JP5263568B2 - 顔料分散体、顔料インクの製造方法及びこれを用いた記録装置、記録物 - Google Patents
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しかし、顔料は染料と異なり水不溶性であるため、顔料を水中に微粒子状態で安定に分散することが重要であるが、この分散は必ずしも簡単ではない。特に、顔料分散系に対する温度条件が変化すると分散剤の顔料の吸着平衡がくずれ、これが顔料粒子同士の相互作用に影響を及ぼし、長期の保存において物性の変化及び/又は多量の凝集異物を発生することが多々ある。インクジェットプリンター用インクにとって、こうした物性変化(特に、粘度変化)及び/又は多量の凝集異物の発生は致命的である。これらは、ヘッドにおける特性の変化及び/又は吐出ノズルの目詰まりを起こすため、適正な印字が不可能となってしまうからである。画像の精細性向上のためにインクの粒子径を小さくすることがのぞまれるが、顔料インクの分散においては分散機の方式、分散プロセス条件等の選択次第では小粒径となると、液の凝集がしやすく、吐出安定性が保証できなくなり、いまだこの課題を十分解決したものはない。ノズルの目詰まりや色域を改善するには顔料の平均粒径を小さくする必要があるが、現在多く用いられているスチレン−アクリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体(特許文献1:特開昭56−147863号公報等)、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物(特許文献2:特開昭61−083267号公報等)等の高分子分散剤を用いたインク、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル(特許文献3:特開平5−105837号公報等)、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル硫酸塩(特許文献4:特開平10−168367号公報等)、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテルリン酸塩(特許文献5:特開平10−88050号公報等)等の界面活性剤を用いたインクのいずれにおいても顔料の平均粒径が大きく、色調の鮮明性、吐出安定性や液安定性に劣るものであった。
しかし、ビーズ径が小さくなりすぎると、ビーズ1個あたりの質量が小さくなり顔料との衝突の際に顔料に対する衝撃力が格段に弱くなり、顔料の分散に長時間を要したり、顔料の微粒子分散ができなくなったりする。さらには、分散機内部でビーズと顔料分散混合液を分離することができない。このため、従来、特に顔料を微粒子分散する場合にはビーズの直径を0.2mmから1.0mmのサイズのものが使用されている。
また、特許文献10(特開平10−60331号公報)には超音波の周波数と出力を規定した製造方法、特許文献11(特開2003−301122号公報)には溶剤除去前の乳化温度を規定し、メディア型分散機、高圧分散機、超音波分散機のいずれかで分散する製造方法、特許文献12(特開2000−7936号公報)にはカーボン種、粒径を規定し、超音波分散機で分散する製造方法などが提案されてきた。
しかし、これらの方法で得られた水系顔料分散体の保存性は著しく低下したり、水系顔料分散体の生産性を低下させるという問題が発生した。
即ち、上記課題は、本発明の(1)「少なくともカーボンブラック顔料、分散剤及び水を含む混合物を、メディアミルを用いて分散した後にメディアレスミルで再分散し、該メディアレスミルとして超音波分散機を用いる段階を含む製造工程により、顔料粒子の平均粒子径(D50)が200nm以下で、該顔料粒子の粒度分布における粒子径標準偏差が平均粒子径(D50)より小さい顔料を分散してなる顔料分散体を得るものであり、
前記カーボンブラック顔料の固形分濃度が10%以上40%以下であり、前記分散剤を、顔料1に対し0.01以上2以下含有し、前記分散剤がナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物であり、該ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物は、ナフタレンスルホン酸の2量体、3量体、4量体の合計含有量が20重量%以上80重量%以下であることを特徴とする顔料分散体の製造方法」、
(2)「前記メディアミルとして、直径0.01mm以上0.5mm以下のジルコニアビーズを使用して分散、又は再分散することを特徴とする前記第(1)項に記載の顔料分散体の製造方法」、
