JPH1160771A - ゴム組成物、加硫ゴム及びタイヤ - Google Patents

ゴム組成物、加硫ゴム及びタイヤ

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JPH1160771A
JPH1160771A JP9231483A JP23148397A JPH1160771A JP H1160771 A JPH1160771 A JP H1160771A JP 9231483 A JP9231483 A JP 9231483A JP 23148397 A JP23148397 A JP 23148397A JP H1160771 A JPH1160771 A JP H1160771A
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rubber
tire
hollow organic
hollow
rubber composition
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JP9231483A
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Hiroshi Morinaga
啓詩 森永
Hiroyuki Teratani
裕之 寺谷
Yuji Yamaguchi
裕二 山口
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Bridgestone Corp
Original Assignee
Bridgestone Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた氷上性能を有するタイヤのトレッド等
の原料に好適なゴム組成物の提供。 【解決手段】 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ば
れた少なくとも1種からなるゴム成分と発泡剤とを含む
ゴムマトリックスと、中空有機繊維とを含有してなり、
加硫時において前記ゴムマトリックスの温度が加硫最高
温度に達するまでの間に前記中空有機繊維の粘度が前記
ゴムマトリックスの粘度よりも低くなることを特徴とす
るゴム組成物である。中空有機繊維が結晶性高分子を含
んでなり、その融点が加硫最高温度よりも低い態様、中
空有機繊維の中空率が20〜70%である態様、及び、
ゴムマトリックス100重量部に対して中空有機繊維を
5〜30重量部含有する態様が好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴム組成物、加硫
ゴム及びタイヤに関し、更に詳しくは、特に市場が要望
する優れた氷上性能を有するタイヤ、該タイヤのトレッ
ド等に好適な加硫ゴム、及び該加硫ゴムの原料等として
好適に使用できるゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】スパイクタイヤが規制されて以来、氷雪
路面上でのタイヤの制動・駆動性能(氷上性能)を向上
させるため、特にタイヤのトレッドについての研究が盛
んに行われてきている。前記氷雪路面においては、該氷
雪路面と前記タイヤとの摩擦熱等により水膜が発生し易
く、該水膜が、タイヤと氷雪路面との間の摩擦係数を低
下させる原因になっている。このため、前記タイヤのト
レッドの水膜除去能やエッヂ効果が、前記氷上性能に大
きく影響する。したがって、タイヤにおける前記氷上性
能を向上させるためには、前記トレッドの水膜除去能や
エッヂ効果を改良することが必要である。
【0003】そこで、前記トレッドの表面にミクロな排
水溝(深さ、幅共に100μm程度)を多数設け、該ミ
クロな排水溝により前記水膜を排除し、該トレッドを有
するタイヤの前記氷雪路面上での摩擦係数を大きくさ
せ、前記氷上性能を向上させることが提案されている。
しかし、この場合、該タイヤの使用初期における前記氷
上性能を向上させることはできるものの、該タイヤの摩
耗に伴い、徐々に前記氷上性能が低下してしまうという
問題がある。
【0004】また、前記トレッドに発泡ゴムを用い、該
発泡ゴムにおける気泡が露出して形成される凹部により
前記水膜を除去し、前記氷上性能を向上させることが提
案されている。しかし、単なる発泡ゴムにおける気泡が
露出して形成される凹部は、その断面が球状であり異方
性を持たず、ミクロな排水溝として機能し得ないため、
この場合、市場の要求レベルを満たす程度にまで前記氷
上性能を向上させることができないという問題がある。
また、工業的に発泡剤のコストが比較的高いことも問題
である。
【0005】更に、特開平4−38207号公報等にお
いては、短繊維入発泡ゴムを前記トレッドに用いること
により、該トレッドの表面に前記ミクロな排水溝を形成
することが記載されている。しかし、この場合、該短繊
維は熱収縮によりカールしたり、モールド加硫時にサイ
プ部に押し込まれて屈曲してしまい、走行により該トレ
ッドが摩耗しても、摩耗面と略平行でない該短繊維は、
該トレッドから容易に離脱せず、当初の狙いのような前
記ミクロな排水溝が効率的に形成できず、前記氷雪路面
上での摩擦係数の向上が十分でない。また、前記短繊維
の離脱は走行条件等に大きく左右され、確実に前記氷上
性能を向上させることができない。また、前記ミクロな
排水溝は、タイヤにかかる負荷が大きい場合には潰れて
しまう等の問題がある。
【0006】一方、特開平4−110212号公報等に
おいては、前記トレッドに中空繊維を分散させることに
より、前記氷雪路面と前記トレッドとの間に存在する前
記水膜を該中空繊維の中空部分で排除し得るタイヤが開
示されている。しかしながら、このタイヤの場合、該中
空繊維のゴム中への混練り時や成形時における圧力、ゴ
ム流れ、温度等によって該中空繊維が潰れてしまい、実
際には該中空繊維は中空形状を保つことができず、前記
ミクロな排水溝が効率的に形成できず、依然として前記
氷上性能が十分でないという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来に
おける諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課
題とする。即ち、本発明は、前記氷雪路面上に生ずる水
膜の除去能力に優れ、該氷雪路面との間の摩擦係数が大
きく、前記氷上性能に優れるタイヤ、該タイヤのトレッ
ドなど、氷上でのスリップを抑えることが必要な構造物
に好適な加硫ゴム、及び、該加硫ゴムの原料等として好
