JP4876422B2 - 積層体 - Google Patents

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本発明は、電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等に優れた積層体に関するものである。
従来より、金属酸化物膜は電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度などの点で優れた特性をもつ反面、一般的に靭性に乏しいとされるため金属基材と金属酸化物膜とを接合した複合材が数多く提案されており、エレクトロニクス、エネルギー部材、自動車部材、産業部品、など幅広い分野で応用されてきている。
金属酸化物膜と金属基材との接合方法としては、高融点金属法、活性金属法、蒸着法などいくつかの方法が提案されている。さらに、例えば特許文献1では、アルミを含有する鉄基材を加熱して表面に酸化アルミ膜を形成する方法が提案されている。しかしながら、上記のような従来の積層方法では、以下のような問題点があった。すなわち、高温プロセスを用いる場合には熱膨張率差によって金属酸化物膜に剥離やクラックが生じ、それによる電気絶縁性の低下、剥離およびクラックの発生の部分から酸化が進むといった問題があった。また、従来の方法においては、欠陥であるピンホールの発生が避けられず、金属基材が腐食されたり、長期の使用により金属酸化物膜の皮膜が剥離する等の問題点があった。
また、金属酸化物膜と金属基材を備えた積層体としては、例えば特許文献2にセラミック板と導電板を積層したセラミック積層材が開示されているが、上記セラミック積層材が充分な電気絶縁性を発揮するためには、セラミック板の膜厚を大きくする必要があった。そのため、微細加工が容易であるという金属基材の特徴を活かし、例えば小さな穴を有する金属基材を用いて電気絶縁性の積層体を得ようとした場合に、充分な電気絶縁性を発揮させるには、その穴を埋めてしまうほどの膜厚を有したセラミックスを設けなければならないといった問題があった。そこで、より小さな膜厚で充分な電気絶縁性を有する積層体が求められていた。また、金属酸化物膜と金属基材とを備えた積層体の別の例として、特許文献3においては、Siを含有する鉄基材とその表面に形成された酸化Siの被覆からなる材料が開示されているが、酸化Siで被覆する手段として、PVD法やCVD法が用いられており、酸化Siと鉄基材との密着性が低く、高温条件下での使用や長期の使用により酸化Siの皮膜が剥離する等の問題があった。
特開平6−158276号公報 特開平6−158277号公報 特開2003−39598公報
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、金属酸化物膜の膜厚が薄い場合であっても電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等の特性に優れた積層体を提供することを主目的とするものである。
本発明においては、金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属酸化物膜を構成する金属酸化物結晶が柱状構造を有することを特徴とする積層体を提供する。
本発明によれば、上記金属酸化物結晶が柱状構造を有することから、金属酸化物膜を緻密で強固なものとすることができ、金属酸化物膜の膜厚が薄い場合であっても、電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等に優れた積層体とすることができる。
また、上記発明においては、上記金属酸化物結晶の積層方向の結晶径を、上記金属酸化物結晶の積層方向と直交する方向の結晶径で除した値が、2以上であることが好ましい。積層方向に長い金属酸化物結晶を用いることで、電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等の特性をさらに向上させることができるからである。
また、本発明においては、金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ上記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とする積層体を提供する。
本発明によれば、金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧性が高い積層体、すなわち、より小さな膜厚で耐電圧性(電気絶縁性)に優れた積層体を得ることができる。
また、本発明においては、金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ1000℃で1時間加熱を行う熱劣化試験後、上記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とする積層体を提供する。
本発明によれば、熱劣化試験後においても、金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧性が高い積層体、すなわち、耐熱性が高く、より小さな膜厚で耐電圧性(電気絶縁性)に優れた積層体を得ることができる。
また、本発明においては、金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属酸化物膜の膜厚が1〜20μmの範囲内であり、かつ上記金属酸化物膜に対して、1kgf/cmの圧力をかけ、上記金属酸化物膜の抵抗値を測定する耐圧絶縁性試験を行い、上記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値が100Ω以上であることを特徴とする積層体を提供する。
本発明によれば、金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値が高い積層体、すなわち、より小さな膜厚で耐圧絶縁性(機械強度)に優れた積層体を得ることができる。
また、本発明においては、金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属基材の熱膨張率と、上記金属酸化物膜の熱膨張率との差が±20%の範囲内にあることを特徴とする積層体を提供する。
本発明によれば、金属基材および金属酸化物膜として、互いに熱膨張率が近い材料を選択することによって、高温プロセスにおいても、熱膨張率差による剥離やクラックが金属酸化物膜に生じ難い積層体を得ることができる。
上記発明においては、上記金属酸化物膜が2層以上の金属酸化物層からなり、隣り合う一方の金属酸化物層の熱膨張率と、隣り合う他方の金属酸化物層の熱膨張率との差が±20%の範囲内にあることが好ましい。高温プロセスにおいても、熱膨張率差による剥離やクラックが金属酸化物膜に生じ難い積層体を得ることができるからである。
また、上記発明においては、上記金属酸化物膜を構成する金属酸化物結晶が柱状構造を有することが好ましい。上記金属酸化物結晶が柱状構造を有する場合、金属酸化物膜を緻密で強固なものとすることができ、金属酸化物膜の膜厚が薄い場合であっても、電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等に優れた積層体とすることができるからである。
本発明においては、金属酸化物膜の膜厚が薄い場合であっても電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等の特性に優れた積層体を得ることができるといった効果を奏する。
以下、本発明の積層体について説明する。
本発明の積層体は、金属基板と、上記金属基板上に金属酸化物膜とを有するものである。本発明の積層体は、積層体の構造および特性によって、以下の五態様に大別することができる。すなわち、金属酸化物膜を構成する金属酸化物結晶が柱状構造を有することを特徴とする態様(第一態様)、金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とする態様(第二態様)、金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ後述する熱劣化試験後における金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とする態様(第三態様)、金属酸化物膜の膜厚が1〜20μmの範囲内であり、かつ後述する耐圧絶縁性試験における金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値が100Ω以上であることを特徴とする態様(第四態様)、および金属基材の熱膨張率と、金属酸化物膜の熱膨張率との差が±20%の範囲内にあることを特徴とする態様(第五態様)である。
以下、上記の五態様について詳細に説明する。
1.第一態様
