JP6895713B2 - 非水系インクジェット組成物、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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このような非水系インクジェット組成物が本発明の課題を解決できる要因は下記のように考えられる。ただし、要因はこれに限定されない。すなわち、従来の非水系の組成物は、単にジケトピロロピロール顔料を含有する顔料を用いることでは、得られる記録物に凝集ムラが生じることに起因して、該記録物の彩度が十分に優れたものではない。この問題に対しては、有機溶剤にグリコールエーテル類を用いることにより凝集ムラが生じることを抑制することはできるものの、ジケトピロロピロール顔料には、他の顔料と比較して、不純物である無機金属が多量に混入していることがあり、また、溶剤として用いるグリコールエーテル類は水との親和性が高いため吸水しやすく、インクジェット組成物が水分を含有しやすい。これらに起因して無機金属から不溶な結晶性の異物が組成物中に生じ、優れた保存安定性を得ることができない。一方、本発明に係る非水系組成物は、ジケトピロロピロール顔料を含有する顔料とグリコールエーテル類とを含み、かつ、上記第一無機金属の含有量が100質量ppm以下であることにより、得られる記録物の彩度及び保存安定性に優れる。
R1O−(R3O)m−R2 (1)
(式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、炭素数1〜7のアルキル基を示し、R3は、炭素数1〜3のアルキレン基を示し、mは、1〜7の整数を示す。)
OH−(R5O)n−R4 (2)
(式(2)中、R4は、炭素数1〜7のアルキル基を示し、R5は、炭素数1〜3のアルキレン基を示し、nは、1〜7の整数を示す。)
本実施形態の非水系インクジェット組成物(以下、単に「インクジェット組成物」、「非水系組成物」、「組成物」ともいう。)は、ジケトピロロピロール顔料を含有する顔料と有機溶剤と無機金属とを含む。また、上記非水系インクジェット組成物において、上記有機溶剤は、グリコールエーテル類を含有し、上記無機金属は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくともいずれかを含有し、前記アルカリ金属及び前記アルカリ土類金属の中で、上記非水系インクジェット組成物において最も含有量の多い第一無機金属の含有量が、上記非水系インクジェット組成物の総量に対して、100質量ppm以下である。
本実施形態の無機金属は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくともいずれかを含有する。無機金属は、例えば非水系組成物に用いられる各種原料に不純物として含まれるものであり、特に顔料に含まれる。無機金属の種類としては、例えば、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)等のアルカリ金属;Ca(カルシウム)、Ba(バリウム)等のアルカリ土類金属;Ag(金)、Mg(マグネシウム)、Zn(亜鉛)、Fe(鉄)、Sn(スズ)、及びZr(ジルコニウム)が挙げられる。ここで、本明細書において、「無機金属」とは、非水系組成物中において、有機金属化合物以外の状態で存在する金属元素を意味する。無機金属は、非水系組成物中で、中性の金属、金属イオン及び金属塩のいずれの形態で存在していてもよいが、金属イオン又は金属塩の形態で存在することがあり、その場合には、保存安定性や吐出安定性に悪影響を及ぼすことがある。本実施形態の組成物とすることにより、このような影響を低減し、保存安定性や吐出安定性を改善することができる。ここで、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の中で、非水系組成物中において最も含有量の多い金属(種)を第一無機金属、次に含有量の大きい金属(種)を第二無機金属、その次に含有量の大きい金属(種)を第三無機金属、という。第一無機金属、第二無機金属、及び第三無機金属は、それぞれ一種に限られず、含有量がほぼ同じ(質量基準で5質量%以内の差である)場合には複数種であってもよい。含有量の多い金属(種)は、用いる顔料やその製造方法、非水系組成物が接触する容器、無機金属の含有量の調整方法により異なるが、例えば、ジケトピロロピロール顔料は他の顔料と比較して、不純物である無機金属が多量に混入している傾向がある。非水系組成物中には、ごく微量の水が不可避的に存在しており、この水と無機金属とが接触することにより、不溶性の結晶異物を生じ、これが保存安定性の劣化を引き起こすと推察される(ただし、要因はこれに限定されない。)。また、ジケトピロロピロール顔料は、無機金属を多量に混入している場合が多く、従来のジケトピロロピロール顔料を含む非水系組成物は、保存安定性が低下しやすい。また、溶剤として用いるグリコールエーテル類は、水との親和性が高く、吸水しやすいため、従来のグリコールエーテル類を含む非水系組成物は、水分を含有しやすい。さらに、ジケトピロロピロール顔料に起因して無機金属含有量が高く、水との親和性が高いグリコールエーテル類を溶剤として用いる場合には、異物の発生を抑制するために、本実施形態においては、第一無機金属の含有量を100質量ppm以下とする。
本実施形態の顔料は、ジケトピロロピロール顔料を含有すれば特に限定されず、ジケトピロロピロール顔料のみであってもよく、ジケトピロロピロール顔料とジケトピロロピロール顔料以外の顔料(以下、「その他の顔料」ともいう。)との混合物であってもよい。
