JP3826615B2 - 水系顔料分散体およびインクジェット用記録液 - Google Patents

水系顔料分散体およびインクジェット用記録液 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水分散性、経時分散安定性に優れた水性顔料分散体およびその製造方法、さらに印字後の耐光性,耐水性、色相に優れ,ノズルでの吐出安定性の良好なインクジェット用記録液に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、顔料を水中で分散させるため界面活性剤や分散剤、分散樹脂を用いて水性インキや水性塗料としている。しかしながら、界面活性剤の場合には泡立ちの問題があり起泡性を改善するため消泡剤との併用が必要となり、消泡剤と界面活性剤との相性、印刷後乾燥時のレベリング性の課題など活性剤や添加剤の併用によるインキ性能のバランスに問題点がある。また、分散樹脂の場合、比較的高粘度のインキ、塗料系においては非常に有効な分散安定化効果が認められるが、低粘度分散体に関しては樹脂の溶剤に溶解する粘度の影響が大きく、低粘度への限界がある。
【0003】
一方、顔料分散剤として顔料誘導体を使用し、表面処理する方法が知られている。顔料誘導体処理法とは、分散させる顔料と同種の化合物を酸性基または塩基性基を置換基として導入し顔料に吸着させて極性を増大し、濡れを向上させ分散性を良好にする方法である。誘導体処理法は、他の分散剤、界面活性剤に比べて分散性の向上が顕著であるが、誘導体が溶剤に溶けることから塗料やインキの塗工、印刷でのブリードや混色の問題が起こる。この問題は顔料誘導体処理法が分散剤や界面活性剤と同じく分散前に添加剤として使用し、顔料に吸着する部分が分散効果を上げているが、吸着している誘導体に比して未吸着部分が多いことから塗膜時でのブリードや混色、耐溶剤性の低下といった現象が起こるためである。このように、分散剤や界面活性剤、顔料誘導体を使用する場合、分散性効果を上げるためには顔料に吸着する量以上の添加量が必要である。さらに、誘導体の構造と溶剤との相互作用、または溶解性のため分散系がフロキュレーションによりチキソトロピックな状態となり、誘導体だけでは分散性の改善が難しい。この対処法として界面活性剤との併用や有機溶剤、添加剤の添加により改善している。しかしながら、多くの場合分散系を複雑にし、かつ塗膜乾燥時のはじき等の問題がある。
【0004】
上記手法以外に、顔料粉体表面を化学的に修飾する方法が提案されている。工業的に行われている例としては、カーボンブラックの気相法、液相法による処理であり、気相法としてはオゾン処理やプラズマ処理などの酸化処理による極性官能基の発現を目的としている。液相法の場合は通常気相法で行われている酸化処理よりさらに強い処理が必要な場合に用いられ、硝酸、亜硝酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、過マンガン酸塩などの強い酸化剤を使用している。これらの処理により、分散剤や樹脂を使用することなく水系への顔料の分散が可能であり、応用範囲が広がっている。しかしながら、処理工程の特徴から生産コストが高いデメリットを持ち、また有機顔料への技術の応用が出来ないことから使用される範囲が限定されている。
【0005】
一方、インクジェット用記録液では特開昭53−61412号公報、特開昭54−89811号公報、特開昭55−65269号公報に開示されているように、酸性染料、直接染料、塩基性染料等の水溶性染料をグリコール系溶剤と水に溶解したものが多く用いられ、その記録物は一般に水溶性染料の水に溶解しやすい特性上、耐水性が乏しく水をこぼしたりすると容易に記録部分の染料のにじみを生じるという問題があった。また、染料の構造上の特性から耐光性が悪いという問題があった。これら水性インクジェット用記録液に要求される項目としては,
・にじみがなく高品位な記録画像が得られること、
・記録液の乾燥、定着速度が速いこと、
・ノズルや記録液流通経路で目詰まりせず、安定して記録液が吐出すること、
・記録液の保存安定性が良いこと、
・記録濃度が高いこと、
・印刷物の耐候性、耐水性が良いこと
等が特に重要である。
【0006】
このような耐水性の不良を改良するため、特開昭56−57862号公報に開示されているように、染料の構造を変えたり、塩基性の強い記録液を調製することが試みられている。また、特開昭50−49004号公報、特開昭57−36692号公報、特開昭59−20696号公報、特開昭59−146889号公報に開示されているように、記録紙と記録液との反応をうまく利用して耐水性の向上を図ることも行われている。
これらの方法は、特定の記録紙については著しい効果をあげているが、記録紙の制約を受けるという点で汎用性に欠け、特定の記録紙以外を用いた場合は、水溶性染料を使用する記録液では記録物の充分な耐水性が得られないことが多い。
【0007】