まず、本発明における第一態様の積層体について説明する。本態様の積層体は、金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属酸化物膜を構成する金属酸化物結晶が柱状構造を有することを特徴とするものである。
本態様によれば、上記金属酸化物結晶が柱状構造を有することから、金属酸化物膜を緻密で強固なものとすることができ、金属酸化物膜の膜厚が薄い場合であっても、電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等に優れた積層体とすることができる。
本態様の積層体は、少なくとも金属基材および金属酸化物膜を有するものである。以下、本態様の積層体の各構成について詳細に説明する。
(1)金属基材
まず、本態様に用いられる金属基材について説明する。本態様に用いられる金属基材は、導電性等を有し、後述する金属酸化物膜を担持するものである。本態様に用いられる金属基材の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には鉄、銅、ニッケル、クロム、金、白金、ステンレス、鉄、アルミニウム、チタン、銀およびこれらの合金等が挙げられ、中でも鉄、ステンレス、銅、チタン、アルミニウムが汎用性の観点から好ましい。
また、本態様に用いられる金属基材の形状としては、後述する金属酸化物膜を形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、膜状、筒状、立方体状、球状等を挙げることができる。また、本態様に用いられる金属基材は、平滑な表面を有するもの、多孔質なもの、微細構造部を有するもの、穴が開いているもの、溝が刻まれているもの、流路が存在するもの等であっても良い。
(2)金属酸化物膜
次に、本態様に用いられる金属酸化物膜について説明する。本態様においては、金属酸化物膜の種類を適宜選択することにより、電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等に優れた積層体を得ることができる。
本態様に用いられる金属酸化物膜を構成する金属元素としては、特に限定されるものではないが、具体的には、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、WおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を挙げることができる。
また、本態様において、電気絶縁性に優れた積層体を得る場合には、上記金属元素として、Mg、Al、Si、Ti、Y、Zr、Ce、Hf、TaおよびWからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましく、特にMg、Al、Si、Y、Zr、Ce、HfおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましい。
また、本態様において、耐食性に優れた積層体を得る場合には、上記金属元素として、Al、Si、Ti、Y、Zr、Ce、Hf、Ta、WおよびGdからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましく、特にAl、Si、Ti、Y、Zr、HfおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましい。
また、本態様において、機械強度に優れた積層体を得る場合には、上記金属元素として、Al、Si、Ti、Y、Zr、HfおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましく、特にAl、Ti、Y、Zr、HfおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましい。
上記金属元素を用いた金属酸化物としては、特に限定されるものではないが、具体的には、MgO、Al、SiO、TiO、V、MnO、Fe、CoO、NiO、CuO、ZnO、Y、ZrO、AgO、In、SnO、CeO、Sm、PbO、La、HfO、ScO、Gd、WO、Ta等が挙げられる。
次に、本態様に用いられる金属酸化物膜の構造について説明する。本態様に用いられる金属酸化物膜は、上記金属酸化物の結晶から構成され、この金属酸化物結晶が柱状構造を有することを特徴とするものである。
本態様において「金属酸化物結晶が柱状構造を有する」とは、以下の場合をいう。すなわち、本態様に用いられる金属酸化物膜の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM、S−4500、日立製作所製)または透過型電子顕微鏡(TEM、H−9000、日立製作所製)で測定し、断面図を得る。得られた断面図より、クラックに沿って金属酸化物結晶の輪郭を特定する。この際、輪郭内にはクラックが存在しないように特定する。次に、特定された金属酸化物膜結晶の領域のうち、結晶径が最長となる長さを測定し、その長さが、金属酸化物膜の膜厚に対して70%以上であるものが少なくとも1つ存在する場合は、本態様において、「金属酸化物結晶が柱状構造を有する」ものであるとする。通常、粒子状の金属酸化物結晶においては、最長結晶径が上記条件を満たさない。また、柱状構造を有する金属酸化物結晶を備えた金属酸化物膜としては、例えば、図1に示される金属酸化物膜を挙げることができる。なお、図1(a)は上記金属酸化物膜断面を示すSEM画像であり、図1(b)は上記金属酸化物膜表面を示すSEM画像である。
さらに、上記柱状構造を有する金属酸化物結晶の形状としては、特に限定されるものではないが、金属酸化物結晶の積層方向の結晶径が、金属酸化物結晶の積層方向に直交する方向の結晶径よりも長いことが好ましく、中でも、金属酸化物結晶の積層方向の結晶径を、金属酸化物結晶の積層方向に直交する方向の結晶径で除した値が2以上、特に5以上であることが好ましい。積層方向に長い金属酸化物結晶を用いることで、電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等の特性をさらに向上させることができるからである。
なお、本態様において、「積層方向」とは、金属酸化物膜および金属基材より形成される界面の鉛直方向をいうものである。また、本態様において、「金属酸化物結晶の積層方向の結晶径を、金属酸化物結晶の積層方向に直交する方向の結晶径で除した値」は、以下の方法により算出される。すなわち、金属酸化物膜の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM、S−4500、日立製作所製)または透過型電子顕微鏡(TEM、H−9000、日立製作所製)で測定し、断面図を得る。得られた断面図より、クラックに沿って金属酸化物結晶の輪郭を特定する。この際、輪郭内にはクラックが存在しないように特定する。次に、特定された金属酸化物膜結晶の領域のうち、積層方向の結晶径が最長となる長さ(積層方向結晶径)を測定し、その長さが、金属酸化物膜の膜厚に対して70%以上であるものを20個特定する。次に、上記20個それぞれの金属酸化物結晶において、積層方向と直交する方向の結晶径が最長となる長さ(直交方向結晶径)を測定する。次に、積層方向結晶径を直交方向結晶径で除し、20個の平均をとることにより、上記の値を算出する。
また、本態様に用いられる金属酸化物膜の膜厚としては、特に限定されるものではないが、具体的には、10nm〜50μmの範囲内、中でも500nm〜20μmの範囲内、特に1μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。上記膜厚は、上記走査型電子顕微鏡または上記透過型電子顕微鏡で測定することにより求めることができる。
また、本態様においては、上記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることが好ましい。より小さな膜厚で耐電圧性(電気絶縁性)に優れた積層体を得ることができるからである。上記耐電圧の好適な範囲および測定方法等については、後述する「2.第二態様」に詳細に記載する。
また、本態様においては、後述する熱劣化試験後における金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることが好ましい。耐熱性が高く、より小さな膜厚で耐電圧性(電気絶縁性)に優れた積層体を得ることができるからである。熱劣化試験後における上記耐電圧の好適な範囲および測定方法等については、後述する「3.第三態様」に詳細に記載する。
また、本態様においては、後述する耐圧絶縁性試験における金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値が100Ω以上であることが好ましい。より小さな膜厚で耐圧絶縁性(機械強度)に優れた積層体を得ることができるからである。耐圧絶縁性試験における上記抵抗値の好適な範囲および測定方法等については、後述する「4.第四態様」に詳細に記載する。
