JP3678689B2 - ゴム組成物およびそれを用いたタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物およびタイヤに関し、とりわけ、スタッドレスタイヤの氷雪上性能を向上させ得るゴム組成物、および、該ゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、積雪寒冷地において冬季に自動車が走行する場合には、タイヤにスパイクを打ち込んだスパイクタイヤを用いるか、または、タイヤの外周にタイヤチェーンを装着することにより、雪上・氷上での安全を確保していた。しかしながら、スパイクタイヤまたはタイヤチェーンを装着したタイヤでは、道路の損耗が発生しやすく、それが粉塵となって公害を引き起こし、大きな環境問題となっていた。
【0003】
前述ような安全問題と環境問題を解決するために、スパイクやチェーンを使用せずに、雪上路および氷上路における制動性、駆動性を有するスタッドレスタイヤが急速に不足してきた。
【0004】
スタッドレスタイヤとして、たとえば、トレッドゴム中に砂を配合したり(特開昭61−150803号公報)、金属繊維を配合して(特開昭63−34026号公報)氷上性能を向上させた自動車用タイヤが提案されている。しかし、これらのタイヤでは、ゴム硬度が比較的高くなるため、氷上摩擦の効果が不充分であった。また、タイヤの摩耗にしたがって、これらの砂、金属繊維、金属が飛散して粉塵公害を引き起こし、社会問題になる可能性がある。
【0005】
また、トレッドゴムに発泡ゴムを用いることも提案されている(特開昭62−283001号公報、特開昭63−9042号公報、特開平1−118542号公報)。しかし、このようなタイヤでは、氷雪上の摩擦力は向上するが、発泡ゴムのブロック剛性が低いため、独立気泡によるエッジ効果と排水効果が充分に活用できず、また、耐摩耗性や乾燥路面での操縦性能が劣る。また、製造時の加硫工程などで発泡させるため、タイヤの寸法精度にバラツキが生じやすい。
【0006】
さらに、中空粒子をトレッドに配合し、氷雪上性能を向上させる技術が提案されている(特開平11−35736号公報、特開平6−328906号公報)。しかし、これらのタイヤでは、混練中に中空微粒子が崩壊されてしまい、充分な氷雪上性能を発揮することができないという問題がある。
【0007】
また、吸水性の合成高分子をトレッドゴムに配合し、路面とタイヤトレッド部の水分を除去することにより、氷雪上性能を向上させる技術が提案されている(特開平5−148390号公報)。しかしながら、合成高分子では吸水能力が充分でなく、また、合成高分子の粒子が脱落したのちのエッジ効果も、合成高分子が吸水後すぐに脱落するのは難しいので、充分であるとは言い難い。
【0008】
これらのほかにも、短繊維を配合し、かつ短繊維をトレッド面に垂直に配向させ、掘り起こし摩擦力を高め、氷上グリップ性能を向上させる方法などが提案されており(特開2000−168315号公報)、これらの手法によりスタッドレスタイヤの氷上路面でのグリップ性能は向上したが、スパイクタイヤの性能には、未だ及んではいない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、氷雪上性能を充分に向上させ得るゴム組成物およびタイヤを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ジエン系ゴム100重量部に対して、平均繊維径が10〜100μmで平均繊維長が0.01〜4mm、およびモース硬度が5以下の無機系の短繊維2〜30重量部、および、モース硬度が6以上で平均粒子径が500μm以下である粒子1〜10重量部を含有するゴム組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、前記ゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤに関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のゴム組成物に用いられるジエン系ゴムとしては、たとえば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどがあげられる。これらのジエン系ゴムは、単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
【0013】
本発明のゴム組成物は、前記ジエン系ゴムに特定の短繊維を含むことにより、氷上グリップ性能を向上させることができ、とくに、短繊維をトレッド面に垂直に配向させた場合には、さらに掘り起こし摩擦力を高め、氷上グリップ性能を向上させることができる。
【0014】
短繊維としては、たとえば、グラスファイバー、アルミニウムウィスカー、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリビニルホルマール繊維、芳香族ポリアミド繊維などがあげられる。これらのなかでも、ゴムへの混練り中の飛散、混練りによる最適形状化、配向性などに優れる点から、グラスファイバー、アルミニウムウィスカーなどの比重2.0以上の無機系の短繊維が好ましい。
【0015】
短繊維素材のモース硬度は、3〜6であることが好ましい。モース硬度が3未満では氷路面に対する掘り起こし摩擦に対する効果が小さくなる傾向があり、モース硬度が6をこえると、短繊維の表面に、後述する粒子によって傷がつくにくくなる傾向がある。より好ましくは、短繊維のモース硬度の下限は4、上限は5である。
【0016】
短繊維のゴム組成物中に分散したのちの平均繊維径は、10〜100μmである。平均繊維径が10μm未満では、曲げに対する強度が乏しく、したがって掘り起こしの効果が少ない。また、100μmをこえると、ゴム自体と氷表面との接触面積が減少するため、粘着効果が減少しがちになる。さらに、ゴムの補強性も乏しく耐摩耗性にも悪影響を及ぼす。好ましくは、短繊維の平均繊維径の下限は15μm、上限は70μmである。