また、耐水性の良好な記録液としては,油溶性染料を高沸点溶剤に分散ないし溶解したもの、油溶性染料を揮発性の溶剤に溶解したものがあるが、溶剤の臭気や溶剤の排出の問題があり、環境上好ましくない。また、大量の記録を行う場合や装置の設置場所によっては、溶剤回収等が必要になるという問題がある。
そこで、記録物の耐水性をよくするために、水系媒体に有機顔料を分散した記録液の開発が行われている。
【0008】
しかし、顔料は染料と異なり微小粒子として分散させることおよび分散状態を安定に保つことが非常に困難である。一方、インクジェット用の記録液においては、プリンターの高解像化につれノズル径が細かくなってきており、これに伴い顔料粒子の粒子径も微細化する必要が生じている。しかしながら、顔料型の場合には、ノズルからの吐出安定性と再溶解(分散)性、印字後の発色性の必要項目を共に満たすことは困難であり、顔料型インクジェット用記録液の課題となっている。
【0009】
顔料型インクジェット用記録液の分散性と染料の鮮明な色調を併有した例として、特公昭60−45667号公報、特公昭60−45668号公報、特公昭60−45669号公報に開示されているように、使用する顔料と同色の水溶性染料を顔料と併用し、分子量1000〜100000の高分子分散剤を使用した記録液が提案されている。この技術は、染料単独で使用する場合と比べると顔料が含有されていることで耐水性、耐光性の面で向上しているものの、染料が顔料比として1:10〜10:1の割合で使用するため印刷物としてのブリード、混色や根本的な耐水性の改善はなされていない。さらに、顔料単独の場合に比べチキソトロピー性が改善されるものの、染料濃度が高まると会合する傾向があり、増粘など利用面として制限があるなど、顔料型インクジェット記録液に要求されている条件を満たすものではなく、染料と顔料の中間的な性能である。また、特開平5−247391号公報に開示しているスルホン酸基またはスルホン酸塩基を有する染料と顔料との併用も上記技術と同等のものと考えられる。
【0010】
上記顔料と染料の併用型記録液を改善したものとして、特開平9−151344号公報に開示されている様に、顔料に染料を積極的吸着させることで顔料よりも色再現範囲が広く、かつ染料よりも耐水性、耐光性の良い顔料インクが提案されている。有機顔料への染料の吸着は、染料に反応性染料を用いて顔料表面、あるいは顔料構造中の官能基と染料のもつ官能基の一部(すなわち、顔料が酸性官能基であれば染料は塩基性基、またはその逆)と反応させることで吸着させている。この技術は、非常に有用である反面顔料の官能基に左右され、有機顔料の場合には特にその効果を活用するには多くの制限がある。上記公報の例では、顔料の分子構造中に酸性基を持つ場合には塩基性基の染料、顔料に塩基性基を持つ場合には酸性基の染料が吸着するとされている。この際、水系分散媒体として分散性を考慮し染料が分散性を向上するための分散剤として働く場合には、酸性染料には塩基性媒体、塩基性染料には酸性媒体を使用することが必要となり、顔料、染料の組み合わせによる制限がある。通常、インクジェット用水系記録液はプリンターヘッドやノズルの腐食への考慮から酸性媒体は使用せず塩基性媒体であり、上記例の場合分散性を考慮すると酸性染料が必要となり、カルボキシル基やスルホン酸基を持つ顔料は使えないことになる。また、この逆の弱塩基性を持つ顔料の場合、染料の酸性基と顔料、分散媒体の塩基性度の競争吸着の状態になり、顔料の塩基性度に比べ塩基性度の低い分散媒体を使用する必要が生じる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、経時での保存安定性、ノズルでの吐出安定性、さらには印字した場合の充分な色再現性範囲を有し、顔料型が有する優れた耐水性と耐光性の両立した性能を持ちながら水系で自己分散する顔料型インクジェット用記録液を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、 フタロシアニンに酸性官能基もしくはその塩を導入した水溶性フタロシアニン誘導体を溶解させた水性の液体中でフタロシアニン系顔料粒子を分散させて該フタロシアニン系顔料粒子の表面に上記水溶性フタロシアニン誘導体を吸着させる工程と、未吸着の上記水溶性フタロシアニン誘導体を限外濾過により除去する工程とからなり、顔料分散体中の未吸着の水溶性フタロシアニン誘導体の量が上記フタロシアニン系顔料を基準として1×10-2mmol/g以下であり、上記水溶性フタロシアニン誘導体を吸着させたフタロシアニン系顔料粒子は、ゼータ電位が−10〜−60の範囲の負帯電性であることを特徴とする水系顔料分散体の製造方法に関するものである
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい態様としては以下の如くである。
(1)水溶性フタロシアニン誘導体が、酸性官能基もしくはその塩を含むフタロシアニン化合物である。
(2)フタロシアニン系顔料が、無置換またはハロゲン基置換フタロシアニンであり、中心元素がH、Cu、Ti、Ni、Al、FeまたはCoである。
(3)フタロシアニン系顔料の粒子が、10〜500nmである。