また、本態様においては、上記金属基材の熱膨張率と、上記金属酸化物膜の熱膨張率との差が±20%の範囲内にあることが好ましい。高温プロセスにおいて、熱膨張率差による剥離やクラックが金属酸化物膜に生じ難い積層体を得ることができるからである。上記熱膨張率差の好適な範囲等については、後述する「5.第五態様」に詳細に説明する。
また、本態様の積層体の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、絶縁性金属部材、耐食性金属部材、耐擦傷性金属部材等として用いることができる。中でも、特に耐熱性に優れた絶縁性金属部材であるという観点からは、例えば、火力発電、水力発電、原子力発電等に使用されるタービンまたは構造材、あるいは燃料電池部材等に用いることができる。また、特に耐熱性に優れた耐食性金属部材であるという観点からは、例えば、ビル構造材、燃料電池用部材、プラント構造材、配管等に用いることができる。さらに、耐擦傷性金属部材としては、例えば、機械部品、保護材等に用いることができる。
(3)積層体の製造方法
次に、本態様の積層体の製造方法について説明する。本態様の積層体の製造方法としては、上述した構造を有する金属酸化物膜を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、化学溶液法等が挙げられる。上記化学溶液法は、安価で簡便な手法であるという観点から好適に用いられ、具体的にはスプレー法、および溶液法とスプレー法とを組み合わせた溶液スプレー法等を挙げることができる。
以下、本態様の積層体の製造方法に用いられるスプレー法および溶液スプレー法について詳細に説明する。
(a)スプレー法
まず、本態様の積層体の製造方法に用いられるスプレー法について説明する。本態様の積層体の製造方法に用いられるスプレー法は、金属基材を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し、金属源として金属塩または金属錯体が溶解した金属酸化物膜形成用溶液と接触させることにより、上記金属基材上に金属酸化物膜を形成する方法である。
上記スプレー法において、「金属酸化物膜形成温度」とは、金属酸化物膜形成用溶液に含まれる金属源を構成する金属元素が酸素と結合し、金属基材上に金属酸化物膜を形成することが可能な温度をいい、金属塩、金属錯体といった金属源の種類、および溶媒等の金属酸化物膜形成用溶液の組成によって大きく異なるものである。上記スプレー法において、このような「金属酸化物膜形成温度」は、以下の方法により測定することができる。すなわち、実際に所望の金属源を含有する金属酸化物膜形成用溶液を用意し、金属基材の加熱温度を変化させて接触させることにより、金属酸化物膜を形成することができる最低の金属基材加熱温度を測定する。この最低の金属基材加熱温度を上記スプレー法における「金属酸化物膜形成温度」とすることができる。この際、金属酸化物膜が形成したか否かは、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)より得られた結果から判断し、結晶性のないアモルファス膜の場合は、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)より得られた結果から判断するものとする。
(i)金属酸化物膜形成用溶液
まず、上記スプレー法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液について説明する。上記スプレー法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、金属源である金属塩または金属錯体と、溶媒とを少なくとも含有するものである。また、上記スプレー法においては、上記金属酸化物膜形成用溶液が、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。
(金属源)
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源は、金属酸化物膜形成用溶液の溶媒に溶解し、後述する酸化剤、還元剤等の作用により金属酸化物膜を与えるものであれば、金属塩であっても良く、金属錯体であっても良い。なお、「金属錯体」とは、金属イオンに対して無機物または有機物が配位したもの、あるいは、分子中に金属−炭素結合を有する、いわゆる有機金属化合物を含むものである。
上記金属酸化物膜形成用溶液における上記金属源の濃度としては、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.5mol/lであることが好ましい。
このような金属源を構成する金属元素としては、所望の金属酸化物膜を得ることができれば特に限定されるものではないが、具体的には、上述した「(2)金属酸化物膜に用いられる材料」に記載された金属元素等を挙げることができる。
上記金属元素を与える金属塩としては、具体的には、上記金属元素を含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。中でも、塩化物、硝酸塩、酢酸塩を使用することが好ましい。これらの化合物は汎用品として入手が容易だからである。
また、上記金属錯体としては、具体的には、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、カルシウムジ(メトキシエトキシド)、グルコン酸カルシウム一水和物、クエン酸カルシウム四水和物、サリチル酸カルシウム二水和物、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタンペロキソクエン酸アンモニウム四水和物、ジシクロペンタジエニル鉄(II)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)ジピバロイルメタナート、エチルアセト酢酸銅(II)、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛、ストロンチウムジピバロイルメタナート、イットリウムジピバロイルメタナート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタイソプロポキシニオブ、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、タンタル(V)エトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物、クエン酸鉛(II)三水和物、シクロヘキサン酪酸鉛等を挙げることができる。また、上記スプレー法においては、金属酸化物膜形成用溶液が上記金属元素を2種類以上含有していても良い。
(酸化剤)
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる酸化剤は、上述した金属源が溶解してなる金属イオン等の酸化を促進する働きを有するものである。金属イオン等の価数を変化させることにより、金属酸化物膜の発生しやすい環境とすることができる。
上記金属酸化物膜形成用溶液における酸化剤の濃度としては、酸化剤の種類に応じて異なるものではあるが、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.1mol/lであることが好ましい。
このような酸化剤としては、後述する溶媒に溶解し、金属源の酸化を促進することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、酸化銀、二クロム酸、過マンガン酸カリウム等が挙げられ、中でも過酸化水素、亜硝酸ナトリウムを使用することが好ましい。
(還元剤)
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる還元剤は、分解反応により電子を放出し、水の電気分解によって水酸化物イオンを発生させ、金属酸化物膜形成用溶液のpHを上げる働きを有するものである。金属酸化物膜形成用溶液のpHを上昇させ、金属酸化物膜の発生しやすい環境とすることができる。
上記金属酸化物膜形成用溶液における還元剤の濃度としては、還元剤の種類に応じて異なるものではあるが、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.1mol/lであることが好ましい。
このような還元剤としては、後述する溶媒に溶解し、分解反応により電子を放出することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ボラン−tert−ブチルアミン錯体、ボラン−N,Nジエチルアニリン錯体、ボラン−ジメチルアミン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体等のボラン系錯体、水酸化シアノホウ素ナトリウム、水酸化ホウ素ナトリウムを挙げることができ、中でもボラン系錯体を使用することが好ましい。また、上記スプレー法においては、還元剤と上述した酸化剤とを組み合わせて使用しても良い。
