となり、前記印刷領域から除外されている。なお、残る領域R7〜R56は、第1中間処理モードのみで全ラスタラインが形成され、もって、前述の中間単独領域に該当する。
ちなみに、以上説明してきた、第1上端処理モード、第1中間処理モード、及び第1下端処理モード、第2上端処理モード、第2中間処理モード、及び第2下端処理モードは、それぞれに、異なる処理モードであるが、これは、これら6者の関係が、少なくともドット形成動作及び搬送動作の少なくとも一方が異なる印刷処理を実行する関係に該当しているためである。
すなわち、搬送動作が異なる印刷処理とは、前述したように、各搬送動作の搬送量F(各パスの搬送量F)の変化パターンが異なる印刷処理のことを言うが、これについては、第1中間処理モードの変化パターンが全パスに亘って7・Dであり、第2中間処理モードの変化パターンが全パスに亘って14・Dであり、第1上端処理モード及び第1下端処理モードの変化パターンが全パスに亘って3・Dであり、第1上端処理モード及び第1下端処理モードの変化パターンが全パスに亘って6・Dである。従って、第1中間処理モード及び第2中間処理モードは、この搬送量Fの変化パターンの点に関して他の何れの処理モードとも異なっており、もって、これらは、他の処理モードとは異なる処理モードとなっている。
一方、第1上端処理モードと第1下端処理モードとは、前記搬送量Fの変化パターンが共に全パスに亘って3・Dであることから、搬送動作の印刷処理については互いに異なってはいない。しかし、ドット形成動作の印刷処理については、両者は異なっており、これによって、これら両者は互いに異なる処理モードとなっている。すなわち、前記第1上端処理モードにおいて各ドット形成動作(各パス)で使用されるノズルの変化パターンは、1パス目から4パス目までについてはノズル#1〜#3を使用し、5パス目から8パス目まではパスが進む毎に、#4,#5,#6,#7の順番でノズルを1つずつ増やして使用するパターンであるが、これに対して、この第1下端処理モードの変化パターンは、1パス目から4パス目までについては、#1,#2,#3,#4の順番でノズルを1つずつ減らして使用し、5パス目から8パス目までについてはノズル#5〜#7を使用するパターンである。従って、これら第1上端処理モードと第1下端処理モードとは、前記ノズルの変化パターンに関して互いに異なっており、すなわち、ドット形成動作の印刷処理に関して互いに異なっている。そして、これによって、これら両者は、互いに異なる処理モードとなっている。
同様に、第2上端処理モードと第2下端処理モードとは、前記搬送量の変化パターンが共に全パスに亘って6・Dであることから、搬送動作の印刷処理については互いに異なってはいない。しかし、ドット形成動作の印刷処理については、両者は異なっており、これによって、両者は互いに異なる処理モードとなっている。すなわち、前記第2上端処理モードにおいて各ドット形成動作(各パス)で使用されるノズルの変化パターンは、1パス目から2パス目までについてはノズル#1〜#3を使用し、3パス目から4パス目まではパスが進む毎に、#4,#5,#6,#7の順番でノズルを2つずつ増やして使用するパターンであるが、これに対して、この第2下端処理モードの変化パターンは、1パス目では#3〜#7を使用し、3パス目から4パス目までについてはノズル#5〜#7を使用するパターンである。従って、これら第2上端処理モードと第2下端処理モードとは、前記ノズルの変化パターンに関して互いに異なっており、すなわち、ドット形成動作の印刷処理に関して互いに異なっている。そして、これによって、これら両者は、互いに異なる処理モードとなっている。
以上、各処理モードについて具体的に説明してきたが、画像形成に寄与する領域は、前記印刷領域のみであるため、以下の説明においては、ラスタライン番号を印刷領域のみにふり直すことにする。すなわち、図21A乃至図24Cの右図に示すように、印刷領域における最上端のラスタラインを第1ラスタラインr1と呼び、以下、図の下端側に向かうに従って第2ラスタラインr2、第3ラスタラインr3、…と続いているものとする。
===画像中の濃度ムラの発生原因について===
CMYKのインクを用いて多色印刷された画像中に生じる濃度ムラは、基本的には、その各インク色でそれぞれに生じる濃度ムラが原因である。このため、通常は、各インク色の濃度ムラをそれぞれ別々に抑制することによって、多色印刷された画像中の濃度ムラを抑制する方法が採られている。
そこで、以下では、単色印刷された画像中に生じる濃度ムラの発生原因について説明する。図25は、単色印刷された画像中に生じる濃度ムラを説明するための図であり、すなわち、CMYKのうちの1つのインク色、例えばブラックインクで印刷した画像の濃度ムラを示している。
図示するように、ここで言う濃度ムラは、前記キャリッジ移動方向に平行に沿って縞状に見えるものである。その発生原因の主なものとしては、ノズルの加工精度が悪くインクの吐出方向が傾いていることによって、そのドット形成位置が、目標形成位置に対して搬送方向にずれていることが挙げられる。そして、その場合には、必然的に、これらドットが構成するラスタラインRの形成位置も搬送方向に関して目標形成位置からずれてしまうため、搬送方向に隣り合うラスタラインRとの間隔が、周期的に空いたり詰まったりした状態となって、これを巨視的に見ると縞状の濃度ムラとなって見えてしまうのである。すなわち、隣り合うラスタラインRとの間隔が広いラスタラインRは巨視的に薄く見え、間隔が狭いラスタラインRは巨視的に濃く見えるのである。
なお、この濃度ムラの発生原因は、他のインク色に関しても当てはまることである。そして、CMYKのうちの1色でもこの傾向があれば、多色印刷の画像中には濃度ムラが顕れてしまう。
このような濃度ムラを抑制する第1の参考例の方法としては、所定の濃度の階調値で補正用パターンを形成し、この補正用パターンから各ノズルが形成したラスタラインの濃度を測定することによってノズル毎に補正値を求め、画像を本印刷する際には、前記補正値によってノズル毎に補正する方法が挙げられる。なお、多色印刷の場合には、補正用パターンは、多色印刷に用いる例えばCMYKのインク色毎に印刷され、前記補正値はインク色毎に求められているのは言うまでもない。
この方法について具体的に説明する。先ず、前記6種類の処理モードのなかから、例えば第1中間処理モードを選び、当該処理モードを用いてノズルからインクを吐出して補正用パターンを印刷する。この補正用パターンは、搬送方向の所定ピッチで形成された多数のラスタラインから構成され、また、各ラスタラインは、インクの着弾痕であるキャリッジ移動方向に並ぶ複数のドットから構成される。なお、印刷の際には、補正用パターンの全ての画素に対しては、同じ階調値の指令値が与えられてインクが吐出されている。
次に、この補正用パターンの濃度をラスタライン毎に測定し、各測定値に基づいてラスタライン毎に濃度の補正値を求める。そして、各ラスタラインを形成したノズルを割り出して、ノズル毎に前記補正値を対応付けて記録する。
最後に、当該補正値を用いて画像を本印刷するが、その際には、その画像データが有する各画素データの階調値を前記補正値分だけ補正してインクを吐出し、これによって濃度ムラを抑制する。詳細には、隣り合うラスタラインとの間隔が広いために前記測定値が小さくなったラスタラインを形成するノズルに対しては、そのインク量を増やしてラスタラインが濃く見えるようにし、逆に前記間隔が狭いために前記測定値が大きくなったラスタラインを形成するノズルに対しては、そのインク量を減らしてラスタラインが薄く見えるようにする。
しかしながら、前記濃度ムラの原因となっている、搬送方向に隣り合うラスタラインとの間隔の状態は、当該隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせによって変化する。そして、この組み合わせは、前記処理モードに応じて変化する。
従って、前記第1中間処理モードによって印刷した補正用パターンに基づく補正値は、当該第1中間処理モードによって本印刷する場合には有効であるが、これと異なる処理モードで本印刷する場合には、隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせが異なるために、当該補正値を流用できない。例えば、第1印刷モードに係る縁無し印刷の場合には、前記第1中間処理モード以外に、第1上端処理モードや第1下端処理モードを用いて画像を本印刷するが、この第1上端処理モード及び第1下端処理モードに対しては、前記第1中間処理モードの補正値を流用できないのである。
これを、図21Aの右図を参照して具体的に説明すると、前述の第1中間処理モードで本印刷する場合には、ラスタラインを形成するノズルの順番は、例えば、搬送方向に関して#2,#4,#6,#1,#3,#5,#7の順番を一巡として、これを繰り返すものである(例えば、領域r41〜r54を参照。)。一方、第1上端処理モードの場合には、そのラスタラインを形成するノズルの順番は、例えば、搬送方向に関して#1,#2,#3の順番を一巡として、これを繰り返すものである(例えば、領域r1〜r6を参照。)。
ここで、第1中間処理モードと第1上端処理モードの両者について、ノズル#1が形成するラスタラインとして例えばr44とr4に注目すると、第1中間処理モードにおいては、前記ラスタラインr44の直近上流のラスタラインr45はノズル#3により形成され、直近下流のラスタラインr43はノズル#6により形成される。このため、ノズル#1が形成するラスタラインr44の巨視的な濃度は、ノズル#3,#1,#6の組み合わせによって決まる。これに対して、第1上端処理モードにおいては、ノズル#1が形成するラスタラインr4の直近上流のラスタラインr5は、ノズル#2により形成され、直近下流のラスタラインr3はノズル#3により形成されるため、ノズル#1が形成するラスタラインr4の巨視的な濃度は、ノズル#2,#1,#3の組み合わせによって決まる。そして、この第1上端処理モードのノズル#2,#1,#3の組み合わせは、前述の第1中間処理モードのノズルの組み合わせたるノズル#3,#1,#6とは相違しており、もって、第1上端処理モードでノズル#1が形成するラスタラインr4の巨視的な濃度は、第1中間処理モードでノズル#1が形成するラスタラインr44の巨視的な濃度とは相違する。従って、第1中間処理モードの補正値を第1上端処理モードに対して流用することはできない。
そこで、以下に説明する第2の参考例にあっては、処理モード毎に補正用パターンを印刷して、処理モード毎に各ラスタラインの濃度の補正値を求めている。そして、所定の処理モードで画像を本印刷する際には、その処理モードで印刷した補正用パターンに基づいて求められた補正値を用いて、各ラスタラインの濃度補正を実行し、これによって濃度ムラを確実に抑制するようにしている。
===第2の参考例の濃度ムラを抑制した画像の印刷方法===
図26は、第2の参考例に係る画像の印刷方法の全体の処理手順を示すフローチャートである。先ず、製造ラインにおいてプリンタ1が組み立てられ(S110)、次に、検査ラインの作業者によって、濃度ムラを抑制するための濃度の補正値が前記プリンタ1に設定され(S120)、次に前記プリンタ1が出荷される(S130)。そして、当該プリンタ1を購入したユーザによって画像の本印刷が行われるが、その本印刷の際には、前記プリンタ1は前記補正値に基づいてラスタライン毎に濃度補正を実行しながら用紙に画像を印刷する(S140)。
以下では、ステップS120及びステップS140の内容について説明する。
<ステップS120:濃度ムラを抑制するための濃度の補正値の設定>
図27は、図26中のステップS120の手順を示すフローチャートである。始めに、このフローチャートを参照し、この濃度の補正値の設定手順について概略説明する。