(4)フタロシアニン系顔料に吸着させた水溶性フタロシアニン誘導体による顔料表面酸性基もしくはその塩としての官能基の総量がフタロシアニン系顔料基準として0.01〜0.5mmol/gである。
(5)水溶性フタロシアニン誘導体が、その化学構造中の酸性基官能基もしくはその塩の合計の平均官能基数が1.0より多く2.0未満の混合物である。
【0014】
本発明の従来技術と大きく異なる点は、酸化処理カーボンブラックや有機顔料の化学的表面改質に見られる自己分散型顔料と同等の特性を安易に安価に作成できる点であり、染料と顔料の併用系とは顔料分散体としての設計上大きく異なる。さらに、従来の染料吸着型の顔料分散体は適用範囲が狭く、分散効果、インキ物性の面から比較して、本発明の顔料分散体は水系での易分散型顔料の新規な表面改質技術と言える。本発明における顔料と顔料誘導体の吸着は、それぞれの化学構造が持つ芳香環が疎水性相互作用により近接し、π−πスタッキングにより吸着するものと考えられる。従来、顔料誘導体処理法に関しては、顔料との骨格類似な顔料誘導体が顔料への吸着力が非常に大きいことから有効な分散剤として使われてきたことは紹介したが、本発明での最大のポイントは、分散剤としての使用するのではなく誘導体が一層吸着として顔料表面に整列することで、従来にはない顔料濃度が高い範囲で他の分散剤や樹脂を使用することなく、低粘度で高い表面張力を持つ経時分散安定性の高い水系顔料分散剤を発明したことである。
【0015】
本発明に用いる顔料としては、フタロシアニン系顔料が使用できる。具体的な例としては、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントグリーン7,C.I.ピグメントグリーン36などが挙げられる。その他フタロシアノン化合物の中心金属がNi、Al、Fe、Ti、Coであり、無置換またはハロゲン基置換のフタロシアニン顔料などが挙げられる。また、使用する顔料粒子の粒径としては、好ましくは50〜0.05μm、インクジェット用記録液としては1〜0.005μmが好ましく、顔料粒子の微細化、粒径制御においてはソルトミリングやソルベントミリングなどの湿式粉砕、または乾式粉砕による一次粒子の粉砕加工を処理の前段階で行うことが好ましい。さらに、誘導体処理を上記粉砕工程で行うことは吸着効率、工程簡略化による利点としてはさらに好ましい。
【0016】
本発明に用いる顔料誘導体としては、水溶性フタロシアニン誘導体が使用できる。水溶性フタロシアニン誘導体としては、下記一般式[I]のフタロシアニン化合物がある。
一般式[I]
【0017】
【化1】
Figure 0003826615
【0018】
(式中、MはCu、Ti、Ni、Al、Fe、Co、H−Hを表し、X1、X2、X3、X4は独立に−Br、−Clを表し、Y1、Y2、Y3、Y4は独立に−COOH、−COONa、−COOK、−SO3H、−SO3Na、−SO3K、一般式[II]の酸性アミン塩を表し、k1、k2、k3、k4、n1、n2、n3、n4は何れも0〜4の整数であり、好ましくはn1+n2+n3+n4=1〜4、k1+k2+k3+k4=0〜3である。)
一般式[II]
【0019】
【化2】
Figure 0003826615
【0020】
(式中、R1、R2、R3、R4は独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3のアルカノール基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたアルキルアルカノール基を表す。)
インクジェット用記録液としてはアンモニアの他、水溶性アミン化合物が好ましく、具体的にはジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン6,イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミンが挙げられる。その他の水溶性アミン化合物としては、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパンなどが挙げられる。
【0021】
水溶性フタロシアニン誘導体の合成方法としてフタロシアニンを発煙硫酸や濃硫酸、クロロ硫酸などのスルホン化剤を用いてスルホン化するのが一般的である。カルボキシル基の導入は、フタロシアニン合成時の環化の原料として置換基を持ったものを使う必要がある。どちらの方法においても、合成した誘導体の官能基数は分布を持ち、精製分離をしない限りその置換基数は平均値として表され、実際に使用する誘導体の置換基数は整数とはならない。好ましく使用できる水溶性フタロシアニン誘導体の酸性官能基の平均置換基数としては1以上2未満、更に好ましくは1〜1.9であり、2より多い置換基数を持つ場合分散安定効果を有するもののその置換基数が多くなることで顔料への吸着保持力に対し脱着力が多く充分な効果が得られない。また1より少ないと誘導体自身が水に溶解せず、α型結晶の顔料となる。そのため、目的とする分散効果と色相、耐水性等の物性バランスが悪い。
