JP2004339453A - タイヤ用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】耐摩耗性を低下させることなく、氷上路面の引っ掻き効果を向上しアイス性能を大幅に向上するタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム成分100重量部に対して、化学式 K2 O・Al2 O3 ・6SiO2 で表される無機化合物を主成分として含むモース硬度が6以上で、平均粒径が10〜500μmである粒状体を2〜20重量部含有してなり、好ましくは前記粒状体がアルカリ長石からなるタイヤ用ゴム組成物及びそれを用いたスタッドレスタイヤ。
【選択図】 なし
【解決手段】ジエン系ゴム成分100重量部に対して、化学式 K2 O・Al2 O3 ・6SiO2 で表される無機化合物を主成分として含むモース硬度が6以上で、平均粒径が10〜500μmである粒状体を2〜20重量部含有してなり、好ましくは前記粒状体がアルカリ長石からなるタイヤ用ゴム組成物及びそれを用いたスタッドレスタイヤ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物に関し、耐摩耗性を低下することなくアイス性能を向上させたスタッドレスタイヤに好適なタイヤ用ゴム組成物及びそれをトレッド部に用いたスタッドレスタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
氷雪路において使用される空気入りタイヤは、道路の損傷や粉塵の問題からスパイクタイヤに代わりスタッドレスタイヤが使用されるようになり、氷上路面での駆動、制動性能や操縦安定性を向上し安全性を確保するためのスタッドレスタイヤ用ゴム組成物の検討が多くなされている。
【0003】
この氷上路面での摩擦力を向上するゴム組成物の改良としては、例えば、ガラス転移温度の低いブタジエンゴムの使用や軟化剤の配合により低温でも低硬度を維持しヒステリシス摩擦を向上する手法を始めとして、充填剤のカーボンブラックの一部をシリカに置換し低温での低モジュラスを維持し粘着摩擦を向上する手法等があり、中でもスタッドレスタイヤと関連の大きい掘り起こし摩擦(引っ掻き効果)を向上する手法として、トレッドに発泡ゴムを使用しトレッド接地部の微小凹凸を増加するもの、有機高分子物質や無機物質等の硬質粒状体や金属粉の配合、植物の粉砕物を配合するもの(例えば、特許文献1)、中空粒状体を配合するもの(例えば、特許文献2)など種々の手法が提案されている。
【0004】
また、低発熱性を維持しながらウェットスキッド性能を向上させるタイヤトレッド用ゴム組成物として、一般式M・xSiO2 ・yH2 Oで表される水酸化アルミニウムなどの無機化合物粉体を配合するものが提案されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−7841号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平11−35736号公報
【0007】
【特許文献3】
特開平7−149950号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
摩擦係数の小さい氷上路面においてアイス性能を向上するには、上記の粘着摩擦や掘り起こし摩擦の効果が特に重要となるが、シリカを多量配合したゴム組成物はアイス性能は向上するがカーボンブラックに比べて補強性が低下するため耐摩耗性が悪化し、また混合性や導電性の低下にも問題があり、発泡ゴムの使用や硬質物質の粒状体等を配合するものはアイス性能を向上することはできるが乾燥路面において耐摩耗性や操縦安定性が低下するという問題点があり、中空粒子を配合するものは混合中に粒子が破壊されてしまう欠点がある。また、特許文献3に記載のゴム組成物は、耐摩耗性を低下させることなくウェットスキッド性能を向上するが、無機化合物の粒径が10μm以下であるためアイス性能を向上するには不十分であり、いずれの手法においても耐摩耗性を維持した上でスタッドレスタイヤのアイス性能を大幅に向上するには到らず、従来のスパイクタイヤの性能には未だ及んでいない。
【0009】
本発明は、スタッドレスタイヤの耐摩耗性を低下させることなく、トレッドゴムの引っ掻き効果による掘り起こし摩擦を向上しアイス性能を大幅に向上するタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、スタッドレスタイヤのアイス性能をさらに向上させるために、氷上路面における掘り起こし摩擦力の向上について鋭意検討した結果、特定の無機化合物の粒状体を特定量配合すれば、耐摩耗性を低下させることなく氷面に対する引っ掻き効果を画期的に発揮するとの知見を得て本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、化学式 K2 O・Al2 O3 ・6SiO2 で表される無機化合物を主成分として含むモース硬度が6以上で、平均粒径が10〜500μmである粒状体を2〜20重量部含有してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物である。
