JP2008150519A - ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】独立気泡を有し、かつ(A)天然ゴム及びジエン系合成ゴムの中から選ばれる少なくとも一種のゴム成分と、その100質量部に対し、(B)下記一般式(I)
M・xSiO2・yH2O ………(I)
で表される平均粒径が50μm以下である無機化合物粉体を5〜60質量部、(C)下記一般式(II)
HOOC−CH=CH−COO−A−OOC−CH=CH−COOH・・・(II)
で表される化合物0.3〜7質量部含むと共に,(D)補強性充填剤を含むことを特徴とするゴム組成物。
【選択図】なし
Description
タイヤのトレッドに水膜除去能を持たせるには、タイヤの路面にミクロな排水溝(深さ、幅共に100μm程度)を多数設け、このミクロな排水溝により水膜を排除し、タイヤの氷雪路面上での摩擦係数を大きくする。しかし、この場合、タイヤの使用初期における氷上性能を向上させることはできるものの、タイヤの摩耗に伴い、徐々に氷上性能が低下してしまうという問題がある。そこで、タイヤが摩耗しても氷上性能が低下しないようにするため、ミクロな水膜除去効果を狙ってトレッド内に気泡を形成しておくことが考えられ、この気泡には球状のものに加えて有機繊維樹脂による筒状のものが考えられている。
また、上記の有機繊維についても微粒子を含有させ、より引っ掻き効果を加味させることにより氷雪路面上での摩擦係数を更に大きくすることが提案されている(例えば、特許文献1、及び特許文献2を参照)。
性能は大幅に改善されてきているが、耐摩耗性の観点から見ると未発泡のゴムに対して劣るということはどうしても免れることのできない大きな問題である。
近年、親水性の無機充填剤を加えることで氷上性能及びWET性能が向上することがわかってきたが、しかしこの手法においても耐摩耗性は低下する傾向にあり、問題点の完全な解決には至っていいない。
また、トレッドに用いられる充填剤成分としては、カーボン及びシリカが主に用いられ、上記WET性能の改良が可能な充填剤としてシリカが用いられている。しかしながら、シリカと高シスポリブタジエンを混合した場合、作業性が悪く、カーボンブラックのように組成物の力学的性能を高めことは難しいという問題がある。
シリカ配合ゴムの低燃費性を損なわずに操縦安定性を向上させる方法として、樹脂を添加する方法が知られているが(例えば特許文献3、特許文献4参照)、これらの樹脂とゴムとの相溶性は不十分であり、加硫ゴムの表面荒れが生じる等の問題を有している。
すなわち本発明は、
(1) 独立気泡を有し、かつ(A)天然ゴム及びジエン系合成ゴムの中から選ばれる少なくとも一種のゴム成分と、その100質量部に対し、(B)下記一般式(I)
M・xSiO2・yH2O ………(I)
〔式中のMは、Al、Mg、Ti、Caから選ばれる少なくとも一つの金属酸化物又は金属水酸化物であり、x,yは共に0〜10の整数である。〕
で表される平均粒径が50μm以下である無機化合物粉体を5〜60質量部、(C)下記一般式(II)
HOOC−CH=CH−COO−A−OOC−CH=CH−COOH・・・(II)
[式中、Aは−R1O−、−(R2O)s−、−CH2CH(OH)CH2O−又は−(R3OOC−R4−COO−)tR3O−で示される基であり、R1は炭素数2〜36の二価の炭化水素基、R2は炭素数2〜4のアルキレン基、sは平均付加モル数で1〜60の数、R3は炭素数2〜18の二価の炭化水素基又は−(R5O)uR5−(ただし、R5は炭素数2〜4のアルキレン基、uは平均付加モル数で1〜30の数を示す。)、R4は炭素数2〜18の二価の炭化水素基、tは平均値で1〜30の数である。]
で表される化合物0.3〜7質量部含むと共に,(D)補強性充填剤を含むことを特徴とするゴム組成物、
(2) (B)前記一般式(I)で表される無機化合物粉体が下記一般式(III)で表される無機化合物粉体である上記(1)のゴム組成物、
Al2O3・mSiO2・nH2O ………(III)
〔式中のmは1〜4の整数であり、nは0〜4の整数である。〕
(3) 前記(B)成分の粒度分布が、少なくとも2μm〜30μmの粒径成分を65%占める水酸化アルミニウム[Al(0H)3]を主成分とする粉体である上記(1)又は(2)のゴム組成物、
(4) (C)成分の一般式(II)で表される化合物が、ポリエチレングリコールジマレエート又はジフマレートである上記(1)〜(3)いずれかのゴム組成物、