【0022】
フタロシアニン系顔料への水溶性フタロシアニン誘導体の吸着処理は、通常顔料分散に使用している分散機が使用できる。吸着処理は、水溶性フタロシアニン誘導体を塩基性の範囲で所定の水に溶解させ、顔料をその溶液中に添加して分散させることで吸着処理が進行するものである。この場合、使用する水としては、2価以上の金属塩を含まない精製水、純水またはこれに準ずる水を使用すること必要である。水道水やミネラル分を含有する水には2価の金属塩が含まれ、この金属塩が水溶性フタロシアニン誘導体の酸性基と結合することで不溶化し、水系での分散を妨げるためである。本発明の処理顔料は顔料粒子が負帯電し、静電反発により水性媒体中で分散するものであり、分散安定効果を得るためには水性液媒体と酸性官能基へのカウンターイオンは1価のカチオンである必要がある。即ち、2価以上のCa、Mn、Fe、Ba、Al、Niなどの無機イオンは凝集、沈殿の原因となるため極力避ける必要がある。吸着処理に使用する分散機としては、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」)等を用いることができる。分散機としてメディアを使うものには、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズを用いることができる。
【0023】
分散機によって吸着処理した顔料分散体は、水溶性誘導体中の化学構造と酸性官能基が水中でファンデルワールス力の作用によりフロキュレーションを起こしやすい状態であり、粘度上昇や凝集など安定性が悪い。さらに、過剰の水溶性誘導体のために印刷持のブリード、混色、印刷物の耐水性劣化などインキとしての使用が制限される。本発明では、顔料に未吸着の水溶性誘導体を上記悪影響のない範囲まで取り除くことで分散性と経時安定性、印刷物としての特性を両立させることができた。未吸着の水溶性誘導体を取り除く方法としては、遠心分離、限外濾過が使用できる。
【0024】
限外濾過や遠心分離法を用いて未吸着の誘導体を分離することにより、分散安定性に優れた顔料分散体にすることができる。顔料に水溶性顔料誘導体を分散吸着させる場合、pHを通常11〜8近辺に調整する。この状態ではどのpH領域でも水溶性誘導体の添加量を分散性が向上する下限まで減らしたとしてもフロキュレーションによるチキソ性の高い分散体となる。しかしながら、未吸着の誘導体を分離することでチキソ性は無くなり非常に低粘度の顔料分散体を得ることができる。
【0025】
本発明の顔料分散体をインクジェット用記録液として使用する場合、顔料濃度を2〜5重量%の範囲で使用することが一般的であるが、水溶性誘導体が原因で起こりうるブリードに対して誘導体濃度の下限値が制限される。これは、分散体中の顔料濃度が2〜5重量%と低い場合、フロキュレーションの下限値は誘導体濃度としては高いレベルまで許容できるためである。顔料濃度15〜20重量%の水系顔料分散体では3〜20cpsの低粘度とすることができ、水溶性顔料誘導体の官能基数は2以下が好ましい。この場合のフロキュレーション臨界濃度は、顔料濃度15重量%において顔料基準で未吸着顔料誘導体濃度が1×10-1mmol/g以下であり、好ましくは1×10-2mmol/g以下である。また、顔料に吸着している顔料誘導体量による顔料表面官能基(酸性基もしくはその塩)の総量は、顔料当たり0.01〜0.5mmol/gである。未吸着誘導体量および顔料に吸着している水溶性顔料誘導体量の測定法としては、目的とする官能基の種類により定量化法が異なる。酸性官能基量を定量化する方法としてはボーム法が用いられ、滴定によって酸性基を中和するアルカリ量を酸で逆滴定することで測定できる。スルホン酸基またはスルホン酸塩基の様なフタロシアニン骨格に存在しない硫黄元素を定量化する方法としては、発光分光分析またはイオンクロマトを用いて定量化することができる。
【0026】
インクジェット用記録液として使用する場合の表面処理顔料分散体の分散粒径は、レーザー光散乱粒度分布計により測定した平均粒径が10〜300nm、かつ500nm以上の粗大粒子が全粒子の3重量%以下が好ましい。平均分散粒径が大きすぎるとインクジェット用記録液として吐出安定性を損なったり、沈殿を生じる等の欠点があり、粗大粒子が少なければ少ない程良い。本発明の顔料分散体は、インクジェット用記録液100重量部中に0.5〜10重量部、さらには2〜5重量部含まれていることが好ましい。顔料が少なすぎると記録液としての充分な濃度が得られず、また多すぎると記録液として要求される吐出安定性、ノズルの耐目詰まり性が損なわれる。
【0027】
本発明のインクジェット用記録液には、紙への定着性、インキ塗膜の耐水性を向上させるために、水性樹脂を用いることが出来る。使用できる水性樹脂としては、水溶性樹脂と水分散性樹脂に大別でき、それぞれアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ブタジエン系樹脂、石油系樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂および水分散性樹脂が挙げられる。
