JP4350973B2 - タイヤ用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物に関し、耐摩耗性を低下することなくアイス性能を向上させたスタッドレスタイヤに好適なタイヤ用ゴム組成物及びそれをトレッド部に用いたスタッドレスタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
氷雪路において使用される空気入りタイヤは、道路の損傷や粉塵の問題からスパイクタイヤに代わりスタッドレスタイヤが使用されるようになり、氷上路面での駆動、制動性能や操縦安定性を向上し安全性を確保するためのスタッドレスタイヤ用ゴム組成物の検討が多くなされている。
【0003】
この氷上路面での摩擦力を向上するゴム組成物の改良としては、例えば、ガラス転移温度の低いブタジエンゴムの使用や軟化剤の配合により低温でも低硬度を維持しヒステリシス摩擦を向上する手法を始めとして、充填剤のカーボンブラックの一部をシリカに置換し低温での低モジュラスを維持し粘着摩擦を向上する手法等があり、中でもスタッドレスタイヤと関連の大きい掘り起こし摩擦(引っ掻き効果)を向上する手法として、トレッドに発泡ゴムを使用しトレッド接地部の微小凹凸を増加するもの、有機高分子物質や無機物質等の硬質粒状体や金属粉の配合、植物の粉砕物を配合するもの(例えば、特許文献1)、中空粒状体を配合するもの(例えば、特許文献2)など種々の手法が提案されている。
【0004】
また、低発熱性を維持しながらウェットスキッド性能を向上させるタイヤトレッド用ゴム組成物として、クレーや水酸化アルミニウムなどの無機化合物粉体を配合するものが提案されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−7841号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平11−35736号公報
【0007】
【特許文献3】
特開平7−149950号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
摩擦係数の小さい氷上路面においてアイス性能を向上するには、上記の粘着摩擦や掘り起こし摩擦の効果が特に重要となるが、シリカを多量配合したゴム組成物はアイス性能は向上するがカーボンブラックに比べて補強性が低下するため耐摩耗性が悪化し、また混合性や導電性の低下にも問題があり、発泡ゴムの使用や硬質物質の粒状体等を配合するものはアイス性能を向上することはできるが乾燥路面において耐摩耗性や操縦安定性が低下するという問題点があり、中空粒子を配合するものは混合中に粒子が破壊されてしまう欠点がある。また、特許文献3に記載のゴム組成物は、耐摩耗性を低下させることなくウェットスキッド性能を向上するが、無機化合物の粒径が10μm以下であるためアイス性能を向上するには不十分であり、いずれの手法においても耐摩耗性を維持した上でスタッドレスタイヤのアイス性能を大幅に向上するには到らず、従来のスパイクタイヤの性能には未だ及んでいない。
【0009】
本発明は、スタッドレスタイヤの耐摩耗性を低下させることなく、トレッドゴムの引っ掻き効果による掘り起こし摩擦を向上しアイス性能を大幅に向上するタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、スタッドレスタイヤのアイス性能をさらに向上させるために、氷上路面における掘り起こし摩擦力の向上について鋭意検討した結果、特定の無機化合物の微粉体を特定量配合すれば、耐摩耗性を低下させることなく氷面に対する引っ掻き効果を画期的に発揮するとの知見を得て本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、本発明は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、式CaO・SiO2で表される無機化合物を主成分として含み、JIS Z8801に記載の標準ふるいによる平均径が10〜600μmであり、かつアスペクト比が3〜25の線状体である珪灰石の微粉体を2〜20重量部含有してなることを特徴とするスタッドレスタイヤ用ゴム組成物である。
