JP3851421B2 - ゴム組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に市場が要望する優れた氷上性能を有するタイヤのトレッド等に好適なゴム組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパイクタイヤが規制されて以来、氷雪路面上でのタイヤの制動・駆動性能(氷上性能)を向上させるため、特にタイヤのトレッドについての研究が盛んに行われてきている。
前記氷雪路面においては、該氷雪路面と前記タイヤとの摩擦熱等により水膜が発生し易く、該水膜が、タイヤと氷雪路面との間の摩擦係数を低下させる原因になっている。このため、前記タイヤのトレッドの水膜除去能やエッヂ効果が、前記氷上性能に大きく影響する。したがって、タイヤにおける前記氷上性能を向上させるためには、前記トレッドの水膜除去能やエッヂ効果を改良することが必要である。
【0003】
そこで、特開平4−38207号公報等においては、短繊維入発泡ゴムを前記トレッドに用いることにより、該トレッドの表面に前記ミクロな排水溝を形成することが記載されている。
しかし、この場合、該短繊維は熱収縮によりカールしたり、モールド加硫時にサイプ部に押し込まれて屈曲してしまい、走行により該トレッドが摩耗しても、摩耗面と略平行でない該短繊維は、該トレッドから容易に離脱せず、当初の狙いのような前記ミクロな排水溝が効率的に形成できず、前記氷雪路面上での摩擦係数の向上が十分でない。また、前記短繊維の離脱は走行条件等に大きく左右され、確実に前記氷上性能を向上させることができない。また、前記ミクロな排水溝は、タイヤにかかる負荷が大きい場合には潰れてしまう等の問題がある。
【0004】
また、特開平4−110212号公報等においては、前記トレッドに中空繊維を分散させることにより、前記氷雪路面と前記トレッドとの間に存在する前記水膜を該中空繊維の中空部分で排除し得るタイヤが開示されている。
しかしながら、このタイヤの場合、該中空繊維のゴム中への混練時や成形時における圧力、ゴム流れ、温度等によって該中空繊維が潰れてしまい、実際には該中空繊維は中空形状を保つことができず、前記ミクロな排水溝が効率的に形成できず、依然として前記氷上性能が十分でないという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、氷上に生ずる前記水膜の除去能力に優れ、氷面との間の摩擦係数が大きく、前記氷上性能に優れるタイヤ、該タイヤのトレッドなど、氷上でのスリップを抑えることが必要な構造物に好適なゴム組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも1種からなるゴム成分と発泡剤とを含むゴムマトリックスと、加硫時に前記ゴムマトリックスの温度が加硫最高温度に達するまでの間にその溶融粘度が該ゴムマトリックスの流動粘度よりも低くなる繊維樹脂とを含む混合物を混練りし、熱入れし、押出し、加硫することを含み、
前記混練り中の前記混合物の最高温度、前記熱入れ中の前記混合物の最高温度、及び前記押出直後の前記混合物の最高温度を、前記繊維樹脂の融点未満に設定し、かつ前記加硫最高温度を前記繊維樹脂の融点以上に設定したことを特徴とするゴム組成物の製造方法である。
<2> 混練り中の混合物の最高温度、熱入れ中の混合物の最高温度、及び押出直後の混合物の最高温度を、繊維樹脂の融点よりも5℃以上低く設定した前記<1>に記載のゴム組成物の製造方法である。
【0007】
<3> 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも1種からなるゴム成分と発泡剤とを含むゴムマトリックスと、1粒当たりの平均体積が小さくとも0.5mm3 であり、かつ加硫時に前記ゴムマトリックスの温度が加硫最高温度に達するまでの間にその溶融粘度が該ゴムマトリックスの流動粘度よりも低くなる粒状の樹脂とを含む混合物を混練りし、熱入れし、押出し、加硫することを含み、
前記混練り中の前記混合物の最高温度を前記粒状の樹脂の融点よりも5℃以上高く設定し、前記熱入れ後の前記混合物中において溶融分散した前記粒状の樹脂の平均粒径が3.8〜1000μmであり、前記押出直後の前記混合物の最高温度を前記粒状の樹脂の融点以上に設定し、かつ前記加硫最高温度を前記粒状の樹脂の融点以上に設定し、加硫前に繊維樹脂の相が形成されることを特徴とするゴム組成物の製造方法である。
<4> 押出直後の混合物の最高温度を、粒状の樹脂の融点よりも5℃以上高く設定した前記<3>に記載のゴム組成物の製造方法である。
【0008】
<5> 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも1種からなるゴム成分と発泡剤とを含むゴムマトリックスと、1粒当たりの平均体積が0.5mm3 未満で、平均粒径が3.8〜1000μmであり、かつ加硫時に前記ゴムマトリックスの温度が加硫最高温度に達するまでの間にその溶融粘度が該ゴムマトリックスの流動粘度よりも低くなる粉状の樹脂とを含む混合物を混練りし、熱入れし、押出し、加硫することを含み、
前記混練り中の前記混合物の最高温度を前記粉状の樹脂の融点未満に設定し、該押出直後の前記混合物の最高温度を前記粉状の樹脂の融点以上に設定し、かつ前記加硫最高温度を前記粒状の樹脂の融点以上に設定し、加硫前に繊維樹脂の相が形成されることを特徴とするゴム組成物の製造方法である。
<6> 押出直後の混合物の最高温度を、粉状の樹脂の融点よりも5℃以上高く設定した前記<5>に記載のゴム組成物の製造方法である。
【0009】
<7> 樹脂が結晶性高分子を含んでなり、その融点が加硫最高温度よりも低い前記<1>から<6>のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法である。
<8> 樹脂がポリオレフィン樹脂である前記<7>に記載のゴム組成物の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明における、ゴム組成物及びその製造方法、並びに、それを用いたタイヤについて詳細に説明する。
【0013】
(ゴム組成物及びその製造方法)
本発明のゴム組成物の製造方法は、ゴムマトリックスと樹脂とを含む混合物を混練りし、熱入れし、押出し、加硫することを含む。本発明のゴム組成物は、ゴムマトリックスと樹脂とを含む混合物を混練りし、熱入れし、押出し、加硫して得られる。
【0014】
−−ゴムマトリックス−−
前記ゴムマトリックスは、前記ゴム組成物における前記樹脂を除く成分を含み、具体的には、天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも1種からなるゴム成分と、発泡剤とを少なくとも含み、更に必要に応じて発泡助剤等のその他の成分を含む。
【0015】
−ゴム成分−
前記ゴム成分は、天然ゴムのみを含んでいてもよいし、ジエン系合成ゴムのみを含んでいてもよいし、両者を含んでいてもよい。
前記ジエン系合成ゴムとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)などが挙げられる。これらのジエン系合成ゴムの中でも、ガラス転移温度が低く、氷上性能の効果が大きい点で、シス−1,4−ポリブタジエンが好ましく、シス含有率が90%以上のものが特に好ましい。
【0016】
なお、前記ゴム組成物をトレッド等に用いる場合、前記ゴム成分としては、−60℃以下のガラス転移温度を有するものが好ましい。このようなガラス転移温度を有するゴム成分を用いると、該トレッド等は、低温域においても十分なゴム弾性を維持し、良好な前記氷上性能を示す点で有利である。
【0017】
−発泡剤−