【0012】
本発明のタイヤ用ゴム組成物によれば、ゴム組成物中に含まれる氷よりも硬い無機化合物を主体とする粒状体がゴム表面に突出して微細な凹凸を形成し、氷上路面を引っ掻いてミクロスパイク効果を発現し氷面との摩擦力を得ることでアイス性能を向上し、粒状体の平均粒径を500μm未満、その配合量を20重量部未満とすることで、ゴム中への分散性や加工性を良好に維持し、かつ耐摩耗性の低下を実用範囲内に抑え、スタッドレスタイヤのアイス性能と耐摩耗性を両立させることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記粒状体がアルカリ長石からなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物である。
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物によれば、アルカリ長石はモース硬度が約6〜6.5であり氷面の引っ掻き効果が大きく、かつアスファルト路面を傷つけることがなく、しかも広範囲の岩石に含まれる天然の鉱物資源であってタイヤトレッド等のゴム組成物として使用しても環境や健康に悪影響を及ぼすことがなく、また入手が容易で比較的安価でありゴム組成物のコスト低減を図ることもできる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いたことを特徴とするスタッドレスタイヤである。
【0016】
本発明のスタッドレスタイヤでは、耐摩耗性を低下させることなく、操縦安定性や転がり抵抗などのタイヤ特性を維持してアイス性能を向上することができ、さらに道路を損傷したり、アスファルトの粉塵を発生させることがなく、環境問題に対応することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のタイヤ用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤを以下の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、化学式 K2 O・Al2 O3 ・6SiO2 で表される無機化合物を主成分として含むモース硬度が6以上で、平均粒径が10〜500μmである粒状体を2〜20重量部含有してなる。
【0019】
本発明に使用されるゴム成分としては、天然ゴム(NR)とジエン系合成ゴムの各種ブタジエンゴム(BR)、各種スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)等が挙げられ、それらの単独或いは2種類以上のブレンドを使用することができる。その中でも、スタッドレスタイヤに要求される低温特性と耐摩耗性、操縦安定性等を両立させて向上させるために、ガラス転移温度が−50℃以下のゴムが好ましく、ブレンドして使用する場合はそのガラス転移温度の平均値が−55℃以下であることが好ましい。
【0020】
本発明においてゴム成分をブレンドで使用する場合、例えば、天然ゴムとブタジエンゴムとのブレンドで用いる場合は、ブタジエンゴムの比率が少なすぎるとゴム組成物の低温特性が得難くなり、逆に多くなりすぎると加工性の悪化や耐引き裂き抵抗性が低下する傾向になるので、天然ゴム/ブタジエンゴムの比率は30/70〜80/20、さらには40/60〜70/30程度であることが好ましい。
【0021】
本発明に使用される化学式 K2 O・Al2 O3 ・6SiO2 で表される無機化合物は、広い範囲の岩石、例えば火成岩、変性岩、堆積岩などに含まれ、地殻表層部の多くを占める天然資源として得られる長石が挙げられる。
【0022】
長石は、上記化学式で表されるカリ長石を主要成分として、化学式 Na2 O・Al2 O3 ・6SiO2 で表されるソーダ長石や化学式 CaO・Al2 O3 ・2SiO2 で表される灰長石を主体として含む固溶体であって、その構成によりアルカリ長石、斜長石などに分類されるものである。
【0023】
この長石はモース硬度が約6〜6.5であるので、氷(モース硬度=約2)より硬く、アスファルトの骨材(モース硬度=約8)より軟らかいため、ゴム中に配合された長石の粒状体がゴム表面に突出して微細な凹凸を形成し、粒状体の突起が氷面を引っ掻いてミクロスパイク効果を発現して氷上路面での摩擦力を高めてスタッドレスタイヤのアイス性能を向上し、また乾燥路面のアスファルトに対しては路面を傷つけたり、削り取ることがなく、従来のスパイクタイヤのような路面損傷やアスファルト粉塵の問題を発生することがない。
【0024】
本発明に用いられる長石は、カリ長石とソーダ長石(アルバイト)の2成分を主体とした固溶体である 化学式 KAlSi3 O8 −NaAlSi3 O8 で表されるアルカリ長石が好ましく、このアルカリ長石は広範囲の岩石に含まれる天然の鉱物原料として産出されるため、安定した供給が可能であり、コストが安価であることからゴム組成物のコスト低減も可能となる。また、天然資源であることから、タイヤトレッドの摩耗によりゴム組成物から脱落、飛散しても環境や健康に悪影響を及ぼすことがない。
【0025】