(5) 前記(D)補強性充填剤がカーボンブラック及び/又はシリカからなる上記(1)〜(4)いずれかのゴム組成物、
(6) 前記(A)ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを5〜95質量部及びシリカを5〜95質量部含む上記(5)のゴム組成物、
(7) 前記(B)成分の無機化合物粉体と(D)補強性充填剤シリカの合計量に対して、シランカップリング剤を4〜15質量%の割合で含む上記(1)〜(6)いずれかのゴム組成物、
(8) 前記(A)ゴム成分100質量部に対して、さらに(E)微粒子含有有機繊維を0.02〜20質量部含む上記(1)〜(7)いずれかのゴム組成物、
(9) 前記(A)ゴム成分100質量部に対して、さらに(F)微粒子非含有有機繊維を含む上記(1)〜(8)いずれかのゴム組成物、
(10) 前記(E)微粒子含有有機繊維及び前記(F)微粒子非含有有機繊維の合計量として前記(A)ゴム成分の100質量部に対して、1〜20質量部含む上記(9)のゴム組成物、
(11) 前記(E)微粒子含有有機繊維と(F)微粒子非含有有機繊維の割合[(E)微粒子含有有機繊維/(F)微粒子非含有有機繊維]が、質量比で98/2〜2/98である上記(9)又は(10)のゴム組成物、
(12) 前記(E)微粒子含有有機繊維が、該有機繊維を構成する素材100質量部に対して、該微粒子を5〜90質量部含有する上記(1)〜(11)いずれかのゴム組成物、
(13) 前記(E)微粒子含有有機繊維が、微粒子としてモース硬度が2以上であり、粒径分布の頻度数の80質量%以上が10〜50μmであり、平均粒子径が10〜30μmであるものを含む上記(1)〜(12)いずれかのゴム組成物、
(14) 前記(E)微粒子含有有機繊維及び(F)微粒子非含有有機繊維に使用される繊維が、径0.01〜0.1mm、及び長さ0.5〜20mmである上記(1)〜(13)いずれかのゴム組成物、
(15) 前記(E)微粒子含有有機繊維の微粒子が、粒度分布のピーク値での頻度数が20質量%以上のものである上記(1)〜(14)いずれかのゴム組成物、
(16) 前記(E)微粒子含有有機繊維の微粒子が、アスペクト比1.1以上で、かつ角部が存在している上記(1)〜(15)いずれかのゴム組成物、
(17) 前記(E)微粒子含有有機繊維の微粒子が、無機微粒子及び有機微粒子から選択される上記(1)〜(18)いずれかのゴム組成物、
(18) 前記(E)微粒子含有有機繊維及び(F)微粒子非含有有機繊維を構成する素材がポリエチレン及び/又はポリプロピレンからなる結晶性高分子であり、かつ融点が190℃以下である上記(1)〜(17)いずれかのゴム組成物、
(19) 上記(1)〜(18)いずれかのゴム組成物をトレッド部の路面と実質的に接する面に用いたことを特徴とする空気入りタイヤ、及び
(20) 前記実質的に路面と接する部分のトレッドゴム層の発泡率が3〜50%である上記(19)の空気入りタイヤ、
を提供するものである。
上記独立気泡を有するゴム組成物は、路面と実質接する発泡層を有するトレッドゴムとして好ましく用いられる。前記発泡ゴム層は、その発泡率が3〜50%の範囲、より好ましくは15〜40%である。
前記発泡率を上記範囲にすることによって、耐摩耗性及びDRY性能を維持しトレッドにおける凹部の体積を確保することにより、優れた氷上性能を確保することができる。
なお、本発明のゴム組成物をタイヤのトレッド等に用いる場合には、前記ゴム成分としては、−60℃以下のガラス転移温度を有するものが好ましい。このようなガラス転移温度を有するゴム成分を用いると、該トレッド等は、低温域においても十分なゴム弾性を維持し、良好な前記氷上性能を示す点で有利である。
また、前記ジエン系合成ゴムとして分子中にスズ原子、窒素原子及び珪素原子を含む変性重合体を用いることができる。スズ原子又は窒素原子を導入した場合はカーボンブラックゴム組成物に、珪素原子を導入した場合はシリカなどの補強性無機充填剤において充填剤の分散性の改良や発熱を制御できるなどの点において好ましい。
M・xSiO2・yH2O・・・・・・(I)
[式(I)のMは、Al、Mg、Ti、及びCaから選択される金属酸化物又は金属水酸化物であり、x、及びyはそれぞれ異なっていてよい0〜10の整数である。]
で表される無機化合物粉体を含むことが必要である。
上記一般式(I)で表される無機化合物粉体は、x,yが共に0である場合には、Al、Mg、Ti、Caから選ばれる少なくとも一つの金属酸化物又は金属水酸化物となる。(B)成分は平均粒径が50μm以下である少なくとも1つの無機化合物である。