前記発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルセミカルバジド、P,P’−オキシービス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等が挙げられる。
【0018】
これらの発泡剤の中でも、製造加工性を考慮すると、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましく、特にアゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記発泡剤により、前記ゴム組成物を発泡率に富む発泡ゴムとすることができる。
【0019】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、本発明の目的を害しない範囲で使用することができ、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム等の無機充填材、軟化剤、硫黄等の加硫剤、ジベンゾチアジルジスルフィド等の加硫促進剤、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−ベンゾチアジル−スルフェンアミド等の老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、オゾン劣化防止剤等の添加剤等の他、通常ゴム業界で用いる各種配合剤などを適宜使用することができる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本発明においては、前記その他の成分については市販品を使用することができる。
【0020】
本発明においては、効率的な発泡を行う観点から、前記その他の成分として発泡助剤を用い、該発泡助剤を前記発泡剤に併用するのが好ましい。
前記発泡助剤としては、例えば、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛や亜鉛華等、通常、発泡製品の製造に用る助剤等が挙げられる。これらの中でも、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛等が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
−−樹脂−−
前記樹脂としては、前記ゴムマトリックスが加硫最高温度に達するまでの間に溶融(軟化を含む)する熱特性を有していること、換言すれば、前記ゴム組成物の加硫時に前記ゴムマトリックスの温度が加硫最高温度に達するまでの間に前記樹脂の粘度が該ゴムマトリックスの粘度よりも低くなる熱特性を有していることが特に好ましい。
【0022】
前記加硫最高温度とは、前記ゴム組成物の加硫時における前記ゴムマトリックスが達する最高温度を意味する。例えば、モールド加硫の場合には、該ゴム組成物がモールド内に入ってからモールドを出て冷却されるまでに前記ゴムマトリックスが達する最高温度を意味する。前記加硫最高温度は、例えば、前記ゴムマトリックス中に熱電対を埋め込むこと等により測定することができる。
【0023】
なお、前記ゴムマトリックスの粘度は流動粘度を意味し、前記樹脂の粘度は溶融粘度を意味し、これらは、例えばコーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用いて測定することができる。
【0024】
前記樹脂の素材としては、前記熱特性を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記熱特性を有する樹脂としては、例えば、その融点が前記加硫最高温度よりも低い結晶性高分子からなる樹脂などが好適に挙げられる。
【0025】
該結晶性高分子からなる樹脂を例に説明すると、該樹脂の融点と、前記ゴムマトリックスの前記加硫最高温度との差が大きくなる程、前記ゴム組成物の加硫中に速やかに該樹脂が溶融するため、該樹脂の粘度が前記ゴムマトリックスの粘度よりも低くなる時期が早くなる。このため、該樹脂が溶融すると、該ゴム組成物中に含まれる発泡剤等により生じたガスは、前記ゴムマトリックスよりも低粘度である該樹脂の内部に移動し、滞留する。その結果、該加硫ゴム中には、該樹脂で被覆された長尺状気泡が多く存在する。
【0026】
一方、前記樹脂の融点が、前記ゴムマトリックスの前記加硫最高温度に近くなり過ぎると、加硫初期に速やかに該樹脂が溶融せず、加硫終期に該樹脂が溶融する。加硫終期では、該ゴム組成物に含まれる前記発泡剤等により生じたガスの一部が加硫ゴム中に取り込まれており、溶融した該樹脂の内部に移動・滞留しない。その結果、溶融した樹脂内でのガスの保持が不十分になることがある。
他方、前記樹脂の融点が低くなり過ぎると、該ゴム組成物の混練り時の熱で該樹脂が溶融し、混練りの段階で該樹脂同士が融着し分散性が低下してしまう、混練りの段階で該樹脂が複数に分断されてしまう、あるいは該樹脂が前記ゴム組成物中に溶け込んでミクロに分散してしまうことがある。
【0027】
前記樹脂の融点の上限としては、特に制限はないものの、以上の点を考慮して選択するのが好ましく、一般的には、前記ゴムマトリックスの前記加硫最高温度よりも、10℃以上低いのが好ましく、20℃以上低いのがより好ましい。ゴム組成物の工業的な加硫温度は、一般的には最高で約190℃程度であるが、例えば、加硫最高温度がこの190℃に設定されている場合には、前記樹脂の融点としては、通常190℃以下の範囲で選択され、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。
【0028】
なお、前記樹脂の融点は、それ自体公知の融点測定装置等を用いて測定することができ、例えば、DSC測定装置を用いて測定した融解ピーク温度を前記融点とすることができる。
【0029】
前記樹脂は、結晶性高分子から形成されていてもよいし、非結晶性高分子から形成されていてもよいし、結晶性高分子と非結晶性高分子とから形成されていてもよいが、本発明においては、相転移があるために粘度変化がある温度で急激に起こり、粘度制御が容易な点で結晶性高分子を含む有機素材から形成されているのが好ましく、結晶性高分子のみから形成されるのがより好ましい。
【0030】
前記結晶性高分子の具体例としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、シンジオタクティック−1,2−ポリブタジエン(SPB)、ポリビニルアルコール(PVA)等の単一組成重合物や、共重合、ブレンド等により融点を適当な範囲に制御したものも使用でき、更にこれらに添加剤を加えたものも使用できる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの結晶性高分子の中でも、ポリオレフィン、ポリオレフィン共重合体が好ましく、汎用で入手し易い点でポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)がより好ましく、融点が低く、取扱いが容易な点でポリエチレン(PE)が特に好ましい。
【0031】
前記非結晶性高分子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル、これらの共重合体、これらのブレンド物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記樹脂には、本発明の目的を害しない範囲において、必要に応じて公知の添加剤が添加されていてもよい。
【0033】
前記樹脂の素材の分子量としては、該素材の化学組成、分子鎖の分岐の状態等によって異なり一概に規定することはできないが、一般に、該樹脂は、同じ素材で形成されていてもその分子量が高い程、ある一定の温度における粘度(溶融粘度)は高くなる。本発明においては、前記樹脂における素材の分子量は、前記ゴムマトリックスの加硫最高温度における粘度(流動粘度)よりも該樹脂の粘度(溶融粘度)が高くならないような範囲で選択するのが好ましい。
