JP4884235B2 - タイヤ - Google Patents
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Description
このため、特殊なシリカと練りの工夫でWET性能を向上させたタイヤトレッド用ゴム組成物及びその製造方法が提案されている。例えば、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム100重量部に対して、凝固点が−48℃以下である低温性可塑剤10〜80重量部と、平均粒径が0.1〜1mmである炭化珪素、窒化珪素、及び酸化アルミニウム、珪石の単独又はこれらの混合物5〜40重量部とを配合して、WET性能の向上を図っている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、このような改良では、作業性(加工性)、耐摩耗性及び低発熱性等が課題として残る。
ところで、従来からタイヤに短繊維入り発泡ゴムを上記トレッドに用いることにより、そのトレッドの表面に上述のミクロな排水溝を形成する手法が記載されている(例えば、特許文献2を参照)。この場合、走行によりトレッドが摩耗しても短繊維はトレッドから容易に離脱しない。しかし、短繊維は摩耗面と略平行でない場合が多く、当初の狙いのようなミクロな排水溝が常に効率的に形成できず、上記氷雪路面上での摩擦係数の向上が十分にでなかった。また短繊維の離脱は走行条件等に大きく左右され、確実に氷上性能を向上させることができないという問題が見られた。
即ち、本発明は、以下の特徴のある構成を採用することにより、上記目的を達成したものである。
また、上記ゴム成分中に、微粒子を含有していない(a)有機繊維及び微粒子を含有してなる(b)微粒子含有繊維が含まれ、ゴム成分の100質量部に対して上記(a)有機繊維及び(b)微粒子含有有機繊維の合計量が1〜5質量部の範囲で含まれること、及び(b)微粒子含有有機繊維は、該有機繊維全体の樹脂の100質量部に対して該微粒子が5〜50質量部の範囲で含むこと、
また、(a)有機繊維/(b)微粒子含有有機繊維の含まれる割合は、95/5〜5/95の範囲にすること、及び(b)微粒子含有有機繊維の微粒子はそのモース硬度が2以上であることを特徴とするタイヤ。
〔式(I)中のMは、Al、Mg、Ti、及びCaから選択される金属酸化物又は金属水酸化物であり、x、及びyはそれぞれ異なっていてよい0〜10の整数である。〕
Al2O3・mSiO2・nH2O・・・・・・・(II)
〔式(II)中のmは1〜4の整数であり、nは0〜4の整数である。〕
(3)上記一般式(I)で表される無機化合物粉体が水酸化アルミニウムからなる粉体である上記(1)記載のタイヤ。
(5)(a)有機繊維及び(b)微粒子含有有機繊維に使用される繊維の径が0.01〜0.1mmの範囲で、その長さが0.5〜20mmの範囲にあることを特徴とする上記(1)に記載のタイヤ。
(6)(b)微粒子含有有機繊維の微粒子は、粒度分布のピーク値での頻度数が20質量%以上であることを特徴とする上記(1)に記載のタイヤ(但しピーク値での頻度数とは、粒度分布(粒度分布曲線)における粒子粒径を2μmの刻み幅に最大ピーク値を含んでいる区分幅における頻度数をいう。)。
(7)(b)微粒子含有有機繊維の微粒子は、アスペクト比が1.1以上で、且つ角部が存在していることを特徴とする上記(1)に記載のタイヤ。
(8)(b)微粒子含有有機繊維の微粒子が、無機微粒子及び有機微粒子から選択される上記(1)に記載のタイヤ。
(9)有機繊維の樹脂はポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれた少なくとも1種からなる結晶性高分子であり、且つ融点が190℃以下であることを特徴とする上記(1)に記載のタイヤ。
2 カーカス
3 ベルト
4 タイヤ
5 トレッド
6 キャップ部
6A 加硫ゴム
12 長尺状気泡
13 凹部
14 保護層
15 微粒子含有有機繊維
16 ゴム組成物
17 口金
18 球状気泡
19 球状気泡の凹部
20 微粒子
P 押出方向
図1は本発明に係るタイヤの断面概略説明図である。図2は(a)及び(b)は本発明に係るタイヤのトレッド部の周方向及び幅方向に沿う各断面概略図である。図3は、微粒子含有有機繊維を一定の方向に配向させる原理を説明する説明図である。
