JP4304866B2 - 水性顔料分散体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水分散性、経時分散安定性に優れた水性顔料分散体およびその製造方法、さらに印字後の耐光性、耐水性、色相に優れ、ノズルでの吐出安定性の良好なインクジェット用記録液に使用する分散体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水性インキや水性塗料は、顔料を界面活性剤、分散樹脂等を用いて水中に分散させている。しかしながら、界面活性剤は泡立ちの問題があり、泡立ちを抑制するため消泡剤を併用するとレベリング性が低下する等の問題があった。又、分散樹脂は、比較的高粘度の顔料分散体においては有効であるが、低粘度の顔料分散体に関しては限定的な効果しか認められなかった。
【0003】
水に溶解する染料や顔料誘導体を用いて顔料を水に分散させる技術が知られている。例えば、特開昭56−155261号公報、特開昭56−155262号公報には、顔料と顔料と同じ色調を有する染料とを含む水性顔料分散体が開示されている。この手法によれば、染料の一部は顔料の表面に吸着することで水中での顔料の分散安定性が向上するが、染料の水に対する溶解性が顔料の粒子表面の親和性に比べて大きすぎるため、塗料やインキとした場合混色やブリードといった問題が生ずる。
【0004】
特開平10−36741号公報には、フタロシアニン顔料とカルボン酸基が導入されたフタロシアニン化合物を含む水性顔料分散体が開示されている。この技術によれば、ブリードの問題は改良されるが、未だ顔料の分散安定性に問題があった。
特開平11−49974号公報には、顔料と無機イオンと結合したスルホン酸基を導入した顔料誘導体とからなり水性顔料分散体が開示されている。この手法によれば、顔料の分散安定性は、顔料と一体となった顔料誘導体のスルホン酸基と塩形成した2価金属イオンの静電反発力により得られる。しかし、顔料分散工程で混入してくる程度の微量の2価金属イオンにより分散安定性をコントロールするのは生産技術上の困難があった。
【0005】
また、インクジェット用の記録液においては、プリンターの高解像化につれノズル径が細かくなってきており、これに伴い顔料粒子の粒子径も微細化する必要が生じている。しかしながら、顔料を含むインクジェット記録液の場合には、ノズルからの吐出安定性と再溶解(分散)性、印字後の発色性等のインクジェット用記録液に必要とされる要求を同時に満たすことは困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、経時での保存安定性に優れた水性顔料分散体を提供することを目的とする。
更に本発明は、インクジェットインキ用記録液に使用した場合のノズルでの吐出安定性、さらには印字した場合の充分な色再現性範囲を有し、優れた耐水性と耐光性の両立した性能を有する顔料型インクジェット用記録液に使用する分散体の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、顔料をスルホン化して分子中に1個以上のスルホン酸基を導入する工程と、反応生成物からスルホン酸基を2個以上有する顔料誘導体を除去して唯一のスルホン酸基を有するスルホン酸基含有顔料誘導体を濃縮する工程と、前記工程で得られたスルホン酸基含有顔料誘導体の存在下に該スルホン酸基含有顔料誘導体と同系の顔料の分子構造を有する顔料を水中に分散する工程とからなることを特徴とする水性顔料分散体の製造方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の顔料としては、フタロシアニン系、キナクリドン系、キナクリドンキノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系、ベンズイミダゾロン系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、溶性アゾ系、ペリレン系、ペリノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、アントラキノン系、ピランスロン系、アンスアンスロン系、フラバンスロン系およびインダンスロン系等の有機顔料から選ばれる。
【0009】
本発明の顔料は、上記の顔料を形成する顔料分子骨格の置換可能な任意の位置に置換基を有した化合物を包含する。これらの置換基としては、メチル基、エチル基などの低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基などの低級アルコキシ基、塩素、臭素などのハロゲン元素、ハロゲン置換アルキル基、カルボキシレート基、アセチル基、水酸基等がある。
【0010】
本発明の顔料の具体例をC.I.ピグメントナンバーにより例示する。
フタロシアニン系顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、16,C.I.ピグメントグリーン7、36等がある。
【0011】
キナクリドン系顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット19、42、C.I.ピグメントレッド122、192,202、206、207、209、C.I.ピグメントオレンジ48、49等がある。
イソインドリノン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー109、110、173、C.I.ピグメントオレンジ61等がある。
【0012】
イソインドリン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー139、185、