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物によれば、ゴム組成物中に含まれる氷よりも硬度の高い珪灰石の微粉体がゴム表面に突出して微細な凹凸を形成し、氷上路面を引っ掻いてミクロスパイク効果を発現し氷面との摩擦力を得ることでアイス性能を向上し、微粉体の配合量を20重量部未満とすることで耐摩耗性の低下を実用範囲内に抑え、スタッドレスタイヤのアイス性能と耐摩耗性を両立させることができる。また、微粉体が線状体をなし、その平均径とアスペクト比を特定することで、微粉体のゴム表面からの脱落を防いで引っ掻き効果を安定して発揮すると共に、ゴム中への分散性や加工性を良好に維持し、かつ耐摩耗性の低下を最小限に抑えることができる。
【0014】
本発明は、前記タイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いたことを特徴とするスタッドレスタイヤであり、耐摩耗性を低下させることなく、操縦安定性や転がり抵抗などのタイヤ特性を維持してアイス性能を向上することができ、さらに道路を損傷したり、アスファルトの粉塵を発生させることがない。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に従うタイヤ用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤを以下の実施の形態に基づいて説明する。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、式CaO・SiO2 で表される無機化合物を主成分として含む珪灰石の微粉体を2〜20重量部含有するものである。
【0017】
本発明に使用されるゴム成分としては、天然ゴム(NR)とジエン系合成ゴムの各種ブタジエンゴム(BR)、各種スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)等が挙げられ、それらの単独或いは2種類以上のブレンドを使用することができる。その中でも、スタッドレスタイヤに要求される低温特性と耐摩耗性、操縦安定性等を両立させて向上させるために、ガラス転移温度が−50℃以下のゴムが好ましく、ブレンドして使用する場合はそのガラス転移温度の平均値が−55℃以下であることが好ましい。
【0018】
本発明においてゴム成分をブレンドで使用する場合、例えば、天然ゴムとブタジエンゴムとのブレンドで用いる場合は、ブタジエンゴムの比率が少なすぎるとゴム組成物の低温特性が得難くなり、逆に多くなりすぎると加工性の悪化や耐引き裂き抵抗性が低下する傾向になるので、天然ゴム/ブタジエンゴムの比率は30/70〜80/20、さらには40/60〜70/30程度であることが好ましい。
【0019】
本発明に使用される珪灰石の微粉体は、天然に産出される珪灰石を公知の粉砕機(例えば、ボールミル)を用いて微粉状に粉砕し、所定平均径の範囲に選別し分級したものである。
【0020】
この天然の珪灰石は、式 CaO・SiO2 で表される無機化合物を主成分として含み、CaOが40〜50重量%、SiO2 が45〜55重量%、その他の無機化合物として0.5重量%未満のFe2 O3 と1.5重量%未満のAl2 O3 、及び微量のP、Mn等の不可避的不純物を含んで構成される線状の結晶体を形成したものである。
【0021】
この珪灰石はモース硬度が約4であるので、氷(モース硬度=約2)より硬く、アスファルト(モース硬度=約8)より軟らかいため、ゴム中に配合された微粉体がゴム表面に突出して微細な凹凸を形成し、微粉体の突起が氷面を引っ掻いてミクロスパイク効果を発現して氷上路面での摩擦力を高めてスタッドレスタイヤのアイス性能を向上し、また乾燥路面のアスファルトに対しては路面を傷つけたり、削り取ることがなく、従来のスパイクタイヤのような路面損傷やアスファルト粉塵の問題を発生することがない。
【0022】
本発明において、微粉体の配合量は、ゴム成分100重量部に対して2〜20重量部であって、2重量部未満ではゴム表面に突出する凹凸形成が少なく氷面への引っ掻き効果が十分でなく、20重量部を越えるとゴムの加工性が悪化すると共にゴムの破壊特性が低下し耐摩耗性の悪化が大きくなり、また増量による引っ掻き効果の向上も限界となる。
【0023】
この珪灰石の微粉体は、線状体をなすもので、その平均径が10μm以上であり、かつアスペクト比が3〜25であることが好ましく、ゴム中に含まれる線状の微粉体端部がゴム表面に突出しやすくなり、特に線状体の鋭角端部の突出により形成されたゴム表面の突起部により氷面の引っ掻き効果を増大させ氷上路面との摩擦力を一層向上することができる。
【0024】