例えば、図1に示すように、一対のビード部1と、該一対のビード部1にトロイド状をなして連なるカーカス2と、該カーカス2のクラウン部をたが締めするベルト3と、キャップ部6とベース部7の二層から成るトレッド5とを順次配置したラジアル構造を有する。なお、トレッド5以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と変わりないので説明は省略する。
このようなトレッドキャップ部6Aの発泡ゴム層は、その発泡率が3〜50%の範囲にある。ゴム成分には少なくとも天然ゴムとポリブタジェンゴムが含まれ、ゴム成分の100質量部に対して天然ゴムが20〜70質量部の範囲、及びポリブタジエンゴムが30〜80質量部の範囲で含まれる。カーボンブラックがゴム成分の100質量部に対して5〜55質量部の範囲で含まれ、シリカがゴム成分の100質量部に対して5〜55質量部の範囲で含まれる。
M・xSiO2・yH2O・・・・・・(I)
式(I)中のMは、Al、Mg、Ti、及びCaから選択される金属酸化物又は金属水酸化物であり、x、及びyはそれぞれ異なっていてよい0〜10の整数である。
上記発泡ゴム層においては、そのゴム成分に少なくとも天然ゴムとポリブタジエンゴムが所定量含まれている限り、その他のゴム成分を含んでいても良い。
ゴム成分中、天然ゴムはゴム成分の100質量部に対して20〜70質量部の範囲、より好ましくは30〜50質量部の範囲で含まれることが好ましい。また、ゴム成分中、ポリブタジエンゴムはゴム成分の100質量部に対して30〜80質量部の範囲、より好ましくは50〜70質量部の範囲で含まれていることが好ましい。天然ゴムが70質量部を超えて含まれるか、また、ポリブタジエンゴムが全く含まれない、或いは30質量部未満になると、タイヤ性能に影響が出て、氷上性能を悪くするおそれがある。
また、ポリブタジエンゴムが80質量部を超えて含まれるか、また天然ゴムが全く含まないか、20質量部未満となる場合は加工性に問題が生じてくる。
ゴム成分に加えることができるその他のゴムとしては、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)等を挙げることができる。
尚、タイヤのトレッドに用いる場合、上記ゴム成分は、温度−60℃以下のガラス転移温度を有するものが好ましい。このようなガラス転移温度を有するゴム成分を用いると、該トレッド等は、低温域においても十分なゴム弾性を維持し、良好な上記氷上性能を示す点で有利である。
上記ゴム層においてカーボンブラックはゴム成分の100質量部に対して5〜55質量部の範囲、好ましくは10〜50質量部の範囲で含まれる。
カーボンブラックの含まれる量が55質量部を超えると、タイヤ性能を低下させ、氷上性能にも影響を与える。また、カーボンブラックを全く含まないか、または5質量未満である場合も氷上性能に悪影響を与える。
上記ゴム層においてシリカはゴム成分の100質量部に対して5〜55質量部の範囲、好ましくは30〜50質量部の範囲で含まれる。
シリカの含まれる量が55質量部を超えると、タイヤ性能を低下させ、氷上性能にも悪影響を与える。また、シリカを全く含まないか、または5質量未満である場合も氷上性能に悪影響を与える。
M・xSiO2・yH2O・・・・・・(I)
式(I)中のMは、Al、Mg、Ti、及びCaから選択される金属酸化物又は金属水酸化物であり、x、及びyはそれぞれ異なっていてよい0〜10の整数である。上記一般式(I)で表される無機化合物粉体は、x,yが共に0である場合には、Al、Mg、Ti、Caから選ばれる少なくとも一つの金属酸化物又は金属水酸化物となる。
上記一般式(I)で表される無機化合物の具体例としては、アルミナ(Al2O3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、酸化マグネシウム(MgO2)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n−1)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)等が挙げられる。なお、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO3)も本発明の無機化合物と同等の効果を発揮するものとなる。
Al2O3・mSiO2・nH2O・・・・・・(II)
式(II)中のmは1〜4の整数であり、nは0〜4の整数である。
