JP4915038B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、インクの微少液滴を種々の作動原理により飛翔させて、インクジェット記録用紙に付着させ、画像、文字などの記録を行うものであり、高速低騒音、多色化が容易であり、記録のパターンの融通性が大きい、現像、定着が不要である等の特徴がある。
【0003】
インクジェット記録用紙(以下、記録媒体ともいう)としては、紙等のように支持体自身がインク吸収性であるものと支持体の上にインク吸収層を設けたものに大きく区分されるが、前者はインクが支持体中に直接浸透するために高い最高濃度が得られなかったり、支持体自身がインク溶媒を吸収して著しいシワを画像状に発生させるために高画質のプリントは得られない。
【0004】
これに対して、支持体上にインク吸収層を設けたインクジェット記録用紙では、インク溶媒による支持体のシワが発生しにくくなり、高画質のインクジェットプリントが得られる。
【0005】
インク吸収層にはいくつかの種類があるが、空隙を有するインク吸収層(以下、空隙型インク吸収層ともいう)は、空隙にインク溶媒を吸収させることから、インク吸収速度が速くプリント時にムラが生じ難く、プリント直後に表面が見かけ上乾いているというメリットがある。
【0006】
インクの種類については、従来主として染料系インクを使用することが多かった。しかしながら、染料インクを用いた場合、染料分子はほぼ分子状態でインク吸収層中に定着されるが、染料分子によっては水溶性が高いことから十分な定着性を付与することができず、経時で画像に滲みが発生する場合がある。また、染料インクは分子状態で存在することから酸素の影響を受け易く、一般的に光退色が酸素の寄与で著しく加速されることから耐光性が十分でない等の問題がある。
【0007】
一方、顔料インクを使用した場合は、色材は微粒子状態でインク吸収層に定着されるが、元来溶解性が低いために滲みが起き難く、また、酸素も顔料粒子表面からしか作用しないために、色素の退色速度は遅く耐光性が優れている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、空隙型インク吸収層を有する記録媒体に顔料インクで記録した場合は、顔料はインク吸収層表面に凝集した状態で固定され、インク吸収層表面に顔料インクによる凹凸が形成されることから、耐擦過性が低下するという問題を抱えていた。これにより、顔料インクは、染料インク等に比べ画像接着性が悪くなる傾向があった。また、インクの顔料粒径、記録媒体のインク吸収層に形成した空隙径によっては、記録媒体に記録した画像等の濃度が低下してしまうという問題が発生した。また、インクジェット記録方法は、インク吸収速度、耐光性等に優れたプリント品質も要求される。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、耐擦過性に優れ、十分な濃度を有し、プリント品質の高いインクジェット記録方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、技術手段(1)〜(9)項のいずれか1項により達成される。
【0011】
(1) 支持体上に空隙を有するインク吸収層を形成した記録媒体上に、顔料を含有するインクを用いて記録を行うインクジェット記録方法において、前記空隙の平均空隙径と前記顔料の平均粒径が、式Aを満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
A)1.0<平均空隙径/顔料の平均粒径<5.0
(2) 支持体上に空隙を有するインク吸収層を形成した記録媒体上に、顔料を含有するインクを用いて記録を行うインクジェット記録方法において、前記空隙の平均空隙径と前記顔料の平均粒径が、式A’を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
A’)1.0<平均空隙径/顔料の平均粒径<3.0
(3) 前記インクに含有される顔料の平均粒径が50nm〜95nmであることを特徴とする(1)又は(2)に記載のインクジェット記録方法。
【0012】
(4) 前記記録媒体の60°鏡面光沢度が1%〜10%であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0013】
(5) 前記インクのゼータ電位の絶対値が40mV以上200mV未満であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0014】
(6) 前記記録媒体の膜面pHが3<pH<10であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0015】
(7) 前記支持体が非吸水性であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0016】
(8) 前記インクに含有される顔料が式Bを満たすことを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
B)顔料の平均粒径<顔料の最大粒径<3×顔料の平均粒径
(9) 前記インクには、Yインク、Mインク、Cインクを用いることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【0017】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明らは鋭意検討を行った結果、耐擦過性を改良するために、記録媒体の空隙をインク中の顔料の平均粒径よりも大きくすることで、記録媒体の空隙にインク中の顔料を入り込ますことに着眼し、さらに、このときに顔料が空隙に入り込みすぎることによって生じる印字濃度の低下を抑えることのできるインク中の顔料の平均粒径と記録媒体の空隙型インク吸収層に存在する空隙の平均空隙径との関係式(1.0<平均空隙径/顔料の平均粒径<5.0)を見出した。この式を満たすことにより、耐擦過性に優れ、かつ、プリントした画像の濃度の低下を抑えることを可能とすることができる。インクの顔料の平均粒径と、記録媒体の平均空隙径との関係は、より好ましくは、1.0<平均空隙径/顔料の平均粒径<3.0である。これにより、耐擦過性、濃度を一段と向上させることができる。