C.I.ピグメントオレンジ66、69、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントブラウン38等がある。
【0013】
キノフタロン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー138がある。
ジケトピロロピロール系顔料としては、C.I.ピグメントレッド254、255、264、272、C.I.ピグメントオレンジ71、73、等がある。
【0014】
ベンズイミダゾロン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー120、151、154、156、175、180、181、194、C.I.ピグメントオレンジ36、60、62、72、C.I.ピグメントレッド171、175、176、185、208、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントブラウン25等がある。
【0015】
不溶性アゾ系顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、21、22、23、31、32、37、38、41、95、111、112、114、119、136、146、147、148、150、164、170、184、187、188、210、212、213、222、223、238、245、253、256、258、261、266、267、268、269、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、6、13、15、16、22、24、34、38、44、C.I.ピグメントバイオレット13、25、44、50、C.I.ピグメントブラウン1、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、5、6、10、12、13、14、17、49、55、60、63、65、73、74、75、81、83、87、90、97、98、106、111、113、114、116、121、124、126、127、130、136、152、165、167、170、171、172、174、176、188、C.I.ピグメントブルー25等がある。
【0016】
縮合アゾ系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー93、94、95、128、166、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントレッド144、166、214、220、221、242、248、262、C.I.ピグメントブラウン23、41、42等がある。
【0017】
ペリレン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド123、149、178、179、190、224、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントブラック31、32等がある。
ペリノン系顔料としてはC.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントレッド194、バットレッド14等がある。
インジゴ系顔料としては、C.I.ピグメントブルー63、73015:X等がある。
チオインジゴ系顔料としては、C.I.ピグメントレッド88、181等がある。
ジオキサジン系顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット23、37等がある。
アンスラキノン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー99、108、123、147、193、199、C.I.ピグメントレッド83、89、177等がある。
ピランスロン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド216、226、C.I.ピグメントオレンジ40、51等がある。
【0018】
アンスアンスロン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントバイオレット31、バットオレンジ3等がある。
フラバンスロン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー24、バットイエロー1等がある。
インダンスロン系顔料としては、C.I.ピグメントブルー60、64、バットブルー4等がある。
金属錯体系顔料としては、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントイエロー117、129、150、153、177、179、257、271、C.I.ピグメントオレンジ59、65、68等がある。
ジケトピロロピロール系顔料としては、C.I.ピグメントレッド254、255、264、272、C.I.ピグメントオレンジ71、73等がある。
【0019】
本発明の水性顔料分散体における顔料粒子の平均一次粒径は、1000〜5nmが好ましく、更に好ましくは150〜5nmである。このような粒径の顔料を調整するため、粗製顔料または顔料品位の顔料をソルトミリング、ソルベントミリング等の湿式粉砕又は乾式粉砕して顔料の微細化処理を行う。
ソルトミリングとは、有機顔料と水溶性の無機塩からなる混合物に少量の水溶性の溶剤を加え,水冷等で30〜65℃に温度制御しながらニーダー等の混練機により混合物を強く混練した後、粉砕混合物を水中に投入し、水溶性の無機塩および水溶性の溶剤を溶解、除去するものである。
【0020】