適なゴム組成物を比較的低コストで提供することを目的
とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の手段は、以下の通りである。即ち、 <1> 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少
なくとも1種からなるゴム成分と発泡剤とを含むゴムマ
トリックスと、中空有機繊維とを含有してなり、前記中
空有機繊維の粘度が、加硫時に前記ゴムマトリックスの
温度が加硫最高温度に達するまでの間に該ゴムマトリッ
クスの粘度よりも低くなることを特徴とするゴム組成物
である。 <2> 中空有機繊維が結晶性高分子を含んでなり、そ
の融点が加硫最高温度よりも低い前記<1>に記載のゴ
ム組成物である。 <3> 結晶性高分子が、ポリエチレン及びポリプロピ
レンから選ばれた少なくとも1種である前記<2>に記
載のゴム組成物である。 <4> 中空有機繊維の中空率が20〜70%である前
記<1>から<3>のいずれかに記載のゴム組成物であ
る。 <5> ゴムマトリックス100重量部に対して、中空
有機繊維を1〜30重量部含有する前記<1>から<4
>のいずれかに記載のゴム組成物である。
【0009】<6> 前記<1>から<5>のいずれか
に記載のゴム組成物を加硫して得られ、長尺状気泡を有
することを特徴とする加硫ゴムである。 <7> 平均発泡率が3〜40%である前記<6>に記
載の加硫ゴムである。
【0010】<8> 1対のビード部、該ビード部にト
ロイド状をなして連なるカーカス、該カーカスのクラウ
ン部をたが締めするベルト及びトレッドを有してなり、
少なくとも前記トレッドが、前記<1>から<5>のい
ずれかに記載のゴム組成物を含んでなることを特徴とす
るタイヤである。 <9> 長尺状気泡がタイヤ周方向に沿って配向された
前記<8>に記載のタイヤである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明のゴム組成物、加硫
ゴム及びタイヤについて詳細に説明する。
【0012】(ゴム組成物)本発明のゴム組成物は、ゴ
ムマトリックスと、中空有機繊維とを含有する。 −−ゴムマトリックス−− 前記ゴムマトリックスは、本発明のゴム組成物において
前記中空有機繊維を除く成分を含み、具体的には、天然
ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも1種
からなるゴム成分と発泡剤とを少なくとも含み、更に必
要に応じて発泡助剤等のその他の成分を含む。
【0013】−ゴム成分− 前記ゴム成分は、天然ゴムのみを含んでいてもよいし、
ジエン系合成ゴムのみを含んでいてもよいし、両者を含
んでいてもよい。前記ジエン系合成ゴムとしては、特に
制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択
することができるが、例えば、スチレン−ブタジエン共
重合体(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタ
ジエン(BR)などが挙げられる。これらのジエン系合
成ゴムの中でも、ガラス転移温度が低く、前記氷上性能
の効果が大きい点で、シス−1,4−ポリブタジエンが
好ましく、シス含有率が90%以上のものが特に好まし
い。
【0014】なお、前記ゴム組成物をタイヤのトレッド
等に用いる場合、前記ゴム成分としては、−60℃以下
のガラス転移温度を有するものが好ましい。このような
ガラス転移温度を有するゴム成分を用いると、該トレッ
ド等は、低温域においても十分なゴム弾性を維持し、良
好な前記氷上性能を示す点で有利である。
【0015】−発泡剤− 前記発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレ
ンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(AD
CA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼ
ンスルホニルヒドラジド誘導体、オキシビスベンゼンス
ルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生す
る重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモ
ニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合
物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタル
アミド、トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエン
スルホニルセミカルバジド、P,P’−オキシービス
(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等が挙げられ
る。
【0016】これらの発泡剤の中でも、製造加工性を考
慮すると、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DP
T)、アゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましく、
特にアゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。こ
れらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用
してもよい。前記発泡剤により、前記ゴム組成物を加硫
して得た加硫ゴムを発泡率に富む発泡ゴムとすることが
できる。
【0017】−その他の成分− 前記その他の成分としては、本発明の目的を害しない範
囲で使用することができ、例えば、カーボンブラック、
シリカ、炭酸カルシウム等の無機充填材、シランカップ
リング剤等のカップリング剤、軟化剤、硫黄等の加硫
剤、ジベンゾチアジルジスルフィド等の加硫促進剤、N
−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンア
ミド、N−オキシジエチレン−ベンゾチアジル−スルフ
ェンアミド等の老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、
オゾン劣化防止剤等の添加剤等の他、通常ゴム業界で用
いる各種配合剤などを適宜使用することができる。これ
