JP4555116B2 - 積層体 - Google Patents
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Description
以下、本発明の積層体について、各層ごとに詳細に説明する。
まず、本発明に用いられる多孔質層について説明する。本発明に用いられる多孔質層は多孔質材料を含有するものである。なお、本発明の積層体を作製するにあたり、第一金属酸化物膜充填層を、例えば後述する溶液法、スプレー法等によって作製した場合、多孔質層に第一金属酸化物膜が存在する場合があるが、この場合は、後述する第一金属酸化物膜充填層の空隙率の条件を満たさない限り、本発明において、多孔質層であるものとする。
次に、本発明に用いられる第一金属酸化物膜充填層について説明する。本発明に用いられる第一金属酸化物膜充填層は、多孔質材料からなる多孔質部材の孔部が第一金属酸化物膜で充填されたものである。なお、本発明において、「多孔質部材の孔部が第一金属酸化物膜で充填された」とは、空隙率で10%以下、好ましくは5%以下の状態をいうものとする。すなわち、多孔質部材と第一金属酸化物膜とが存在し、その空隙率が上記の値以下の層を、本発明における第一金属酸化物膜充填層ということとする。また、本発明において、上記空隙率は、
空隙率=(第一金属酸化物膜充填層の全細孔容積)/(真の体積)×100
で求めることができる。全細孔容積は、上述した全自動ガス吸着量測定装置を用いて、上記と同じ条件で測定することによって求めることができる。また、真の体積は、第一金属酸化物膜充填層が占める全体の体積をいうものであり、例えば、第一金属酸化物膜充填層が、平板状の多孔質層上全面に形成された場合は、真の体積=平板の面積×第一金属酸化物膜充填層の膜厚、として求めることができる。この際、上記膜厚は後述する方法により求めることができる。
本発明に用いられる多孔質部材は、多孔質材料からなるものである。このような多孔質材料としては、上述した多孔質層に用いられる多孔質材料と同一のものを挙げることができ、本発明においては、多孔質部材に用いられる多孔質材料と、上述した多孔質層に用いられる多孔質材料とは、同一のものが使用される。
本発明に用いられる第一金属酸化物膜は、上記多孔質部材の孔部を形成する壁部の表面上に形成され、上記多孔質部材の孔部を充填するものである。本発明においては、表面積の大きな多孔質部材と、第一金属酸化物膜とが接触していることから、接触面積を大きくすることができ、様々なデバイスの性能を向上させることができる。
本発明に用いられる第一金属酸化物膜充填層は、上述した多孔質部材の孔部が上述した第一金属酸化物膜で充填されたものである。本発明に用いられる第一金属酸化物膜充填層の膜厚としては、特に限定されるものではないが、具体的には、10nm〜10μmの範囲内であり、中でも10nm〜1μmの範囲内、特に10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。従来のゾル・ゲル法等を用いた場合は、焼成によって膜が剥がれてしまうため、上記膜厚を有する第一金属酸化物膜充填層を形成することが不可能であったが、本発明においては、後述する溶液法、スプレー法等を用いることにより、上記膜厚を有する第一金属酸化物膜充填層を形成することができ、多孔質部材と第一金属酸化物膜とが充分な接触面積を有していることから、種々のデバイスの性能を向上させることができる。なお、本発明において、上記膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM、S−4500、日立製作所製)または透過型電子顕微鏡(TEM、H−9000、日立製作所製)で測定することにより求める。
次に、本発明に用いられる第二金属酸化物膜について説明する。本発明に用いられる第二金属酸化物膜は、上述した第一金属酸化物膜充填層上に形成されるものである。
本発明の積層体は、多孔質材料を有する多孔質層と、上記多孔質層上に形成され、上記多孔質材料からなる多孔質部材の孔部が第一金属酸化物膜で充填された第一金属酸化物膜充填層と、上記第一金属酸化物膜充填層上に形成された第二金属酸化物膜と、を備えたことを特徴とするものである。
本発明の積層体の製造方法としては、所望の積層体を得ることができる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、後述する溶液法、スプレー法、およびこれらの組み合わせ等を挙げることができる。以下、本発明の積層体の製造方法について、第一金属酸化物膜充填層形成工程と、第二金属酸化物膜形成工程とにわけて説明する。