【0028】
水分散性樹脂の分散粒径は、重合操作や界面活性剤等により種々変えることができ、通常は数十〜数千nmの粒径のものが得られる。ノズルでの目詰まりを無くすためには、レーザー光散乱粒度分布計により測定した水分散性樹脂の平均粒径が20〜300nm、かつ500nm以上の粗大粒子が全樹脂粒子の3重量%以下、さらには平均粒径が50〜200nm、かつ500nm以上の粗大粒子が全樹脂粒子の2重量%以下であることが好ましい。
水溶性樹脂または水分散性樹脂は、インクジェット用記録液100重量部中に0.05〜5重量部、さらには0.1〜3重量部含まれることが好ましい。樹脂が少なすぎると満足な耐水性が得られ難く、また、多すぎるとインクジェット用記録液として必要な吐出安定性を損ない、また、ノズルの目詰まりなどの障害が出る。
【0029】
本発明のインクジェット用記録液には、表面張力調整用、紙への浸透性の調整用として、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の界面活性剤や高分子界面活性剤を用いることができる。界面活性剤は、界面活性剤を用いて顔料の分散を行うインクジェット用記録液に対しては、記録液の安定性、紙に対する浸透性に効果があるが、顔料表面への顔料誘導体吸着処理をした顔料に対しては、界面活性剤の添加量が多いと顔料の分散安定性を損なうことがある。
【0030】
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が例示できる。
【0031】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等の非イオン性界面活性剤が例示できる。
【0032】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が例示できる。
両イオン性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等が例示できる。
高分子界面活性剤としては、アクリル系水溶性樹脂、スチレン/アクリル系水溶性樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂等が例示できる。
界面活性剤は、必要に応じてアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、高分子界面活性剤等の2種以上を併用しても良い。
【0033】
本発明の水性顔料分散体およびインクジェット用記録液は、水系媒体中に表面処理顔料、水系樹脂、および必要に応じてその他の添加剤により構成される。
水系媒体とは、水、水と混和可能な有機溶媒およびそれらの混合物を表し、水としては、金属イオン等を除去したイオン交換水ないし蒸留水を、水性顔料分散体またはインクジェット用記録液の49〜95重量%の範囲で用いられる。
水性溶剤とは本明細書中で水と混和可能な有機溶剤を表し、インクジェット用記録液としてのノズル部分での乾燥、記録液の固化を防止し、安定な記録液の噴射およびノズルでの経時の乾燥を防止するものであり、単独ないし混合して記録液の1〜50重量%、好ましくは2〜25重量%の範囲で用いられる。
【0034】
水性溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ケトンアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、N−メチル−2−ピロリドン、2,4,6−ヘキサントリオール、テトラフルフリルアルコール、4−メトキシ−4メチルペンタノン等を例示できる。
【0035】
また、記録液の乾燥を速める目的においては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類も用いることができる。
【0036】
本発明のインクジェット用記録液には、必要に応じて下記の様な種々の添加剤を用いることができる。
記録液の被印刷体が紙のような浸透性のある材料のときは、紙への記録液の浸透を早め見掛けの乾燥性を早くするため浸透剤を加えることができる。
浸透剤としては、水性溶剤で例示したジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル、アルキレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル。ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等を用いることができる。これらは、記録液の0〜5重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲で用いられる。浸透剤は上記使用量で十分な効果があり、これよりも多いと印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こし好ましくない。