水溶性の無機塩は、有機顔料の磨砕助剤として加えるものであり、有機顔料の2〜20重量倍、好ましくは3〜10重量倍を使用する。水溶性の無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等がある。水溶性の溶剤は、粘結および結晶防止のために加えるものであり、混合物中の水溶性の溶剤の量は、有機顔料の0.5〜5重量倍、好ましくは0.5〜3重量倍を使用する。水溶性の溶剤としては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびそれらのモノアルキルエーテル等がある。
本発明においてスルホン酸基含有顔料誘導体の存在下に顔料の微細化処理を実施することもできる。
【0021】
顔料の水性顔料分散体中での分散粒径は、レーザー光散乱粒度分布計により測定した平均粒径が10〜150nm、かつ250nm以上の粗大粒子が全粒子の1重量%以下、又、50nm<D50<150nmかつ150nm<D99<400nm、好ましくは150nm<D99<250nmである。平均分散粒径が大きすぎるとインクジェット用記録液として使用した場合吐出安定性を損なったり、沈殿を生じる等の欠点があり、粗大粒子が少なければ少ない程良い。
【0022】
本発明の水性顔料分散体は、顔料とスルホン酸基含有顔料誘導体は同じ化学構造であることが好ましい。これは単に顔料誘導体が分散させる顔料と同系であることを意味するだけではなく、同系の顔料と顔料誘導体であっても基本骨格が同じ構造であるものを選択することが有利であることを意味する。例えば、ベンズイミダゾロン系顔料には下記(1)〜(3)に示す基本骨格の異なるものがあるので、スルホン酸基含有顔料誘導体も、分散させる顔料と同じ基本骨格のものを選択することが好ましい。分散すべき顔料と顔料誘導体の基本分子骨格を同じとすることで顔料の粒子表面への顔料誘導体の吸着力が高まるため分散安定性が向上すると考えられる。
式(1)
【0023】
【化1】
Figure 0004304866
【0024】
式(2)
【0025】
【化2】
Figure 0004304866
【0026】
式(3)
【0027】
【化3】
Figure 0004304866
【0028】
本発明の顔料誘導体は分子中に唯一のスルホン酸基を有する。分子中に2個以上のスルホン酸基を有する顔料誘導体は、水に対する溶解性が大きいため顔料粒子表面への吸着力が小さくなり、顔料の分散安定性に寄与できないのみならず、水中に溶解した分子が顔料の分散安定性を妨げるので極力除去する必要がある。
【0029】
また、インクジェット用の記録液においても、経時での保存安定性が問題となっている。これは、顔料誘導体に含まれるn=2(スルホン酸基を2個含有する化合物)が安定性を悪くしていることが分かった。
【0030】
顔料にスルホン酸基を導入するのは、例えば、顔料に発煙硫酸や濃硫酸、クロロ硫酸などのスルホン化剤を作用させればよい。スルホン化は顔料分子にスルホン酸基が一つだけ導入される割合が最大になるように反応温度、反応時間などの反応条件を制御することが好ましい。しかしながら、スルホン化工程において全ての顔料分子にスルホン酸基を一つだけ導入することは困難であり、通常は一分子中に2個以上のスルホン酸基が導入された化合物および未反応物との混合物として得られる。このため、スルホン酸基を2個以上有する顔料誘導体は後工程で除去する必要がある。例えば、スルホン酸を含有する顔料誘導体(スルホン酸基を2個以上含有する化合物を含む。)を使用して顔料を分散処理して水性顔料分散体とした後、限外ろ過膜、半透膜、逆浸透膜等のを用いて水に溶解しているスルホン酸基を2個以上含有する顔料誘導体を除去してもよいし、顔料の分散に供する前にスルホン酸基含有顔料誘導体だけの分散体を調整し、スルホン酸基を2個以上有する顔料誘導体を除去しても良い。さらに、スルホン酸基含有顔料誘導体の分散液、もしくは水性顔料分散体を煮沸することで、スルホン酸基を2個以上有する顔料誘導体の水への溶解性を高くし、限外ろ過法によりそれらを除去することができる。なお、スルホン酸基を2個以上有する顔料誘導体は、唯一のスルホン酸基を有する顔料誘導体に対して20重量%、好ましくは15重量%以下とする。
【0031】
通常限外ろ過において、精製に使用する分散液は限外ろ過膜の温度耐性以下であればある程度加温して使用することが可能である。また、5℃以上80℃以下、好ましくは、10℃以上60℃以下の範囲であれば、温度の高い範囲で使用することで効率良く精製することができる。
【0032】
又、スルホン酸基含有顔料誘導体は、スルホン酸基を導入すべき顔料を基準として、分子中に唯一のスルホン酸基を有する顔料誘導体が60%以上、好ましくは70%以上であり、かつ2個以上のスルホン酸基を有する顔料誘導体が20%以下、好ましくは15%以下である。
【0033】
本発明のスルホン酸基含有顔料誘導体がアゾ系、ベンズイミダゾロン系のようなカップリング反応により得られる顔料の誘導体である場合、先ずスルホン酸基を一つ有するベース成分またはカップラー成分を製造し、次いで両者をカップリングさせることによっても本発明のスルホン酸基含有顔料誘導体を得ることもできる。
【0034】
本発明に使用する顔料誘導体の代表例を下記に示す。
【0035】
キナクリドン系顔料誘導体(a)
【0036】
【化4】
Figure 0004304866
【0037】
ジケトピロロピロール系顔料誘導体(b)
【0038】
【化5】
Figure 0004304866
【0039】
本発明のスルホン酸基含有顔料誘導体は、水性顔料分散体中、全スルホン酸基の少なくとも15%、好ましくは少なくとも30%が遊離の状態で存在する。すなわち、スルホン酸基は全量が実質的に遊離の状態で存在するか、全体の85%、好ましくは70%を越えない量のスルホン酸基がNa、K等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくは有機アミン塩を形成する。
【0040】
