JP5103990B2 - 金属酸化物膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、結晶性や結晶構造等の膜質を変化させた金属酸化物膜を得ることができる金属酸化物膜の製造方法に関するものである。
従来より、金属酸化物膜は様々な優れた物性を示すことが知られており、その特性を活かして、透明導電膜、光学薄膜、燃料電池用電解質等、幅広い分野において使用されている。このような金属酸化物膜の製造方法としては、例えば、ゾルゲル法、スパッタリング法、CVD法、PVD法、印刷法等が知られている。
一方、このような金属酸化物膜を得る別の方法として、スプレー熱分解法が提案されている(特許文献1および特許文献2)。スプレー熱分解法は、金属酸化物膜を構成する金属源を含有した溶液を、高温の基材に噴霧することにより金属酸化物膜を得る方法であり、通常500℃程度に加熱した基材を使用することから、瞬時に溶媒が蒸発し、金属源が熱分解反応を起こすため、短時間かつ簡略化された工程で金属酸化物膜を得ることができるという利点を有する。
このようなスプレー熱分解法の研究としては、例えば、特許文献1においては、TiO前駆体を含む溶液に過酸化水素又はアルミニウムアセチルアセトナートを添加して原料溶液を調製し、500℃程度に高温保持された基材に上記原料溶液を間歇噴霧することによりTiO前駆体をTiOに熱分解し、基材上に多孔質のTiO薄膜を得る方法を開示している。また、例えば、特許文献2は、特許文献1と同様に熱分解スプレー法により多孔質のTiO薄膜を得る方法であるが、原料溶液に可溶性チタン化合物を加えた溶液を添加することにより、TiO薄膜と基材との密着性向上を図るものであった。
このように、スプレー熱分解法は、短時間かつ簡略化された工程で金属酸化物膜を得ることができる方法ではあるものの、得られる金属酸化物膜の結晶性や結晶構造は、材料の金属源の種類に依存するため、所望の結晶性等を有する金属酸化物膜を得ることができない場合があった。そのため、例えばバリア用途にはアモルファスな金属酸化物膜が良い、機能膜には結晶性の高い金属酸化物膜が良い、といった要望に対応できないという問題があった。
特開2002−145615公報 特開2003−176130公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、金属酸化物膜の結晶性や結晶構造等の膜質を調整可能な金属酸化物膜の製造方法を提供することを主目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明においては、同一の金属元素および異なる非金属部を有する2種類以上の金属源を含有し、かつ、上記2種類以上の金属源の少なくとも一つが単独で金属酸化物膜を形成可能な単独膜形成可能金属源である金属酸化物膜形成用溶液を用い、上記金属酸化物膜形成用溶液と、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基材とを接触させることにより上記基材上に金属酸化物膜を形成することを特徴とする金属酸化物膜の製造方法を提供する。
本発明によれば、同一の金属元素および異なる非金属部を有する2種類以上の金属源を組合せて用いることにより、単独の金属源を用いて金属酸化物膜を形成した場合と比較して、結晶性や結晶構造等の膜質が変化した金属酸化物膜を得ることができる。
また、上記発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液に含まれる上記単独膜形成可能金属源の金属源モル分率が30%以上であることが好ましい。密着性に優れた金属酸化物膜を得ることができるからである。
また、上記発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液が、さらにドーピング金属源を含有することが好ましい。ドーピング金属源を用いることにより、複合金属酸化物膜を得ることができるからである。
また、上記発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより、上記金属酸化物膜形成用溶液と上記基材とを接触させることが好ましい。上記金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより、基材の温度を低下させることなく、上記金属酸化物膜形成用溶液を接触させることができるからである。
また、上記発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液が、さらに酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができるからである。
また、上記発明においては、上記2種類以上の金属源の少なくとも一つが、非金属部に酸アニオンを有する酸アニオン含有金属源であることが好ましい。酸アニオン含有金属源は膜質調整機能に優れているからである。
また、上記発明においては、上記酸アニオンが、F、Cl、Br、NO 、NO 、SO 2−またはPO 3−であることが好ましい。より効果的に金属酸化物膜の膜質調整を行うことができるからである。
また、上記発明においては、上記酸アニオン含有金属源と、非金属部にキレートアニオンを有するキレートアニオン含有金属源とを組合せて用いることが好ましい。上記酸アニオン含有金属源は膜質調整機能に優れており、上記キレートアニオン含有金属源は剥離等の生じにくい金属酸化物膜を得ることができるからである。
本発明においては、単独の金属源を用いて形成される金属酸化物膜と比較して、結晶性や結晶構造等の膜質を変化させた金属酸化物膜を得ることができるという効果を奏する。具体的には、金属酸化物膜の結晶性を高めたり、結晶性を低めて非晶質にしたり、あるいは結晶構造を変化させたりする等の膜質調整を行うことができる。
以下、本発明の金属酸化物膜の製造方法について詳細に説明する。
本発明の金属酸化物膜の製造方法は、同一の金属元素および異なる非金属部を有する2種類以上の金属源を含有し、かつ、上記2種類以上の金属源の少なくとも一つが単独で金属酸化物膜を形成可能な単独膜形成可能金属源である金属酸化物膜形成用溶液を用い、上記金属酸化物膜形成用溶液と、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基材とを接触させることにより上記基材上に金属酸化物膜を形成することを特徴とするものである。
本発明によれば、同一の金属元素および異なる非金属部を有する2種類以上の金属源を組合せて用いることにより、単独の金属源を用いて金属酸化物膜を形成した場合と比較して、結晶性や結晶構造等の膜質が変化した金属酸化物膜を得ることができる。すなわち、上記2種類以上の金属源を組合せることにより、金属酸化物膜の結晶性を高めたり、結晶性を低めて非晶質にしたり、あるいは結晶構造を変化させたりする等の膜質調整を行うことができる。
また、従来は金属酸化物膜の結晶性を向上させるために、例えば紫外線を照射する等の方法が用いられてきたが、本発明においては、同一の金属元素および異なる非金属部を有する2種類以上の金属源を組合せて用いることで、結晶性の良い金属酸化物膜を得ることが可能であり、より簡便に結晶性の良い金属酸化物膜を製造することができるという利点を有する。また、金属酸化物膜の結晶性を向上させる別の手段として、高い温度で金属酸化物膜を形成する方法が考えられるが、本発明においては、後述する実施例で示すように、比較的低い温度でも金属酸化物膜の結晶性を向上させることができる。
また、上述したように、従来の方法により得られる金属酸化物膜の結晶性や結晶構造は、材料の金属源の種類に依存するため、所望の結晶性等を有する金属酸化物膜を得ることができない場合があった。そのため、例えばバリア用途にはアモルファスな金属酸化物膜が良い、機能膜には結晶性の高い金属酸化物膜が良い、といった要望に対応できないという問題があった。このような問題に対して、本発明においては、同一の金属元素および異なる非金属部を有する2種類以上の金属源を適宜選択することにより、金属酸化物膜の結晶性や結晶構造を変化させることができ、上記の要望に対応することができる。
得られる金属酸化物膜の結晶性を高くすることの利点としては、例えば、金属酸化物膜を触媒として用いる場合に、その反応性を向上させることができる点を挙げることができる。具体的には、金属酸化物膜が酸化チタン膜である場合は、結晶性を高くすることにより、光触媒機能を向上させることができる。また、例えば後述するYSZ膜は固体酸化物型燃料電池の電解質として有用であるが、YSZ膜等の金属酸化物膜の結晶性を高くすることにより、電解質の酸素イオン伝導率を向上させることができる。さらに、金属酸化物膜の結晶性を高くすることにより、例えば、透明導電膜の電子伝導性を高めたり、圧電素子のエネルギー変換効率を高めたり、無機EL素子の発光効率を高めたりすることができる。