らは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して
もよい。なお、本発明においては、前記その他の成分に
ついては市販品を使用することができる。
【0018】本発明においては、効率的な発泡を行う観
点から、前記その他の成分として発泡助剤を用い、該発
泡助剤を前記発泡剤に併用するのが好ましい。前記発泡
助剤としては、例えば、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベン
ゼンスルフィン酸亜鉛や亜鉛華等、通常、発泡製品の製
造に用る助剤等が挙げられる。これらの中でも、尿素、
ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛等が好ま
しい。これらは、それぞれ1種単独で使用してもよい
し、2種以上を併用してもよい。
【0019】−−中空有機繊維−− 前記中空有機繊維としては、前記ゴムマトリックスが加
硫最高温度に達するまでの間に溶融(軟化を含む)する
熱特性を有していること、換言すれば、前記ゴム組成物
の加硫時に前記ゴムマトリックスの温度が加硫最高温度
に達するまでの間に該中空有機繊維の粘度が該ゴムマト
リックスの粘度よりも低くなる熱特性を有していること
が必要である。
【0020】前記加硫最高温度とは、前記ゴム組成物の
加硫時における前記ゴムマトリックスが達する最高温度
を意味する。例えば、モールド加硫の場合には、該ゴム
組成物がモールド内に入ってからモールドを出て冷却さ
れるまでに前記ゴムマトリックスが達する最高温度を意
味する。前記加硫最高温度は、例えば、前記ゴムマトリ
ックス中に熱電対を埋め込むこと等により測定すること
ができる。
【0021】なお、前記ゴムマトリックスの粘度は流動
粘度を意味し、前記中空有機繊維の粘度は溶融粘度を意
味し、これらは、例えばコーンレオメーター、キャピラ
リーレオメーター等を用いて測定することができる。
【0022】前記中空有機繊維の素材としては、前記熱
特性を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適
宜選択することができる。前記熱特性を有する中空有機
繊維としては、例えば、その融点が前記加硫最高温度よ
りも低い結晶性高分子からなる中空有機繊維などが好適
に挙げられる。
【0023】該結晶性高分子からなる中空有機繊維を例
に説明すると、該中空有機繊維の融点と、前記ゴムマト
リックスの前記加硫最高温度との差が大きくなる程、前
記ゴム組成物の加硫中に速やかに該中空有機繊維が溶融
するため、該中空有機繊維の粘度が前記ゴムマトリック
スの粘度よりも低くなる時期が早くなる。このため、該
中空有機繊維が溶融すると、該中空有機繊維の中空部に
存在していた空気はそのまま該中空部に残留し、該ゴム
組成物中に生じた乃至は取り込まれた空気は前記ゴムマ
トリックスよりも低粘度である該中空有機繊維の内部に
移動し滞留する。その結果、該加硫ゴム中には、該中空
有機繊維の素材樹脂で被覆された長尺状の空隙(長尺状
気泡)が多く存在する。
【0024】一方、前記中空有機繊維の融点が、前記ゴ
ムマトリックスの前記加硫最高温度に近くなり過ぎる
と、加硫初期に速やかに該中空有機繊維が溶融せず、加
硫終期に該中空有機繊維が溶融する。加硫終期では、該
中空有機繊維の中空部内に存在していた空気が拡散し、
加硫したゴムマトリックス中に分散乃至取り込まれてし
まっており、溶融した該中空有機繊維内には十分な量の
空気が保持されない。他方、前記中空有機繊維の融点が
低くなり過ぎると、該ゴム組成物の混練り時の熱で該中
空有機繊維が溶融し、混練りの段階で該中空有機繊維同
士の融着による分散不良、混練りの段階で該中空有機繊
維が複数に分断されてしまう、該中空有機繊維が前記ゴ
ム組成物中に溶け込んでミクロに分散してしまう、等の
不都合が生じ好ましくない。
【0025】前記中空有機繊維の融点の上限としては、
特に制限はないものの、以上の点を考慮して選択するの
が好ましく、一般的には、前記ゴムマトリックスの前記
加硫最高温度よりも、10℃以上低いのが好ましく、2
0℃以上低いのがより好ましい。ゴム組成物の工業的な
加硫温度は、一般的には最高で約190℃程度である
が、例えば、加硫最高温度がこの190℃に設定されて
いる場合には、前記中空有機繊維の融点としては、通常
190℃以下の範囲で選択され、180℃以下が好まし
く、170℃以下がより好ましい。
【0026】一方、ゴム組成物の混練りを考慮すると、
前記中空有機繊維の融点としては、混練り時の最高温度
に対して、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ま
しく、20℃以上が特に好ましい。前記ゴム組成物の混
練りでの最高温度を例えば95℃と想定した場合には、
前記中空有機繊維の融点としては、100℃以上が好ま
しく、105℃以上がより好ましく、115℃以上が特
に好ましい。
【0027】なお、前記中空有機繊維の融点は、それ自
体公知の融点測定装置等を用いて測定することができ、
例えば、DSC測定装置を用いて測定した融解ピーク温
度を前記融点とすることができる。
【0028】前記中空有機繊維は、結晶性高分子から形
成されていてもよいし、非結晶性高分子から形成されて
いてもよいし、結晶性高分子と非結晶性高分子とから形
成されていてもよいが、本発明においては、相転移があ
るために粘度変化がある温度で急激に起こり、粘度制御
が容易な点で結晶性高分子を含む有機素材から形成され
ているのが好ましく、結晶性高分子のみから形成される
のがより好ましい。
【0029】前記結晶性高分子の具体例としては、例え
ば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、
ポリブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレ
ンサクシネート、シンジオタクティック−1,2−ポリ
ブタジエン(SPB)、ポリビニルアルコール(PV
A)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の単一組成重合物
や、共重合、ブレンド等により融点を適当な範囲に制御
したものも使用でき、更にこれらに添加剤を加えたもの
も使用できる。これらは、1種単独で使用してもよい
し、2種以上を併用してもよい。これらの結晶性高分子
の中でも、ポリオレフィン、ポリオレフィン共重合体が
好ましく、汎用で入手し易い点でポリエチレン(P
E)、ポリプロピレン(PP)がより好ましく、融点が
