JP5055747B2 - 金属酸化物膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有する金属酸化物膜形成用溶液を用いた金属酸化物膜の製造方法に関するものである。
従来より、金属酸化物膜は様々な優れた物性を示すことが知られており、その特性を活かして、透明導電膜、光学薄膜、燃料電池用電解質等、幅広い分野において使用されている。このような金属酸化物膜の製造方法としては、例えば、ゾルゲル法、スパッタリング法、CVD法、PVD法、印刷法等が知られている。
一方、このような金属酸化物膜を得る別の方法として、スプレー熱分解法が提案されている(特許文献1および特許文献2)。スプレー熱分解法(以下、「従来の方法」とする場合がある。)は、金属酸化物膜を構成する金属源を含有した溶液を、高温の基材に噴霧することにより金属酸化物膜を得る方法であり、通常500℃程度に加熱した基材を使用することから、瞬時に溶媒が蒸発し、金属源が熱分解反応を起こすため、短時間かつ簡略化された工程で金属酸化物膜を得ることができるという利点を有する。
このようなスプレー熱分解法の研究としては、例えば、特許文献1においては、TiO前駆体を含む溶液に過酸化水素又はアルミニウムアセチルアセトナートを添加して原料溶液を調製し、500℃程度に高温保持された基板に上記原料溶液を間歇噴霧することによりTiO前駆体をTiOに熱分解し、基材上に多孔質のTiO薄膜を得る方法を開示している。また、例えば、特許文献2は、特許文献1と同様に熱分解スプレー法により多孔質のTiO薄膜を得る方法であるが、原料溶液に可溶性チタン化合物を加えた溶液を添加することにより、TiO薄膜と基材との密着性向上を図るものであった。
このように、スプレー熱分解法は、短時間かつ簡略化された工程で金属酸化物膜を得ることができる方法ではあるものの、基材を500℃程度という高温まで加熱する必要があり、基材への熱負荷が大きく基材の変形・変寸が生じるという問題や、加熱コストが高いといった問題があった。
特開2002−145615公報 特開2003−176130公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、従来のスプレー熱分解法による熱分解成膜と比較して、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることが可能な金属酸化物膜の製造方法を提供することを主目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は、金属源として金属塩または金属錯体が溶解した金属酸化物膜形成用溶液と、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基板とを接触させることにより、上記基材上に金属酸化物膜を得る金属酸化物膜の製造方法であって、上記金属酸化物膜形成用溶液が、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有することを特徴とする金属酸化物膜の製造方法を提供する。
本発明によれば、上記金属酸化物膜形成用溶液に、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有させることにより、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。また、本発明によれば、上記酸化剤および上記還元剤を組み合わせて使用しても、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。
また、上記発明においては、上記金属酸化物形成用溶液を噴霧することにより、上記金属酸化物形成用溶液と前記基材とを接触させることが好ましい。上記金属酸化物形成用溶液を噴霧することにより、基材の温度を低下させることなく、上記金属酸化物形成用溶液を接触させることができるからである。
また、上記発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液が、酸化剤として過酸化水素または亜硝酸ナトリウムを含有することが好ましい。従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができるからである。
また、上記発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液が、還元剤としてボラン系錯体を含有することが好ましい。従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができるからである。
また、上記発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源が、典型金属元素、半金属元素または遷移金属元素の第3周期以降の元素を含有することが好ましい。上記金属元素は、酸化物の状態をとることができることから金属酸化物膜の主用構成元素として適している。
また、上記発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源が、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ta、Ca、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、およびWからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素を含有することが好ましい。上記金属元素は、プールベ線図において金属酸化物領域、あるいは金属水酸化物領域を有しているため、金属酸化物膜の主用構成元素として適している。