一方、得られる金属酸化物膜の結晶性を低くすることの利点としては、例えば、金属酸化物膜をガスバリア層として用いる場合に、そのバリア性を向上させることができる点を挙げることができる。また、金属酸化物膜の結晶性を低くすることにより、基材と金属酸化物膜との密着性を向上させることができる。特に、本発明においては、基材として多孔質基材を用いた場合であっても、密着性や凹凸追従性に優れた金属酸化物膜を得ることができる。また、多孔質基材上に結晶性の低い(非晶質の)金属酸化物膜を形成した場合は、例えば、後処理として加熱を行うことにより、金属酸化物膜の結晶性を向上させることも可能である。後処理により結晶性を向上させた場合であっても、密着性や凹凸追従性は充分に維持されると考えられる。このようにして得られた金属酸化物膜は、例えばNOxガス処理用のセルや、酸素富化膜として利用することができる。
また、得られる金属酸化物膜の結晶構造を変化させることの利点としては、例えば、金属酸化物膜の機械的強度を向上させることができる点を挙げることができる。例えばジルコニウムテトラアセチルアセトナート(Zr(CHCOCHCOCH)を用いると、正方晶の結晶構造を有する酸化ジルコニウム膜が得られる。これに対して、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート(Zr(CHCOCHCOCH)と、硝酸酸化ジルコニウム(ZrO(NO)とを組合せて用いると、正方晶および単斜晶の結晶構造を有する酸化ジルコニウム膜が得られる。正方晶の結晶構造から、正方晶および単斜晶の結晶構造に変化させることにより、応力に対する強度が高くなり、機械的強度に優れた酸化ジルコニウム膜を得ることができる。
また、例えば、色素増感型太陽電池の酸化チタン(基材)上に設ける透明導電膜(金属酸化物膜)で考えた場合、アナターゼ型結晶を有する酸化チタン上に、立方晶のITO膜を設けると、格子整合性がうまくとれず、界面に粒界が発生して、電子伝導性が劣るだけでなく、密着性も不十分となる。これに対して、酸化チタンとの界面におけるITOが六方晶ITOであれば、立方晶ITOよりも格子整合性が合い、界面に発生する粒界を減少させることが可能となり、電子伝導性や密着性を向上させることができる。
次に、本発明の金属酸化物膜の製造方法について図を用いて説明する。図1は、本発明の金属酸化物膜の製造方法の一例を示す説明図である。図1に示すように、本発明の金属酸化物膜の製造方法は、基材1を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し、同一の金属元素および異なる非金属部を有する2種類以上の金属源を含有する金属酸化物膜形成用溶液2を、スプレー装置3を用いて噴霧することにより、基材1上に金属酸化物膜を形成する方法である。
なお、本発明において、「金属酸化物膜形成温度」とは、金属源に含まれる金属元素が酸素と結合し、基材上に金属酸化物膜を形成することが可能な温度をいい、金属塩、金属錯体といった金属源の種類、溶媒等の金属酸化物膜形成用溶液の組成によって大きく異なるものである。本発明において、このような「金属酸化物膜形成温度」は、以下の方法により測定することができる。すなわち、実際に所望の金属源を含有する金属酸化物膜形成用溶液を用意し、基材の加熱温度を変化させて接触させることにより、金属酸化物膜を形成することができる最低の基材加熱温度を測定する。この最低の基材加熱温度を本発明における「金属酸化物膜形成温度」とすることができる。この際、金属酸化物膜が形成したか否かは、通常、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)より得られた結果から判断し、結晶性のないアモルファス膜の場合は、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)より得られた結果から判断するものとする。
以下、本発明の金属酸化物膜の製造方法について、各構成毎に詳細に説明する。
1.金属酸化物膜形成用溶液
まず、本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液について説明する。本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、同一の金属元素および異なる非金属部を有する2種類以上の金属源を少なくとも含有するものである。さらに、必要に応じて、酸化剤、還元剤、および添加剤等を含有していていも良い。
(1)金属源
まず、本発明に用いられる金属源について説明する。本発明においては、金属源として、同一の金属元素および異なる非金属部を有する2種類以上の金属源が用いられる。本発明においては、同一の金属元素および異なる非金属部を有する金属源を2種類以上用いることができるが、中でも2種類または3種類用いることが好ましく、特に2種類用いることが好ましい。
なお、「非金属部」とは、金属元素以外の金属源の構成要素を意味するものである。従って、例えばジルコニウムテトラアセチルアセトナート(Zr(CHCOCHCOCH)と硝酸酸化ジルコニウム(ZrO(NO)とは、金属元素が同一であり、非金属部が異なることから、「同一の金属元素および異なる非金属部を有する金属源」に該当する。
また、非金属部が異なる金属源は、金属酸化物に酸化される温度(金属酸化物膜形成温度)が相違し、このような酸化される温度の違いが、金属酸化物膜の結晶性や結晶構造等の膜質を変化させる要因であると考えられる。
さらに、本発明においては、上記2種類以上の金属源の少なくとも一つは、単独で金属酸化物膜を形成可能な単独膜形成可能金属源である。従って、本発明においては、「同一の金属元素および異なる非金属部を有する2種類以上の金属源」が、単独膜形成可能金属源と単独膜形成可能金属源以外の同種金属源との組合せであっても良く、全て単独膜形成可能金属源であっても良い。以下、単独膜形成可能金属源、および単独膜形成可能金属源以外の同種金属源について説明する。
(a)単独膜形成可能金属源
本発明において、「単独膜形成可能金属源」とは、以下に示す試験において所定の基準を満たす金属酸化物膜を与える金属源をいう。すなわち、対象となる1種類の金属源、および溶媒からなる金属酸化物膜形成用溶液(濃度0.1mol/l)を用意し、この金属酸化物膜形成用溶液を、超音波ネプライザー等を用いて粒径0.5〜20μm程度の液滴とし、金属酸化物膜形成温度から金属酸化物膜形成温度+100℃の範囲内で加熱した基材と1時間接触させることにより、基材上に金属酸化物膜を形成し、その後、得られた金属酸化物膜を常温まで冷却し、1cm程度の金属酸化物膜の領域を圧力0.2Pa程度でウエス等を用いて拭う試験を行う。その結果、剥離を生じない強度を有する金属酸化物膜を与える金属源を、本発明における「単独膜形成可能金属源」とする。なお、基材としては、実際に金属酸化物膜を形成する際に用いられるものを使用する。また、得られる金属酸化物膜が粉体である場合等は、ウエス等で拭った際に容易に剥離するため、単独膜形成可能金属源には該当しない。
上記単独膜形成可能金属源を構成する金属元素としては、単独で金属酸化物膜を形成可能な金属源を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ta、Ca、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、またはWであることが好ましく、中でもAl、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、In、Sn、Ce、Laが好ましい。
また、上記単独膜形成可能金属源は、通常、金属塩または金属錯体である。
上記金属塩としては、単独で金属酸化物膜を形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、上記金属元素を含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。中でも、本発明においては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩を使用することが好ましい。これらの化合物は汎用品として入手が容易だからである。さらに、上記金属塩としては、具体的には塩化インジウム、塩化スズ、塩化亜鉛、酢酸鉄等を挙げることができる。