低く、取扱いが容易な点でポリエチレン(PE)が特に
好ましい。
【0030】前記非結晶性高分子としては、例えば、ポ
リメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリ
ルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレ
ン(PS)、ポリアクリロニトリル、これらの共重合
体、これらのブレンド物等が挙げられる。これらは、1
種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよ
い。
【0031】前記中空有機繊維には、本発明の目的を害
しない範囲において、必要に応じて公知の添加剤が添加
されていてもよい。
【0032】前記中空有機繊維の素材の分子量は、該素
材の化学組成、分子鎖の分岐の状態等によって異なり一
概に規定することはできないが、一般に、該中空有機繊
維は、同じ素材で形成されていてもその分子量が高い
程、ある一定の温度における粘度(溶融粘度)は高くな
る。本発明においては、前記中空有機繊維の素材の分子
量は、前記ゴムマトリックスの加硫最高温度における粘
度(流動粘度)よりも該中空有機繊維の粘度(溶融粘
度)が高くならないような範囲で選択するのが好まし
い。
【0033】なお、一試験例では、前記中空有機繊維
が、1〜2×105 程度の重量平均分子量のポリエチレ
ンの場合の方が、7×105 以上の重量平均分子量のポ
リエチレンの場合よりも、中空有機繊維の中空部内に存
在した空気が加硫後においても多量に残留していた。こ
の相違は、該中空有機繊維の素材であるポリエチレンの
分子量の違いに起因する粘度(溶融粘度)の差に基づく
ものと推測される。
【0034】前記中空有機繊維の中空率としては、20
〜70%が好ましく、25〜65%がより好ましく、3
0〜60%が特に好ましい。また、本発明においては、
前記中空有機繊維の中空率として、前記数値範囲のいず
れかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例において
採用した中空率の値を下限とし、前記数値範囲のいずれ
かの下限値若しくは上限値又は後述の実施例において採
用した中空率の値を上限とする数値範囲も好ましい。前
記中空率が、20%未満であると、ゴム組成物中に配合
する前記中空有機繊維に対して、該ゴム組成物中に取り
込み乃至保持される空気の量が少なく、該ゴム組成物を
加硫して得られる加硫ゴムの前記氷上性能を十分に向上
させることができず、70%を越えると、該中空有機繊
維の生産性が悪化する上、該中空有機繊維が潰れ易く、
この潰れにより該ゴム組成物の混練り時等において該中
空有機繊維の中空部内に存在する空気のゴム組成物外へ
の流出が起こり好ましくない。一方、前記中空率が前記
好ましい数値範囲内にあると、そのようなことはない点
で好ましい。
【0035】前記中空有機繊維のデニールとしては、特
に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる
が、前記氷上性能を向上させる観点からは、1〜100
0デニールが好ましく、2〜800がより好ましい。前
記中空有機繊維の長さとしては、特に制限はなく、目的
に応じて適宜選択することができるが、前記氷上性能を
向上させる観点からは、1〜10mmが好ましく、2〜
8mmがより好ましい。
【0036】前記中空有機繊維の前記ゴム組成物におけ
る含有量としては、前記ゴムマトリックス100重量部
に対して、1〜30重量部が好ましく、7〜26重量部
がより好ましく、9〜22重量部が特に好ましい。ま
た、本発明においては、前記中空有機繊維の前記ゴム組
成物における含有量として、前記数値範囲のいずれかの
下限値若しくは上限値又は後述の実施例において採用し
た含有量の値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下
限値若しくは上限値又は後述の実施例において採用した
含有量の値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0037】前記含有量が、1重量部未満であると、長
尺状気泡の量が少なくなるため、前記氷上性能を十分に
向上させることができず、30重量部を越えると、該中
空有機繊維のゴム組成物中での分散性が悪化する、押出
時の作業性が悪化する、タイヤのトレッドにクラックが
発生する等の不都合が生ずることがあり、また、コスト
的にも高くなるため好ましくない。一方、前記含有量が
前記好ましい数値範囲内にあると、そのようなことはな
い点で好ましい。
【0038】−−ゴム組成物の調製−− 前記ゴム組成物は、以上の各成分を適宜選択した装置、
条件、手法等にて混練り、熱入れ、押出等することによ
り調製される。
【0039】前記混練りは、混練り装置への投入体積、
ローターの回転速度、ラム圧等、混練り温度、混練り時
間、混練り装置等の諸条件について特に制限はなく、目
的に応じて適宜選択することができる。前記混練り装置
としては、市販品を好適に使用することができる。
【0040】前記熱入れ又は押出は、熱入れ又は押出の
時間、熱入れ又は押出の装置等の諸条件について特に制
限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前
記熱入れ又は押出の装置としては、市販品を好適に使用
することができる。
【0041】本発明のゴム組成物を後述のタイヤのトレ
ッド等に用いる場合、該ゴム組成物を加硫する前に、該
ゴム組成物中の前記中空有機繊維を所定の方向に配向さ
せておくのが好ましい。この場合、得られるタイヤ等の
走行方向の排水性が高まり、前記氷上性能を向上させる
ことができる点で好ましい。前記中空有機繊維を配向さ
せる方向としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜
決定することができるが、例えばタイヤのトレッドを得
る場合には、該トレッドにおける地面と接触する表面に
平行な方向に、更には、該タイヤの周方向に沿った方向
が好ましい。
【0042】前記ゴム組成物中で前記中空有機繊維を所
定の方向に配向させるには、公知の方法を採用すること
ができるが、例えば、図1に示すように、前記中空有機
繊維14が混練りされたゴムマトリックス15を、流路
断面積が出口に向かって減少する押出機の口金16から
押し出す方法などが挙げられる。この場合、押し出され
る前のゴムマトリックス15中の中空有機繊維14は、
口金16へ押し出されていく過程でその長手方向が押出