ステップS121:先ず、検査ラインの作業者は、検査ラインのコンピュータ1100にプリンタ1を接続し、このプリンタ1によって、補正値を求めるための補正用パターンを印刷する。なお、この補正用パターンを印刷するプリンタ1は、濃度ムラの抑制対象のプリンタ1であり、つまり当該補正値の設定はプリンタ毎に行われる。また、前記補正用パターンは、インク色毎且つ各処理モード毎の区分でそれぞれに印刷される(図28を参照。)。
ステップS122:次に、印刷された全ての補正用パターンの濃度をラスタライン毎に測定し、当該測定値を、ラスタライン番号と対応付けて記録テーブルに記録する。なお、この記録テーブルは、検査ラインのコンピュータ1100のメモリに、前記インク色毎且つ処理モード毎の区分でそれぞれ用意されている(図32を参照。)。
ステップS123:次に、前記コンピュータ1100は、記録テーブルに記録された濃度の測定値に基づいて、ラスタライン毎に濃度の補正値を算出し、当該補正値を、ラスタライン番号と対応付けて補正値テーブルに記録する。なお、この補正値テーブルは、前記プリンタ1の前記メモリ63に、前記インク色毎且つ処理モード毎の区分でそれぞれ用意されている(図34を参照。)。
以下、これらステップS121乃至S123のそれぞれについて詳細に説明する。
(1)ステップS121:補正用パターンの印刷
先ず、検査ラインの作業者は、この検査ラインのコンピュータ1100等に、補正値の設定対象のプリンタ1を通信可能に接続し、図1で説明した印刷システムの状態に設定する。そして、前記コンピュータ1100の前記メモリに格納されている補正用パターンの印刷データに基づいて用紙に補正用パターンを印刷するようにプリンタ1に指示し、送信された前記印刷データに基づいてプリンタ1は用紙Sに補正用パターンを印刷する。なお、この補正用パターンの印刷データは、CMYKの各インク色の階調値を直接指定して構成されたCMYK画像データに対して、前述のハーフトーン処理及びラスタライズ処理を行って生成されたものである。前記CMYK画像データの画素データの階調値は、インク色毎に形成される補正用パターン毎に、その全画素に亘って同一の値が設定されており、もって、各補正用パターンは、それぞれに、その全域に亘って、ほぼ一定の濃度で印刷される。前記階調値は、適宜な値に設定可能であるが、濃度ムラが生じ易い範囲の濃度ムラを積極的に抑制する観点からは、CMYKの色に関して所謂中間調領域となるような階調値を選ぶのが望ましい。具体的には、C,M,Y,Kの各色で示す256段階の階調値が、77〜128の範囲から選ぶと良い。
前記作業者の印刷の指示は、プリンタドライバ1110のユーザインターフェースによって行われる。その際には、このユーザインターフェースから、印刷モード及び用紙サイズモードが設定され、プリンタドライバ1110は、この設定に対応する前記印刷データに基づいて補正用パターンを印刷する。すなわち、前記補正用パターンの印刷データは、印刷モード毎及び用紙サイズ毎に用意されている。但し、「第1印刷モード」及び「第3印刷モード」の印刷データは必須であるが、「第2印刷モード」及び「第4印刷モード」については必須ではない。これは、「第2印刷モード」及び「第4印刷モード」の補正用パターンは、前記「第1印刷モード」又は「第3印刷モード」の補正用パターンの一部に含まれており、後述のように、流用可能であるためである。
図28に、用紙に印刷された補正用パターンを示す。この補正用パターンCPは、CMYKのインク色毎に印刷されている。図示例にあっては、キャリッジ移動方向に沿って、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の順番で、各インク色の補正用パターンCPc,CPm,CPy,CPkが一枚の用紙S上に並列されている。
なお、これら補正用パターン同士の相違点は、基本的にインク色が異なるだけであるため、以下では、これら補正用パターンCPを代表して、ブラック(K)の補正用パターンCPkについて説明する。
また、前述したように多色印刷における濃度ムラの抑制は、その多色印刷に用いるインク色毎にそれぞれ行われ、更に、それぞれ抑制に用いられる方法は同じである。このため、以下の説明においては、ブラック(K)に代表させて説明する。すなわち、以下の説明においては、ブラック(K)の一色についてだけ記載している箇所も有るが、その他のC,M,Yのインク色についても同様である。
このブラック(K)の補正用パターンCPkは、搬送方向に長い帯形状に印刷されている。そして、その搬送方向の印刷範囲は、用紙Sの全域に亘っている。
また、この補正用パターンCPkは、処理モード毎に印刷されるが、図示例では、搬送方向に関して略三分割された各領域に、互いに処理モードの異なる補正用パターンCP1,CP2,CP3が一つずつ印刷されている。
ここで、この分割された各領域に、何れの処理モードの補正用パターンCP1,CP2,CP3を印刷するかという対応関係については、本印刷時の対応関係と一致させるのが望ましい。そして、このようにすれば、前記本印刷時と同じ搬送動作及びドット形成動作を、当該補正用パターンCP1,CP2,CP3の印刷時においても忠実に再現させることができるため、これら補正用パターンCP1,CP2,CP3に基づいて得られる補正値の補正精度が向上し、濃度ムラを確実に抑制可能となる。
例えば、前述の第1上端処理モード、第1中間処理モード、及び第1下端処理モードを例に説明すると、用紙Sの上端部の領域に対しては、第1上端処理モードで補正用パターン(以下、第1上端補正用パターンCP1と言う)を印刷し、用紙Sの中間部の領域に対しては、第1中間処理モードで補正用パターン(以下、第1中間補正用パターンCP2と言う)を印刷し、用紙Sの下端部の領域に対しては、第1下端処理モードで補正用パターン(以下、第1下端補正用パターンCP3と言う)を印刷すると良い。これは、本印刷時において第1印刷モードが選択された場合には、用紙Sの上端部は第1上端処理モードで本印刷され、また用紙の中間部は第1中間処理モードで、更には用紙の下端部は第1下端処理モードでそれぞれ本印刷されるからである。
ここで、当該補正用パターンCP1,CP2,CP3の形成過程を、前述の第1上端、第1中間、及び第1下端補正用パターンCP1,CP2,CP3を例に詳細に説明する。なお、以下で説明する内容は、第2上端処理モード、第2中間処理モード、及び第2下端処理モードについても当てはまり、その基本的な流れに沿って実行すれば同じように濃度補正を行えるのは明らかであるため、これらの説明については省略する。
図29A及び図29Bは、各補正用パターンCP1,CP2,CP3を構成するラスタラインが、何れのノズルによって形成されるかを示しており、図29Aは第1上端補正用パターンCP1及び第1中間補正用パターンCP2について、また、図29Bは第1中間補正用パターンCP2及び第1下端処理補正用パターンCP3について示している。なお、これら図29A及び図29Bは、前述の図21A及び図21Bと同じ様式で示している。
この図示例にあっては、印刷モードとして「第1印刷モード」が、また用紙サイズモードとして「第1サイズ」が設定されている。そして、この設定に対応する補正用パターンの印刷データが前記メモリ内から選択されて、図29A及び図29Bの右図に示すように、用紙Sの上端部、中間部、及び下端部の各領域には、それぞれに本印刷時に用いられる処理モードによって各補正用パターンCP1,CP2,CP3が印刷される。
すなわち、図21Aの本印刷時と同様に、第1上端処理モードの8パスによって、図29Aに示す用紙の上端部には、領域r1〜r40についてラスタラインが形成され、当該領域r1〜r40に形成されるラスタラインが、第1上端補正用パターンCP1を構成する。なお、この領域r1〜r40における前記上端中間混在領域r23〜r40については、前述したように、第1上端処理モードと第1中間処理モードとの両者によって形成され、その一部のラスタラインr24,r25,r26,r28,r29,r32,r33,r36,r40は、第1中間処理モードによって形成されるが、これらラスタラインも第1上端補正用パターンCP1を構成するものとして扱う。すなわち、右図に網掛けで示すように、第1上端補正用パターンCP1は、上端単独領域r1〜r22及び上端中間混在領域r23〜r40の各ラスタラインから構成されている。
また、図21A及び図21Bの本印刷時と同様に、第1中間処理モードの9パスによって、図29A及び図29Bに示す用紙の中間部には、領域r23〜r103についてラスタラインが形成される。但し、前述したように上端中間混在領域r23〜r40の各ラスタラインは、第1上端補正用パターンCP1を構成するものとして扱うとともに、後述する中間下端混在領域r86〜r103の各ラスタラインは、第1下端補正用パターンCP3を構成するものとして扱う。このため、残る中間単独領域r41〜r85の各ラスタラインが第1中間補正用パターンCP2を構成する。右図では、第1中間補正用パターンCP2を構成するラスタラインを網掛け無しで示している。
更に、図21Bに示す本印刷時と同様に、第1下端処理モードの8パスによって、図29Bに示す用紙の下端部には、領域r86〜r121についてラスタラインが形成され、当該領域r86〜r121に形成されるラスタラインが、第1下端補正用パターンCP3を構成する。なお、この領域r86〜r121における中間下端混在領域r86〜r103は、前述したように当該第1下端処理モードと前記第1中間処理モードとの両者によって形成され、その一部のラスタラインr87,r88,r89,r91,r92,r95,r96,r99,r103は、第1中間処理モードによって形成されるが、これらラスタラインも第1下端補正用パターンCP1を構成するものとして扱う。すなわち、右図に網掛けで示すように、第1下端補正用パターンCP3は、中間下端混在領域r86〜r103及び下端単独領域r104〜r121の各ラスタラインから構成されている。
ここで、これら補正用パターンCP1,CP2,CP3において隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせについて注目すると、当然ではあるが、これらの組み合わせは、本印刷時のノズルの組み合わせを示す図21A、図21Bの右図と対比してわかるように、前記本印刷時の組み合わせと同じになっている。すなわち、図29A及び図29Bの右図に示す、第1上端補正用パターンCP1に係る領域r1〜r40において隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせは、図21Aの右図に示す、本印刷時に第1上端処理モードで印刷される領域r1〜r40におけるノズルの組み合わせと同じになっている。同様に、図29A及び図29Bの右図に示す、第1中間補正用パターンCP2に係る中間単独領域r41〜r85におけるノズルの組み合わせは、図21A及び図21Bの右図に示す、本印刷時に第1中間処理モードのみで印刷される中間単独領域r41〜r85におけるノズルの組み合わせと同じである。また、図29Bの右図に示す、第1下端補正用パターンCP3に係る領域r86〜r121におけるノズルの組み合わせは、図21Bの右図に示す、本印刷時に第1下端処理で印刷される領域r86〜r121におけるノズルの組み合わせと同じである。
従って、これら処理モード毎に形成した補正用パターンCP1,CP2,CP3に基づいてラスタライン毎に濃度の補正をすることによって、本印刷時の画像の濃度ムラを確実に抑制することが可能であるのがわかる。
なお、この例で補正用パターンCPの印刷に用いた用紙サイズは、本印刷時と同じ搬送動作及びドット形成動作を再現させるべく、前記第1サイズとし、すなわち搬送方向について110・Dの大きさにしている。従って、実際には、この用紙サイズでは、印刷領域r1〜r121における最上端側及び最下端側の部分(主に打ち捨て領域に相当する部分)を印刷することができず、この部分に関する補正用パターンCPを取得できない場合がある。