【0018】
本発明で用いる記録媒体は、支持体と空隙を有するインク吸収層を有する。
本発明の記録媒体に用いられる支持体は、吸水性支持体と非吸水性支持体のいずれも用いることができるが、プリント後にシワの発生が無く、画像状に平滑性に差が生ぜずに高品位のプリントが得られることから非吸水性支持体が好ましい。
【0019】
吸水性支持体としては、特に天然パルプを主体とした紙支持体が代表的であるが合成パルプと天然パルプの混合物であってもよい。
【0020】
非吸水性支持体としてはプラスチック樹脂フィルム支持体、あるいは紙の両面をプラスチック樹脂フィルムで被覆した支持体が挙げられる。
【0021】
プラスチック樹脂フィルム支持体としては、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、セルローストリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルムあるいはこれらの積層したフィルム支持体等が挙げられる。
【0022】
これらのプラスチック樹脂フィルムは透明、または半透明なものも使用できる。
【0023】
本発明で特に好ましい支持体は紙の両面をプラスチック樹脂で被覆した支持体であり、最も好ましいのは紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体である。
【0024】
以下本発明で特に好ましい支持体である紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体について説明する。
【0025】
本発明の支持体に用いられる紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプあるいはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSP及び/またはLDPの比率は10〜70%が好ましい。
【0026】
上記パルプは不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、また漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0027】
紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤等を適宜添加することができる。
【0028】
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500mLが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS P 8207に規定される24メッシュ残分と42メッシュ残分の和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分は20%以下であることが好ましい。
【0029】
紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に70〜200gが好ましい。紙の厚さは50〜210μmが好ましい。
【0030】
紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P 8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS P 8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0031】
紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるのと同様のサイズ剤を使用できる。
【0032】
紙のpHはJIS P 8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0033】
次に、この紙の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
この目的で用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンが挙げられるが、プロピレンを主体とする共重合体等のポリオレフィン類が好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
【0034】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。
紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0035】
特に塗布層側のポリオレフィン層は、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをその中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリオレフィンに対して概ね1〜20%、好ましくは2〜15%である。
【0036】
ポリオレフィン層中には白地の調整を行うための耐熱性の高い顔料や蛍光増白剤を添加することができる。
【0037】
着色顔料としては、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。
【0038】