この天然の長石は、例えば、滋賀県、三重県、長野県、新潟県などの国内産、インド、中国、アメリカ、カナダ、ロシアなど各国の広い範囲で産出されるものが使用でき、アルカリ長石の一例である「大平長石」はSiO2 が約70重量%、Al2 O3 が約18重量%、K2 Oが約9重量%、Na2 Oが約3重量%、1重量部%未満のCaOと微量のFe2 O3 、MgO、P、Mn等の不可避的不純物を含んで構成される結晶体を形成したものである。
【0026】
本発明に使用される粒状体は、この天然に産出される長石、特にアルカリ長石を公知の粉砕機(例えば、ボールミル)を用いて微粒状に粉砕し、所定の粒径範囲に選別し分級したものである。
【0027】
上記粒状体の平均粒径は、10〜500μmであることが好ましく、10μm未満であるとゴム表面への突出部が細かすぎて氷面に対して突き刺すような摩擦作用が得られず引っ掻き効果による摩擦力が十分でなく、好ましくは平均粒径が15μm以上であり、さらには20μm以上であることがより好ましい。
【0028】
粒状体の平均粒径が大きくなると氷面への引っ掻き効果は増大するが、ゴム中への分散性や加工性の低下、ゴムの破壊特性の低下により耐摩耗性の悪化を来し、また物理的結合のみによってゴムと接着している粒状体のゴム表面への突出部が大きくなって路面との摩擦により粒状体が早期に脱落しやすくなるためその上限は500μm程度とするのが好ましい。
【0029】
本発明のゴム組成物においては、粒状体の配合量は、ゴム成分100重量部に対して2〜20重量部であって、2重量部未満ではゴム表面に突出する凹凸形成が少なく氷面への引っ掻き効果が十分でなく、20重量部を越えるとゴムの加工性が悪化すると共にゴムの破壊特性が低下し耐摩耗性の悪化が大きくなり、また増量による引っ掻き効果の向上も限界となる。
【0030】
なお、上記粒状体は、天然に産出する長石をボールミル等の粉砕機を用い粉砕条件を調整し粉砕した後、所定の粒度分布のふるいを用いてふるい分けし所定の粒径に選別したものが使用できる。ふるいは、例えばJIS Z8801に記載の標準ふるいによって所定の粒径にふるい分けすることができる。
【0031】
この長石の粒状体は、ゴムと化学的接着性を有さないことから、粒状体表面に接着剤の表面処理加工を施したり、ゴム組成物中に接着剤を配合することで両者の化学的結合を得て、粒状体の早期脱落を防止することもできる。この表面処理用接着剤としてはレゾルシンホルマリンラテックス(RFL処理)、配合接着剤としてはビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどの一般的なシランカップリング剤(例えば、デグサ社製、Si69)、フェノール−ホルムアルデヒド−レゾルシンからなる共縮合樹脂(例えば、住友化学(株)製、スミカノール620)やヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物(例えば、住友化学(株)製、スミカノール507)などが例示される。
【0032】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上記ゴム成分、長石の粒状体に加え、通常のゴム工業で使用されているカーボンブラックやシリカなどの補強剤や充填剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、可塑剤、老化防止剤(アミン−ケトン系、芳香族第2アミン系、フェノール系、イミダゾール系等)、加硫剤、加硫促進剤(グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系等)などの配合薬品類を通常の範囲内で適宜配合し用いられる。
【0033】
ここでカーボンブラックとしては、スタッドレスタイヤのトレッド用ゴム組成物の低温性能、耐摩耗性やゴムの補強性などの観点から、窒素吸着比表面積(N2 SA)が70m2 /g以上、DBP吸油量が105ml/100g以上であるものが好ましく、さらにはN2 SAが80〜200m2 /g、DBP吸油量が110〜150ml/100gであるものが一層好ましく、これらの値が低くなるとゴム強度やモジュラスが低下し、逆にN2 SAが高くなると発熱が大きくなり好ましくない。具体的にはSAF,ISAF,HAF級のカーボンブラックが例示され、配合量としてはゴム成分100重量部に対して20〜80重量部程度の範囲で使用される。
【0034】
また、シリカを用いる場合は、湿式シリカ、乾式シリカ或いは表面処理シリカなどが使用され、配合量はゴムのtanδのバランスや補強性、電気伝導度の観点からゴム成分100重量部に対して50重量部程度が好ましく、カーボンブラックとの合計量では20〜120重量部程度が好ましい。
【0035】
上記タイヤ用ゴム組成物は通常のバンバリーミキサーやニーダーなどのゴム用混合機を用いて常法に従い混合され作成することができる。
【0036】
本発明のスタッドレスタイヤは、上記タイヤ用ゴム組成物を用いてゴム用押し出し機などによりタイヤのトレッド部を作製し、通常のタイヤ成型により未加硫タイヤを成型した後、常法に従い加硫工程を経て製品タイヤが製造される。
【0037】