しかしながら、その場合には、搬送方向に関して前記印刷領域r1〜r121を全てカバーできるように、例えば120・D以上の長さの用紙を用いれば良い。そして、打ち捨て領域に関する補正用パターンCPとしては、この120・D以上の長さの用紙に印刷した補正用パターンを用いる一方で、打ち捨て領域以外の部分の補正用パターンCPとしては、前記第1サイズの用紙に印刷した補正用パターンCPを用いれば良い。
(2)ステップS122:補正用パターンの濃度をラスタライン毎に測定
図29A及び図29Bに示す各補正用パターンCP1,CP2,CP3の濃度は、当該濃度を光学的に測定する濃度測定装置によってラスタライン毎に測定される。この濃度測定装置は、ラスタライン方向の所定数の画素の平均濃度を、ラスタライン毎に測定可能な装置であり、その一例としては、周知のスキャナ装置が挙げられる。なお、所定数の画素の平均濃度で各ラスタラインの濃度を評価する理由は、前記ハーフトーン処理によって各画素に形成されるドットの大きさは、各画素の階調値を揃えて印刷しても、画素毎に異なってしまうためであり、つまり、一つの画素に、一行のラスタラインの濃度を代表させることができないためである。
図30A及び図30Bに、このスキャナ装置の縦断面図及び平面図をそれぞれ示す。このスキャナ装置100は、原稿101を載置する原稿台ガラス102と、この原稿台ガラス102を介して前記原稿101と対面しつつ所定の移動方向に移動する読取キャリッジ104とを備えている。読取キャリッジ104には、原稿101に光を照射する露光ランプ106と、原稿101からの反射光を、前記移動方向と直交する直交方向の所定範囲に亘って受光するリニアセンサ108とを搭載している。そして、前記読取キャリッジ104を前記移動方向に移動させながら、所定の読み取り解像度で原稿101から画像を読み取るようになっている。なお、図30A中の破線は前記光の軌跡を示している。
図30Bに示すように、原稿101としての補正用パターンCPが印刷された用紙は、そのラスタライン方向を前記直交方向に揃えて原稿台ガラス102に載置され、これによって、そのラスタライン方向の所定数の画素の平均濃度を、ラスタライン毎に読み取り可能となっている。なお、前記読取キャリッジ104の前記移動方向の読み取り解像度は、前記ラスタラインのピッチの整数倍の細かさにするのが望ましく、このようにすれば、読み取った濃度の測定値とラスタラインとの対応付けが容易になる。
この補正用パターンCPkの濃度の測定値の一例を図31に示す。図31の横軸はラスタライン番号を、また縦軸には、濃度の測定値を示している。図中の実線は前記測定値であり、参考として、第2の参考例に係る濃度補正後の測定値も破線で示している。
補正用パターンCPkを構成する全てのラスタラインに亘って、同じ濃度の階調値で印刷したにも拘わらず、実線で示す測定値はラスタライン毎に上下に大きくばらついているが、これが、前述したインクの吐出方向のばらつき等に起因する濃度ムラである。すなわち、隣り合うラスタラインとの間隔が狭いラスタラインの濃度は大きく測定される一方、間隔が広いラスタラインの濃度は小さく測定されている。
この第2の参考例では、後述する濃度補正を本印刷時に行うことによって、この測定値が大きいラスタラインに対応するラスタラインについては、例えば当該ラスタラインを構成するドットの生成率(前記レベルデータに相当)を小さくしてその巨視的な濃度が小さくなるように補正する一方、逆に測定値が小さいラスタラインに対応するラスタラインについては、当該ラスタラインを構成するドットの生成率を大きくしてその巨視的な濃度が大きくなるように補正し、その結果、画像の濃度ムラを抑制する。ちなみに、後述の濃度補正を行いながら前記ブラック(K)の補正用パターンCPkを印刷したとすると、その濃度の測定結果としては、図31の破線で示すようにラスタライン毎のバラツキが小さく抑制された測定値が得られる。
ところで、このスキャナ装置100は、前記コンピュータ1100に通信可能に接続されている。そして、当該スキャナ装置100で読み取った補正用パターンの濃度の各測定値は、ラスタライン番号と対応付けられながら、コンピュータ1100の前記メモリに用意された記録テーブルに記録される。なお、このスキャナ装置100から出力される前記濃度の測定値は、256段階の階調値で示されたグレイスケール(色情報を持たず、明度だけで作られたデータ)である。ここで、このグレイスケールを用いる理由は、測定値が色情報を持っていると、当該測定値を対象のインク色の階調値のみで表現する処理を行わねばならず、処理が煩雑になるためである。
図32に、記録テーブルの概念図を示すが、当該記録テーブルは、インク色毎且つ処理モード毎の区分で用意されている。そして、前記各区分で印刷された補正用パターンCPの測定値が、対応する記録テーブルに記録される。
図33A乃至図33Cに、これら記録テーブルを代表してブラック(K)の第1上端処理モード用、第1中間処理モード用、第1下端処理モード用の記録テーブルをそれぞれ示す。これら記録テーブルは、測定値を記録するためのレコードを有している。各レコードには、レコード番号が付けられており、番号の小さいレコードには、対応する補正用パターンCP1,CP2,CP3における番号の小さいラスタラインの測定値が順次記録される。なお、図33A乃至図33Cに示す「***」は、レコードに測定値が記録されている状態を示しており、空欄は記録されていない状態を示している。
図33Aに示す第1上端処理モード用の記録テーブルには、第1上端補正用パターンCP1の各ラスタラインの測定値が記録される。なお、前述したように、この第1上端補正用パターンCP1は、図29Aに示す上端単独領域r1〜r22及び上端中間混在領域r23〜r40の各ラスタラインで構成されているため、この記録テーブルには上端単独領域及び中間混在領域の各ラスタラインの測定値が記録される。ちなみに、これら領域のラスタラインは40本であるため、各測定値は、前記記録テーブルの第1レコードから第40レコードまでの範囲に記録される。
図33Bに示す第1中間処理モード用の記録テーブルには、第1中間補正用パターンCP2の各ラスタラインの測定値が記録される。なお、前述したように、この第1中間補正用パターンCP2は、図29A及び図29Bに示す中間単独領域r41〜r85の各ラスタラインで構成されているため、この記録テーブルには中間単独領域の各ラスタラインの測定値が記録される。ちなみに、この領域のラスタラインは45本であるため、各測定値は、前記記録テーブルの第1レコードから第45レコードまでの範囲に記録される。
図33Cに示す第1下端処理モード用の記録テーブルには、第1下端補正用パターンCP3の各ラスタラインの測定値が記録される。なお、前述したように、この第1下端補正用パターンCP3は、図29Bに示す中間下端混在領域r86〜r103及び下端単独領域r104〜r121の各ラスタラインで構成されているため、この記録テーブルには中間下端混在領域及び下端単独領域の各ラスタラインの測定値が記録される。ちなみに、これら領域のラスタラインは36本であるため、各測定値は、前記記録テーブルの第1レコードから第36レコードまでの範囲に記録される。
(3)ステップS123:ラスタライン毎に濃度の補正値を設定
次に、コンピュータ1100は、各記録テーブルの各レコードに記録された測定値に基づいて、濃度の補正値を算出し、当該補正値を、プリンタ1の前記メモリ63内の補正値テーブルに設定する。図34に、この補正値テーブルの概念図を示すが、当該補正値テーブルは、前記記録テーブルと同じ区分で、すなわちインク色毎且つ処理モード毎の区分で用意されている。
図35A乃至図35Cに、これら補正値テーブルを代表して、ブラック(K)の第1上端処理モード用、第1中間処理モード用、第1下端処理モード用の補正値テーブルをそれぞれ示す。これら補正値テーブルは、前記補正値を記録するためのレコードを有している。各レコードにはレコード番号が付けられており、前記測定値に基づいて算出された補正値は、当該測定値のレコードと同じレコード番号のレコードに記録される。
例えば、図35Aに示す第1上端処理モード用の補正値テーブルの第1レコードから第40レコードまでに亘る各レコードには、それぞれに、前記第1上端処理モード用の記録テーブルの第1レコードから第40レコードまでに亘って記録された各測定値に基づいて算出された補正値が記録される。すなわち、この補正値テーブルには、上端単独領域及び上端中間混在領域に対応する補正値が記録される。
同様に、図35Bに示す第1中間処理モード用の補正値テーブルの第1レコードから第45レコードまでに亘る各レコードには、それぞれに、前記第1中間処理モード用の記録テーブルの第1レコードから第45レコードまでに亘って記録された各測定値に基づいて算出された補正値が記録される。すなわち、この補正値テーブルには、中間単独領域に対応する補正値が記録される。
また、図35Cに示す第1下端処理モード用の補正値テーブルの第1レコードから第36レコードまでに亘る各レコードには、それぞれに、前記第1下端処理モード用の記録テーブルの第1レコードから第36レコードまでに亘って記録された各測定値に基づいて算出された補正値が記録される。すなわち、この補正値テーブルには、中間下端混在領域及び下端単独領域に対応する補正値が記録される。
ところで、前記補正値は、濃度の階調値に対して補正する割合を示す補正比率の形式で求められ、具体的には次のようにして算出される。先ず、記録テーブルに記録された測定値の平均値Mを記録テーブル毎に算出し、算出された各平均値を各記録テーブルの濃度の目標値Mとする。そして、記録テーブルの測定値C毎に、当該目標値Mと測定値Cとの偏差ΔC(=M−C)を算出し、この偏差ΔCを前記目標値Mで除算した値を補正値Hとする。すなわち、当該補正値Hを数式で表現すれば、次の式1となる。
補正値H=ΔC/M
=(M−C)/M … (式1)
そして、この補正値Hを用いれば、目標値Mよりも測定値Cが高くなるラスタラインに対しては、当該ラスタラインの濃度が前記目標値Mまで小さくなるような補正を実行可能である。例えば、前記ラスタラインの測定値Cが105であり、目標値Mが100である場合には、補正値H(=(100−105)/100)は−0.05となり、当該ラスタラインの濃度の階調値を、その0.05倍だけ小さくして印刷することによって、印刷されたラスタラインの濃度を目標値Mの100に揃えることができる。また、目標値Mよりも測定値Cが低くなるようなラスタラインに対しては、当該ラスタラインの濃度が前記目標値Mまで大きくなるような補正を実行可能である。例えば、前記ラスタラインの測定値Cが95であり、目標値Mが100である場合には、補正値H(=(100―95)/100)は+0.05となり、当該ラスタラインの濃度の階調値を、その0.05倍だけ大きくして印刷することによって、印刷されたラスタラインの濃度を目標値Mの100に揃えることができる。
従って、この補正値Hを用いて、後述する濃度補正を実行することによって、ラスタライン毎の濃度のバラツキをインク色毎且つ処理モード毎に小さくすることが可能となり、もって濃度ムラを小さく抑制可能となる。
<ステップS140:ラスタライン毎に濃度補正をしながら画像を本印刷>
このようにして濃度の補正値が設定されると、当該プリンタ1は本印刷時に、インク色毎且つ処理モード毎に用意された補正値テーブルを用いて、ラスタライン毎に濃度補正することによって、濃度ムラを抑制した印刷を実行可能となる。なお、このラスタライン毎の濃度補正は、プリンタドライバ1110が前記RGB画像データを印刷データに変換する際に、前記補正値に基づいて各画素データを補正することによって達成される。すなわち、前述したように、画素データは、最終的には、用紙上に形成されるドットの大きさに関する2ビットの画素データとなるが、この2ビットの画素データを変更することによって、このデータに基づいて印刷されたラスタラインの巨視的な濃度を変化させる。