一方、上記金属錯体としては、単独で金属酸化物膜を形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、アセチルアセトナート系錯体を挙げることができる。上記アセチルアセトナート系錯体としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、銅(II)アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、クロム(III)アセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、セリウムアセチルアセトナート、ランタンアセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナート等を挙げることができる。
また、金属酸化物膜形成用溶液に含まれる単独膜形成可能金属源の金属源モル分率としては、特に限定されるものではないが、例えば30%以上、中でも40%以上、特に50%以上であることが好ましい。成膜速度が早く、密着性に優れた金属酸化物膜を得ることができるからである。なお、「金属源モル分率」とは、金属酸化物膜形成用溶液に含まれる全ての金属源に対する、特定の金属源のモル基準の割合を意味するものである。また、金属酸化物膜形成用溶液が2種類以上の単独膜形成可能金属源を含有する場合は、その合算値を単独膜形成可能金属源の金属源モル分率とする。
また、金属酸化物膜形成用溶液における単一(1種類)の単独膜形成可能金属源の濃度としては、特に限定されるものではないが、例えば0.001〜1mol/lの範囲内、中でも0.01〜0.5mol/lの範囲内であることが好ましい。濃度が上記範囲内にあれば、比較的短時間で金属酸化物膜を形成することができるからである。
(b)単独膜形成可能金属源以外の同種金属源
次に、本発明に用いられる、単独膜形成可能金属源以外の同種金属源(単に「同種金属源」と称する場合がある。)について説明する。本発明において、「単独膜形成可能金属源以外の同種金属源」とは、単独膜形成可能金属源と同一の金属源を有し、単独で金属酸化物膜を形成することができないものをいう。上述したように、本発明においては、「同一の金属元素および異なる非金属部を有する2種類以上の金属源」の少なくとも一つが、単独膜形成可能金属源であれば良いため、単独膜形成可能金属源と同種金属源とを組合せて用いても良い。
また、上記同種金属源は、通常、金属塩または金属錯体である。
上記金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記金属元素を含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。中でも、本発明においては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩を使用することが好ましい。これらの化合物は汎用品として入手が容易だからである。さらに、上記金属塩としては、具体的には硝酸インジウム、硝酸亜鉛、塩化鉄、塩化酸化ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
一方、上記金属錯体としては、特に限定されるものではないが、具体的にはトリシクロヘキシルすず(IV)、ステアリン酸亜鉛等を挙げることができる。
また、金属酸化物膜形成用溶液に含まれる同種金属源の金属源モル分率としては、特に限定されるものではないが、例えば70%以下、中でも50%以下であることが好ましい。
また、金属酸化物膜形成用溶液における同種金属源の濃度としては、特に限定されるものではないが、上記単独膜形成可能金属源の濃度と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(c)単独膜形成可能金属源とは異なる金属元素を有する金属源
本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、単独膜形成可能金属源とは異なる金属元素を有する金属源(「異種金属源」と称する場合がある。)を含有していても良い。異種金属源を用いることにより、複合金属酸化物膜を得ることができる。
金属酸化物膜形成用溶液に含まれる異種金属源の金属源モル分率としては、特に限定されるものではないが、例えば50%以下、中でも40%以下であることが好ましい。
また、金属酸化物膜形成用溶液における異種金属源の濃度としては、特に限定されるものではないが、例えば0.001〜1mol/lの範囲内、中でも0.01〜0.5mol/lの範囲内であることが好ましい。
なお、上記異種金属源は、単独で金属酸化物膜を形成可能なものであっても良く、単独で金属酸化物膜を形成不可能なものであっても良い。単独で金属酸化物膜を形成可能か否かについては、上述した「(a)単独膜形成可能金属源」に記載した試験と同様の試験を行うことにより、判断することができる。
特に、本発明においては、上記異種金属源が、金属酸化物膜のドーピングを目的としたドーピング金属源であることが好ましい。すなわち、上記金属酸化物膜形成用溶液が、さらにドーピング金属源を含有していることが好ましい。ドーピング金属源を用いることにより、機能性酸化物膜を得ることができるからである。
上記ドーピング金属源の種類は、目的とする金属酸化物膜の種類に応じて適宜選択することが好ましい。例えば固体酸化物型燃料電池の電解質として有用なイットリア安定化ジルコニア膜(YSZ膜)を得る場合は、ジルコニウム元素を有する金属源(単独膜形成可能金属源等)の他に、ドーピング金属源としてイットリウム元素を有する金属源を用いる。イットリウム元素を有する金属源としては、具体的には、硝酸イットリウム・六水和物等を挙げることができる。
(d)酸アニオン含有金属源
本発明においては、上記2種類以上の金属源の少なくとも一つが、非金属部に酸アニオンを有する酸アニオン含有金属源であることが好ましい。酸アニオン含有金属源は膜質調整機能に優れているからである。すなわち、酸アニオン含有金属源を用いることにより、金属酸化物膜の結晶性を高めたり、結晶性を低めて非晶質にしたり、あるいは結晶構造を変化させたりする膜質調整をより効果的に行うことができる。本発明において、「酸アニオン」とは、プロトンと結合することにより酸を構成するアニオンをいう。なお、本発明に用いられる酸アニオン含有金属源は、単独膜形成可能金属源であっても良く、単独膜形成可能金属源以外の同種金属源であっても良い。
上記酸アニオンとしては、プロトンと結合することにより酸を構成するアニオンであれば特に限定されるものではないが、強酸を形成可能な酸アニオンであることが好ましい。上記酸アニオンとしては、例えば、F、Cl、Br、NO 、NO 、SO 2−およびPO 3−等を挙げることができ、中でも、ClおよびNO が好ましい。
上記酸アニオン含有金属源としては、例えば、塩化インジウム、硝酸インジウム、塩化鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化セリウム、硝酸ランタン、硝酸クロム、硝酸マグネシウムおよび塩化チタン等を挙げることができる。さらに、上記酸アニオン含有金属源は、非金属部に少なくとも酸アニオンを有していれば良く、非金属部にO等の他の元素を有するものであっても良い。そのため、上記酸アニオン含有金属源は、塩化酸化ジルコニウム(ZrOCl)および硝酸酸化ジルコニウム(ZrO(NO)等であっても良い。
金属酸化物膜形成用溶液に含まれる酸アニオン含有金属源の金属源モル分率としては、特に限定されるものではないが、例えば5%〜95%の範囲内、中でも20%〜80%の範囲内、特に30%〜70%の範囲内であることが好ましい。
また、金属酸化物膜形成用溶液における単一(1種類)の酸アニオン含有金属源の濃度としては、特に限定されるものではないが、例えば0.001〜1mol/lの範囲内、中でも0.01〜0.5mol/lの範囲内であることが好ましい。
(e)キレートアニオン含有金属源
本発明においては、上記2種類以上の金属源の少なくとも一つが、非金属部にキレートアニオンを有するキレートアニオン含有金属源であることが好ましい。上記キレートアニオン含有金属源を用いることにより、剥離等の生じにくい金属酸化物膜を得ることができるからである。本発明において、「キレートアニオン」とは、中心金属に二座以上で配位するアニオンをいう。なお、本発明に用いられるキレートアニオン含有金属源は、単独膜形成可能金属源であっても良く、単独膜形成可能金属源以外の同種金属源であっても良い。
上記キレートアニオンとしては、中心金属に二座以上で配位するアニオンであれば特に限定されるものではないが、例えば、アセチルアセトナートアニオン等を挙げることができる。上記キレートアニオン含有金属源としては、例えば、アセチルアセトナート系錯体等を挙げることができる。アセチルアセトナート系錯体については、上記「(a)単独膜形成可能金属源」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