(3)「前記カーボンブラックは、BET比表面積が100乃至400m2/gであり、平均一次粒子径は10乃至30nmであることを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載の顔料分散体の製造方法」、
(4)「前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の顔料分散体の製造方法で製造されたことを特徴とする顔料分散体」、
(5)「前記第(4)項に記載の前記顔料分散体を使用したことを特徴とする顔料インク」、
(6)「前記第(5)項に記載の顔料インクを収容したことを特徴とするインクカートリッジ」、
(7)「前記第(5)項に記載の顔料インクを吐出させて記録を行なう方式のヘッドを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置」
(8)「前記第(7)項に記載のインクジェット記録装置を用いて印字することを特徴とする画像形成方法」、
(9)「前記第(8)項に記載の画像形成方法で印字されたことを特徴とする画像形成物」、
(10)「画像支持体が紙であることを特徴とする前記第(9)項に記載の画像形成物」により達成される。
前記のように本発明の顔料分散体及び顔料インクの特徴は、顔料粒子の平均粒径(D50)が200nm以下であり、且つ顔料粒子の粒度分布に於ける粒子径標準偏差が平均粒子径(D50)より小さく、かつ、高い生産性で得られたものであることにある。顔料粒子の平均粒子径(D50)は好ましくは150nm以下であり、さらに好ましくは120nm以下である。平均粒子径(D50)が200nmを超えると、吐出性が劣る。なお、本発明に於ける平均粒径(D50)は常法により測定することは可能であるが、たとえば日機装(株)製の粒度分析計UPA150を使用して測定することができる。また、本発明でいう粒子径標準偏差も常法により測定することは可能であるが、これも例えば、日機装(株)製の粒度分析計UPA150を使用して測定して得た測定値sdを使用することができる。平均粒子径(D50)及び粒子径標準偏差は、分散機を用いて顔料を分散する際、分散機回転部周速、分散時間、分散液流量、分散液温度によって制御することが可能である。この場合、顔料粒子の平均粒径(D50)が200nm以下であり、且つ顔料粒子の粒度分布に於ける粒子径標準偏差が平均粒子径(D50)より小さするには分散機回転部周速はあまり高過ぎると顔料分散液が凝集しやすく、低すぎると分散効率が悪く生産性が落ちる。
上記超音波処理装置の条件は、250〜3000Wの出力及び20〜50kHzの周波数とする。上記超音波処理における出力が250Wに満たないと分散の進行が遅くなり、顔料の分散に長時間を要するばかりか、粗大粒子が分散せず粒径分布が広くなり、3000Wを超えると分散にとっては良好な結果となるが、水系顔料分散体の温度制御が困難になったり、これに因る水系顔料インク物性の変化などの悪影響が出る。上記出力は300〜2500Wであることが好ましく、500〜2000Wであることが更に好ましい。また、上記超音波処理における周波数は、通常の超音波処理において用いられる周波数よりも高いものであり、該周波数が20kHzに満たないとやはり先にも述べたとおり分散が進行せず、粒径分布が広くなり、50kHzを超えると顔料の再凝集が起こりやはり分散が不安定になり、所望の粒径分布が得られなくなる。
本発明においてはメディアミル分散の前にプレ分散として上記メディアレスミルを用いて分散しても良く、特に1μ以上の粗大粒子の分散性がアップし、後のビーズミル分散時の顔料粒子の粒度分布に於ける粒子径標準偏差が寄り小さくなり好ましい。また、メディアミル分散の後に上記メディアレスミルを用いて、荒れた顔料表面が修復され、分散安定性が向上する。
また、分散剤のナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物のナフタレンスルホン酸の2量体、3量体、4量体の合計含有率がナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物全体に対して80%を超えると粘度が高くなり、分散が困難になることもある。
ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物は、ナフタレンスルホン酸ナトリウ
ムとホルムアルデヒドとの縮合物であり、上記縮合物の繰り返しからなるものであれば特
に限定されない。