(1)濃度補正の手順
図36は、図26中のステップS140に係るラスタライン毎の濃度補正の手順を示すフローチャートである。このフローチャートを参照し当該濃度補正の手順について説明する。
ステップS141:先ず、ユーザは、購入したプリンタ1を、ユーザのコンピュータ1100に通信可能に接続し、図1で説明した印刷システムの状態に設定する。そして、コンピュータ1100内のプリンタドライバ1110のユーザインターフェースの画面から、余白形態モード、画質モード、及び用紙サイズモードをそれぞれ入力する。この入力によって、プリンタドライバ1110は、これらのモード等に関する情報を取得する。ここでは、画質モードとしては「きれい」が、また余白形態モードとしては「縁無し」が、更には用紙サイズモードとしては前記「第1サイズ」が入力されたものとして説明する。
ステップS142:次に、プリンタドライバ1110は、前記アプリケーションプログラム1104から出力されたRGB画像データに対して、解像度変換処理を実行する。すなわち、RGB画像データの解像度を前記画質モードに対応する印刷解像度に変換し、更には、前記RGB画像データに対して適宜トリミング処理等の加工を施すことにより、RGB画像データにおける画素数が、前記用紙サイズ及び余白形態モードに対応する印刷領域のドット数に一致するように調整する。
図37は、解像度変換処理後のRGB画像データに係る画素データの配列を示す概念図である。図中の四角の升目は、それぞれに720×720dpiのサイズの画素を示しており、各画素は画素データを有している。ここでは、画質モードに「きれい」が入力されたため、RGB画像データの解像度は720×720dpiに変換されている。また、用紙サイズモードには「第1サイズ」が、また余白形態モードには「縁無し」が入力されたため、その印刷領域は搬送方向に121・Dの大きさであり、これに対応させるべく、RGB画像データは、その搬送方向の画素数が121画素に加工されている。すなわち、RGB画像データは、ラスタライン方向に沿う複数の画素データから構成される画素データ行を、121行だけ有する状態に加工されている。
なお、各画素データ行は、前記画像の印刷領域r1〜r121における各ラスタラインを形成するためのデータである。すなわち、1行目の画素データ行は、印刷領域r1〜r121の最上端の第1ラスタラインr1のデータであり、また2行目の画素データ行は、第2ラスタラインr2のデータである。以降、各画素データ行は各ラスタラインに順次対応し、最終行である121行目の画素データ行は、印刷領域r1〜r121の最下端の第121ラスタラインr121のデータである。
ステップS143:次に、プリンタドライバ1110は、前述の色変換処理を実行して、前記RGB画像データを、CMYK画像データに変換する。このCMYK画像データは、前述したように、C画像データ、M画像データ、Y画像データ、及びK画像データを備えており、これらC,M,Y,K画像データは、それぞれに、前述と同様の121行の画素データ行から構成される。
ステップS144:次に、プリンタドライバ1110は、ハーフトーン処理を実行する。このハーフトーン処理は、C,M,Y,K画像データ中の各画素データが示す256段階の階調値を、4段階の階調値に変換する処理である。なお、この4段階の階調値の画素データは、「ドットの形成なし」、「小ドットの形成」、「中ドットの形成」、及び「大ドットの形成」を示す2ビットデータである。
そして、この第2の参考例にあっては、このハーフトーン処理において、前述のラスタライン毎の濃度補正を実行する。すなわち、各画像データを構成する各画素データを、256段階から4段階の階調値に変換する際に、前記補正値分だけ補正しながら変換する。なお、この濃度補正は、各インク色の補正値テーブルに基づいて、C,M,Y,K画像データのそれぞれに対して行われるが、ここでは、これら画像データを代表してブラック(K)に係るK画像データについて説明する。また、前述の色変換処理においては画素データの配列は変化しないため、以下の説明では、前記図37を、K画像データの画素データの配列を示す図としても使用する。
先ず、プリンタドライバ1110は、前記余白形態モード及び前記画質モードをキーとして前記第1対照テーブル(図19)を参照し、対応する印刷モードを取得する。そして、この印刷モードをキーとして前記第2対照テーブル(図20)を参照し、この画像の本印刷時に用いられる処理モードを特定する。
そして、この特定された処理モードが単数の場合には、その処理モード用の補正値テーブルを用いて、K画像データ中の画素データ行を補正する。
一方、この特定された処理モードが複数有る場合には、前記用紙サイズモードに基づいて、各処理モードによって印刷される領域をそれぞれ特定する。そして、各処理モードの補正値テーブルを用いて、各処理モードによって印刷される領域に対応する画像データ列を補正する。
なお、各処理モードによって印刷される領域に関する情報は、領域判定テーブルに記録されている。この領域判定テーブルは、コンピュータ1100内の前記メモリに記憶されており、プリンタドライバ1110は、この領域判定テーブルを参照して、各処理モードによって印刷される領域を特定する。
例えば、図21Aに示すように、第1上端処理モードによって印刷される上端単独領域及び上端中間混在領域は、前述したように固定値の8パスで形成されるため、当該領域は、印刷領域の最上端から下端側に40本分のラスタラインであることが予めわかっている。従って、前記領域判定テーブルには、第1上端処理モードに対応付けて、「印刷領域の最上端から40番目のラスタラインまでの領域」と記録されている。
同様に、図21Bに示すように、第1下端処理モードによって印刷される中間下端混在領域及び下端単独領域は、前述したように固定値の8パスで形成されるため、当該領域は、印刷領域の最下端から上端側に36本分のラスタラインであると予めわかっている。従って、前記領域判定テーブルには、第1下端処理モードに対応付けて、「印刷領域の最下端から上端側に36番目のラスタラインまでの領域」と記録されている。
また、図21A及び図21Bに示すように、第1中間処理モードのみによって印刷される中間単独領域は、前述の第1上端処理モードによって印刷される領域の下端側に続く領域であるとともに、前述の第1下端処理モードによって印刷される領域の上端側に続く領域である。このため、当該中間単独領域は、印刷領域の最上端から下端側に41番目のラスタラインと、印刷領域の最下端から上端側に37番目のラスタラインとで挟まれた領域であると予めわかっている。従って、前記領域判定テーブルには、第1中間処理モードに対応付けて、「印刷領域の最上端から下端側に41番目のラスタラインと、印刷領域の最下端から上端側に37番目のラスタラインとで挟まれた領域」と記録されている。
この例では、「縁無し」及び「きれい」であるため、図19及び図20に示す第1及び第2対照テーブルを参照し、印刷モードは「第1印刷モード」であると特定され、また、これに対応する本印刷時の処理モードは、第1上端処理モード、第1中間処理モード、及び第1下端処理モードの3つであると特定される。
また、用紙サイズモードは「第1サイズ」であるため、本印刷時の印刷領域は搬送方向に121・Dであるが、上述のように、特定された処理モードが3つであるので、各処理モードによって印刷される領域を、前記領域判定テーブルを参照して特定し、各領域に対応する画素データ行を補正する。
例えば、第1上端処理モードによって印刷される上端単独領域及び上端中間混在領域は、領域判定テーブルに基づいて、印刷領域r1〜r121における領域r1〜r40であると特定される。そして、この領域r1〜r40の各ラスタラインのデータは、K画像データ中における第1行目から第40行目までの各画素データ行である。一方、前記上端単独領域及び上端中間混在領域に対応する補正値は、第1上端処理モード用の補正値テーブルにおける第1〜第40レコードの各レコードに記録されている。従って、前記第1行目〜第40行目の各画素データ行に、第1上端処理モード用の補正値テーブルの第1から第40レコードまでの各補正値を順番に対応つけながら、各画素データ行を構成する画素データを補正する。
同様に、第1下端処理モードによって印刷される中間下端混在領域及び下端単独領域は、領域判定テーブルに基づいて、印刷領域r1〜r121における領域r86〜r121であると特定される。そして、この領域r86〜r121の各ラスタラインのデータは、K画像データ中における第86行目から第121行目までの各画素データ行である。一方、前記中間下端混在領域及び下端単独領域に対応する補正値は、第1下端処理モード用の補正値テーブルにおける第1〜第36レコードの各レコードに記録されている。従って、前記第1行目から第36行目までの各画素データ行に、第1下端処理モード用の補正値テーブルの第1〜第36レコードの各補正値を順番に対応つけながら、各画素データ行を構成する画素データを補正する。
また、第1中間処理モードのみによって印刷される中間単独領域は、領域判定テーブルに基づいて、印刷領域r1〜r121における領域r41〜r85であると特定される。そして、この領域r41〜r85の各ラスタラインのデータは、K画像データ中における第41行目から第85行目までの各画素データ行である。一方、前記中間単独領域に対応する補正値は、第1中間処理モード用の補正値テーブルにおける第1〜第45レコードの各レコードに記録されている。従って、前記第41行目から第85行目までの各画素データ行に、第1中間処理モード用の補正値テーブルの第1〜第45レコードの各補正値を順番に対応付けながら、各画素データ行を構成する画素データを補正する。
但し、前述したように、この第1中間処理モードのパス数は、前記第1上端処理モード等のような固定値ではなく、入力される用紙サイズモードに応じて変化するものであり、これに起因して前記中間単独領域に係る画素データ行の行数は変化する。ところが、前記第1中間処理モード用の補正値テーブルには、補正値が、第1レコードから第45レコードまでの45個の固定数しか用意されていないため、画素データ行への対応付けの後半で、補正値が足りなくなるという不具合を生じ得る。
しかし、これに対しては、詳細には後述する、隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせの周期性を利用して対処可能である。簡単に説明すると、図21A及び図21Bの右図に示すように、第1中間処理モードのみで印刷される中間単独領域r41〜r85については、そのラスタラインを形成するノズルの順番が、#2,#4,#6,#1,#3,#5,#7の順番を1サイクルとして、当該サイクルを繰り返すようになっている。そして、このサイクルは、第1中間処理モードのパス数が1パス増加する度に1サイクルだけ増加する。従って、前記対応付けるべき補正値が無い行番号については、この1サイクル分の補正値を用いて補えば良い。すなわち、この1サイクルの補正値に該当する、例えば第1レコードから第7レコードまでの補正値を、補正値が足りない分だけ繰り返して使用すれば良い。
ところで、以上のステップS144の説明においては、前記補正値に基づく画素データの補正方法については具体的に説明していないが、これについては後述する。
ステップS145:次に、プリンタドライバ1110は、ラスタライズ処理を実行する。このラスタライズ処理された印刷データはプリンタ1に出力され、プリンタ1は、印刷データが有する画素データに従って、用紙に画像を本印刷する。なお、この画素データは、前述したように、ラスタライン毎に濃度の補正がなされているので、前記画像の濃度ムラは抑制される。