【0017】
短繊維のゴム組成物中に分散したのちの平均繊維長は、0.01〜4mmである。平均繊維長が0.01mm未満では配向しにくく、4mmをこえると未加硫ゴムの粘度が高くなり、加工性が低下する。好ましくは、短繊維の平均繊維長の下限は0.3mm、上限は2mmである。
【0018】
短繊維の配合量は、前記ジエン系ゴム100重量部に対して2〜30重量部である。短繊維の配合量が2重量部未満では、掘り起こし摩擦に対する効果が小さく、30重量部をこえると耐摩耗性が低下する。好ましくは、短繊維の配合量の下限は4重量部、上限は20重量部である。
【0019】
本発明のゴム組成物は、さらに、モース硬度が5以上の素材からなる粒子を含む。短繊維と粒子をゴム中に混練りする工程で、粒子が短繊維と擦れ合うことにより、短繊維の表面に微細な傷がつき、これによって短繊維が母体であるゴムから抜け落ち難くなると考えられる。したがって、モース硬度が5未満では、短繊維の表面に傷が付きにくくなるため、掘り起こし摩擦に対する効果が小さい。好ましくは、粒子素材のモース硬度の下限は6、上限は8である。モース硬度が8をこえるとアスファルト路面に傷をつけてしまう可能性が生じる。
【0020】
ここで用いているモース硬度とは、材料の機械的性質の一つで古くから鉱物関係で広く用いられている測定法である。これは、以下の10種類の鉱物で順次引っ掻いて傷つけばその鉱物よりも硬度が低いとする方法である。硬度の低い方から、1タルク(滑石)、2石膏、3方解石、4螢石、5アパタイト(リン灰石)、6正長石、7水晶、8トパーズ(黄玉)、9コランダム、10ダイヤモンドが使用される。
【0021】
モース硬度が5以上の素材としては、たとえば、異極鉱、アスベスト、マンガン、リン灰石、ニッケル、ガラス、角閃石、長石、軽石、正長石、赤鉄鉱、輝石、酸化鉄、高速度鋼、工具鋼、マグネシア、イリジウム、黄鉄鋼、ルテニウム、メノウ、二酸化クロム、ガーネット、鋼、火打ち石、石英、ケイ素、クロム、酸化ベリリウム、酸化ジルコニウム、イリドスミウム、電気石、紅柱石、緑柱石、金剛砂、オスミウム、黄玉、タングステン(焼結)、ホウ化ジルコニウム、コランダム、チッ化チタン、炭化タングステン、炭化タンタル、炭化ジルコニウム、クロム、アルミナ(鋳造)、アルミナ(α)、アルミナ(微細結晶)、シリコンカーバイド(ブラック)、シリコンカーバイド(グリーン)、アルミニウムボライド、ボロンカーバイド、ダイヤモンドなどがあげられる。なかでも、好ましい粒子径のものが入手しやすく、比較的コストも安いという点で、軽石(パーミス)、石英(クオーツ)、金剛砂(エメリー)などの無機系の物質が好ましいが、とくに有機、無機の種類に限定しない。
【0022】
前記粒子の平均粒子径は、500μm以下である。500μmをこえるとゴムの補強性が乏しく、耐摩耗性に悪影響を及ぼす。好ましくは、前記粒子の平均粒子径の下限は10μm、とくには30μm、上限は300μm、とくには150μmである。平均粒子径が10μm未満では、短繊維の表面に傷が付きにくくなるため、掘り起こし摩擦に対する効果が小さくなる傾向がある。
【0023】
前記粒子の配合量は、前記ジエン系ゴム100重量部に対して、1〜10重量部である。前記粒子の配合量が1重量部未満では、短繊維の表面に傷が付きにくくなるため、掘り起こし摩擦に対する効果が小さく、8重量部をこえると耐摩耗性が低下する。
【0024】
本発明のゴム組成物は、前記ジエン系ゴムに、短繊維および粒子を1〜5分間混練りして得ることができる。混練り時間が1分間未満では、短繊維および粒子のゴムへの分散が不充分になる傾向がある。
【0025】
本発明のゴム組成物には、前記成分に加えてゴム組成物の製造に一般に使用される成分、添加剤を、必要に応じて通常使用される量、配合・添加してもよい。前記成分、添加剤の具体例としては、たとえば、補強剤(カーボンブラック、シリカなど)、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなど)、加硫剤(イオウ、塩化イオウ化合物、有機イオウ化合物など)、加硫促進剤(グアニジン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンデート系の化合物など)、架橋剤(有機パーオキサイド化合物、アゾ化合物などのラジカル発生剤や、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物など)、酸化防止剤ないし老化防止剤(ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系などのアミン誘導体、キノリン誘導体、ハイドロキノリン誘導体、モノフェノール類、ジフェノール類、チオビスフェノール類、ヒンダードフェノール類、亜リン酸エステル類など)、ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛、軟化剤、充填剤、可塑剤などがあげられる。
【0026】
本発明のゴム組成物に、補強剤としてカーボンブラックを配合する場合、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(N2SA)は90〜150m2/gであることが好ましい。また、カーボンブラックのDBP(ジブチルフタレート)吸油量は80〜140ml/100gであることが好ましい。
【0027】
本発明のタイヤは、前記ゴム組成物をトレッドに用いて通常の方法によって製造される。すなわち、前記ゴム組成物を未加硫の段階でトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成形機上にて、通常の方法により成形してトレッドとし、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを得ることができる。