上記一般式(II)で表される無機化合物の具体例としては、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)等が挙げられる。また、本発明で用いる水酸化アルミニウムは、アルミナ水和物も含むものである。
このような割合としては、(a)有機繊維/(b)微粒子含有有機繊維の含まれる割合は、98/2〜2/98の範囲、特に、95/5〜5/95の範囲にすることが好ましい。
これらの合計量が1質量部未満であると、繊維を配合する効果を十分に発揮することができず、即ち、引っ掻き効果が十分に発揮されず、タイヤのトレッドにあっては、エッヂ効果或いはスパイク効果、それに対応する氷上性能の十分な向上が見られない。一方、その配合量が5質量部を超えると、押出作業性を悪くし、肌荒れを生じて、加硫ゴムやタイヤのトレッドにあってはクラック等の不都合を生じることがあり好ましくない。
(a)有機繊維及び(b)微粒子含有有機繊維に使用される有機繊維の材質は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。しかしながら、上述したように、ゴム成分との関係から加硫時に加硫最高温度に達するまでの間に、ゴム成分のゴムマトリックスの粘度よりも低くなる粘度特性を有する樹脂を用いることが本発明においては好ましい。即ち、上記有機繊維樹脂は、ゴム組成物が加硫最高温度に達するまでの間に溶融(軟化を含む)する熱特性を有している。
尚、加硫最高温度とは、ゴム組成物の加硫時におけるゴム組成物が達する最高温度を意味する。例えば、モールド加硫の場合には、ゴム組成物がモールド内に入ってからモールドを出て冷却されるまでの間に、該ゴム組成物が達する最高温度を意味する。加硫最高温度は、例えば、ゴム組成物中に熱電対を埋め込むこと等により測定することができる。また、ゴムマトリックスの粘度は、流動粘度を意味し、例えば、コーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用いて測定する。また、上記樹脂の粘度は、溶融粘度を意味し、例えば、コーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用いて測定する。
従って、本発明で選択される好ましい樹脂は、例えば、その融点が上記加硫最高温度よりも低い結晶性高分子樹脂などが特に好適に挙げられる。
これに対して、有機繊維の樹脂融点が、ゴム組成物の加硫最高温度に近い場合、加硫初期に速やかに溶融せず、加硫終期に溶融する。加硫終期では、ゴム組成物中に存在するガスの一部は加硫したゴムマトリックス中に取り込まれてしまい、溶融した樹脂の内部には集まらない。その結果、上記ミクロな排水溝として効果的機能する長尺状気泡が、効率良く形成されない。また、有機繊維の樹脂融点が低過ぎる場合、有機繊維をゴム組成物中に配合し混練りする際に有機繊維同士の融着が発生し、有機繊維の分散不良が生じる。これもまた、ミクロな排水溝して機能し得る長尺状気泡が効率良く形成されない。したがって、有機繊維の樹脂の融点は、加硫前の各工程における温度では溶融軟化せず、加硫工程中にゴムマトリックスと樹脂との粘度とが逆転するような範囲で選択するのが好ましい。
なお、上記樹脂の融点は、それ自体公知の融点測定装置等を用いて測定することができ、例えば、DSC測定装置を用いて測定した融解ピーク温度を上記融点とすることができる。
このような結晶性高分子の具体例としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、シンジオタクティック−1,2−ポリブタジエン(SPB)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の単一組成重合物が挙げられる。また、これらの共重合、及びブレンド等により融点を適当な範囲に制御したものも使用でき、更にこれらに添加剤を加えたものも使用できる。これらの結晶性高分子の中でも、ポリオレフィン、ポリオレフィン共重合体が好ましく、汎用で入手し易い点でポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)がより好ましく、融点が比較的低く、取扱いが容易な点でポリエチレン(PE)が特に好ましい。