(2)補正値に基づく画素データの補正方法について
ここで、前記補正値に基づく画素データの補正方法について詳細に説明する。
前述したように、ハーフトーン処理は、256段階の階調値の画素データを、「ドットの形成なし」、「小ドットの形成」、「中ドットの形成」、「大ドットの形成」を示す4段階の階調値の画素データに変換するものである。そして、その変換の際には、前記256段階の階調値を、一旦レベルデータに置き換えてから4段階の階調値に変換する。
そこで、当該第2の参考例にあっては、この変換の際に、このレベルデータを前記補正値分だけ変更することによって前記4段階の階調値の画素データを補正し、これによって「補正値に基づく画素データの補正」を実現している。
なお、図3を用いて既に説明したハーフトーン処理と、第2の参考例に係るハーフトーン処理との相違点は、レベルデータを設定するステップS301,S303,S305の部分であって、これ以外の部分は同じである。従って、以下の説明では、この異なる部分を重点的に説明し、同じ部分の説明は簡単な説明に留める。また、以下の説明は、図3のフローチャート及び図4のドットの生成率テーブルを用いて行う。
先ず、通常のハーフトーン処理と同様に、ステップS300において、プリンタドライバ1110は、K画像データを取得する。なお、この時には、C,M,Y画像データも取得しているが、以下で説明する内容は、何れのC,M,Y画像データについても当てはまるので、これら画像データを代表してK画像データについて説明する。
次に、ステップS301においては、前記生成率テーブルの大ドット用プロファイルLDから、画素データ毎に、その画素データの階調値に応じたレベルデータLVLを読み取る。但し、この読み取る際に、第2の参考例にあっては、その画素データが属する画素データ行に対応付けられた補正値H分だけ階調値をずらしてレベルデータLVLを読み取る。
例えば、当該画素データの階調値がgrであるとともに、その画素データが属する画素データ行が第1行目である場合には、当該画素データ行は、第1上端処理用の補正値テーブルにおける第1レコードの補正値Hが対応付けられている。従って、この補正値Hを前記階調値grに乗算した値Δgr(=gr×H)だけ、前記階調値grをずらしてレベルデータLVLを読み取って、レベルデータLVLは、11dと求められる。
そして、ステップS302では、ディザマトリクス上で前記画素データに対応する画素ブロックの閾値THLよりも、この大ドットのレベルデータLVLが大きいか否かの大小判定を行うが、ここで、このレベルデータLVLは、前記補正値Hに基づいてΔgr(=gr×H)だけ変化している。従って、この変化分だけ、前記大小判定の結果が変化し、これによって、大ドットの形成され易さも変化する結果、前述の「補正値に基づく画素データの補正」が実現されることになる。
なお、このステップ302において、レベルデータLVLが閾値THLよりも大きい場合には、ステップS310に進み、当該画素データには、大ドットを対応付けて記録する。一方、それ以外の場合にはステップS303に進む。
このステップS303においては、前記生成率テーブルの中ドット用プロファイルMDから階調値に応じたレベルデータLVMを読み取るが、この時にも前記ステップS301と同様に、前記補正値H分だけ階調値をずらしてレベルデータLVMを読み取る。
例えば、前記補正値Hを前記階調値grに乗算した値Δgr(=gr×H)だけ、前記階調値grからずらしてレベルデータLVMを読み取って、レベルデータLVMは、12dと求められる。そして、ステップS304において、ディザマトリクス上で前記画素データに対応する画素ブロックの閾値THMよりも、この中ドットのレベルデータLVMが大きいか否かの大小判定を行うが、ここで、このレベルデータLVMは、前記補正値Hに基づいてΔgr分だけ変化している。従って、この変化分だけ、前記大小判定の結果が変化し、これによって、中ドットの形成され易さも変化する結果、前述の「補正値に基づく画素データの補正」が実現されることになる。
なお、このステップ304において、レベルデータLVMが閾値THMよりも大きい場合には、ステップS309に進み、当該画素データには、中ドットを対応付けて記録する。一方、それ以外の場合にはステップS305に進む。
このステップS305においては、前記生成率テーブルの小ドット用プロファイルSDから階調値に応じたレベルデータLVSを読み取るが、この時にも前記ステップS301と同様に、前記補正値H分だけ階調値をずらしてレベルデータLVSを読み取る。
例えば、前記補正値Hを前記階調値grに乗算した値Δgr(=gr×H)だけ、前記階調値grからずらしてレベルデータLVSを読み取って、レベルデータLVSは、13dと求められる。そして、ステップS306において、ディザマトリクス上で前記画素データに対応する画素ブロックの閾値THSよりも、この小ドットのレベルデータLVSが大きいか否かの大小判定を行うが、ここで、このレベルデータVLSは、前記補正値Hに基づいてΔgrだけ変化している。このため、この変化分だけ、前記大小判定の結果が変化し、これによって、小ドットの形成され易さも変化する結果、前述の「補正値に基づく画素データの補正」が実現されることになる。
なお、このステップ306において、レベルデータLVSが閾値THSよりも大きい場合には、ステップS308に進み、当該画素データには、小ドットを対応付けて記録する。一方、それ以外の場合にはステップS307に進んで、当該画素データには、ドット無しを対応付けて記録する。
(3)第2印刷モードが設定された場合の「濃度補正の手順」について
「(1)濃度補正の手順」の説明では、第1印刷モードが設定された場合を例にしたが、ここでは、第2印刷モードが設定された場合について説明する。
これは、ユーザが、プリンタドライバ1110のインターフェースにおいて、余白形態モードとして「縁有り」を、また画質モードとして「きれい」を入力した場合である。そして、プリンタ1は、図19に示す第1中間処理モードのみで印刷を実行し、用紙は720×720dpiの印刷解像度での縁有りに印刷される。
ステップS141:先ず、プリンタドライバ1110のユーザインターフェースからの入力によって、プリンタドライバ1110は、画質モードとしては「きれい」を、また余白形態モードとして「縁有り」を、更には用紙サイズモードとして「第1サイズ」を取得する。
ステップS142:次に、プリンタドライバ1110は、解像度変換処理を実行する。図38は、解像度変換処理後のRGB画像データに係る画素データの配列を示す概念図である。前記「きれい」に従って、RGB画像データの解像度は720×720dpiに変換されている。また、前記「第1サイズ」及び「縁有り」の印刷領域r1〜r101は搬送方向に101・Dの大きさであるため、これに対応させるべく、前記RGB画像データは、101行の画素データ行に加工されている。
ステップS143:次に、プリンタドライバ1110は、色変換処理を実行し、前記RGB画像データを、CMYK画像データに変換する。以下では、前述と同様にCMYK画像データを代表してK画像データについて説明する。なお、このK画像データは、前記RGB画像データと同じく101行の画素データ行を有する。
ステップS144:次に、プリンタドライバ1110は、ハーフトーン処理を実行する。前述の例と同様に、このハーフトーン処理において、ラスタライン毎の濃度補正を実行する。以下では、前述の図38を、K画像データの画素配列を示す図として用いて説明する。
先ず、プリンタドライバ1110は、前記「縁有り」及び「きれい」をキーとして前記第1対照テーブル(図19)を参照して、対応する印刷モードが第2印刷モードであると特定する。そして、この第2印刷モードをキーとして前記第2対照テーブル(図20)を参照し、この画像の本印刷時に用いられる処理モードが、第1中間処理モードのみであると特定する。すなわち、この場合には、印刷領域の全域に亘って中間単独領域であると特定される。このために、前記領域判定テーブルを参照して、処理モードによって印刷される領域を特定する必要は無く、もって、印刷領域の全領域のデータであるK画像データの全ての画素データ行を、前記中間単独領域に対応する補正値が記録されている前記第1中間処理モード用の補正値テーブル(図35Bを参照)を用いて補正する。
すなわち、図38に示す第1行目から第101行目までの各画素データ行に、それぞれ、前記補正値テーブルの第1レコードから第45レコードまでの補正値を対応付けながら各画素データ行の画素データを補正する。
但し、前述したように、第1中間処理モード用の補正値テーブルには、補正値が、第1レコードから第45レコードまでの45個の固定数しか用意されていないため、この中間単独領域の大きさによっては、画素データ行への対応付けの後半で、補正値が足りなくなるという不具合を生じ得る。例えば、図38に示すK画像データは、101行の画素データ行を有するために、この場合には56行(=101―45)分の補正値が足りなくなる。しかし、これに対しては、前述したように、隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせの周期性を利用して、第1レコードから第7レコードまでの補正値を、補正値が足りない分だけ繰り返して使用して対処すれば良い。
ステップS145:次に、プリンタドライバ1110は、ラスタライズ処理を実行する。このラスタライズ処理された印刷データはプリンタ1に出力され、プリンタ1は、印刷データが有する画素データに従って、用紙に画像を本印刷する。なお、この画素データは、前述したように、ラスタライン毎に濃度の補正がなされているので、前記画像の濃度ムラは抑制される。
===第2の参考例の濃度の補正値に関する問題点について===
前述の第2の参考例に係るプリンタ1は、そのメモリ63に、全ラスタラインのそれぞれに対応させて補正値を記憶していた。しかし、これらラスタラインの本数は非常に多く、これに伴って前記メモリ63に記憶すべき補正値の数も必然的に多くなる。
例えば、第2の参考例では、説明の都合上、図21A及び図21Bに示す中間単独領域r41〜r85を45本のラスタラインから構成されるものとして扱ったが、実際には当該中間単独領域は用紙サイズモードに応じてその大きさを変えるものであり、一例としてのA4サイズであれば、数千本から数万本という膨大な数のラスタラインから構成される。具体的に言えば、搬送方向に関する中間単独領域の大きさが290mmで同方向の印刷解像度が720dpiの場合には、ラスタラインの本数は8220本(=720dpi/(25.4mm/inch)×290mm)となる結果、8220個という膨大な数の補正値を記憶しなければならない。そして、その場合、前記メモリ63のサイズを大容量にしなければならず、プリンタ1のコストアップは必至である。
そこで、以下で説明する本発明に係るプリンタ1にあっては、例えば前記中間単独領域を形成する第1中間処理モードのように、ラスタラインを形成するノズルが前記搬送方向に関して周期的に変化するような処理モードの場合には、その周期性を利用することによって、記憶すべき補正値の数を減らすようにしている。すなわち、その1周期において形成されるラスタライン数の整数倍のライン数を1セットとし、少なくとも1セット分の補正値を前記メモリ63に記憶し、これら記憶すべき補正値の数を減らしている。そして、画像を本印刷する際の濃度補正においては、前記1セットの補正値を、印刷対象の画像の各ラスタラインに順番に繰り返し対応させて用い、これによって小容量のメモリ63で対処可能にしている。
===本発明に係る濃度の補正値及びこの補正値を用いた濃度補正について===