金属酸化物膜形成用溶液に含まれるキレートアニオン含有金属源の金属源モル分率としては、特に限定されるものではないが、例えば5%〜95%の範囲内、中でも20%〜80%の範囲内、特に30%〜70%の範囲内であることが好ましい。
また、金属酸化物膜形成用溶液における単一(1種類)のキレートアニオン含有金属源の濃度としては、特に限定されるものではないが、例えば0.001〜1mol/lの範囲内、中でも0.01〜0.5mol/lの範囲内であることが好ましい。
本発明においては、上記酸アニオン含有金属源と、上記キレートアニオン含有金属源とを組合せて用いることが好ましい。上記酸アニオン含有金属源は膜質調整機能に優れており、上記キレートアニオン含有金属源は剥離等の生じにくい金属酸化物膜を得ることができるからである。
(2)酸化剤
次に、本発明に用いられる酸化剤について説明する。本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液が酸化剤を含有していても良い。上記酸化剤を用いることにより、金属イオン等の価数を変化させることができ、金属酸化物の発生しやすい環境とすることができ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。
金属酸化物膜形成用溶液における酸化剤の濃度としては、酸化剤の種類に応じて異なるものではあるが、通常0.001〜1mol/lの範囲内であり、中でも0.01〜0.1mol/lの範囲内であることが好ましい。濃度が上記範囲に満たない場合は、基材加熱温度を低下させる効果を充分に発揮することができない可能性があり、濃度が上記範囲を超える場合は、得られる効果に大差が見られず、コスト上好ましくないからである。
このような酸化剤としては、後述する溶媒に溶解し、金属イオン等の酸化を促進することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、酸化銀、二クロム酸、過マンガン酸カリウム等が挙げられ、中でも過酸化水素、亜硝酸ナトリウムを使用することが好ましい。
(3)還元剤
次に、本発明に用いられる還元剤について説明する。本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液が還元剤を含有していても良い。上記還元剤を用いることにより、金属酸化物膜形成用溶液のpHが上昇させることができ、プールベ線図における金属酸化物領域あるいは金属水酸化物領域へ誘導し、金属酸化物膜の発生しやすい環境とすることができ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。
本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液における上記還元剤の濃度としては、還元剤の種類に応じて異なるものではあるが、通常0.001〜1mol/lの範囲内であり、中でも0.01〜0.1mol/lの範囲内であることが好ましい。濃度が上記範囲に満たない場合は、基材加熱温度を低下させる効果を充分に発揮することができない可能性があり、濃度が上記範囲を超える場合は、得られる効果に大差が見られず、コスト上好ましくないからである。
このような還元剤としては、後述する溶媒に溶解し、分解反応により電子を放出することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ボラン−tert−ブチルアミン錯体、ボラン−N,Nジエチルアニリン錯体、ボラン−ジメチルアミン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体等のボラン系錯体、水酸化シアノホウ素ナトリウム、水酸化ホウ素ナトリウムを挙げることができ、中でもボラン系錯体を使用することが好ましい。
また、本発明においては、還元剤と上述した酸化剤とを組合せて使用しても良い。このような還元剤および酸化剤の組合せとしては、基材加熱温度を低下させることができる組合せであれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素または亜硝酸ナトリウムと任意の還元剤との組合せ、任意の酸化剤とボラン系錯体との組合せ等が挙げられ、中でも、過酸化水素とボラン系錯体との組合せが好ましい。
(4)溶媒
本発明に用いられる溶媒は、上述した金属源等を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール;トルエン;およびこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
(5)添加剤
また、本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、セラミックス微粒子、補助イオン源、および界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。
上記セラミックス微粒子を用いることにより、上記セラミックス微粒子を取り囲むように金属酸化物膜が形成され、異種セラミックスの混合膜を得ることや金属酸化物膜の体積増加を図ることができる。なお、上記セラミックス微粒子の含有量は、使用する部材の特徴に合わせて適宜選択されることが好ましい。
上記セラミックス微粒子の種類としては、例えばITO、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、珪素酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、セリウム酸化物、カルシウム酸化物、マンガン酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸バリウム等を挙げることができる。
また、上記補助イオン源は、還元剤の熱分解等により生じる電子と反応し水酸化物イオンを発生するものである。上記補助イオン源を用いることにより、金属酸化物膜形成用溶液のpHを上昇させ、プールベ線図における金属酸化物領域あるいは金属水酸化物領域へ誘導し、金属酸化物膜の発生しやすい環境とし、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。なお、上記補助イオン源の使用量は、使用する金属源や還元剤に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
上記補助イオン源の種類としては、例えば、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、臭素酸イオン、次臭素酸イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンからなる群から選択されるイオン種を挙げることができる。
また、上記界面活性剤は、上記金属酸化物膜形成用溶液と上記基材表面との界面に作用するものである。上記界面活性剤を用いることにより、金属酸化物膜形成用溶液と基材表面との接触面積を向上させることができ、均一な金属酸化物膜を得ることができる。特に、金属酸化物膜形成用溶液を噴霧により接触させる場合、上記界面活性剤の効果により、金属酸化物膜形成用溶液の液滴と基材表面とを充分に接触させることができるため、好適に使用される。なお、上記界面活性剤の使用量は、使用する金属源や還元剤に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
上記界面活性剤の種類としては、例えば、サーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノールGA、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104PPM、サーフィノール104E、サーフィノール104PA等のサーフィノールシリーズ(以上、全て日信化学工業(株)社製)、NIKKOL AM301、NIKKOL AM313ON(以上、全て日光ケミカル社製)等を挙げることができる。
2.基材
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材の材料としては、上記加熱温度に対する耐熱性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えばガラス、SUS、金属板、セラミック基材、耐熱性プラスチック等を挙げることができ、中でもガラス、SUS、金属板、セラミック基材を使用することが好ましい。汎用性があり、充分な耐熱性を有しているからである。