尚、非結晶性高分子の樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリロニトリル、これらの共重合体、これらのブレンド物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記発泡ゴム層を形成する際の加硫ゴム中に上記の長さで有機繊維が存在すれば、エッヂ効果及びスパイク効果が有効に作用する。また後述の発泡剤等を含めるとミクロな排水溝として効率良く機能し得る長尺状気泡を十分に形成できる。上記有機繊維長が0.5mm未満では、上記効果を十分に発揮できない。また、上記有機繊維長が20mmを超えると、有機繊維同士が絡まり、その分散性が低下する傾向にある。
また、上記有機繊維において、その繊維の径が0.01〜0.1mmの範囲、特に、0.015〜0.09mmの範囲が好ましい。上記有機繊維は、その径が0.01mm未満では切断が生じ易いため、上記エッヂ効果或いはスパイク効果を十分に発揮できない。また、上記の径が0.1mmを超える場合には、加工性に問題が生じてくる。
このような硬度の高い微粒子としては、例えば、石膏、方解石、蛍石、正長石、石英、金剛石等が挙げられるが、好ましくは、モース硬度5以上のシリカガラス(硬度6.5)、石英(硬度7.0)、溶融アルミナ(硬度9.0)等を挙げることができる。中でもシリカガラス、アルミナ(酸化アルミニウム)等が安価で容易に使用することができる。
上記頻度数における粒径が10μmを下回ってくると、(b)微粒子含有有機繊維を製造する際に、粒子同士が凝集し易くなるものが見られ、その分散性が低下する傾向にある。また、このような繊維を用いたタイヤにあっては、十分な引き掻き効果、或いはエッヂ効果、スパイク効果を発揮することができない。一方、上記粒径が50μmを超えると、(b)微粒子含有有機繊維の製造時に繊維切れ等の問題が頻発し、所望する(b)微粒子含有有機繊維が効率良く得られない。
上記微粒子のピーク値での頻度数が20質量%以上であれば、微粒子の粒度分布曲線がシャープとなり、粒径が均一となる。このため、上記微粒子含有有機繊維の紡糸に際して切れが発生し難い良好な繊維が得られる。かかる繊維をタイヤに使用した場合には氷上性能性が安定してくる。これに対して、上記微粒子のピーク値での頻度数が20質量%未満では、上記繊維の紡糸に際して切れが生じやすくなる。また、タイヤとしての性能もばらつきが生じやすくなってくる。また、上述した上記範囲内の粒径の大きさでは、その粒径が大きいほどタイヤの氷上性能が向上する。
本発明の微粒子には最初から角部を有する微粒子も使用できる。また、微粒子が球形状であっても粉砕することにより、微粒子表面に角部を存在させて使用することができると共に、より多くの角部を存在させることができる。
微粒子形状はその微粒子群を電子顕微鏡で観察することにより確認が可能であり、球状でないことを確認するものである。また粒子の長軸と短軸の比率をあらわすアスペクト比が1.1以上であれば、粒子表面に形成される角部の存在が十分に角張ることができる。このため、このような微粒子を含む微粒子含有有機繊維を使用したタイヤ等にあっては、引っ掻き効果、或いはエッヂ効果、及びスパイク効果を十分に高めることができる。
上記微粒子量が5質量部未満では、ゴム組成物のゴム製品における引っ掻き効果、タイヤのトレッドにあってはエッヂ効果及びスパイク効果が十分に生じなくなる場合がある。一方、上記微粒子量が50質量部を超えると、微粒子含有有機繊維の製造時に繊維切れ等の問題が頻発し、微粒子含有有機繊維が効率良く得られなくなる虞がある。
上記発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルセミカルバジド、P,P’−オキシービス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等が挙げられる。
上記発泡剤の含有量としては、目的に応じて適宜決定すればよいが、一般にはゴム成分100質量部に対して1乃至10質量部程度が好ましい。上記発泡剤はゴムマトリックス中に配合しても良く、また各有機繊維中に配合しても良い。
混練は、混練装置への投入体積、ローター回転速度、混練温度、混練時間等の混練装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。混練装置としては、市販品を好適に使用する。
熱入れ又は押出は、熱入れ又は押出時間、熱入れ又は押出装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。熱入れ又は押出装置としては、市販品を好適に使用する。尚、熱入れ又は押出温度は、発泡剤が存在する場合はその発泡を起こさないような範囲で適宜選択される。押出温度は、90乃至110℃程度が望ましい。