【0034】
なお、一試験例では、前記樹脂が、1〜2×105 程度の重量平均分子量のポリエチレンの場合の方が、7×105 以上の重量平均分子量のポリエチレンの場合よりも、前記ゴム組成物の加硫後において、該ゴム組成物中に含まれる発泡剤等により生じたガスが、該樹脂の内部に多量に取り込まれていた。この相違は、該樹脂の素材であるポリエチレンの分子量の違いに起因する粘度(溶融粘度)の差に基づくものと推測される。
【0035】
前記樹脂の前記ゴム組成物における含有量としては、前記ゴムマトリックス100重量部に対して、0.5〜30重量部が好ましく、1.0〜10重量部がより好ましい。
また、本発明においては、前記樹脂の前記ゴム組成物における含有量として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例において採用した含有量のいずれかの値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例において採用した含有量のいずれかの値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0036】
前記含有量が、0.5重量部未満であると、前記ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴム中に取り込み乃至保持されるガスの量が少なく、該加硫ゴムをタイヤのトレッド等に使用した場合、前記氷上性能を十分に向上させることができないことがあり、30重量部を越えると、該樹脂の前記ゴム組成物中での分散性が悪化する、ゴム押出時の作業性が悪化する、前記トレッドにクラックが発生する等の不都合が生ずることがある。一方、前記含有量が前記好ましい数値範囲内にあると、そのようなことがない点で好ましい。
【0037】
前記樹脂は、前記ゴム組成物の調製後(加硫時)において該ゴム組成物中に繊維樹脂(以下、長尺状樹脂ともいう)の相が形成されている限り、前記混合物中に含まれる前記樹脂の形態としては、特に制限はなく、例えば、長尺状、粒状、粉状等のいずれの形態であってもよい。
【0038】
−長尺状の樹脂−
前記長尺状の樹脂は、元々長尺状の形態を有する樹脂でもよいし、所望の太さの糸状乃至繊維状の形態を有するものを所望の長さに適宜切断して長尺状としたものであってもよい。
前記長尺状の樹脂のデニールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記氷上性能を向上させる観点からは、1〜1000デニールが好ましく、2〜800がより好ましい。
【0039】
前記長尺状の樹脂の長手方向最大長さ(L)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
−粒状の樹脂及び粉状の樹脂−
前記粒状の樹脂は、球状、ペレット状等の形態を有し、1粒当たりの平均体積が小さくとも0.5mm3 (即ち0.5mm3 以上)であるものを意味する。
前記粒状の樹脂における前記平均体積は、例えば、100〜1000個の樹脂粒子を集めてその重量を測定し、その粒子材質の比重から総体積を算出した後、この総体積を、測定した樹脂粒子の個数で割ることにより、あるいは、常法による篩での分級を行い、各篩上に残った粒子の重量割合から平均粒径を算出した後、この平均粒径から粒子を球形と仮定して、求めることができる。
【0041】
前記粉状の樹脂は、1粒当たりの平均体積が0.5mm3 未満でかつ平均粒径が3.8〜1000μmであるものを意味する。
前記平均粒径が、3.8μm未満であると、押出時に溶融させ、長尺状樹脂の相を形成できても、加硫後に該長尺状樹脂の相を長尺状気泡にすることが容易でなく、1000μmを越えると、押出時に溶融させ、長尺状樹脂の相を形成できても、加硫後の長尺状気泡が太くなり過ぎ、ゴム組成物の耐久性を低下させる要因になることがある。
【0042】
本発明においては、前記樹脂の形態に応じて前記混合物の混練り、熱入れ、押出の条件が以下のように異なる。
【0043】
−長尺状の樹脂の場合−
前記樹脂が長尺状の樹脂の場合、前記混練り中の前記混合物の最高温度、前記熱入れ中の前記混合物の最高温度、及び前記押出直後の前記混合物の最高温度を、該長尺状の樹脂の融点未満に設定して、前記混合物の混練り、熱入れ及び押出を行うことが必要である。こうすると、前記混合物の混練り、熱入れ及び押出の後においても長尺状の樹脂の形状を保持することができ、前記ゴム組成物中に加硫前の状態で長尺状樹脂の相を形成することができる。
【0044】
本発明においては、前記混練り中の前記混合物の最高温度、前記熱入れ中の前記混合物の最高温度、及び前記押出直後の前記混合物の最高温度を、該長尺状の樹脂の融点よりも5℃以上低く設定して、前記混合物の混練り、熱入れ及び押出を行うことが好ましい。
【0045】
前記混練り中の前記混合物の最高温度、前記熱入れ中の前記混合物の最高温度、及び前記押出直後の前記混合物の最高温度が、前記長尺状の樹脂の融点を越える温度であると、長尺状の樹脂がその形状を保持できず、前記ゴム組成物中に長尺状樹脂の相を形成することができないことがある。この場合、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いても前記氷上性能を向上させることができない。
一方、前記混練り中の前記混合物の最高温度が、前記長尺状の樹脂の融点未満であるとそのようなことはなく、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いると、前記氷上性能を向上させることができ、前記長尺状の樹脂の融点よりも5℃以上低いと、前記ゴム組成物中に長尺状樹脂の相を安定に形成でき、前記氷上性能を効果的に向上させることができる点で有利である。
【0046】
−粒状の樹脂の場合−
前記樹脂が粒状の樹脂の場合、前記混練り中の前記混合物の最高温度を前記粒状の樹脂の融点よりも5℃以上高く設定し、前記熱入れ後の該混合物中において溶融分散した前記粒状の樹脂の平均粒径が3.8〜1000μmであり、かつ前記押出直後の前記混合物の最高温度を前記粒状の樹脂の融点以上に設定して、前記混合物の混練り、熱入れ及び押出を行うことが必要である。
本発明においては、前記押出直後の前記混合物の最高温度を、前記粒状の樹脂の融点よりも5℃以上高く設定して、前記混合物の押出を行うことが好ましい。
【0047】
前記混練り中の前記混合物の最高温度が前記粒状の樹脂の融点よりも5℃以上高い温度でないと、前記粒状の樹脂を長尺状にすることができず、前記ゴム組成物中に長尺状樹脂の相を形成することができず、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いても前記氷上性能を向上させることができない。
一方、前記混練中の前記混合物の最高温度が、前記粒状の樹脂の融点よりも5℃以上高い温度であるとそのようなことはなく、前記粒状の樹脂を長尺状にすることができ、前記ゴム組成物中に長尺状樹脂の相を形成することができ、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いると前記氷上性能を効果的に向上させることができる点で有利である。
【0048】
前記熱入れ後の前記混合物中において溶融分散した前記粒状の樹脂の平均粒径が3.8μm未満であると、押出時に溶融させ、長尺状としても、加硫後に長尺状気泡になりにくく、1000μmを越えると、押出時に溶融させ、長尺状としても、加硫後の長尺状気泡が太くなり過ぎ、ゴム組成物の耐久性を低下させる要因となることがあり、いずれの場合にも該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いても前記氷上性能を向上させることができない。