また、本発明に用いられる基材は、例えば、平滑な表面を有するもの、微細構造部を有するもの、穴が開いているもの、溝が刻まれているもの、多孔質であるもの、多孔質膜を備えたものであっても良い。中でも、平滑な表面を有するもの、微細構造部を有するもの、溝が刻まれているもの、多孔質であるもの、多孔質膜を備えたものが好適に使用される。
3.基材と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法
次に、本発明における基材と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法について説明する。上記接触方法としては、上述した金属酸化物膜形成用溶液と上述した基材とを接触させる方法であれば特に限定されるものではないが、金属酸化物膜形成用溶液と基材とを接触させた際に、基材の温度を低下させない方法であることが好ましい。基材の温度が低下すると成膜反応が起こらず所望の金属酸化物膜を得ることができない可能性があるからである。このような基材の温度を低下させない方法としては、例えば、金属酸化物膜形成用溶液を液滴として基材に接触させる方法等が挙げられ、中でも上記液滴の径が小さいことが好ましい。上記液滴の径が小さければ、金属酸化物膜形成用溶液の溶媒が瞬時に蒸発し、基材温度の低下をより抑制することができ、さらに液滴の径が小さいことで、均一な金属酸化物膜を得ることができるからである。
このような径が小さい金属酸化物膜形成用溶液の液滴を基材に接触させる方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより基材に接触させる方法、金属酸化物膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基材を通過させる方法等が挙げられる。
上記金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより基材に接触させる方法は、例えばスプレー装置等を用いて噴霧する方法等が挙げられる。上記スプレー装置等を用いて噴霧する場合、液滴の径は、通常0.01〜1000μmの範囲内、中でも0.1〜300μmの範囲内であることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、基材温度の低下を抑制することができ、均一な金属酸化物膜を得ることができるからである。
また、上記スプレー装置の噴射ガスとしては、金属酸化物膜の形成を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素等を挙げることができ、中でも不活性な気体である窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましい。また、上記噴射ガスの噴射量としては、例えば、0.1〜50l/minの範囲内、中でも1〜20l/minの範囲内であることが好ましい。また、上記スプレー装置は固定されていているもの、可動式のもの、回転によって上記溶液を噴射させるもの、圧力によって上記溶液のみを噴射させるもの等であっても良い。このようなスプレー装置としては、一般的に用いられるスプレー装置を用いることができ、例えばハンドスプレー(スプレーガンNo.8012、アズワン社製)、超音波ネプライザー(NE−U17、オムロン社製)等を用いることができる。
また、金属酸化物膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基材を通過させる方法においては、液滴の径は、通常0.01〜300μmの範囲内、中でも0.1〜100μmの範囲内であることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、基材温度の低下を抑制することができ、均一な金属酸化物膜を得ることができるからである。
本発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液と加熱された基材とを接触させるのであるが、その際、基材は上述した「金属酸化物膜形成温度」以上の温度まで加熱される。このような「金属酸化物膜形成温度」は、金属塩、金属錯体といった金属源の種類、溶媒等の金属酸化物膜形成用溶液の組成によって異なるものであるが、一般的には200〜700℃の範囲内とすることができ、中でも、400〜700℃の範囲内であることが好ましい。
また、このような基材の加熱方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホットプレート、オーブン、焼成炉、赤外線ランプ、熱風送風機等の加熱方法を挙げることができ、中でも基材温度を上記温度に保持しながら上記金属酸化物膜形成用溶液に接触できる方法が好ましく、具体的にはホットプレート等を使用することが好ましい。
次に、上述した接触方法について図面を用いて具体的に説明する。上述した金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより基材に接触させる方法としては、例えば、ローラーによって基材を連続的に移動させ噴霧する方法、固定された基材上に噴霧する方法、パイプのような流路に噴霧する方法等が挙げられる。
上記ローラーによって基材を連続的に移動させ噴霧する方法としては、例えば、図2に示すように、基材1を、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱したローラー4〜6を用いて連続的に移動させ、スプレー装置3により金属酸化物膜形成用溶液2を噴霧し金属酸化物膜を形成する方法等を挙げることができる。この方法は、連続的に金属酸化物膜を形成することができるという利点を有する。
また、上記固定された基材上に噴霧する方法としては、例えば、図1に示すように、基材1を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し、この基材1に対して、スプレー装置3を用いて金属酸化物膜形成用溶液2を噴霧することにより、金属酸化物膜を形成する方法等を挙げることができる。
また、上述した金属酸化物膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基材を通過させる方法としては、例えば、図3に示すように、金属酸化物膜形成用溶液2をミスト状にした空間に、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱された基材1を通過させることにより金属酸化物膜を形成する方法等を挙げることができる。
4.その他
また、本発明の金属酸化物膜の製造方法においては、上述した接触方法等により得られた金属酸化物膜の洗浄を行っても良い。上記金属酸化物膜の洗浄は、金属酸化物膜の表面等に存在する不純物を取り除くために行われるものであって、例えば、金属酸化物膜形成用溶液に使用した溶媒を用いて洗浄する方法等を挙げることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[参考例1]
<ジルコニウムアセチルアセトナートを用いたYSZ膜の作製>
本参考例においては、単独膜形成可能金属源としてジルコニウムアセチルアセトナートを用いYSZ膜を作製した。本実験例の結果と、後述する実施例1−1および実施例1−2の結果とを比較することにより、膜質調整機能について確認した。
まず、基材として、ガラス板(75mm×25mm、厚さ0.7mm)を用意した。
次に、単独膜形成可能金属源としてジルコニウムアセチルアセトナート(関東化学社製)、ドーピング金属源として硝酸イットリウム(関東化学社製)、溶媒としてエタノール15重量%、トルエン85重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、ジルコニウムアセチルアセトナートを0.1mol/L、硝酸イットリウムを0.008mol/Lとなるように溶解させ、1Lの金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材(ガラス板)をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて0.5Lスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、図4に示すようなピークが得られ、非晶質に近いYSZ膜が形成されていることが確認された。
[実施例1−1]
<ジルコニウムアセチルアセトナートおよび硝酸酸化ジルコニウムを用いたYSZ膜の作製>
本実施例においては、単独膜形成可能金属源としてジルコニウムアセチルアセトナートを用い、同種金属源として硝酸酸化ジルコニウムを用い、YSZ膜を作製した。
