JP5363739B2 - タイヤ - Google Patents
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このため、特殊なシリカと練りの工夫でWET性能を向上させたタイヤトレッド用ゴム組成物及びその製造方法が提案されている。例えば、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム100質量部に対して、凝固点が−48℃以下である低温性可塑剤10〜80質量部と、平均粒径が0.1〜1mmである炭化珪素、窒化珪素、及び酸化アルミニウム、珪石の単独又はこれらの混合物5〜40質量部とを配合して、WET性能の向上を図っている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、このような改良では、作業性(加工性)、耐摩耗性及び低発熱性等が課題として残る。
ところで、従来からタイヤに短繊維入り発泡ゴムを前記トレッドに用いることにより、そのトレッドの表面に上述のミクロな排水溝を形成する手法が記載されている(例えば、特許文献2を参照)。この場合、走行によりトレッドが摩耗しても短繊維はトレッドから容易に離脱しない。しかし、短繊維は摩耗面と略平行でない場合が多く、当初の狙いのようなミクロな排水溝が常に効率的に形成できず、前記氷雪路面上での摩擦係数の向上が十分ではなかった。また短繊維の離脱は走行条件等に大きく左右され、確実に氷上性能を向上させることができないという問題が見られた。
しかしながら、無機化合物粉体の粒径が小さいため、排水性能向上の観点から、氷上性能をさらに改良する余地があった。
(1)路面と接するトレッドに発泡ゴム層が設けられてなるタイヤであって、該発泡ゴム層の発泡率が3〜50%の範囲にあり、且つ該発泡ゴム層を構成するゴム組成物Aが、少なくとも天然ゴム20〜80質量%及びポリブタジエンゴム20〜80質量%が含まれるゴム成分の100質量部に対して、下記一般式(I)で表される平均粒径が15〜40μmである少なくとも1以上の無機化合物粉体5〜20質量部を含むことを特徴とするタイヤ、
M・xSiO2・yH2O・・・・・・(I)
〔式(I)中のMは、Al、Mg、Ti、及びCaから選択される金属の金属酸化物又は金属水酸化物であり、x及びyはそれぞれ独立に0〜10の整数である。〕
Al2O3・mSiO2・nH2O・・・・・・・(II)
〔式(II)中のm及びnはそれぞれ独立に0〜4の整数である。〕
(3)前記一般式(I)で表される無機化合物粉体が、水酸化アルミニウムからなる粉体である前記(1)のタイヤ、
(5)前記ゴム組成物Aが、微粒子を含有していない(a)有機繊維及び/又は(b)微粒子含有有機繊維を含む前記(1)〜(4)のいずれかのタイヤ、
(7)前記(b)微粒子含有有機繊維が、該有機繊維全体の樹脂の100質量部に対して該微粒子5〜50質量部を含む前記(5)又は(6)のタイヤ、
(8)前記(b)微粒子含有有機繊維の微粒子のモース硬度が2以上であり、該微粒子の粒径分布の頻度数の80質量%以上が10〜50μmの範囲にあり、且つ該微粒子の平均粒径が10〜30μmの範囲にある(5)〜(7)のいずれかのタイヤ、
(9)前記(a)有機繊維及び/又は(b)微粒子含有有機繊維に使用される繊維の平均径が0.01〜0.1mmの範囲で、該繊維の平均長さが0.5〜20mmの範囲にある前記(5)〜(8)のいずれかのタイヤ、
(10)前記(b)微粒子含有有機繊維の微粒子が、粒度分布のピーク値での頻度数が20質量%以上である前記(5)〜(8)のいずれかのタイヤ、
(11)前記(b)微粒子含有有機繊維の微粒子のアスペクト比が1.1以上で、且つ該微粒子に角部が存在している前記(5)〜(10)のいずれかのタイヤ、
(12)前記(b)微粒子含有有機繊維の微粒子が、無機微粒子及び有機微粒子から選択される前記(5)〜(11)のいずれかのタイヤ、及び
(13)前記有機繊維の樹脂が、ポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれた少なくとも1種からなる結晶性高分子であり、且つ該樹脂の融点が190℃以下である前記(5)〜(12)のいずれかのタイヤ
である。
図1は本発明に係るタイヤの断面概略説明図である。図2は本発明に係るタイヤのトレッド部の周方向に沿う断面概略図である。