【0037】
防腐剤は、記録液への黴や細菌の発生を防止する目的で添加し、防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩等が用いられる。これらは、記録液中に0.05〜1.0重量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0038】
キレート剤は、記録液中の金属イオンを封鎖するものであり、ノズル部での金属の析出や記録液中での不溶解性物の析出等を防止するものであり、エチレンジアミンテトラアセティックアシド、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのナトリウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのジアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのテトラアンモニウム塩等が用いられる。これらは、記録液中に0.005〜0.5重量%の範囲で用いられる。
【0039】
また、記録液のpHを調整し、記録液の安定ないし、記録装置中の記録液配管との安定性を得るため、アミン、無機塩、アンモニア等のpH調整剤、リン酸等の緩衝液を用いることができる。
また、記録液の吐出時あるいは配管内部での循環、移動、あるいは記録液の製造時の泡の発生を防止するため消泡剤を添加することもできる。
【0040】
本発明のインクジェット用記録液は、顔料分散体および水系樹脂を水系媒体中に分散し、適宜水で希釈、他の添加剤を混合することにより製造できる。
分散は、ディスパー、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて行うことができる。また、混合攪拌は通常の羽を用いた攪拌機による攪拌のほか、高速の分散機、乳化機等により行うことができる。
【0041】
混合された記録液は、希釈の前または後に、孔径0.65μm以下のフィルター、さらには孔径0.45μm以下のフィルターにて十分濾過することが好ましい。フィルター濾過に先立ち遠心分離による濾過を行うこともでき、これにより、フィルター濾過における目詰まりを少なくし、フィルター交換を少なくできる。
記録液は、記録装置の方式にもよるが、粘度0.8〜15cps(25℃)の液体として調整することが好ましい。表面張力は、25〜73dyn/cmに調整することが好ましい。pHは、特に制約されないが7〜10の弱アルカリ性が好ましい。
【0042】
本発明の水性顔料分散体は、インクジェット用記録液の他、印刷インキ、塗料、化粧品、筆記用インキ、トナー、液体現像剤、電子写真用材料など広範囲の分野に利用が可能である。
【0043】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。実施例中、部および%は、それぞれ重量部および重量%を表す。
なお、実施例、比較例で得られた水性顔料分散体の粒径および粘度の測定方法、保存安定性、乾燥粉体の再溶解性、インクジェット用記録液の粒径、粘度、保存安定性、吐出安定性、耐水性、耐目詰まり性の評価、普通氏への印字品質、誘導体吸着による顔料への官能基導入量または未吸着誘導体量、顔料分散体のゼータ電位の測定は下記の方法で行った。
【0044】
(1)粒径
レーザー回折方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用いて測定し、平均粒径(d99の値)、500nm以上の粗大粒子の含有率を算出した。
(2)粘度
低粘度領域では振動式粘度計(山一電気社製「VM−1A」)、中粘度領域以上についてはB型粘度計で25℃における粘度を測定した。
【0045】
(3)保存安定性
水性顔料分散体では、50℃での粒径変化が15nm未満および粘度の変化が0.5cps未満である保存期間の日数を示した。保存安定性が一日以下の場合については×で示した。
インクジェット用記録液では、50℃で3ヶ月保存後の粒径および粘度の変化から保存安定性を評価した(○:粒径の変化15nm未満かつ粘度の変化0.2cps未満、×:粒径の変化15nm以上または粘度の変化0.2cps以上)。
(4)起泡性
50mlの蓋付きスクリュー管に水性顔料分散体を30ml加え、上下に20回程激しく振り、3分後の泡の状態で起泡性を評価した(◎:泡が消失、○:泡がスクリュー管内面に少し、△:泡が全面にあり起泡高さ3mm未満、×:泡が全面にあり起泡高さ3mm以上)。
(5)表面張力
表面張力計(協和界面化学社製「CBVP−Z」)で25℃における表面張力を測定した。
(6)吐出安定性
インクジェット用記録液をインクジェットプリンター(エプソン社製「HG−5130」)のカートリッジに詰めて、普通紙(ゼロックス社製「K」)に印字を行い、吐出安定性を評価した。(○:ノズルから120分以上安定に連続吐出する、△:連続吐出120分以内で液滴の着弾位置に乱れが生ずる、×:ノズルから安定に吐出しない)。
