JP4694659B2 - タイヤ用のゴム組成物、タイヤ用の加硫ゴム及びタイヤ - Google Patents

タイヤ用のゴム組成物、タイヤ用の加硫ゴム及びタイヤ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ用のゴム組成物、タイヤ用の加硫ゴム及びタイヤに関し、更に詳しくは、乾燥路面での耐摩耗性を損なうことなく、氷雪路面での制動・駆動性能を飛躍的に向上させたタイヤ、該タイヤのトレッド等に好適に使用できるタイヤ用の加硫ゴム、及び該タイヤ用の加硫ゴムの原料等として好適に使用できるタイヤ用のゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパイクタイヤが規制されて以来、水膜の発生し易い氷雪路面での制動・駆動性能(氷上性能)を向上させるため、特にスタッドレスタイヤにおけるトレッドについての各種研究が盛んに行われてきている。
氷雪路面においては、前記水膜が、スタッドレスタイヤと氷雪路面との間の摩擦係数を低下させる原因になっている。このため、スタッドレスタイヤにおけるトレッドの水膜除去能やエッヂ効果が、前記氷上性能に大きく影響する。したがって、スタッドレスタイヤにおける氷上性能を向上させるためには、トレッドの水膜除去能やエッヂ効果の改良が必要である。
【0003】
特許第2568502号には、トレッドを発泡ゴムとし、該発泡ゴム中の独立気泡による微細な凹凸により前記水膜除去能とエッヂ効果とを改良する技術が記載されている。しかし、このような独立気泡のみを含む発泡ゴムを用いても、依然として市場の要求レベルを十分に満たす程度にまで氷上性能を向上させることはできない。
特開平8−85738号公報には、トレッドに疎水性・撥水性に優れたゴム組成物を用いる旨が記載されている。しかし、この場合も上記同様、市場の要求レベル満たす程度にまで氷上性能を十分に向上させることができない。
【0004】
一方、特開平4−38207号公報には、短繊維入発泡ゴムをトレッドに用いて、該トレッドの表面にミクロ的な溝を形成する手法が記載されている。
しかし、この場合における前記短繊維は、加硫時に熱収縮によってカールしたり、モールドの溝部、即ちサイプ部に短繊維が押し込まれてトレッド中で屈曲してしまう。このため、走行によりトレッドが摩耗しても、摩耗面と短繊維とが略平行でないものは該トレッドから短繊維が容易に離脱せず、当初の狙いのようなミクロ的な溝が効率的に形成されず、氷上での摩擦係数の向上が十分でない。また、ミクロ的な溝は、タイヤにかかる負荷が大きいと潰れてしまうこともある。更に、この場合には耐摩耗性の低下が著しいという問題もある。
【0005】
他方、特開平4−110212号公報等には、トレッドに中空繊維を分散させることにより、氷面とトレッドの接地面との間にわき出る水を該中空繊維の中空部分で排除し得るタイヤが開示されている。
しかしながら、この場合、該中空繊維をゴムに混練りするとき、成形時の圧力、ゴム流れ、温度等によって該中空繊維が潰れてしまい、実際には該中空繊維は中空形状を保つことができず、依然として水排除性能が十分でないという問題がある。更に、この場合には耐摩耗性の低下が著しいという問題もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、乾燥路面での耐摩耗性を損なうことなく、氷面との間に生ずる水の除去能力に優れ、氷面との間の摩擦係数が大きく、氷雪路面での制動・駆動性能(氷上性能)を飛躍的に向上させたタイヤ、該タイヤのトレッド等の氷上でのスリップを抑えることが必要な構造物等に好適に使用できるタイヤ用の加硫ゴム、及び該タイヤ用の加硫ゴムの原料等として好適に使用できるタイヤ用のゴム組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも1種のゴム成分と、発泡剤と、該ゴム成分100重量部に対し、少なくともカーボンブラック10重量部とを含むゴムマトリックスと、該ゴム成分100重量部に対し、平均長さ(L)と平均径(D)との比(L/D)が小さくとも3の、融点が加硫最高温度より10℃以上低いポリエチレンである長尺状樹脂を1〜20重量部とを含有してなり、
該カーボンブラックが、式(1):(DAP)≧0.186×(N2 SB)+89、及び、式(2):(DAP)≧1000/(N2 SB)+100を満たすことを特徴とするタイヤ用のゴム組成物である。
(上記式(1)、(2)中、DAPは、ジブチルテレフタレート吸収量(ml/100g)を意味し、N2 SBは、窒素吸着比表面積(m/g)を意味する。)
<2>前記長尺状樹脂が押出温度以下の温度で軟化する前記<1>に記載のタイヤ用のゴム組成物である。
【0008】
> 前記<1>または前記<>に記載のタイヤ用のゴム組成物を加硫して得られ、長尺状気泡を有することを特徴とするタイヤ用の加硫ゴムである。
> 平均発泡率が3〜40%である前記<3>に記載のタイヤ用の加硫ゴムである。
> 1対のビード部と、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカスと、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有してなり、少なくとも前記トレッドが、前記<3>または前記<4>に記載のタイヤ用の加硫ゴムを含んでなることを特徴とするタイヤである。
【0009】
長尺状気泡がタイヤ周方向に沿って配向された前記<>に記載のタイヤである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のタイヤ用のゴム組成物、タイヤ用の加硫ゴム及びタイヤについて以下に詳細に説明する。
【0011】
タイヤ用のゴム組成物)
本発明のタイヤ用のゴム組成物(以下、ゴム組成物と称する)は、ゴムマトリックスと、長尺状体とを含んでなる。
前記ゴムマトリックスは、本発明のゴム組成物における前記長尺状体を除く成分を含み、具体的には、天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも1種のゴム成分とカーボンブラックとを少なくとも含み、更に、発泡剤、発泡助剤、無機充填材、カップリング剤等の必要に応じて適宜選択したその他の成分を含む。
【0012】
−−ゴムマトリックス−−
−ゴム成分−
前記ジエン系合成ゴムとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのジエン系合成ゴムの中でも、ガラス転移温度が低く、氷上性能の効果が大きい点で、シス−1,4−ポリブタジエンが好ましく、シス含有率が90%以上のものが特に好ましい。
【0013】
−カーボンブラック−
前記カーボンブラックとしては、「(DBP)」と「(N2 SA)」とが以下の式(1)及び式(2)に示す関係を満たしていることが必要である。
式(1):(DBP)≧0.186×(N2 SA)+89
式(2):(DBP)≧1000/(N2 SA)+100
前記「(DBP)」は、ASTM D2414−90に規定されたジブチルテレフタレート吸収量(ml/100g)を意味する。また、前記「(N2 SA)」は、ASTM D3037−89に規定された窒素吸着比表面積(m2 /g)を意味する。
【0014】
前記式(1)及び前記(2)を満たし、本発明において使用できるカーボンブラックの範囲は、図1において、2つの線で画定される斜線部分(即ち、図1中の2つの線について、横軸の前記(N2 SA)のある値を基準にしてみたとき、前記(DBP)の値がより高い方の線における該(DBP)の値以上である範囲の集合部分)である。
【0015】
前記式(1)を満たすカーボンブラックは、ASTMカーボンブラック等の標準グレードのカーボンブラックと対比して「ハイストラクチャーカーボンブラック」と呼ばれる。
前記「ハイストラクチャーカーボンブラック」は、一般に、標準グレードのカーボンブラックと対比して耐摩耗性に優れている上、ゴム組成物の押出時に該押出方向に容易に配向し得る点で好ましい。また、この「ハイストラクチャーカーボンブラック」と前記長尺状体とを組み合わせると、ゴム組成物において各々を単独で用いた場合の各々の配向性に比べてより改善された配向性が得られる点で有利である。