蛍光増白剤としては、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0039】
紙の表裏のポリエチレンの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、一般にはポリエチレン層の厚さはインク吸収層側で15〜40μm、バック層側で10〜30μmの範囲である。表裏のポリエチレンの比率はインク受容層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整する様に設定されるのが好ましく、通常は表/裏のポリエチレンの比率は厚みで概ね3/1〜1/3である。
【0040】
更に上記ポリエチレンで被覆紙支持体は以下(1)〜(7)の特性を有していることが好ましい。
【0041】
(1)引っ張り強さは、JIS P 8113で規定される強度で縦方向が20N〜300N、横方向が10N〜200Nであることが好ましい。
【0042】
(2)引き裂き強度は、JIS P 8116で規定される強度で縦方向が0.1N〜20N、横方向が2N〜20Nが好ましい。
【0043】
(3)圧縮弾性率は、9.81MPa以上が好ましい。
(4)不透明度は、JIS P 8138に規定された方法で測定したときに80%以上、特に85〜98%が好ましい。
【0044】
(5)白さは、JIS Z 8729で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜95、a*=−3〜+5、b*=−6〜+2であることが好ましい。
【0045】
(6)クラーク剛直度は、記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である支持体が好ましい。
【0046】
(7)原紙中の水分は、中紙に対して4〜10%が好ましい。
次に、本発明に用いられる記録媒体のインク吸収層について説明する。
【0047】
本発明に用いられる記録媒体は支持体上に空隙を有するインク吸収層を有する。
【0048】
空隙型インク吸収層は、主に親水性バインダーと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。従来より、皮膜中に空隙を形成する方法は種々知られており、例えば、二種以上のポリマーを含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマーを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子および親水性または疎水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録用紙を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬し、固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダーに対して、概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及びまたは微粒子油滴と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、固体微粒子の間に空隙を形成する方法等が知られている。
【0049】
上記の目的で使用される無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
【0050】
無機微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは空隙層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0051】
無機微粒子としては、シリカ、及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましい。
【0052】
本発明で用いる記録媒体に用いることのできるシリカとしては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ或いは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられるが、特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカまたは気相法で合成された微粒子シリカが好ましく、中でも気相法により合成された微粒子シリカは、高い空隙率が得られるだけでなく、顔料等の色材を固定化する目的で用いられるカチオン性ポリマーに添加したときに、粗大凝集体が形成されにくいので好ましい。また、アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。
【0053】
無機微粒子は、分散された無機微粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)が、0.1μm〜10μmのものが好ましく、より好ましくは0.2μm〜5.0μm、最も好ましくは0.2μm〜3.0μmである。
【0054】
本発明で用いる記録媒体に用いることのできる親水性バインダー(以下、水溶性樹脂ともいう)としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの親水性バインダーは、二種以上併用することも可能である。
【0055】
本発明で用いる記録媒体に好ましく用いられる親水性バインダーは、ポリビニルアルコールである。
【0056】
ポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0057】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0058】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0059】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0060】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0061】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0062】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0063】
空隙型インク吸収層で用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙層の空隙率、無機顔料の種類、水溶性樹脂の種類に大きく依存するが、一般には、記録用紙1m2当たり、通常5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0064】
また、空隙型インク吸収層に用いられる無機微粒子と親水性バインダーの比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に、3:1〜10:1であることが好ましい。
【0065】
また、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーを含有しても良く、記録媒体1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0066】
空隙型インク吸収層において、空隙の総量(空隙容量)は記録用紙1m2当り20ml以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、印字時のインク量が少ない場合には、インク吸収性は良好であるものの、インク量が多くなるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性の遅れを生じるなどの問題が生じやすい。
【0067】
空隙型インク吸収層の平均空隙径は、水銀圧入法、ガス吸着法等で測定することが可能であるが、本発明では水銀圧入法を用いて空隙型インク吸収層の平均空隙径を求める。
【0068】
空隙型インク吸収層において、固形分容量に対する空隙容量を空隙率という。本発明において、空隙率を50%以上にすることが、不必要に膜厚を厚くさせないで空隙を効率的に形成できるので好ましい。
【0069】
空隙型インク吸収層の他のタイプとして、無機微粒子を用いてインク吸収層を形成させる以外に、ポリウレタン樹脂エマルジョン、これに水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ポリビニルアルコールを併用し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂を併用させた塗工液を用いてインク吸収層を形成させてもよい。この場合のポリウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖を有する粒子径が3.0μmであるポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましく、ポリウレタン樹脂エマルジョンのポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを有するポリオールと脂肪族系イソシアネート化合物とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、分子内にスルホン酸基を有し、さらにエピクロルヒドリンポリアミド樹脂及び水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ビニルアルコールを有することが更に好ましい。上記ポリウレタン樹脂を用いたインク吸収層は、カチオンとアニオンの弱い凝集が形成され、これに伴い、インク溶媒吸収能を有する空隙が形成されて、画像形成できると推定される。
【0070】
カチオン化合物としては第1〜第3級アミノ基及び第4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマーが用いられるが、経時での変色や耐光性の劣化が少ないこと等から、第4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマーが好ましい。
【0071】
好ましいカチオンポリマーは上記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体または縮重合体として得られる。
【0072】
カチオン系化合物の具体例は、例えば、「インクジェットプリンター技術と材料」268頁(株式会社 シーエムシー発行 1998年)に記載されている。
【0073】
上記以外に、例えば、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたは非イオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0074】
本発明に用いられる記録媒体は、インク吸収層表面の60度鏡面光沢度が1%〜10%であることが好ましい。これにより、プリント画像の質感を向上させることができる。尚、本発明における60度鏡面光沢度は、その表面をJIS Z
8741に記載された測定方法で求める。
【0075】
本発明に用いられる記録媒体の膜面pHは3〜10であることが好ましい。これにより、インク中の顔料が凝集を起こしにくくなり、濃度や彩度を向上させることができる。記録媒体の膜面pHはpH調節剤などの公知の各種添加剤を用いて調整することができる。
【0076】