天然の珪灰石からなる微粉体は、化学的に製造した合成珪灰石よりも、その結晶が細長い針状を有す線状体を形成しやすく、上記の引っ掻き効果を向上し好ましい。
【0025】
また、天然の珪灰石は、粉砕機を用いた粉砕作業やゴムとの混合作業によっても線状の結晶形態を崩壊させにくく、ゴム中に混合した後もその線状形態を維持し上記引っ掻き効果を発揮することができる。
【0026】
ここで、平均径とは、線状をなす微粉体の線径の平均値を言い、アスペクト比とは、個々の微粉体の線長と線径の比(線長/線径)を意味する。すなわち、所定平均径内にある微粉体にはアスペクト比の異なる線状体が混在することになる。
【0027】
上記微粉体の平均径は、10μm未満であるとゴム表面への突出部が細かすぎて氷面に対して突き刺すような摩擦作用が得られず引っ掻き効果による摩擦力が十分でなく、好ましくは平均径が15μm以上であり、さらには20μm以上であることがより好ましい。逆に平均径が大きくなると氷面への引っ掻き効果は増大するが、ゴム中への分散性や加工性の低下、ゴムの破壊特性の低下により耐摩耗性の悪化を来し、また物理的結合のみによってゴムと接着している微粉体のゴム表面への突出部が大きくなって路面との摩擦により微粉体が早期に脱落しやすくなるためその上限は500〜600μm程度とするのが好ましい。但し、この平均径の上限はタイヤのサイズ、乗用車用や重荷重の貨物車用等のタイヤ用途或いは市場での使用条件等により適宜選択できるものであり、特に制限されるものではない。
【0028】
また、微粉体の線状体をなすアスペクト比は3〜25の範囲にあるものが好ましく、線状の形態を有することによりゴムに対して投錨するように作用し、ゴムとの化学的結合を有さない微粉体の接着をそのアンカー効果により物理的な接着力で確保し、ゴム表面からの早期の脱落を防止することで有効な引っ掻き効果を長期間に渡り持続することができる。
【0029】
このアスペクト比が3未満では微粉体が粒状となりゴムに対するアンカー効果が不足し、接着不足によって微粉体が早期に脱落し十分な引っ掻き効果を維持することができず、またアスペクト比が25を越えると長尺化した微粉体が異物となって混合性、加工性を損なうと共に、分散性の低下やゴム硬度の上昇により耐摩耗性が悪化し、またゴム中で微粉体が配向性を持つようになりトレッド表面に引っ掻き効果に有効な凹凸が形成されなくなる。
【0030】
なお、上記微粉体は、天然に産出する珪灰石をボールミル等の粉砕機を用い粉砕条件を調整し粉砕した後、所定の粒度分布のふるいを用いてふるい分けし所定の平均径に選別したものが使用できる。ふるいは、例えばJIS Z8801に記載の標準ふるいによって所定の平均径にふるい分けすることができる。
【0031】
この珪灰石の微粉体は、ゴムと化学的接着性を有さないことから、微粉体表面に接着剤の表面処理加工を施したり、ゴム組成物中に接着剤を配合することで両者の化学的結合を得て、微粉体の早期脱落を防止することもできる。この表面処理用接着剤としてはレゾルシンホルマリンラテックス(RFL処理)、配合接着剤としてはビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどの一般的なシランカップリング剤(例えば、デグサ社製 Si69)、フェノール−ホルムアルデヒド−レゾルシンからなる共縮合樹脂(例えば、住友化学(株)製、スミカノール620)やヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物(例えば、住友化学(株)製、スミカノール507)などが例示される。
【0032】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上記ゴム成分、珪灰石の微粉体に加え、通常のゴム工業で使用されているカーボンブラックやシリカなどの補強剤や充填剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、可塑剤、老化防止剤(アミン−ケトン系、芳香族第2アミン系、フェノール系、イミダゾール系等)、加硫剤、加硫促進剤(グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系等)などの配合薬品類を通常の範囲内で適宜配合し用いられる。
【0033】