方向(A方向)に沿って除々に揃うようになり、口金1
6から押し出されるときには、その長手方向が押出方向
(A方向)にほぼ完全に揃うようになる。なお、この場
合の中空有機繊維14のゴムマトリックス15中の配向
の程度は、流路断面積の減少程度、押出速度、ゴムマト
リックスの粘度等によって変化する。
【0043】本発明のゴム組成物は、各種分野において
好適に使用することができるが、後述の本発明の加硫ゴ
ムの原料等として特に好適に使用することができる。
【0044】(加硫ゴム)本発明の加硫ゴムは、前記本
発明のゴム組成物をそのまま、あるいは用途によっては
上述のように前記中空有機繊維を配向させてから、加硫
することにより容易に得られる。
【0045】前記加硫を行う装置、条件、方法等につい
ては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すること
ができるが、タイヤのトレッド等を得る場合にはモール
ド加硫を行うのが好ましい。前記加硫の温度としては、
一般に前記ゴム組成物の加硫中におけるゴムマトリック
スの加硫最高温度が前記中空有機繊維の融点以上になる
ように選択される。前記加硫最高温度が前記中空有機繊
維の融点未満であると、前記中空有機繊維が溶融しな
い。
【0046】加硫前の前記ゴム組成物においては、前記
ゴムマトリックスよりも前記中空有機繊維の方が粘度が
高くなっている。加硫開始後、該ゴム組成物が加硫最高
温度に達するまでの間に、該ゴム組成物に含まれる前記
ゴムマトリックスは加硫によりその粘度が上昇してい
く。一方、該ゴム組成物に含まれる前記中空有機繊維
は、溶融しその粘度が大幅に低下する。そして、加硫途
中において、前記ゴムマトリックスよりも前記中空有機
繊維の方が粘度が低くなる。即ち、加硫前の前記ゴムマ
トリックスと前記中空有機繊維との間における粘度の関
係が、加硫途中の段階で逆転する現象が生ずる。
【0047】この間、前記ゴム組成物中では、発泡剤に
よる発泡反応が起こり、ガスが生ずる。この発泡により
生じたガスは、加硫反応が進行して粘度が高くなってい
るゴムマトリックスに比べて、溶融により相対的に粘度
が低下した中空有機繊維の樹脂部内に移動し、容易に取
り込まれる。そして、前記ガスは、該中空部内に元々存
在していた空気と一体となる。該加硫ゴムにおいては、
前記ゴム組成物中において前記中空有機繊維が存在して
いた箇所に相当する箇所に長尺状気泡が形成されてい
る。該長尺状気泡は、前記発泡剤によるガスを取り込ん
だ分だけ前記中空有機繊維の元々の中空部の容積よりも
大きくなっており、前記中空有機繊維の元々の中空部の
内径よりもその径が大きくなっている。
【0048】前記長尺状気泡は、該長尺状気泡に面する
周囲(長尺状気泡の内壁)が前記中空有機繊維の素材樹
脂によって被覆されており、加硫ゴム内において互いに
独立して存在している。前記中空有機繊維の素材をポリ
エチレン、ポリプロピレン等とした場合は、加硫したゴ
ムマトリックスと該中空有機繊維の素材による被覆層
(以下「保護層」と称することがある)とは強固に接着
している。加硫したゴムマトリックスと前記被覆層とは
強固に接着しているが、該接着力を向上させる必要があ
る場合には、例えば、該中空有機繊維にゴムマトリック
スとの接着性を向上させる成分を含有させる方法等が採
用できる。
【0049】なお、前記発泡剤により生じたガスの内、
前記長尺状気泡の形成に関与しなかったものは、前記加
硫ゴムにおいて、球状の気泡として存在する。したがっ
て、本発明の加硫ゴムは、前記長尺状気泡と前記球状の
気泡とを有する発泡ゴムとして形成される。但し、本発
明の加硫ゴムにおいては、前記中空有機繊維の直径が中
空部により非中空糸より大きくなっているため、前記発
泡剤により生じたガスを取り込む確率が高く、前記長尺
状気泡の体積比率が比較的高くなっている。
【0050】本発明の加硫ゴムの発泡率(平均発泡率)
Vsとしては、3〜40%が好ましく、5〜35%がよ
り好ましい。また、本発明においては、前記発泡率Vs
として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限
値又は後述の実施例における平均発泡率Vsの値を下限
とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値
又は後述の実施例における平均発泡率Vsの値を上限と
する数値範囲も好ましい。
【0051】前記発泡率をVsとは、前記球状の気泡の
発泡率Vs1 と、前記長尺状気泡の発泡率Vs2 とを合
計を意味し、次式により算出できる。 Vs=(ρ0 /ρ1 −1)×100(%) ここで、ρ1 は、加硫ゴム(発泡ゴム)の密度(g/c
3 )を表す。ρ0 は、加硫ゴム(発泡ゴム)における
固相部の密度(g/cm3 )を表す。なお、前記加硫ゴ
ム(発泡ゴム)の密度及び前記加硫ゴム(発泡ゴム)に
おける固相部の密度は、例えば、エタノール中の重量と
空気中の重量を測定し、これから算出することができ
る。
【0052】前記発泡率Vsが、3%未満であると、発
生する水膜に対して絶対的な凹部体積の不足により十分
な水排除機能が得られず、前記氷上性能を効果的に向上
させることができないことがあり、一方、40%を越え
ると、前記氷上性能を向上させることはできるものの、
加硫ゴム中の気泡の体積比率が高過ぎるため、該加硫ゴ
ムの破壊限界が大巾に低下し、耐久性が十分でないこと
がある。なお、本発明においては、前記発泡率Vsが3
〜40%であると共に、長尺状気泡が前記発泡率Vsに
おける30%以上を占めることが好ましい。前記比率が
30%未満であると、効率的に水膜を除去し得る長尺状
気泡による水排除機能が十分に発揮されないことがあ
る。
【0053】また、前記発泡率Vsは、前記発泡剤の種
類、量、組み合わせる前記発泡助剤の種類、量、前記中
空有機繊維の配合量、中空率等により適宜変化させるこ
とができる。なお、本発明の加硫ゴムにおいては、前記
中空有機繊維の中空部が元々空気を保持しているため、
該中空有機繊維を用いない通常の発泡ゴムに比べて、発
泡率を効率よく上げることができるので、通常の発泡ゴ
ムを製造する場合よりも前記発泡剤の量を減らすことが
できる。
【0054】本発明の加硫ゴムにおいては、図2に示す
通り、加硫したゴムマトリックス6A中に、長尺状気泡
11が形成されている。なお、本発明の加硫ゴムの原料
である前記本発明のゴム組成物中において前記中空有機
繊維を一定の方向に配向させた場合には、長尺状気泡1
1が押出方向(A方向)に配向した状態で存在してい
る。長尺状気泡11は、加硫したゴムマトリックス6A