【0046】
(7)耐水性
(4)で得られた印字物を、水に濡らしたのち指で擦り、印字物の変化を目視で評価した(○:インキの滲み、剥がれが認められない、×:インキの滲み、剥がれが認められる)。
(8)耐目詰まり性
(6)と同様にして印字後にプリンタのキャップを外し、1時間後に再度印字を行い、目詰まりの有無を評価した(○:ノズルの目詰まり無し、×:ノズルの目詰まり有り)。
(9)印字品質
インクジェット用記録液をインクジェットプリンター(エプソン社製「PM−750C」)のカートリッジに詰めて、普通紙(ゼロックス社製「4024」)に印字を行い、インキのフェザーリング性を評価した。(○:フェザーリングが殆どなく、「龍」の次がにじまずに判別可能、×:フェザーリングが有り、にじみにより「龍」の字が判別困難。
(10)吸着誘導体による導入官能器量(スルホン酸基)
処理された顔料分散体を乾燥し、乾燥顔料を硝酸、過塩素酸水溶液で酸分解した水溶液を発光分光分析により硫黄量を測定し、硫黄量をスルホン酸基またはスルホン酸塩に換算した。
(11)未吸着誘導体量の測定(スルホン酸基)
誘導体中のスルホン酸基量を発光分光分析により硫黄量からスルホン酸またはスルホン酸塩量を換算し、官能基数を出す。限外濾過の透過液中の硫黄量を発光光度分析により求め、スルホン酸またはスルホン酸塩量を換算し、誘導体の官能基数から透過液中の誘導体存在量を計算する。
(12)ゼータ電位測定
顔料分散体を精製水で測定可能範囲まで希釈し、ゼータ電位測定装置(日機装社製:Zeta PALS)によって顔料分散体のゼータ電位を測定した。
【0047】
実施例1
C.I.ピグメントブルー15:3をソルトミリングにより平均一次粒径を50nm以下とした微細化顔料20g、スルホン化した銅フタロシアニン誘導体(平均スルホン酸基導入量=1.3)2g、イオン交換水110gを混合し、混合液のpHが9以上になる様に水酸化ナトリウムを添加、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約5時間分散した。顔料濃度3重量%になるまでイオン交換水で希釈した顔料分散液から限外濾過により未吸着の顔料誘導体を分離し、透過水の誘導体濃度が顔料基準で0.005mmol/g以下までイオン交換水を加水しながら洗浄し、還流水のpHが8.5で顔料分散体の固形分が15重量%になるよう濃縮した。この時の処理顔料中のスルホン酸基量は顔料基準で0.2mmol/gであり、滴定による表面酸性基量とほぼ同じ値を示した。ゼータ電位の測定結果は−55であった。
【0048】
実施例2
C.I.ピグメントブルー16をソルトミリングにより平均一次粒径を30nm以下とした微細化顔料20g、スルホン化した無金属フタロシアニン誘導体(平均スルホン酸基導入量=1.2)1.6g、イオン交換水110gを混合し、混合液のpHが9以上になる様に水酸化ナトリウムを添加、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約5時間分散した。顔料濃度3重量%になるまでイオン交換水で希釈した顔料分散液から限外濾過により未吸着の顔料誘導体を分離し、透過水の誘導体濃度が顔料基準で0.002mmol/g以下までイオン交換水を加水しながら洗浄し、還流水のpHが9.0で顔料分散体の固形分が15重量%になるよう濃縮した。この時の処理顔料中のスルホン酸基量は顔料基準で0.18mmol/gであり、滴定による表面酸性基量とほぼ同じ値を示した。ゼータ電位の測定結果は−50であった。
【0049】
実施例3
C.I.ピグメントグリーン36をソルトミリングにより平均一次粒径を30nm以下とした微細化顔料20g、スルホン化した銅フタロシアニン誘導体(平均スルホン酸基導入量=1.6)2.4g、イオン交換水110gを混合し、混合液のpHが9以上になる様に水酸化ナトリウムを添加、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約5時間分散した。顔料濃度3重量%になるまでイオン交換水で希釈した顔料分散液から限外濾過により未吸着の顔料誘導体を分離し、透過水の誘導体濃度が顔料基準で0.003mmol/g以下までイオン交換水を加水しながら洗浄し、還流水のpHが9.0で顔料分散体の固形分が15重量%になるよう濃縮した。この時の処理顔料中のスルホン酸基量は顔料基準で0.12mmol/gであり、滴定による表面酸性基量とほぼ同じ値を示した。ゼータ電位の測定結果は−40であった。
【0050】
比較例1
C.I.ピグメントブルー15:3をソルトミリングにより平均一次粒径を50nm以下とした微細化顔料20g、スルホン化した銅フタロシアニン誘導体(平均スルホン酸基導入量=1.3)2g、イオン交換水110gを混合し、混合液のpHが9以上になる様に水酸化ナトリウムを添加、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約5時間分散した。