また、上記発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液が、さらにセラミックス微粒子を含有することが好ましい。上記セラミックス微粒子を用いることによって、上記セラミックス微粒子を取り囲むように金属酸化物膜が形成され、異種セラミックスの混合膜を得ることや金属酸化物膜の体積増加を図ることができるからである。
本発明は、従来のスプレー熱分解法による熱分解成膜と比較して、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができるといった効果を奏するものである。
以下、本発明の金属酸化物膜の製造方法について詳細に説明する。
本発明の金属酸化物膜の製造方法は、金属源として金属塩または金属錯体が溶解した金属酸化物膜形成用溶液と、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基板とを接触させることにより、上記基材上に金属酸化物膜を得る金属酸化物膜の製造方法であって、上記金属酸化物膜形成用溶液が、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有することを特徴とするものである。なお、本発明において、「金属酸化物膜形成温度」とは、金属源に含まれる金属元素が酸素と結合し、基材上に金属酸化物膜を形成することが可能な温度をいい、金属塩、金属錯体といった金属源の種類、溶媒等の金属酸化物膜形成用溶液の組成によって大きく異なるものである。本発明において、このような「金属酸化物膜形成温度」は、以下の方法により測定することができる。すなわち、実際に所望の金属源と、所望の酸化剤および/または還元剤とを含有する金属酸化物膜形成用溶液を用意し、基材の加熱温度を変化させて接触させることにより、金属酸化物膜を形成することができる最低の基材加熱温度を測定する。この最低の基材加熱温度を本発明における「金属酸化物膜形成温度」とすることができる。この際、金属酸化物膜が形成したか否かは、通常、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)より得られた結果から判断し、結晶性のないアモルファス膜の場合は、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)より得られた結果から判断するものとする。
本発明においては、上記酸化剤および/または還元剤を使用することにより、従来よりも低い基材加熱温度で金属酸化物膜を成膜することが可能となるのである。
ここで、本発明において、上記酸化剤は、まだ明確ではないが、上記金属源が溶解してなる金属イオン等の酸化を促進させ、その結果、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を形成することが可能になると考えられる。また、上記還元剤についても、まだ明確ではないが、還元剤の熱分解により電子が発生し、この電子が金属酸化物中に含有される水を電気分解することにより水酸化物イオンが発生し、この水酸化物イオンが金属酸化物膜形成用溶液のpHを瞬間的に上昇させることによりプールベ線図における金属酸化物領域、あるいは金属水酸化物領域に到達させることができると考えられ、その結果、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を形成することが可能になると考えられる。また、本発明によれば、上記酸化剤および上記還元剤を組み合わせて使用しても、同様により低い基材加熱温度で金属酸化物膜を形成することができる。
さらに、本発明の金属酸化物膜の製造方法によって、例えば金属部材に対して絶縁性膜や耐食膜を付与すること、ディスプレイ、太陽電池、燃料電池等の部材に対して低抵抗導電金属酸化物膜を付与すること、バイオ関連部材に対して生体親和性や濡れ性等を付与することができる。さらに、本発明の金属酸化物膜の製造方法を用いることによって、燃料電池の電解質膜、電子デバイス関連における誘電体膜、水や酸素に対するガスバリア膜等を得ることができる。
次に、本発明の金属酸化物膜の製造方法について図を用いて説明する。例えば、金属酸化物形成用溶液を噴霧することにより金属酸化物形成用溶液と基材とを接触させる場合、図1に示すように、基材1を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し、スプレー装置3を用いて金属酸化物膜形成用溶液2を噴霧することにより、金属酸化物膜を形成することができる。
次に、本発明の金属酸化物膜の製造方法における金属源の価数の変化について、金属源としてセリウムイオンCe3+を含有する金属酸化物膜形成用溶液から酸化セリウム(CeO)膜を得る場合を用いて説明する。図2はセリウムのプールベ線図であるが、本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液内でCe3+(図中のCe3+領域に相当)として存在しているセリウムは、加熱された基材と接触することにより、価数を変化させCeO膜(図中のCeO領域に相当)になる。すなわち、基材に熱エネルギーを加えることによって、Ce3+領域からCeO領域に移動したと考えることができる。本発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液に含有される酸化剤および/または還元剤によって、Ce3+領域のセリウムイオンをよりCeO領域に近づきやすくすることができ、その結果、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を形成することが可能になると考えられる。例えば、還元剤としてDMABを用いた場合は、以下の反応が起きていると考えられ、金属酸化物膜形成用溶液のpHを上昇させ、セリウムを、Ce3+領域からCeO領域に移動させると考えられる。