本実施形態の有機溶剤は、グリコールエーテル類を含有するものであれば、特に限定されない。グリコールエーテル類を含有することにより、凝集ムラが生じることを抑制することができ、さらにジケトピロロピロール顔料を用いた場合に彩度をより良好なものとすることができる。有機溶剤にグリコールエーテル類を用いることにより凝集ムラが生じることを抑制することはできる。
R1O−(R3O)m−R2 (1)
式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、炭素数1〜7のアルキル基を示し、R3は、炭素数1〜3のアルキレン基を示し、mは、1〜7の整数を示す。
OH−(R5O)n−R4 (2)
式(2)中、R4は、炭素数1〜7のアルキル基を示し、R5は、炭素数1〜3のアルキレン基を示し、nは、1〜7の整数を示す。
本実施形態の組成物は、組成物の粘度を調整する目的で、樹脂をさらに含んでもよい。樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロースアセテートブチレート等の繊維系樹脂、及びビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体樹脂が挙げられる。これらの中でも、塩化ビニル樹脂が好ましく、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂がより好ましい。このような樹脂を含むことにより、得られる記録物の耐擦性がより向上する傾向にある。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
本実施形態のインクジェット記録方法は、上述した非水系組成物を用いて、被記録媒体にインクジェット法により記録を行う工程を有する。具体的には、上記非水系組成物の液滴を吐出し、被記録媒体、好ましくは低吸収性被記録媒体、に該液滴を付着させて画像を記録する。
本実施形態のインクジェット記録装置には、従来公知のインクジェットプリンターを用いることができる。インクジェットプリンターとしては、例えば、図1に示すようなインクジェットプリンター(以下、単に「プリンター」ともいう。)が挙げられる。
〔非水系組成物用〕
〔顔料〕
C.I.ピグメントレッド254(PR−254)(東京化成工業社製商品名Pigment Red 254)
C.I.ピグメントレッド177(PR−177)(Hangzhou Xcolor Chemical Company社製商品名Pigment Red 177)
C.I.ピグメントレッド179(PR−179)(Gaoyou Auxiliary Factory社製商品名Pigment Red 179)
C.I.ピグメントレッド224(PR−224)(Hangzhou Xcolor Chemical Company社製商品名Pigment Red 224)
〔有機溶剤〕
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(日本乳化剤社製商品名MEDG)
ジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤社製商品名DEDG)
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(東京化成工業社製商品名Triethylen Glycol Monobutyl Ether)
テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(KHネオケム社製商品名ブチセノール40)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業社製商品名Dipropylene Glycol Monomethyl Ether)
γ−ブチロラクトン(東京化成工業社製商品名γ-Butyrolactone)
δ−バレロラクトン(東京化成工業社製商品名δ-Valerolactone)
カプリル酸メチル(東京化成工業社製商品名Methyl n-Octanoate)
カプリン酸メチル(東京化成工業社製商品名Methyl Decanoate)
3−メトキシブチルアセテート(ダイセル社製、商品名3−メトキシブチルアセテート)
3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート(クラレ社製、商品名ソルフィットAC)
〔樹脂〕
ソルバインCL(塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合樹脂、日信化学工業社製商品名)
〔顔料分散剤〕
Solsperse37500(ルーブリゾール社製の商品名)
〔界面活性剤〕
BYK−340(ビックケミージャパン社製商品名)
各材料を下記の表1及び表2に示す組成で混合し、十分に撹拌し、各非水系組成物を得た。なお、下記の表1及び表2中、用いた材料に関する数値の単位は質量%であり、水の含有量を除いた合計は100.0質量%である。また、各非水系組成物における各無機金属の含有量を、下記の「(物性1)無機金属の含有量」に記載する通りの方法で、表1及び表2の数値となるよう調整した。
表1中の実施例1における非水系組成物100質量部について、粉末イオン交換樹脂IXE−6107(東亞合成株式会社製)を0.1質量部添加し、100rpmの回転速度で60分間攪拌した。その後、20000Gで10分間の遠心分離を行い、さらに、3μmのメンブレンフィルターでフィルター処理を行った。フィルター処理後に、ICP発光分光分析法(ICP発光分光分析装置、日立ハイテク社製)を用いて、各無機金属の含有量を測定した。含有量の多かった無機金属種を多かった順に3種(ナトリウム、カリウム、カルシウム)の測定結果を表1に示す。さらに、表1及び表2中の各実施例及び比較例における測定結果となるよう、上記撹拌の時間を10分間から変更した以外は上記と同様に操作した。数値の単位は質量ppmである。