一方、前記熱入れ後の前記混合物中において溶融分散した前記粒状の樹脂の平均粒径が前記数値範囲内にあるとそのようなことはなく、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いると前記氷上性能を効果的に向上させることができる点で有利である。
【0049】
前記押出直後の前記混合物の最高温度が前記粒状の樹脂の融点を越える温度であると、前記粒状の樹脂を長尺状にすることができず、前記ゴム組成物中に長尺状樹脂の相を形成することができず、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いても前記氷上性能を向上させることができない。
一方、前記混練り中の前記混合物の最高温度が、前記粒状の樹脂の融点未満であるとそのようなことはなく、前記粒状の樹脂を長尺状にすることができ、つまり前記ゴム組成物中に長尺状樹脂の相を形成することができ、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いると前記氷上性能を効果的に向上させることができ、前記粒状の樹脂の融点よりも5℃以上高いと前記氷上性能をより効果的に向上させることができる点で有利である。
【0050】
−粉状の樹脂の場合−
前記樹脂が粉状の樹脂である場合には、混練中の前記混合物の最高温度を前記粉状の樹脂の融点未満に設定し、かつ該押出直後の前記混合物の最高温度を前記粉状の樹脂の融点以上に設定して、前記混合物の混練り、熱入れ及び押出を行うことが必要である。
本発明においては、前記押出直後の混合物の最高温度を、粉状の樹脂の融点よりも5℃以上高く設定して、前記混合物の混練り、熱入れ及び押出を行うことが好ましい。
【0051】
前記混練り中の前記混合物の最高温度が前記粉状の樹脂の融点を越える温度であると、樹脂粒子が(微細に)分散し過ぎてしまい、溶融状態での押出により、超微細な直径の長尺状樹脂となり、長尺状気泡が得られないことがあり、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いても前記氷上性能を向上させることができないことがある。
一方、前記混練り中の前記混合物の最高温度が、前記粉状の樹脂の融点未満であるとそのようなことはなく、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いると前記氷上性能を向上させることができる点で有利である。
【0052】
前記押出直後の前記混合物の最高温度が前記粉状の樹脂の融点未満であると、前記粉状の樹脂を長尺状にすることができず、前記ゴム組成物中に長尺状樹脂の相を形成することができず、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いても前記氷上性能を向上させることができない。
一方、前記混練り中の前記混合物の最高温度が、前記粉状の樹脂の融点以上であるとそのようなことはなく、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いると前記氷上性能を向上させることができ、前記粉状の樹脂の融点よりも5℃以上高いと前記氷上性能をより効果的に向上させることができる点で有利である。
【0053】
−混練り−
本発明において、前記混練りは、上述の制限の外、前記樹脂が長尺状の樹脂である場合には長尺状の形態を保持でき、該長尺状の樹脂の分散性が良好である限り、また、前記樹脂が前記粒状又は粉状である場合には、粒状又は粉状の形態を長尺状にすることができる限り、前記混合物全体の投入体積、ローターの回転速度、ラム圧等、混練り温度、混練り時間、混練り装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記混練り装置としては、市販品を好適に使用することができる。
【0054】
−熱入れ及び押出−
本発明において、前記熱入れ又は押出は、上述の制限の外、前記樹脂が長尺状の樹脂である場合には長尺状の形態を保持でき、該長尺状の樹脂の分散性が良好である限り、また、前記樹脂が前記粒状又は粉状である場合には、粒状又は粉状の形態を長尺状にすることができる限り、熱入れ又は押出の温度、熱入れ又は押出の時間、熱入れ又は押出の装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記熱入れ又は押出の装置としては、市販品を好適に使用することができる。なお、前記押出の温度は、一般的には90〜110℃程度である。
【0055】
前記ゴムマトリックスと前記樹脂とを含む混合物について、以上の混練り、熱入れ及び押出を行うことにより、該樹脂を長尺状にすることができ、得られるゴム組成物中に長尺状樹脂の相を形成することができる。
【0056】
前記ゴム組成物においては、前記押出等により前記混合物中に形成された長尺状樹脂の相が、通常、押出方向と略平行に配向しているが、これを効果的に達成するためには、限られた温度範囲の中で前記ゴムマトリックスの流動性をコントロールすればよく、具体的には、前記ゴムマトリックス中に、オイル、液状ポリマー等の加工性改良剤を適宜添加して該ゴムマトリックスの粘度を低下させ、その流動性を高めるのがよい。こうすると、極めて良好に押出を行うことができ、かつ理想的に長尺状樹脂の相を押出方向と略平行に配向させることができる。
【0057】
前記ゴム組成物において、前記長尺状樹脂の相が押出方向と略平行に配列している場合、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に使用すると、好ましくは該トレッドにおける地面と接触する表面に平行な方向、より好ましくは該タイヤの周方向に、前記長尺状樹脂の相が配向していると、該タイヤの走行方向の排水性が高まり、前記氷上性能を効果的に向上させることができる点で好ましい。
【0058】
前記ゴム組成物中で前記長尺状樹脂の相を一定の方向に配向させるには、公知の方法を採用することができるが、例えば、図1に示すように、長尺状の樹脂14Aが混練りされたゴムマトリックス15を、流路断面積が出口に向かって減少する押出機の口金16から押し出す方法などが挙げられる。
この場合、押し出される前のゴムマトリックス15中の長尺状の樹脂14Aは、口金16へ押し出されていく過程でその長手方向が押出方向(A方向)に沿って除々に揃うようになり、口金16から押し出されるときには、その長手方向が押出方向(A方向)にほぼ完全に揃うようになる。なお、この場合の長尺状樹脂の相14のゴムマトリックス15中の配向の程度は、流路断面積の減少程度、押出速度、ゴムマトリックスの粘度等によって変化する。
【0059】
なお、前記樹脂が、前記粒状の樹脂又は前記粉状の樹脂の場合において、該長尺状樹脂の相の長手方向最大長さ(L)と平均径(D)との関係は、逆相関関係にあり、押出温度と押出速度とを適宜変更することにより調整することができる。即ち、前記押出温度を前記樹脂の融点よりも大幅に高く設定することで該樹脂の相の粘度を下げ、前記押出速度を速めることで長尺状樹脂の相の平均径(D)を小さく(細く)し、長手方向最大長さ(L)を長くすることができ、前記長尺状樹脂の相の長手方向最大長さ(L)と平均径(D)との比(L/D)を大きくすることができる。
【0060】
したがって、前記樹脂が、前記粒状の樹脂又は前記粉状の樹脂の場合においては、所望する長尺状樹脂の相の寸法(長手方向最大長さ(L)及び平均径(D))に応じて、▲1▼押出温度、▲2▼押出速度、▲3▼初期分散粒径を設定し、それに伴う混練り最高温度、回数等の▲4▼混練り条件を設定することが必要となるが、これらの各条件を適宜変えることにより、細径で、かつ長手方向最大長さ(L)と平均径(D)との比(L/D)が小さい長尺状樹脂の相から、太径で、かつ長手方向最大長さ(L)と平均径(D)との比(L/D)が大きい長尺状樹脂の相まで任意に得ることができる。