上記一般式(I)で表される無機化合物の具体例としては、アルミナ(Al2O3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、酸化マグネシウム(MgO2)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)等が挙げられる。なお、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO3)も本発明の無機化合物と同等の効果を発揮するものとなる。
Al2O3・mSiO2・nH2O ・・・・・・(III)
式(III)中のmは1〜4の整数であり、nは0〜4の整数である。
上記一般式(III)で表される無機化合物の具体例としては、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)等が挙げられる。また、本発明で用いる水酸化アルミニウムは、アルミナ水和物も含むものである。
本発明で用いる好ましい(B)成分としては、クレー(Al2O3・2SiO2)、水酸化アルミニウム〔Al(OH)3〕、アルミナ(Al2O3)である。また、本発明で用いる上記特性を有する(B)成分は、単独で又は2以上を混合して用いることができる。中でも水酸化アルミニウム〔Al(OH)3〕が特に好ましい。
なお、上記の条件を満足しない無機化合物粉体、例えば、Al、Mg、Ti、Caから選ばれる硫化物、硫酸塩及び炭酸塩等の他の構造のものはウェットスキッド性能向上に効果がない。
HOOC−CH=CH−COO−A−OOC−CH=CH−COOH・・・(II)
で表される化合物、すなわち多価アルコールのマレイン酸又はフマル酸エステルが用いられる。
一般式(II)において、Aは−R1O−、−(R2O)s−、−CH2CH(OH)CH2O−又は−(R3OOC−R4−COO−)tR3O−で示される基である。ここで、R1は炭素数2〜36の二価の炭化水素基を示す。この二価の炭化水素基としては、炭素数2〜36のアルキレン基若しくはアルケニレン基又は炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましくは炭素数2〜18のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数4〜12のアルキレン基である。またR2は炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数であり、好ましくは2〜40、さらに好ましくは4〜30の数である。R3は炭素数2〜18の二価の炭化水素基を示す。この二価の炭化水素基としては、炭素数2〜18のアルキレン基若しくはアルケニレン基、炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基又は−(R5O)uR5−である(R5は炭素数2〜4のアルキレン基、uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、好ましくは1〜20、さらに好ましくは2〜15の数である)。R4は炭素数2〜18の二価の炭化水素基を示す。この二価の炭化水素基としては、炭素数2〜18のアルキレン基若しくはアルケニレン基又は炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましくは炭素数2〜12のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基である。tは平均値で1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15の数である。
これらの中で、性能及び経済性の面で、ポリエチレングリコールジマレエート又はジフマレートが好ましく、特にポリエチレングリコールジマレエートが好ましい。
当該(C)成分の分子量は250以上であることが好ましく、さらには250〜5000の範囲であること、特には250〜3000の範囲であることが好ましい。この範囲であると引火点が高く、安全上望ましいばかりでなく、発煙が少なく作業環境上も好ましい。
本発明においては、当該(C)成分は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、(A)成分であるゴム成分100質量部に対して、0.3〜7質量部の範囲で選定される。当該(C)成分の配合量が上記範囲にあれば、得られる空気入りタイヤは転がり抵抗性能を保持すると共に、組成物が硬くなることによってドライ操縦安定性を向上させることができる。当該(C)成分の好ましい配合量は0.5〜5質量部である。