以下では、前記メモリ63に記憶した1セットの補正値を用いて濃度補正を実行するプリンタ1について、幾つかの実施形態を例示しながら説明する。なお、以下の実施形態は、基本的には前述の第2の参考例に係るプリンタ1を前提構成とし、その構成及び濃度補正の方法は概ね同じである。よって、その相違点について主に説明し、同じ部分については、本発明の理解に必要な場合についてのみ説明する。
<第1実施形態>
この第1実施形態では、前記ラスタラインを形成するノズルの変化の周期性を利用して、前述の第1中間処理モードに係る補正値を減らしている。すなわち、図39A乃至図39Cに当該第1実施形態に係る各補正値テーブルを示すが、図39Bの第1中間処理モード用の補正値テーブルについては、第1レコードから第7レコードまでの範囲に7つの補正値しか記録されていない。そして、これを、図33Bに示す第2の参考例の第1中間処理モード用の補正値テーブルと見比べれば、補正値の数が、第2の参考例の45個(実際のA4サイズでは数千個から数万個)から7個へと大幅に削減されているのがわかる。
なお、第1上端処理モード及び第1下端処理モードに係る補正値を、前記周期性を利用した削減の対象としていないのは、前述したように補正値の必要数が、それぞれに40個及び36個の固定値であって、前記第1中間処理モードのように数千個から数万個になる可能性が無いためである。
ここで、これら7つの補正値で前記中間単独領域r41〜r85の濃度補正に対処可能な理由について説明する。
先ず、前述のラスタラインを形成するノズルの変化の周期性に注目して図21A及び図21Bを参照してみると、第1中間処理モードのみで形成される中間単独領域r41〜r85については、そのラスタラインを形成するノズルの順番が、搬送方向に関して#2,#4,#6,#1,#3,#5,#7を1周期とするサイクルとなっており、すなわち、中間単独領域r41〜r85に亘って前記サイクルを搬送方向に6回半だけ繰り返すようになっている。
一方、前述の濃度ムラは、主に隣り合うラスタライン同士の間隔が搬送方向に変化していることに基づいて生じており、また、この間隔の状態は、前述したように隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせによって決まる。つまり、前記ノズルの組み合わせが同じであれば、基本的には同じ濃度ムラが生じ得て、この同じ濃度ムラを抑制するのであれば補正値も同じものが適用可能なはずである。よって、ラスタラインを形成するノズルが搬送方向に周期的に変化している場合には、その単位周期である前記サイクルの補正値を、印刷対象の画像の各ラスタラインに順番に繰り返し対応させて用いて濃度補正を実行可能と考えられる。そして、このようなことから、当該第1実施形態のプリンタ1は、図39Bに示すように、前記サイクルを1セットとする7つの補正値をメモリ63に記憶するとともに、図26中のステップS140において画像を本印刷する際には、前記1セットの補正値を順番に繰り返し前記画像の各ラスタラインに対応させて濃度補正を行うことによって、前記第2の参考例と同等の濃度補正を達成するようになっている。
なお、ここで、前記1セットの補正値を繰り返し用いて行われる濃度補正のやり方について捕捉説明する。この濃度補正は、第2の参考例と同じく図36のステップS144のハーフトーン処理において実行される。この時の処理対象のCMYK画像データを代表して、図37にK画像データにおける画素データの配列を示すが、このK画像データ中の第41行目から第85行目までの各画素データ行が、第1中間処理モードのみにて印刷される中間単独領域のデータに対応している。従って、前記濃度補正は、これら画素データ行の行番号の若い順に、前記7つの補正値を順番に対応させて、各画素データ行が有する画素データを補正することによって行われる。詳細には、第41行目の画素データ行は、前記第1中間処理モード用の補正値テーブル(図39B)における第1レコードの補正値によって補正され、その次の第42行目の画素データ行は、第2レコードの補正値によって補正され、以降第43行目から第47行目までの画素データ行に対して、それぞれに第3レコードから第7レコードまでの各補正値を順次対応させてそれぞれの画素データ行が補正され、1セットたる7行分の画素データ行の濃度補正が終了する。そして、このような1セット分の濃度補正を、残る48行目から85行目までの画素データ行に対して繰り返し行って濃度補正が完了する。
ところで、前記1セット分の補正値は、第2の参考例と同様に、補正用パターンCPの濃度をラスタライン毎に測定することによって取得される。
図40に、用紙に印刷された第1実施形態に係る補正用パターンCPを示す。なお、以下では、CMYKの各インク色の補正用パターンCPc,CPm,CPy,CPkを代表して、ブラック(K)の補正用パターンCPkについてのみ説明するが、他のインク色についても同様である。
また、図41A及び図41Bには、前記補正用パターンCPkに係る第1上端補正用パターンCP1、第1中間補正用パターンCP12、及び第1下端補正用パターンCP3を構成するラスタラインが、何れのノズルによって形成されるかを示している。なお、これら図41A及び図41Bの様式は、前述の図29A及び図29Bと同じである。すなわち、左図には、各処理モードでの各パス目における用紙に対するノズル列の相対位置を示しており、このノズル列において、黒塗りで示すノズルがインクを吐出するノズルであり、白抜きで示すノズルがインクを吐出しないノズルである。また、右図には、各補正用パターンCP1,CP12,CP3を構成する各ラスタラインの各画素に向けてインクを吐出してドットが形成される様子を示しており、各升目中に記入された番号は、その画素に向けてインクを吐出するノズル番号を示しており、番号の記入されていない升目は、インクが吐出されない画素を示している。
図40に示すように、ブラック(K)の補正用パターンCPkにおける第1中間補正用パターンCP12は、図28に示した第2の参考例の第1中間補正用パターンCP2と同様に、第1上端補正用パターンCP1と第1下端補正用パターンCP3との間に位置されつつ、前記第1上端補正用パターンCP1の下端に連続して形成されている。
但し、この第1実施形態に係る補正用パターンCP12は、略1周期分の8本のラスタラインから構成されているために、前記第1下端補正用パターンCP3との間には、補正用パターンCPが形成されない空白領域BLが存在している。詳細には、図41の右図に示すように、この補正用パターンCP12は、搬送方向に連続して並ぶ8本のラスタラインr41,r42,…r48から構成されており、各ラスタラインはそれぞれに、#2,#4,#6,#1,#3,#5,#7,#2の各ノズルによって形成され、もって、これらのノズルの順番は、前述したサイクルと同じになっている。
そして、このうちのラスタラインr41,r42,…r47の濃度は、図27のステップS122において前記スキャナ装置100により測定され、各測定値は、第1中間処理モード用の記録テーブルに記録される。そして、ステップS123では、前記測定値に基づいてそれぞれに補正値が求められ、これによって7個の補正値が前記補正値テーブル記録される。詳細には、ノズル#2で形成されたラスタラインr41の濃度の測定値に基づいて求められた補正値は、図39Bの第1中間処理モード用の補正値テーブルの第1レコードに記録され、以下、#4,#6,#1,#3,#5,#7の各ノズルによってそれぞれ形成された各ラスタラインr42,r43,r44,r45,r46,r47の濃度の測定値に基づいて求められた補正値は、第2レコードから第7レコードまでの各レコードに順次記録される。
なお、この第1実施形態にあっては、前記1セットの補正値が7個であるにも拘わらず、前記第1中間補正用パターンCP12は、前記1セットに対応する7本のラスタラインr41,r42,r43,r44,r45,r46,r47に加えて、その次の周期目のノズル#2により形成されるラスタラインr48を余分に含んでいるが、これは、前記1セットのノズル7により形成されるラスタラインr47の濃度は、その搬送方向の前後に隣り合うラスタラインr46,r48との間隔の影響を受けて測定されるためである。よって、このラスタラインr48を含む前記補正用パターンCP12によれば、第7レコードに格納される補正値を、より正確に求めることができる。
ここで、図41A及び図41Bを参照して、第1実施形態に係る第1中間補正用パターンCP12を備えた補正用パターンCPkの形成過程を説明する。なお、この補正用パターンCPkは、前述の第2の参考例と同じく、図27のステップS121によって形成される。
図29A及び図29Bと、図41A及び図41Bとの対比から明らかなように、前述の第2の参考例の補正用パターンCPkに対する当該第1実施形態の補正用パターンCPkの相違点は、第2の参考例の第1中間補正用パターンCP2における前記領域r49〜r85が、ラスタラインの形成されない空白領域BLとなっていることである。
従って、第2の参考例で説明した補正用パターンCPkを形成するための印刷動作に対して、前記領域r49〜r85にラスタラインを形成しないような動作を加えれば、第1実施形態に係る補正用パターンCPkを形成する印刷動作となる。
すなわち、前記空白領域BLたる領域r49〜r85を担当するパス目のノズルは、第1中間処理モードの2パス目のノズル#6〜#7、3パス目のノズル#4〜#7、4パス目のノズル#3〜#7、5パス目及び6パス目の全ノズル、7パス目のノズル#1〜#6、8パス目のノズル#1〜#4、9パス目のノズル#1〜#2である。従って、これらのパス目のノズルではインクを吐出しないようにしつつ、これ以外のパス目のノズルについては、第2の参考例の補正用パターンCPkと同じ印刷動作を行うことによって、当該第1実施形態に係る補正用パターンCPkが形成される。
<第2実施形態>
図42A乃至図42Cに、第2実施形態に係る各補正値テーブルを示す。前述の第1実施形態では、図39Bに示すように、1周期たる7個の補正値を1セットとして繰り返し使用し濃度補正を行ったが、当該第2実施形態では、図41Bに示すように2周期たる14個の補正値を1セットとして繰り返し使用する点で相違する。そして、このような第2実施形態は、所謂双方向印刷の場合に、すなわち、キャリッジ移動方向の往路と復路との両方でドット形成動作を行う場合に、特に有効に濃度ムラを抑制可能となる。
この理由は、双方向印刷の場合には、前記隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせ以外に、そのラスタラインを往路及び復路の何れで形成するのかということが、隣り合うラスタラインとの間隔に影響し、これに伴って、これら往路及び復路を加味した前記間隔の変化の周期性は、前記1周期の二倍となって顕れるからである。これについては後述する。
ちなみに、この往路と復路とで互いに前記間隔が異なってしまう要因としては、例えば、図43に示すように、往路と復路とで、キャリッジ移動方向に関して前記ヘッド41の傾く方向が相違すること等が挙げられる。そして、その場合には、復路において、往路と同じノズルを用いて同じ目標位置にラスタラインを形成しようとしても、前記傾きの相違に起因して、搬送方向に関してずれた位置にラスタラインは形成されてしまい、これによって、隣り合うラスタラインとの間隔が同じにならなくなる。
ここで、図44を参照しつつ、ラスタラインが往路及び復路の何れで形成されたかを加味した場合の、前記ノズルの変化の周期性を検討してみる。なお、図44は、この双方向印刷によって画像が形成される様子の説明図であって、前述の図21A及び図21Bと同じ様式で示すとともに、前記中間単独領域r41〜r85の一部を取り出して示している。すなわち、左図には、各パス目における用紙に対するノズル列の相対位置を示しており、右図には、各ラスタラインを構成する画素に形成されるドットの様子を示している。なお、右図の升目は画素を示しており、各升目中の「往」及び「復」の文字は、往路及び復路の何れにてドットが形成されたのかを示し、また、その横の番号はドットを形成するノズル番号を示している。
