JP4876422B2 - 積層体 - Google Patents
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Description
本発明の積層体は、金属基板と、上記金属基板上に金属酸化物膜とを有するものである。本発明の積層体は、積層体の構造および特性によって、以下の五態様に大別することができる。すなわち、金属酸化物膜を構成する金属酸化物結晶が柱状構造を有することを特徴とする態様(第一態様)、金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とする態様(第二態様)、金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ後述する熱劣化試験後における金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とする態様(第三態様)、金属酸化物膜の膜厚が1〜20μmの範囲内であり、かつ後述する耐圧絶縁性試験における金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値が100Ω以上であることを特徴とする態様(第四態様)、および金属基材の熱膨張率と、金属酸化物膜の熱膨張率との差が±20%の範囲内にあることを特徴とする態様(第五態様)である。
以下、上記の五態様について詳細に説明する。
まず、本発明における第一態様の積層体について説明する。本態様の積層体は、金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属酸化物膜を構成する金属酸化物結晶が柱状構造を有することを特徴とするものである。
まず、本態様に用いられる金属基材について説明する。本態様に用いられる金属基材は、導電性等を有し、後述する金属酸化物膜を担持するものである。本態様に用いられる金属基材の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には鉄、銅、ニッケル、クロム、金、白金、ステンレス、鉄、アルミニウム、チタン、銀およびこれらの合金等が挙げられ、中でも鉄、ステンレス、銅、チタン、アルミニウムが汎用性の観点から好ましい。
次に、本態様に用いられる金属酸化物膜について説明する。本態様においては、金属酸化物膜の種類を適宜選択することにより、電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等に優れた積層体を得ることができる。
次に、本態様の積層体の製造方法について説明する。本態様の積層体の製造方法としては、上述した構造を有する金属酸化物膜を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、化学溶液法等が挙げられる。上記化学溶液法は、安価で簡便な手法であるという観点から好適に用いられ、具体的にはスプレー法、および溶液法とスプレー法とを組み合わせた溶液スプレー法等を挙げることができる。
以下、本態様の積層体の製造方法に用いられるスプレー法および溶液スプレー法について詳細に説明する。
まず、本態様の積層体の製造方法に用いられるスプレー法について説明する。本態様の積層体の製造方法に用いられるスプレー法は、金属基材を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し、金属源として金属塩または金属錯体が溶解した金属酸化物膜形成用溶液と接触させることにより、上記金属基材上に金属酸化物膜を形成する方法である。
まず、上記スプレー法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液について説明する。上記スプレー法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、金属源である金属塩または金属錯体と、溶媒とを少なくとも含有するものである。また、上記スプレー法においては、上記金属酸化物膜形成用溶液が、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源は、金属酸化物膜形成用溶液の溶媒に溶解し、後述する酸化剤、還元剤等の作用により金属酸化物膜を与えるものであれば、金属塩であっても良く、金属錯体であっても良い。なお、「金属錯体」とは、金属イオンに対して無機物または有機物が配位したもの、あるいは、分子中に金属−炭素結合を有する、いわゆる有機金属化合物を含むものである。
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる酸化剤は、上述した金属源が溶解してなる金属イオン等の酸化を促進する働きを有するものである。金属イオン等の価数を変化させることにより、金属酸化物膜の発生しやすい環境とすることができる。
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる還元剤は、分解反応により電子を放出し、水の電気分解によって水酸化物イオンを発生させ、金属酸化物膜形成用溶液のpHを上げる働きを有するものである。金属酸化物膜形成用溶液のpHを上昇させ、金属酸化物膜の発生しやすい環境とすることができる。