例えば、図1に示すように、一対のビード部11、11'と、該一対のビード部11、11'にトロイド状をなして連なるカーカス12と、該カーカス12のクラウン部をたが締めするベルト13と、キャップ部15とベース部16との二層から成るトレッド14とを順次配置したラジアル構造を有する。
なお、トレッド14以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と変わりないので説明は省略する。
タイヤ10は、その製造方法については特に制限はないが、例えば、所定のモールドで所定温度、所定圧力の下で加硫成形する。その結果、未加硫のトレッドが加硫されてなる本発明の発泡ゴム層で形成されたキャップ部15を有するタイヤ10が得られる。
M・xSiO2・yH2O・・・・・・(I)
式(I)中のMは、Al、Mg、Ti、及びCaから選択される金属の金属酸化物又は金属水酸化物であり、x及びyはそれぞれ独立に0〜10の整数である。前記一般式(I)で表される無機化合物粉体は、x及びyが共に0である場合には、Al、Mg、Ti、Caから選ばれる少なくとも一つの金属の金属酸化物又は金属水酸化物となる。
ゴム成分中、天然ゴムはゴム成分の100質量部に対して20〜80質量部の範囲、好ましくは30〜50質量部の範囲で含まれる。また、ゴム成分中、ポリブタジエンゴムはゴム成分の100質量部に対して20〜80質量部の範囲、好ましくは50〜70質量部の範囲で含まれる。天然ゴムが80質量部を超えて含まれるか、また、ポリブタジエンゴムが全く含まれない、或いは20質量部未満になると、タイヤ性能に影響が出て、氷上性能を悪くするおそれがある。
また、ポリブタジエンゴムが80質量部を超えて含まれるか、また天然ゴムが全く含まないか、20質量部未満となる場合は加工性に問題が生じてくる。
ゴム成分に加えることができるその他のゴムとしては、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スチレンーブタジエン共重合体(SBR)、ポリイソプレンゴム等を挙げることができる。
尚、タイヤのトレッドに用いる場合、前記ゴム成分は、温度−60℃以下のガラス転移温度を有するものが好ましい。このようなガラス転移温度を有するゴム成分を用いると、該トレッド等は、低温域においても十分なゴム弾性を維持し、良好な前記氷上性能を示す点で有利である。
前記発泡ゴム層において、カーボンブラックは、そのゴム層の力学的性能を高め、加工性等を改善させるものである限り、I2吸着量、CTAB比表面積、N2吸着量、DBP吸着量等の範囲を適宜選択した公知のカーボンブラックを使用することができる。
カーボンブラックの種類としては、例えば、SAF、ISAF−LS、HAF、HAF−HS等の公知のものを適宜選択して使用することができる。
前記ゴム層においてカーボンブラックはゴム成分の100質量部に対して好ましくは5〜55質量部の範囲、より好ましくは10〜50質量部の範囲で含まれる。
カーボンブラックの含まれる量が55質量部を超えると、タイヤ性能を低下させ、氷上性能にも影響を与える。また、カーボンブラックを全く含まないか、又は5質量未満である場合も氷上性能に悪影響を与える。
前記ゴム層においてシリカはゴム成分の100質量部に対して好ましくは5〜55質量部の範囲、より好ましくは30〜50質量部の範囲で含まれる。
シリカの含まれる量が55質量部を超えると、耐破壊性を低下させ、作業性にも悪影響を与える。また、シリカを全く含まないか、又は5質量未満である場合もWET性能に悪影響を与える。
Al2O3・mSiO2・nH2O ・・・・・(II)
ここで、m及びnはそれぞれ独立に0〜4の整数である。
上記一般式(II)で表される無機化合物の具体例としては、水酸化アルミニウム、アルミナ、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)等が挙げられる。
以上述べた(B)無機化合物粉体の内、クレー(Al2O3・2SiO2)、水酸化アルミニウム[Al(OH) 3]、アルミナ(Al2O3)が好ましく、水酸化アルミニウムが氷上性能及びWET性能の向上の観点から特に好ましい。また、本発明で用いる水酸化アルミニウムは、アルミナ水和物も含むものである。