(添加剤)
また、上記金属酸化物膜形成用溶液は、補助イオン源、界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。このような補助イオン源としては、具体的には、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、臭素酸イオン、次臭素酸イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンからなる群から選択されるイオン種を挙げることができる。また、上記界面活性剤としては、具体的にはサーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノールGA、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104PPM、サーフィノール104E、サーフィノール104PA等のサーフィノールシリーズ(以上、全て日信化学工業(株)社製)、NIKKOL AM301、NIKKOL AM313ON(以上、全て日光ケミカル社製)等を挙げることができる。
(溶媒)
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる溶媒は、上述した金属源、酸化剤、還元剤等を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属源が金属塩の場合は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒等を挙げることができ、金属源が金属錯体の場合は、上述した低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。
(ii)金属基材と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法
次に、上記スプレー法における金属基材と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法について説明する。上記接触方法としては、上述した金属基材と上述した金属酸化物膜形成用溶液とを接触させる方法であれば特に限定されるものではないが、具体的には、上記金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより金属基材に接触させる方法等が挙げられる。上記方法としては、例えば、図2に示すように、金属基材1を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し、この金属基材1に対して、スプレー装置2を用いて金属酸化物膜形成用溶液3を噴霧することにより、金属酸化物膜を形成する方法等が挙げられる。
また、上記スプレー法における加熱方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホットプレート、オーブン、焼成炉、赤外線ランプ、熱風送風機等の加熱方法を挙げることができ、中でも金属基材の温度を上記温度に保持しながら上記金属酸化物膜形成用溶液に接触できる方法が好ましく、具体的にはホットプレート等を使用することが好ましい。
また、上記スプレー法においては、加熱された金属基材と金属酸化物膜形成用溶液とを接触させるのであるが、その際、金属基材は上述した「金属酸化物膜形成温度」以上の温度まで加熱される。このような「金属酸化物膜形成温度」は、金属源の種類、溶媒等の金属酸化物膜形成用溶液の組成によってものであるが、金属酸化物膜形成用溶液に酸化剤および/または還元剤を加えない場合、通常400〜600℃の範囲内とすることができ、中でも、450〜550℃の範囲内であることが好ましい。一方、金属酸化物膜形成用溶液に酸化剤および/または還元剤を加える場合、通常150〜400℃の範囲内とすることができ、中でも、300〜400℃の範囲内であることが好ましい。
(b)溶液スプレー法
次に、本態様の積層体の製造方法に用いられる溶液スプレー法について説明する。本態様の積層体の製造方法に用いられる溶液スプレー法は、金属基材に対して、まず溶液法を行い、次いでスプレー法を行うことにより、金属基材上に金属酸化物膜を形成する方法である。以下、まず上記スプレー法について説明し、次いで上記溶液法について説明する。
(i)溶液法
上記溶液スプレー法における溶液法は、金属源として金属塩または金属錯体が溶解した金属酸化物膜形成用溶液と、金属基材とを接触させることにより、上記金属基材上に金属酸化物膜を形成する方法である。
(金属酸化物膜形成用溶液)
上記溶液法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、金属源である金属塩または金属錯体と、溶媒とを少なくとも含有するものである。また、上記溶液法においては、上記金属酸化物膜形成用溶液が、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源、酸化剤、還元剤、添加剤および溶媒については、上記「スプレー法」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。また、溶液法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液においては、上記金属源の濃度が通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.1mol/lであることが好ましい。また、溶液法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液において、酸化剤、還元剤および添加剤等の濃度は、上記「スプレー法」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(金属基材と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法)
また、上記溶液法における金属基材と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法としては、所望の金属酸化物膜を形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、具体的には、ディッピング法、ロールコート法、枚葉式による方法等が挙げられる。
上記ディッピング法は、金属基材を金属酸化物膜形成用溶液に浸漬することにより、金属基材上に金属酸化物膜を形成する方法である。上記ディッピング法としては、例えば図3に示すように、金属基材1を金属酸化物膜形成用溶液3に浸漬することにより金属基材1上に金属酸化物膜を形成する方法等を挙げることができる。
(ii)スプレー法
また、上記溶液スプレー法におけるスプレー法は、上述した溶液法により得られた金属基材および金属酸化物膜に対して、行うものである。上記溶液スプレー法におけるスプレー法としては、上述した「(a)スプレー法」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。なお、上記溶液スプレーにおいては、溶液法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液の金属源の種類と、スプレー法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液の金属源の種類とを異なるものにすることにより、金属基材上に異種の金属酸化物膜を形成することができる。
2.第二態様
次に、本発明における第二態様の積層体について説明する。本態様の積層体は、金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ上記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とするものである。
本態様によれば、金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧性が高い積層体、すなわち、より小さな膜厚で耐電圧性(電気絶縁性)に優れた積層体を得ることができる。従来の積層体においては、例えば500Vの耐電圧性を得るためには、金属酸化物膜の膜厚として30μm以上が必要であった。これに対して、本態様の積層体においては、基材上に形成された金属酸化物膜が緻密であることから、500Vの耐電圧性を10μm以下の膜厚で実現することが可能であり、小さな膜厚で充分な電気絶縁性を有する積層体とすることができる。
また、本態様の積層体は、上記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とするものであるが、中でも40〜100Vの範囲内、特に40〜60Vの範囲内であることが好ましい。なお、本態様において、耐電圧とは、電気絶縁性を失って0.5mA以上の電流を通す絶縁破壊を生じさせない最大の電圧を意味するものである。上記耐電圧の値は、耐電圧測定機(APT−8741、TOA Electronics社製)を用いて測定することにより得られる。一般的に、耐電圧の値と金属酸化物膜の膜厚とは比例関係を有するものである。