上記ゴム層においてカーボンブラックの含有量は(A)ゴム成分100質量部に対して5〜95質量部、好ましくは10〜60質量部である。
カーボンブラックの含まれる量を上記範囲にすることにより耐摩耗性を維持し、優れたWET性能を得ることができる。
上記ゴム層においてシリカの含有量は(A)ゴム成分の100質量部に対して5〜95質量部、好ましくは15〜80質量部である。シリカの含有量を上記範囲とすることにより、優れた氷上性能およびWET性能を得ることができる。
尚、カーボンブラック及びシリカを合わせた合計の配合量は(A)成分100質量部に対して、40〜80質量部、また、カーボンブラックとシリカの混合比[カーボンブラック]/[シリカ]は質量比で0.04〜6.0であることが好ましい。
特に、WET性能を重視した場合にはシリカの配合比率を増すことが好ましい。
本発明において、該シランカップリング剤の配合量は、前記(B)成分の無機化合物粉体と前記シリカの合計量に対して、4〜15質量%の割合で添加することが好ましい。
上記(E)成分を上記ゴムの発泡層に含ませて用いると、タイヤ面における除水及び摩擦の増大に効果を発揮し、氷上性能を高める。また、後述するように(E)成分に使用する微粒子に比較的硬度がある材料を使用した場合、含有させる有機繊維径との関係などから押出時に加硫ゴム及び成形物の表面に影響を与え、また、そのような原因と共に工場での作業性の低下を招く。そこで、(E)成分と一緒に(F)成分として微粒子を含有しない微粒子非含有有機繊維を所定の割合で上記ゴム層に含ませることが好ましい。
このような割合としては、(F)成分の微粒子非含有有機繊維/(E)成分の微粒子含有有機繊維の含まれる割合は、質量比で98/2〜2/98の範囲、特に、95/5〜5/95の範囲にすることが好ましい。その中で(E)成分の量は、(A)ゴム成分100質量部に対して、0.02〜20質量部含むことが好ましい。より好ましくは0.1〜15質量部である。
これらの合計量を上記範囲にすることによって押出し作業性を改良して肌荒れをなくし、繊維を配合する効果が充分得られ、タイヤのトレッドにあっては、クラックの発生を抑えエッヂ効果あるいはスパイク効果、それに対応する氷上性能の十分な向上が認められる。
(E)成分及び(F)成分に使用される有機繊維の材質は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。しかしながら、上述したように、(A)ゴム成分との関係から加硫時に加硫最高温度に達するまでの間に、(A)ゴム成分のゴムマトリックスの粘度よりも低くなる粘度特性を有する繊維を構成する樹脂を用いることが本発明においては好ましい。即ち、上記有機繊維を構成する樹脂としては、ゴム組成物が加硫最高温度に達するまでの間に溶融(軟化を含む)する熱特性を有していることが好ましい。
尚、加硫最高温度とは、ゴム組成物の加硫時におけるゴム組成物が達する最高温度を意味する。例えば、モールド加硫の場合には、ゴム組成物がモールド内に入ってからモールドを出て冷却されるまでに該ゴム組成物が達する最高温度を意味する。加硫最高温度は、例えば、ゴム組成物中に熱電対を埋め込むこと等により測定することができる。また、ゴムマトリックスの粘度は、流動粘度を意味し、例えば、コーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用いて測定する。また、上記有機繊維を構成する樹脂の粘度は、溶融粘度を意味し、例えば、コーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用いて測定する。
従って、本発明で選択される好ましい樹脂は、例えば、その融点が上記加硫最高温度よりも低い結晶性高分子樹脂などが特に好適に挙げられる。
これに対して、有機繊維を構成する樹脂の融点が、ゴム組成物の加硫最高温度に近い場合、加硫初期に速やかに溶融せず、加硫末期に溶融する。加硫末期では、ゴム組成物中に存在するガスの一部は加硫したゴムマトリックス中に取り込まれてしまい、溶融した樹脂の内部には集まらない。その結果、上記ミクロな排水溝として効果的機能する長尺状気泡が、効率良く形成されず、また、有機繊維の樹脂融点が低過ぎる場合、有機繊維をゴム組成物中に配合し混練りする際に有機繊維同士の融着が発生し、有機繊維の分散不良が生じる。これもまた、ミクロな排水溝して機能し得る長尺状気泡が効率良く形成されない。したがって、有機繊維の樹脂の融点は、加硫前の各工程における温度では溶融軟化せず、加硫工程中にゴムマトリックスと樹脂との粘度とが逆転するような範囲で選択するのが好ましい。