左図を参照してわかるように、第1中間処理モードの各パス目にてインクを吐出するノズル、及び各パス目の合間でなされる搬送動作の搬送量は、前述の第1実施形態と同じである。従って、右図に示すように、隣り合うラスタラインを形成するノズルの組み合わせは、前記第1実施形態と全く同じであり、#2,#4,#6,#1,#3,#5,#7を1周期とするサイクルを搬送方向に亘って繰り返している。
但し、左図に示すように、この第2実施形態は双方向印刷であるが故に、各パス目は、往方向及び復方向への移動を交互に繰り返すようになっている。例えば、左図に示すように、第1中間処理モードの1パス目や3パス目といった奇数のパス目は往路であり、2パス目や4パス目といった偶数のパス目は復路である。そして、これに起因して、右図に示す中間単独領域r41〜r85における奇数周期目のサイクルと偶数周期目のサイクルとでは、互いに同じノズルで形成される一対のラスタラインに関して、往路及び復路の組み合わせが逆になっている。例えば、1周期目のサイクルにおける最初のラスタラインr41と、2周期目のサイクルにおける最初のラスタラインr48とは、共にノズル#2により形成されているが、前者は往路にて形成されているのに対し、後者はその逆の復路で形成されており、互いに逆となっている。そして、この逆転の関係は、互いのサイクルにおける最後のラスタラインr47,r53まで続いている。
すなわち、1周期目のサイクルと2周期目のサイクルとは、前記ノズルの組み合わせに関しては互いに同じであるが、往路及び復路の組み合わせの点で異なっている。このため、これらサイクルは、ラスタラインの間隔の状態が互いに相違する可能性があり、もって、互いに異なるサイクルと考えるのが妥当である。そして、これに基づいて前記往路及び復路の組み合わせまで加味して周期性を考えた場合には、奇数周期目のサイクルとその隣に続く偶数周期目のサイクルとを合わせて1セットとすべきであり、このようなことから、当該双方向印刷の第2実施形態では、図42Bの補正値テーブルに示すように、互いに隣り合う2周期分の14個の補正値を1セットとして使用しているのである。
ここで、図45A及び図45Bを参照しつつ、この第2実施形態の補正用パターンCPkについて説明する。なお、図45A及び図45Bは、図41A及び図41Bと同じ様式で示しているが、右図の画素を示す各格子中では、「往」及び「復」の文字によって、往路及び復路の何れにてドットが形成されたのかを示し、また、その横の番号によって、ドットを形成するノズル番号を示している。
上述してきたように、この第2実施形態は、第1中間処理モード用の1セットの補正値の数が2周期分の14個になっている点で前記第1実施形態と相違しており、これに伴って、当該第2実施形態に係る第1中間補正用パターンCP22は、14個の補正値を取得可能なように、略2周期分の15本のラスタラインから構成されている点で主に相違する。よって、以下ではこの相違点について主に説明し、それ以外の点については、第1実施形態の補正用パターンCPと同じであるため説明しない。
図45A及び図45Bに示すように、ブラック(K)の補正用パターンCPkにおける第1中間補正用パターンCP22は、第1実施形態と同様に、第1上端補正用パターンCP1の下端に連続されつつ、第1下端補正用パターンCP3との間に空白領域BLを隔てて形成されている。
但し、この第2実施形態は双方向印刷であるが故に、この第2実施形態に係る各補正用パターンCP1,CP22,CP3は、第1上端処理モード、第1中間処理モード、及び第1下端処理モードにおける各パスが往路及び復路を交互に繰り返すことによって形成されている。このうちの第1中間補正用パターンCP22からは、前記2周期を1セットとする14個の補正値を求める必要があるために、これら1セットに対応させて、前記第1中間補正用パターンCP22は、搬送方向に連続して並ぶ15本のラスタラインr41,r42,…r55から構成されている。なお、ラスタラインr55を形成して、前記14個の補正値に必要な14本よりも一本多めな15本にしている理由は、前述の第1実施形態でラスタラインr48を形成した理由と同じである。
そして、このうちのラスタラインr41,r42,…r54は、その濃度を前記スキャナ装置100で測定され、各測定値は、第1中間処理モード用の記録テーブルに記録される。そして、前記各測定値に基づいてそれぞれに補正値が求められ、これによって14個の補正値が前記補正値テーブルに記録される。詳細には、ラスタラインr41の濃度の測定値に基づいて求められた補正値は、図42Bの第1中間処理モード用の補正値テーブルの第1レコードに記録され、以下、各ラスタラインr42,r43,…r54の濃度の測定値に基づいて求められた補正値は、第2レコードから第14レコードまでの各レコードに順次記録される。
図46A及び図46Bに、第2実施形態に係る第1中間補正用パターンCPの変形例を示す。前記第2実施形態の第1中間補正用パターンCP22は、略1セット分たる15本のラスタラインr41,r42,…r55から構成されていたところ、この変形例の第1中間補正用パターンCP32は、略2セット分たる29本のラスタラインr41,r42,…r68から構成されている点で相違する。そして、この変形例によれば、前記略2セット分のラスタラインに基づいて1セット分の補正値を平均化して求めることができるため、前記1セットの各補正値の精度を高めることができる。
すなわち、図46Aに示すように、第1中間補正用パターンCP32における領域r41〜r54には1セット目の14本のラスタラインが、またこれに続く領域r55〜r67には2セット目の14本のラスタラインが形成されており、つまり2セット分のラスタラインが形成されている。そして、1セット目と2セット目とは、各セット目の上から数えた番号が同じラスタライン同士が互いに対応しており、この対応するラスタライン同士は、前記往路及び復路の組み合わせと、前記ノズルの組み合わせとの関係が同じになっている。
従って、この補正用パターンCP32によれば、1セット目と2セット目とで互いに対応するラスタライン同士の濃度の測定値を平均し、当該平均値に基づいて各ラスタラインに係る補正値を求めることが可能となり、これによって前記1セット分たる14個の補正値の精度を高めることができる。
なお、このように平均化するのが望ましい理由は、次のとおりである。図46Aに示すように、例えば1セット目のラスタラインr41と、そこから1セットだけ離れた2セット目のラスタラインr55とは、共に、往路のノズル#2によって形成され、かつ隣りのラスタラインを形成するノズルの組み合わせも同じである。従って、理論的には同じ濃度の測定値が得られるはずである。しかしながら、補正用パターンCP32を印刷する際には、前記搬送ローラ23の偏心等に起因してその搬送量に誤差が生じる虞もあり、これに伴って、譬え前記ノズルの組み合わせ等が同じであってもラスタライン同士の間隔が異なってしまうことがある。そして、その場合には、前記測定値も真値からずれてしまい、一つの濃度の測定値では正確な補正値を求めることができない。
そこで、この変形例にあっては、1セット目の各ラスタラインの測定値と、前記各ラスタラインに対応する2セット目の各ラスタラインの測定値とをそれぞれに平均して、各ラスタラインの補正値を求めるようにしているのである。なお、このセット数は前記2セットに限るものではなく、前記平均化による精度向上の観点からは多い方が望ましい。
また、望ましくは、図46Aに示すように1中間補正用パターンCP32における各セット目の搬送方向の両端のラスタラインのうちの一方に対応させて、前記キャリッジ移動方向に沿う罫線K1,K2,…Knを形成すると良い。これら罫線K1,K2,…Knは、各セット目の境界を示す目印であり、図示例にあっては、各セット目の始端のラスタラインr41,r55,r69をキャリッジ移動方向に延長することによって、前記補正用パターンCP32の脇に3本の罫線K1,K2,K3を形成している。
そして、この罫線K1,K2,K3を用いれば、図30A及び図30Bのスキャナ装置100によって各ラスタラインの濃度を測定する際に、その読取キャリッジ104の濃度の測定位置が、読取キャリッジ104の移動方向に関して誤差を有している場合でも、次のようにして、各ラスタラインに対応する濃度を正確に測定可能となる。
すなわち、前記読取キャリッジ104は、自身の移動方向の位置をエンコーダ等の位置センサのカウント値によって監視しており、このカウント値に基づいて読み取り解像度に基づく測定ピッチで濃度測定を実行している。
例えば、前記読み取り解像度を、前記ラスタラインの印刷解像度と同値に設定した場合には、理論的には、ラスタラインの形成ピッチと測定ピッチとは等しくなる。従って、1セットにおいてなされる測定回数は、1セット分のラスタライン本数と同じ14回となり、各測定値は、それぞれに各ラスタラインに正確に対応し、もって、各ラスタラインに対応する濃度を正確に測定可能なはずである。
しかしながら、前記位置センサが誤差を有している場合には、前記読取キャリッジ104は、前記形成ピッチとは異なる測定ピッチで測定することとなり、例えば、1セットにおいてなされる測定回数が18回になることもあり得る。そして、この場合の各測定値は、前記形成ピッチに基づくラスタラインの形成目標位置からずれた位置の濃度の測定値であり、ラスタラインに対応する濃度を正確に示してはいない。
ここで、図46Aに示す補正用パターンCP32は、例えば罫線K1,K2,K3を有しているので、互いに隣り合う一対の罫線を検知する間に行われた濃度の測定回数と、測定されるべきラスタラインの本数とに基づいて、位置センサの誤差の程度を認識できる。例えば、罫線K1と罫線K2との間の測定回数が前述の18回であったとすると、これに基づいて、前記位置センサが有している誤差は、ラスタラインの形成ピッチに対して測定ピッチが18/14倍だけ大きくなるような誤差であることがわかる。
よって、この一対の罫線K1,K2の間に存在する1セット目のラスタラインの濃度を再測定するとともに、この再測定する際には前記位置センサの出力値を14/18倍に補正する等して測定ピッチを修正すれば、各ラスタラインとの対応を正確にとった濃度測定を行うことができる。
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、主としてプリンタについて記載されているが、その中には、印刷装置、印刷方法、印刷システム等の開示が含まれていることは言うまでもない。
また、一実施形態としてのプリンタ等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<プリンタについて>
前述の実施形態では、プリンタが説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の記録装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
<インクについて>
前述の実施形態は、プリンタの実施形態だったので、染料インク又は顔料インクをノズルから吐出していた。しかし、ノズルから吐出するインクは、このようなインクに限られるものではない。
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していた。しかし、インクを吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
<印刷方式について>
前述の実施形態では、印刷方式としてインターレース方式を例に説明したが、これに限るものではなく、図16A及び図16Bを用いて説明したオーバーラップ方式を用いても良い。すなわち、前述の第1実施形態に係る、ノズルの変化の周期性を利用して補正値を減らす考え方を、このオーバーラップ方式の場合にも適用可能であり、以下では、図47に示す例を用いて、この考え方を適用可能な理由について説明する。