上記発泡ゴム層において各有機繊維を揃わせて配向する方法としては、例えば、図4に示すように、微粒子含有有機繊維15を含むゴム組成物16を、流路断面積が出口に向かって減少する押出機の口金17から押し出すことにより、微粒子含有有機繊維15等を一定の方向に配向させればよい。なお、この場合、押し出される前のゴム組成物16中の微粒子含有有機繊維15等は、口金17へ押し出されていく過程でその長手方向が押出方向(矢印P方向)に沿って除々に揃うようになる。口金17から押し出されるときには、その長手方向が押出方向(矢印A方向)にほぼ完全に配向させることができる。この場合における微粒子含有有機繊維15等のゴム組成物16中での配向の程度は、流路断面積の減少面積、押出速度、加硫前のゴム組成物16の粘度等によって変化させる。
発泡率が3%未満であると、上記トレッドにおける凹部の体積が小さく、上記氷上性能を十分に向上させることができない。一方、発泡率が50%を越えると、トレッドにおける上記氷上性能は十分であるものの、トレッド内における気泡が多くなり破壊限界が低下する傾向にあり、耐久性の点で好ましくない。尚、発泡率のVsは、加硫ゴム或いはトレッドにおける全発泡率を意味し、次式により算出できる。
Vs=(ρ0 /ρ1 −1)×100(%)
ここで、ρ1 は、加硫ゴム(発泡ゴム)の密度(g/cm3 )を表す。ρ0 は、加硫ゴム(発泡ゴム)における固相部の密度(g/cm3 )を表す。なお、加硫後のゴム(発泡ゴム)の密度及び加硫後のゴム(発泡ゴム)における固相部の密度は、例えば、エタノール中の質量と空気中の質量を測定し、これから算出した。
尚、上記実施形態においては二層構造を持つトレッドを例にして説明したが、トレッドの構造は特に制限はなく一層構造でも良い。更にタイヤ半径方向に分割された多層構造、タイヤ周方向或いはトレッド幅方向に分割された構造でも良い。トレッドの表面層の少なくとも一部が本発明のゴム組成物により構成されていることが好ましい。
(実施例1〜9及び比較例1〜7)
各実施例及び比較例の発泡ゴム層を形成するために、天然ゴム、シス−1,4−ポリブタジエンゴム(商品名;UBEPOL 150L:宇部興産社製)、カーボンブラック(N134(N2SA:146m2/g):旭カーボン社製)、シリカ(Nipsil AQ:日本シリカ株式会社製)、シランカップリング剤(Si69:デグサ社製)、アロマ油、ステアリン酸、老化防止剤(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)、酸化亜鉛、加硫促進剤(MBTS:ジベンゾチアジルジスルフィド)、加硫促進剤(CBS:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)、硫黄、発泡剤(DNPT:ジニトロベンタメチレンテトラミン)、尿素、及び水酸化アルミニウム(ハイジライトH−43:粒径が5μm以下、昭和電工製)又はペントナイト(Al2O3・4SiO2・H2O:粒径が5μm以下)を配合した。また、(a)有機繊維、(b)微粒子含有有機繊維、及び(a)/(b)比の量を適宜選択して配合した。その配合量を下記表1及び2に示した。尚、(b)微粒子含有有機繊維の微粒子は、硬度が9の溶融アルミナである。
なお、各有機繊維樹脂の上記加硫最高温度における粘度(溶融粘度)は、コーンレオメーターを用いて測定(ゴムのトルクがMaxをむかえたら終了とし、トルクをゴム粘度として、トルクの変化と発泡圧力の変化を測定)したところ、6であった。一方、上記ゴム組成物の上記加硫最高温度における粘度(流動粘度)は、モンサント社製コーンレオメーター型式1−C型を使用し、温度を変化させながら100サイクル/分の一定振幅入力を与えて経時的にトルクを測定し、その際の最小トルク値を粘度としたところ(ドーム圧力0.59MPa、ホールディング圧力0.78MPa、クロージング圧力0.78MPa、振り角±5°)、11であった。
タイヤは、乗用車用ラジアルタイヤであり、そのタイヤサイズは185/70R13であり、国産1600CCクラスの乗用車に4本を装着し、氷温−1℃の氷上制動性能を該乗用車を、確認した。比較例1のタイヤをコントロールタイヤとして、氷上性能=(コントロールタイヤの制動距離/その他の例の制動距離)×100とした。