【0061】
−加硫−
前記加硫の条件乃至方法等については、特に制限はなく、前記ゴム成分の種類等に応じて適宜選択することができるが、前記トレッドを製造する場合にはモールド加硫が好ましい。
前記加硫の温度としては、一般に前記加硫中の前記ゴム組成物の加硫最高温度が前記樹脂の融点以上になるように選択される。前記加硫最高温度が前記樹脂の融点未満であると、前記樹脂が溶融せず、発泡等により生じたガスを該樹脂中に保持させることができず、加硫ゴム中に長尺状気泡を効率良く形成することができない。
なお、前記加硫を行う装置としては、特に制限はなく、市販品を好適に使用することができる。
【0062】
前記加硫の前の前記ゴム組成物においては、該ゴムマトリックスよりも前記長尺状樹脂の相の方が粘度が高い。該ゴム組成物の加硫開始後であって前記加硫最高温度に達するまでの間に、該ゴムマトリックスは加硫によりその粘度が上昇していき、前記長尺状樹脂の相は溶融して粘度が大幅に低下していく。そして、加硫途中において、前記ゴムマトリックスよりも該長尺状樹脂の相の方が粘度が低くなる。即ち、加硫前の前記ゴムマトリックスと該長尺状樹脂の相との間における粘度の関係が、加硫途中の段階で逆転する現象が生ずる。
【0063】
この間、前記ゴム組成物中では、前記発泡剤等による発泡が生じ、ガスが生ずる。このガスは、加硫反応が進行して粘度が高くなった前記ゴムマトリックスに比べ、溶融して相対的に粘度が低下した前記長尺状樹脂の相の内部に留まる。その結果、該ゴム組成物においては、前記長尺状樹脂の相が存在していた場所に長尺状気泡が形成されている。
この長尺状気泡は、その周囲(長尺状気泡の壁面)が前記長尺状樹脂の相を形成していた素材樹脂によって覆われ、カプセル状になっている。なお、前記長尺状樹脂の相を形成していた素材樹脂によるカプセル状の被覆層は、以下において「保護層」と称することがある。前記長尺状気泡は、ゴム組成物内において独立して存在している。本発明のゴム組成物は、発泡率に富む発泡ゴムである。
【0064】
なお、前記長尺状樹脂の相の素材樹脂をポリエチレン、ポリプロピレン等とした場合、加硫したゴムマトリックスと前記保護層とは強固に接着している。なお、前記接着の力を向上させる必要がある場合には、例えば、前記長尺状樹脂の相を形成する素材樹脂に前記ゴムマトリックスとの接着性を向上させ得る成分を添加させてもよい。
【0065】
以上のように、本発明のゴム組成物は、前記押出された混合物を加硫することにより容易に得ることができる。
本発明のゴム組成物においては、図2に示すように、加硫したゴムマトリックス6A中に長尺状気泡11が存在している。前記長尺状樹脂の相14の前記ゴム組成物中での配向を押出方向(A方向)に揃えた場合には、長尺状気泡11が一方向に配向した状態で存在している。長尺状気泡11は、長尺状樹脂の相14が溶融し、加硫したゴムマトリックス6Aに接着してなる保護層13により囲まれている。保護層13内には、前記発泡剤等から発生したガスが取り込まれている。なお、前記ゴムマトリックス中に前記発泡剤等を添加した場合には、前記ゴム組成物中においては、長尺状気泡11の外、長尺状気泡11内に取り込まれなかったガスが、球状の気泡17として存在している。
【0066】
本発明のゴム組成物をタイヤのトレッド等に使用した場合においては、長尺状気泡11が表面に露出して形成される凹部が、効率的な排水を行う排水路として機能する。
また、本発明のゴム組成物においては、該凹部の表面に保護層13が形成されているため、水路形状保持性、水路エッジ部摩耗性、荷重入力時の水路保持性等にも優れる。保護層13の厚みとしては、0.5〜50μmが好ましい。
【0067】
本発明のゴム組成物においては、長尺状気泡11の1個当たりの長手方向最大長さ(L)(図2参照)と、前記平均径(D)との比(L/D)としては、小さくとも3(即ち、3以上)であることが好ましい。なお、前記比(L/D)の上限は、特に制限はないが、8〜17程度が選択される。
また、本発明においては、前記比(L/D)として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例において採用した該比(L/D)のいずれかの値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例において採用した該比(L/D)のいずれかの値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0068】
前記比(L/D)が3未満であると、摩耗したゴム組成物の表面に現れる長尺状の排水溝としての長尺状気泡11の長さを長くすることができず、また容積を大きくすることができないため、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いる場合には、該タイヤ等の水排除性能を向上させることができない点で好ましくない。
【0069】
本発明のゴム組成物においては、長尺状気泡11の長手方向最大長さ(L)が短すぎると、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いる場合には、該タイヤ等の水排除性能が低下し、長すぎると、該ゴム組成物の耐カット性、ブロック欠けが悪化し、乾燥路面での耐摩耗性が悪化するため、いずれも好ましくない。
【0070】
本発明のゴム組成物においては、長尺状気泡11の平均径(D)(=保護層13の内径、図2参照)としては、20〜500μmが好ましい。
前記平均径(D)が、20μm未満であると、該ゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いる場合には、該タイヤ等の水排除性能が低下し、500μmを越えると、該ゴム組成物の耐カット性、ブロック欠けが悪化し、乾燥路面での耐摩耗性が悪化するため、いずれも好ましくない。
【0071】
本発明のゴム組成物における平均発泡率Vsとしては、3〜40%が好ましく、5〜35%がより好ましい。
また、本発明においては、前記平均発泡率Vsとして、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用した平均発泡率Vsのいずれかの値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用した平均発泡率Vsのいずれかの値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0072】
前記平均発泡率をVsとは、長尺状気泡11の発泡率Vs2 を意味し(図7に示すように、球状の気泡17が形成されている場合には、球状の気泡17の発泡率Vs1 と長尺状気泡12の発泡率Vs2 との合計を意味し)、次式により算出できる。
Vs=(ρ0 /ρ1 −1)×100(%)
ここで、ρ1 は、ゴム組成物(発泡ゴム)の密度(g/cm3 )を表す。ρ0 は、ゴム組成物(発泡ゴム)における固相部の密度(g/cm3 )を表す。
なお、前記ゴム組成物(発泡ゴム)の密度及び前記ゴム組成物(発泡ゴム)における固相部の密度は、エタノール中の重量と空気中の重量を測定し、これから算出した。
【0073】
前記平均発泡率Vsが3%未満であると、発生する水膜に対し、前記長尺状気泡による凹部体積の絶対的な不足により十分な水排除機能が得られず、該ゴム組成物の氷上性能を十分に向上させることができない可能性がある。一方、前記平均発泡率Vsが40%を越えると、前記氷上性能を向上させることができるものの、該ゴム組成物中の気泡の量が多くなり過ぎるために、該ゴム組成物の破壊限界が大巾に低下し、耐久性の点で好ましくない。