このような本発明の金属酸化物膜の製造方法のメカニズムについて、金属源として硝酸セリウム(Ce(NO)、還元剤としてボラン−ジメチルアミン錯体(別名:ジメチルアミンボラン、DMAB)、溶媒として水を用い、酸化セリウム(CeO)膜を形成する場合を用いて説明する。
上記酸化セリウム膜は、まだ明確ではないが、以下の6つの式により形成されると考えられている。
(i) Ce(NO → Ce3++3NO
(ii) (CHNHBH+2HO → BO +(CHNH+7H+6e
(iii) 2HO+2e → 2OH+H
(iv) Ce3+ → Ce4++e
(v) Ce4++2OH → Ce(OH) 2+
(vi) Ce(OH) 2+ → CeO+H
この時、硝酸セリウムは水溶液中でセリウムイオンとなり((i)式)、続いて、加熱によって還元剤DMABが分解((ii)式)することにより、電子を放出する。その後、放出された電子が水の電気分解((iii)式)を誘発し、水酸化物イオンを発生させ金属酸化物膜形成用溶液のpHを上昇させる。その結果、セリウムイオンは価数を変化させ((iv)式)、さらに発生した水酸化物イオンと反応し((v)式)、Ce(OH) 2+が生成する。その後、基材近傍のCe(OH) 2+がpHの上昇によりCeOとなる((vi)式)。
このことから、同様の金属酸化物領域を有する金属元素であれば、本発明の製造方法により、同様に金属酸化物膜を製造することができると考えられる。また、金属水酸化物領域を有する金属元素であっても、基板が加熱されているために金属酸化物膜が得られる。また、溶媒として、水ではなく、アルコール、有機溶媒等を使用した際においても、上記反応と類似の反応、もしくは溶媒中に含まれる微量の水分により、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を形成することが可能になると考えられる。
以下、本発明の金属酸化物膜の製造方法について、各構成毎に詳細に説明する。
1.金属酸化物膜形成用溶液
まず、本発明の金属酸化物膜の製造方法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液について説明する。本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、酸化剤および/または還元剤と、金属源として金属塩または金属錯体と、溶媒とを少なくとも含有するものである。
(1)酸化剤
本発明に用いられる酸化剤は、後述する金属源が溶解してなる金属イオン等の酸化を促進する働きを有するものである。金属イオン等の価数を変化させることにより、金属酸化物の発生しやすい環境とすることができ、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。
本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液における上記酸化剤の濃度としては、酸化剤の種類に応じて異なるものではあるが、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.1mol/lであることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、基材加熱温度を低下させる効果を充分に発揮することができない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、得られる効果に大差が見られず、コスト上好ましくないからである。
このような酸化剤としては、後述する溶媒に溶解し、金属イオン等の酸化を促進することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、酸化銀、二クロム酸、過マンガン酸カリウム等が挙げられ、中でも過酸化水素、亜硝酸ナトリウムを使用することが好ましい。
(2)還元剤
本発明に用いられる還元剤は、分解反応により電子を放出し、水の電気分解によって水酸化物イオンを発生させ、金属酸化物膜形成用溶液のpHを上げる働きを有するものである。金属酸化物膜形成用溶液のpHが上昇することで、プールベ線図における金属酸化物領域あるいは金属水酸化物領域へ誘導し、金属酸化物膜の発生しやすい環境とすることができ、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。
本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液における上記還元剤の濃度としては、還元剤の種類に応じて異なるものではあるが、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.1mol/lであることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、基材加熱温度を低下させる効果を充分に発揮することができない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、得られる効果に大差が見られず、コスト上好ましくないからである。
このような還元剤としては、後述する溶媒に溶解し、分解反応により電子を放出することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ボラン−tert−ブチルアミン錯体、ボラン−N,Nジエチルアニリン錯体、ボラン−ジメチルアミン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体等のボラン系錯体、水酸化シアノホウ素ナトリウム、水酸化ホウ素ナトリウムを挙げることができ、中でもボラン系錯体を使用することが好ましい。