第一金属酸化物膜充填層形成工程は、多孔質層上に第一金属酸化物膜充填層を形成する工程である。本工程に用いられる方法としては、所望の第一金属酸化物膜充填層を得ることができる方法であれば特に限定されるものではないが、具体的には、以下に述べる(a)溶液法および(b)スプレー法等を挙げることができる。
本工程において、溶液法は、金属源として金属塩または金属錯体と、酸化剤および還元剤の少なくとも一方とが溶解した第一金属酸化物膜形成用溶液と、多孔質部材とを接触させることにより上記多孔質部材の孔部に第一金属酸化物膜を形成する方法である。上記溶液法においては、上記多孔質層の一部を、第一金属酸化物膜充填層を構成する多孔質部材とみなし、その孔部を第一金属酸化物膜で充填することによって、第一金属酸化物膜充填層とすることができる。
まず、上記溶液法に用いられる第一金属酸化物膜形成用溶液について説明する。上記溶液法に用いられる第一金属酸化物膜形成用溶液は、酸化剤および/または還元剤と、金属源である金属塩または金属錯体と、溶媒とを少なくとも含有するものである。
上記第一金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源は、第一金属酸化物膜形成用溶液に溶解し、後述する酸化剤、還元剤等の作用により第一金属酸化物膜を与えるものであれば、金属塩であっても良く、金属錯体であっても良い。なお、上記溶液法における「金属錯体」とは、金属イオンに対して無機物または有機物が配位したもの、あるいは、分子中に金属−炭素結合を有する、いわゆる有機金属化合物を含むものである。
また、上記溶液法においては、第一金属酸化物膜形成用溶液が上記金属元素を2種類以上含有していても良く、複数種の金属元素を使用することにより、例えば、ITO、Gd−CeO2、Sm−CeO2、Ni−Fe2O3等の複合第一金属酸化物膜を得ることができる。
上記第一金属酸化物膜形成用溶液に用いられる酸化剤は、上述した金属源が溶解してなる金属イオン等の酸化を促進する働きを有するものである。金属イオン等の価数を変化させることにより、第一金属酸化物膜の発生しやすい環境とすることができる。
上記第一金属酸化物膜形成用溶液における上記酸化剤の濃度としては、酸化剤の種類に応じて異なるものではあるが、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.1mol/lであることが好ましい。
上記第一金属酸化物膜形成用溶液に用いられる還元剤は、分解反応により電子を放出し、水の電気分解によって水酸化物イオンを発生させ、第一金属酸化物膜形成用溶液のpHを上げる働きを有するものである。第一金属酸化物膜形成用溶液のpHを上昇させ、第一金属酸化物膜の発生しやすい環境とすることができる。
(添加剤)
また、上記溶液法に用いられる第一金属酸化物膜形成用溶液は、補助イオン源、界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。
上記補助イオン源は、電子と反応し水酸化物イオンを発生するものであり、第一金属酸化物膜形成用溶液のpHを上昇させ、第一金属酸化物膜の形成しやすい環境とすることができる。また、上記補助イオン源の使用量は、使用する金属源や還元剤に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
ClO4 − + H2O + 2e− ⇔ ClO3 − + 2OH−
ClO3 − + H2O + 2e− ⇔ ClO2 − + 2OH−
ClO2 − + H2O + 2e− ⇔ ClO− + 2OH−
2ClO− + 2H2O + 2e− ⇔ Cl2(g)+ 4OH−
BrO3 − + 2H2O + 4e− ⇔ BrO− + 4OH−
2BrO− + 2H2O + 2e− ⇔ Br2 + 4OH−
NO3 − + H2O + 2e− ⇔ NO2 − + 2OH−
NO2 − + 3H2O + 3e− ⇔ NH3 + 3OH−