従って、本発明のスタッドレスタイヤは、トレッドゴムの長石の粒状体が氷面に対して優れた引っ掻き効果を発揮し、トレッドゴムと氷上路面との摩擦係数を高めスタッドレスタイヤのアイス性能を向上すると共に耐摩耗性を低下させることなく、操縦安定性や転がり抵抗を維持し、氷上路面と乾燥路面におけるタイヤ性能を両立することができる。しかも、道路の損傷やアスファルトの粉塵を発生させることなく、天然の岩石を材料とすることで粒状体の飛散によっても環境に悪影響を及ぼすことがない。
【0038】
(実施例)
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。
【0039】
表2、表3に示す各実施例及び比較例のタイヤ用ゴム組成物を、表1に示す天然ゴム(NR)60重量部とブタジエンゴム(BR)40重量部とをゴム成分として、表1に示す各種配合剤を共通成分とし、さらにゴム成分100重量部に対して下記の平均粒径を有するアルカリ長石(A)〜(C)及び斜長石の粒状体を表2、表3に示す配合量(重量部)で配合したものを、通常の容量20リットルのバンバリーミキサーを用い混合し、表2、表3に示す各実施例及び比較例のタイヤ用ゴム組成物を作製した。
【0040】
【表1】
【0041】
[長石の粒状体]
・アルカリ長石粒状体(A):平均粒径=250μm
・アルカリ長石粒状体(B):平均粒径=5μm
・アルカリ長石粒状体(C):平均粒径=800μm
・斜長石粒状体 :平均粒径=5μm
【0042】
上記長石の各粒状体は、天然に産出するアルカリ長石及び斜長石をボールミルを用い平均粒径が中心値になるように粉砕条件を調整し粉砕した後、所定の粒度分布のふるいを用いてふるい分けし選別したものである。ふるいは、JIS Z8801に記載の標準ふるいによった。
【0043】
表2、表3に示す各実施例及び比較例の各タイヤ用ゴム組成物を通常のゴム用押し出し機を用いてキャップトレッドを作製し、これをキャップ/ベース構造の一般的なタイヤ構造を有するスタッドレスタイヤに適用し、サイズが185/70R14の試験用スタッドレスタイヤを製造した。
【0044】
各試験タイヤについて、アイス性能及び耐摩耗性の評価を下記の方法により行った。結果を表2、表3に示す。
【0045】
[アイス性能]
各試験タイヤ4本を排気量1600ccの前輪駆動式乗用車に装着し、乾燥アスファルト路面にて100Kmの予備走行の後、気温−5±3℃、路面温度−5±3℃の氷上路面にて、速度40Km/hでタイヤをフルロックしその制動距離を測定した。結果を比較例1を100とした指数で表2、表3に示した。数値の大きいものほど優れる。
【0046】
[耐摩耗性]
各試験タイヤ4本を排気量1600ccの前輪駆動式乗用車に装着し、一般乾燥路面において5,000Km毎にローテイションし、2万Km走行後のトレッド残溝深さから摩耗量を求めた。結果を比較例1を100とした指数で表2、表3に示した。数値の大きいものほど優れる。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
表に示す結果から明らかなように、本発明に従うアルカリ長石の粒状体(A)を配合した実施例は、いずれも耐摩耗性を実用上問題とならない範囲に維持してアイス性能を向上することができる。しかしながら、その配合量が2重量部未満ではアイス性能は得られず(比較例2)、20重量部を越えると耐摩耗性の悪化が大きくなる。
【0050】
一方で、平均粒子径の小さい粒状体(B)を配合した比較例4,5では、アイス性能の向上効果が少ない割に耐摩耗性が低下し、逆に平均粒子径の大きすぎる粒状体(C)を配合した比較例6,7は、アイス性能は向上するが耐摩耗性の低下も大きく実用に適さない。
【0051】
また、斜長石の粒状体を配合した比較例8,9では、実施例ほどのアイス性能の向上が得られず、アルカリ長石が優れていることが分かる。これはアルカリ長石の化学式がKAlSi3 O8 −NaAlSi3 O8 で表され、斜長石の化学式がCaAl2 Si2 O8 −NaAlSi3 O8 で表されることにより、両者の結晶構造がわずかに異なるのみで、アルカリ長石のアイス性能が著しく向上することを今回見出したものである。
【0052】
なお、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記長石の粒状体に追加して、他の有機物や無機物の微小充填剤の添加や発泡ゴムの使用などの氷上摩擦力向上の手法を、本発明の目的を損なわない範囲において併用することができるのは勿論である。
【0053】
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記スタッドレスタイヤ以外の用途、例えば産業車両用や農耕用タイヤのトレッド、靴底、マット類、床材、バットやゴルフクラブなどのグリップ等の防滑用ゴム製品にも、勿論使用することができる。
【0054】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、耐摩耗性を低下させることなく氷上路面に対する掘り起こし摩擦(引っ掻き効果)を向上したタイヤ用ゴム組成物を得ることができ、これを用いたスタッドレスタイヤは耐摩耗性を実用上損なうことなく氷上摩擦力を高めてアイス性能を向上させるという効果を奏する。しかも本発明のアルカリ長石の粒状体はアスファルト路面を損傷することがなく、トレッドから脱落し飛散しても環境に悪影響を与えることがない。