また、本発明においては、還元剤と上述した酸化剤とを組み合わせて使用しても、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。このような還元剤および酸化剤の組合せとしては、基材加熱温度を低下させることができる組合せであれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素または亜硝酸ナトリウムと任意の還元剤との組合せ、任意の酸化剤とボラン系錯体との組合せ等が挙げられ、中でも、過酸化水素とボラン系錯体との組合せが好ましい。
(3)金属源
本発明に用いられる金属源は、金属酸化物膜形成用溶液に溶解し、上述した酸化剤または還元剤の作用により金属酸化物膜を与えるものである。本発明に用いられる金属源は、後述する溶媒に溶解するものであれば、金属塩であっても良く、金属錯体であっても良い。
本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液における上記金属源の濃度としては、金属源が金属塩の場合、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.5mol/lであることが好ましく、金属源が金属錯体である場合、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.5mol/lであることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、金属酸化物膜成膜に時間がかかり、工業的に好適でない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、均一な膜厚の金属酸化物膜を得ることができない可能性があるからである。
このような金属源を構成する金属元素としては、所望の金属酸化物膜を得ることができれば特に限定されるものではないが、例えば、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ta、Ca、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、およびWからなる群から選択されることが好ましい。上記金属元素は、プールベ線図において金属酸化物領域、あるいは金属水酸化物領域を有しているため、金属酸化物膜の主用構成元素として適している。
また、本発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源が、典型金属元素、半金属元素または遷移金属元素の第3周期以降の元素を含有することが好ましい。なお、本発明において、「典型金属元素」とは、具体的には、第1族、第2族および第13族の金属元素並びに鉛(第14族元素)をいう。「遷移金属元素」とは、具体的には、第3族〜第12族の金属元素をいう。「半金属元素」とは、具体的には、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、テルル、ビスマス、ポロニウム、アスタチンをいう。
上記金属塩としては、具体的には、上記金属元素を含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。中でも、本発明においては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩を使用することが好ましい。これらの化合物は汎用品として入手が容易だからである。
また、上記金属錯体としては、具体的には、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、カルシウムジ(メトキシエトキシド)、グルコン酸カルシウム一水和物、クエン酸カルシウム四水和物、サリチル酸カルシウム二水和物、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタンペロキソクエン酸アンモニウム四水和物、ジシクロペンタジエニル鉄(II)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)ジピバロイルメタナート、エチルアセト酢酸銅(II)、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛、ストロンチウムジピバロイルメタナート、イットリウムジピバロイルメタナート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタイソプロポキシニオブ、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、タンタル(V)エトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物、クエン酸鉛(II)三水和物、シクロヘキサン酪酸鉛、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、クロム(III)アセチルアセトナート、トリフルオロメタンスルホン酸ガリウム(III)、ストロンチウムジピバロイルメタナート、五塩化ニオブ、モリブデニルアセチルアセトナート、パラジウム(II)アセチルアセトナート、塩化アンチモン(III)、テルル酸ナトリウム、塩化バリウム二水和物、塩化タングステン(VI)等を挙げることができる。中でも、本発明においては、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、ストロンチウムジピバロイルメタナート、ペンタエトキシニオブ、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物を使用することが好ましい。