まず、基材として、ガラス板(75mm×25mm、厚さ0.7mm)を用意した。
次に、単独膜形成可能金属源としてジルコニウムアセチルアセトナート(関東化学社製)、同種金属源として硝酸酸化ジルコニウム(関東化学社製)、溶媒としてエタノール55重量%、トルエン40重量%、および水5重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、ジルコニウムアセチルアセトナートを0.05mol/L、硝酸酸化ジルコニウムを0.05mol/L、硝酸イットリウムを0.008mol/Lとなるように溶解させ、1Lの金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材(ガラス板)をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて0.5Lスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、図5に示すようなピークが得られ、(200)面が最強線となる特徴的なYSZ膜が形成されていることが確認され、金属酸化物膜の結晶性が向上していることが確認された。
なお、YSZ膜は、固体酸化物型燃料電池の電解質として用いられ、結晶性が高いほど酸素イオン伝導が優れている。高性能な固体酸化物型燃料電池を作製するためにも電解質膜の結晶性が高い方が良く、従来は1400℃程度で焼成して結晶性を上げているが、本発明においては、500℃でも結晶性を上げることが可能であった。
[実施例1−2]
<ジルコニウムアセチルアセトナートおよび塩化酸化ジルコニウムを用いたYSZ膜の作製>
本実施例においては、単独膜形成可能金属源としてジルコニウムアセチルアセトナートを用い、同種金属源として塩化酸化ジルコニウムを用い、YSZ膜を作製した。
具体的には、硝酸酸化ジルコニウムの代わりに、塩化酸化ジルコニウム(関東化学社製)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、図6に示すようなピークが得られ、非晶質に近いYSZ膜と、その構造に付随すると思われる鋭利な特徴的なピークが得られ、金属酸化物膜の結晶性が向上していることが確認された。
なお、YSZ膜は、固体酸化物型燃料電池の電解質として用いられ、結晶性が高いほど酸素イオン伝導が優れている。高性能な固体酸化物型燃料電池を作製するためにも電解質膜の結晶性が高い方が良く、従来は1400℃程度で焼成して結晶性を上げているが、本発明においては、500℃でも結晶性を上げることが可能であった。
[参考例2]
<塩化インジウムを用いたITO膜の作製>
本参考例においては、単独膜形成可能金属源として塩化インジウムを用いITO膜を作製した。本参考例の結果と、後述する実施例2の結果とを比較することにより、膜質調整機能について確認した。
まず、基材として、ガラス板(75mm×25mm、厚さ0.7mm)を用意した。
次に、単独膜形成可能金属源として塩化インジウム(関東化学社製)、ドーピング金属源として塩化スズ(関東化学社製)、溶媒としてエタノール85重量%、アセチルアセトン15重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、塩化インジウムを0.1mol/L、塩化スズを0.005mol/Lとなるように溶解させ、1Lの金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材(ガラス板)をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて0.1Lスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、(222)面に配向したITO膜が形成されていることが確認された(図7参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が400nmであった。
[実施例2]
<塩化インジウムおよび硝酸インジウムを用いたITO膜の作製>
本実施例においては、金属酸化物膜形成用溶液に含まれる金属源の濃度を、塩化インジウム0.05mol/L、硝酸インジウム0.05mol/L、塩化スズ0.005mol/Lとしたこと以外は、参考例2と同様にして金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、(400)面および(440)面に配向したピークが得られ、金属酸化物膜の結晶構造が変化していることが確認された(図7参照)。なお、参考例2で得られたITOの結晶構造は、主に立方晶であると考えられ、実施例2で得られたITOの結晶構造は、主に六方晶であると考えられる。すなわち、結晶構造が立方晶から六方晶に変化したと考えられる。また、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が410nmであった。
[参考例3]
<鉄アセチルアセトナートを用いた酸化鉄膜の作製>
本参考例においては、単独膜形成可能金属源として鉄アセチルアセトナートを用い酸化鉄膜を作製した。本参考例の結果と、後述する実施例3の結果とを比較することにより、膜質調整機能について確認した。
まず、基材として、ガラス板(75mm×25mm、厚さ0.7mm)を用意した。
次に、単独膜形成可能金属源として鉄アセチルアセトナート(関東化学社製)、溶媒としてエタノール85重量%、アセチルアセトン15重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、鉄アセチルアセトナートを0.1mol/Lとなるように溶解させ、1Lの金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材(ガラス板)をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて0.1Lスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が620nmであった。
[実施例3]
<鉄アセチルアセトナートおよび塩化鉄を用いた酸化鉄膜の作製>
本実施例においては、金属酸化物膜形成用溶液に含まれる金属源の濃度を、鉄アセチルアセトナート0.05mol/L、塩化鉄0.05mol/Lとしたこと以外は、参考例3と同様にして金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、その構造に付随すると思われる鋭利な特徴的なピークが得られ、金属酸化物膜の結晶性が向上していることが確認された(図8参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が550nmであった。
[参考例4−1
<コバルトアセチルアセトナートを用いた酸化コバルト膜の作製>
本参考例においては、単独膜形成可能金属源としてコバルトアセチルアセトナートを用い酸化コバルト膜を作製した。本参考例の結果と、後述する参考例4−2の結果とを比較することにより、膜質調整機能について確認した。
まず、基材として、Siウェハを用意した。次に、単独膜形成可能金属源としてコバルトアセチルアセトナート(関東化学社製)、溶媒としてエタノール85重量%、アセチルアセトン15重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、コバルトアセチルアセトナートを0.1mol/Lとなるように溶解させ、1Lの金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材(Siウェハ)をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて0.1Lスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、結晶性の酸化コバルト膜が形成されていることが確認された(図9参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が380nmであった。
参考例4−2
<コバルトアセチルアセトナートおよび硝酸コバルトを用いた酸化コバルト膜の作製>
参考例においては、金属酸化物膜形成用溶液に含まれる金属源の濃度を、コバルトアセチルアセトナート0.05mol/L、硝酸コバルト0.05mol/Lとしたこと以外は、参考例4−1と同様にして金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、その構造に付随すると思われる鋭利な特徴的なピークが得られ、金属酸化物膜の結晶性が変化していることが確認された(図9参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が370nmであった。