前記式(2)を満たすカーボンブラックは、(N2 SA)の小さなカーボンブラック(即ち「大粒径カーボンブラック」あるいは「低級カーボンブラック」)である程、大きな(DBP)(「ハイストラクチャー」)を有することが要求される。
【0016】
前記カーボンブラックが、前記式(1)を満たさないと、該ゴム組成物を加硫して得たタイヤ用の加硫ゴム(以下加硫ゴムと称する)をタイヤのトレッド等に使用しても、DBPが小さいことによる配向性の低さにより十分な氷上性能が得られず、前記式(2)を満たさないと、DBPが小さいことにより耐摩耗性を十分に向上させることができない。更に、前記カーボンブラックが前記式(1)及び式(2)を満たさないと、氷上性能、耐摩耗性及び乾燥路面での走行性能(グリップ性能)等の他性能の面でも十分でない。
一方、前記カーボンブラックが前記式(1)及び式(2)を満たしていると、そのようなことはなく、前記長尺状体の配向性を向上させることができ、氷上性能及び耐摩耗性を効果的に向上させることができる点で好ましい。
【0017】
前記「(N2 SA)」の値としては、特に制限はないが、耐摩耗性の観点からは小さくとも50(m2 /g)(即ち、50(m2 /g)以上)が好ましく、小さくとも70(m2 /g)(即ち、70(m2 /g)以上)がより好ましい。
前記「(DBP)」の値としては、特に制限はないが、カーボンブラックの生産性の観点からは大きくとも250(ml/100g)(即ち、250(ml/100g)以下)が好ましく、大きくとも200(ml/100g)(即ち、200(ml/100g)以下)がより好ましい。
【0018】
前記カーボンブラックとしては、前記式(1)及び式(2)を満たす限り、その種類としては特に制限はなく、市販品を好適に使用することができる。前記市販品としては、例えば、旭カーボン社製の旭#73H等が挙げられる。
前記カーボンブラックは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記カーボンブラックのゴム組成物における含有量としては、ゴム成分100重量部に対して、少なくとも10重量部(即ち、10重量部以上)であることが必要であり、10〜120重量部が好ましく、10〜100重量部が特に好ましい。
本発明においては、前記カーボンブラックの含有量としては、前記数値範囲のいずれかの上限値若しくは下限値又は後述の実施例において採用したいずれかの含有量の値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの上限値若しくは下限値又は後述の実施例において採用したいずれかの含有量の値を上限とする数値範囲も好ましい。
前記含有量が、10重量部未満であると該ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムの耐摩耗性の劣化が著しくなる点で好ましくない。一方、10重量部以上であるとそのようなことはなく、前記加硫ゴムの耐摩耗性を向上させることができる点で好ましい。
【0020】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、本発明の目的を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、軟化剤、硫黄等の加硫剤、ジベンゾチアジルジスルフィド等の加硫促進剤、加硫助剤、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−ベンゾチアジル−スルフェンアミド等の老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、オゾン劣化防止剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、軟化剤等の添加剤等の他、通常ゴム業界で用いる各種配合剤などを適宜使用することができる。なお、本発明においては、前記その他の成分については市販品を好適に使用することができる。
【0021】
本発明においては、前記その他の成分として、発泡剤を特に好ましく使用することができる。少なくとも前記発泡剤を使用すると、該ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムを発泡率に富む発泡ゴムにすることができ、しかも前記長尺状体が長尺状樹脂である場合には、該長尺状樹脂を効率的に長尺状気泡にすることができる点で有利である。
【0022】
前記発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラアミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルフォニルヒドラジド誘導体、オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド(OBSH)、重炭酸アンモニウム、ニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルセミカルバジド、P,P'−オキシービス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの発泡剤の中でも、製造加工性を考慮すると、ジニトロソペンタメチレンテトラアミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。
【0023】
また、本発明においては、効率的な発泡を行うことができる点で、前記発泡剤を用いる場合には発泡助剤を更に併用するのが好ましい。
前記発泡助剤としては、例えば、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛や亜鉛華等、通常、発泡製品の製造に用る助剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの発泡助剤の中でも、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛等が好ましい。
【0024】
また、本発明においては、前記その他の成分として、無機充填材を好ましく使用することができる。前記無機充填材を使用すると、該ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムの湿潤路面での走行性能(グリップ性能)を向上させることができる点で有利である。
【0025】
前記無機充填材としては、例えば、Al2 3 、ZnO、TiO2 、SiC、Si、C、SiO2 、フェライト、ジルコニア、MgO等のセラミックス、Fe、Co、Al、Ca、Mg、Na、Cu、Cr等の金属、これら金属よりなる合金、これら金属の窒化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、更にはその他、真ちゅう、ステンレス等、ガラス、カーボン、カーボンランダム、マイカ、ゼオライト、カオリン、アスベスト、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、シリカ、クレー等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、Al2 3 、SiC、Si、C、SiO2 、Al、シリカなどが好ましい。
【0026】
前記無機充填材のゴム組成物における含有量としては、前記ゴム成分100重量部に対して、100重量部以下が好ましく、10〜80重量部が好ましい。
前記無機充填材のゴム組成物における含有量が、前記ゴム成分100重量部に対して100重量部を越えると、該ゴム組成物を加硫して得た加硫ゴムをタイヤのトレッド等に使用しても、弾性率上昇に伴い氷上性能が低下してしまう点で好ましくない。
【0027】
前記無機充填材としては、以下のカップリング剤で表面処理されているのが好ましい。