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール1,3−ブチルグリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ぺンタンジオール、1,6−へキナンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ぺトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノべンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等である。これらの湿潤剤は、単独又は2種類以上混合して使用することができる。
具体的には、ノニオン系界面活性剤としては、BTシリーズ(日光ケミカルズ)ノニポールシリーズ(三洋化成)、D-,P-シリーズ(竹本油脂)サーフィノールシリーズ(エアープロダクツ)オルフィンシリーズ(日信化学)EMALEX DAPEシリーズ(日本エマルジョン)、シリコーン系界面活性剤(東レダウコーニング等)、フッ素系界面活性剤(ネオス,住友3M,Dupont,ダイキン)等として、入手できる。
前記加熱処理を実施した水系顔料分散体から水系顔料インクとする場合、あるいは未加熱処理水系顔料分散体を用いて作成した水系顔料インクに対して前記加熱処理を実施した水系顔料インクの場合のいずれにおいても、水系顔料インクの作成後に、金属フィルター、メンブレンフィルター等を用いた減圧・加圧濾過や遠心分離機による遠心濾過を行い、粗大粒子、異物(ほこり・ごみ)等を除去するのが好ましい。
このうち、紙が経済性の点と画像の自然さの点で最も好ましい。
<顔料分散体(A)>
・カーボンブラック NIPEX160 250部
(degussa社製:BET比表面積150m2/g、平均一次粒子径20nm)
・ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物
(竹本油脂(株)製:パイオニンA−45−PN)
(ナフタレンスルホン酸2量体、3量体、4量体の合計含有量:49%) 38部
・蒸留水 712部
上記の混合物をプレミックス後ディスクタイプのメディアミル(シンマルエンタープライゼス社KDL型)で0.3mmジルコニアビーズを用いて周速10m/s、液温10℃で5分循環分散し、さらに、メディアレスミル(UIP2000 ヒールッシャー社、超音波型)で5分循環分散、遠心分離機(久保田商事(株)製Model−7700)で粗大粒子を遠心分離し、顔料分散体(A)を得た。
実施例1のメディアレスミルをDG2000((株)オステム製、超音波型)にする以外は同様にして、顔料分散体(B)を得た。
実施例1のメディアレスミルをSONIFIFER 2020(ブランソン社製、超音波型)にする以外は同様にして、顔料分散体(C)を得た。
実施例1の処方の混合物をプレミックス後プレ分散としてメディアレスミル(UIP2000 ヒールッシャー社、超音波型)で5分循環分散し、ディスクタイプのメディアミル(寿工業社製UAM-015型)で0.03mmジルコニアビーズを用いて周速10m/s、液温10℃で5分循環分散し、遠心分離機(久保田商事(株)製Model−7700)で粗大粒子を遠心分離し、顔料分散体(D)を得た。
実施例4のメディアレスミルをDG2000((株)オステム製、超音波型)にする以外は同様にして、顔料分散体(E)を得た。
実施例4のメディアレスミルをSONIFIFER 2020(ブランソン社製、超音波型)にする以外は同様にして、顔料分散体(F)を得た。
実施例1のカーボンブラックをColor Black FW2000(degussa社製:BET比表面積460m2/g)に変更する以外は同様にして顔料分散体(G)を得た。
実施例1のカーボンブラックをPrinteX25(degussa社製:BET比表面積45m2/g)に変更する以外は同様にして、顔料分散体(H)を得た。
実施例1のカーボンブラックをSpecial Black250(degussa社製:平均一次粒子径56nm)に変更する以外は同様にして、顔料分散体(I)を得た。
実施例1のナフタレンスルホン酸2量体、3量体、4量体の合計含有量を49重量部から15重量部に変える以外は同様にして、顔料分散体(J)を得た。
実施例1のナフタレンスルホン酸2量体、3量体、4量体の合計含有量を49重量部から90重量部に変える以外は同様にして、顔料分散体(K)を得た。
実施例1においてメディアレスミル分散を行わない以外は同様にして、顔料分散体(L)を得た。
実施例4のメディアレスミルをナノマイザー(吉田機械興行(株)製)にする以外は同様にして、顔料分散体(M)を得た。
実施例4のメディアレスミルをアルテマイザー((株)スギノマシン製)にする以外は同様にして、顔料分散体(N)を得た。
実施例1の分散時間を5分間から1分間に変える以外は同様にして、顔料分散体(O)を得た。