本発明においてスルホン酸基含有顔料誘導体の吸着した顔料は、顔料表面が負帯電となり、その静電反発により水中で分散するものと考えられ、分散安定効果を得るためにはスルホン酸基のカウンターイオンは解離度の高い1価金属であることが好ましい。又、本発明の水性顔料分散体中の顔料誘導体は顔料に吸着したものの他に水媒体中に溶解ないし分散しているものも存在し、これらの未吸着の顔料誘導体も分散体の安定性に何らかの寄与をしているものと推定されている。本発明の水性顔料分散体は、顔料粒子の表面を改質することによって顔料表面の水親和性を増加させ、分散剤、界面活性剤、水溶性樹脂などの外部的な分散助剤を必要とすることなく水中に安定する自己分散型の顔料分散体である。
【0041】
本発明においてスルホン酸基含有顔料誘導体の使用量は、顔料100重量部に対して3〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜25重量部である。顔料に対するスルホン酸基含有顔料誘導体の含有量が上記数値より小さくなると顔料の分散安定性が不足し、逆に大きくなると分散体の粘度が増加し分散性が低下するので好ましくない。また、本発明の水性顔料分散体の顔料濃度は10〜30重量%が好ましい。
【0042】
本発明の水性顔料分散体において、顔料の分散安定性を良好に保つため、水性分散体中のCa、Mg、Fe、Ba、Al、Ni等の2価以上の金属イオン、塩化物イオン、硫酸イオンを極力排除することが好ましい。これらの夾雑イオンの除去は、スルホン酸基含有顔料誘導体の水分散液もしくは最終的に得られた顔料分散体液に、限外ろ過精製、半透膜精製、イオン交換樹脂精製、キレート精製、酸洗浄等を行うことにより達成できる。しかしながら、これらの夾雑イオンは顔料や顔料誘導体を合成する過程や水性顔料分散体の製造工程で混入されてくるので、ある程度の量が存在することは避けられない。本発明によれば、水性顔料分散体中の固形分中の2価以上の金属イオンを500ppm以下、又、塩化物イオンと硫酸イオンの合計が、水性顔料分散体中100ppm以下、好ましくは70ppm以下とすることが好ましい。夾雑イオンの量が上記数値より多くなると、顔料が凝集、沈殿する傾向が避けられない。
【0043】
本発明の水性顔料分散体は、スルホン酸基含有顔料誘導体の存在下に顔料を水中に分散処理して得ることができる。この際、水はスルホン酸基含有顔料誘導体中の全スルホン酸基より少ない量の一価金属イオンを含有させることが好ましい。すなわち、顔料を分散させる水は、一価金属化合物によりpHが7〜11、好ましくは、8〜10となるように調整することが好ましい。使用する水は、2価以上の金属イオンを含まない精製水、純水またはこれに準ずる水を使用する。
【0044】
分散工程に使用する分散機としては、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」)等を用いることができる。分散機としてメディアを使うものには、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズを用いることができる。
【0045】
本発明の水性顔料分散体は、スルホン酸基含有顔料誘導体が高い解離度を示すため、アルカリ性が強すぎるとスルホン酸基に対するカウンターイオンの量が過剰となって顔料誘導体の水に対する溶解性または親水性が高くなるため、顔料表面への吸着力が低下し、分散安定性が低下する。このため、水性顔料分散体のpHは11を越えないようにすることが好ましい。
【0046】
本発明において水性顔料分散体の表面張力は、60mN/m以上、好ましくは60〜75mN/mとすることができる。このことにより、広範囲の表面張力を持ったインクジェット用記録液を調整することが可能となる。一般に、水性顔料分散体に活性剤や水性分散樹脂等を使用すると表面張力は低下するため、顔料分散剤として活性剤や水溶性分散樹脂を用いた水性顔料分散体は、表面張力が25〜50mN/mと低くなり、インクジェット用記録液は表面張力が狭い範囲に限定される。
又、本発明の水性顔料分散体は、pHが7〜10、伝導度が600μS/cm以下、粘度が4.0mPa・s以下、好ましくは1.0〜4.0mPa・sである。
【0047】
本発明の水性顔料分散体は、インクジェット用記録液100重量部中に0.5〜10重量部、さらには2〜8重量部含まれていることが好ましい。顔料が少なすぎると記録液としての充分な濃度が得られず、また多すぎると記録液として要求される吐出安定性、ノズルの耐目詰まり性が損なわれる。
【0048】
本発明のインクジェット用記録液には、紙への定着性、インキ塗膜の耐水性を向上させるために、水性樹脂を用いることができる。使用できる水性樹脂としては、水溶性樹脂と水分散性樹脂に大別でき、それぞれアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ブタジエン系樹脂、石油系樹脂、フッ素系樹脂等の水溶性樹脂および水分散性樹脂が挙げられる。
【0049】
水分散性樹脂の分散粒径は、重合操作や界面活性剤等により種々変えることができ、通常は数十〜数千nmの粒径のものが得られる。ノズルでの目詰まりを無くすためには、レーザー光散乱粒度分布計により測定した水分散性樹脂の平均粒径が20〜300nm、かつ500nm以上の粗大粒子が全樹脂粒子の3重量%以下、さらには平均粒径が50〜200nm、かつ500nm以上の粗大粒子が全樹脂粒子の2重量%以下であることが好ましい。
【0050】
水溶性樹脂または水分散性樹脂は、インクジェット用記録液100重量部中に0.05〜5重量部、さらには0.1〜3重量部含まれていてもよい。
【0051】
本発明のインクジェット用記録液には、表面張力調整用、紙への浸透性の調整用として、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の界面活性剤や高分子界面活性剤を用いることができる。