なお、前記平均発泡率Vsは、前記発泡剤の種類、量、組み合わせる前記発泡助剤の種類、量、樹脂の配合量等により適宜変化させることができる。
【0074】
本発明においては、前記平均発泡率Vsが3〜40%であると共に、長尺状気泡11が前記平均発泡率Vsにおける10%以上を占めることが好ましく、50%以上を占めることがより好ましい。換言すれば、長尺状気泡11がゴム組成物中の全気泡の少なくとも10体積%(10体積%以上)を占めることが好ましく、長尺状気泡11がゴム組成物中の全気泡の少なくとも50体積%(50体積%以上)を占めることがより好ましい。
前記比率が10%未満であると、長尺状気泡11による排水路が少ないために、水排除機能が十分でないことがある。
【0075】
本発明のゴム組成物は、各種分野において好適に使用することができるが、氷上でのスリップを抑えることが必要な構造物に特に好適に使用でき、空気入りタイヤのトレッド等に最も好適に用いることができる。
前記氷上でのスリップを抑えることが必要な構造物としては、例えば、更生タイヤの貼り替え用のトレッド、中実タイヤ、氷雪路走行に用いるゴム製タイヤチェーンの接地部分、雪上車のクローラー、靴底等が挙げられる。
【0076】
本発明のタイヤは、少なくともトレッドを有してなり、少なくとも該トレッドが前記本発明のゴム組成物を含んでなる限り、他の構成としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。換言すれば、前記ゴム組成物をトレッドに適用したタイヤが、本発明のタイヤである。
【0077】
本発明のタイヤの一例を図面を用いて説明すると以下の通りである。図3に示すように、本発明のタイヤ4は、一対のビード部1と、該一対のビード部1にトロイド状をなして連なるカーカス2と、該カーカス2のクラウン部をたが締めするベルト3と、トレッド5とを順次配置したラジアル構造を有する。なお、トレッド5以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と変わりないので説明は省略する。
【0078】
トレッド5には、図4に示すように、複数本の周方向溝7及びこの周方向溝7と交差する複数本の横溝8とによって複数のブロック9が形成されている。また、ブロック9には、氷上でのブレーキ性能及びトラクション性能を向上させるために、タイヤの幅方向(B方向)に沿って延びるサイプ10が形成されている。
【0079】
トレッド5は、図5に示すように、直接路面に接地する上層のキャップ部5Aと、このキャップ部5Aのタイヤの内側に隣接して配置される下層のベース部5Bとから構成されており、いわゆるキャップ・ベース構造を有する。
【0080】
キャップ部5Aは、図2に示すように、長尺状気泡11を無数に含んだ発泡ゴムであり、ベース部5Bには発泡されていない通常のゴムが使用されている。前記発泡ゴムが、前記本発明のゴム組成物である。
長尺状気泡11は、図2に示すように、実質的にタイヤの周方向(A方向)に配向されており、その周囲が前記長尺状樹脂による保護層13で被覆されている。なお、本発明においては、長尺状気泡11の配向の向きは、総てタイヤの周方向となっていなくてもよく、一部タイヤの周方向以外の向きになっていてもよい(図5参照)。
【0081】
タイヤ4は、その製造方法については特に制限はないが、例えば、以下のようにして製造することができる。即ち、まず、前記ゴム組成物を調製する。このゴム組成物においては、前記長尺状樹脂の相を一方向に配向させておく。該ゴム組成物を、生タイヤケースのクラウン部に予め貼り付けられた未加硫のベース部の上に貼り付ける。このとき、前記長尺状樹脂の相の配向の方向を、タイヤの周方向と一致させておく。そして、所定のモールドで所定温度、所定圧力の下で加硫成形する。その結果、前記ゴム組成物で形成されたキャップ部5Aをベース部5B上に有してなるタイヤ4が得られる。
【0082】
なお、このとき、未加硫のキャップ部がモールド内で加熱されると、前記ゴムマトリックス中で前記発泡剤等による発泡が生じ、ガスが生ずる。一方、前記長尺状樹脂の相は溶融(又は軟化)し、その粘度(溶融粘度)がゴムマトリックスの粘度(流動粘度)よりも低下することにより、前記ガスは、溶融して相対的に粘度が低下した長尺状樹脂の相の内部に移動し、滞留する。図2に示すように、冷却後のキャップ部5Aは、実質的にタイヤの周方向に配向した長尺状気泡11が多数存在する発泡率に富むゴム組成物となっている。この長尺状気泡11の含有率に富むゴム組成物は、前記本発明のゴム組成物である。
【0083】
次に、タイヤ4の作用について説明する。氷雪路面上でタイヤ4を走行させる。タイヤ4と前記氷雪路面との摩擦により、タイヤ4のトレッド5の表面が摩耗する。すると、図7に示すように、長尺状気泡11による溝状の凹部12(球状の気泡17が存在するときは該球状の気泡17による凹部18も)が、トレッド5のキャップ部5Aの接地面に露出する。更にタイヤ4を走行させると、タイヤ4とその接地面との間の接地圧及び摩擦熱により、タイヤ4と氷雪路面との間に生じた水膜は、トレッド5のキャップ部5Aの接地面に露出する無数の凹部12により、素早く排除され、除去される。このため、タイヤ4は、前記氷雪路面上でもスリップ等することがない。
【0084】
タイヤ4においては、実質的にタイヤの周方向に配向している溝状の凹部12が効率的な排水を行う排水溝として機能する。凹部12は、その表面(周囲)が耐剥離性に優れる保護層13で被覆されているため、高荷重時でも潰れ難く、高い排水溝形状保持性、水排除性能を保持しており、この凹部12により、タイヤ4の回転方向後側への水排除性能が向上するため、タイヤ4は、氷上ブレーキ性能に特に優れる。タイヤ4においては、保護層13の引っ掻き効果によって横方向の氷上μが向上し、氷上ハンドリングが良好である。
【0085】
本発明のタイヤは、いわゆる乗用車用のみならず、トラック・バス用等の各種の乗物にも好適に適用できる。
【0086】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これの実施例に何ら限定されるものではない。
【0087】
(実施例1〜4及び比較例1〜6)
−長尺状の樹脂を使用した場合−
表1及び表2に示す組成、混練り・熱入れ・押出・加硫条件にて実施例1〜4及び比較例1〜6の各ゴム組成物を調製した。
各ゴム組成物の加硫時におけるゴムマトリックスの加硫最高温度は、熱電対を該ゴムマトリックス中に埋め込んで測定したところ、比較例6が133℃であった外は総て175℃であった。
なお、ここでの長尺状の樹脂は、通常の溶融紡糸法に従って製造されたものであり、軸に直交する方向の断面が円形である。この長尺状の樹脂は、実施例1〜4及び比較例2〜6では、ポリエチレン(HDPE)であり、Dupont社製DSCにより、昇温速度10℃/分、サンプル重量約5mgの条件にて測定した融点ピーク温度(融点)が135℃であった。
【0088】
したがって、長尺状の樹脂の融点は、比較例6を除き実施例1〜4及び比較例2〜5では、前記各ゴム組成物の加硫時におけるゴム組成物の加硫最高温度よりも低くなっている。
前記各ゴム組成物の加硫時において、前記各ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に、前記長尺状樹脂の相の粘度が、比較例6を除き実施例1〜4及び比較例2〜5では、前記ゴムマトリックスの粘度よりも低くなった(図6参照)。
なお、前記長尺状樹脂の相の前記加硫最高温度における粘度(溶融粘度)は、コーンレオメーターを用いて測定(スタート温度を190℃とし、5℃ずつ温度を下げながら発生するトルクを長尺状樹脂の相の粘度として、該粘度の温度依存性を測定し、得られたカーブからトレッドの最高温度での長尺状樹脂の相の粘度を読み取り、ゴムマトリクスの粘度と比較した。温度以外は、後述のゴムマトリックスの粘度の測定と同条件で行った。)したところ、実施例1〜4では、5〜6kg・cmであった。