また、本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液が上記金属元素を2種類以上含有していても良く、複数種の金属元素を使用することにより、例えば、ITO、Gd−CeO、Sm−CeO、Ni−Fe等の複合金属酸化物膜を得ることができる。
(4)溶媒
本発明に用いられる溶媒は、上述した還元剤および金属源等を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属源が金属塩の場合は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒等を挙げることができ、金属源が金属錯体の場合は、水、上述した低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。また、本発明のおいては、上記溶媒を組み合わせて使用しても良く、例えば、水への溶解性は低いが有機溶媒への溶解性は高い金属錯体と、有機溶媒への溶解性は低いが水への溶解性が高い還元剤とを使用する場合は、水と有機溶媒とを混合することにより両者を溶解させ、均一な金属酸化物膜形成用溶液とすることができる。
(5)添加剤
また、本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、セラミックス微粒子、補助イオン源、および界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。
上記セラミックス微粒子が上記金属酸化物膜形成用溶液に含有されることにより、上記セラミックス微粒子を取り囲むように金属酸化物膜が形成され、異種セラミックスの混合膜を得ることや金属酸化物膜の体積増加を図ることができる。また、上記セラミックス微粒子の含有量は、使用する部材の特徴に合わせて適宜選択されることが好ましい。
このようなセラミックス微粒子は、上記目的を達成することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えばITO、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、珪素酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、セリウム酸化物、カルシウム酸化物、マンガン酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸バリウム等を挙げることができる。
また、上記補助イオン源は、還元剤の熱分解等により生じる電子と反応し水酸化物イオンを発生するものであり、金属酸化物膜形成用溶液のpHを上昇させ、プールベ線図における金属酸化物領域あるいは金属水酸化物領域へ誘導し、金属酸化物膜の発生しやすい環境となり、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。また、上記補助イオン源の使用量は、使用する金属源や還元剤に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
このような補助イオン源としては、具体的には、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、臭素酸イオン、次臭素酸イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンからなる群から選択されるイオン種を挙げることができる。これらの補助イオン源は、溶液中で下記の反応を起こすと考えられている。
ClO + HO + 2e ⇔ ClO + 2OH
ClO + HO + 2e ⇔ ClO + 2OH
ClO + HO + 2e ⇔ ClO + 2OH
2ClO + 2HO + 2e ⇔ Cl(g)+ 4OH
BrO + 2HO + 4e ⇔ BrO + 4OH
2BrO + 2HO + 2e ⇔ Br + 4OH
NO + HO + 2e ⇔ NO + 2OH
NO + 3HO + 3e ⇔ NH + 3OH
また、上記界面活性剤は、上記金属酸化物膜形成用溶液と上記基材表面との界面に作用するものであり、金属酸化物膜形成用溶液と基材表面との接触面積を向上させることができ、均一な金属酸化物膜を得ることができる。特に、金属酸化物膜形成用溶液を噴霧により接触させる場合、上記界面活性剤の効果により、金属酸化物膜形成用溶液の液滴と基材表面とを充分に接触させることができるため、好適に使用される。また、上記界面活性剤の使用量は、使用する金属源や還元剤に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
このような界面活性剤は、具体的にはサーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノールGA、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104PPM、サーフィノール104E、サーフィノール104PA等のサーフィノールシリーズ(以上、全て日信化学工業(株)社製)、NIKKOL AM301、NIKKOL AM313ON(以上、全て日光ケミカル社製)等を挙げることができる。
2.基材
次に、本発明の金属酸化物膜の製造方法に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材の材料としては、上記加熱温度に対する耐熱性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えばガラス、SUS、金属板、セラミック基板、耐熱性プラスチック等を挙げることができ、中でもガラス、SUS、金属板、セラミック基板を使用することが好ましい。汎用性があり、充分な耐熱性を有しているからである。