【0052】
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が例示できる。
【0053】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等の非イオン性界面活性剤が例示できる。
【0054】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が例示できる。
両イオン性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等が例示できる。
【0055】
高分子界面活性剤としては、アクリル系水溶性樹脂、スチレン/アクリル系水溶性樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂等が例示できる。
界面活性剤は、必要に応じてアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、高分子界面活性剤等の2種以上を併用しても良い。
【0056】
本発明の水性顔料分散体およびインクジェット用記録液は、水系媒体中に顔料、顔料誘導体および必要に応じて水系樹脂その他の添加剤により構成される。
水系媒体とは、水、水と混和可能な有機溶媒およびそれらの混合物を表し、水としては、金属イオン等を除去したイオン交換水ないし蒸留水を、水性顔料分散体またはインクジェット用記録液の49〜95重量%の範囲で用いられる。
【0057】
本発明において水性溶剤とは水と混和可能な有機溶剤であり、インクジェット用記録液としてのノズル部分での乾燥、記録液の固化を防止し、安定な記録液の噴射およびノズルでの経時の乾燥を防止するものであり、単独ないし混合して記録液の1〜50重量%、好ましくは2〜25重量%の範囲で用いられる。
【0058】
水性溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ケトンアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、N−メチル−2−ピロリドン、2,4,6−ヘキサントリオール、テトラフルフリルアルコール、4−メトキシ−4メチルペンタノン等を例示できる。
また、記録液の乾燥を速める目的においては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類も用いることができる。
【0059】
本発明のインクジェット用記録液には、必要に応じて下記の様な種々の添加剤を用いることができる。
記録液の被印刷体が紙のような浸透性のある材料のときは、紙への記録液の浸透を早め見掛けの乾燥性を早くするため浸透剤を加えることができる。
浸透剤としては、水性溶剤で例示したジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル、アルキレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル。ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等を用いることができる。これらは、記録液の0〜5重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲で用いられる。浸透剤は上記使用量で十分な効果があり、これよりも多いと印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こし好ましくない。
【0060】
防腐剤は、記録液への黴や細菌の発生を防止する目的で添加し、防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩等が用いられる。これらは、記録液中に0.05〜1.0重量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0061】
キレート剤は、記録液中の金属イオンを封鎖するものであり、ノズル部での金属の析出や記録液中での不溶解性物の析出等を防止するものであり、エチレンジアミンテトラアセティックアシッド、エチレンジアミンテトラアセティックアシッドのナトリウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシッドのジアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシッドのテトラアンモニウム塩等が用いられる。これらは、記録液中に0.005〜0.5重量%の範囲で用いられる。
【0062】
また、記録液のpHを調整し、記録液の安定または記録装置中の記録液配管との安定性を得るため、アミン、無機塩、アンモニア等のpH調整剤、リン酸等の緩衝液を用いることができる。
また、記録液の吐出時あるいは配管内部での循環、移動、または記録液の製造時の泡の発生を防止するため消泡剤を添加することもできる。
【0063】
本発明のインクジェット用記録液は、顔料分散体および水系樹脂を水系媒体中に分散し、適宜水で希釈、他の添加剤を混合することにより製造できる。
分散は、ディスパー、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて行うことができる。また、混合攪拌は通常の羽を用いた攪拌機による攪拌の他、高速の分散機、乳化機等により行うことができる。
【0064】
混合された記録液は、希釈の前または後に、孔径0.65μm以下のフィルター、さらには孔径0.45μm以下のフィルターにて十分濾過することが好ましい。フィルター濾過に先立ち遠心分離による濾過を行うこともでき、これにより、フィルター濾過における目詰まりを少なくし、フィルター交換を少なくできる。