また、上記金属酸化物膜形成用溶液は、補助イオン源、界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。このような補助イオン源としては、具体的には、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、臭素酸イオン、次臭素酸イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンからなる群から選択されるイオン種を挙げることができる。また、上記界面活性剤としては、具体的にはサーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノールGA、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104PPM、サーフィノール104E、サーフィノール104PA等のサーフィノールシリーズ(以上、全て日信化学工業(株)社製)、NIKKOL AM301、NIKKOL AM313ON(以上、全て日光ケミカル社製)等を挙げることができる。
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる溶媒は、上述した金属源、酸化剤、還元剤等を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属源が金属塩の場合は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒等を挙げることができ、金属源が金属錯体の場合は、上述した低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。
次に、上記スプレー法における金属基材と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法について説明する。上記接触方法としては、上述した金属基材と上述した金属酸化物膜形成用溶液とを接触させる方法であれば特に限定されるものではないが、具体的には、上記金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより金属基材に接触させる方法等が挙げられる。上記方法としては、例えば、図2に示すように、金属基材1を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し、この金属基材1に対して、スプレー装置2を用いて金属酸化物膜形成用溶液3を噴霧することにより、金属酸化物膜を形成する方法等が挙げられる。
次に、本態様の積層体の製造方法に用いられる溶液スプレー法について説明する。本態様の積層体の製造方法に用いられる溶液スプレー法は、金属基材に対して、まず溶液法を行い、次いでスプレー法を行うことにより、金属基材上に金属酸化物膜を形成する方法である。以下、まず上記スプレー法について説明し、次いで上記溶液法について説明する。
上記溶液スプレー法における溶液法は、金属源として金属塩または金属錯体が溶解した金属酸化物膜形成用溶液と、金属基材とを接触させることにより、上記金属基材上に金属酸化物膜を形成する方法である。
上記溶液法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、金属源である金属塩または金属錯体と、溶媒とを少なくとも含有するものである。また、上記溶液法においては、上記金属酸化物膜形成用溶液が、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源、酸化剤、還元剤、添加剤および溶媒については、上記「スプレー法」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。また、溶液法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液においては、上記金属源の濃度が通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.1mol/lであることが好ましい。また、溶液法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液において、酸化剤、還元剤および添加剤等の濃度は、上記「スプレー法」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、上記溶液法における金属基材と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法としては、所望の金属酸化物膜を形成することができる方法であれば特に限定されるものではないが、具体的には、ディッピング法、ロールコート法、枚葉式による方法等が挙げられる。
また、上記溶液スプレー法におけるスプレー法は、上述した溶液法により得られた金属基材および金属酸化物膜に対して、行うものである。上記溶液スプレー法におけるスプレー法としては、上述した「(a)スプレー法」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。なお、上記溶液スプレーにおいては、溶液法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液の金属源の種類と、スプレー法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液の金属源の種類とを異なるものにすることにより、金属基材上に異種の金属酸化物膜を形成することができる。