また、本発明に用いられる基材は、特に限定されるものではないが、例えば、平滑な表面を有するもの、微細構造部を有するもの、穴が開いているもの、溝が刻まれているもの、多孔質であるもの、多孔質膜を備えたものであっても良い。中でも、平滑な表面を有するもの、微細構造部を有するもの、溝が刻まれているもの、多孔質であるもの、多孔質膜を備えたものが好適に使用される。
3.基材と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法
次に、本発明の金属酸化物膜の製造方法における基材と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法について説明する。本発明における上記接触方法としては、上述した基材と上述した金属酸化物膜形成用溶液とを接触させる方法であれば特に限定されるものではないが、上記金属酸化物膜形成用溶液と基材が接触した際に、基材の温度を低下させない方法であることが好ましい。基材の温度が低下すると成膜反応が起こらず所望の金属酸化物膜を得ることができない可能性があるからである。このような基材の温度を低下させない方法としては、例えば、上記金属酸化物膜形成用溶液を液滴として基材に接触させる方法等が挙げられ、中でも上記液滴の径が小さいことが好ましい。上記液滴の径が小さければ、金属酸化物膜形成用溶液の溶媒が瞬時に蒸発し、基材温度の低下をより抑制することができ、さらに液滴の径が小さいことで、均一な金属酸化物膜を得ることができるからである。
このような径が小さい金属酸化物膜形成用溶液の液滴を基材に接触させる方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、上記金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより基材に接触させる方法、金属酸化物膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基材を通過させる方法等が挙げられる。
上記金属酸化物形成用溶液を噴霧することにより基材に接触させる方法は、例えばスプレー装置等を用いて噴霧する方法等が挙げられる。上記スプレー装置等を用いて噴霧する場合、液滴の径は、通常0.1〜1000μm、中でも0.5〜300μmであることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、基材温度の低下を抑制することができ、均一な金属酸化物膜を得ることができるからである。
また、上記スプレー装置の噴射ガスとしては、金属酸化物膜の形成を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素等を挙げることができ、中でも不活性な気体である窒素、アルゴン、ヘリウムが好適に使用される。また、上記噴射ガスの噴射量としては、0.1〜50l/min、中でも1〜20l/minであることが好ましい。また、上記スプレー装置は固定されていているもの、可動式のもの、回転によって上記溶液を噴射させるもの、圧力によって上記溶液のみを噴射させるもの等であっても良い。このようなスプレー装置としては、一般的に用いられるスプレー装置を用いることができ、例えばハンドスプレー(スプレーガンNo.8012、アズワン社製)、超音波ネプライザー(NE−U17、オムロン社製)等を用いることができる。
また、金属酸化物膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基材を通過させる方法においては、液滴の径は、通常0.1〜300μm、中でも1〜100μmであることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、基材温度の低下を抑制することができ、均一な金属酸化物膜を得ることができるからである。
本発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液と加熱された基材とを接触させるのであるが、その際、基材は上述した「金属酸化物膜形成温度」以上の温度まで加熱される。このような「金属酸化物膜形成温度」は、金属塩、金属錯体といった金属源の種類、溶媒等の金属酸化物膜形成用溶液の組成によってものであるが、一般的には150〜600℃の範囲内とすることができ、中でも、250〜400℃の範囲内であることが好ましい。
また、このような基材の加熱方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホットプレート、オーブン、焼成炉、赤外線ランプ、熱風送風機等の加熱方法を挙げることができ、中でも基材温度を上記温度に保持しながら上記金属酸化物膜形成用溶液に接触できる方法が好ましく、具体的にはホットプレート等を使用することが好ましい。
次に、本発明における基材と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法について具体的に説明する。上述した金属酸化物形成用溶液を噴霧することにより基材に接触させる方法としては、例えば、ローラーによって基材を連続的に移動させ噴霧する方法、固定された基材上に噴霧する方法、パイプのような流路に噴霧する方法等が挙げられる。
上記ローラーによって基材を連続的に移動させ噴霧する方法は、例えば、図3に示すように、基材1を、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱したローラー4〜6を用いて連続的に移動させ、スプレー装置3により金属酸化物膜形成用溶液2を噴霧し金属酸化物膜を形成する方法である。この方法は、連続的に金属酸化物膜を形成することができるという利点を有する。
また、上記固定された基材上に噴霧する方法は、例えば、図1に示すように、基材1を金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し、この基板1に対して、スプレー装置3を用いて金属酸化物膜形成用溶液2を噴霧することにより、金属酸化物膜を形成する方法である。