前記無機充填材がカップリング剤で表面処理されていると、前記ゴム成分と該無機充填材とが、該無機充填材の表面における孔を介した物理的結合のみならず、化学的に接着することができ、より強固な接着力が得られ、該無機充填材がゴムマトリックスから脱離する問題を大幅に改善することができる。
【0028】
前記カップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、DEGUSSA製Si69に代表されるシランカップリング剤が好ましい。
前記シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどが好ましい。
【0029】
前記カップリング剤のゴム組成物における含有量としては、前記無機充填材の重量に対して5〜25重量%が好ましく、10〜25重量%がより好ましい。
前記カップリング剤のゴム組成物における含有量が、前記無機充填材の重量に対して5重量%未満であると、前記無機充填材の前記ゴム成分中での分散性向上効果及び補強効果が十分でなく、該ゴム組成物を加硫して得た加硫ゴムの氷上性能及び耐摩耗性が十分に改善されないことがあり、一方、25重量%を超えてもそれに見合う効果が得られないことがある。
【0030】
本発明においては、前記無機充填材が、前記ゴム成分との親和性を向上させ得る表面処理が施されているのが好ましい。
前記無機充填材に、このような表面処理が施されていると、該ゴム組成物を加硫して得た加硫ゴムをタイヤのトレッド等に使用した場合、走行時に該無機充填材がゴムマトリックスから離脱し難く、前記トレッド等の耐摩耗性を良好にすることができる点で有利である。
【0031】
−−長尺状体−−
本発明において、前記長尺状体としては、後述する短繊維と長尺状樹脂とが特に好適に挙げられる。
本発明においては、前記長尺状体として、前記短繊維又は前記長尺状樹脂のみを使用してもよいし、前記短繊維と前記長尺状樹脂とを併用してもよい。
【0032】
前記長尺状体のデニールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、氷上性能向上の観点からは、1〜1000デニールが好ましく、2〜800がより好ましい。
【0033】
前記長尺状体の平均長さ(L)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該ゴム組成物を加硫して得た加硫ゴムをタイヤにおけるトレッド等に使用した場合の該タイヤの氷上性能を向上させる観点からは、小さくとも500μm(即ち、500μm以上)が好ましく、500〜5000μmがより好ましい。
前記平均長さ(L)が、500μm未満であると、該長尺状体のゴム組成物中における配向性が十分でないことがある。
なお、前記長尺状体の平均長さ(L)は、用いた長尺状体の長さの平均値を意味する。
【0034】
前記長尺状体の平均径(D)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、タイヤの氷上性能向上の観点からは、30〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。
前記平均径(D)が、30μm未満であると、該ゴム組成物を加硫して得た加硫ゴムの水排除機能が十分でなく、氷上性能が改善されず、500μmを越えると、前記加硫ゴムの耐久性、耐カット性及び耐摩耗性が低下してしまう点でいずれも好ましくない。
なお、前記長尺状体の平均径(D)は、例えば、顕微鏡観察を行うこと等により算出することができる。
【0035】
前記長尺状体の平均長さ(L)と平均径(D)との比(L/D)としては、小さくとも3.0(3.0以上)が好ましく、5〜100がより好ましい。
前記比(L/D)が、3.0未満であると、押出後に十分な配向性が得られず、十分な氷雪性能が得られず、該ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムの耐摩耗性が劣化してしまう点で好ましくない。
【0036】
−短繊維−
前記短繊維は、例えば、有機合成繊維、再生繊維及び天然繊維から選択することができる。前記短繊維は、該ゴム組成物の加硫時等において軟化乃至融解しない。
前記有機合成繊維としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ケブラー、アラミド等が挙げられる。
前記再生繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ等が挙げられる。
前記天然繊維としては、例えば、綿、絹、羊毛等が挙げられる。
本発明においては、これらの中でも、熱収縮を制御し易い点で、ナイロン、ポリエステルが好ましい。
これらの短繊維は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記短繊維の熱収縮率としては、該ゴム組成物の加硫温度において、8%以下であるのが好ましくは、4%以下であるのがより好ましく、2%以下であるのが特に好ましい。
前記熱収縮率が8%を越えると、加硫時に該短繊維が縮れてしまい、ゴムマトリックス中で所望の配向を得ることができず、この場合、該加硫ゴムをタイヤのトレッド等に使用しても氷上性能が悪化してしまうことがある。
前記短繊維の熱収縮率を8%以下に制御するには、該短繊維を紡糸乃至得る際の延伸工程等を、ゴム組成物の加硫温度よりも高い温度で行うのがよい(この場合、延伸張力、延伸倍率は両者とも小さくした方がより効果が発揮される)。
【0038】
−長尺状樹脂−
前記長尺状樹脂は、加硫時に該長尺状樹脂が含まれるゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に、その粘度が該ゴムマトリックスの粘度よりも低くなる特性を有していることが必要である。
前記加硫最高温度とは、該長尺状樹脂が含まれるゴム組成物の加硫時における該ゴム組成物が達する最高温度を意味する。例えば、モールド加硫の場合には、該ゴム組成物がモールド内に入ってからモールドを出て冷却されるまでに該ゴム組成物が達する最高温度を意味する。
前記加硫最高温度は、例えば、前記ゴム組成物中に熱電対を埋め込むこと等により測定することができる。
なお、前記ゴムマトリックスの粘度は、流動粘度を意味し、例えばコーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用いて測定することができる。また、前記長尺状樹脂の粘度は、溶融粘度を意味し、例えばコーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用いて測定することができる。
【0039】
前記長尺状樹脂としては、前記熱特性を有している限りその材質等について特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、該熱特性を有する長尺状樹脂としては、例えば、その融点が前記加硫最高温度よりも低い結晶性高分子からなる長尺状樹脂などが好適に挙げられる。
【0040】
該結晶性高分子からなる樹脂を例に説明すると、その融点と、該長尺状樹脂が含まれるゴム組成物の前記加硫最高温度との差が大きくなる程、加硫中に速やかに該長尺状樹脂が溶融するため、該長尺状樹脂部分の粘度がゴムマトリックスの粘度よりも低くなる時期が早くなり、該長尺状樹脂が溶融した後、発泡剤から発生したガス等はゴムマトリックスよりも低粘度である長尺状樹脂の内部に移行していく。その結果、該加硫ゴム中には、該長尺状樹脂により内壁を被覆された長尺状気泡が多く存在する。
【0041】
一方、前記長尺状樹脂の融点が、該長尺状樹脂が含まれるゴム組成物の前記加硫最高温度に近くなり過ぎると、加硫初期に速やかに該長尺状樹脂が溶融せず、加硫終期に該長尺状樹脂が溶融する。加硫終期では、該発泡剤から発生したガスが架橋したゴムマトリックス中に取り込まれてしまっているため、溶融した長尺状樹脂内でのガスの保持が不十分になる。
他方、前記長尺状樹脂の融点が低くなり過ぎると、該ゴム組成物の混練り時の熱で該樹脂が溶融し、混練りの段階の該長尺状樹脂同士の融着による分散不良、混練りの段階で該長尺状樹脂が複数に分断される、該長尺状樹脂がゴム組成物中に溶け込んでミクロに分散してしまう、等の不都合があり好ましくない。