本発明において、記録媒体の膜面pHは、記録媒体のインク吸収層上に純水0.05mlを滴下し、そのpHを測定して求める。
【0077】
本発明に使用されるインクは溶媒中に顔料を含有する。
本発明でいう顔料は、インク溶媒に不溶の色材のことをいい、本発明においては、インク溶媒に不溶の色材である限りは、分散染料、着色樹脂、マイクロカプセルも顔料に含む。
【0078】
顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水分散可能ならばいずれのものも使用可能である。
【0079】
さらに、イエロー顔料の好ましいものとして、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180が挙げられる。
【0080】
マゼンタ顔料の好ましいものとして、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド202が挙げられる。
【0081】
シアン顔料の好ましいものとして、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60が挙げられる。
【0082】
ブラック顔料の好ましいものとしてはカーボンブラックが挙げられる。
グリーン顔料の好ましいものとして、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36が挙げられる。
【0083】
レッド顔料の好ましいものとして、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド224が挙げられる。
【0084】
尚、本発明では、イエロー顔料を含有するインクをYインク、マゼンタ顔料を含有するインクをMインク、シアン顔料を含有するインクをCインクとする。
【0085】
本発明で用いるインクには、色調調整、印字濃度向上等を目的として、複数の顔料を併用したり、染料を添加することができる。この際、異なる色調の色材を混合しても良い。
【0086】
本発明に使用する顔料の平均粒径は50nm〜95nmであることが好ましく、この範囲であることにより、記録媒体に記録した画像に耐光性を持たせ、更に、彩度、透明感を向上させるとともに、インクの保存安定性が向上し、インクジェットのヘッドノズルの目詰まりも防止することができる。
【0087】
顔料の平均粒径測定は光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることが出来るが、本発明では、レーザードップラー法を用いて測定した重量平均粒径を用いる。
【0088】
本発明に用いられるインクは必要に応じて水溶性有機溶剤を含有しても良い。好ましく用いられる水溶性有機溶媒の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0089】
本発明に用いられるインクは、顔料用の分散剤を添加してもよい。本発明に使用される顔料分散剤としては、例えば高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、あるいはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩をあげることができる。
【0090】
顔料の分散方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーター、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を単独または適宜組み合わせて用いることができる。
【0091】
本発明に用いるインクは必要に応じて界面活性剤を含有しても良い。本発明のインクに好ましく使用される界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。特にアニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。さらに、好ましくはアセチレングリコール化合物である。
【0092】
本発明に用いられるインクは、粘度調整剤、印字部の耐水性向上を目的として、樹脂(天然或いは合成高分子)を添加することができる。水溶性高分子としては、天然水溶性高分子であるトウモロコシ、小麦等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、アラビアゴムなどの多糖類、ゼラチン、カゼイン、ケラチン等の蛋白質物質、合成水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸系ポリマなどを用いることができる。
【0093】
本発明に用いられるインクは、高分子が水分散された状態のもの(樹脂エマルジョン)を添加してもよく、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン、シリコン−アクリル共重合体およびアクリル変性フッ素樹脂等がある。この樹脂エマルジョンが熱可塑性樹脂であることが好ましい。この熱可塑性樹脂エマルジョンのガラス転移温度は、40℃以上180℃以下が、好ましい。
【0094】
この樹脂エマルジョンの粒径は500nm以下が好ましく、更に好ましくは150nm以下である。
【0095】
本発明におけるインクにはこの他に防腐剤、防黴剤、消泡剤、保湿剤、pH調整剤、粘度調整剤等を必要に応じて含有しても良い。保湿剤を含有する場合は糖類が好ましく、糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)および多糖類があげられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシシール、ソルビット、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などがあげられる