【0065】
記録液は、記録装置の方式にもよるが、粘度0.8〜15cps(25℃)の液体として調整することが好ましい。表面張力は、25〜73dyn/cmに調整することが好ましい。pHは、特に制約されないが7〜10の弱アルカリ性が好ましい。
【0066】
本発明の水性顔料分散体は、インクジェット用記録液に用いた場合に、優れた耐水性、保存安定性を有し、ノズルでの目詰まりが無く、長期にわたり安定な吐出を与える。また、紙に印字した印字品位において充分な濃度を有し、色域再現範囲が広く、染料タイプと比べて耐光性に優れている。そのため、オフィスにおける書類作成、郵便物の宛名書き、ダンボールのマーキング、ナンバーリング、バーコード付与等の分野でカラー化印字物として広範囲な分野で利用できる。
さらに、水性顔料分散体は、グラビアインキ、水性塗料、その他印刷インキ分野に用いることができる。
【0067】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。実施例中、部は重量部を表す。
なお、顔料誘導体中のスルホン酸基が1個である化合物(n=1)の成分比測定、2価以上の金属イオン含有量、粒径、粘度、表面張力、伝導度、保存安定性、起泡性、ゼータ電位の測定、およびインクジェット用記録液の粒径、粘度、表面張力、保存安定性、吐出安定性、耐水性、耐目詰まり性の評価、普通紙への印字品質の測定等は下記の方法で行った。
【0068】
(1)顔料誘導体中のスルホン酸基を1個有する化合物(n=1)の成分比測定顔料誘導体をメタノール、ジメチルホルムアミド、水などの極性溶媒に溶解させ、逆相のHPLC(HPLC用カラム:日本分光製CrestpakC18S)を用いて分離し測定した。
【0069】
(2)2価以上の金属イオン量の測定
顔料、顔料誘導体および顔料分散体を乾燥し、乾燥粉体を硝酸、過塩素酸水溶液で酸分解した水溶液を発光分光分析によりカルシウム量、マグネシウム量、鉄量、バリウム量、アルミニウム量、ニッケル量を分析し、それらの合計量を2価以上の金属イオン量とした。
【0070】
(3)塩化物イオン量と硫酸イオン量の測定
顔料分散体を精製水で測定可能範囲まで希釈し、イオンクロマトグラフ測定装置(DIONEX社製2010i)、カラム(DIONEX社製IonPacAS4A)を用いて顔料分散体の塩化物イオンと硫酸イオン含有量を測定した。
【0071】
(4)顔料の平均粒径
顔料を溶剤に分散させ、セル上に塗布したあと透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察し平均粒径を求めた。
【0072】
(5)分散粒径
レーザー回折方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用いて測定し、D50、D99を測定した。
【0073】
(6)粘度
低粘度領域では振動式粘度計(山一電気社製「VM−1A」)、中粘度領域以上についてはB型粘度計を用いて25℃における粘度を測定した。
【0074】
(7)表面張力
表面張力計(協和界面化学社製「CBVP−Z」)で25℃における表面張力を測定した。
【0075】
(8)伝導度測定
伝導度計(HORIBA社製「DS−12」)を用いて25℃における伝導度を測定した。
【0076】
(9)保存安定性
水性顔料分散体では、60℃での粒径変化が15nm未満および粘度の変化が0.5cps未満である保存期間の日数を示した。保存安定性が一日以下の場合については×で示した。
インクジェット用記録液では、60℃で3ヶ月保存後の粒径および粘度の変化から保存安定性を評価した(○:粒径の変化15nm未満かつ粘度の変化0.2cps未満、×:粒径の変化15nm以上または粘度の変化0.2cps以上)。
【0077】
(10)起泡性
50mlの蓋付きスクリュー管に水性顔料分散体を30ml加え、上下に20回程激しく振り、3分後の泡の状態で起泡性を評価した(◎:泡が消失、○:泡がスクリュー管内面に少し、△:泡が全面にあり起泡高さ3mm未満、×:泡が全面にあり起泡高さ3mm以上)。
【0078】
(11)ゼータ電位測定
顔料分散体を精製水で測定可能範囲まで希釈し、ゼータ電位測定装置(日機装社製「Zeta PALS」)によって顔料分散体のゼータ電位を測定した。
(12)吐出安定性
インクジェット用記録液をインクジェットプリンター(エプソン社製「HG−5130」)のカートリッジに詰めて、普通紙(ゼロックス社製「K」)に印字を行い、吐出安定性を評価した。(○:ノズルから120分以上安定に連続吐出する、△:連続吐出120分以内で液滴の着弾位置に乱れが生ずる、×:ノズルから安定に吐出しない)。
【0079】
(13)耐水性
(12)で得られた印字物を、水に濡らしたのち指で擦り、印字物の変化を目視で評価した(○:インキの滲み、剥がれが認められない、×:インキの滲み、剥がれが認められる)。
【0080】
(14)耐目詰まり性
(12)と同様にして印字後にプリンタのキャップを外し、1時間後に再度印字を行い、目詰まりの有無を評価した(○:ノズルの目詰まり無し、×:ノズルの目詰まり有り)。
【0081】
(15)印字品質
インクジェット用記録液をインクジェットプリンター(エプソン社製「PM−750C」)のカートリッジに詰めて、普通紙(ゼロックス社製「4024」)にMS明朝により文字サイズ10Pで印字を行い、インキのフェザーリング性を評価した。(○:フェザーリングが殆どなく、「龍」の字がにじまずに判別可能、×:フェザーリングが有り、にじみにより「龍」の字が判別困難。
【0082】
実施例1(キナクリドン系顔料)
(顔料誘導体 (a) の製造)