【0042】
したがって、前記長尺状樹脂の融点は、以上の点を考慮して選択するのが好ましく、一般的には、前記長尺状樹脂の融点としては、該樹脂が含まれるゴム組成物の前記加硫最高温度よりも、10℃以上低いのが好ましく、20℃以上低いのがより好ましい。
ゴム組成物の工業的な加硫温度は、一般的には、最高で約190℃程度であるが、例えば、加硫最高温度がこの190℃に設定されている場合には、前記長尺状樹脂の融点としては、通常190℃以下で選択され、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。
【0043】
一方、ゴム組成物の混練りを考慮すると、前記長尺状樹脂の融点としては、混練り時の最高温度に対して、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が特に好ましい。
ゴム組成物の混練りでの最高温度を例えば95℃と想定した場合には、前記長尺状樹脂の融点としては、100℃以上が好ましく、105℃以上がより好ましく、115℃以上が特に好ましい。
なお、本発明においては、前記融点は、それ自体公知の融点測定装置等を用いて測定することができ、例えば、DSC測定装置(例えば米国デュポン社製910型)を用いて測定(昇温速度10℃/分、試料重量5mgの条件下等)した融解ピーク温度を前記融点とすることができる。
【0044】
また、本発明においては、前記長尺状樹脂が、前記ゴム組成物の押出温度以下の温度で軟化する特性を有しているのが好ましい。この場合、前記長尺状樹脂の配向の制御が容易である点で有利である。
【0045】
前記長尺状樹脂は、結晶性高分子から形成されていてもよいし、非結晶性高分子から形成されていてもよいし、結晶性高分子と非結晶性高分子とから形成されていてもよいが、本発明においては、相転移があるために粘度変化がある温度で急激に起こり、粘度制御が容易な点で結晶性高分子を含む有機素材から形成されるのが好ましく、結晶性高分子から形成されるのがより好ましい。
【0046】
前記結晶性高分子の具体例としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、シンジオタクティック−1,2−ポリブタジエン(SPB)等の単一組成重合物や、共重合、ブレンド等により融点を適当な範囲に操作したものも用いることができ、更にこれらの長尺状樹脂に添加剤を加えてもよい。
これらの結晶性高分子の中でも、ポリオレフィン、ポリオレフィン共重合体が好ましく、更には汎用で入手し易い点でポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0047】
前記非結晶性高分子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン、ポリエチレンNR系、SPB、PMMA、PAN、これらの共重合体、これらのブレンド物等が挙げられる。
【0048】
前記長尺状樹脂には、本発明の目的を害しない範囲において、必要に応じて公知の添加剤が添加されていてもよい。
【0049】
前記長尺状樹脂における前記有機素材の分子量としては、該有機素材の化学組成、分子鎖の分岐の状態等によって異なり一概に規定することはできないが、前記熱特性を害しない範囲であれば特に制限はない。一般に、該長尺状樹脂は、同じ有機素材で形成されていてもその分子量が高い程、ある一定の温度における粘度(溶融粘度)は高くなる。したがって、本発明においては、前記長尺状樹脂における前記有機素材の分子量は、該長尺状樹脂を含むゴム組成物の前記加硫最高温度における該ゴム組成物の粘度(流動粘度)よりも該長尺状樹脂の粘度(溶融粘度)が高くならないような範囲で選択される。
【0050】
なお、一試験例では、長尺状樹脂が、1〜2×105 程度の重量平均分子量のポリエチレンの場合の方が、7×105 以上の重量平均分子量のポリエチレンの場合よりも、発泡剤から発生したガスが加硫後の長尺状樹脂の内部に多量に包含されていた。この相違は、長尺状樹脂の素材であるポリエチレンの分子量の違いに起因する粘度(溶融粘度)の差に基づくものと推測される。
一方、前記長尺状樹脂における前記有機素材の分子量が低すぎると、該長尺状樹脂が含まれるゴム組成物の混練りの段階で、該長尺状樹脂の粘度(溶融粘度)が低下し、該長尺状樹脂同士の融着が発生してしまい、ゴム組成物中の長尺状樹脂の分散性が悪化するため好ましくない。
【0051】
−長尺状体の含有量−
前記長尺状体の前記ゴム組成物における含有量としては、前記ゴムマトリックス100重量部に対して、1〜20重量部であることが必要であり、3〜15重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。
また、本発明においては、前記長尺状体の前記ゴム組成物における含有量として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例において採用した含有量の値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例において採用した含有量の値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0052】
前記含有量が1重量部未満であると、前記長尺状体が前記長尺状樹脂である場合には、ゴム組成物中に配合する前記長尺状樹脂に対し、該ゴム組成物中に取り込み乃至保持されるガスの量が多くなり、長尺状気泡の平均径(D)が大きくなり過ぎてしまうことがあり、前記短繊維である場合には、該短繊維の必要な本数の短繊維が確保できず、排水溝の形成が不十分になることがあり、いずれの場合にも、該ゴム組成物を加硫して得た加硫ゴムをタイヤのトレッド等に使用しても氷上性能の向上が十分に図れない。
一方、前記含有量が20重量部を越えると、前記長尺状体が前記長尺状樹脂である場合には、該長尺状樹脂のゴム組成物中での分散性が悪化する、ゴム押出時の作業性が悪化する、トレッド等にクラックが発生する等の不都合が生ずることがあり、また、前記長尺状体が前記短繊維である場合には、上述のような不都合がある上、加硫ゴムが硬くなり過ぎ、却って氷上性能が低下してしまうことがある。
前記含有量が前記好ましい数値範囲内にあると、そのようなことがなく、生産性、耐摩耗性、耐久性、耐カット性及び氷上性能がバランス良く、高いレベルに維持される点で好ましい。
【0053】
−ゴム組成物の調製−
本発明のゴム組成物は、以上のような各成分を混練りし、熱入れし、押出すること等を適宜行うことにより調整され、前記押出により前記ゴム組成物中における前記長尺状体は、該押出方向と略平行方向に配向する。
【0054】
前記混練りの条件としては、混練り装置への投入体積、ローターの回転速度、ラム圧等、混練り温度、混練り時間、混練り装置の種類等の諸条件について目的に応じて適宜選択することができる。前記混練り装置としては、市販品を好適に使用することができ、このような市販品としては、例えば、通常タイヤ用ゴム組成物の混練りに用いるバンバリーミキサー、インターミックス、ニーダー等が挙げられる。
【0055】
前記熱入れの条件としては、熱入れ温度、熱入れ時間、熱入れ装置等の諸条件について目的に応じて適宜選択することができる。前記熱入れ装置としては、市販品を好適に使用することができ、このような市販品としては、例えば、通常タイヤ用ゴム組成物の熱入れに用いるロール機等が挙げられる。
【0056】
前記押出の条件としては、押出時間、押出速度、押出装置等の諸条件について目的に応じて適宜選択することができる。前記押出装置としては、市販品を好適に使用することができ、このような市販品としては、例えば、通常タイヤ用ゴム組成物の押出に用いる押出機等が挙げられる。
なお、前記押出温度は、前記長尺状体の融点及び発泡剤の発泡開始温度等に応じて適宜決定することができる。
【0057】