上記第一金属酸化物膜形成用溶液に用いられる溶媒は、上述した金属源、酸化剤、還元剤等を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属源が金属塩の場合は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒等を挙げることができ、金属源が金属錯体の場合は、上述した低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。また、上記溶液法においては、上記溶媒を組み合わせて使用しても良く、例えば、水への溶解性は低いが有機溶媒への溶解性は高い有機金属錯体と、有機溶媒への溶解性は低いが水への溶解性が高い還元剤とを使用する場合は、水と有機溶媒とを混合することにより両者を溶解させ、均一な第一金属酸化物膜形成用溶液とすることができる。
次に、上記溶液法における多孔質部材と第一金属酸化物膜形成用溶液との接触方法について説明する。上記接触方法としては、上述した多孔質部材と上述した第一金属酸化物膜形成用溶液とを接触させる方法であれば、特に限定されるものではなく、具体的には、ロールコート法、ディッピング法、枚葉式による方法、溶液を霧状にして塗布する方法等が挙げられる。
本工程において、スプレー法は、多孔質部材を第一金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱し、金属源として金属塩または金属錯体が溶解した第一金属酸化物膜形成用溶液と接触させることにより、上記多孔質部材の孔部に第一金属酸化物膜を形成する方法である。
上記溶液法においては、上記多孔質層の一部を、第一金属酸化物膜充填層を構成する多孔質部材とみなし、その孔部を第一金属酸化物膜で充填することによって、第一金属酸化物膜充填層とすることができる。上記スプレー法においては、上記多孔質層の一部を、第一金属酸化物膜充填層を構成する多孔質部材とみなし、その孔部を第一金属酸化物膜で充填することによって、第一金属酸化物膜充填層とすることができる。
まず、上記スプレー法に用いられる第一金属酸化物膜形成用溶液について説明する。本発明に用いられる第一金属酸化物膜形成用溶液は、金属源である金属塩または金属錯体と、溶媒とを少なくとも含有するものである。また、本発明においては、上記第一金属酸化物膜形成用溶液が、酸化剤および還元剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。
上記第一金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源としては、特に限定されるものではないが、具体的には「(a)スプレー法」に記載したものと同様のものを使用することができる。また、上記スプレー法に用いられる第一金属酸化物膜形成用溶液における上記金属源の濃度としては、金属源が金属塩の場合、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.5mol/lであることが好ましく、金属源が金属錯体である場合、通常0.001〜1mol/lであり、中でも0.01〜0.5mol/lであることが好ましい。
上記第一金属酸化物膜形成用溶液に用いられる酸化剤、還元剤、添加剤、溶媒については、「(a)スプレー法」に記載したものと同様のものを使用することができるので、ここでの説明は省略する。
次に、上記スプレー法における多孔質部材と第一金属酸化物膜形成用溶液との接触方法について説明する。上記接触方法としては、上述した多孔質部材と上述した第一金属酸化物膜形成用溶液とを接触させる方法であれば特に限定されるものではないが、第一金属酸化物膜形成用溶液と多孔質部材が接触した際に、多孔質部材の温度を低下させない方法であることが好ましい。多孔質部材の温度が低下すると成膜反応が起こらず所望の第一金属酸化物膜を得ることができない可能性があるからである。このような多孔質部材の温度を低下させない方法としては、例えば、第一金属酸化物膜形成用溶液を液滴として多孔質部材に接触させる方法等が挙げられ、中でも上記液滴の径が小さいことが好ましい。上記液滴の径が小さければ、第一金属酸化物膜形成用溶液の溶媒が瞬時に蒸発し、多孔質部材の温度低下をより抑制することができるからである。
第二金属酸化物膜充填層形成工程は、第一金属酸化物膜充填層上に第二金属酸化物膜を形成する工程である。本工程に用いられる方法としては、所望の第二金属酸化物膜を得ることができる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、スプレー法等を挙げることができる。
本実施例においては、ガラス基材を備えたTiO2多孔質層に対して、ITO膜を成膜した。