なお、上記樹脂の融点は、それ自体公知の融点測定装置等を用いて測定することができ、例えば、DSC測定装置を用いて測定した融解ピーク温度を上記融点とすることができる。
このような結晶性高分子の具体例としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、シンジオタクティック−1,2−ポリブタジエン(SPB)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の単一組成重合物や、共重合、ブレンド等により融点を適当な範囲に制御したものも使用でき、更にこれらの樹脂に添加剤を加えたものも使用できる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの結晶性高分子の中でも、ポリオレフィン、ポリオレフィン共重合体が好ましく、汎用で入手し易い点でポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)がより好ましく、融点が比較的低く、取扱いが容易な点でポリエチレン(PE)が特に好ましい。
尚、非結晶性高分子の樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリロニトリル、これらの共重合体、これらのブレンド物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記発泡ゴム層を形成する際の加硫ゴム中に、このような長さで有機繊維が存在すれば、エッヂ効果及びスパイク効果が有効に作用すると共に、後述の発泡剤等を含めるとミクロな排水溝として効率良く機能し得る長尺状気泡を十分に形成することも可能となる。上記有機繊維長が0.5mm未満では、上記効果を十分に発揮できない。
また、上記有機繊維長が20mmを超えると、有機繊維同士が絡まり、その分散性が低下する傾向にある。
また、上記有機繊維において、その繊維の径が0.01〜0.1mmの範囲、特に、0.015〜0.09mmの範囲が好ましい。上記有機繊維は、その径が0.01mm未満では切断が生じ易いため、上記エッヂ効果或いはスパイク効果を十分に発揮できない。また、上記の径が0.1mmを超える場合には、加工性に問題が生じてくる。
このような硬度の高い微粒子としては、例えば、石膏、方解石、蛍石、正長石、石英、金剛石等が挙げられるが、好ましくは、モース硬度5以上のシリカガラス(硬度6.5)、石英(硬度7.0)、溶融アルミナ(硬度9.0)等を挙げることができる。中でもシリカガラス、アルミナ(酸化アルミニウム)等が安価で容易に使用することができる。
上記頻度数における粒径が10μmを下回ってくると、(E)成分を製造する際に、粒子同士が凝集し易くなるものが見られ、その分散性が低下する傾向にある。また、このような繊維を用いたタイヤにあっては、十分な引き掻き効果、或いはエッヂ効果、スパイク効果を発揮することができない。一方、上記粒径が50μmを超えると、(E)成分の製造時に繊維切れ等の問題が頻発し、所望する(E)成分が効率良く得られない。
上記微粒子のピーク値での頻度数が20質量%以上であれば、微粒子の粒度分布曲線がシャープとなり、粒径が均一となる。このため、上記(E)成分の紡糸に際して切れなどが発生し難い良好な繊維が得られると共に、かかる繊維をタイヤに使用した場合には氷上性能性が安定してくる。また、上述した上記範囲内の粒径の大きさでは、その粒径が大きいほどタイヤの氷上性能が向上する。
尚、ここで、頻度数とは全体の粒子質量に対する粒度分布(粒度分布曲線)における粒子粒径を2μmの刻み幅で区分したときのその区分幅での存在粒子の質量率をいい、ピーク値での頻度数とは、粒度分布曲線における上記刻み幅に最大ピーク値を含んでいる区分幅における頻度数を言う。
本発明の微粒子には最初から角部を有する微粒子も使用できるが、微粒子が球形状であっても粉砕することにより、微粒子表面に角部を存在させて使用することができると共に、より多くの角部を存在させることができる。
上記微粒子成分は、上記(E)微粒子含有有機繊維の該有機繊維を構成する素材100質量部に対して5〜90質量部、特に、7〜50質量部の範囲で含有されることが好ましい。