本発明で用いられるインクは主に上記で説明した成分で構成されるが、インクの諸物性としては、各成分の配合量を調整することによって、粘度を2〜20cp(25℃)、表面張力を25〜60mN/mにすることが好ましい。
【0096】
本発明に用いるインクのゼータ電位の絶対値は、40mV以上200mV未満であることが好ましい。これにより、インク中での顔料の凝集を抑えることができる。
【0097】
本発明に用いられるインクに含有される顔料は、
顔料の平均粒径<顔料の最大粒径<3×顔料の最大粒径
を満たすことが好ましい。
【0098】
本発明において、顔料の最大粒径は、レーザードップラー法を用いて測定して作成した重量累積粒径曲線における99%相当粒径の値をいう。
【0099】
本発明では、インクは少なくともYインク、Mインク、Cインクを用いることが好ましい。これにより、カラープリントにおいても、擦過性が良く、印字濃度が高いプリントを得ることができる。さらに本発明では、Kインクを用いることもできる。また、本発明は、Yインク、Mインク、Cインクのうち少なくとも1つについて1.0<平均空隙径/顔料の平均粒径<5.0を満たしている限りは、本発明の効果を得ることができるが、本発明の効果をより得るためには、少なくともYインク、Mインク、Cインクそれぞれについて、1.0<平均空隙径/顔料の平均粒径<5.0を満たしていることが好ましい。
【0100】
次に、本発明のインクジェット記録方法について説明する。
本発明のインクジェット記録方法で使用するインクジェットヘッドはオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
【0101】
本発明の記録方法として、同色インクについて、濃度の異なるインク(濃淡インク)を備えることは好ましく、低濃度から高濃度までの広い範囲表現が可能になり、かつ画像粒状性及び濃度階調表現が向上する。濃淡インクの濃度比の好ましい範囲としては、濃インクの色材濃度に対して、淡インクの色材濃度は、50〜10%である。濃淡インクは、全ての色で使用する必要はなく、色再現性と濃度階調に応じて行えばいい。
【0102】
【実施例】
以下に本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中の「%」は、特に断りのない限り絶乾質量%を示す。
【0103】
<実施例1>
含水率6.5%、坪量170g/m2の写真用原紙の裏面に、密度0.92の低密度ポリエチレンを30μmの厚さで塗布した。次いで、表側にアナターゼ型酸化チタン5.5%を含有する密度0.92の低密度ポリエチレンを35μmの厚さで塗布して、両面をポリエチレンで被覆した支持体を作製した。
【0104】
表側にコロナ放電を行いゼラチン下引き層を0.3g/m2、裏面にもコロナ放電を行った後ラテックス層を厚みが0.2g/m2になるように塗布した。
【0105】
次に、表側用の下記組成の塗布液を調製した。
〈酸化チタン分散液1の調製〉
平均粒径が約0.25μmの酸化チタン20kg(石原産業製:W−10)をpH=7.5のトリポリリン酸ナトリウム150g、ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製:PVA235)500g、カチオンポリマー(p−1)150g及びサンノブコ株式会社消泡剤SN381を10g含有する水溶液90Lに添加し、高圧ホモジナイザー(三和工業株式会社製)で分散した後、全量を100Lに仕上げて均一な酸化チタン分散液1を得た。
【0106】
【化1】
【0107】
〈シリカ分散液1の調製〉
1次粒子の平均粒径が約40nmのシリカ125kgを、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用いて、硝酸でpH=3.0に調整した600Lの純水中に室温で吸引分散した後、全量を660Lに純水で仕上げた。
【0108】
〈シリカ分散液2の調製〉
カチオンポリマー(p−1)1.29kgを、エタノール4.2L、n−プロパノール1.5Lを含有する水溶液(pH=2.3)15Lに、シリカ分散液1の66.0Lを攪拌しながら添加し、ついで、ほう酸160gとほう砂140gを含有する水溶液7.0Lを添加し、前記の消泡剤SN381を1g添加した。
【0109】
この混合液を三和工業株式会社製高圧ホモジナイザーで分散し、全量を純水で90Lに仕上げてシリカ分散液2を調製した。
【0110】
〈蛍光増白剤分散液1の調製〉
チバガイギー株式会社製の油溶性蛍光増白剤UVITEX−OB・400gをジイソデシルフタレート9000g及び酢酸エチル12Lに加熱溶解し、これを酸処理ゼラチン3500g、カチオンポリマー(p−1)、サポニン50%水溶液6Lを含有する水溶液65Lに添加混合して三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで乳化分散し、減圧で酢酸エチルを除去した後全量を100Lに仕上げた。
【0111】
〈マット剤分散液1の調製〉
綜研科学株式会社製のメタクリル酸メチル系マット剤MX−500(平均粒径5μm)400gを前記PVA235を3g含有する純水7L中に添加し、高速ホモジナイザーで分散し全量を7.8Lに仕上げた。
【0112】
〈塗布液の調製〉
第1層、第2層、第3層の塗布液を以下の手順で調製した。
【0113】
第1層用塗布液
シリカ分散液2の560mlに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0114】
【0115】
第2層用塗布液
シリカ分散液2の630mlに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0116】
【0117】
第3層用塗布液