本発明のゴム組成物においては、前記押出の結果、前記長尺状体の相が、押出方向と略平行方向に配列しているが、これを効果的に達成するためには、限られた温度範囲の中で前記ゴムマトリックスの流動性をコントロールすればよく、具体的には、前記ゴムマトリックス中に、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、エステル系オイル等の可塑剤、液状ポリイソプレンゴム、液状ポリブタジエンゴム等の液状ポリマーなどの加工性改良剤を適宜添加して該ゴムマトリックスの粘度を低下させ、その流動性を高めることにより、極めて良好に押出を行うことができ、かつ理想的に前記長尺状樹脂の相を押出方向と略平行に配列させることができる。
【0058】
前記ゴム組成物において、前記長尺状体の相が押出方向と略平行に配列している場合、このゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムをタイヤのトレッド等に使用すると、詳しくは該トレッド等における地面と接触する表面に平行な方向、より好ましくは該タイヤの周方向に、前記長尺状体の相を配向させた状態で用いると、該タイヤの走行方向の排水性が高まり、氷上性能を向上させることができる点で好ましい。
【0059】
前記ゴム組成物中で前記長尺状体の相を所定の方向に配向させるには、公知の方法を採用することができるが、例えば、図2に示すように、長尺状体15が混練されたゴムマトリックス16を、流路断面積が出口に向かって減少する押出機の口金17から押し出す方法などが挙げられる。
この場合、押し出される前のゴムマトリックス16中の長尺状体15は、口金17へ押し出されていく過程でその長手方向が押出方向(矢印B方向)に沿って除々に揃うようになり、口金17から押し出されるときには、その長手方向が押出方向(矢印B方向)にほぼ完全に揃うようになる。なお、この場合の長尺状体15のゴムマトリックス16中の配向の程度は、流路断面積の減少程度、押出速度、ゴムマトリックスの粘度等によって変化する。
【0060】
前記ゴム組成物中で前記長尺状体の相を所定の方向に配向させるため、ゴム組成物の押出機からの排出速度(V1 )と排出後トレーンによる引出速度(V2 )との比(V2 /V1 )が、式(3):(V2 /V1 )≧1.03を満たすのが好ましい。
なお、押出後の残留応力を小さくし、形状の放置安定性(収縮性)を良くするためには、通常、前記比(V2 /V1 )≒1.00とし、前記排出速度と前記引出速度とを同等にするのが良いが、本発明においては、前記式(1)及び式(2)を満たすハイストラクチャーカーボンを使用するため、前記形状の放置安定性(収縮性)を適度に抑制することができるため、前記式(3)を満たせば十分である。
【0061】
なお、前記長尺状体が、前記長尺状樹脂である場合、該長尺状体の相の平均長さ(L)と平均径(D)との関係は、逆相関関係にあり、押出温度と押出速度とを適宜変更することにより調整することができる。
即ち、前記押出温度を前記長尺状樹脂の融点よりも大幅に高く設定することで該長尺状樹脂の相の粘度を下げ、前記押出速度を速めることで長尺状樹脂の相の平均径(D)を小さく(細く)し、平均長さ(L)を長くすることができ、前記長尺状樹脂の相の平均長さ(L)と平均径(D)との比(L/D)が大きくし得る。
【0062】
したがって、前記長尺状体が、前記長尺状樹脂である場合は、所望する長尺状体の相の寸法(平均長さ(L)及び平均径(D))に応じて、(1)押出温度、(2)押出速度、(3)初期分散粒径を設定し、それに伴う混練り最高温度、回数等の(4)混練り条件を設定することが必要となるが、これらの各条件を適宜変えることにより、細径で、かつ平均長さ(L)と平均径(D)との比(L/D)が小さい長尺状樹脂の相から、太径で、かつ平均長さ(L)と平均径(D)との比(L/D)が大きい長尺状体の相まで任意に得ることができる。
【0063】
前記長尺状体が前記長尺状樹脂である場合、該長尺状樹脂を含むゴム組成物においては、加硫前では、ゴムマトリックスよりも該長尺状樹脂の方が粘度が高くなっている。加硫開始後、該ゴム組成物が加硫最高温度に達するまでの間に、該ゴム組成物に含まれるゴムマトリックスは加硫によりその粘度が上昇していく。一方、該ゴム組成物に含まれる該長尺状樹脂は、溶融によりその粘度が大幅に低下していく。そして、加硫中において、ゴムマトリックスよりも該長尺状樹脂の方が粘度が低くなる。即ち、加硫前のゴムマトリックスと該長尺状樹脂との間における粘度の関係が、加硫途中の段階で逆転する現象が生ずる。この間、ゴム組成物中では、発泡剤を使用している場合には該発泡剤による効率的な発泡が生じ、ガスが生ずる。この発泡により生じたガスは、加硫反応が進行して粘度が高くなっているゴムマトリックスに比べて相対的に粘度が低下した溶融した該長尺状樹脂内に移動し、容易に取り込まれる。
【0064】
その結果、該ゴム組成物の加硫後の加硫ゴムにおいては、ゴム組成物における該長尺状樹脂が存在していた場所に長尺状気泡が存在する。該長尺状気泡は、該長尺状気泡に面する周囲(長尺状気泡を画成する壁)が該長尺状樹脂の素材によって覆われており、加硫ゴム内において互いに独立して存在している。また、該長尺状樹脂の素材を、ポリエチレン、ポリプロピレン等とした場合は加硫したゴムマトリックスと該長尺状樹脂の素材による被覆層(以下「保護層」と称することがある)とは強固に接着している。なお、前記発泡剤を使用した場合には、発泡率に富む加硫ゴムが得られる。
【0065】
なお、本発明のゴム組成物を加硫して得た加硫ゴムにおいて、前記長尺状体と加硫したゴムマトリックスとの接着力は、該加硫ゴムが加硫される前の前記ゴム組成物中に、適宜選択した添加剤を添加することにより任意に調節することができる。
前記接着力としては、前記長尺状体が前記長尺状樹脂である場合には大きい方が好ましく、前記長尺状体が前記短繊維である場合には小さい方が好ましい。
後者の場合は、該加硫ゴムを例えばタイヤのトレッド等に使用すると、地面との接触する面に露出する前記短繊維が、地面との摩擦により容易に脱落し、該表面に前記短繊維が脱落して形成される長尺状溝を容易に得られる点で有利である。この長尺状溝が該タイヤにおいて水膜除去能とエッヂ効果とを発揮し得る。
【0066】
本発明のゴム組成物は、各種分野において好適に使用することができるが、後述の本発明の加硫ゴムの原料等として特に好適に使用することができる。
【0067】
加硫ゴム
本発明の加硫ゴムは、前記本発明のゴム組成物を加硫することにより容易に得られる。
本発明の加硫ゴムは、後述のタイヤのトレッド等に用いる場合には、加硫する前に、原料である前記本発明のゴム組成物中の前記長尺状体を所定の方向に配向させるのが好ましい。
具体的には、該トレッドにおける地面と接触する表面に平行な方向に、更には、該タイヤの周方向に沿って前記長尺状体を配向させると、該加硫ゴムにおいて、前記長尺状体が前記長尺状樹脂である場合には該長尺状樹脂が存在していた場所に長尺状気泡が配向した状態で存在し、前記長尺状体が前記短繊維である場合には該短繊維がそのまま配向した状態で存在する。その結果、該加硫ゴムをタイヤのトレッド等に使用すると、走行中に前記短繊維が脱離して形成された長尺状溝、あるいは前記長尺状気泡による、微細な排水溝が該タイヤの表面に露出し、この排水溝が水膜除去能及びエッヂ効果を発揮し、該タイヤの走行方向の排水性が高められ、氷上性能が向上される。
【0068】
前記ゴム組成物中で前記長尺状体を所定の方向に配向させるには、公知の方法を採用することができるが、例えば、図2に示すように、長尺状体15が混練りされたゴムマトリックス16を、流路断面積が出口に向かって減少する押出機の口金17から押し出す方法などが挙げられる。
この場合、押し出される前のゴムマトリックス16中の長尺状体15は、口金17へ押し出されていく過程でその長手方向が押出方向(矢印B方向)に沿って除々に揃うようになり、口金17から押し出されるときには、その長手方向が押出方向(矢印B方向)にほぼ完全に揃うようになる。なお、この場合の長尺状体15のゴムマトリックス16中の配向の程度は、流路断面積の減少程度、押出速度、ゴムマトリックスの粘度等によって変化する。