上記の方法で得られた顔料分散体(A)〜(O)のD50及び標準偏差(sd)を日機装(株)製の粒度分析計UPA150EXを使用して測定した結果は表-1に掲載した。
又粗大粒子数(0.5μm以上)は粒度分布測定装置アキュサイザー780(Particle Sizing Systems社)により測定した。
上記の方法で得られた顔料分散液(A)〜(O)を用いて下記インク処方1により顔料インクを調整し、30分攪拌後孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過、真空脱気して(a)〜(o)の実施例・比較例の顔料インク液を得た。
顔料分散体(顔料濃度25%) 40.0部
グリセリン 7.5部
ジエチレングリコール 15.0部
2―エチル−1,3−ヘキサンジオール 3.0部
2−ピロリドン 3.0部
ポリオキシエチレン(3)アルキル(C13)エーテル酢酸ナトリウム
0.5部
蒸留水 31.0部
上記の顔料分散体(A)〜(O)、及び顔料インク(a)〜(o)に含まれる液中の粒子の平均粒径を測定した。またEPSON社製インクジェットプリンタEM−930Cでゼロックス(株)社製PPC用紙XEROX4024に印字し、吐出安定性及び印字画像をXrite濃度計にて測定した。又インク液保存安定性についても下記試験法により評価した。測定結果を表1に示す。
吐出安定性については、印刷物を印刷した後、プリンタヘッドにキャップした状態でプリンタを40℃の環境下で1ヶ月放置した。放置後のプリンタの吐出状態が初期の吐出状態に回復するか否かを下記のクリーニング動作回数によって評価した。
○:1回の動作により回復した。
△:2回〜3回の動作により回復した。
×:3回以上の動作によっても回復がみられなかった。
評価2:顔料分散体及び顔料インク保存性
各インクをポリエチレン容器に入れ密封し、70℃3週間保存した後の粒径、表面張力、粘度を測定し初期物性との変化率により下記の様に評価した。
○:10%以内
△:30%以内
×:50%を超える
評価3:画像評価
画像濃度は画像サンプルのベタ画像の測色をXrite濃度計にて測定を行う。
○:1.30以上
△:1.20以上1.30未満
×:1.20未満
Claims (10)
- 少なくともカーボンブラック顔料、分散剤及び水を含む混合物を、メディアミルを用いて分散した後にメディアレスミルで再分散し、該メディアレスミルとして超音波分散機を用いる段階を含む製造工程により、顔料粒子の平均粒子径(D50)が200nm以下で、該顔料粒子の粒度分布における粒子径標準偏差が平均粒子径(D50)より小さい顔料を分散してなる顔料分散体を得るものであり、
前記カーボンブラック顔料の固形分濃度が10%以上40%以下であり、前記分散剤を、顔料1に対し0.01以上2以下含有し、前記分散剤がナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物であり、該ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物は、ナフタレンスルホン酸の2量体、3量体、4量体の合計含有量が20重量%以上80重量%以下であることを特徴とする顔料分散体の製造方法。 - 前記メディアミルとして、直径0.01mm以上0.5mm以下のジルコニアビーズを使用して分散、又は再分散することを特徴とする請求項1に記載の顔料分散体の製造方法。
- 前記カーボンブラックは、BET比表面積が100乃至400m2/gであり、平均一次粒子径は10乃至30nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の顔料分散体の製造方法。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の顔料分散体の製造方法で製造されたことを特徴とする顔料分散体。
- 請求項4に記載の前記顔料分散体を使用したことを特徴とする顔料インク。
- 請求項5に記載の顔料インクを収容したことを特徴とするインクカートリッジ。
- 請求項5に記載の顔料インクを吐出させて記録を行なう方式のヘッドを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
- 請求項7に記載のインクジェット記録装置を用いて印字することを特徴とする画像形成方法。
- 請求項8に記載の画像形成方法で印字されたことを特徴とする画像形成物。
- 画像支持体が紙であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成物。
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