【0028】
【実施例】
以下に実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに制限されるものではない。
【0029】
実施例および比較例で使用した原料を以下にまとめて示す。なお、金剛砂、軽石粒子A、軽石粒子B、石膏粒子は、それぞれ原石を粉砕し、ふるいにかけて特定の粒子径のもののみ採取することにより、製造した。
【0030】
天然ゴム:RSS#3
ブタジエンゴム(BR):宇部興産(株)製のウベポール(UBEPOL)BR150B
カーボンブラック:昭和キャボット(株)製のショウブラックN220(N2SA:111m2/g,DBP吸油量:111ml/100g)
マイクロクリスタリンワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
老化防止剤6PPD:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
亜鉛華:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
パラフィンオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスオイル
グラスファイバー:日本板硝子(株)製(平均繊維径:33μm、平均繊維長6mm、モース硬度:5)
金剛砂:試作品(平均粒子径:100μm、モース硬度:7〜9)
軽石粒子A:試作品(平均粒子径:100μm、モース硬度:6)
軽石粒子B:試作品(平均粒子径:700μm、モース硬度:6)
石膏粒子:試作品(平均粒子径:100μm、モース硬度:2)
イオウ:鶴見化学(株)製の粉末イオウ
加硫促進剤:大内新興化学興業(株)製のノクセラーCZ
【0031】
つぎに、実施例および比較例で用いた評価方法を以下にまとめて示す。
▲1▼ゴム中のグラスファイバーの平均繊維長
ゴムを焼成して、グラスファイバーをポリマー成分と分離したのち、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって平均繊維長を求めた。
【0032】
▲2▼氷雪上性能
試作タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、氷板上にて、時速30kmからの制動停止距離を測定した。比較例1のタイヤを基準として、下記式にて求めた指数によって評価した。指数が大きいほど、氷上性能が良好である。
(比較例1の制動停止距離)÷(各例の制動停止距離)×100
【0033】
▲3▼耐摩耗性
試作タイヤを、国産FR車に装着し、走行距離4000km時のタイヤトレッド部の溝深さを測定した。タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し、比較例1を基準として下記式により指数化した。指数が大きいほうが、耐摩耗性が良好である。
(各試作タイヤの溝深さが1mm減るときの走行距離)÷
(比較例1のタイヤの溝深さが1mm減るときの走行距離)×100
【0034】
▲4▼乾燥路面での操縦性
1周が500mの乾燥アスファルト路面のスラロームコースにて周回タイムを計測し、比較例1のタイヤを基準として下記式により指数化した。指数が大きいほうが、乾燥路面での操縦性が良好である。
(比較例1の周回タイム)÷(各例の周回タイム)×100
【0035】
実施例1〜2および比較例1〜5
表1に示す配合処方に従って、まず、イオウおよび加硫促進剤以外の各成分を混練りし、つぎに、イオウおよび加硫促進剤を加えて混練りした。得られたゴム組成物をトレッドに用いて、通常の方法によりタイヤを製造した。得られたタイヤを用いて、前記評価を行なった。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
トレッドゴムに、グラスファイバー、および、特定のモース硬度と粒子径を有する粒子を特定量配合した実施例1および2では、耐摩耗性や乾燥路面での操縦性を維持しながら、氷雪上性能を向上させることができた。
【0038】
モース硬度の低い粒子を用いた比較例2では、氷雪上性能の向上効果は小さかった。これは、ゴムの混練りの際に、粒子によってグラスファイバーが充分に傷付けられず、そのためグラスファイバーが走行によってゴムから抜け落ち、グラスファイバーによる掘り起こし摩擦効果が充分に得られなかったためと考えられる。
【0039】
粒子径の大きい粒子を用いた比較例3では、氷雪上性能は若干向上したが、耐摩耗性が大きく低下した。
【0040】
粒子を少量配合した比較例4では、粒子を配合した効果がほとんど得られなかった。
【0041】
粒子を多量に配合した比較例5では、氷雪上性能は向上したが、耐摩耗性が大きく低下した。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、短繊維と特定の粒子を含むゴム組成物をタイヤトレッドに用いることによって、耐摩耗性や乾燥路面での操縦安定性を低下させることなく、充分な氷雪上性能を得ることができる。
Claims (2)
- ジエン系ゴム100重量部に対して、平均繊維径が10〜100μmで平均繊維長が0.01〜4mm、およびモース硬度が5以下の無機系の短繊維2〜30重量部、および、モース硬度が6以上で平均粒子径が500μm以下である粒子1〜10重量部を含有するゴム組成物。
- 請求項1記載のゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤ。
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