また、上述した金属酸化物膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基材を通過させる方法は、例えば、図4に示すように、金属酸化物膜形成用溶液2をミスト状にした空間に、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱された基材1を通過させることにより金属酸化物膜を形成する方法等を挙げることができる。
4.その他
また、本発明の金属酸化物膜の製造方法においては、上述した接触方法等により得られた金属酸化物膜の洗浄を行っても良い。上記金属酸化物膜の洗浄は、金属酸化物膜の表面等に存在する不純物を取り除くために行われるものであって、例えば、金属酸化物膜形成用溶液に使用した溶媒を用いて洗浄する方法等を挙げることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
参考例1]
<微細加工を施したSUS基材への酸化ジルコニウム膜形成>
参考例においては、微細加工を施したSUS基材に酸化ジルコニウム膜を形成させることにより、絶縁性を付与する実験を行った。
まず、本参考例においては、微細加工を施したSUS基材(VECO社グリットスクエアー200メッシュ、径3.05mm角孔)を基材とした。
次に、塩化ジルコニウム(IV)(関東化学社製)0.1mol/lの水溶液1000gに、過酸化水素水10gを加え、さらに還元剤であるボラン−ジメチルアミン錯体(関東化学社製)を1.0mol/lとなるよう添加し、金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材をホットプレート(アズワン社製)で300℃に加熱し、この基材に上記金属酸化物膜形成用溶液をハンドスプレー(スプレーガンNo.8012、アズワン社製)を用いてスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、純水で洗浄した後に、目視で確認したところ、基材表面および微細加工部に干渉色が観測される程度の膜が確認された。また、上記金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、酸化ジルコニウム膜が形成していることを確認された。さらに、上記基材上に形成された金属酸化物膜の表面抵抗を、ロレスタ(三菱化学社製)を用いて測定したところ、絶縁性を確認することができた。なお、基材上に形成された金属酸化物膜をティッシュペーパーで擦っても剥離することはなかった。
[比較例1]
過酸化水素水および還元剤を加えなかったこと以外は実施例1と同様に実験を行った。その結果、基材上には白色物質が付着し、この白色物質はティッシュペーパーで擦ると容易に剥離するものであった。上記白色物質を、上記X線回折装置を用いて測定したところ、塩化ジルコニウムであった。すなわち、実施例1と同じ300℃において、過酸化水素水および還元剤を加えずに酸化ジルコニウム膜を得ることはできなかった。
[比較例2]
過酸化水素水および還元剤を加えなかったこと、および基材の加熱温度を500℃とした以外は実施例1と同様に実験を行った。その結果、基材上に金属酸化物膜が得られ、純水で洗浄した後に、上記X線回折装置を用いて測定したところ、酸化ジルコニウム膜が形成していることを確認された。さらに、上記基材上に形成された金属酸化物膜の表面抵抗を、ロレスタ(三菱化学社製)を用いて測定したところ、絶縁性が確認することができた。
参考例2]
<微細加工を施したガラス基材への酸化亜鉛膜形成>
参考例においては、微細加工を施したガラス基材に酸化亜鉛膜を形成させることにより、導電性および耐食性を付与する実験を行った。
まず、本参考例においては、エッチング法によって微細加工(溝:幅100μm、長さ10mm、深さ50μm)を施したガラス(0.5mm厚)を基材とした。
次に、硝酸亜鉛0.1mol/lの水溶液1000gに、界面活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノール485)を10g添加し、さらに酸化剤である亜硝酸ナトリウム(関東化学社製)を5g添加することにより、金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材をホットプレート(アズワン社製)で300℃に加熱し、この基材に上記金属酸化物膜形成用溶液をハンドスプレー(スプレーガンNo.8012、アズワン社製)を用いてスプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、純水で洗浄した後に、目視で確認したところ、基材表面および微細加工部に干渉色が観測される程度の膜が確認された。また、上記金属酸化物膜を、上記X線回折装置を用いて測定したところ、酸化亜鉛膜が形成していることを確認された。さらに、上記基材上に形成された金属酸化物膜の表面抵抗を、ロレスタ(三菱化学社製)を用いて測定したところ、表面抵抗は30000Ω/□となり導電性を確認することができた。
[比較例3]
金属酸化物膜形成用溶液として、硝酸亜鉛0.1mol/lの水溶液を用いたこと以外は実施例2と同様に実験を行った。その結果、基材上には白色状物質が付着し、この白色状物質はティッシュペーパーで擦ると容易に剥離するものであった。上記白色状物質を、上記X線回折装置を用いて測定したところ、硝酸亜鉛であった。すなわち、実施例2と同じ300℃において、酸化剤を加えずに酸化亜鉛膜を得ることはできなかった。
[比較例4]
金属酸化物膜形成用溶液として、硝酸亜鉛0.1mol/lの水溶液を用いたこと、および基材の加熱温度を500℃とした以外は実施例2と同様に実験を行った。その結果、基材上に金属酸化物膜が得られ、純水で洗浄した後に、上記X線回折装置を用いて測定したところ、酸化亜鉛膜が形成していることを確認された。