また、本態様の積層体は、上記金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であることを特徴とするものであるが、好ましくは10nm〜20μmの範囲内、より好ましくは500nm〜15μmの範囲内、特に好ましくは、1〜10μmの範囲内である。
以下、本態様の積層体の各構成について説明する。
(1)金属基材
本態様に用いられる金属基材は、導電性等を有し、後述する金属酸化物膜を担持するものである。本態様に用いられる金属基材としては、例えば、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様のものを挙げることができるが、中でも鉄、ステンレス、銅、チタン、アルミニウムが好ましい。上記金属基材は導電性に優れているからである。
(2)金属酸化物膜
本態様に用いられる金属酸化物膜は、金属基材上に形成され、上記の耐電圧性を有するものである。本態様に用いられる金属酸化物膜を構成する金属元素としては、上記の耐電圧性を有する金属酸化物膜を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上述した「1.第一態様」に記載した金属元素を挙げることができ、中でもMg、Al、Si、Ti、Y、Zr、Ce、Hf、WおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましい。耐電圧性に優れた積層体を得ることができるからである。このような金属元素を用いた金属酸化物としては、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様のものを挙げることができる。
また、本態様に用いられる金属酸化物膜の構造としては、上記の耐電圧性を有する積層体を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上記金属酸化物膜を構成する金属酸化物結晶が柱状構造を有することが好ましい。このような金属酸化物結晶については、上述した「1.第一態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様において、熱劣化試験後における金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧、耐圧絶縁性試験における金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値、および上記金属基材と上記金属酸化物膜との熱膨張率差については、上述した「1.第一態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様の積層体の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、絶縁性金属部材として用いることができる。このような絶縁性金属部材の具体例としては、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(3)積層体の製造方法
本態様の積層体の製造方法としては、上述した構造を有する金属酸化物膜を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、上記「1.第一態様」に記載したスプレー法等を挙げることができる。上記スプレー法においては、噴霧される金属酸化物膜形成用溶液の量を調節することによって、所望の膜厚を有する積層体を得ることができる。
3.第三態様
次に、本発明における第三態様の積層体について説明する。本態様の積層体は、金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ1000℃で1時間加熱を行う熱劣化試験後、上記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とするものである。
本態様によれば、熱劣化試験後においても、金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧性が高い積層体、すなわち、耐熱性が高く、より小さな膜厚で(耐電圧性)電気絶縁性に優れた積層体とすることができる。従来の積層体、例えば、CVD法やPVD法等により金属基材上に金属酸化物を備えた積層体においては、金属基材と金属酸化物との密着性が弱く、熱劣化試験後に耐電圧性が大幅に低下する場合があったが、本態様の積層体は、金属基材と金属酸化物との密着性が高いので、膜厚が薄い場合であっても、充分な耐熱性および耐電圧性を有する積層体とすることができる。
また、本態様の積層体は、熱劣化後における金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とするものであるが、中でも40〜100Vの範囲内、特に40〜60Vの範囲内であることが好ましい。なお、上記耐電圧の値の測定方法等は、「2.第二態様」と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様において、熱劣化試験とは、積層体を電気マッフル炉(デンケン社製、P90)に入れ、1時間で1000℃まで昇温し、次に1000℃で1時間保持し、その後、12時間で300℃まで降温する試験をいうものである。
また、本態様の積層体は、上記金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であることを特徴とするものであるが、好ましくは10nm〜20μmの範囲内、より好ましくは500nm〜15μmの範囲内、特に好ましくは、1〜10μmの範囲内である。
以下、本態様の積層体の各構成について説明する。
(1)金属基材
本態様に用いられる金属基材は、導電性等を有し、後述する金属酸化物膜を担持するものである。本態様に用いられる金属基材としては、例えば、上述した「2.第二態様」に記載したものと同様のものを挙げることができるので、ここでの説明は省略する。
(2)金属酸化物膜
本態様に用いられる金属酸化物膜は、金属基材上に形成され、上記の耐電圧性を有するものである。本態様に用いられる金属酸化物膜を構成する金属元素としては、上記の耐電圧性を有する金属酸化物膜を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上述した「1.第一態様」に記載した金属元素を挙げることができ、中でもMg、Al、Si、Ti、Y、Zr、Ce、Hf、WおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましい。耐電圧性に優れた積層体を得ることができるからである。
また、本態様に用いられる金属酸化物膜の構造としては、上記の耐電圧性を有する積層体を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上記金属酸化物膜を構成する金属酸化物結晶が柱状構造を有することが好ましい。このような金属酸化物結晶については、上述した「1.第一態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様において、金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧、耐圧絶縁性試験における金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値、および上記金属基材と上記金属酸化物膜との熱膨張率差については、上述した「1.第一態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様の積層体の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、耐熱性に優れた絶縁性金属部材として用いることができる。このような耐熱性に優れた絶縁性金属部材の具体例としては、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(3)積層体の製造方法
本態様の積層体の製造方法としては、上述した構造を有する金属酸化物膜を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、上記「1.第一態様」に記載したスプレー法などを挙げることができる。
4.第四態様
次に、本発明における第四態様の積層体について説明する。金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属酸化物膜の膜厚が1〜20μmの範囲内であり、かつ上記金属酸化物膜に対して、1kgf/cmの圧力をかけ、上記金属酸化物膜の抵抗値を測定する耐圧絶縁性試験を行い、上記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値が100Ω以上であることを特徴とするものである。