【0089】
前記ゴムマトリックスの前記加硫最高温度における粘度(流動粘度)は、モンサント社製コーンレオメーター型式1−C型を使用し、温度を変化させながら100サイクル/分の一定振幅入力を与えて経時的にトルクを測定し、その際の最小トルク値を粘度としたところ(ドーム圧力0.59MPa、ホールディング圧力0.78MPa、クロージング圧力0.78MPa、振り角±5°)、実施例1〜4では24〜25kg・cmであった。
【0090】
次に、前記各ゴム組成物をトレッドにおけるキャップ部に用いたタイヤ(空気入りタイヤ)を、通常のタイヤ製造条件にて製造した。
このタイヤは、乗用車用ラジアルタイヤであり、そのタイヤサイズは185/70R13であり、その構造は図3に示す通りである。即ち、一対のビード部1と、該一対のビード部1にトロイド状をなして連なるカーカス2と、該カーカス2のクラウン部をたが締めするベルト3と、トレッド5とを順次配置したラジアル構造を有する。
【0091】
このタイヤにおいて、カーカス2のコードは、タイヤの周方向に対し90°の角度で配置され、その打ち込み数は50本/5cmである。タイヤ4のトレッド5には、図4に示す通り、タイヤの幅方向に4個のブロック9が配列されている。ブロック9のサイズは、タイヤの周方向の寸法が35mmであり、タイヤの幅方向の寸法が30mmである。ブロック9に形成されているサイプ10は、幅が0.4mmであり、タイヤの周方向の間隔が約7mmになっている。
なお、このタイヤ4のトレッド5には、長尺状気泡11が含まれており、その長手方向が実質的にタイヤの周方向(矢印A方向)に配向されており、その周囲が長尺状樹脂の相14を形成する素材樹脂による保護層13で被覆されている。
【0092】
得られた各タイヤの氷上性能について評価した。その結果を表1に示した。
<氷上性能>
各タイヤを国産1600CCクラスの乗用車に装着し、該乗用車を、一般アスファルト路上に200km走行させた後、氷上平坦路を走行させ、時速20km/hの時点でブレーキを踏んでタイヤをロックさせ、停止するまでの距離を測定した。結果は、距離の逆数を比較例1のタイヤを100として指数表示した。なお、数値が大きいほど氷上性能が良いことを示す。
なお、トレッド5の発泡率は、既述の計算式より算出(測定)した。
【0093】
【表1】
Figure 0003851421
【0094】
【表2】
Figure 0003851421
【0095】
(実施例5〜10及び比較例7〜10)
−粒状の樹脂を使用した場合−
表3及び表4に示す組成、混練り・熱入れ・押出・加硫条件にて実施例5〜10及び比較例7〜10の各ゴム組成物を調製した。
各ゴム組成物の加硫時におけるゴム組成物の加硫最高温度は、該ゴム組成物中に熱電対を埋め込んで測定したところ、比較例9が105℃であった外は総て175℃であった。
なお、ここでの粒状の樹脂は、実施例5〜10及び比較例8〜10では、ポリエチレン(HDPE)であり、Dupont社製DSCにより、昇温速度10℃/分、サンプル重量約5mgの条件にて測定した融点ピーク温度(融点)が、110℃(実施例5〜7及び比較例8〜10)、125℃(実施例8〜10)であった。
【0096】
したがって、前記粒状の樹脂により形成された長尺状樹脂の相の融点は、比較例9を除き実施例5〜10及び比較例8〜10では、前記ゴム組成物の加硫時におけるゴムマトリックスの加硫最高温度よりも低くなっている。
前記各ゴム組成物の加硫時において、前記各ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に、前記長尺状樹脂の相の粘度が、比較例9を除き実施例5〜10及び比較例8〜10では、前記ゴムマトリックスの粘度よりも低くなった(図6参照)。
なお、前記長尺状樹脂の相の前記加硫最高温度における粘度(溶融粘度)は、コーンレオメーターを用いて測定したところ、実施例5〜10では、4〜6kg・cmであった。
【0097】
前記ゴムマトリックスの前記加硫最高温度における粘度(流動粘度)は、モンサント社製コーンレオメーター型式1−C型を使用し、温度を変化させながら100サイクル/分の一定振幅入力を与えて経時的にトルクを測定し、その際の最小トルク値を粘度としたところ(ドーム圧力0.59MPa、ホールディング圧力0.78MPa、クロージング圧力0.78MPa、振り角±5°)、実施例5〜10では22〜23kg・cmであった。
【0098】
次に、前記各ゴム組成物を用いて、実施例1〜4と同様にしてタイヤを通常のタイヤ製造条件にて製造した。
得られたタイヤについて実施例1〜4と同様にして前記氷上性能を評価した。その結果を表4に示した。
【0099】
【表3】
Figure 0003851421
【0100】
【表4】
Figure 0003851421
【0101】
(実施例11〜15及び比較例11)
−粉状の樹脂を使用した場合−
表5及び表6に示す組成、混練り・熱入れ・押出・加硫条件にて実施例11〜15及び比較例11の各ゴム組成物を調製した。
各ゴム組成物の加硫時におけるゴム組成物の加硫最高温度は、熱電対を該ゴム組成物中に埋め込んで測定したところ、総て175℃であった。
なお、ここでの粉状の樹脂は、実施例11〜15では、ポリエチレン(HDPE)であり、Dupont社製DSCにより、昇温速度10℃/分、サンプル重量約5mgの条件にて測定した融点ピーク温度(融点)が125℃であった。
【0102】
したがって、前記粉状の樹脂により形成された長尺状樹脂の相の融点は、実施例11〜15では、前記ゴム組成物の加硫時におけるゴムマトリックスの加硫最高温度よりも低くなっている。
前記各ゴム組成物の加硫時において、前記各ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に、前記長尺状樹脂の相の粘度が、実施例11〜15では、前記ゴムマトリックスの粘度よりも低くなった(図6参照)。
なお、前記長尺状樹脂の前記加硫最高温度における粘度(溶融粘度)は、コーンレオメーターを用いて測定(ゴムのトルクがMaxをむかえたら終了とし、トルクをゴム粘度として、トルクの変化と発泡圧力の変化を測定)したところ、実施例11〜15では、5〜6kg・cmであった。
【0103】
前記ゴムマトリックスの前記加硫最高温度における粘度(流動粘度)は、モンサント社製コーンレオメーター型式1−C型を使用し、温度を変化させながら100サイクル/分の一定振幅入力を与えて経時的にトルクを測定し、その際の最小トルク値を粘度としたところ(ドーム圧力0.59MPa、ホールディング圧力0.78MPa、クロージング圧力0.78MPa、振り角±5°)、実施例11〜15では22〜23kg・cmであった。
【0104】
次に、前記各ゴム組成物を用いて、実施例1〜4と同様にしてタイヤを通常のタイヤ製造条件にて製造した。
得られたタイヤについて実施例1〜4と同様にして前記氷上性能を評価した。その結果を表6に示した。
【0105】
【表5】
Figure 0003851421
【0106】
【表6】
Figure 0003851421
【0107】
表1、表3及び表5において、「BR」は、シス−1,4−ポリブタジエン(日本合成ゴム社製、BR01)を意味し、「SBR」は、スチレン・ブタジエンゴム(日本合成ゴム(株)製、#1500)を意味し、カーボンN220は、カーボンブラック(旭カーボン(株)製、カーボンN220)を意味し、「老化防止剤」は、大内新興化学工業(株)製、ノクラック6Cを意味し、上段の「加硫促進剤」は、ジベンゾチアジルジスルフィドを意味し、下段の「加硫促進剤」は、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミドを意味し、「発泡剤DPT」は、ジニトロペンタメチレンテトラミンを意味し、「発泡剤ADCA」は、アゾジカルボンアミドを意味し、「発泡助剤A」は、ベンゼンスルフィン酸亜鉛を意味し、「発泡助剤B」は、ステアリン酸:尿素=15:85の混合物を意味し、「発泡助剤C」は、尿素を意味する。