次に、本発明における第二態様の積層体について説明する。本態様の積層体は、金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ上記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とするものである。
以下、本態様の積層体の各構成について説明する。
本態様に用いられる金属基材は、導電性等を有し、後述する金属酸化物膜を担持するものである。本態様に用いられる金属基材としては、例えば、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様のものを挙げることができるが、中でも鉄、ステンレス、銅、チタン、アルミニウムが好ましい。上記金属基材は導電性に優れているからである。
本態様に用いられる金属酸化物膜は、金属基材上に形成され、上記の耐電圧性を有するものである。本態様に用いられる金属酸化物膜を構成する金属元素としては、上記の耐電圧性を有する金属酸化物膜を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上述した「1.第一態様」に記載した金属元素を挙げることができ、中でもMg、Al、Si、Ti、Y、Zr、Ce、Hf、WおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましい。耐電圧性に優れた積層体を得ることができるからである。このような金属元素を用いた金属酸化物としては、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様のものを挙げることができる。
本態様の積層体の製造方法としては、上述した構造を有する金属酸化物膜を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、上記「1.第一態様」に記載したスプレー法等を挙げることができる。上記スプレー法においては、噴霧される金属酸化物膜形成用溶液の量を調節することによって、所望の膜厚を有する積層体を得ることができる。
次に、本発明における第三態様の積層体について説明する。本態様の積層体は、金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ1000℃で1時間加熱を行う熱劣化試験後、上記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とするものである。
以下、本態様の積層体の各構成について説明する。
本態様に用いられる金属基材は、導電性等を有し、後述する金属酸化物膜を担持するものである。本態様に用いられる金属基材としては、例えば、上述した「2.第二態様」に記載したものと同様のものを挙げることができるので、ここでの説明は省略する。
本態様に用いられる金属酸化物膜は、金属基材上に形成され、上記の耐電圧性を有するものである。本態様に用いられる金属酸化物膜を構成する金属元素としては、上記の耐電圧性を有する金属酸化物膜を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上述した「1.第一態様」に記載した金属元素を挙げることができ、中でもMg、Al、Si、Ti、Y、Zr、Ce、Hf、WおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましい。耐電圧性に優れた積層体を得ることができるからである。
本態様の積層体の製造方法としては、上述した構造を有する金属酸化物膜を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、上記「1.第一態様」に記載したスプレー法などを挙げることができる。
次に、本発明における第四態様の積層体について説明する。金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属酸化物膜の膜厚が1〜20μmの範囲内であり、かつ上記金属酸化物膜に対して、1kgf/cm2の圧力をかけ、上記金属酸化物膜の抵抗値を測定する耐圧絶縁性試験を行い、上記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値が100Ω以上であることを特徴とするものである。
以下、本態様の積層体の各構成について説明する。
本態様に用いられる金属基材は、導電性等を有し、後述する金属酸化物膜を担持するものである。本態様に用いられる金属基材としては、例えば、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様のものを挙げることができるが、中でも鉄、ステンレス、銅、チタン、アルミニウムが汎用性の観点から好ましい。
本態様に用いられる金属酸化物膜は、金属基材上に形成され、上記の耐圧絶縁性を有するものである。本態様に用いられる金属酸化物膜を構成する金属元素としては、上記の耐圧絶縁性を有する金属酸化物膜を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上述した「1.第一態様」に記載した金属元素を挙げることができ、中でもAl、Si、Ti、Y、ZrおよびHfからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましい。耐圧絶縁性に優れた積層体を得ることができるからである。このような金属元素を用いた金属酸化物としては、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様のものを挙げることができる。