本態様によれば、金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値が高い積層体、すなわち、より小さな膜厚で耐圧絶縁性(機械強度)に優れた積層体とすることができる。
また、本態様の積層体は、上記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値が100Ω以上であることを特徴とするものであるが、中でも100〜10Ωの範囲内、特に10〜10Ωの範囲内であることが好ましい。なお、本態様において、上記抵抗値は、耐熱絶縁性試験より得られる値である。本態様における耐圧絶縁性試験とは、積層体の金属基材側表面および金属酸化物膜側表面を、金めっき処理を表面に施した2枚の銅板で挟み、小型熱プレス機(AH−2003、アズワン社製)を用いて1kgf/cmの圧力で加圧し、その状態で、2枚の銅板間の抵抗値をデジタルマルチメーター(CDM2000D、アズワン社製)を用いて測定する試験をいうものである。また、一般的に、抵抗値と金属酸化物膜の膜厚とは比例関係を有するものである。
また、本態様の積層体は、上記金属酸化物膜の膜厚が1〜20μmの範囲内であることを特徴とするものであるが、中でも3〜15μmの範囲内、特に5〜10μmの範囲内であることが好ましい。
以下、本態様の積層体の各構成について説明する。
(1)金属基材
本態様に用いられる金属基材は、導電性等を有し、後述する金属酸化物膜を担持するものである。本態様に用いられる金属基材としては、例えば、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様のものを挙げることができるが、中でも鉄、ステンレス、銅、チタン、アルミニウムが汎用性の観点から好ましい。
(2)金属酸化物膜
本態様に用いられる金属酸化物膜は、金属基材上に形成され、上記の耐圧絶縁性を有するものである。本態様に用いられる金属酸化物膜を構成する金属元素としては、上記の耐圧絶縁性を有する金属酸化物膜を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上述した「1.第一態様」に記載した金属元素を挙げることができ、中でもAl、Si、Ti、Y、ZrおよびHfからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましい。耐圧絶縁性に優れた積層体を得ることができるからである。このような金属元素を用いた金属酸化物としては、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様のものを挙げることができる。
また、本態様に用いられる金属酸化物膜の構造としては、上記の耐圧絶縁性を有する積層体を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上記金属酸化物膜を構成する金属酸化物結晶が柱状構造を有することが好ましい。このような金属酸化物結晶については、上述した「1.第一態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様において、金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧、熱劣化試験後における金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧、および上記金属基材と上記金属酸化物膜との熱膨張率差については、上述した「1.第一態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様の積層体の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、耐擦傷性金属部材として用いることができる。このような耐擦傷性金属部材の具体例としては、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(3)積層体の製造方法
次に、本態様の積層体の製造方法について説明する。本態様の積層体の製造方法としては、上記の耐圧絶縁性を有する金属酸化物膜を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、上記「1.第一態様」に記載したスプレー法等を挙げることができる。
5.第五態様
次に、本発明における第五態様の積層体について説明する。本態様の積層体は、金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属基材の熱膨張率と、上記金属酸化物膜の熱膨張率との差が±20%の範囲内にあることを特徴とするものである。
本態様によれば、金属基材および金属酸化物膜として、互いに熱膨張率が近い材料を選択することによって、高温プロセスにおいても、熱膨張率差による剥離やクラックが金属酸化物膜に生じ難い積層体とすることができる。このように剥離やクラックが生じ難い
積層体は、用いる金属酸化物膜の種類を適宜選択することによって、電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等に優れた積層体となる。
また、本態様の積層体は、上記金属基材の熱膨張率と、上記金属酸化物膜の熱膨張率との差が±20%の範囲内にあることを特徴とするものであるが、中でも、上記熱膨張率の差が、±15%の範囲内、特に±10%の範囲内であることが好ましい。なお、上記熱膨張率(%)は、JISR1618「ファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法」に沿って行う測定により得られるものである。
以下、本態様の積層体の各構成について説明する。
(1)金属基材
本態様に用いられる金属基材は、導電性等を有し、後述する金属酸化物膜を担持するものである。本態様に用いられる金属基材としては、電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等を付与する金属酸化物膜の種類、ならびにその金属酸化物膜の熱膨張率を考慮して選択することが好ましいが、例えば、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様のものを挙げることができ、中でも鉄、ステンレス、銅、チタン、アルミニウムが汎用性の観点から好ましい。
(2)金属酸化物膜
本態様に用いられる金属酸化物膜は、金属基材上に形成され、上記の耐電圧性を有するものである。本態様に用いられる金属酸化物膜としては、積層体に用いられる金属基材との熱膨張率差が±20%の範囲内であるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様のものを挙げることができ、中でもMg、Zr、Al、Siからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましい。
また、本態様に用いられる金属酸化物膜は、単層の金属酸化物層からなるものであっても良く、2層以上の金属酸化物層からなるものであっても良い。
本態様に用いられる金属酸化物膜が2層以上の金属酸化物層からなる場合、このような金属酸化物層としては、熱膨張率の差による剥離やクラックが生じ難いものであれば任意の層を選択することができるが、中でも、隣り合う一方の金属酸化物層の熱膨張率と、隣り合う他方の金属酸化物層の熱膨張率との差が±20%の範囲内にあることが好ましい。高温プロセスにおいても、熱膨張率差による剥離やクラックが金属酸化物膜に生じ難い積層体を得ることができるからである。
例えば、電気絶縁性に優れた酸化アルミニウムを用いて金属基材を絶縁する場合に、金属基材としてSUS等の鉄系基材を用いると、熱膨張率の差が±20%の範囲内に入らず、高温プロセスにおいて、熱膨張率差による剥離やクラックが酸化アルミニウムに生じる場合があった。このような場合に、金属基材と酸化アルミニウムとの間に、両者の熱膨張率に対して±20%の範囲内の中間金属酸化物層を設けることによって、剥離やクラックが生じ難い積層体とすることができる。
さらに、上記中間金属酸化物層は、単層であっても良く、複数層であっても良い。単層の中間金属酸化物層としては、例えば、銅基材と酸化ジルコニウム層との間に、酸化マグネシウム層を設ける場合等を挙げることができる。この場合、酸化マグネシウム層および酸化ジルコニウム層が、本発明における金属酸化物膜となる。
また、上記複数層の中間金属酸化物層としては、具体的には、鉄系基材と酸化アルミニウム層との間に、鉄系基材側から順に、酸化鉄層、酸化ニッケル層および酸化珪素層を設ける場合等を挙げることができる。さらに、別の例としては、鉄系基材と酸化アルミニウム層との間に、鉄系基材側から順に、酸化ジルコニウム層、酸化ジルコニウム−酸化アルミニウム(ZrO−Al)層を設ける場合等を挙げることができる。