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物に関し、耐摩耗性を低下することなくアイス性能を向上させたスタッドレスタイヤに好適なタイヤ用ゴム組成物及びそれをトレッド部に用いたスタッドレスタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
氷雪路において使用される空気入りタイヤは、道路の損傷や粉塵の問題からスパイクタイヤに代わりスタッドレスタイヤが使用されるようになり、氷上路面での駆動、制動性能や操縦安定性を向上し安全性を確保するためのスタッドレスタイヤ用ゴム組成物の検討が多くなされている。
【0003】
この氷上路面での摩擦力を向上するゴム組成物の改良としては、例えば、ガラス転移温度の低いブタジエンゴムの使用や軟化剤の配合により低温でも低硬度を維持しヒステリシス摩擦を向上する手法を始めとして、充填剤のカーボンブラックの一部をシリカに置換し低温での低モジュラスを維持し粘着摩擦を向上する手法等があり、中でもスタッドレスタイヤと関連の大きい掘り起こし摩擦(引っ掻き効果)を向上する手法として、トレッドに発泡ゴムを使用しトレッド接地部の微小凹凸を増加するもの、有機高分子物質や無機物質等の硬質粒状体や金属粉の配合、植物の粉砕物を配合するもの(例えば、特許文献1)、中空粒状体を配合するもの(例えば、特許文献2)など種々の手法が提案されている。
【0004】
また、低発熱性を維持しながらウェットスキッド性能を向上させるタイヤトレッド用ゴム組成物として、一般式M・xSiO2 ・yH2 Oで表される水酸化アルミニウムなどの無機化合物粉体を配合するものが提案されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−7841号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平11−35736号公報
【0007】
【特許文献3】
特開平7−149950号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
摩擦係数の小さい氷上路面においてアイス性能を向上するには、上記の粘着摩擦や掘り起こし摩擦の効果が特に重要となるが、シリカを多量配合したゴム組成物はアイス性能は向上するがカーボンブラックに比べて補強性が低下するため耐摩耗性が悪化し、また混合性や導電性の低下にも問題があり、発泡ゴムの使用や硬質物質の粒状体等を配合するものはアイス性能を向上することはできるが乾燥路面において耐摩耗性や操縦安定性が低下するという問題点があり、中空粒子を配合するものは混合中に粒子が破壊されてしまう欠点がある。また、特許文献3に記載のゴム組成物は、耐摩耗性を低下させることなくウェットスキッド性能を向上するが、無機化合物の粒径が10μm以下であるためアイス性能を向上するには不十分であり、いずれの手法においても耐摩耗性を維持した上でスタッドレスタイヤのアイス性能を大幅に向上するには到らず、従来のスパイクタイヤの性能には未だ及んでいない。
【0009】
本発明は、スタッドレスタイヤの耐摩耗性を低下させることなく、トレッドゴムの引っ掻き効果による掘り起こし摩擦を向上しアイス性能を大幅に向上するタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、スタッドレスタイヤのアイス性能をさらに向上させるために、氷上路面における掘り起こし摩擦力の向上について鋭意検討した結果、特定の無機化合物の粒状体を特定量配合すれば、耐摩耗性を低下させることなく氷面に対する引っ掻き効果を画期的に発揮するとの知見を得て本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、化学式 K2 O・Al2 O3 ・6SiO2 で表される無機化合物を主成分として含むモース硬度が6以上で、平均粒径が10〜500μmである粒状体を2〜20重量部含有してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物である。
【0012】
本発明のタイヤ用ゴム組成物によれば、ゴム組成物中に含まれる氷よりも硬い無機化合物を主体とする粒状体がゴム表面に突出して微細な凹凸を形成し、氷上路面を引っ掻いてミクロスパイク効果を発現し氷面との摩擦力を得ることでアイス性能を向上し、粒状体の平均粒径を500μm未満、その配合量を20重量部未満とすることで、ゴム中への分散性や加工性を良好に維持し、かつ耐摩耗性の低下を実用範囲内に抑え、スタッドレスタイヤのアイス性能と耐摩耗性を両立させることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記粒状体がアルカリ長石からなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物である。