次に、本態様の積層体の製造方法について説明する。本態様の積層体の製造方法としては、上記の耐圧絶縁性を有する金属酸化物膜を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、上記「1.第一態様」に記載したスプレー法等を挙げることができる。
次に、本発明における第五態様の積層体について説明する。本態様の積層体は、金属基材と、上記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、上記金属基材の熱膨張率と、上記金属酸化物膜の熱膨張率との差が±20%の範囲内にあることを特徴とするものである。
積層体は、用いる金属酸化物膜の種類を適宜選択することによって、電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等に優れた積層体となる。
以下、本態様の積層体の各構成について説明する。
本態様に用いられる金属基材は、導電性等を有し、後述する金属酸化物膜を担持するものである。本態様に用いられる金属基材としては、電気絶縁性、耐食性、耐熱性、機械強度等を付与する金属酸化物膜の種類、ならびにその金属酸化物膜の熱膨張率を考慮して選択することが好ましいが、例えば、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様のものを挙げることができ、中でも鉄、ステンレス、銅、チタン、アルミニウムが汎用性の観点から好ましい。
本態様に用いられる金属酸化物膜は、金属基材上に形成され、上記の耐電圧性を有するものである。本態様に用いられる金属酸化物膜としては、積層体に用いられる金属基材との熱膨張率差が±20%の範囲内であるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上述した「1.第一態様」に記載したものと同様のものを挙げることができ、中でもMg、Zr、Al、Siからなる群から選択される少なくとも1種類以上の金属元素を用いることが好ましい。
次に、本態様に用いられる金属基材と金属酸化物膜との組み合わせについて説明する。本態様に用いられる金属基材と金属酸化物膜との組み合わせとしては、互いの熱膨張率差が±20%の範囲内にあるものであれば特に限定されるものではない。本態様においては、特に、上記金属基材が鉄系基材であり、かつ、上記金属酸化物膜が鉄系酸化物膜である場合が好ましい。熱膨張率差による剥離やクラックが金属酸化物膜に生じ難い積層体を得ることができるからである。
次に、本態様の積層体の製造方法について説明する。本態様の積層体の製造方法としては、上述した構造を有する金属酸化物膜を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば上記「1.第一態様」に記載したスプレー法等を挙げることができる。本態様においては、複数の種類の金属酸化物膜形成用溶液を用いて、金属基材に対して順次スプレー法を行うことによって、本態様の積層体を得ることができる。
本実施例においては、SUS304基材を用い、上記基材上に柱状構造を有するZrO2膜を形成した。
まず、水とエタノールとが20:80となるように調製した混合溶媒1000gに、塩化ジルコニウム(関東化学社製)を0.1mol/lとなるように溶解させ、金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、500℃に加熱したSUS304基材にハンドスプレー(アズワン社製)を用いて上記金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、SUS304基材上にZrO2膜を備えた積層体を得た。この積層体の酸化ジルコニム膜の膜厚は、1.2μmであった。上記方法により得られた積層体の断面のSEM画像を図1(a)に、積層体の金属酸化物膜表面のSEM画像を図1(b)に示す。ここから、ZrO2の積層方向の結晶径を、ZrO2の積層方向と直交する方向の結晶径で除した値が、おおよそ3であることが分かった。
また、SUS304基材の表面抵抗は10−2Ω/□であったのに対して、ZrO2膜を備えた場合は1013Ω/□であり、絶縁性が確認された。
本比較例は、スラリーコート法を用いた絶縁方法を示したものである。実施例1で使用したSUS304基材上にZrO2微粒子をペースト状に塗布することによって、SUS304基材上にZrO2膜を作製した。
具体的な製造方法としては、まず、溶媒である水およびイソプロピルアルコールに、一次粒子37nmの酸化ジルコニウム微粒子(ホソカワミクロン社製)40重量%、アセチルアセトン1.2重量%、ポリエチレングリコール(平均分子量3000)1.9重量%となるように添加し、ホモジナイザーを用いて上記試料が溶解、分散されたスラリーを作製した。このスラリーをドクターブレード法にてSUS304基材上に塗布後、20分放置し、100℃で30分間乾燥させた。続いて、電気マッフル炉(デンケン社製、P90)を用い500℃で30分間、大気圧雰囲気下にて焼成した。これにより、SUS304基材上にZrO2膜を得た。上記方法により得られた積層体のSEM画像から、粒子状の酸化ジルコニウムは確認されたが、柱状構造を有するものではなかった。