樹脂種の「PE」は、ポリエチレンを意味する。樹脂に関し、「Tm(℃)」は融点を意味し、「φ(μm)」は平均径を意味し、「L(mm)」は長手方向最大長さを意味する。
なお、表3において、実施例5〜7及び比較例8〜10における「粒状」は、ペレット状である。
【0108】
表2、表4及び表6における発泡率に関し、「第1:第2 体積比」における、「第1」は第1独立気泡形を意味し、「第2」は第2独立気泡形を意味する。「第1独立気泡形」は、球状の気泡を意味し、「第2独立気泡形」は長尺状気泡を意味する。
【0109】
表1及び表2の結果から、以下のことが明らかである。即ち、ゴム組成物を調製する際、ゴムマトリックス及び長尺状の樹脂を含む混合物の、混練中の最高温度、熱入れ中の最高温度及び押出直後の最高温度のいずれかを、それぞれ該長尺状の樹脂の融点未満に設定しなかった比較例2〜5、及び、前記ゴム組成物の加硫最高温度を前記長尺状の樹脂の融点よりも低く設定した比較例6では、いずれの場合にも長尺状の樹脂を用いない比較例1よりは前記氷上性能が僅かに向上するものの、ゴム組成物を調製する際、前記混合物の、混練中の最高温度、熱入れ中の最高温度及び押出直後の最高温度を総て該長尺状の樹脂の融点未満に設定し、前記ゴム組成物の加硫最高温度を前記長尺状の樹脂の融点よりも高く設定した実施例1〜4に比べて前記氷上性能が劣っていた。
【0110】
表3及び表4の結果から、以下のことが明らかである。即ち、ゴム組成物を調製する際に、ゴムマトリックス及び粒状の樹脂を含む混合物の、混練中の最高温度を前記粒状の樹脂の融点よりも5℃以上高く設定しなかった比較例10では、また、押出直後の前記混合物の最高温度を前記粒状の樹脂の融点以上に設定しなかった比較例8では、更に、前記ゴム組成物の加硫最高温度を前記粒状の樹脂の融点よりも低く設定した比較例9では、いずれの場合にも粒状の樹脂を用いない比較例7よりは前記氷上性能が僅かに向上するものの、ゴム組成物を調製する際、前記混合物の、混練中の最高温度を前記粒状の樹脂の融点よりも5℃以上高く設定し、押出直後の前記混合物の最高温度を前記粒状の樹脂の融点以上に設定し、前記長尺状樹脂含有ゴム組成物の加硫最高温度を前記粒状の樹脂の融点よりも高く設定した実施例5〜10に比べて前記氷上性能が劣っていた。
【0111】
表5及び表6の結果から、以下のことが明らかである。即ち、ゴム組成物を調製する際、ゴムマトリックス及び粉状の樹脂を含む混合物の、混練中の最高温度を前記粉状の樹脂の融点未満に設定し、かつ該押出直後の最高温度を前記粉状の樹脂の融点以上に設定した実施例11〜15は、長尺状樹脂を含有しない比較例11に比べて、極めて良好な前記氷上性能を示した。
【0112】
【発明の効果】
本発明によると、前記従来における諸問題を解決することができる。また、本発明によると、氷上に生ずる前記水膜の除去能力に優れ、氷面との間の摩擦係数が大きく、前記氷上性能に優れるタイヤ、該タイヤのトレッドなど、氷上でのスリップを抑えることが必要な構造物に好適なゴム組成物及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、長尺状樹脂の配向を揃える原理を説明する説明図である。
【図2】図2は、本発明のゴム組成物の断面概略説明図である。
【図3】図3は、本発明のタイヤの一部断面概略説明図である。
【図4】図4は、本発明のタイヤの周面の一部概略説明図である。
【図5】図5は、本発明のタイヤのトレッドの一部断面概略説明図である。
【図6】図6は、加硫時間とゴムマトリックスの粘度及び樹脂の粘度との関係を示したグラフである。
【図7】図7は、本発明のタイヤの摩耗したトレッドの一部断面拡大概略説明図である。
【符号の説明】
1 一対のビード部
2 カーカス
3 ベルト
4 タイヤ
5 トレッド
5A キャップ部
5B ベース部
6 加硫ゴム
6A 加硫したゴムマトリックス
7 周方向溝
8 横溝
9 ブロック
10 サイプ
11 長尺状気泡
12 凹部
13 保護層
14 長尺状樹脂の相
14A 長尺状の樹脂
15 ゴムマトリックス
16 口金
17 球状の気泡
18 凹部

Claims (8)

  1. 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも1種からなるゴム成分と発泡剤とを含むゴムマトリックスと、加硫時に前記ゴムマトリックスの温度が加硫最高温度に達するまでの間にその溶融粘度が該ゴムマトリックスの流動粘度よりも低くなる繊維樹脂とを含む混合物を混練りし、熱入れし、押出し、加硫することを含み、
    前記混練り中の前記混合物の最高温度、前記熱入れ中の前記混合物の最高温度、及び前記押出直後の前記混合物の最高温度を、前記繊維樹脂の融点未満に設定し、かつ前記加硫最高温度を前記繊維樹脂の融点以上に設定したことを特徴とするゴム組成物の製造方法。
  2. 混練り中の混合物の最高温度、熱入れ中の混合物の最高温度、及び押出直後の混合物の最高温度を、繊維樹脂の融点よりも5℃以上低く設定した請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
  3. 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも1種からなるゴム成分と発泡剤とを含むゴムマトリックスと、1粒当たりの平均体積が小さくとも0.5mm3 であり、かつ加硫時に前記ゴムマトリックスの温度が加硫最高温度に達するまでの間にその溶融粘度が該ゴムマトリックスの流動粘度よりも低くなる粒状の樹脂とを含む混合物を混練りし、熱入れし、押出し、加硫することを含み、
    前記混練り中の前記混合物の最高温度を前記粒状の樹脂の融点よりも5℃以上高く設定し、前記熱入れ後の前記混合物中において溶融分散した前記粒状の樹脂の平均粒径が3.8〜1000μmであり、前記押出直後の前記混合物の最高温度を前記粒状の樹脂の融点以上に設定し、かつ前記加硫最高温度を前記粒状の樹脂の融点以上に設定し、加硫前に繊維樹脂の相が形成されることを特徴とするゴム組成物の製造方法。
  4. 押出直後の混合物の最高温度を、粒状の樹脂の融点よりも5℃以上高く設定した請求項3に記載のゴム組成物の製造方法。
  5. 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも1種からなるゴム成分と発泡剤とを含むゴムマトリックスと、1粒当たりの平均体積が0.5mm3 未満で、平均粒径が3.8〜1000μmであり、かつ加硫時に前記ゴムマトリックスの温度が加硫最高温度に達するまでの間にその溶融粘度が該ゴムマトリックスの流動粘度よりも低くなる粉状の樹脂とを含む混合物を混練りし、熱入れし、押出し、加硫することを含み、
    前記混練り中の前記混合物の最高温度を前記粉状の樹脂の融点未満に設定し、該押出直後の前記混合物の最高温度を前記粉状の樹脂の融点以上に設定し、かつ前記加硫最高温度を前記粉状の樹脂の融点以上に設定し、加硫前に繊維樹脂の相が形成されることを特徴とするゴム組成物の製造方法。
  6. 押出直後の混合物の最高温度を、粉状の樹脂の融点よりも5℃以上高く設定した請求項5に記載のゴム組成物の製造方法。
  7. 樹脂が結晶性高分子を含んでなり、その融点が加硫最高温度よりも低い請求項1から6のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
  8. 樹脂がポリオレフィン樹脂である請求項7に記載のゴム組成物の製造方法。
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