と、溶融した前記中空有機繊維の素材とが接着してなる
保護層13によりその周囲が囲まれている。また、長尺
状気泡11は、加硫ゴム6において独立した空間として
存在し、長尺状気泡11の内部には、空気及びガスが保
持されている。
【0055】本発明の加硫ゴムにおいては、長尺状気泡
11が表面に露出した場合(図7参照)、該長尺状気泡
11のよる凹部12が、水の効率的な排出を行う排水路
として機能する。該凹部12の周囲は、耐剥離性に優れ
る保護層13により被覆され、保護されているため、該
凹部12は、水路形状保持性、水路エッジ部摩耗性、荷
重入力時の水路保持性等に優れる。
【0056】長尺状気泡11の平均中空径D(=保護層
13の内径、図2参照)としては、特に制限はなく、目
的に応じて適宜選択することができるが、10〜500
μm程度であるのが好ましい。前記平均中空径Dが、1
0μm未満であると、該加硫ゴムをタイヤのトレッド等
に用いても該タイヤ等の水排除性能が十分でないことが
ある。一方、500μmを越えると、該加硫ゴムの耐カ
ット性、ブロック欠け性が悪化し、また、乾燥路面での
耐摩耗性が悪化することがある。
【0057】前記長尺状気泡11の1個当たりの最大長
さL(図2参照)と、前記平均中空径Dとの比(L/
D)としては、3以上が好ましい。前記比(L/D)が
3以上であると、摩耗した加硫ゴムの表面に露出する長
尺状気泡11の長さを長くすることができ、また、その
容積を大きくすることができるため、該加硫ゴムをタイ
ヤのトレッド等に用いる場合に該タイヤ等の水排除性能
を向上させることができる点で有利である。
【0058】本発明の加硫ゴムは、各種分野において好
適に使用することができるが、氷上でのスリップを抑え
ることが必要な構造物に特に好適に使用でき、例えば空
気入りタイヤのトレッド等に最も好適に用いることがで
きる。前記氷上でのスリップを抑えることが必要な構造
物としては、例えば、更生タイヤの貼り替え用のトレッ
ド、中実タイヤ、氷雪路走行に用いるゴム製タイヤチェ
ーンの接地部分、雪上車のクローラー、靴底等が挙げら
れる。
【0059】(タイヤ)本発明のタイヤは、少なくとも
トレッドを有してなり、少なくとも該トレッドが前記本
発明の加硫ゴムを含んでなる限り、他の構成としては特
に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ
る。換言すれば、前記本発明のゴム組成物を用い、これ
を加硫してなる加硫ゴムを含むトレッドを有するタイヤ
が、本発明のタイヤである。
【0060】本発明のタイヤの一例を図面を用いて説明
すると以下の通りである。図3に示すように、本発明の
タイヤ4は、一対のビード部1と、該一対のビード部1
にトロイド状をなして連なるカーカス2と、該カーカス
2のクラウン部をたが締めするベルト3と、トレッド5
とを順次配置したラジアル構造を有する。なお、トレッ
ド5以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と
変わりないので説明は省略する。
【0061】トレッド5には、図4に示すように、複数
本の周方向溝7及びこの周方向溝7と交差する複数本の
横溝8とによって複数のブロック9が形成されている。
また、ブロック9には、氷上でのブレーキ性能及びトラ
クション性能を向上させるために、タイヤの幅方向(B
方向)に沿って延びるサイプ10が形成されている。
【0062】トレッド5は、図5に示すように、直接路
面に接地する上層のキャップ部5Aと、このキャップ部
5Aのタイヤの内側に隣接して配置される下層のベース
部5Bとから構成されており、いわゆるキャップ・ベー
ス構造を有する。
【0063】キャップ部5Aは、図2及び図7に示すよ
うに、長尺状気泡11を多数に含んだゴムであり、ベー
ス部5Bには通常のゴムが使用されている。前記長尺状
の空隙12を無数に含んだゴムが、前記本発明の加硫ゴ
ムである。長尺状気泡11は、図2に示すように、実質
的にタイヤの周方向(A方向)に配向されており、その
周囲が前記中空有機繊維の素材による保護層13で被覆
されている。なお、本発明においては、長尺状気泡11
は、総てタイヤの周方向に配向されていなくても、一部
タイヤの周方向以外の向きに配向していてもよい(図5
参照)。
【0064】タイヤ4は、その製造方法については特に
制限はないが、例えば、以下のようにして製造すること
ができる。即ち、まず、前記ゴム組成物を調製する。こ
のゴム組成物においては、前記中空有機繊維を一方向に
配向させておく。該ゴム組成物を、生タイヤケースのク
ラウン部に予め貼り付けられた未加硫のベース部の上に
貼り付ける。このとき、前記中空有機繊維の配向を、タ
イヤの周方向と一致させておく。
【0065】そして、所定のモールドで所定温度、所定
圧力の下で加硫成形する。未加硫のキャップ部がモール
ド内で加熱され、加硫反応が進行すると、該加硫反応の
途中で、前記中空有機繊維が溶融(又は軟化)し、その
粘度(溶融粘度)が前記ゴムマトリックスの粘度(流動
粘度)よりも低下する(図6参照)と共に、前記ゴムマ
トリックス中で、発泡剤による発泡が生じガスが生ず
る。該ガスは、溶融して粘度が相対的に低下した前記中
空有機繊維の中空部内へと移動し、該中空部内で元々そ
こに保持されていた空気と一体となり、該中空部内の容
積を増大させる。該ガスの残りは、加硫したゴムマトリ
ックス中で球状の気泡としてが保持される。その結果、
冷却後のキャップ部5Aにおいては、図2に示す通り、
前記中空有機繊維が存在していた箇所に長尺状気泡11
が存在し、その周囲に球状の気泡17が存在している。
このキャップ部5Aは、本発明の加硫ゴムに相当する。
【0066】次に、タイヤ4の作用について説明する。
氷雪路面上でタイヤ4を走行させると、タイヤ4と前記
氷雪路面との摩擦により、タイヤ4のトレッド5の表面
が摩耗する。すると、図7に示すように、長尺状気泡1
1による凹部12が、トレッド5のキャップ部5Aの接
地面に露出する。更にタイヤ4を走行させると、タイヤ
4とその接地面との間の接地圧及び摩擦熱により、タイ
ヤ4と前記氷雪路面との間に水膜が生じる。この水膜
は、トレッド5のキャップ部5Aの接地面に露出する長
尺状気泡11による多数の凹部12と、球状の気泡17
による凹部18とにより、素早く排除され、除去され
る。このため、タイヤ4は、前記氷雪路面上でもスリッ
プ等することが少なくなる。
【0067】タイヤ4においては、実質的にタイヤの周
方向に配向している凹部12が効率的な排水を行う排水
溝として機能する。凹部12は、その表面(周囲)が耐