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物によれば、アルカリ長石はモース硬度が約6〜6.5であり氷面の引っ掻き効果が大きく、かつアスファルト路面を傷つけることがなく、しかも広範囲の岩石に含まれる天然の鉱物資源であってタイヤトレッド等のゴム組成物として使用しても環境や健康に悪影響を及ぼすことがなく、また入手が容易で比較的安価でありゴム組成物のコスト低減を図ることもできる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いたことを特徴とするスタッドレスタイヤである。
【0016】
本発明のスタッドレスタイヤでは、耐摩耗性を低下させることなく、操縦安定性や転がり抵抗などのタイヤ特性を維持してアイス性能を向上することができ、さらに道路を損傷したり、アスファルトの粉塵を発生させることがなく、環境問題に対応することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のタイヤ用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤを以下の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、化学式 K2 O・Al2 O3 ・6SiO2 で表される無機化合物を主成分として含むモース硬度が6以上で、平均粒径が10〜500μmである粒状体を2〜20重量部含有してなる。
【0019】
本発明に使用されるゴム成分としては、天然ゴム(NR)とジエン系合成ゴムの各種ブタジエンゴム(BR)、各種スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)等が挙げられ、それらの単独或いは2種類以上のブレンドを使用することができる。その中でも、スタッドレスタイヤに要求される低温特性と耐摩耗性、操縦安定性等を両立させて向上させるために、ガラス転移温度が−50℃以下のゴムが好ましく、ブレンドして使用する場合はそのガラス転移温度の平均値が−55℃以下であることが好ましい。
【0020】
本発明においてゴム成分をブレンドで使用する場合、例えば、天然ゴムとブタジエンゴムとのブレンドで用いる場合は、ブタジエンゴムの比率が少なすぎるとゴム組成物の低温特性が得難くなり、逆に多くなりすぎると加工性の悪化や耐引き裂き抵抗性が低下する傾向になるので、天然ゴム/ブタジエンゴムの比率は30/70〜80/20、さらには40/60〜70/30程度であることが好ましい。
【0021】
本発明に使用される化学式 K2 O・Al2 O3 ・6SiO2 で表される無機化合物は、広い範囲の岩石、例えば火成岩、変性岩、堆積岩などに含まれ、地殻表層部の多くを占める天然資源として得られる長石が挙げられる。
【0022】
長石は、上記化学式で表されるカリ長石を主要成分として、化学式 Na2 O・Al2 O3 ・6SiO2 で表されるソーダ長石や化学式 CaO・Al2 O3 ・2SiO2 で表される灰長石を主体として含む固溶体であって、その構成によりアルカリ長石、斜長石などに分類されるものである。
【0023】
この長石はモース硬度が約6〜6.5であるので、氷(モース硬度=約2)より硬く、アスファルトの骨材(モース硬度=約8)より軟らかいため、ゴム中に配合された長石の粒状体がゴム表面に突出して微細な凹凸を形成し、粒状体の突起が氷面を引っ掻いてミクロスパイク効果を発現して氷上路面での摩擦力を高めてスタッドレスタイヤのアイス性能を向上し、また乾燥路面のアスファルトに対しては路面を傷つけたり、削り取ることがなく、従来のスパイクタイヤのような路面損傷やアスファルト粉塵の問題を発生することがない。
【0024】
本発明に用いられる長石は、カリ長石とソーダ長石(アルバイト)の2成分を主体とした固溶体である 化学式 KAlSi3 O8 −NaAlSi3 O8 で表されるアルカリ長石が好ましく、このアルカリ長石は広範囲の岩石に含まれる天然の鉱物原料として産出されるため、安定した供給が可能であり、コストが安価であることからゴム組成物のコスト低減も可能となる。また、天然資源であることから、タイヤトレッドの摩耗によりゴム組成物から脱落、飛散しても環境や健康に悪影響を及ぼすことがない。
【0025】
この天然の長石は、例えば、滋賀県、三重県、長野県、新潟県などの国内産、インド、中国、アメリカ、カナダ、ロシアなど各国の広い範囲で産出されるものが使用でき、アルカリ長石の一例である「大平長石」はSiO2 が約70重量%、Al2 O3 が約18重量%、K2 Oが約9重量%、Na2 Oが約3重量%、1重量部%未満のCaOと微量のFe2 O3 、MgO、P、Mn等の不可避的不純物を含んで構成される結晶体を形成したものである。
【0026】
本発明に使用される粒状体は、この天然に産出される長石、特にアルカリ長石を公知の粉砕機(例えば、ボールミル)を用いて微粒状に粉砕し、所定の粒径範囲に選別し分級したものである。
【0027】
上記粒状体の平均粒径は、10〜500μmであることが好ましく、10μm未満であるとゴム表面への突出部が細かすぎて氷面に対して突き刺すような摩擦作用が得られず引っ掻き効果による摩擦力が十分でなく、好ましくは平均粒径が15μm以上であり、さらには20μm以上であることがより好ましい。
【0028】