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製の商品名「SC−S30650」)に被記録媒体である塩ビメディア(3M社製、型番「IJ180−10」)を搬入し、吐出ヘッドに実施例及び比較例で得られた各組成物を充填し、プラテンの温度を記録物の作製中及び記録物の作製後1分間の間45℃に保持し、塗布量10mg/inch2で、狙い解像度720×720dpiの条件下で、ベタパターンを作製し、各記録物を得た。なお、吐出不良により吐出が不足する部分があっても、不良箇所を補う操作は行わなかった。
実施例及び比較例で得られた各非水系組成物をインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製の商品名「SC−S30650」)のインク収容体に収容し、60℃で7日間の加速試験を行った後に、20℃における非水系組成物の粘度を測定し、増粘率(加速試験後の20℃におけるインク粘度/加速試験前の20℃におけるインク粘度×100)を求め、下記評価基準により保存安定性を評価した。得られた結果を、表1及び表2に示す。なお、20℃における非水系組成物の粘度は、粘度計(Physica社製の商品名「MCR−300」)で、コーン(径75mm、角度1°)を用い、回転速度を100rpmとして測定した。
(評価基準)
〇:増粘率が1%未満であり、かつ、目視で結晶性の異物なし
△:増粘率が1%以上3%未満であり、かつ、目視で結晶性の異物なし
△△:増粘率が3%以上4%未満であり、かつ、目視で結晶性の異物なし
×:増粘率が4%超である、又は、4%未満であって目視で結晶性の異物あり
得られた各記録物について、彩度(C*)の評価を行った。具体的には、得られた各記録物について、スペクトロリーノ(グレタグマクベス社製)を用いてa*値b*値の測色を行い、C*を算出し、下記評価基準により彩度を評価した。なお、C*の値は、C*の算出値の小数点以下を四捨五入し整数値とした。得られた結果を、表1及び表2に示す。
(評価基準)
○:C*値が110以上
△:C*値が100以上110未満
△△:C*値が90以上100未満
×:C*値が89以下
各非水系組成物における無機金属の含有量を調整する際の撹拌時間から、下記評価基準により製造コストを評価した。得られた結果を、表1及び表2に示す。
(評価基準)
〇:撹拌時間が0分間以上30分間未満である。
△:撹拌時間が30分間以上2時間未満である。
×:撹拌時間が2時間以上である。
Claims (9)
- ジケトピロロピロール顔料を含有する顔料と、有機溶剤と、無機金属と、を含む、非水系インクジェット組成物であって、
前記有機溶剤は、下記式(1)で表されるグリコールジエーテルと、下記式(2)で表されるグリコールモノエーテルとを含有するグリコールエーテル類を含有し、
前記無機金属は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくともいずれかを含有し、
前記アルカリ金属及び前記アルカリ土類金属の中で、前記非水系インクジェット組成物において最も含有量の多い第一無機金属の含有量が、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、100質量ppm以下である、
非水系インクジェット組成物。
R 1 O−(R 3 O) m −R 2 (1)
(式(1)中、R 1 及びR 2 は、各々独立に、炭素数1〜7のアルキル基を示し、R 3 は、炭素数1〜3のアルキレン基を示し、mは、1〜7の整数を示す。)
OH−(R5O)n−R4 (2)
(式(2)中、R4は、炭素数1〜7のアルキル基を示し、R5は、炭素数1〜3のアルキレン基を示し、nは、1〜7の整数を示す。) - 前記アルカリ金属及び前記アルカリ土類金属の中で、前記非水系インクジェット組成物において前記第一無機金属の次に含有量の多い第二無機金属の含有量が、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、100質量ppm未満である、請求項1に記載の非水系インクジェット組成物。
- 前記第一無機金属がナトリウム、カリウム、及びカルシウムの少なくともいずれかである、
請求項1又は2に記載の非水系インクジェット組成物。 - 前記顔料の含有量が、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、1.0質量%以上5.0質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。
- 前記グリコールエーテル類の含有量が、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、10質量%以上90質量%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。
- 前記有機溶剤は、環状ラクトン類をさらに含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。
- 塩化ビニル樹脂をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。
- 塩化ビニル系樹脂を含む被記録媒体に付着させて用いるものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物を用いて、被記録媒体にインクジェット法により記録を行う工程を有する、インクジェット記録方法。
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