ここでカーボンブラックとしては、スタッドレスタイヤのトレッド用ゴム組成物の低温性能、耐摩耗性やゴムの補強性などの観点から、窒素吸着比表面積(N2 SA)が70m2 /g以上、DBP吸油量が105ml/100g以上であるものが好ましく、さらにはN2 SAが80〜200m2 /g、DBP吸油量が110〜150ml/100gであるものが一層好ましく、これらの値が低くなるとゴム強度やモジュラスが低下し、逆にN2 SAが高くなると発熱が大きくなり好ましくない。具体的にはSAF,ISAF,HAF級のカーボンブラックが例示され、配合量としてはゴム成分100重量部に対して20〜80重量部程度の範囲で使用される。
【0034】
また、シリカを用いる場合は、湿式シリカ、乾式シリカ或いは表面処理シリカなどが使用され、配合量はゴムのtanδのバランスや補強性、電気伝導度の観点からゴム成分100重量部に対して50重量部程度が好ましく、カーボンブラックとの合計量では20〜120重量部程度が好ましい。
【0035】
上記タイヤ用ゴム組成物は通常のバンバリーミキサーやニーダーなどのゴム用混合機を用いて常法に従い混合され作成することができる。
【0036】
もちろん、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、平均径10μm以上、アスペクト比が3〜25の範囲にある各サイズの平均径、アスペクト比を有する珪灰石の微粉体を混合し、その合計量が2〜20重量部の範囲となるように適宜用いることができる。
【0037】
本発明のスタッドレスタイヤは、上記タイヤ用ゴム組成物を用いてゴム用押し出し機などによりタイヤのトレッド部を作製し、通常のタイヤ成型により未加硫タイヤを成型した後、常法に従い加硫工程を経て製品タイヤが製造される。
【0038】
従って、本発明のスタッドレスタイヤは、トレッドゴムの珪灰石の微粉体が氷面に対して優れた引っ掻き効果を発揮し、トレッドゴムと氷上路面との摩擦係数を高めスタッドレスタイヤのアイス性能を向上すると共に耐摩耗性を低下させることなく、操縦安定性や転がり抵抗を維持し、氷上路面と乾燥路面におけるタイヤ性能を両立することができる。しかも、道路の損傷やアスファルトの粉塵を発生させることなく、天然の岩石を材料とすることで微粉体の飛散によっても環境に悪影響を及ぼすことがない。
【0039】
(実施例)
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。
【0040】
表2、表3に示す各実施例及び比較例のタイヤ用ゴム組成物を、表1に示す天然ゴム(NR)60重量部とブタジエンゴム(BR)40重量部とをゴム成分として、表1に示す各種配合剤を共通成分として、さらにゴム成分100重量部に対して下記の平均径及びアスペクト比を有する珪灰石の微粉体(A)〜(F)を表2、表3に示す配合量(重量部)で配合したものを、通常の容量20リットルのバンバリーミキサーを用い混合し、表2、表3に示す実施例1〜5及び比較例1〜8のタイヤ用ゴム組成物を作製した。
【0041】
【表1】
【0042】
[珪灰石の微粉体]
・珪灰石微粉体(A):平均径=5μm、アスペクト比=5〜10
・珪灰石微粉体(B):平均径=15μm、アスペクト比=5〜10
・珪灰石微粉体(C):平均径=250μm、アスペクト比=5〜10
・珪灰石微粉体(D):平均径=500μm、アスペクト比=5〜10
・珪灰石微粉体(E):平均径=700μm、アスペクト比=5〜10
・珪灰石微粉体(F):平均径=250μm、アスペクト比=27〜35
【0043】
上記微粉体(A)〜(F)は、天然に産出する珪灰石をボールミルを用い平均径が中心値になるように粉砕条件を調整し粉砕した後、所定の粒度分布のふるいを用いてふるい分けし選別したものである。ふるいは、JIS Z8801に記載の標準ふるいによった。
【0044】
また、アスペクト比は走査型電子顕微鏡で各微粉体を観察し、その線状体の線長と線径を求め、線長/線径をアスペクト比としてその分布の範囲を求めた。
【0045】
表2、表3に示す各実施例及び比較例の各タイヤ用ゴム組成物を通常のゴム用押し出し機を用いてキャップトレッドを作製し、これをキャップ/ベース構造の一般的なタイヤ構造を有するスタッドレスタイヤに適用し、サイズが185/70R14の試験用スタッドレスタイヤを製造した。
【0046】
各試験タイヤについて、アイス性能及び耐摩耗性の評価を下記の方法により行った。結果を表2、表3に示す。
【0047】
[アイス性能]
各試験タイヤ4本を排気量1600ccの前輪駆動式乗用車に装着し、乾燥アスファルト路面にて100Kmの予備走行の後、気温−5±3℃、路面温度−5±3℃の氷上路面にて、速度40Km/hでタイヤをフルロックしその制動距離を測定した。結果を比較例1を100とした指数で表2、表3に示した。数値の大きいものほど優れる。