本発明においては、加流後に気泡を形成させるために、上記発泡ゴム層の成形前の加硫ゴム中に発泡剤を配合する。発泡剤及び上記繊維を用いることにより、加硫ゴム或いはトレッドとなる上記発泡ゴム層は、長尺状気泡を有してミクロな排水溝を形成して水膜除去能が付与される。
上記発泡剤の含有量としては、目的に応じて適宜決定すればよいが、一般にはゴム成分100質量部に対して1〜10質量部程度が好ましい。上記発泡剤はゴムマトリックス中に配合しても良く、また各有機繊維中に配合しても良い。
図1は本発明に係るタイヤの断面概略説明図である。図2は(a)及び(b)は本発明に係るタイヤのトレッド部の周方向及び幅方向に沿う各断面概略図である。図3は、微粒子含有有機繊維を一定の方向に配向させる原理を説明する説明図である。
例えば、図1に示すように、一対のビード部1と、該一対のビード部1にトロイド状をなして連なるカーカス2と、該カーカス2のクラウン部をたが締めするベルト3と、キャップ部6とベース部7の二層から成るトレッド5とを順次配置したラジアル構造を有する。なお、トレッド5以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と変わりないので説明は省略する。
混練は、混練装置への投入体積、ローター回転速度、混練温度、混練時間等の混練装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。混練装置としては、市販品を好適に使用することができる。
熱入れ又は押出は、熱入れ又は押出時間、熱入れ又は押出装置等の諸条件について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。熱入れ又は押出装置としては、市販品を好適に使用することができる。尚、熱入れ又は押出温度は、発泡剤が存在する場合はその発泡を起こさないような範囲で適宜選択される。押出温度は、90〜110℃程度が望ましい
上記発泡ゴム層において各有機繊維を揃わせて配向する方法としては、例えば、図3に示すように、微粒子含有有機繊維15を含むゴム組成物16を、流路断面積が出口に向かって減少する押出機の口金17から押し出すことにより、微粒子含有有機繊維15等を一定の方向に配向させればよい。なお、この場合、押し出される前のゴム組成物16中の微粒子含有有機繊維15等は、口金17へ押し出されていく過程でその長手方向が押出方向(矢印P方向)に沿って徐々に揃うようになり、口金17から押し出されるときには、その長手方向が押出方向(矢印A方向)にほぼ完全に配向させることができる。この場合における微粒子含有有機繊維15等のゴム組成物16中での配向の程度は、流路断面積の減少程度、押出速度、加硫前のゴム組成物16の粘度等によって変化させる。
尚、上記実施形態においては二層構造を持つトレッドを例にして説明したが、トレッドの構造は特に制限はなく一層構造でも良い。更にタイヤ半径方向に分割された多層構造、タイヤ周方向或いはトレッド幅方向に分割された構造でも良く、トレッドの表面層の少なくとも一部が本発明のゴム組成物により構成されていることが好ましい。
第1表に示す各配合内容に基づいて常法により、各実施例及び比較例のゴム組成物を製造した。
各ゴム組成物の加硫時における加硫温度は、ゴム組成物中に熱電対を埋め込んで測定しながら行った。加硫最高温度に達するまでに、各有機繊維樹脂の融点を超え、上記ゴム組成物の加硫時において、上記樹脂粘度はゴムマトリックス粘度より低くなった。なお、各有機繊維樹脂の上記加硫最高温度における粘度(溶融粘度)は、コーンレオメーターを用いて測定(ゴムのトルクがMaxをむかえたら終了とし、トルクをゴム粘度として、トルクの変化と発泡圧力の変化を測定)したところ、6であった。一方、上記ゴム組成物の上記加硫最高温度における粘度(流動粘度)は、モンサント社製コーンレオメーター型式1−C型を使用し、温度を変化させながら100サイクル/分の一定振幅入力を与えて経時的にトルクを測定し、その際の最小トルク値を粘度としたところ(ドーム圧力0.59MPa、ホールディング圧力0.78MPa、クロージング圧力0.78MPa、振り角±5°)、11であった。
得られた各ゴム組成物をトレッド(発泡ゴム層)に用い常法によって試験用の乗用車用ラジアルタイヤ、タイヤサイズ185/70R15を製造した。
<氷上性能>
前記試験用のタイヤ(タイヤサイズ185/70R15)を国産1600CCクラスの乗用車に4本を装着し、氷温−1℃の氷上制動性能確認した。比較例1のタイヤをコントロールタイヤとして、氷上性能=(コントロールタイヤの制動距離/その他の例の制動距離)×100とした。数値の大きい方が氷上性能が優れていることを示す。評価結果を第1表に示す。