[参考例5−1
<ニッケルアセチルアセトナートを用いた酸化ニッケル膜の作製>
本参考例においては、単独膜形成可能金属源としてニッケルアセチルアセトナートを用い酸化ニッケル膜を作製した。本参考例の結果と、後述する参考例5−2の結果とを比較することにより、膜質調整機能について確認した。
まず、基材として、ガラス板(75mm×25mm、厚さ0.7mm)を用意した。
次に、単独膜形成可能金属源としてニッケルアセチルアセトナート(関東化学社製)、溶媒としてエタノール85重量%、アセチルアセトン15重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、ニッケルアセチルアセトナートを0.1mol/Lとなるように溶解させ、1Lの金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材(ガラス板)をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて0.1Lスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、非晶質な酸化ニッケル膜が形成されていることが確認された(図10参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が500nmであった。
参考例5−2
<ニッケルアセチルアセトナートおよび硝酸ニッケルを用いた酸化ニッケル膜の作製>
参考例においては、金属酸化物膜形成用溶液に含まれる金属源の濃度を、ニッケルアセチルアセトナート0.05mol/L、硝酸ニッケル0.05mol/Lとしたこと以外は、参考例5−1と同様にして金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、その構造に付随すると思われる鋭利な特徴的なピークが得られ、金属酸化物膜の結晶性が向上していることが確認された(図10参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が550nmであった。
[参考例6−1
<亜鉛アセチルアセトナートを用いた酸化亜鉛膜の作製>
本参考例においては、単独膜形成可能金属源として亜鉛アセチルアセトナートを用い酸化亜鉛膜を作製した。本参考例の結果と、後述する参考例6−2の結果とを比較することにより、膜質調整機能について確認した。
まず、基材として、ガラス板(75mm×25mm、厚さ0.7mm)を用意した。
次に、単独膜形成可能金属源として亜鉛アセチルアセトナート(関東化学社製)、溶媒としてエタノール85重量%、アセチルアセトン15重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、亜鉛アセチルアセトナートを0.1mol/Lとなるように溶解させ、1Lの金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材(ガラス板)をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて0.1Lスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、結晶性の酸化亜鉛膜が形成されていることが確認された(図11参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が210nmであった。
参考例6−2
<亜鉛アセチルアセトナートおよび塩化亜鉛を用いた酸化亜鉛膜の作製>
参考例においては、金属酸化物膜形成用溶液に含まれる金属源の濃度を、亜鉛アセチルアセトナート0.05mol/L、塩化亜鉛鉛0.05mol/Lとしたこと以外は、参考例6−1と同様にして金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、参考例6とは異なる特徴的なピークが得られ、金属酸化物膜の結晶性が変化していることが確認された(図11参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が240nmであった。
[参考例7−1
<酢酸スズを用いた酸化スズ(II)膜の作製>
本参考例においては、単独膜形成可能金属源として酢酸スズを用い酸化スズ膜を作製した。本参考例の結果と、後述する参考例7−2の結果とを比較することにより、膜質調整機能について確認した。
まず、基材として、ガラス板(75mm×25mm、厚さ0.7mm)を用意した。
次に、単独膜形成可能金属源として酢酸スズ(関東化学社製)、溶媒としてエタノール85重量%、アセチルアセトン15重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、酢酸スズを0.1mol/Lとなるように溶解させ、1Lの金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材(ガラス板)をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて0.1Lスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、結晶性の酸化スズ膜が形成されていることが確認された(図12参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が440nmであった。
参考例7−2
<酢酸スズおよび塩化スズを用いた酸化スズ膜の作製>
参考例においては、金属酸化物膜形成用溶液に含まれる金属源の濃度を、酢酸スズ0.05mol/L、酸化スズ(II)0.05mol/Lとしたこと以外は、参考例7−1と同様にして金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、その構造に付随すると思われる鋭利な特徴的なピークが得られ、金属酸化物膜の結晶構造が変化していることが確認された(図12参照)。なお、参考例7および実施例7で得られた酸化スズの結晶構造は、どちらも六方晶であると考えられるが、ピークの高さが変化しており、結晶の配向性が変化したことが確認できた。また、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が420nmであった。
[参考例8−1
<セリウムアセチルアセトナートを用いた酸化セリウム膜の作製>
本参考例においては、単独膜形成可能金属源としてセリウムアセチルアセトナートを用い酸化セリウム膜を作製した。本参考例の結果と、後述する参考例8−2の結果とを比較することにより、膜質調整機能について確認した。
まず、基材として、ガラス板(75mm×25mm、厚さ0.7mm)を用意した。
次に、単独膜形成可能金属源としてセリウムアセチルアセトナート(関東化学社製)、溶媒としてエタノール85重量%、アセチルアセトン15重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、セリウムアセチルアセトナートを0.1mol/Lとなるように溶解させ、1Lの金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材(ガラス板)をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて0.1Lスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、非晶質の酸化セリウム膜が形成されていることが確認された(図13参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が360nmであった。
参考例8−2
<セリウムアセチルアセトナートおよび塩化セリウムを用いた酸化セリウム膜の作製>
参考例においては、金属酸化物膜形成用溶液に含まれる金属源の濃度を、セリウムアセチルアセトナート0.05mol/L、塩化セリウム0.05mol/Lとしたこと以外は、参考例8−1と同様にして金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、その構造に付随すると思われる鋭利な特徴的なピークが得られ、金属酸化物膜の結晶性が向上していることが確認された(図13参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が380nmであった。
[参考例9−1
<チタンアセチルアセトナートを用いた酸化チタン膜の作製>
本参考例においては、単独膜形成可能金属源としてチタンアセチルアセトナートを用い酸化チタン膜を作製した。本参考例の結果と、後述する参考例9−2の結果とを比較することにより、膜質調整機能について確認した。