【0069】
前記加硫を行う装置乃至方式等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記加硫を行う装置の具体例としては、例えば、通常タイヤ用ゴム組成物の加硫に用いる金型による成形加硫機などが挙げられる。
【0070】
本発明の加硫ゴムにおいては、加硫したゴムマトリックス中に、前記長尺状体が前記短繊維である場合には該短繊維がそのまま、前記長尺状体が前記長尺状樹脂である場合には該長尺状樹脂が溶融し内部にガスが包含されてなる長尺状気泡が、それぞれ存在している。
原料である前記本発明のゴム組成物を押出等することによって該ゴム組成物中の前記長尺状体を一方向に配向させた場合には、加硫ゴムにおいては、前記長尺状体が前記短繊維である場合には該短繊維が該押出方向に配向した状態で含まれており、前記長尺状体が前記長尺状樹脂である場合には、図3に示すように、長尺状気泡12が、該押出方向(図3中のA方向)に配向した状態で存在している。この長尺状気泡12は、溶融した長尺状樹脂が加硫したゴムマトリックスと接着してなる保護層14により囲まれている。このため、長尺状気泡12は、加硫ゴムにおいて独立した空間として存在し、該長尺状気泡12内に、発泡剤から発生したガス等が取り込まれる。
【0071】
また、図3に示すように、加硫したゴムマトリックス中には、発泡剤から発生したガスが、球状の気泡18として存在している(なお、前記ガスは、前記長尺状体が前記長尺状樹脂である場合には、該長尺状樹脂が溶融した際に、該溶融樹脂中に取り込まれなかった分のガスを意味する)。
本発明の加硫ゴムを、例えばタイヤのトレッドに使用した場合等においては、その表面に露出した長尺状気泡12、短繊維である長尺状体が脱落して形成された長尺状溝、あるいは球状の気泡18が、水の効率的な排出を行う排出路として機能する。
なお、該長尺状気泡12の周囲には耐剥離性に優れる保護層14が存在するため、該長尺状気泡12を有する本発明の加硫ゴムは、水路形状保持性、水路エッジ部摩耗性、荷重入力時の水路保持性等に特に優れる。
【0072】
本発明の加硫ゴムにおいては、前記長尺状体が前記短繊維である場合には該短繊維が脱落して形成される長尺状溝における、前記長尺状体が前記長尺状樹脂である場合には該長尺状樹脂が変化してなる長尺状気泡12における、それぞれ、1個当たりの平均長さ(L)(図3参照)と、前記平均径(D)との比(L/D)としては、小さくとも3(即ち、3以上)である必要があり、小さくとも5(即ち、5以上)が好ましい。
なお、前記比(L/D)の上限は、特に制限はないが、100程度が選択される。
また、本発明においては、前記比(L/D)として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例において採用した該比(L/D)の値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例において採用した該比(L/D)の値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0073】
前記比(L/D)が3未満であると、摩耗した加硫ゴムの表面に現れる前記長尺状溝乃至長尺状気泡12の長さを長くすることができず、また容積を大きくすることができないため、該加硫ゴムをタイヤのトレッド等に用いる場合には、該タイヤ等の水排除性能を向上させることができない点で好ましくない。
【0074】
本発明の加硫ゴムにおいては、前記長尺状溝乃至長尺状気泡12の平均長さ(L)(=保護層14の長径、図3参照)としては、500〜5000mmが好ましい。
前記平均長さ(L)が、500mm未満であると、該加硫ゴムをタイヤのトレッド等に用いる場合には、該タイヤの水排除性能が低下し、5000mmを越えると、該加硫ゴムの耐カット性、ブロック欠けが悪化し、また、乾燥路面での耐摩耗性が悪化するため、いずれも好ましくない。
【0075】
本発明の加硫ゴムにおいては、前記長尺状溝乃至長尺状気泡12の平均径(D)(=保護層14の内径、図3参照)としては、30〜500μmが好ましい。 前記平均径(D)が、30μm未満であると、該加硫ゴムをタイヤのトレッド等に用いる場合には、該タイヤの水排除性能が低下し、500μmを越えると、該加硫ゴムの耐カット性、ブロック欠けが悪化し、また、乾燥路面での耐摩耗性が悪化するため、いずれも好ましくない。
【0076】
本発明の加硫ゴムにおける平均発泡率Vsとしては、氷雪性能と耐摩耗性の観点から、3〜40%が好ましく、5〜35%がより好ましい。
また、本発明においては、前記平均発泡率Vsとして、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例における平均発泡率Vsの値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例における平均発泡率Vsの値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0077】
前記平均発泡率をVsとは、球状の気泡18の発泡率Vs1 と、長尺状気泡12の発泡率Vs2 とを合計を意味し、次式により算出できる。
Vs=(ρ0 /ρ1 −1)×100(%)
ここで、ρ1 は、加硫ゴム(発泡ゴム)の密度(g/cm3 )を表す。ρ0 は、加硫ゴム(発泡ゴム)における固相部の密度(g/cm3)を表す。
なお、前記加硫ゴム(発泡ゴム)の密度及び前記加硫ゴム(発泡ゴム)における固相部の密度は、例えば、エタノール中の重量と空気中の重量を測定し、これから算出した。
【0078】
前記平均発泡率Vsが、3%未満であると、発生する水膜に対して絶対的な凹部体積の不足により十分な水排除機能が得られず、氷上性能の効果向上が望めず、一方、40%を越えると、氷上性能向上効果は十分だが、加硫ゴム内における気泡が多くなり過ぎるために、コンパウンドの破壊限界が大巾に低下し、耐久性上好ましくない。
前記平均発泡率Vsは、前記発泡剤の種類、量、組み合わせる前記発泡助剤の種類、量、樹脂の配合量等により適宜変化させることができる。
【0079】
なお、前記長尺状体が前記長尺状樹脂である場合においては、前記平均発泡率Vsが3〜40%であると共に、長尺状気泡が前記平均発泡率Vsにおける10%以上を占めることが好ましい。該比率が10%未満であると、前記長尺状気泡による適切な排水路が少ないために、水排除機能が十分でないことがある。
また、前記長尺状体が前記長尺状樹脂である場合においては、該加硫ゴム中の長尺状気泡12は、溶融した長尺状樹脂が加硫したゴムマトリックスと接着してなる保護層14により囲まれているが、該保護層14の厚みとしては、大きくとも50μm(50μm以下)が好ましい。
前記厚みが、50μmを越えると、加硫ゴムが硬くなり過ぎ、却って氷上性能が低下することがある。
【0080】
本発明の加硫ゴムは、各種分野において好適に使用することができるが、氷上でのスリップを抑えることが必要な構造物に特に好適に使用でき、タイヤのトレッド等に最も好適に用いることができる。
前記氷上でのスリップを抑えることが必要な構造物としては、例えば、更生タイヤの貼り替え用のトレッド、中実タイヤ、氷雪路走行に用いるゴム製タイヤチェーンの接地部分、雪上車のクローラー、靴底、ベルト、キャスター等が挙げられる。
【0081】
(タイヤ)
本発明のタイヤは、少なくともトレッドを有してなり、少なくとも該トレッドが前記本発明の加硫ゴムを含む限り、他の構成としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。換言すれば、前記本発明のゴム組成物を用い、これを加硫することにより該トレッドを形成したタイヤが本発明のタイヤである。
【0082】