本実施例においては、Fe−Ni合金基材を用い、上記基材上に耐電圧性に優れたCeO2膜を形成した。まず、エタノール1000gに、硝酸セリウムを0.1mol/lとなるように溶解させ、金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、500℃に加熱したFe−Ni合金基材にハンドスプレー(アズワン社製)を用いて上記金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、Fe−Ni合金基材上にCeO2膜を備えた積層体を得た。この積層体のCeO2膜の膜厚は、3μmであった。
上記方法により得られた積層体について耐電圧測定機(TOA Electronics社製、APT−8741)によって耐電圧を測定したところ、280Vの耐電圧性を有することが分かった。なお、上記試験においては、印加電圧を上昇させていき、0.5mAの電流が流れた時に絶縁破壊が起こったものと判断した。また、Fe−Ni合金基材の表面抵抗は10−2Ω/□であったのに対して、CeO2膜を備えた場合は1012Ω/□であり、絶縁性が確認された。
本比較例は、スラリーコート法を用いた絶縁方法を示したものである。実施例2で使用したFe−Ni合金基材にCeO2微粒子をペースト状に塗布することによって、Fe−Ni合金基材上にCeO2膜を作製した。
具体的な製造方法としては、まず、溶媒である水およびイソプロピルアルコールに、一次粒子9nmの酸化セリウム微粒子(ホソカワミクロン社製)40重量%、アセチルアセトン1.2重量%、ポリエチレングリコール(平均分子量3000)1.9重量%となるように添加し、ホモジナイザーを用いて上記試料が溶解、分散されたスラリーを作製した。このスラリーをドクターブレード法にてFe−Ni合金基材上に塗布後、20分放置し、100℃で30分間乾燥させた。続いて、電気マッフル炉(デンケン社製、P90)を用い500℃で30分間、大気圧雰囲気下にて焼成した。これにより、Fe−Ni合金基材上にCeO2膜を得た。この積層体の膜厚は、8μmであった。
上記方法により得られた積層体について、耐電圧測定機(TOA Electronics社製、APT−8741)によって耐電圧を測定したところ、50Vの耐電圧性を有することが分かった。この値は、本発明における耐電圧性の条件を満たすものではなかった。
本実施例においては、実施例2で得られた積層体に対して、熱劣化試験を行った。
具体的には、実施例2で得られた積層体を、電気マッフル炉(デンケン社製、P90)に入れ、1時間で1000℃まで昇温し、次に1000℃で1時間保持し、その後、12時間で300℃まで降温した。電気マッフル炉から取り出した積層体について耐電圧測定機(TOA Electronics社製、APT−8741)によって耐電圧を測定したところ、180Vの耐電圧性を有することが分かった。
本比較例においては、比較例2で得られた積層体に対して、熱劣化試験を行った。実施例3と同様に加熱を行った結果、熱劣化試験後の積層体は、布でこすると金属酸化物膜が剥離してしまうものであった。すなわち、本発明における耐電圧性の条件を満たすものではなかった。
本実施例においては、チタン基材を用い、上記基材上に、ZrO2−Al2O3膜を形成した。
まず、トルエンとエタノールとが1:1となるように調製した混合溶媒1000gに、塩化酸化ジルコニウムを0.1mol/l、アルミニウムアセチルアセトナートを0.05mol/lとなるように溶解させ、金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、450℃に加熱したチタン基材にハンドスプレー(アズワン社製)を用いて上記金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、チタン基材上にZrO2−Al2O3膜を備えた積層体を得た。この積層体のZrO2−Al2O3膜の膜厚は、10μmであった。
また、チタン基材の表面抵抗は10−2Ω/□であったのに対して、ZrO2-Al2O3膜を備えた場合は1013Ω/□であり、絶縁性が確認された。
また、上記方法により得られた積層体を、金めっき処理を表面に施した2枚の銅板で挟み、小型熱プレス機(AH−2003、アズワン社製)を用いて1kgf/cm2の圧力で加圧し、その状態で2枚の銅板間の抵抗値をデジタルマルチメーター(CDM2000D、アズワン社製)を用いて測定した結果、106Ωの抵抗を確認した。
本実施例においては、銅基材を用い、上記基材上に、上記基材に対する熱膨張率差が±20%以内であるMgO層、および上記MgO層に対する熱膨張率差が±20%以内であるZrO2層を形成した。
まず、水とエタノールとが1:1となるように調製した混合溶媒1000gに、塩化マグネシウムを0.1mol/lとなるように溶解させ、MgO層用金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、500℃に加熱した銅基材にハンドスプレー(アズワン社製)を用いてMgO層用金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、銅基材上にMgO層を形成した。上記MgO層の膜厚は、2μmであった。