参考例3]
参考例においては、基材としてシリコンウェハを用い、シリコンウェハ上に酸化マグネシウム膜を形成した。
まず、過塩素酸マグネシウム(関東化学社製)を、水20vol%およびエタノール80vol%の混合溶液に、濃度0.1mol/lとなるように溶解させた。その後、還元剤としてボラン−トリメチルアミン錯体(関東化学社製)を0.03mol/lとなるよう添加し、さらに、酸化剤として過酸化水素水を0.05mol/lとなるよう添加し、金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記基材をホットプレート(アズワン社製)で300℃に加熱し、この基材に上記金属酸化物膜形成用溶液をハンドスプレー(スプレーガンNo.8012、アズワン社製)を用いて1時間スプレーし、基材上に金属酸化物膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、純水で洗浄した後に、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、アモルファス膜であることが分かった。そこで、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)により、上記金属酸化物膜の組成を分析したところ、酸化マグネシウム膜が形成していることを確認することができた。また、上記金属酸化物膜の膜厚を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定したところ、200nmであった。
参考例4〜実施例
参考4、6、8、9、11、14、15、17〜25、27〜30、および実施例5、7、10、12、13、15、16、26、31、32においては、下記表1〜表4に示す実験条件で基材上に金属酸化物膜を形成した。なお、金属酸化物膜の形成方法および物性の測定方法は、参考例3に準じるものとする。また、参考例4〜実施例においては、基材として、参考例3と同様のシリコンウェハを使用した。超音波ネプライザーとしては、オムロン社製NE−U17を使用した。
表1には、表2〜表4で用いられる還元剤、酸化剤、補助イオン源およびスプレー器具の種類を示す。表2〜表4には、参考例3〜実施例における具体的な実験条件を示す。参考例3〜実施例におけるいずれの結果も、光電子分光分析装置(ESCA)において、金属酸化物膜が形成されていることが確認された。
Figure 0005055747
Figure 0005055747
Figure 0005055747
Figure 0005055747
本発明の金属酸化物膜の製造方法の一例を示す説明図である。 セリウムに対するpHと電位との関係を示す関係図(プールベ線図)である。 本発明の金属酸化物膜の製造方法の他の例を示す説明図である。 本発明の金属酸化物膜の製造方法の他の例を示す説明図である。
符号の説明
1 … 基材
2 … 金属酸化物膜形成用溶液
3 … スプレー装置
4、5、6 … ローラー

Claims (7)

  1. 金属源として金属塩または金属錯体が溶解した金属酸化物膜形成用溶液と、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基板とを接触させることにより、前記基材上に金属酸化物膜を得る金属酸化物膜の製造方法であって、
    前記金属酸化物膜形成用溶液が、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有し、さらに塩素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、臭素酸イオン、および次亜臭素酸イオンからなる群から選択される補助イオン源を含有することを特徴とする金属酸化物膜の製造方法。
  2. 前記金属酸化物形成用溶液を噴霧することにより、前記金属酸化物形成用溶液と前記基材とを接触させることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  3. 前記金属酸化物膜形成用溶液が、酸化剤として過酸化水素または亜硝酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  4. 前記金属酸化物膜形成用溶液が、還元剤としてボラン系錯体を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  5. 前記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源が、典型金属元素、半金属元素または遷移金属元素の第3周期以降の元素を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  6. 前記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源が、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ta、Ca、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、およびWからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  7. 前記金属酸化物膜形成用溶液が、さらにセラミックス微粒子を含有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の金属酸化物膜の製造方法。
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