シリカ分散液2の700mlに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0118】
【0119】
上記のようにして得られた塗布液を、下記のフィルターでろ過した。
第1層と第2層:東洋濾紙株式会社製TCP10で2段ろ過
第3層:東洋濾紙株式会社製TCP30で2段ろ過
ポリオレフィンで両面を被覆した上記7種の支持体の表側に、第1層(40μm)、第2層(110μm)、第3層(30μm)の順になるように各層を同時塗布した。かっこ内はそれぞれの湿潤膜厚を示す。塗布は、それぞれの塗布液を40℃で3層式カーテンコーターで同時塗布を行い、塗布直後に8℃に保持した冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜30℃の風で60秒間、45℃の風で60秒間、50℃の風で60秒間順次乾燥した(恒率乾燥域における皮膜温度は8〜25℃であり、減率乾燥域で皮膜温度は徐々に上昇した)後、23度、相対湿度40〜60%で調湿した。
【0120】
次に、酢酸エチルに溶解したイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製コロネート3041と、住友バイエルウレタン株式会社製スミジュールN3300の2:8(質量比)の混合物)を2.0g/m2になるようにオーバーコートし、記録媒体1を作製した。
【0121】
さらに、シリカ分散液1のシリカの1次粒径及びシリカの分散粒径を表1のようにする以外はすべて記録媒体1の作製方法と同じ手順として、記録媒体2〜4を作製した。また、シリカ分散液1のシリカの1次粒径及びシリカの分散粒径を表1のようにし、pH調整剤を用いて膜面pHを2.0,12.0とした以外はすべて記録媒体1の作製方法と同じ手順として記録媒体5,6を作製した。
【0122】
作製した記録媒体1〜6について、平均空隙径、鏡面光沢度、膜面pHを測定した。その結果も表1に示す。尚、平均空隙径は、自動ポロシメータ(オートポアル9500:マイクロメリティックス社製)、鏡面光沢度は、JIS−Z8741に準じて変角光沢度計(VGS−1001DP:日本電色工業社製)にて、60度の角度で測定した。膜面pHは、平板電極(GST−5213F:東亜電波工業製)で測定した。
【0123】
【表1】
【0124】
(シアン顔料インクの調製)
C.I.ピグメントブルー15:3 50g
高分子分散剤A
(スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル−メタクリル酸・2−ヒドロキシエチル 分子量12000) 20g
ジエチレングリコール 100g
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 80g
イオン交換水 125g
を混合し、0.3mmのジルコニアビーズで体積率60%充填した横型ビーズミル(アシザワ(株)製システムゼータミニ)を用いて分散し、分散体をジエチレングリコール及びイオン交換水で1000gに仕上げ、1μmのミリポアフィルターを2度通過させてCインク1を調製した。Cインク1の調製法において、C.I.ピグメントブルー15:3の粒径を変える以外は同様の手順で、Cインク2〜4を調製した。また、Cインク1の調製法において、1μmのミリポアフィルターを用いての濾過を行わない以外は同様の手順で、Cインク5を調製した。さらに、Cインク1の調製法において、高分子分散剤Aの代わりに界面活性剤エマルゲン120(花王製)を用いた以外は同様の手順でCインク6を調製した。尚、調製したCインク1〜6に含有される顔料の平均粒径及び最大粒径、ゼータ電位を表2に示す。尚、本発明の実施例では、インクに含有される顔料の平均粒径、最大粒径の測定にはゼータサイザー1000(マルバーン社製)を用い、インクのゼータ電位の測定には、ELS−800(大塚電子(株)製)を用いた。
【0125】
【表2】
【0126】
〈記録媒体への画像記録〉
ノズル径20μm、駆動周波数12kHz、1色当りのノズル数128、同色ノズル密度180dpi(dpiとは2.54cm当たりのドットの数を表す)であるピエゾ型ヘッドを搭載した最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型のインクジェットを使用して、上記Cインクにより均一ベタ画像パターンを作製した。作製した試料は以下の評価を行い、評価結果を表3に示した。
【0127】
(擦過性)
各サンプルについて、プラスチック消しゴムで印字部を5回こすり、20人の観察者により濃度低下の程度を以下のように分類評価してもらい、最も多かった分類のものを採用した。
【0128】
◎:色落ちが全くなし
○:若干の色落ちはみられるが、画像としては気にならない
△:色落ちが確認でき、画質が低下し実用上問題あり
×:色落ちが大きく、画質への影響が大
(濃度)
画質の濃度を20人の観察者により以下のように分類評価してもらい、最も多かった分類のものを採用した。
【0129】
◎:十分に濃度が高い
○:実用可能の濃度はある
×:実用可能な濃度ではない
(吸収速度)
画像形成後30秒たった後、20人の観察者により以下のように分類評価してもらい、最も多かった分類のものを採用した。
【0130】
◎:十分インクが吸収している
○:僅かにインクが未乾燥(実用可)
×:未乾燥でインクが吸収しきれていない
(耐光性)
キセノンフェードメーターにて加速試験を行い、測色、褪色性を測定し、測定値から下記のようにランク評価した。
【0131】
◎:90%以上画像が残り殆ど褪色しない
○:70〜90%未満残存(実用可)
×:70%未満の残存率
【0132】
【表3】
【0133】
表3の結果より、本発明のインクジェット記録方法は、画像接着性(耐擦過性)に優れ、十分な濃度を有し、吸収速度、透明性、耐光性のよいインクジェット画像を提供できることが分かった。
【0134】
<実施例2>