これらの合計量が1質量部未満であると、繊維を配合する効果を十分に発揮することができず、即ち、引っ掻き効果が十分に発揮されず、タイヤのトレッドにあっては、エッヂ効果或いはスパイク効果、それに対応する氷上性能の十分な向上が見られない。一方、その配合量が5質量部を超えると、押出作業性を悪くし、肌荒れを生じて、加硫ゴムやタイヤのトレッドにあってはクラック等の不都合を生じることがあり好ましくない。
このような割合としては、{(a)有機繊維/(b)微粒子含有有機繊維}の質量比は、(98/2)〜(2/98)の範囲、特に、(95/5)〜(5/95)の範囲にすることが好ましい。
(a)有機繊維及び(b)微粒子含有有機繊維に使用される有機繊維の材質は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。しかしながら、上述したように、ゴム成分との関係から加硫時に加硫最高温度に達するまでの間に、ゴム成分のゴムマトリックスの粘度よりも低くなる粘度特性を有する樹脂を用いることが本発明においては好ましい。即ち、前記有機繊維樹脂は、ゴム組成物Aが加硫最高温度に達するまでの間に溶融(軟化を含む)する熱特性を有していることが肝要である。
尚、加硫最高温度とは、ゴム組成物Aの加硫時におけるゴム組成物が達する最高温度を意味する。例えば、モールド加硫の場合には、ゴム組成物Aがモールド内に入ってからモールドを出て冷却されるまでの間に、該ゴム組成物Aが達する最高温度を意味する。加硫最高温度は、例えば、ゴム組成物中に熱電対を埋め込むこと等により測定することができる。また、ゴムマトリックスの粘度は、流動粘度を意味し、例えば、コーンレオメーター、キヤピラリーレオメーター等を用いて測定する。また、前記樹脂の粘度は、溶融粘度を意味し、例えば、コーンレオメーター、キヤピラリーレオメーター等を用いて測定する。
従って、本発明で選択される好ましい樹脂は、例えば、その融点が前記加硫最高温度よりも低い結晶性高分子樹脂等が特に好適に挙げられる。
これに対して、有機繊維の樹脂融点が、ゴム組成物Aの加硫最高温度に近い場合、加硫初期に速やかに溶融せず、加硫終期に溶融する。加硫終期では、ゴム組成物A中に存在するガスの一部は加硫したゴムマトリックス中に取り込まれてしまい、溶融した樹脂の内部には集まらない。その結果、前記ミクロな排水溝として効果的機能する長尺状気泡が、効率良く形成されない。また、有機繊維の樹脂融点が低過ぎる場合、有機繊維をゴム組成物A中に配合し混練りする際に有機繊維同士の融着が発生し、有機繊維の分散不良が生じる。これもまた、ミクロな排水溝して機能し得る長尺状気泡が効率良く形成されない。したがって、有機繊維の樹脂の融点は、加硫前の各工程における温度では溶融軟化せず、加硫工程中にゴムマトリックスと樹脂との粘度とが逆転するような範囲で選択するのが好ましい。
なお、前記樹脂の融点は、それ自体公知の融点測定装置等を用いて測定することができ、例えば、DSC測定装置を用いて測定した融解ピーク温度を前記融点とすることができる。
このような結晶性高分子の具体例としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、シンジオタクティツク−1,2−ポリブタジエン(SPB)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の単一組成重合物が挙げられる。また、これらの共重合、及びブレンド等により融点を適当な範囲に制御したものも使用でき、更にこれらに添加剤を加えたものも使用できる。これらの結晶性高分子の中でも、ポリオレフィン、ポリオレフィン共重合体が好ましく、汎用で入手し易い点でポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)がより好ましく、融点が比較的低く、取扱いが容易な点でポリエチレン(PE)が特に好ましい。
尚、非結晶性高分子の樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリロニトリル、これらの共重合体、これらのブレンド物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記発泡ゴム層を形成する際の加硫ゴム中に前記の長さで有機繊維が存在すれば、エッヂ効果及びスパイク効果が有効に作用する。また後述の発泡剤等を含めるとミクロな排水溝として効率良く機能し得る長尺状気泡を十分に形成できる。前記有機繊維長が0.5mm未満では、前記効果を十分に発揮できない。また、前記有機繊維の平均長さが20mmを超えると、有機繊維同士が絡まり、その分散性が低下する傾向にある。