<WET性能>
湿潤アスファルト路面にて、初速度40、60、80km/hrからの制動距離を測定し、比較例1のタイヤをコントロールタイヤとし、各速度でコントロールタイヤを100とし、他の値については、比較例1の制動距離÷供試タイヤの制動距離×100にて指数を求め、その三水準の平均値にて指数表示した。従って、数値が大なる程良好である。評価結果を第1表に示す。
乾燥路面での操縦安定性をテストドライバーによるフィーリングにより5点法により評価した。数値が大きくなるほど旋回安定性に優れていることを示す。
<耐摩耗性能>
実車にて舗装路面を1万km走行後、残溝を測定し、トレッドが1mm摩耗するのに要する走行距離を相対比較し、比較例1を100(8000km/mmに相当)として指数表示した。指数が大きい程、耐摩耗性が良好なことを示す。評価結果を第1表に示す。
*1.シス−1,4−ポリブタジエンゴム:(商品名;UBEPOL 150L:宇部興産社製)
*2.カーボンブラック:[N134(N2SA:146m2/g)]:旭カーボン社製)
*3.シリカ:(Nipsil AQ:東・ソーシリカ社製)
*4.無機化合物粉体:水酸化アルミニウム「ハイジライトH−31」昭和電工社製、
平均粒径20μm、2μm〜30μmの粒径成分の占める割合(68%)
*5.無機化合物粉体:水酸化アルミニウム「ハイジライトH−31」昭和電工社製、平均粒径8μm、2μm〜30μmの粒径成分の占める割合(93%)
*6.シランカップリング剤:「Si69」デグッサ社製
*7.PEGM:両末端カルボン酸型の平均重合度4.5のポリエチレングリコール/マレイン酸ポリエステル(ポリエステル部分の重合度5)花王社製
*8.有機繊維:繊維を構成する樹脂(ポリエチレン融点132℃)、繊維平均直径32μm、繊維平均長さ2mm
*9.微粒子含有有機繊維:繊維を構成する樹脂(ポリエチレン融点132℃)、微粒子含有量15質量部、微粒子平均粒径20μm、繊維平均直径32μm、繊維平均長さ2mm
*10.BOLAX TZ:四ホウ酸ナトリウム・10水和物
*11.スーパーオイル Y22:新日本石油工業株式会社製
*12.発泡剤:(DNPT:ジニトロソペンタメチレンテトラミン)
*13.老化防止剤:(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
*14.加硫促進剤:(CBS:N−シクロヘキシル−2−スルフェンアミド)
*15.加硫促進剤:(MBTS:ジベンゾチアジルジスルフィド)
実施例比較例を通して、平均粒径の大きい無機化合物粉体の配合量を増すに従って氷上性能が向上していることがわかる。但し配合量の多い比較例4は耐摩耗性が低下する。同様に無機化合物粉体の配合によってWET性能も向上する。
また、多価アルコールのマレイン酸エステル(PEGM)を所定量配合した本発明のゴム組成物の操縦安定性能は3以上と満足するレベルである。
2 カーカス
3 ベルト
4 タイヤ
5 トレッド
6 キャップ部
6A 加硫ゴム
7 ベース部
12 長尺状気泡
13 凹部
14 保護層
15 微粒子含有有機繊維
16 ゴム組成物
17 口金
18 球状気泡
19 球状気泡の凹部
20 微粒子
P 押出方向
Claims (20)
- 独立気泡を有し、かつ(A)天然ゴム及びジエン系合成ゴムの中から選ばれる少なくとも一種のゴム成分と、その100質量部に対し、(B)下記一般式(I)
M・xSiO2・yH2O ………(I)
〔式中のMは、Al、Mg、Ti、Caから選ばれる少なくとも一つの金属酸化物又は金属水酸化物であり、x,yは共に0〜10の整数である。〕
で表される平均粒径が50μm以下である無機化合物粉体を5〜60質量部、(C)下記一般式(II)
HOOC−CH=CH−COO−A−OOC−CH=CH−COOH・・・(II)
[式中、Aは−R1O−、−(R2O)s−、−CH2CH(OH)CH2O−又は−(R3OOC−R4−COO−)tR3O−で示される基であり、R1は炭素数2〜36の二価の炭化水素基、R2は炭素数2〜4のアルキレン基、sは平均付加モル数で1〜60の数、R3は炭素数2〜18の二価の炭化水素基又は−(R5O)uR5−(ただし、R5は炭素数2〜4のアルキレン基、uは平均付加モル数で1〜30の数を示す。)、R4は炭素数2〜18の二価の炭化水素基、tは平均値で1〜30の数である。]