粒状体の平均粒径が大きくなると氷面への引っ掻き効果は増大するが、ゴム中への分散性や加工性の低下、ゴムの破壊特性の低下により耐摩耗性の悪化を来し、また物理的結合のみによってゴムと接着している粒状体のゴム表面への突出部が大きくなって路面との摩擦により粒状体が早期に脱落しやすくなるためその上限は500μm程度とするのが好ましい。
【0029】
本発明のゴム組成物においては、粒状体の配合量は、ゴム成分100重量部に対して2〜20重量部であって、2重量部未満ではゴム表面に突出する凹凸形成が少なく氷面への引っ掻き効果が十分でなく、20重量部を越えるとゴムの加工性が悪化すると共にゴムの破壊特性が低下し耐摩耗性の悪化が大きくなり、また増量による引っ掻き効果の向上も限界となる。
【0030】
なお、上記粒状体は、天然に産出する長石をボールミル等の粉砕機を用い粉砕条件を調整し粉砕した後、所定の粒度分布のふるいを用いてふるい分けし所定の粒径に選別したものが使用できる。ふるいは、例えばJIS Z8801に記載の標準ふるいによって所定の粒径にふるい分けすることができる。
【0031】
この長石の粒状体は、ゴムと化学的接着性を有さないことから、粒状体表面に接着剤の表面処理加工を施したり、ゴム組成物中に接着剤を配合することで両者の化学的結合を得て、粒状体の早期脱落を防止することもできる。この表面処理用接着剤としてはレゾルシンホルマリンラテックス(RFL処理)、配合接着剤としてはビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどの一般的なシランカップリング剤(例えば、デグサ社製、Si69)、フェノール−ホルムアルデヒド−レゾルシンからなる共縮合樹脂(例えば、住友化学(株)製、スミカノール620)やヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物(例えば、住友化学(株)製、スミカノール507)などが例示される。
【0032】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上記ゴム成分、長石の粒状体に加え、通常のゴム工業で使用されているカーボンブラックやシリカなどの補強剤や充填剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、可塑剤、老化防止剤(アミン−ケトン系、芳香族第2アミン系、フェノール系、イミダゾール系等)、加硫剤、加硫促進剤(グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系等)などの配合薬品類を通常の範囲内で適宜配合し用いられる。
【0033】
ここでカーボンブラックとしては、スタッドレスタイヤのトレッド用ゴム組成物の低温性能、耐摩耗性やゴムの補強性などの観点から、窒素吸着比表面積(N2 SA)が70m2 /g以上、DBP吸油量が105ml/100g以上であるものが好ましく、さらにはN2 SAが80〜200m2 /g、DBP吸油量が110〜150ml/100gであるものが一層好ましく、これらの値が低くなるとゴム強度やモジュラスが低下し、逆にN2 SAが高くなると発熱が大きくなり好ましくない。具体的にはSAF,ISAF,HAF級のカーボンブラックが例示され、配合量としてはゴム成分100重量部に対して20〜80重量部程度の範囲で使用される。
【0034】
また、シリカを用いる場合は、湿式シリカ、乾式シリカ或いは表面処理シリカなどが使用され、配合量はゴムのtanδのバランスや補強性、電気伝導度の観点からゴム成分100重量部に対して50重量部程度が好ましく、カーボンブラックとの合計量では20〜120重量部程度が好ましい。
【0035】
上記タイヤ用ゴム組成物は通常のバンバリーミキサーやニーダーなどのゴム用混合機を用いて常法に従い混合され作成することができる。
【0036】
本発明のスタッドレスタイヤは、上記タイヤ用ゴム組成物を用いてゴム用押し出し機などによりタイヤのトレッド部を作製し、通常のタイヤ成型により未加硫タイヤを成型した後、常法に従い加硫工程を経て製品タイヤが製造される。
【0037】
従って、本発明のスタッドレスタイヤは、トレッドゴムの長石の粒状体が氷面に対して優れた引っ掻き効果を発揮し、トレッドゴムと氷上路面との摩擦係数を高めスタッドレスタイヤのアイス性能を向上すると共に耐摩耗性を低下させることなく、操縦安定性や転がり抵抗を維持し、氷上路面と乾燥路面におけるタイヤ性能を両立することができる。しかも、道路の損傷やアスファルトの粉塵を発生させることなく、天然の岩石を材料とすることで粒状体の飛散によっても環境に悪影響を及ぼすことがない。
【0038】
(実施例)
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。
【0039】
表2、表3に示す各実施例及び比較例のタイヤ用ゴム組成物を、表1に示す天然ゴム(NR)60重量部とブタジエンゴム(BR)40重量部とをゴム成分として、表1に示す各種配合剤を共通成分とし、さらにゴム成分100重量部に対して下記の平均粒径を有するアルカリ長石(A)〜(C)及び斜長石の粒状体を表2、表3に示す配合量(重量部)で配合したものを、通常の容量20リットルのバンバリーミキサーを用い混合し、表2、表3に示す各実施例及び比較例のタイヤ用ゴム組成物を作製した。