また、前記有機繊維において、その繊維の平均径が0.01〜0.1mmの範囲、特に0.015〜0.09mmの範囲が好ましい。前記有機繊維は、その繊維の平均径が0.01mm未満では切断が生じ易いため、前記エッヂ効果或いはスパイク効果を十分に発揮できない。また、前記の繊維の平均径が0.1mmを超える場合には、加工性に問題が生じてくる。
このような硬度の高い微粒子としては、例えば、石膏、方解石、蛍石、正長石、石英、金剛石等が挙げられるが、好ましくは、モース硬度5以上のシリカガラス(硬度6.5)、石英(硬度7.0)、溶融アルミナ(硬度9.0)等を挙げることができる。中でもシリカガラス、アルミナ(酸化アルミニウム)等が安価で容易に使用することができる。
前記頻度数における粒径が10μmを下回ってくると、(b)微粒子含有有機繊維を製造する際に、粒子同士が凝集してなるものが見られ、その分散性が低下する傾向にある。また、このような繊維を用いたタイヤにあっては、十分な引き掻き効果、或いはエッヂ効果、スパイク効果を発揮することができない。一方、前記粒径が50μmを超えると、(b)微粒子含有有機繊維の製造時に繊維切れ等の問題が頻発し、所望する(b)微粒子含有有機繊維が効率良く得られない。
前記微粒子のピーク値での頻度数が20質量%以上であれば、微粒子の粒度分布曲線がシャープとなり、粒径が均一となる。このため、前記微粒子含有有機繊維の紡糸に際して切れが発生し難い良好な繊維が得られる。かかる繊維をタイヤに使用した場合には氷上性能性が安定してくる。これに対して、前記微粒子のピーク値での頻度数が20質量%未満では、前記繊維の紡糸に際して切れが生じやすくなる。また、タイヤとしての性能もばらつきが生じやすくなってくる。また、上述した前記範囲内の粒径の大きさでは、その粒径が大きいほどタイヤの氷上性能が向上する。
本発明における微粒子には最初から角部を有する微粒子も使用できる。また、微粒子が球形状であっても粉砕することにより、微粒子表面に角部を存在させて使用することができると共に、より多くの角部を存在させることができる。
また、無機化合物粉体や微粒子の平均粒径及び粒径分布は、電子顕微鏡法により粉体又は微粒子の投影面積円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を持つ円の直径であり、 Heywood径とも呼ぶ)無作為に200個を測定し、粒径分布を得ると共に、相加平均により平均粒径を求める。
有機繊維の平均径及び平均長さは、顕微鏡法により、無作為に200個の長さと直径をそれぞれ測定し、それぞれ相加平均により平均径及び平均長さを求める。
前記微粒子量が5質量部未満では、ゴム組成物Aのゴム製品における引っ掻き効果、タイヤのトレッドにあってはエッヂ効果及びスパイク効果が十分に生じなくなる場合がある。一方、前記微粒子量が50質量部を超えると、微粒子含有有機繊維の製造時に繊維切れ等の問題が頻発し、微粒子含有有機繊維が効率良く得られなくなる虞がある。
前記発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p’−オキシービス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等が挙げられる。
前記発泡剤の含有量としては、目的に応じて適宜決定すれば良いが、一般にはゴム成分100質量部に対して1乃至10質量部程度が好ましい。前記発泡剤はゴムマトリックス中に配合しても良く、また各有機繊維中に配合しても良い。
混練は、混練装置への投入体積、ローター回転速度、混練温度、混練時間等の混練装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。混練装置としては、市販品を好適に使用する。
熱入れ又は押出は、熱入れ又は押出時間、熱入れ又は押出装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。熱入れ又は押出装置としては、市販品を好適に使用する。尚、熱入れ又は押出温度は、発泡剤が存在する場合はその発泡を起こさないような範囲で適宜選択される。押出温度は、90乃至110℃程度が望ましい。