また、本態様に用いられる金属酸化物膜の膜厚としては、特に限定されるものではないが、具体的には10nm〜20μmの範囲内、中でも500nm〜15μmの範囲内、特に1〜10μmの範囲内であることが好ましい。
また、本態様に用いられる金属酸化物膜の構造としては、上記の熱膨張率差の条件を満たす積層体を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上記金属酸化物膜を構成する金属酸化物結晶が柱状構造を有することが好ましい。本態様においては、上記金属酸化物膜が2層以上の金属酸化物層からなる場合は、各々の金属酸化物層を構成する金属酸化物結晶が柱状構造を有することが好ましい。このような金属酸化物結晶については、上述した「1.第一態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、本態様において、金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧、熱劣化試験後における金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧、および耐圧絶縁性試験における金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値については、上述した「1.第一態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(3)金属基材と金属酸化物膜との組み合わせ
次に、本態様に用いられる金属基材と金属酸化物膜との組み合わせについて説明する。本態様に用いられる金属基材と金属酸化物膜との組み合わせとしては、互いの熱膨張率差が±20%の範囲内にあるものであれば特に限定されるものではない。本態様においては、特に、上記金属基材が鉄系基材であり、かつ、上記金属酸化物膜が鉄系酸化物膜である場合が好ましい。熱膨張率差による剥離やクラックが金属酸化物膜に生じ難い積層体を得ることができるからである。
上記鉄系基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、鉄、ステンレス、鉄とニッケルとの合金、鉄とニッケルとコバルトとの合金等を挙げることができ、中でも鉄とニッケルとコバルトとの合金が好ましい。また、上記鉄系酸化物膜としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化鉄、ニッケルをドープした酸化鉄、ニッケルおよびクロムをドープした酸化鉄、ニッケルおよびコバルトをドープした酸化鉄挙げることができ、中でもニッケルおよびコバルトをドープした酸化鉄が好ましい。本態様においては特に、鉄系基材として鉄とニッケルとコバルトとの合金を用い、鉄系酸化物膜としてニッケルおよびコバルトをドープした酸化鉄を用いた積層体が好ましい。上記鉄系基材と上記鉄系酸化物膜との熱膨張率の差は±20%の範囲内であり、熱膨張率差による剥離やクラック等が生じ難いからである。
本態様に用いられる金属基材と金属酸化物膜との別の組み合わせとしては、具体的には、ステンレス基材および酸化マグネシウムの組合せ、チタン基材および酸化ジルコニウムの組合せ、鉄とニッケルとコバルトとの合金基材および酸化アルミニウム−酸化珪素(Al−SiO)の組合せ等を挙げることができる。
また、本態様の積層体の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、絶縁性金属部材、耐食性金属部材として用いることができる。このような部材の具体例としては、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(3)積層体の製造方法
次に、本態様の積層体の製造方法について説明する。本態様の積層体の製造方法としては、上述した構造を有する金属酸化物膜を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば上記「1.第一態様」に記載したスプレー法等を挙げることができる。本態様においては、複数の種類の金属酸化物膜形成用溶液を用いて、金属基材に対して順次スプレー法を行うことによって、本態様の積層体を得ることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
本実施例においては、SUS304基材を用い、上記基材上に柱状構造を有するZrO膜を形成した。
まず、水とエタノールとが20:80となるように調製した混合溶媒1000gに、塩化ジルコニウム(関東化学社製)を0.1mol/lとなるように溶解させ、金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、500℃に加熱したSUS304基材にハンドスプレー(アズワン社製)を用いて上記金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、SUS304基材上にZrO膜を備えた積層体を得た。この積層体の酸化ジルコニム膜の膜厚は、1.2μmであった。上記方法により得られた積層体の断面のSEM画像を図1(a)に、積層体の金属酸化物膜表面のSEM画像を図1(b)に示す。ここから、ZrOの積層方向の結晶径を、ZrOの積層方向と直交する方向の結晶径で除した値が、おおよそ3であることが分かった。
また、SUS304基材の表面抵抗は10−2Ω/□であったのに対して、ZrO膜を備えた場合は1013Ω/□であり、絶縁性が確認された。
[比較例1]
本比較例は、スラリーコート法を用いた絶縁方法を示したものである。実施例1で使用したSUS304基材上にZrO微粒子をペースト状に塗布することによって、SUS304基材上にZrO膜を作製した。
具体的な製造方法としては、まず、溶媒である水およびイソプロピルアルコールに、一次粒子37nmの酸化ジルコニウム微粒子(ホソカワミクロン社製)40重量%、アセチルアセトン1.2重量%、ポリエチレングリコール(平均分子量3000)1.9重量%となるように添加し、ホモジナイザーを用いて上記試料が溶解、分散されたスラリーを作製した。このスラリーをドクターブレード法にてSUS304基材上に塗布後、20分放置し、100℃で30分間乾燥させた。続いて、電気マッフル炉(デンケン社製、P90)を用い500℃で30分間、大気圧雰囲気下にて焼成した。これにより、SUS304基材上にZrO膜を得た。上記方法により得られた積層体のSEM画像から、粒子状の酸化ジルコニウムは確認されたが、柱状構造を有するものではなかった。
[実施例2]
本実施例においては、Fe−Ni合金基材を用い、上記基材上に耐電圧性に優れたCeO膜を形成した。まず、エタノール1000gに、硝酸セリウムを0.1mol/lとなるように溶解させ、金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、500℃に加熱したFe−Ni合金基材にハンドスプレー(アズワン社製)を用いて上記金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、Fe−Ni合金基材上にCeO膜を備えた積層体を得た。この積層体のCeO膜の膜厚は、3μmであった。
上記方法により得られた積層体について耐電圧測定機(TOA Electronics社製、APT−8741)によって耐電圧を測定したところ、280Vの耐電圧性を有することが分かった。なお、上記試験においては、印加電圧を上昇させていき、0.5mAの電流が流れた時に絶縁破壊が起こったものと判断した。また、Fe−Ni合金基材の表面抵抗は10−2Ω/□であったのに対して、CeO膜を備えた場合は1012Ω/□であり、絶縁性が確認された。
[比較例2]
本比較例は、スラリーコート法を用いた絶縁方法を示したものである。実施例2で使用したFe−Ni合金基材にCeO微粒子をペースト状に塗布することによって、Fe−Ni合金基材上にCeO膜を作製した。
具体的な製造方法としては、まず、溶媒である水およびイソプロピルアルコールに、一次粒子9nmの酸化セリウム微粒子(ホソカワミクロン社製)40重量%、アセチルアセトン1.2重量%、ポリエチレングリコール(平均分子量3000)1.9重量%となるように添加し、ホモジナイザーを用いて上記試料が溶解、分散されたスラリーを作製した。このスラリーをドクターブレード法にてFe−Ni合金基材上に塗布後、20分放置し、100℃で30分間乾燥させた。続いて、電気マッフル炉(デンケン社製、P90)を用い500℃で30分間、大気圧雰囲気下にて焼成した。これにより、Fe−Ni合金基材上にCeO膜を得た。この積層体の膜厚は、8μmであった。
上記方法により得られた積層体について、耐電圧測定機(TOA Electronics社製、APT−8741)によって耐電圧を測定したところ、50Vの耐電圧性を有することが分かった。この値は、本発明における耐電圧性の条件を満たすものではなかった。