まず、上記TiO2多孔質層を作製した。具体的な製造方法としては、まず、溶媒である水およびイソプロピルアルコールに、一次粒子20nmの酸化チタン微粒子(日本アエロジル社製、P25)37.5重量%、アセチルアセトン1.25重量%、ポリエチレングリコール(平均分子量3000)1.88重量%となるように添加し、ホモジナイザーを用いて上記試料が溶解、分散されたスラリーを作製した。このスラリーをドクターブレード法にてガラス基材上に塗布後、20分放置し、100℃で30分間乾燥させた。続いて、電気マッフル炉(デンケン社製、P90)を用い500℃で30分間、大気圧雰囲気下にて焼成した。これにより、ガラス基材を備えたTiO2多孔質層を得た。得られたTiO2多孔質層の平均孔径は、50nmであった。
次に、300℃に加熱した第一金属酸化物膜充填層にハンドスプレー(アズワン社製)を用いてスプレーすることにより、多孔質層、金属酸化物膜充填層、および金属酸化物膜を備えた積層体を得た。この積層体の金属酸化物膜充填層の膜厚は、120nmであった。上記方法により得られた積層体のSEM画像を図12に示す。
本実施例においては、燃料電池の燃料極(日本ファインセラミックス社製、サマリウムドーピングセリア&酸化ニッケル多孔質層、平均孔径1μm、厚み800μm、平均粒子径1μm)に対して、ガドリニウムドーピングセリア膜を成膜した。また、本実施例においては、第一金属酸化物膜形成用溶液および第二金属酸化物膜形成用溶液は同一のものを使用し(単に「金属酸化物膜形成用溶液」とする。)、第一金属酸化物膜充填層および第二金属酸化物膜は、共にスプレー法により連続して作製した。
初めに、金属酸化物膜形成用溶液を作製した。セリウムアセチルアセトナート(関東化学社製)0.1mol/l溶液1000g(トルエン:エタノール=50:50)に硝酸ガドリニウム(関東化学社製)を0.05mol/lとなるように添加することによって、金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記燃料極を500℃となるまで加熱し、金属酸化物膜形成用溶液を200ml噴霧することにより、多孔質層、金属酸化物膜充填層、および金属酸化物膜を備えた積層体を得た。この積層体の金属酸化物膜充填層の膜厚は、1.1μmであった。また、上記積層体のガドリニウムドーピングセリア膜(第二金属酸化物膜)上に空気極を設けて発電を試みたところ、発電が確認された。
[比較例1]
実施例1で適用した燃料極(日本ファインセラミックス社製、サマリウムドーピングセリア&酸化ニッケル多孔質材料、平均細孔径1μm、厚み800μm、平均粒子径1μm、)に対して、ディップコート法にて成膜を試みた。
ガドリニウムドーピングセリアの粉体(日本ファインセラミックス社製、平均粒子径50nm)の20重量%添加溶液(水:エタノール=70:30)に燃料極を浸漬した後、1300℃で2時間焼成した。その結果、膜が剥離してしまい、成膜が不可であるだけでなく、内部までガドリニウムドーピングセリア粉体が至っていないことが確認された。
2 … 第一金属酸化物膜充填層
3 … 第二金属酸化物膜
4、5 … ローラー
6 … 多孔質部材
7 … 第一金属酸化物膜形成用溶液
8 … ポンプ
9〜11 … ローラー
12 … スプレー装置
Claims (5)
- 多孔質材料を有する多孔質層と、前記多孔質層上に形成され、前記多孔質材料からなる多孔質部材の孔部が第一金属酸化物膜で充填された第一金属酸化物膜充填層と、前記第一金属酸化物膜充填層上に形成された第二金属酸化物膜と、を備え、
前記第一金属酸化物膜充填層の膜厚が10nm〜1.1μmの範囲内であることを特徴とする積層体。 - 前記多孔質部材の平均孔径が1mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
- 前記第二金属酸化物膜を構成する第二金属酸化物結晶が柱状構造を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体。
- 前記第二金属酸化物結晶の積層方向の結晶径を、前記第二金属酸化物結晶の積層方向と直交する方向の結晶径で除した値が、2以上であることを特徴とする請求項3に記載の積層体。
- 前記第一金属酸化物膜および前記第二金属酸化物膜の少なくとも一方が、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、およびTaからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の積層体。
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