図47は、オーバーラップ方式によるラスタラインの形成過程を示す図であり、図44と同じ様式で示している。このオーバーラップ方式は、前述したように一つのラスタラインを、二つ以上のノズルにより形成する方式である。なお、図47のオーバーラップ方式の条件は、図16A及び図16Bを用いて前に説明した条件と同じであり、すなわち、インク滴を吐出するノズル数N=6、ノズルピッチk・D=4・D、オーバーラップ数M=2、搬送量F(=(N/M)・D)=3・D(一定)となっている。
先ず、図47を参照しながら、このオーバーラップ方式によるラスタラインの形成過程について簡単に説明すると、本実施形態のオーバーラップ数Mは2であるため、各ラスタラインの奇数番目と偶数番目の画素に向けては、互いに異なるパスの異なるノズルからインク滴が吐出され、各ラスタラインは形成される。
例えば、第1ラスタラインRR1は3パス目のノズル♯4及び7パス目のノズル♯1が形成し、第2ラスタラインRR2は2パス目のノズル♯5及び6パス目のノズル♯2が形成し、第3ラスタラインRR3は1パス目のノズル♯6及び5パス目のノズル♯3が形成し、第4ラスタラインRR4は4パス目のノズル♯4及び8パス目のノズル♯1が形成し、連続的なラスタラインが形成される様子を示している。
つまり、第1から第4ラスタラインまでに亘って連続的にラスタラインを形成するためには、前記1パス目から8パス目までの8パスを要し、この8パスを繰り返すことによって、搬送方向に連続的にラスタラインを形成するようになっている。
ここで、この8パスを繰り返すことによって形成されたラスタラインの中で、特にラスタラインRR1,RR2,…RR6に注目すると、第1ラスタラインRR1、及びこの第1ラスタラインRR1から3本離れた第4ラスタラインRR4を形成するノズルの組は、共に#1及び#4となっている。また、第2ラスタラインRR2、及びこの第2ラスタラインRR2から3本離れた第5ラスタラインRR5を形成するノズルの組は、共に#2及び#5となっている。更には、第3ラスタラインRR3、及びこの第3ラスタラインRR3から3本離れた第6ラスタラインRR6を形成するノズルの組は、共に#3及び#6となっている。そして、これらノズルの組の関係は、これに続く第7ラスタラインRR7以降も継続している。
すなわち、一本のラスタラインを形成するノズルの組の順番が、搬送方向に関して、#1及び#4の組、#2及び#5の組、#3及び#6の組を1周期とするサイクルが、搬送方向に亘って繰り返されている。
従って、このオーバーラップ方式に対しても、前記第1実施形態のインターレース方式に対して用いた、ノズルの変化の周期性を利用して補正値を減らす考え方を適用可能であることがわかる。
なお、上述のオーバーラップ方式の例は、搬送量Fを一定にして記録する場合であったが、これに限るものではない。すなわち、一本のラスタラインを形成するノズルの組が、搬送方向に関して周期的に変化するようになっていれば、前述の考え方を適用可能であるのは言うまでもなく、例えば、用紙の搬送量Fが周期的に変化する変則送りを用いて記録する場合にも適用可能である。
図48に、この変則送りの一例を示す。左図に示すように、この変則送りは、その搬送量Fが5D,2D,3D,6Dを1周期とする搬送動作のサイクルを、搬送方向に亘って繰り返すようになっている。そして、各搬送動作の合間の各パスにおいて#1〜#8の全てのノズルを用いてドット形成動作を行い(N=8)、これによって、オーバーラップ数M=2のラスタラインを搬送方向に亘って形成するようになっている。なお、ノズルピッチk・Dは4・Dである。
ここで、一本のラスタラインを形成するノズルの組の搬送方向に関する周期性を検討してみる。前記ノズルの組に注目して右図を参照すると、前記変則送りに基づいて形成された多数のラスタラインは、搬送方向に並ぶ16本のラスタラインを1周期とするサイクルとなっている。
詳細には、このサイクルは、#1及び#5のノズルの組によって形成されたラスタライン、#3及び#7のノズルの組によって形成されたラスタライン、#2及び#6のノズルの組によって形成されたラスタライン、#1及び#5のノズルの組によって形成されたラスタライン、#2及び#6のノズルの組によって形成されたラスタライン、#4及び#8のノズルの組によって形成されたラスタライン、#3及び#7のノズルの組によって形成されたラスタライン、#2及び#6のノズルの組によって形成されたラスタライン、#3及び#7のノズルの組によって形成されたラスタライン、#1及び#5のノズルの組によって形成されたラスタライン、#4及び#8のノズルの組によって形成されたラスタライン、#3及び#7のノズルの組によって形成されたラスタライン、#4及び#8のノズルの組によって形成されたラスタライン、#2及び#6のノズルの組によって形成されたラスタライン、#1及び#5のノズルの組によって形成されたラスタライン、#4及び#8のノズルの組によって形成されたラスタラインから構成されている。
従って、一本のラスタラインを形成するノズルの組の順番は、搬送方向に関して、#1及び#5の組、#3及び#7の組、#2及び#6の組、#1及び#5の組、#2及び#6の組、#4及び#8の組、#3及び#7の組、#2及び#6の組、#3及び#7の組、#1及び#5の組、#4及び#8の組、#3及び#7の組、#4及び#8の組、#2及び#6の組、#1及び#5の組、#4及び#8の組を1周期とするサイクルとなっており、もって、前記ノズルの組の搬送方向に関する周期性を有している。よって、この変則送りに対しても、前述した、ノズルの変化の周期性を利用して補正値を減らす考え方を適用できるのは言うまでもない。
<インクを吐出するキャリッジ移動方向について>
前述の実施形態では、第2実施形態の説明のところでのみ、インクを吐出するキャリッジ移動方向が往路及び復路の双方である旨(双方向印刷)を述べ、これ以外の実施形態においては、前記インクを吐出するキャリッジ移動方向が、前記双方向、及び往路のみの単方向(単方向印刷)の何れであるかについて言及していないが、前記実施形態は、双方向印刷及び単方向印刷の何れでも良い。
<印刷に用いるインク色について>
前述の実施形態では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の4色のインクを用紙S上に吐出してドットを形成する多色印刷を例に説明したが、インク色はこれに限るものではない。例えば、これらインク色に加えて、ライトシアン(薄いシアン、LC)及びライトマゼンタ(薄いマゼンダ、LM)等のインクを用いても良い。
また、逆に、上記4つのインク色のいずれか一つだけを用いて単色印刷を行っても良い。
<その他>
前述の実施形態では、上端処理及び下端処理として、縁無し印刷の場合、すなわち用紙の搬送方向の上端部及び下端部に余白を設けずに印刷する場合を例に説明したが、最も広義な意味としては、単に、前記上端部及び下端部に画像を印刷するために有効な処理の意味である。従って、これら上端処理及び下端処理を用いて、前記上端部及び下端部に余白を設けた縁有り印刷を行っても構わない。なお、その場合には、図22A及び図22Bに示す上端処理及び下端処理を行わない場合と比べて、図21A及び図21Bに示すように、印刷不可領域の縮小化が図れるという作用効果を奏する。
前述の実施形態では、上端処理は、溝部24aと対向するノズル#1〜#3のみを用いて印刷する処理、及びこの処理から中間処理まで移行する間の処理の両者を含んでいるものとして説明したが、最も狭義な意味の上端処理としては、これら2つの処理をそれぞれに上端処理として定義しても良い。
例えば、図21Aに示す縁無し印刷の例において、溝部24aと対向するノズル#1〜#3のみを用いて印刷する前半の4パス(1パス目から4パス目まで)の処理のみを、狭義な意味の上端処理と定義するとともに、当該上端処理から中間処理へと移行すべく、使用ノズル数を#1〜#7へと順次増やして印刷する後半の4パス(5パス目から8パス目まで)の処理を上端移行処理と定義しても良い。
また、縁有り印刷の場合には、前述の前半の4パスの処理を行わずに、後半の4パスの処理である前記上端移行処理のみを行って印刷を開始することが可能であるが、その場合には、当該上端移行処理を、狭義な意味の上端処理と定義しても良い。そして、この上端処理によれば、印刷不可領域の縮小化が図れるという作用効果を奏する。なお、前記上端移行処理を、狭義な意味の上端処理と定義した場合には、図21Aに示す、前述の実施形態の上端処理は、余白を設けずに画像を印刷するための上端処理(前記前半の4パスの処理)と、余白を設けて画像を印刷するための上端処理(前記後半の4パスの処理)の両者を含んでいると捉えることもできる。
上述してきた定義付けを、下端処理についても同様に行えるのは言うまでもない。すなわち、前述の実施形態の下端処理は、溝部24bと対向するノズル#5〜#7のみを用いて印刷する処理、及びこの処理へと中間処理から移行する間の処理の両者を含んでいるものとして説明したが、最も狭義な意味の下端処理としては、これら2つの処理をそれぞれに下端処理として定義しても良い。
例えば、図21Bに示す縁無し印刷の例において、溝部24bと対向するノズル#5〜#7のみを用いて印刷する後半の5パス(4パス目から8パス目まで)の処理のみを、狭義な意味の下端処理と定義するとともに、当該下端処理へと中間処理から移行すべく、使用ノズル数をノズル#1〜#7から順次減らして印刷する前半の3パス(1パス目から3パス目まで)の処理を下端移行処理と定義しても良い。
また、縁有り印刷の場合には、前述の後半の5パスを行わずに、前半の3パスの処理である前記下端移行処理のみを行って印刷を終了することが可能であるが、その場合には、当該下端移行処理を、狭義な意味の下端処理として定義しても良い。そして、この下端処理によれば、印刷不可領域の縮小化が図れるという作用効果を奏する。なお、前記下端移行処理を、狭義な意味の下端処理と定義した場合には、図21Bに示す、前述の実施形態の下端処理は、余白を設けて画像を印刷するための下端処理(前記前半の3パスの処理)と、余白を設けずに画像を印刷するための下端処理(前記後半の5パスの処理)の両者を含んでいると捉えることもできる。
前述の実施形態では、第1上端処理モード、第1中間処理モード、第1下端処理モード、第2上端処理モード、第2中間処理モード、第2下端処理モードの全ての処理モードに対して補正用パターンCPを形成して各補正値テーブルに補正値を記録するようにしたが、これに限るものではない。
例えば、低い印刷解像度で画像を印刷する前記第2上端処理モード、第2中間処理モード、第2下端処理モードについては、補正用パターンCPを形成せずに、すなわち、これらに対応する補正値テーブルに補正値を記録しないようにしても良い。なお、その場合には、対応する補正値が存在しないので、前述の濃度の補正は実行されずに本印刷がなされ、前記補正を実行しない分だけ本印刷を高速で行うことができる。
前述の実施形態では、ハーフトーン処理における画素データの補正方法として、ドットの生成率テーブルには既存のものを使用するとともに、当該生成率テーブルから画素データの階調値に対応するレベルデータを読み出す際に、補正値分だけ階調値をずらしてレベルデータを読み出すようにする方法を説明したが、これに限るものではない。
例えば、予め補正値分だけレベルデータを変更したドットの生成率テーブルを、所定の補正値刻み毎に複数備え、当該生成率テーブルから画素データの階調値に対応するレベルデータを、そのまま読み出すようにして画素データを補正するようにしても良い。そして、この構成によれば、画素データの階調値に対応するレベルデータを、各ドットの生成率テーブルから読み取るだけで良いため、画素データの補正に要する時間の短縮化が図れる。