[実施例3]
本実施例においては、実施例2で得られた積層体に対して、熱劣化試験を行った。
具体的には、実施例2で得られた積層体を、電気マッフル炉(デンケン社製、P90)に入れ、1時間で1000℃まで昇温し、次に1000℃で1時間保持し、その後、12時間で300℃まで降温した。電気マッフル炉から取り出した積層体について耐電圧測定機(TOA Electronics社製、APT−8741)によって耐電圧を測定したところ、180Vの耐電圧性を有することが分かった。
[比較例3]
本比較例においては、比較例2で得られた積層体に対して、熱劣化試験を行った。実施例3と同様に加熱を行った結果、熱劣化試験後の積層体は、布でこすると金属酸化物膜が剥離してしまうものであった。すなわち、本発明における耐電圧性の条件を満たすものではなかった。
[実施例4]
本実施例においては、チタン基材を用い、上記基材上に、ZrO−Al膜を形成した。
まず、トルエンとエタノールとが1:1となるように調製した混合溶媒1000gに、塩化酸化ジルコニウムを0.1mol/l、アルミニウムアセチルアセトナートを0.05mol/lとなるように溶解させ、金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、450℃に加熱したチタン基材にハンドスプレー(アズワン社製)を用いて上記金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、チタン基材上にZrO−Al膜を備えた積層体を得た。この積層体のZrO−Al膜の膜厚は、10μmであった。
また、チタン基材の表面抵抗は10−2Ω/□であったのに対して、ZrO-Al膜を備えた場合は1013Ω/□であり、絶縁性が確認された。
また、上記方法により得られた積層体を、金めっき処理を表面に施した2枚の銅板で挟み、小型熱プレス機(AH−2003、アズワン社製)を用いて1kgf/cmの圧力で加圧し、その状態で2枚の銅板間の抵抗値をデジタルマルチメーター(CDM2000D、アズワン社製)を用いて測定した結果、10Ωの抵抗を確認した。
[実施例5]
本実施例においては、銅基材を用い、上記基材上に、上記基材に対する熱膨張率差が±20%以内であるMgO層、および上記MgO層に対する熱膨張率差が±20%以内であるZrO層を形成した。
まず、水とエタノールとが1:1となるように調製した混合溶媒1000gに、塩化マグネシウムを0.1mol/lとなるように溶解させ、MgO層用金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、500℃に加熱した銅基材にハンドスプレー(アズワン社製)を用いてMgO層用金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、銅基材上にMgO層を形成した。上記MgO層の膜厚は、2μmであった。
続いて、トルエンとエタノールとが1:1となるように調製した混合溶媒1000gに、ジルコニウムアセチルアセトナートを0.02mol/lとなるように溶解させ、ZrO層用金属酸化物膜形成用溶液を得た。
400℃に加熱した、銅基材を有するMgO層にハンドスプレー(アズワン社製)を用いてZrO層用金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、銅基材、MgO層およびZrO層を順に備えた積層体を得た。この積層体の金属酸化物膜の膜厚は、合計で4μmであった。
また、銅基材の表面抵抗は10−2Ω/□であったのに対して、MgO層およびZrO層を備えた場合は1013Ω/□であり、絶縁性が確認された。
また、上記方法により得られた積層体を、電気マッフル炉(デンケン社製、P90)に入れ、1時間で1000℃まで昇温し、次に1000℃で1時間保持し、その後、12時間で300℃まで降温した。電気マッフル炉から取り出した積層体は、クラックが発生せず、良好な耐熱性を示すものであった。
本実施例においては、SUS430基材を用い、上記基材上に、上記基材に対する熱膨張率差が±20%以内であるZrO層、上記ZrO層に対する熱膨張率差が±20%以内であるZrO−Al層、および上記ZrO−Al層に対する熱膨張率差が±20%以内であるAl層を形成した。
まず、トルエンとエタノールとが1:1となるように調製した混合溶媒1000gに、ジルコニウムアセチルアセトナートを0.02mol/lなるように溶解させ、ZrO層用金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、500℃に加熱したSUS430基材にハンドスプレー(アズワン社製)を用いてZrO層用金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、SUS430基材上にZrO層を形成した。上記ZrO層の膜厚は、500nmであった。
続いて、トルエンとエタノールとが1:1となるように調製した混合溶媒1000gに、ジルコニウムアセチルアセトナートを0.02mol/l、アルミニウムアセチルアセトナート0.005mol/lとなるように溶解させ、ZrO−Al層用金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、400℃に加熱した上記ZrO層にハンドスプレー(アズワン社製)を用いてZrO−Al層用金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、上記ZrO層上にZrO−Al層を形成した。上記ZrO層および上記ZrO−Al層の膜厚は、合計で1.5μmであった。
最後に、続いて、トルエンとエタノールとが1:1となるように調製した混合溶媒1000gに、アルミニウムアセチルアセトナートを0.1mol/lとなるように溶解させ、Al層用金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、500℃に加熱した上記ZrO−Al層にハンドスプレー(アズワン社製)を用いてAl層用金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、上記ZrO−Al層上にAl層を形成した。上記ZrO層、上記ZrO−Al層および上記Al層の膜厚は、合計で3μmであった。
また、銅基材の表面抵抗は10−3Ω/□であったのに対して、ZrO層、ZrO−Al層、およびAl膜を順に備えた場合は、1013Ω/□であり、絶縁性が確認された。
また、上記方法により得られた積層体を、電気マッフル炉(デンケン社製、P90)に入れ、1時間で1000℃まで昇温し、次に1000℃で1時間保持し、その後、12時間で300℃まで降温した。電気マッフル炉から取り出した積層体は、クラックが発生せず、良好な耐熱性を示すものであった。
本発明の積層体の一例を示すSEM画像である。 本発明の積層体の製造方法におけるスプレー法の一例を示す説明図である。 本発明の積層体の製造方法における溶液法の一例を示す説明図である。
符号の説明
1 … 金属基材
2 … スプレー装置
3 … 金属酸化物膜形成用溶液

Claims (4)

  1. 金属基材と、前記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、
    前記金属酸化物膜を構成する金属酸化物結晶が柱状構造を有し、
    前記金属酸化物結晶の積層方向の結晶径を、前記金属酸化物結晶の積層方向と直交する方向の結晶径で除した値が、2以上であり、
    前記金属基材の熱膨張率と、前記金属酸化物膜の熱膨張率との差が±20%の範囲内にあり、さらに、前記金属酸化物膜が2層以上の金属酸化物層からなり、隣り合う一方の金属酸化物層の熱膨張率と、隣り合う他方の金属酸化物層の熱膨張率との差が±20%の範囲内にあることを特徴とする積層体。
  2. 前記金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ前記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
  3. 前記金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ1000℃で1時間加熱を行う熱劣化試験後、前記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
  4. 前記金属酸化物膜の膜厚が1〜20μmの範囲内であり、かつ前記金属酸化物膜に対して、1kgf/cmの圧力をかけ、前記金属酸化物膜の抵抗値を測定する耐圧絶縁性試験を行い、前記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値が100Ω以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
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