得られた顔料分散体は、粘度が高くフロキュレーションを起こし、未吸着量の顔料誘導体濃度は顔料基準で1.4mmol/gであった。さらに、顔料分散体を濃度3重量に希釈しNo.2濾紙へ滴下したところ、顔料誘導体の緑色のブリードが認められた。
【0051】
比較例2
C.I.ピグメントブルー16をソルトミリングにより平均一次粒径を30nm以下とした微細化顔料20g、C.I.リアクティブブルー2を8g、イオン交換水110gを混合し、混合液のpHが9以上になる様に水酸化ナトリウムを添加、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約5時間分散し、顔料分散体とした。
【0052】
比較例3
C.I.ピグメントブルー15:4をソルトミリングにより平均一次粒径を30nm以下とした微細化顔料20g、C.I.ダイレクトブルー86を2g、イオン交換水110gを混合し、混合液のpHが9以上になる様に水酸化ナトリウムを添加、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約5時間分散した。
【0053】
比較例4
C.I.ピグメントブルー15:3(20g)とモノスルホン化銅フタロシアニン顔料(0.4g)を12規定硫酸で溶解させ、硫酸溶液を水中に投入し水溶液とした。この水溶液にベンゼンを添加し、前記銅フタロシアニン顔料及びモノスルホン化銅フタロシアニンとを油相に移し、硫酸溶液部分を除去後ベンゼン留却により処理顔料を得た。得られた顔料を1規定水酸化ナトリウムで数回洗浄し、さらにイオン交換水で洗浄し処理銅フタロシアニン顔料とし、1価金属イオンおよび2価金属イオンを導入し、正帯電の顔料粒子とした。この顔料はアルカリ水性媒体中では凝集沈殿し、酸性水性媒体中で分散した。顔料中のスルホン酸基量は顔料基準で0.02mmol/gであったが、表面スルホン酸基量は検出限界下で測定不能であった。ゼータ電位の測定結果は精製水中で+5であった。
【0054】
【表1】
Figure 0003826615
【0055】
(実施例4〜6、比較例4〜7)
表2に示す組成の原料を攪拌槽に仕込み、ディスパーにより攪拌、混合を行った後、0.8μmのメンブランフィルターで濾過し、インクジェット用記録液を得た。得られたインクジェット用記録液について、粒径および粘度を測定し、保存安定性、吐出安定性、耐水性、耐目詰まり性を評価した。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
Figure 0003826615
【0057】
水溶性樹脂溶液:ジョンソンポリマー(株)製スチレン/アクリル系水溶性樹脂水溶液、
「ジョンクリルJ−62」、固形分約34%
活性剤:花王(株)製アニオン性界面活性剤「ペレックス0T−P」、固形分約70%
防黴剤:ゼネカ(株)製「プラクセルGXL」
【0058】
【発明の効果】
本発明の水性顔料分散体は、インクジェット用記録液に用いた場合に、優れた耐水性、保存安定性を有し、ノズルでの目詰まりが無く、長期にわたり安定な吐出を与える。また、紙に印字した印字品位において充分な濃度を有し、色域再現範囲が広く、染料タイプと比べて耐光性に優れている。そのため、オフィスにおける書類作成、郵便物の宛名書き、ダンボールのマーキング、ナンバーリング、バーコード付与等の分野でカラー化印字物として広範囲な分野で利用できる。
さらに、水性顔料分散体は、グラビアインキ、水性塗料、その他印刷インキ分野に用いることができる。

Claims (5)

  1. フタロシアニンに酸性官能基もしくはその塩を導入した水溶性フタロシアニン誘導体を溶解させた水性の液体中でフタロシアニン系顔料粒子を分散させて該フタロシアニン系顔料粒子の表面に上記水溶性フタロシアニン誘導体を吸着させる工程と、未吸着の上記水溶性フタロシアニン誘導体を限外濾過により除去する工程とからなり、顔料分散体中の未吸着の水溶性フタロシアニン誘導体の量が上記フタロシアニン系顔料を基準として1×10-2mmol/g以下であり、上記水溶性フタロシアニン誘導体を吸着させたフタロシアニン系顔料粒子は、ゼータ電位が−10〜−60の範囲の負帯電性であることを特徴とする水系顔料分散体の製造方法
  2. フタロシアニン系顔料が、無置換またはハロゲン基置換フタロシアニンであり、中心元素がH、Cu、Ti、Ni、Al、FeまたはCoである請求項記載の水系顔料分散体の製造方法
  3. フタロシアニン系顔料粒子が、粒子径が10〜500nmである請求項1または2記載の水系顔料分散体の製造方法
  4. フタロシアニン系顔料に吸着させた水溶性フタロシアニン誘導体の酸性基もしくはその塩としての官能基の総量が上記フタロシアニン系顔料を基準として0.01〜0.5mmol/gである請求項1ないし3いずれか記載の水系顔料分散体の製造方法
  5. 酸性官能基もしくはその塩を有するフタロシアニン化合物の合計の平均官能基数が1.0より多く2.0未満の混合物である請求項1ないし4いずれか記載の水系顔料分散体の製造方法
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