剥離性に優れる保護層13で被覆されているため、高荷
重時でも潰れ難く、排水溝形状保持性、水排除性能に優
れる。この凹部12により、タイヤ4の回転方向後側へ
の水排除性能が向上するため、タイヤ4は、氷上ブレー
キ性能に特に優れる。タイヤ4においては、保護層13
による引っ掻き効果によって横方向の氷上μが向上し、
その結果、氷上ハンドリングが良好である。
【0068】本発明のタイヤは、いわゆる乗用車用のみ
ならず、トラック・バス用等の各種の乗物にも好適に適
用できる。
【0069】
【実施例】以下に、本発明の実施例を説明するが、本発
明は、これの実施例に何ら限定されるものではない。 (実施例1〜7及び比較例1〜2)表1に示す組成のゴ
ム組成物を調製した。これらのゴム組成物の加硫時にお
けるゴムマトリックスの加硫最高温度は、該ゴムマトリ
ックス中に熱電対を埋め込んで測定したところ175℃
であった。
【0070】表1中の「繊維」は比較例2及び実施例1
〜7では中空有機繊維を意味する。この中空有機繊維
は、ノズルがドーナツ状である外は通常の溶融紡糸法と
同様にして製造されたものであり、軸に直交する方向の
断面がほぼ円形である。この中空有機繊維の素材は、実
施例1〜7では、ポリエチレン(HDPE、重量平均分
子量(Mw)1.8×105 )であり、Dupont社
製DSCにより、昇温速度10℃/分、サンプル重量約
5mgの条件にて測定した融点ピーク温度(融点)が1
35℃であった。また、比較例2では、ポリエチレンテ
レフタレートであり、Dupont社製DSCにより、
昇温速度10℃/分、サンプル重量約5mgの条件にて
測定した融点ピーク温度(融点)が255℃であった。
【0071】したがって、中空有機繊維の融点は、実施
例1〜7では前記ゴム組成物の加硫時における加硫最高
温度よりも低くなっており、比較例2では前記ゴム組成
物の加硫時における加硫最高温度よりも高くなってい
る。このため、加硫時において、前記ゴム組成物の温度
が加硫最高温度に達するまでの間に、前記中空有機繊維
の粘度が、実施例1〜7では前記ゴムマトリックスの粘
度よりも低くなったが(図6参照)、比較例2では前記
ゴムマトリックスの粘度よりも低くならなかった。
【0072】なお、前記中空有機繊維の前記加硫最高温
度における粘度(溶融粘度)は、コーンレオメーターを
用いて測定(スタート温度を190℃とし、5℃ずつ温
度を下げながら発生するトルクを中空有機繊維の粘度と
して、該粘度の温度依存性を測定し、得られたカーブか
らトレッドの最高温度での中空有機繊維の粘度を読み取
り、ゴムマトリックスの粘度と比較した。温度以外は、
後述のゴムマトリックスの粘度の測定と同条件で行っ
た。)したところ、実施例1〜7では6kg・cmであ
った。比較例2では溶融しないため、粘度が著しく高
く、測定できなかった。
【0073】前記ゴムマトリックスの前記加硫最高温度
における粘度(流動粘度)は、モンサント社製コーンレ
オメーター型式1−C型を使用し、温度を変化させなが
ら100サイクル/分の一定振幅入力を与えて経時的に
トルクを測定し、その際の最小トルク値を粘度としたと
ころ(ドーム圧力0.59MPa、ホールディング圧力
0.78MPa、クロージング圧力0.78MPa、振
り角±5°)、実施例1〜7及び比較例1〜2の総てに
つき13kg・cmであった。
【0074】次に、各ゴム組成物を用い、タイヤのトレ
ッドを形成し、トレッドが本発明の加硫ゴムで形成され
たタイヤ(空気入りタイヤ)を通常のタイヤ製造条件に
従って製造した。このタイヤは、乗用車用ラジアルタイ
ヤであり、そのタイヤサイズは185/70R13であ
り、その構造は図3に示す通りである。即ち、一対のビ
ード部1と、該一対のビード部1にトロイド状をなして
連なるカーカス2と、該カーカス2のクラウン部をたが
締めするベルト3と、トレッド5とを順次配置したラジ
アル構造を有する。
【0075】このタイヤ4において、カーカス2は、タ
イヤ周方向に対し90°の角度で配置され、コードの打
ち込み数は、50本/5cmである。タイヤ4のトレッ
ド5には、図4に示す通り、タイヤ4の幅方向に4個の
ブロック9が配列されている。ブロック9のサイズは、
タイヤ4の周方向の寸法が35mmであり、タイヤ4の
幅方向の寸法が30mmである。また、ブロック9に形
成されているサイプ10は、幅が0.4mmであり、タ
イヤ4の周方向の間隔が約7mmになっている。
【0076】得られた各タイヤの氷上性能及び各タイヤ
を製造する際の精錬作業性(中空有機繊維の分散性)を
評価した。その結果を表1に示した。 <氷上性能>タイヤを国産1600CCクラスの乗用車
に装着し、該乗用車を、一般アスファルト路上に200
km走行させた後、氷上平坦路を走行させ、時速20k
m/hの時点でブレーキを踏んでタイヤをロックさせ、
停止するまでの距離を測定した。結果は、距離の逆数を
比較例1のタイヤを100として指数表示した。なお、
数値が大きいほど氷上性能が良いことを示す。
【0077】<精錬作業性(中空有機繊維の分散性)>
以下の基準に従い、○、×、△の3段階で評価した。な
お、△以上であれば、実作業上問題のないレベルと言え
る。 ○: 精錬作業に何ら支障のないレベルであった △: 中空有機繊維の分散不良(径が5mm未満の塊)が
少量観られた ×: 中空有機繊維の塊(径が5mm以上の塊)が複数箇
所観られた
【0078】また、各タイヤのトレッド部分における
「発泡率」を、該トレッドの空気中での比重と、エタノ
ール中での比重とから算出し、その結果を表1に示し
た。更に、以下のようにして長尺状気泡と球状の気泡と
の体積比を算出し、その結果を表1に示した。即ち、タ
イヤのトレッドからセンター部ブロック片を切取り、更
に鋭利なカミソリで観察面を切り出す。このカットサン
プルを走査型電子顕微鏡で、倍率100倍にて写真撮影
を行う。なお、写真撮影場所については無作為に抽出す
る。次いで、この写真中の球状の気泡部分と、長尺状気
泡部分とを分別し、それぞれの面積を測定して、ある一
定面積内における両者の面積比を算出した。この操作を
10回行い、前記面積比の平均値を求め、これを前記体
積比とした。なお、加硫ゴム(トレッド)の「ゴム硬
度」は、JIS K 6301−1995(25℃、ス
プリング式硬さ(Aタイプ))に従って測定し、その結
果を表1に示した。
【0079】
【表1】
【0080】表1の結果から、以下のことが明らかであ
る。即ち、加硫最高温度より低い融点を持つ樹脂により
なる中空有機繊維を用いる本発明の実施例1〜7は、走
査型電子顕微鏡での観察の結果、潰れのない長尺状気泡