湿潤アスファルト路面にて、初速度40、60、80km/hrからの制動距離を測定し、各速度で比較例1を100(コントロール)とし、他の値については、比較例1の制動距離÷供試タイヤの制動距離×100にて指数を求め、その三水準の平均値にて指数表示した。従って、数値が大なる程良好である。
実車にて舗装路面を1万km走行後、残溝を測定し、トレッドが1mm摩耗するのに要する走行距離を相対比較し、比較例1を100(8000km/mmに相当)として指数表示した。指数が大きい程、耐摩耗性が良好なことを示す。
以上の結果を表1及び2に示した。
Claims (9)
- 路面と実質接する面に発泡ゴム層が設けられるタイヤであって、上記発泡ゴム層は、その発泡率が3〜50%の範囲にあり、ゴム成分には少なくとも天然ゴムとポリブタジエンゴムが含まれ、且つゴム成分の100質量部に対して天然ゴムが20〜70質量部の範囲、及びポリブタジエンゴムが30〜80質量部の範囲で含まれ、また、カーボンブラックがゴム成分の100質量部に対して5〜55質量部の範囲で含まれ、シリカがゴム成分の100質量部に対して5〜55質量部の範囲で含まれ、下記一般式(I)で表される粒径が10μm以下である少なくとも1以上の無機化合物粉体がゴム成分100質量部に対して5〜20質量部の範囲で含まれ、
また、上記ゴム成分中に、微粒子を含有していない(a)有機繊維及び微粒子を含有してなる(b)微粒子含有繊維が含まれ、ゴム成分の100質量部に対して上記(a)有機繊維及び(b)微粒子含有有機繊維の合計量が1〜5質量部の範囲で含まれること、及び(b)微粒子含有有機繊維は、該有機繊維全体の樹脂の100質量部に対して該微粒子が5〜50質量部の範囲で含むこと、
また、(a)有機繊維/(b)微粒子含有有機繊維の含まれる割合は、95/5〜5/95の範囲にすること、及び(b)微粒子含有有機繊維の微粒子はそのモース硬度が2以上であることを特徴とするタイヤ。
M・xSiO2・yH2O・・・・・・(I)
〔式(I)中のMは、Al、Mg、Ti、及びCaから選択される金属酸化物又は金属水酸化物であり、x、及びyはそれぞれ異なっていてよい0〜10の整数である。〕 - 上記一般式(I)で表される無機化合物粉体が下記一般式(II)で表される無機化合物粉体である請求項1記載のタイヤ。
Al2O3・mSiO2・nH2O・・・・・・・(II)
〔式(II)中のmは1〜4の整数であり、nは0〜4の整数である。〕 - 上記一般式(I)で表される無機化合物粉体が水酸化アルミニウムからなる粉体である請求項1記載のタイヤ。
- (b)微粒子含有有機繊維の微粒子は、粒径分布の頻度数の80質量%以上が10〜50μmの範囲にあり、平均粒子径が10〜30μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ(但し、粒度分布の頻度数とは、全体の粒子質量に対する粒度分布(粒度分布曲線)における粒子粒径を2μmの刻み幅で区分したときのその区分幅での存在粒子の質量率をいう。)。
- (a)有機繊維及び(b)微粒子含有有機繊維に使用される繊維の径が0.01〜0.1mmの範囲で、その長さが0.5〜20mmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
- (b)微粒子含有有機繊維の微粒子は、粒度分布のピーク値での頻度数が20質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ(但しピーク値での頻度数とは、粒度分布(粒度分布曲線)における粒子粒径を2μmの刻み幅に最大ピーク値を含んでいる区分幅における頻度数をいう。)。
- (b)微粒子含有有機繊維の微粒子は、アスペクト比が1.1以上で、且つ角部が存在していることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
- (b)微粒子含有有機繊維の微粒子が、無機微粒子及び有機微粒子から選択される請求項1に記載のタイヤ。
- 有機繊維の樹脂はポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれた少なくとも1種からなる結晶性高分子であり、且つ融点が190℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
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