まず、基材として、ガラス板(75mm×25mm、厚さ0.7mm)を用意した。
次に、単独膜形成可能金属源としてチタンアセチルアセトナート(マツモト交商社製)、溶媒としてエタノール85重量%、アセチルアセトン15重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、チタンアセチルアセトナートを0.1mol/Lとなるように溶解させ、1Lの金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材(ガラス板)をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて0.5Lスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、結晶性が弱い酸化チタン膜が形成されていることが確認された(図14参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が200nmであった。
参考例9−2
<チタンアセチルアセトナートおよび塩化チタンを用いた酸化チタン膜の作製>
参考例においては、金属酸化物膜形成用溶液に含まれる金属源の濃度を、チタンアセチルアセトナート0.05mol/L、塩化チタン(関東化学社製)0.05mol/Lとしたこと以外は、参考例9−1と同様にして金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、その構造に付随すると思われる鋭利な特徴的なピークが得られ、金属酸化物膜の結晶性が向上していることが確認された(図14参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が220nmであった。
[参考例10]
<ジルコニウムアセチルアセトナートを用いた酸化ジルコニウム膜の作製>
本参考例においては、単独膜形成可能金属源としてジルコニウムアセチルアセトナートを用い酸化ジルコニウム膜を作製した。本参考例の結果と、後述する実施例10の結果とを比較することにより、膜質調整機能について確認した。
まず、基材として、Siウェハ板を用意した。
次に、単独膜形成可能金属源としてジルコニウムアセチルアセトナート(関東化学社製)、溶媒としてエタノール85重量%、アセチルアセトン15重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、ジルコニウムアセチルアセトナートを0.1mol/Lとなるように溶解させ、1Lの金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材(Siウェハ)をホットプレート(アズワン社製)で500℃に加熱し、この基材に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて0.2Lスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、結晶性の酸化ジルコニウム膜が形成されていることが確認された(図15参照)。このとき、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が400nmであった。
[実施例10]
<ジルコニウムアセチルアセトナートおよび硝酸酸化ジルコニウムを用いた酸化ジルコニウム膜の作製>
本実施例においては、金属酸化物膜形成用溶液に含まれる金属源の濃度を、ジルコニウムアセチルアセトナート0.05mol/L、硝酸酸化ジルコニウム(関東化学社製)0.05mol/Lとしたこと以外は、参考例12と同様にして金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、その構造に付随すると思われる鋭利な特徴的なピークが得られ、金属酸化物膜の結晶性が向上していることが確認された(図15参照)。なお、参考例10で得られた酸化ジルコニウムの結晶構造は、主に正方晶であると考えられ、実施例10で得られた酸化ジルコニウムの結晶構造は、主に、正方晶および単斜晶であると考えられる。すなわち、結晶構造が正方晶から、正方晶および単斜晶に変化したと考えられる。また、走査電子顕微鏡で断面を観察したところ、膜厚が420nmであった。
本発明の金属酸化物膜の製造方法の一例を示す説明図である。 本発明の金属酸化物膜の製造方法の他の例を示す説明図である。 本発明の金属酸化物膜の製造方法の他の例を示す説明図である。 参考例1のX線回折測定の結果を示すグラフである。 実施例1−1のX線回折測定の結果を示すグラフである。 実施例1−2のX線回折測定の結果を示すグラフである。 参考例2および実施例2のX線回折測定の結果を示すグラフである。 参考例3および実施例3のX線回折測定の結果を示すグラフである。 参考例4−1および参考例4−2のX線回折測定の結果を示すグラフである。 参考例5−1および参考例5−2のX線回折測定の結果を示すグラフである。 参考例6−1および参考例6−2のX線回折測定の結果を示すグラフである。 参考例7−1および参考例7−2のX線回折測定の結果を示すグラフである。 参考例8−1および参考例8−2のX線回折測定の結果を示すグラフである。 参考例9−1および参考例9−2のX線回折測定の結果を示すグラフである。 参考例10および実施例10のX線回折測定の結果を示すグラフである。
符号の説明
1 … 基材
2 … 金属酸化物膜形成用溶液
3 … スプレー装置
4、5、6 … ローラー

Claims (8)

  1. 同一の金属元素および異なる非金属部を有する金属源を、2種類以上含有し、かつ、前記2種類以上の金属源の少なくとも一つが、対象となる1種類の金属源、および溶媒からなり濃度が0.1mol/lの金属酸化物膜形成用溶液を用意し、前記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザー等により粒径が0.5〜20μm程度の液滴として、前記液滴を金属酸化物膜形成温度から金属酸化物膜形成温度+100℃の範囲内で加熱した基材と1時間接触させることにより前記基材上に金属酸化物膜を形成し、その後、前記金属酸化物膜を常温まで冷却して、1cm 程度の前記金属酸化物膜の領域を圧力0.2Pa程度でウエス等により拭う試験を行った際に、剥離を生じない強度を有する金属酸化物膜を単独で形成可能な単独膜形成可能金属源であり、前記2種類以上の金属源の少なくとも一つが単独で金属酸化物膜を形成不可能な単独膜形成不可能金属源である金属酸化物膜形成用溶液を用い、
    前記金属酸化物膜形成用溶液と、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基材とを接触させることにより前記基材上に金属酸化物膜を形成することを特徴とする金属酸化物膜の製造方法。
  2. 前記金属酸化物膜形成用溶液に含まれる前記単独膜形成可能金属源の金属源モル分率が30%以上であることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  3. 前記金属酸化物膜形成用溶液が、さらにドーピング金属源を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  4. 前記金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより、前記金属酸化物膜形成用溶液と前記基材とを接触させることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  5. 前記金属酸化物膜形成用溶液が、さらに酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  6. 前記2種類以上の金属源の少なくとも一つが、非金属部に酸アニオンを有する酸アニオン含有金属源であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  7. 前記酸アニオンが、F、Cl、Br、NO 、NO 、SO 2−またはPO 3−であることを特徴とする請求項6に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  8. 前記酸アニオン含有金属源と、非金属部にキレートアニオンを有するキレートアニオン含有金属源とを組合せて用いることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の金属酸化物膜の製造方法。
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