続いて、トルエンとエタノールとが1:1となるように調製した混合溶媒1000gに、ジルコニウムアセチルアセトナートを0.02mol/lとなるように溶解させ、ZrO2層用金属酸化物膜形成用溶液を得た。
400℃に加熱した、銅基材を有するMgO層にハンドスプレー(アズワン社製)を用いてZrO2層用金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、銅基材、MgO層およびZrO2層を順に備えた積層体を得た。この積層体の金属酸化物膜の膜厚は、合計で4μmであった。
また、銅基材の表面抵抗は10−2Ω/□であったのに対して、MgO層およびZrO2層を備えた場合は1013Ω/□であり、絶縁性が確認された。
また、上記方法により得られた積層体を、電気マッフル炉(デンケン社製、P90)に入れ、1時間で1000℃まで昇温し、次に1000℃で1時間保持し、その後、12時間で300℃まで降温した。電気マッフル炉から取り出した積層体は、クラックが発生せず、良好な耐熱性を示すものであった。
まず、トルエンとエタノールとが1:1となるように調製した混合溶媒1000gに、ジルコニウムアセチルアセトナートを0.02mol/lなるように溶解させ、ZrO2層用金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、500℃に加熱したSUS430基材にハンドスプレー(アズワン社製)を用いてZrO2層用金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、SUS430基材上にZrO2層を形成した。上記ZrO2層の膜厚は、500nmであった。
続いて、トルエンとエタノールとが1:1となるように調製した混合溶媒1000gに、ジルコニウムアセチルアセトナートを0.02mol/l、アルミニウムアセチルアセトナート0.005mol/lとなるように溶解させ、ZrO2−Al2O3層用金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、400℃に加熱した上記ZrO2層にハンドスプレー(アズワン社製)を用いてZrO2−Al2O3層用金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、上記ZrO2層上にZrO2−Al2O3層を形成した。上記ZrO2層および上記ZrO2−Al2O3層の膜厚は、合計で1.5μmであった。
最後に、続いて、トルエンとエタノールとが1:1となるように調製した混合溶媒1000gに、アルミニウムアセチルアセトナートを0.1mol/lとなるように溶解させ、Al2O3層用金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、500℃に加熱した上記ZrO2−Al2O3層にハンドスプレー(アズワン社製)を用いてAl2O3層用金属酸化物膜形成用溶液をスプレーすることにより、上記ZrO2−Al2O3層上にAl2O3層を形成した。上記ZrO2層、上記ZrO2−Al2O3層および上記Al2O3層の膜厚は、合計で3μmであった。
また、銅基材の表面抵抗は10−3Ω/□であったのに対して、ZrO2層、ZrO2−Al2O3層、およびAl2O3膜を順に備えた場合は、1013Ω/□であり、絶縁性が確認された。
また、上記方法により得られた積層体を、電気マッフル炉(デンケン社製、P90)に入れ、1時間で1000℃まで昇温し、次に1000℃で1時間保持し、その後、12時間で300℃まで降温した。電気マッフル炉から取り出した積層体は、クラックが発生せず、良好な耐熱性を示すものであった。
2 … スプレー装置
3 … 金属酸化物膜形成用溶液
Claims (4)
- 金属基材と、前記金属基材上に形成された金属酸化物膜とを有する積層体であって、
前記金属酸化物膜を構成する金属酸化物結晶が柱状構造を有し、
前記金属酸化物結晶の積層方向の結晶径を、前記金属酸化物結晶の積層方向と直交する方向の結晶径で除した値が、2以上であり、
前記金属基材の熱膨張率と、前記金属酸化物膜の熱膨張率との差が±20%の範囲内にあり、さらに、前記金属酸化物膜が2層以上の金属酸化物層からなり、隣り合う一方の金属酸化物層の熱膨張率と、隣り合う他方の金属酸化物層の熱膨張率との差が±20%の範囲内にあることを特徴とする積層体。 - 前記金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ前記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
- 前記金属酸化物膜の膜厚が20μm以下であり、かつ1000℃で1時間加熱を行う熱劣化試験後、前記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの耐電圧が40V以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
- 前記金属酸化物膜の膜厚が1〜20μmの範囲内であり、かつ前記金属酸化物膜に対して、1kgf/cm2の圧力をかけ、前記金属酸化物膜の抵抗値を測定する耐圧絶縁性試験を行い、前記金属酸化物膜の膜厚1μmあたりの抵抗値が100Ω以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
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