以下のインクを調製した。
(イエロー顔料インクの調製)
C.I.ピグメントイエロー128 50g
高分子分散剤A 50g
エチレングリコール 100g
グリセリン 80g
イオン交換水 270g
を混合し、0.3mmのジルコニアビーズで体積率60%充填した横型ビーズミル(アシザワ(株)製システムゼータミニ)を用いて分散し、分散体をイオン交換水で1000gに仕上げ、1μmのミリポアフィルターを2度通過させてイエロー顔料インクを調製した。調製したYインク(分散体)の顔料の平均粒径は75nmであり、最大粒径は160nmであり、Yインクのゼータ電位の絶対値は52mVであった。
【0135】
(マゼンタ顔料インクの調製)
C.I.ピグメントレッド122 60g
高分子分散剤A 30g
プロピレングリコール 30g
グリセリン 100g
イオン交換水 130g
を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ(株)製システムゼータミニ)を用いて分散し、分散体をイオン交換水で1000gに仕上げ、1μmのミリポアフィルターを2度通過させてマゼンタ顔料インクを調製した。調製したMインクの顔料の平均粒径は65nmであり、最大粒径は140nmであり、Mインクのゼータ電位の絶対値は58mVであった。
【0136】
(シアン顔料インクの調製)
C.I.ピグメントブルー15:3 50g
高分子分散剤A 20g
ジエチレングリコール 100g
イオン交換水 125g
を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ(株)製システムゼータミニ)を用いて分散した後、20,000rpmで30分間遠心分離処理を行い、得られた分散体をエチレングリコール及びイオン交換水で1000gに仕上げ、1μmのミリポアフィルターを2度通過させてシアン顔料インクを調製した。調製したCインクの顔料の平均粒径は75nmであり、最大粒径は170nmであり、Cインクのゼータ電位の絶対値は43mVであった。
【0137】
(ブラック顔料インクの調製)
カーボンブラック MOGUL L(キャボット社製) 60g
エチレングリコール 100g
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 100g
イオン交換水 100g
得られた分散体をイオン交換水で1000gに仕上げ、1μmのミリポアフィルターを2度通過させてブラック顔料インクを調製した。調製したKインクの顔料の平均粒径は65nmであり、最大粒径は135nmであり、Kインクのゼータ電位の絶対値は48mVであった。
【0138】
〈記録媒体への画像記録〉
ノズル粒径20μm、駆動周波数12kHz、1色当りのノズル数128、同色ノズル密度180dpiであるピエゾ型ヘッドを搭載した最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型のインクジェットを使用して、上記顔料インクにより各色の均一ベタ画像パターンをイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色について作製した。さらに、4色を重ね合わせて記録媒体1に画像をプリントした。
【0139】
該プリントについて前述実施例1と同様の評価を行ったところ、耐擦過性に優れ、濃度があり、吸収速度、耐光性に優れていることが判明した。
【0140】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録方法は、画像接着性(耐擦過性)に優れ、十分な濃度を有し、画像品質の高いインクジェット画像を提供できる。
Claims (9)
- 支持体上に空隙を有するインク吸収層を形成した記録媒体上に、顔料を含有するインクを用いて記録を行うインクジェット記録方法において、前記空隙の平均空隙径と前記顔料の平均粒径が、式Aを満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
A)1.0<平均空隙径/顔料の平均粒径<5.0 - 支持体上に空隙を有するインク吸収層を形成した記録媒体上に、顔料を含有するインクを用いて記録を行うインクジェット記録方法において、前記空隙の平均空隙径と前記顔料の平均粒径が、式A’を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
A’)1.0<平均空隙径/顔料の平均粒径<3.0 - 前記インクに含有される顔料の平均粒径が50nm〜95nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録媒体の60°鏡面光沢度が1%〜10%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インクのゼータ電位の絶対値が40mV以上200mV未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録媒体の膜面pHが3<pH<10であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記支持体が非吸水性であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インクに含有される顔料が式Bを満たすことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
B)顔料の平均粒径<顔料の最大粒径<3×顔料の平均粒径 - 前記インクには、Yインク、Mインク、Cインクを用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
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