C.I.ピグメントバイオレット19 200部を98重量%硫酸2000部に20℃以下で添加した。次に、昇温し85℃で2.5時間撹拌した後、氷水に投入し析出させた。沈殿物をろ過、食塩水で洗浄し顔料のスルホン化物の水ペースト1500部(乾燥時300部)を得た。この顔料のスルホン化物のn=1(スルホン酸基を1個含有する化合物)成分比は59%、n=2(スルホン酸基を2個含有する化合物)成分比は22%、残りは無置換体であった。
次に、この顔料のスルホン化物の水ペーストをイオン交換水でリスラリーして2重量%水分散液(150L)に調整し、3時間煮沸をおこなった。この水分散体を常温に戻し、限外ろ過精製を150Lの4倍量のイオン交換水を用いておこなった。この煮沸および限外ろ過の工程を顔料のスルホン化物のn=2(スルホン酸基を2個含有する化合物)成分比が3%になるまで繰り返した。最終的に得られた顔料のスルホン化物のn=1(スルホン酸基を1個含有する化合物)成分比は72%、n=2(スルホン酸基を2個含有する化合物)成分比は3%、残りは無置換体であった。また、2価以上の金属イオン含有量は730ppm、塩化物イオンと硫酸イオンの合計含有量は56ppmであった。さらに発光分光分析測定結果より、硫黄分およびナトリウム分がそれぞれ13600ppm(425μmol/g)および9900ppm(247μmol/g)あったことから、中和率は58%であった。この顔料誘導体(a)を濃縮し、濃度3重量%の水分散液に調整した。
【0083】
(水性顔料分散体の調整)
C.I.ピグメントレッド122(2価以上の金属イオン含有量を385ppmを含有する)20g、上記の顔料誘導体(a)の水分散体80gおよびイオン交換水60gを混合し、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約7時間分散し水性顔料分散体を得た。
【0084】
実施例2(キナクリドン系顔料)
(水性顔料分散体の調整)
C.I.ピグメントレッド122(2価以上の金属イオン含有量を400ppmを含有する)20g、顔料誘導体(a)の水分散体60gおよびイオン交換水60gを混合し、顔料誘導体の中和率が100%となるよう、2重量%トリエタノールアミンを9g添加、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約7時間分散し水性顔料分散体を得た。
【0085】
実施例3(ジケトピロロピロール系顔料)
(顔料誘導体 (b) の製造)
C.I.ピグメントレッド264 200部を22重量%発煙硫酸1500部に20℃以下で添加した。次に、昇温し75℃で5時間撹拌した後、氷水3500部に投入し析出させた。沈殿物をろ過、食塩水で洗浄し顔料のスルホン化物の水ペースト1500部(乾燥時271部)を得た。この顔料のスルホン化物のn=1(スルホン酸基を1個含有する化合物)成分比は70%、n=2(スルホン酸基を2個含有する化合物)成分比は16%、残りは無置換体であった。
次に、この顔料のスルホン化物の水ペーストをイオン交換水でリスラリーして2重量%水分散液(136L)に調整し、3時間煮沸をおこなった。この水分散体を常温に戻し、限外ろ過を136Lのイオン交換水を用いておこなった。この煮沸および限外ろ過を顔料のスルホン化物のn=2(スルホン酸基を2個含有する化合物)成分比が4%になるまで繰り返した。最終的に得られた顔料のスルホン化物のn=1(スルホン酸基を1個含有する化合物)成分比は82%、n=2(スルホン酸基を2個含有する化合物)成分比は4%、残りは無置換体であった。また、2価以上の金属イオン含有量は478ppm、塩化物イオンと硫酸イオンの合計含有量は70ppmであった。さらに発光分光分析測定結果より、硫黄分およびナトリウム分がそれぞれ15300ppm(478μmol/g)および13000ppm(325μmol/g)であったことから、中和率は68%であった。
この顔料誘導体(a)を濃縮し、濃度3重量%の水分散液に調整した。
【0086】
(水性顔料分散体の調整)
C.I.ピグメントレッド264(2価以上の金属イオンを477ppm含有する)20g、顔料誘導体(b)の水分散液80gおよびイオン交換水60gを混合し、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約7時間分散し顔料分散体を得た。
【0087】
実施例4(ジケトピロロピロール系顔料)
(水性顔料分散体の調整)
C.I.ピグメントレッド264(2価以上の金属イオンを520ppm含有する)20g、実施例3の顔料誘導体(b)の水分散液60gおよびイオン交換水60gを混合し、顔料誘導体の中和率が100%となるよう、2重量%トリエタノールアミンを11g添加、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約7時間分散し顔料分散体を得た。
【0088】
比較例1(キナクリドン系顔料)
(顔料誘導体(c)の製造)
実施例1において煮沸および限外ろ過を行なわないほかは、実施例1と同様の操作により顔料のスルホン化物の水ペーストを得た。この顔料のスルホン化物のn=1(スルホン酸基を1個含有する化合物)成分比は59%、n=2(スルホン酸基を2個含有する化合物)成分比は22%、残りは無置換体であった。また、2価以上の金属イオン含有量は760ppm、塩化物イオンと硫酸イオンの合計含有量は70ppmであった。さらに発光分光分析測定結果より、硫黄分およびナトリウム分がそれぞれ24500ppm(765μmol/g)および15900ppm(398μmol/g)あったことから、中和率は52%であった。この顔料誘導体(c)を濃縮し、濃度3重量%の水分散液に調整した。
【0089】
(水性顔料分散体の調整)
C.I.ピグメントレッド122(2価以上の金属イオン含有量を444ppmを含有する)20g、上記の顔料誘導体(c)の水分散体80gおよびイオン交換水60gを混合し、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約7時間分散し水性顔料分散体を得た。