本発明のタイヤの一例を図面を用いて説明すると以下の通りである。なお、以下の例は、タイヤ(空気入りタイヤ)のトレッドに、前記長尺状体が前記長尺状樹脂であるゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムを用いた場合の例である。前記長尺状体が前記短繊維であるゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムを用いた場合も、前記例と基本的には同様の作用乃至効果を示す。即ち、この場合には、該短繊維が走行中に脱落して形成された長尺状溝が、前記例における長尺状気泡と同様の作用乃至効果を示す。
【0083】
図4に示すように、本発明のタイヤ(サイズ:185/70R14)4は、一対のビード部1と、該一対のビード部1にトロイド状をなして連なるカーカス2と、該カーカス2のクラウン部をたが締めするベルト3と、トレッド5とを順次配置したラジアル構造を有する。なお、トレッド5を除く内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と異ならないので説明は省略する。
【0084】
トレッド5には、図5に示すように、複数本の周方向溝8及びこの周方向溝8と交差する複数本の横溝9とによって複数のブロック10が形成されている。また、ブロック10には、氷上でのブレーキ性能及びトラクション性能を向上させるために、タイヤ幅方向(図5中のX方向)に沿って延びるサイプ11が形成されている。
【0085】
トレッド5は、図6に示すように、直接路面に接地する上層のキャップ部6と、このキャップ部6のタイヤ内部側に隣接して配置される下層のベース部7とから構成されており、いわゆるキャップ・ベース構造とされている。
【0086】
キャップ部6は、図3及び図8に示すように、球状の気泡18と、長尺状気泡12とを無数に含んだ発泡ゴムであり、ベース部7には発泡されていない通常のゴムが使用されている。この発泡ゴムが、前記本発明の加硫ゴムである。
長尺状気泡12は、図3に示すように、その長手方向が実質的にタイヤ周方向(図3、図6及び図8中の矢印A方向、図5中のY方向)に配向されており、その周囲が長尺状樹脂による保護層14で補強されている。
【0087】
タイヤ4は、その製造方法については特に制限はないが、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0088】
キャップ部6を形成するための本発明のゴム組成物における天然ゴム及びジエン系合成ゴムより選ばれる少なくとも1種のゴム成分としては、−60℃以下のガラス転移温度を有するものが好ましい。このガラス転移温度とするのは、トレッド5のキャップ部6が、低温域において十分なゴム弾性を維持し、十分な氷上性能を得るためである。
前記ゴム組成物の混練り時において、樹脂がゴムマトリックス中に混練りされ均一に分散される。前記樹脂は、タイヤ加硫工程における該ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に、ゴムマトリックスの粘度(流動粘度)よりも粘度(溶融粘度)が低くなる素材により形成されている。
【0089】
図2に示すように、長尺状樹脂15の混練りされたゴムマトリックス16を、流路断面積が出口に向かって減少する押出機の口金17から押し出すと、長尺状樹脂15の向き、即ち、長尺状樹脂15の長手方向が押出方向(矢印B方向)に沿って除々に揃い、口金17から出るときには長尺状樹脂15の長手方向が押出方向に揃うので、その後、口金17から押し出された帯状のゴム組成物を所望の長さでカットし、これをキャップ部6のゴムとして用いることができる。
【0090】
このようにして得られたゴム組成物による帯状の未加硫のキャップ部6を、予め未加硫タイヤケースのクラウン部に貼り付けられた未加硫のベース部7(図6参照)の上に、その長手方向がタイヤ周方向と一致するように貼り付け、所定のモールドで所定温度、所定圧力のもとで加硫成形することによりタイヤ4を製造することができる。
【0091】
このとき、未加硫のキャップ部6がモールド内で加熱されると、ゴムマトリックス中で、発泡剤による発泡が生じ、ガスが生ずる。一方、長尺状樹脂が溶融(又は軟化)し、その粘度(溶融粘度)がゴムマトリックスの粘度(流動粘度)よりも低下することにより(図7参照)、長尺状樹脂の周囲において、前記発泡剤による発泡により生じたガスが溶融した長尺状樹脂内へと移動する。図3に示すように、冷却後のキャップ部6には、球状の気泡18と、長尺状気泡12とが存在している発泡率に富むゴムとなっている。この発泡率に富むゴムは、本発明の加硫ゴムである。
【0092】
次に、タイヤ4の作用について説明する。即ち、タイヤ4を走行させると、図8に示すように、球状の気泡18による凹部19と、長尺状気泡12による溝状の凹部13とが摩耗の極めて初期の段階でトレッド5のキャップ部6の接地面に現れる。この状態でタイヤ4を氷上で走行させると、接地圧と摩擦熱によってタイヤ4と氷面との間に水膜が生じるが、トレッド5のキャップ部6の接地面に形成された無数の凹部13及び凹部19によって接地面内の水分(水膜)は素早く排除されて除去される。
【0093】
タイヤ4においては、長手方向が実質的にタイヤ周方向となっている長尺状(溝状)の凹部13が効率的な水の排出を行う排水路として機能し、この長尺状(溝状)の凹部13により、接地面内のタイヤ回転方向後側への水排除性能が向上するため、特に氷上ブレーキ性能が向上する。また、この長尺状(溝状)の凹部13は、その周囲がゴムマトリックスよりも硬い素材によりなり、耐剥離性に優れる保護層14で補強されているため耐剥離性に優れ、高荷重時でも潰れ難く、高い水路形状保持性、高い水排除性能が常に維持される。更にタイヤ4においては、接地面に露出した保護層14によって引っ掻き効果が生じるため、この引っ掻き効果によって横方向の氷上μが向上し、氷上ハンドリングが良好になる。
【0094】
タイヤ4のトレッド5は、前記本発明の加硫ゴムで形成され、又は前記本発明のゴム組成物を用い、これを加硫することにより形成されているので、トレッド5においては、球状の気泡18に比べて長尺状気泡12の体積比率が高い。
このため、タイヤ4の走行中に、長尺状気泡12(前記長尺状体が前記短繊維である場合、あるいは前記長尺状体が前記長尺状樹脂のみならず前記短繊維を含む場合には、該短繊維が脱落して形成された長尺状溝による凹部13がタイヤ4の表面に露出する確率が高く、その結果、凹部13による水排除機能が全体的に向上し、タイヤ4の氷上性能が向上する。
【0095】
なお、タイヤ4においては、長尺状気泡12(前記長尺状体が前記短繊維である場合、あるいは前記長尺状体が前記長尺状樹脂のみならず前記短繊維を含む場合には、該短繊維が脱落して形成された長尺状溝による凹部13の長手方向の向きは、総てタイヤ周方向となっていなくてもよく、一部タイヤ周方向以外の向きになっていてもよい(図6参照)。
【0096】
本発明のタイヤは、いわゆる乗用車用のみならず、トラック・バス用等の各種の乗物に好適に適用できる。
【0097】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これの実施例に何ら限定されるものではない。
【0098】
(参考例1〜6、実施例7及び比較例1〜10)
表1及び表2に示す組成の各ゴム組成物を押出機(押出条件:(V2 /V1 )=1.04)にて押出して調製し、該各ゴム組成物を加硫してトレッドを加硫ゴムにし、通常のタイヤ製造条件にて常法に従って185/70R14サイズの乗用車用スタッドレスタイヤ(空気入りタイヤ)を製造した。このタイヤにおいては、トレッドが加硫ゴムで形成されている。
【0099】
前記タイヤの構造は図4に示す通りである。即ち、一対のビード部1と、該一対のビード部1にトロイド状をなして連なるカーカス2と、該カーカス2のクラウン部をたが締めするベルト3と、トレッド5とを順次配置したラジアル構造を有する。
【0100】
タイヤ4において、カーカス2は、タイヤ周方向に対し90°の角度で配置され、コードの打ち込み数は、50本/5cmである。タイヤ4のトレッド5には、図4に示す通り、タイヤ幅方向に4個のブロック10が配列されている。ブロック10のサイズは、タイヤ周方向の寸法が35mmであり、タイヤ幅方向の寸法が30mmである。また、ブロック10に形成されているサイプ11は、幅が0.4mmであり、タイヤ周方向の間隔が約7mmになっている。