で表される化合物0.3〜7質量部含むと共に、(D)補強性充填剤を含むことを特徴とするゴム組成物。 - (B)前記一般式(I)で表される無機化合物粉体が下記一般式(III)で表される無機化合物粉体である請求項1記載のゴム組成物。
Al2O3・mSiO2・nH2O ………(III)
〔式中のmは1〜4の整数であり、nは0〜4の整数である。〕 - 前記(B)成分の粒度分布が、少なくとも2μm〜30μmの粒径成分を65%占める水酸化アルミニウム[Al(0H)3]を主成分とする粉体である請求項1又は2記載のゴム組成物。
- (C)成分の一般式(II)で表される化合物が、ポリエチレングリコールジマレエート又はジフマレートである請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記(D)補強性充填剤がカーボンブラック及び/又はシリカからなる請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記(A)ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを5〜95質量部及びシリカを5〜95質量部含む請求項5に記載のゴム組成物。
- 前記(B)成分の無機化合物粉体と(D)補強性充填剤シリカの合計量に対して、シランカップリング剤を4〜15質量%の割合で含む請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記(A)ゴム成分100質量部に対して、さらに(E)微粒子含有有機繊維を0.02〜20質量部含む請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記(A)ゴム成分100質量部に対して、さらに(F)微粒子非含有有機繊維を含む請求項1〜8のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記(E)微粒子含有有機繊維及び前記(F)微粒子非含有有機繊維の合計量として前記(A)ゴム成分の100質量部に対して、1〜20質量部含む請求項9に記載のゴム組成物。
- 前記(E)微粒子含有有機繊維と(F)微粒子非含有有機繊維の割合[(E)微粒子含有有機繊維/(F)微粒子非含有有機繊維]が、質量比で98/2〜2/98である請求項9又は10に記載のゴム組成物。
- 前記(E)微粒子含有有機繊維が、該有機繊維を構成する素材100質量部に対して、該微粒子を5〜90質量部含有する請求項1〜11のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記(E)微粒子含有有機繊維が、微粒子としてモース硬度が2以上であり、粒径分布の頻度数の80質量%以上が10〜50μmであり、平均粒子径が10〜30μmであるものを含む請求項1〜12のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記(E)微粒子含有有機繊維及び(F)微粒子非含有有機繊維に使用される繊維が、径0.01〜0.1mm、及び長さ0.5〜20mmである請求項1〜13のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記(E)微粒子含有有機繊維の微粒子が、粒度分布のピーク値での頻度数が20質量%以上のものである請求項1〜14のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記(E)微粒子含有有機繊維の微粒子が、アスペクト比1.1以上で、かつ角部が存在している請求項1〜15のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記(E)微粒子含有有機繊維の微粒子が、無機微粒子及び有機微粒子から選択される請求項1〜18のいずれかに記載のゴム組成物。
- 前記(E)微粒子含有有機繊維及び(F)微粒子非含有有機繊維を構成する素材がポリエチレン及び/又はポリプロピレンからなる結晶性高分子であり、かつ融点が190℃以下である請求項1〜17のいずれかに記載のゴム組成物。
- 請求項1〜18いずれかに記載のゴム組成物をトレッド部の路面と実質的に接する面に用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
- 前記実質的に路面と接する部分のトレッドゴム層の発泡率が3〜50%である請求項19に記載の空気入りタイヤ。
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