JP2010083700A - コバルト酸化物膜を有する積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コバルト源を含有し、かつ、溶媒としてコバルト酸化物の単結晶2を形成可能な単結晶形成可能溶媒とジケトン類またはケトエステル類とを含有するコバルト酸化物膜3形成用溶液を、コバルト酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基材1に接触させることにより、前記基材上にコバルト酸化物膜を形成する。この形成したコバルト酸化物膜の膜厚が、500nm以上である。
【選択図】図1
Description
まず、本発明の積層体について説明する。本発明の積層体は、基材と、上記基材の表面から成長した複数のコバルト酸化物の単結晶からなるコバルト酸化物膜とを有することを特徴とするものである。
以下、本発明の積層体について、構成ごとに説明する。
まず、本発明におけるコバルト酸化物膜について説明する。本発明におけるコバルト酸化物膜は、基材の表面から成長した複数のコバルト酸化物の単結晶からなるものである。ここで、コバルト酸化物が単結晶であることは、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認することができる。本発明における「コバルト酸化物の単結晶」とは、基材に成長したコバルト酸化物の結晶の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、一つの結晶において、単一の回折格子が70%以上連続している結晶をいう。なお、本発明におけるコバルト酸化物の結晶のTEM観察を行うと、結晶の上部(基材から離れた先端部)では、回折格子を明瞭に観察することができるが、結晶の下部(基材に近い根元部)では、目的とする結晶以外に、小さい柱状の結晶が多数存在するため、回折格子を明瞭に観察することが難しい場合がある。そのため、結晶の上部において、単一の回折格子が70%以上連続していることが好ましい。また、一つの結晶において、単一の回折格子が80%以上連続していることがより好ましく、90%以上連続していることがさらに好ましく、100%連続していることが特に好ましい。
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材の材料としては、所望の耐熱性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えばガラス、SUS等の金属板、セラミック基材、耐熱性プラスチック等を挙げることができ、中でもガラス、SUS等の金属板、セラミック基材が好ましく、特にSUS等の金属板が好ましい。充分な耐熱性を有しているからである。
本発明の積層体は、上述した基材およびコバルト酸化物膜を有するものである。本発明の積層体の用途としては、例えばリチウムイオン電池、熱電変換素子、高温超伝導セラミックス、コンデンサー、ガスセンサー、ガス改質触媒、フォトクロミック素子等を挙げることができる。
次に、本発明の積層体の製造方法について説明する。本発明の積層体の製造方法は、コバルト源を含有し、かつ、溶媒としてコバルト酸化物の単結晶を形成可能な単結晶形成可能溶媒とジケトン類またはケトエステル類とを含有するコバルト酸化物膜形成用溶液を、コバルト酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基材に接触させることにより、上記基材上にコバルト酸化物膜を形成することを特徴とするものである。
以下、本発明の積層体の製造方法について、構成ごとに説明する。
まず、本発明に用いられるコバルト酸化物膜形成用溶液について説明する。本発明に用いられるコバルト酸化物膜形成用溶液は、通常、コバルト源を含有し、溶媒としてコバルト酸化物の単結晶を形成可能な単結晶形成可能溶媒とジケトン類またはケトエステル類とを含有する。さらに、必要に応じて、ドーピング金属源および添加剤等を含有していても良い。
本発明に用いられるコバルト源は、コバルト元素を含有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば硝酸コバルト(II)・六水和物、塩化コバルト(II)・六水和物、酢酸コバルト(II)・四水和物、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、オレイン酸コバルト、塩化コバルト(II)アンモニウム六水和物、亜硝酸コバルト(III)ナトリウム、硫酸コバルト(II)七水和物、硫酸二アンモニウムコバルト(II)六水和物などが挙げられる。中でも硝酸コバルト(II)六水和物、塩化コバルト(II)六水和物、コバルト(II)アセチルアセトナートが好ましい。溶解性が良く、価格も安いからである。
次に、コバルト酸化物膜形成用溶液に用いられる溶媒について説明する。本発明において、コバルト酸化物膜形成用溶液は、通常、溶媒として、コバルト酸化物の単結晶を形成可能な単結晶形成可能溶媒と、ジケトン類またはケトエステル類とを含有する。
次に、本発明に用いられるドーピング金属源について説明する。本発明においては、コバルト酸化物膜形成用溶液に、ドーピング金属源を添加することができる。これにより、コバルト元素、酸素元素、およびドーピング金属元素から構成されるコバルト酸化物膜を得ることができる。
本発明に用いられるコバルト酸化物膜形成用溶液は、セラミックス微粒子および界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。
本発明に用いられる基材については、上記「A.積層体」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