なお、タイヤ4のトレッド5には、長尺状気泡12が含まれており、その長手方向が実質的にタイヤ周方向(図3、図6及び図8中の矢印A方向、図5中のY方向)に配向されており、その周囲が長尺状樹脂による保護層14で補強されている。
【0101】
得られたタイヤ4のトレッドの発泡率は、以下のようにして求めた。即ち、各タイヤのトレッドからブロック状試料を切り出し、該ブロック状試料における密度ρ1 (g/m3 )を測定する。一方、無発泡ゴム(固相ゴム)の密度ρ0 を測定する。そして、式(4):発泡率=(ρ0 /ρ1 −1)×100(%)により算出した。
【0102】
各タイヤについて、以下のようにして氷上性能及び耐摩耗性について評価した。その結果を表1及び表2に示した。
<氷上性能>
各タイヤを国産2000CCクラスのFF車に装着し、該FF車を、平滑な乾燥路面(テストコース上)で慣らし走行(1000km)をさせた後、氷上(氷温−1℃)平坦路を走行させ、時速20km/hの時点でブレーキを踏んでタイヤをロックさせ、停止するまでの距離を測定した。結果は、距離の逆数を比較例1のタイヤの制動距離を100として指数表示した。なお、数値が大きいほど氷上性能が良いことを示す。
<耐摩耗性>
前記氷上性能の評価に用いたのと同様のタイヤ及び車輛にて、国内一般市街地を各々10000km走行させた時の残溝深さより求めた。
比較例1のタイヤの場合を100として指数表示した。即ち数値が大きい程、耐摩耗性が良いことを示す。
【0103】
【表1】
Figure 0004694659
【0104】
【表2】
Figure 0004694659
【0105】
なお、表1において、「DBP」及び「N2 SA」は、上述の通りである。シス−1,4−ポリブタジエンは、JSR社製、BR01である。「老化防止剤」は、N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミンである。「加硫促進剤」は、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−1−スルフェンアミドである。「発泡剤」は、ジニトロペンタメチレンテトラミン(永和化成工業(株)製、セルラーD)である。「発泡助剤」は、尿素(永和化成工業(株)製、セルペーストJ)である。
ポリエステルは、ユニチカ社製、ユニチカエステルである。ポリエチレン(HDPE、重量平均分子量(Mw)1.7×105 )は、Dupont社製DSCにより、昇温速度10℃/分、サンプル重量約5mgの条件にて測定した融点ピーク温度(融点)が135℃であった。
長尺状体に関し、「L:長さ」は平均長さ(μm)を意味し、「D:径」は平均径(μm)を意味する。
【0106】
なお、実施例7において、ゴム組成物の加硫時における加硫最高温度は、該ゴム組成物中に熱電対を埋め込んで測定したところ175℃であった。
実施例7における長尺状体は、通常の溶融紡糸法に従って製造された長尺状樹脂であり、軸に直交する方向の断面が円形である。実施例7では、前記長尺状樹脂の融点は、前記ゴム組成物の加硫時における加硫最高温度よりも低くなっている。実施例7では、前記ゴム組成物の加硫時において、前記ゴム組成物の温度が加硫最高温度に達するまでの間に、前記長尺状樹脂の粘度が、前記ゴムマトリックスの粘度よりも低くなった(図7参照)。
【0107】
表1〜2の結果から、以下のことが明らかである。即ち、
参考例1と比較例2との比較、あるいは参考例2と比較例4、比較例8及び比較例9との比較により、前記式(1)及び式(2)を満たすカーボンブラックを用いた本発明の方が、氷上性能及び耐摩耗性をバランスよく向上できることが明らかである(図9参照)。
また、参考例2と比較例5との比較により、長尺状体の(L/D)が3以上
ある本発明の方が、氷上性能及び耐摩耗性をバランスよく向上できることが明らかである(図9参照)。
また、参考例2と比較例6及び比較例10との比較により、長尺状体の含有量が本発明で規定する範囲内にあると、氷上性能及び耐摩耗性をバランスよく向上できることが明らかである(図9参照)。
また、参考例2と比較例7との比較により、カーボンブラックの含有量が本発明で規定する範囲内であると、氷上性能及び耐摩耗性をバランスよく向上できることが明らかである(図9参照)。
【0108】
【発明の効果】
本発明によると、前記従来における諸問題を解決することができる。また、本発明によると、乾燥路面での耐摩耗性を損なうことなく、氷面との間に生ずる水の除去能力に優れ、氷面との間の摩擦係数が大きく、氷雪路面での制動・駆動性能(氷上性能)を飛躍的に向上させたタイヤ、該タイヤのトレッド等の氷上でのスリップを抑えることが必要な構造物等に好適に使用できるタイヤ用の加硫ゴム、及び該タイヤ用の加硫ゴムの原料等として好適に使用できるタイヤ用のゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、(DBP)と(N2 SA)との関係を示すグラフにおいて、本発明で使用できるカーボンブラックの範囲を説明するための図である。
【図2】 図2は、長尺状樹脂の配向を揃える原理を説明する説明図である。
【図3】 図3は、本発明の加硫ゴムの断面概略説明図である。
【図4】 図4は、本発明のタイヤの一部断面概略説明図である。
【図5】 図5は、本発明のタイヤの周面の一部概略説明図である。
【図6】 図6は、本発明のタイヤのトレッドの一部断面概略説明図である。
【図7】 図7は、温度(加硫時間)とゴムマトリックスの粘度及び長尺状樹脂の粘度との関係を示したグラフである。
【図8】 図8は、本発明のタイヤの摩耗したトレッドの一部断面拡大概略説明図である。
【図9】 図9は、氷上性能及び耐摩耗性に関し、本発明のタイヤと比較例のタイヤとの比較データの図である。
【符号の説明】
1 一対のビード部
2 カーカス
3 ベルト
4 タイヤ
5 トレッド
6 キャップ部
7 ベース部
8 周方向溝
9 横溝
10 ブロック
11 サイプ
12 長尺状気泡
13 凹部
14 保護層
15 長尺状体
16 ゴムマトリックス
17 口金
18 球状の気泡
19 凹部

Claims (6)

  1. 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも1種のゴム成分と、発泡剤と、該ゴム成分100重量部に対し、少なくともカーボンブラック10重量部とを含むゴムマトリックスと、該ゴム成分100重量部に対し、平均長さ(L)と平均径(D)との比(L/D)が小さくとも3の、融点が加硫最高温度より10℃以上低いポリエチレンである長尺状樹脂を1〜20重量部とを含有してなり、
    該カーボンブラックが、式(1):(DAP)≧0.186×(N2 SB)+89、及び、式(2):(DAP)≧1000/(N2 SB)+100を満たすことを特徴とするタイヤ用のゴム組成物。
    (上記式(1)、(2)中、DAPは、ジブチルテレフタレート吸収量(ml/100g)を意味し、N2 SBは、窒素吸着比表面積(m/g)を意味する。)
  2. 前記長尺状樹脂が押出温度以下の温度で軟化する請求項1に記載のタイヤ用のゴム組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載のタイヤ用のゴム組成物を加硫して得られ、長尺状気泡を有することを特徴とするタイヤ用の加硫ゴム
  4. 平均発泡率が3〜40%である請求項に記載のタイヤ用の加硫ゴム
  5. 1対のビード部と、該ビード部にトロイド状をなして連なるカーカスと、該カーカスのクラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有してなり、少なくとも前記トレッドが、請求項3または請求項に記載のタイヤ用の加硫ゴムを含んでなることを特徴とするタイヤ。
  6. 長尺状気泡がタイヤ周方向に沿って配向された請求項に記載のタイヤ。
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