【0040】
【表1】
【0041】
[長石の粒状体]
・アルカリ長石粒状体(A):平均粒径=250μm
・アルカリ長石粒状体(B):平均粒径=5μm
・アルカリ長石粒状体(C):平均粒径=800μm
・斜長石粒状体 :平均粒径=5μm
【0042】
上記長石の各粒状体は、天然に産出するアルカリ長石及び斜長石をボールミルを用い平均粒径が中心値になるように粉砕条件を調整し粉砕した後、所定の粒度分布のふるいを用いてふるい分けし選別したものである。ふるいは、JIS Z8801に記載の標準ふるいによった。
【0043】
表2、表3に示す各実施例及び比較例の各タイヤ用ゴム組成物を通常のゴム用押し出し機を用いてキャップトレッドを作製し、これをキャップ/ベース構造の一般的なタイヤ構造を有するスタッドレスタイヤに適用し、サイズが185/70R14の試験用スタッドレスタイヤを製造した。
【0044】
各試験タイヤについて、アイス性能及び耐摩耗性の評価を下記の方法により行った。結果を表2、表3に示す。
【0045】
[アイス性能]
各試験タイヤ4本を排気量1600ccの前輪駆動式乗用車に装着し、乾燥アスファルト路面にて100Kmの予備走行の後、気温−5±3℃、路面温度−5±3℃の氷上路面にて、速度40Km/hでタイヤをフルロックしその制動距離を測定した。結果を比較例1を100とした指数で表2、表3に示した。数値の大きいものほど優れる。
【0046】
[耐摩耗性]
各試験タイヤ4本を排気量1600ccの前輪駆動式乗用車に装着し、一般乾燥路面において5,000Km毎にローテイションし、2万Km走行後のトレッド残溝深さから摩耗量を求めた。結果を比較例1を100とした指数で表2、表3に示した。数値の大きいものほど優れる。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
表に示す結果から明らかなように、本発明に従うアルカリ長石の粒状体(A)を配合した実施例は、いずれも耐摩耗性を実用上問題とならない範囲に維持してアイス性能を向上することができる。しかしながら、その配合量が2重量部未満ではアイス性能は得られず(比較例2)、20重量部を越えると耐摩耗性の悪化が大きくなる。
【0050】
一方で、平均粒子径の小さい粒状体(B)を配合した比較例4,5では、アイス性能の向上効果が少ない割に耐摩耗性が低下し、逆に平均粒子径の大きすぎる粒状体(C)を配合した比較例6,7は、アイス性能は向上するが耐摩耗性の低下も大きく実用に適さない。
【0051】
また、斜長石の粒状体を配合した比較例8,9では、実施例ほどのアイス性能の向上が得られず、アルカリ長石が優れていることが分かる。これはアルカリ長石の化学式がKAlSi3 O8 −NaAlSi3 O8 で表され、斜長石の化学式がCaAl2 Si2 O8 −NaAlSi3 O8 で表されることにより、両者の結晶構造がわずかに異なるのみで、アルカリ長石のアイス性能が著しく向上することを今回見出したものである。
【0052】
なお、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記長石の粒状体に追加して、他の有機物や無機物の微小充填剤の添加や発泡ゴムの使用などの氷上摩擦力向上の手法を、本発明の目的を損なわない範囲において併用することができるのは勿論である。
【0053】
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記スタッドレスタイヤ以外の用途、例えば産業車両用や農耕用タイヤのトレッド、靴底、マット類、床材、バットやゴルフクラブなどのグリップ等の防滑用ゴム製品にも、勿論使用することができる。
【0054】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、耐摩耗性を低下させることなく氷上路面に対する掘り起こし摩擦(引っ掻き効果)を向上したタイヤ用ゴム組成物を得ることができ、これを用いたスタッドレスタイヤは耐摩耗性を実用上損なうことなく氷上摩擦力を高めてアイス性能を向上させるという効果を奏する。しかも本発明のアルカリ長石の粒状体はアスファルト路面を損傷することがなく、トレッドから脱落し飛散しても環境に悪影響を与えることがない。
Claims (3)
- ジエン系ゴム成分100重量部に対して、
化学式 K2 O・Al2 O3 ・6SiO2 で表される無機化合物を主成分として含むモース硬度が6以上で、平均粒径が10〜500μmである粒状体を2〜20重量部含有してなる
ことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。 - 前記粒状体がアルカリ長石からなる
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。 - 請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いた
ことを特徴とするスタッドレスタイヤ。
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