前記発泡ゴム層において各有機繊維を揃わせて配向する方法としては、微粒子含有有機繊維を含むゴム組成物Aを、流路断面積が出口に向かって減少する押出機の口金から押し出すことにより、微粒子含有有機繊維等を一定の方向に配向させれば良い。なお、この場合、押し出される前のゴム組成物A中の微粒子含有有機繊維等は、口金へ押し出されていく過程でその長手方向が押出方向に沿って除々に揃うようになる。口金から押し出されるときには、その長手方向が押出方向にほぼ完全に配向させることができる。この場合における微粒子含有有機繊維等のゴム組成物A中での配向の程度は、流路断面積の減少面積、押出速度、未加硫のゴム組成物Aの粘度等によって変化させる。
発泡率が3%未満であると、前記トレッドにおける凹部の体積が小さく、前記氷上性能を十分に向上させることができない。一方、発泡率が50%を超えると、トレッドにおける前記氷上性能は十分であるものの、トレッド内における気泡が多くなり破壊限界が低下する傾向にあり、耐久性の点で好ましくない。尚、発泡率のVsは、加硫ゴム或いはトレッドにおける全発泡率を意味し、次式により算出できる。
Vs={(ρ0/ρ1)−1}×100(%)
ここで、ρ1は、加硫ゴム(発泡ゴム)の密度(g/cm3)を表す。ρ0は、加硫ゴム(発泡ゴム)における固相部の密度(g/cm3)を表す。なお、加硫後のゴム(発泡ゴム)の密度及び加硫後のゴム(発泡ゴム)における固相部の密度は、例えば、エタノール中の質量と空気中の質量を測定し、これから算出した。
尚、前記実施形態においては二層構造を持つトレッドを例にして説明したが、トレッドの構造は特に制限はなく一層構造でも良い。更にタイヤ半径方向に分割された多層構造、タイヤ周方向或いはトレッド幅方向に分割された構造でも良い。トレッドの表面層の少なくとも一部が本発明のゴム組成物Aにより構成されていることが好ましい。
実施例1〜7及び比較例1〜10
表1に示す配合処方により実施例1〜7及び比較例1〜10の17種類のゴム組成物を調製した。これら各ゴム組成物を用い、タイヤのトレッド(発泡ゴム層)を形成し、通常のタイヤ製造条件に従って各試験用の17種類の乗用車用ラジアルタイヤ(タイヤサイズは185/70R13)を製造した。これらの乗用車用ラジアルタイヤを以下の評価方法により、氷上性能、ドライ操縦安定性能、WET性能及び耐摩耗性を評価した。結果を表1に示す。
供試乗用車用ラジアルタイヤ4本を国産1600ccクラスの乗用車に装着し、氷温−1℃の氷上制動性能を該乗用車走行により確認した。比較例1のタイヤをコントロールタイヤとして、氷上性能=(コントロールタイヤの制動距離/その他の例の制動距離)×100とした。指数が大きい程、氷上性能が良好である。
プロのテストドライバーによるフィーリングに基づいて、試験コースの乾燥したアスファルト路面におけるコーナリング性能及び制駆動性能を総合性能指数として評価した。比較例1のタイヤを100とし、指数が大きい程、DRY性能が良好である。
湿潤アスファルト路面にて、初速度40、60、80km/hrからの制動距離を測定し、各速度で比較例1を100(コントロール)とし、他の値については、WET性能=(比較例1の制動距離÷供試タイヤの制動距離)×100にて指数を求め、その三水準の平均値にて指数表示した。従って、指数が大きい程、WET性能が良好である。
実車にて舗装路面を1万km走行後、残溝を測定し、トレッドが1mm摩耗するのに要する走行距離を相対比較し、比較例1を100(8000km/mmに相当)として以下の式により指数表示した。
(供試タイヤのトレッドが1mm摩耗するのに要する走行距離÷比較例1のタイヤのトレッドが1mm摩耗するのに要する走行距離)×100
指数が大きい程、耐摩耗性が良好なことを示す。
*1.シス−1,4−ポリブタジエンゴム:(商品名;UBEPOL 150L:宇部興産社製)
*2.カーボンブラック:(N134(N2SA:146m2/g):旭カーボン社製)
*3.シリカ:(Nipsil AQ:日本シリカ株式会社製)
*4.シランカップリング剤(Si69:デグサ社製)
*5.プロセスオイル:ナフテン系プロセスオイル(商品名「ダイアナプロセスオイルNS−24」、流動点(−30℃):出光興産(株)製)
*6.老化防止剤IPPD:(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
*7.加硫促進剤MBTS:ジベンゾチアジルジスルフイド
*8.加硫促進剤CBS:N−シクロへキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