【0048】
[耐摩耗性]
各試験タイヤ4本を排気量1600ccの前輪駆動式乗用車に装着し、一般乾燥路面において5,000Km毎にローテイションし、2万Km走行後のトレッド残溝深さから摩耗量を求めた。結果を比較例1を100とした指数で表2、表3に示した。数値の大きいものほど優れる。
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
表に示す結果から明らかなように、平均径が10μm以上、アスペクト比が5〜10の範囲にある珪灰石の微粉体(B)、(C)、(D)を2〜20重量部配合した実施例1〜5は、いずれも耐摩耗性を実用上問題とならない範囲に維持してアイス性能を向上することができる。一方で、微粉体(C)の配合量を1重量部とした比較例2ではゴム表面の凹凸形成が少なく引っ掻き効果が得られずアイス性能が向上せず、25重量部に増量した比較例3はアイス性能は向上するが耐摩耗性が悪化が大きくなる。
【0052】
また、平均径が10μm未満の微粉体(A)を2重量部配合した比較例4は,平均径が細かすぎてゴム表面に凹凸を形成することができずアイス性能の向上が見らないにもかかわらず耐摩耗性は低下傾向を示し、20重量部配合した比較例5ではアイス性能は向上するが、アイス性能に見合った耐摩耗性の維持が実施例ほど得られないことから、微粉体は10μm以上の平均径が必要である。平均径が700μmの微粉体(E)を配合した比較例6,7は,アイス性能の向上は大きく得られるが、耐摩耗性の低下が大きく、またタイヤ走行に伴い微粉体の脱落が増加し走行中期以降のアイス性能維持が難しいと予測される。アスペクト比が規定範囲より大きい微粉体(F)を配合した比較例8は、微粉体がゴム混合中の分散不良とトレッド押し出し工程での配向により、トレッドのゴム特性に偏りと表面の凹凸形成が不良となり所望のアイス性能が得られず、耐摩耗性の低下も大きくなり実用的でないことが分かる。
【0053】
なお、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記珪灰石の微粉体に追加して、他の有機物や無機物の微小充填剤の添加や発泡ゴムの使用などの氷上摩擦力向上の手法を、本発明の目的を損なわない範囲において併用することができるのは勿論である。
【0054】
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記スタッドレスタイヤ以外の用途、例えば産業車両用や農耕用タイヤのトレッド、靴底、マット類、床材、バットやゴルフクラブなどのグリップ等の防滑用ゴム製品にも、勿論使用することができる。
【0055】
【発明の効果】
以上の通り、本発明に従えば、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、珪灰石の微粉体を2〜20重量部含んでなり、好ましくは珪灰石の微粉体が線状体をなし、その平均径が10μm以上であり、かつアスペクト比が3〜25とすることにより、耐摩耗性を低下させることなく氷上路面に対する掘り起こし摩擦(引っ掻き効果)を向上したタイヤ用ゴム組成物を得ることができ、これを用いたスタッドレスタイヤは耐摩耗性を実用上損なうことなく氷上摩擦力を高めてアイス性能を向上させるという効果を奏する。しかも珪灰石の微粉体はアスファルト路面を損傷することがなく、トレッドから脱落し飛散しても環境に悪影響を与えることがない。
Claims (3)
- ジエン系ゴム成分100重量部に対して、
式CaO・SiO2で表される無機化合物を主成分として含み、JIS Z8801に記載の標準ふるいによる平均径が10〜600μmであり、かつアスペクト比が3〜25の線状体である珪灰石の微粉体を2〜20重量部含有してなる
ことを特徴とするスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。 - 前記珪灰石の微粉体が天然の珪灰石からなる微粉体である
ことを特徴とする請求項1に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。 - 請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いた
ことを特徴とするスタッドレスタイヤ。
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