が形成されており、また、該長尺状気泡は、加硫したゴ
ムマトリックスと強固に接着した前記中空有機繊維の素
材による保護層で被覆されていた。更に、中空有機繊維
を用いない(中空部を有しない繊維を用いた)比較例1
に比べて、いずれも発泡率が高くなり、又、長尺状気泡
比率が高くなるため、前記氷上性能に優れていた。実施
例1〜7の中でも、中空有機繊維の中空率(%)及び中
空有機繊維のゴム組成物中の含有量がいずれも特に好ま
しい数値範囲内にある実施例1、2及び4は、前記氷上
性能及び前記精練作業性(中空有機繊維の分散性)に特
に優れていた。
【0081】また、比較例1と実施例1、2及び5との
比較から、前記中空有機繊維の中空率が高い方が、前記
氷上性能に優れてることが明らかであり、前記中空有機
繊維の中空率(%)が好ましい数値範囲(20〜70
%)内にある実施例1及び2の方が前記氷上性能に優れ
ている。また、実施例2、3、4、6及び7の比較か
ら、前記中空有機繊維の含有量が好ましい範囲(1〜3
0重量部)内にある場合の方が、前記氷上性能に優れて
いることが明らかである。前記中空有機繊維の含有量
が、前記好ましい数値範囲の下限値である1重量部未満
である実施例6は、実施例2、3及び4に比べて前記氷
上性能がやや劣っていた。また、前記中空有機繊維の含
有量が前記好ましい数値範囲の上限値である30重量部
を越える実施例7は、実施例2、3及び4に比べて前記
精練作業性(中空有機繊維の分散性)が劣っていた。し
たがって、前記中空有機繊維の含有量が1重量部未満で
あると、前記氷上性能の改良効果が十分でなく、30重
量を越えると、前記精練作業性(中空有機繊維の分散
性)が十分でないことが明らかである。ただし、コスト
の点からみると、実施例6は比較例1に比べて、繊維量
を減らしながら、即ちコストを下げながら性能を確保し
ている。したがって、実施例6は、低コスト化を目的と
した本発明の例である。
【0082】なお、比較例2の場合には、加硫中に中空
有機繊維が溶融せずに潰れ等が生じたため、該中空有機
繊維の中空部内に存在していた空気が分散し、更に、発
泡剤から発生したガスも取り込まないので、長尺状の空
隙が十分には形成できず、前記氷上性能を効果的に向上
させることができなかった。また、中空有機繊維と加硫
したゴムマトリックスとが強固に接着していないため、
走行中に該中空有機繊維の脱落が観られ、摩耗に対する
保護層の耐剥離性、水路形状保持性等が十分でなかっ
た。
【0083】
【発明の効果】本発明によると、前記従来における諸問
題を解決することができる。また、本発明によると、前
記氷雪路面上に生ずる水膜の除去能力に優れ、該氷雪路
面との間の摩擦係数が大きく、前記氷上性能に優れるタ
イヤ、該タイヤのトレッドなど、氷上でのスリップを抑
えることが必要な構造物に好適な加硫ゴム、及び、該加
硫ゴムの原料等として好適なゴム組成物を比較的低コス
トで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、中空有機繊維の配向を揃える原理を説
明する説明図である。
【図2】図2は、本発明の加硫ゴムの断面概略説明図で
ある。
【図3】図3は、本発明のタイヤの一部断面概略説明図
である。
【図4】図4は、本発明のタイヤの周面の一部概略説明
図である。
【図5】図5は、本発明のタイヤのトレッドの一部断面
概略説明図である。
【図6】図6は、加硫時間とゴムマトリックスの粘度及
び中空有機繊維の粘度との関係を示したグラフである。
【図7】図7は、本発明のタイヤの摩耗したトレッドの
一部断面拡大概略説明図である。
【符号の説明】
1 一対のビード部 2 カーカス 3 ベルト 4 タイヤ 5 トレッド 5A キャップ部 5B ベース部 6 加硫ゴム 6A 加硫したゴムマトリックス 7 周方向溝 8 横溝 9 ブロック 10 サイプ 11 長尺状気泡 12 凹部 13 保護層 14 中空有機繊維 15 ゴムマトリックス 16 口金 17 球状の気泡 18 凹部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 9/00 C08L 9/00

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ば
    れた少なくとも1種からなるゴム成分と発泡剤とを含む
    ゴムマトリックスと、中空有機繊維とを含有してなり、
    前記中空有機繊維の粘度が、加硫時に前記ゴムマトリッ
    クスの温度が加硫最高温度に達するまでの間に該ゴムマ
    トリックスの粘度よりも低くなることを特徴とするゴム
    組成物。
  2. 【請求項2】 中空有機繊維が結晶性高分子を含んでな
    り、その融点が加硫最高温度よりも低い請求項1に記載
    のゴム組成物。
  3. 【請求項3】 結晶性高分子が、ポリエチレン及びポリ
    プロピレンから選ばれた少なくとも1種である請求項2
    に記載のゴム組成物。
  4. 【請求項4】 中空有機繊維の中空率が20〜70%で
    ある請求項1から3のいずれかに記載のゴム組成物。
  5. 【請求項5】 ゴムマトリックス100重量部に対し
    て、中空有機繊維を1〜30重量部含有する請求項1か
    ら4のいずれかに記載のゴム組成物。
  6. 【請求項6】 請求項1から5のいずれかに記載のゴム
    組成物を加硫して得られ、長尺状気泡を有することを特
    徴とする加硫ゴム。
  7. 【請求項7】 平均発泡率が3〜40%である請求項6
    に記載の加硫ゴム。
  8. 【請求項8】 1対のビード部、該ビード部にトロイド
    状をなして連なるカーカス、該カーカスのクラウン部を
    たが締めするベルト及びトレッドを有してなり、少なく
    とも前記トレッドが、請求項1から5のいずれかに記載
    のゴム組成物を含んでなることを特徴とするタイヤ。
  9. 【請求項9】 長尺状気泡がタイヤ周方向に沿って配向
    された請求項8に記載のタイヤ。
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JP2006233015A (ja) * 2005-02-24 2006-09-07 Bridgestone Corp ゴム組成物、加硫ゴムおよびタイヤ

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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