次に、本発明における基材とコバルト酸化物膜形成用溶液との接触方法について説明する。上記接触方法としては、上述した基材と上述したコバルト酸化物膜形成用溶液とを接触させる方法であれば特に限定されるものではないが、基材およびコバルト酸化物膜形成用溶液を接触させた際に、基材の温度を低下させない方法であることが好ましい。基材の温度が低下すると成膜反応が起こらず、所望のコバルト酸化物膜を得ることができない可能性があるからである。このような基材の温度を低下させない方法としては、例えば、コバルト酸化物膜形成用溶液を液滴として基材に接触させる方法等が挙げられ、中でも上記液滴の径が小さいことが好ましい。上記液滴の径が小さければ、コバルト酸化物膜形成用溶液の溶媒が瞬時に蒸発し、基材温度の低下をより抑制することができ、さらに液滴の径が小さいことで、均一な膜厚のコバルト酸化物膜を得ることができるからである。
また、本発明の積層体の製造方法においては、上述した接触方法等により得られたコバルト酸化物膜の洗浄を行っても良い。上記コバルト酸化物膜の洗浄は、コバルト酸化物膜の表面等に存在する不純物を取り除くために行われるものであって、例えば、コバルト酸化物膜形成用溶液に使用した溶媒を用いて洗浄する方法等を挙げることができる。また、本発明においては、コバルト酸化物膜の作製中または作製後に、紫外線の照射を行っても良い。紫外線を照射することにより、例えばコバルト酸化物膜の結晶性を向上させることができる。
本実施例においては、硝酸コバルトを原料として酸化コバルト膜を作製した。
まず、基材として、スライドガラスを用意した。次に、コバルト源として硝酸コバルト(関東化学社製)、溶媒として水80重量%、アセチルアセトン20重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、硝酸コバルトを0.1mol/Lとなるように溶解させ、100mLのコバルト酸化物膜形成用溶液を得た。
本実施例においては、無水コバルトアセチルアセトナートを原料としたこと以外は、実施例1と同様にして酸化コバルト膜を得た。得られた酸化コバルト膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、酸化コバルト膜が形成されていることが確認された(図11参照)。また、走査型電子顕微鏡による観察結果から、基材の表面から成長した複数の結晶からなる酸化コバルト膜が確認された(図12参照、図12(a)は断面写真であり、図12(b)は平面写真である)。さらに、透過型電子顕微鏡による観察結果から、1つの結晶の少なくとも上部71%において、単一の回折格子が連続していることが確認された。これにより、得られた酸化コバルトの結晶は単結晶であることが確認された。
本実施例においては、硝酸コバルトおよび硝酸リチウムを原料としてリチウムがドープされたコバルト酸化物膜を作製した。
まず、基材として、スライドガラスを用意した。次に、コバルト源として硝酸コバルト(関東化学社製)、リチウム源として硝酸リチウム(関東化学社製)、溶媒として水80重量%、アセチルアセトン20重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、硝酸コバルトを0.1mol/L、硝酸リチウムを0.05mol/Lとなるように溶解させ、100mLのコバルト酸化物膜形成用溶液を得た。
溶媒としてエタノール80重量%、アセチルアセトン20重量%の混合溶媒を用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸化コバルト膜を得た。なお、エタノールは硝酸コバルトの単結晶形成可能溶媒ではない。
溶媒としてアセトン80重量%、アセチルアセトン20重量%の混合溶媒を用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸化コバルト膜を得た。なお、アセトンは硝酸コバルトの単結晶形成可能溶媒ではない。
溶媒として水を用いたこと以外は、実施例1と同様にして酸化コバルト膜を得た。なお、本比較例ではジケトン類またはケトエステル類を用いていない。
溶媒としてアセトン80重量%、アセチルアセトン20重量%の混合溶媒を用いたこと以外は、実施例2と同様にして酸化コバルト膜を得た。なお、アセトンは無水コバルトアセチルアセトナートの単結晶形成可能溶媒ではない。
2 … コバルト酸化物の単結晶
3 … コバルト酸化物膜
4 … コバルト酸化物膜形成用溶液
5 … スプレー装置
6、7、8 … ローラー
Claims (9)
- 基材と、前記基材の表面から成長した複数のコバルト酸化物の単結晶からなるコバルト酸化物膜とを有することを特徴とする積層体。
- 前記コバルト酸化物が、コバルト元素、酸素元素およびドーピング金属元素から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
- 前記ドーピング金属元素が、リチウム元素、ナトリウム元素またはカルシウム元素であることを特徴とする請求項2に記載の積層体。
- 前記コバルト酸化物膜の膜厚が、50nm以上であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の積層体。
- コバルト源を含有し、かつ、溶媒としてコバルト酸化物の単結晶を形成可能な単結晶形成可能溶媒とジケトン類またはケトエステル類とを含有するコバルト酸化物膜形成用溶液を、コバルト酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基材に接触させることにより、前記基材上にコバルト酸化物膜を形成することを特徴とする積層体の製造方法。
- 前記単結晶形成可能溶媒が、水またはメタノールであることを特徴とする請求項5に記載の積層体の製造方法。
- 前記コバルト源が、硝酸コバルト、塩化コバルト、無水コバルトアセチルアセトナートまたはコバルトアセチルアセトナート・二水和物であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の積層体の製造方法。
- 前記コバルト酸化物膜形成用溶液が、さらにドーピング金属源を含有することを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれかの請求項に記載の積層体の製造方法。
- 前記ドーピング金属源が、リチウム元素、ナトリウム元素またはカルシウム元素を有することを特徴とする請求項8に記載の積層体の製造方法。
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