*9.発泡剤DNPT:ジニトロソペンタメチレンテトラミン
*10.有機短繊維a:繊維を構成する樹脂(ポリエチレン融点132℃、繊維平均径32μm、繊維平均長さ2mm)
*11.有機短繊維b:繊維を構成する樹脂(ポリエチレン融点132℃、微粒子含有量15質量部、微粒子平均粒径20μm、繊維平均径32μm、繊維平均長さ2mm、微粒子:モース硬度が9の溶融アルミナ、微粒子平均粒径:20μm、微粒子のピーク値での頻度数が32質量%、微粒子のアスペクト比:1.5、微粒子の粒径分布の頻度数の90質量%が10〜50μmの範囲にあった)
*12.水酸化アルミニウムA:(昭和電工(株)製、商品名「ハイジライトH−31」、平均粒径20μm)
*13.水酸化アルミニウムB:(昭和電工(株)製、商品名「ハイジライトH−32」、平均粒径8μm)
11、11' 一対のビード部
12 カーカス
13 ベルト
14 トレッド
15 キャップ部
16 ベース部
21 長尺状気泡
22 凹部
23 保護層
24 微粒子
25 気泡
Claims (13)
- 路面と接するトレッドに発泡ゴム層が設けられてなるタイヤであって、該発泡ゴム層の発泡率が3〜50%の範囲にあり、且つ該発泡ゴム層を構成するゴム組成物Aが、少なくとも天然ゴム20〜80質量%及びポリブタジエンゴム20〜80質量%が含まれるゴム成分の100質量部に対して、下記一般式(I)で表される平均粒径が15〜40μmである少なくとも1以上の無機化合物粉体5〜20質量部を含むことを特徴とするタイヤ。
M・xSiO2・yH2O・・・・・・(I)
〔式(I)中のMは、Al、Mg、Ti、及びCaから選択される金属の金属酸化物又は金属水酸化物であり、x及びyはそれぞれ独立に0〜10の整数である。〕 - 前記一般式(I)で表される無機化合物粉体が、下記一般式(II)で表される無機化合物粉体である請求項1記載のタイヤ。
Al2O3・mSiO2・nH2O・・・・・・・(II)
〔式(II)中のm及びnはそれぞれ独立に0〜4の整数である。〕 - 前記一般式(I)で表される無機化合物粉体が水酸化アルミニウムからなる粉体である請求項1に記載のタイヤ。
- さらに、前記ゴム組成物Aが、ゴム成分100質量部に対してカーボンブラック5〜55質量部及びシリカ5〜55質量部を含む請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ。
- 前記ゴム組成物Aが、微粒子を含有していない(a)有機繊維及び/又は(b)微粒子含有有機繊維を含む請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ。
- 前記ゴム組成物Aが、ゴム成分100質量部に対して前記(a)有機繊維及び/又は(b)微粒子含有有機繊維の合計量1〜5質量部を含む請求項5記載のタイヤ。
- 前記(b)微粒子含有有機繊維が、該有機繊維全体の樹脂の100質量部に対して該微粒子5〜50質量部を含む請求項5又は6に記載のタイヤ。
- 前記(b)微粒子含有有機繊維の微粒子のモース硬度が2以上であり、該微粒子の粒径分布の頻度数の80質量%以上が10〜50μmの範囲にあり、且つ該微粒子の平均粒径が10〜30μmの範囲にある請求項5〜7のいずれかに記載のタイヤ。
- 前記(a)有機繊維及び/又は(b)微粒子含有有機繊維に使用される繊維の平均径が0.01〜0.1mmの範囲で、該繊維の平均長さが0.5〜20mmの範囲にある請求項5〜8のいずれかに記載のタイヤ。
- 前記(b)微粒子含有有機繊維の微粒子が、粒度分布のピーク値での頻度数が20質量%以上である請求項5〜8のいずれかに記載のタイヤ。
- 前記(b)微粒子含有有機繊維の微粒子のアスペクト比が1.1以上で、且つ該微粒子に角部が存在している請求項5〜10のいずれかに記載のタイヤ。
- 前記(b)微粒子含有有機繊維の微粒子が、無機微粒子及び有機微粒子から選択される請求項5〜11のいずれかに記載のタイヤ。
- 前記有機繊維の樹脂が、ポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれた少なくとも1種からなる結晶性高分子であり、且つ該樹脂の融点が190℃以下である請求項5〜12のいずれかに記載のタイヤ。
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