【0090】
比較例2(キナクリドン系顔料)
(水性顔料分散体の調整)
C.I.ピグメントレッド122(2価以上の金属イオン含有量を420ppmを含有する)20g、比較例1の顔料誘導体(c)の水分散体60gおよびイオン交換水60gを混合し、2重量%トリエタノールアミンを10g添加、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約7時間分散し水性顔料分散体を得た。
【0091】
比較例3(ジケトピロロピロール系顔料)
(顔料誘導体 (d) の製造)
実施例3において煮沸および限外ろ過精製を行なわないほかは、実施例3と同様の操作により顔料のスルホン化物の水ペーストを得た。この顔料のスルホン化物のn=1(スルホン酸基を1個含有する化合物)成分比は70%、n=2(スルホン酸基を2個含有する化合物)成分比は16%、残りは無置換体であった。また、2価以上の金属イオン含有量は500ppm、塩化物イオンと硫酸イオンの合計含有量は78ppmであった。さらに発光分光分析測定結果より、硫黄分およびナトリウム分がそれぞれ23600ppm(737μmol/g)および17800ppm(442μmol/g)あったことから、中和率は60%であった。この顔料誘導体(d)を濃縮し、濃度3重量%の水分散液に調整した。
【0092】
(水性顔料分散体の調整)
C.I.ピグメントレッド264(2価以上の金属イオンを480ppm含有する)20g、上記の顔料誘導体(d)の水分散液80gおよびイオン交換水60gを混合し、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約7時間分散し顔料分散体を得た。
【0093】
比較例4(ジケトピロロピロール系顔料)
(水性顔料分散体の調整)
C.I.ピグメントレッド264(2価以上の金属イオンを505ppm含有する)20g、実施例3の顔料誘導体(d)の水分散液60gおよびイオン交換水60gを混合し、顔料誘導体の中和率が100%となるよう、2重量%トリエタノールアミンを8g添加、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェーカーを用いて約7時間分散し顔料分散体を得た。
各例で得られた水性顔料分散体の評価結果を表1に示した。
【0094】
【表1】
Figure 0004304866
【0095】
実施例5〜8および比較例5〜8
表2に示す組成の原料を攪拌槽に仕込み、ディスパーにより攪拌、混合を行なった後、0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、インクジェット用記録液を得た。得られたインクジェット用記録液について、粒径および粘度を測定し、保存安定性、吐出安定性、耐水性、耐目詰まり性を評価した。
結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
Figure 0004304866
【0097】
水溶性樹脂溶液:ジョンソンポリマー(株)製スチレン/アクリル系水溶性樹脂水溶液、
「ジョンクリルJ−62」、固形分約34%
活性剤:花王(株)製アニオン性界面活性剤「ペレックス0T−P」、
固形分約70%
防黴剤:ゼネカ(株)製「プラクセルGXL」
【0098】
【発明の効果】
本発明の水性顔料分散体は、顔料をスルホン化して分子中に1個以上のスルホン酸基を導入する工程と、反応生成物からスルホン酸基を2個以上有する顔料誘導体を限外ろ過法を用いて除去して唯一のスルホン酸基を有するスルホン酸基含有顔料誘導体を濃縮する工程と、前記工程で得られたスルホン酸基含有顔料誘導体の存在下に該スルホン酸基含有顔料誘導体と同系の顔料の分子構造を有する顔料を水中に分散する工程とからなることを特徴とする水性顔料分散体の製造方法を用いることで、高顔料濃度範囲で、低伝導度、高い表面張力を持ち、経時分散安定性に優れた水性顔料分散体を得ることができた。
又、本発明は、
・にじみがなく高品位な記録画像が得られること、
・記録液の乾燥、定着速度が速いこと、
・ノズルや記録液流通経路で目詰まりせず、安定して記録液が吐出すること、
・記録液の保存安定性が良いこと、
・記録濃度が高いこと、
・印刷物の耐候性、耐水性が良いこと
等の要求特性を満たす水性インクジェット用記録液に使用できる水性顔料分散体の製造方法を提供することができた。

Claims (7)

  1. 顔料をスルホン化して分子中に1個以上のスルホン酸基を導入する工程と、反応生成物からスルホン酸基を2個以上有する顔料誘導体を除去して唯一のスルホン酸基を有するスルホン酸基含有顔料誘導体を濃縮する工程と、前記工程で得られたスルホン酸基含有顔料誘導体の存在下に該スルホン酸基含有顔料誘導体と同系の顔料の分子構造を有する顔料を水中に分散する工程とからなることを特徴とする水性顔料分散体の製造方法。
  2. 反応生成物からスルホン酸基を2個以上有する顔料誘導体を除去する工程が限外ろ過法である請求項1記載の製造方法。
  3. 顔料が縮合多環系顔料である請求項1または2記載の製造方法。
  4. 一価金属イオン、アンモニアまたは有機アミンを含む水中に分散させる請求項1ないし3いずれか記載の製造方法。
  5. 水性顔料分散体の固形分中の2価以上の金属イオン含有量が500ppm以下である請求項1ないし4いずれか記載の製造方法。
  6. 顔料が粒子の平均一次粒子径が150nm以下である請求項1ないし5いずれか記載の製造方法。
  7. 顔料が、粒子の分散粒子径が50nm<D50<150nmかつ150nm<D99<400nmである請求項1ないし6いずれか記載の製造方法。
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