JP4704250B2 - 金属酸化物膜の製造方法、および、金属酸化物膜の製造装置 - Google Patents

金属酸化物膜の製造方法、および、金属酸化物膜の製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、透明性、緻密性、密着性等に優れた金属酸化物膜を得ることが可能な金属酸化物膜の製造方法に関するものである。
従来、化合物半導体、特に金属酸化物膜は光電変換素子や表示素子の材料として広く用いられてきた。このような金属酸化物膜の多くはスパッタリング法、蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、印刷法などによって製造されてきたが、これらの手法は高価な装置が必要であったり、別途焼成工程が必要であったりする等の問題点があった。
このような問題に対して、溶液から基材上に直接金属酸化物膜を成膜するソフト溶液プロセスが提唱されている(非特許文献1)。このようなソフト溶液プロセスは、焼成や高真空状態を必要としないことから、上述した装置等の問題を解決することができるという利点を有する。さらに、金属酸化物膜形成用溶液に基材を接触させることにより成膜するものであるから、複雑な構造部を有する基材であっても、上記溶液が構造部内に容易に侵入することができ、均一な金属酸化物膜が得られるという利点もある。
ところで、ソフト溶液プロセスは、例えば特許文献1に開示されているように、板状の基材を、金属酸化物膜が形成される成膜面とは反対側から加熱することにより、板状の基材表面に金属酸化物膜を形成する手法の一つとして用いられてきたが、近年では、例えば円筒形、角筒形等の筒状基材の外周面に金属酸化物膜を形成することが求められている。
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来のソフト溶液プロセスの手法では、筒状の形状を有する基材の外周面には均一な金属酸化物膜を形成することができないという問題点があった。このため筒状の基材の外周面に金属酸化物膜を成膜するには、上述した高価な装置等を必要とするような方法を用いるしかなかった。
このようなことから、ソフト溶液プロセスにより、筒状基材の外周面にも均一な金属酸化物膜を成膜できる方法が求められていた。
資源と素材 Vol.116 p.649−655(2000) 特開2001−259494号公報
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、筒状基材の外周面に、厚みが均一で、透明性、緻密性、密着性等に優れた金属酸化物膜を得ることができる金属酸化物膜の製造方法を提供することを主目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は、貫通孔を有する筒状の基材を用い、上記基材の外周面を金属酸化物膜形成温度以上に加熱し、さらに上記貫通孔を中心として上記基材を回転させた状態で、上記基材の外周面に金属酸化物膜形成用溶液をスプレー装置で噴霧することにより、上記基材の外周面に金属酸化物膜を形成することを特徴とする金属酸化物膜の製造方法を提供する。
本発明によれば、金属酸化物膜が成膜される基材として貫通孔を有する円筒状の基材を用い、上記貫通孔を中心として基材を回転させた状態で、金属酸化物膜形成温度以上に加熱された基材の外周面に金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより、筒状の基材の外周面に厚みが均一で、透明性、緻密性、密着性等に優れた金属酸化物膜を成膜することができる。
本発明においては、上記基材の外周面を上記貫通孔の内側から加熱することが好ましい。上記基材の外周面を上記貫通孔の内側から加熱することにより、基材の外周面の温度を均一にすることができるため、より均質な金属酸化物膜を成膜することができるからである。
また、本発明においては上記基材が円筒形であることが好ましい。上記基材が円筒形であることにより、基材の回転速度や金属酸化物膜形成用溶液の噴霧条件を一定とすることで基材の外周面に均質な金属酸化物膜を形成できるため、本発明の実施が容易になるからである。
本発明は、貫通孔を有する筒状の基材を、上記貫通孔を中心として回転させる回転装置と、上記基材の外周面を加熱する加熱装置と、上記基材の外周面に金属酸化物膜形成用溶液を噴霧するスプレー装置と、上記スプレー装置に上記金属酸化物膜形成用溶液を供給する金属酸化物膜形成用溶液供給装置と、を有することを特徴とする金属酸化物膜の製造装置を提供する。
本発明によれば、筒状の基材を回転させた状態で基材の外周面に金属酸化物膜を成膜できるため、筒状の基材の外周面に厚みが均一で、透明性、緻密性、密着性等に優れた金属酸化物膜を形成できる金属酸化物膜の製造装置を得ることができる。
本発明においては、上記加熱装置が、上記貫通孔内に設けられ、上記貫通孔の内側から上記基材を加熱するものであることが好ましい。これにより、基材の外周面の温度を均一にすることができるため、より均質な金属酸化物膜を成膜することができる金属酸化物膜の製造装置を得ることができるからである。
本発明は、筒状の形状を有する基材の外周面に厚みが均一で、透明性、緻密性、密着性等に優れた金属酸化物膜を得ることができるという効果を奏する。
本発明は、金属酸化物膜の製造方法、および、金属酸化物膜の製造装置に関するものである。以下、本発明の金属酸化物膜の製造方法、および、金属酸化物膜の製造装置について詳細に説明する。
A.金属酸化物膜の製造方法
まず、本発明の金属酸化物膜の製造方法について説明する。本発明の金属酸化物膜の製造方法は、貫通孔を有する筒状の基材を用い、上記基材の外周面を金属酸化物膜形成温度以上に加熱し、さらに上記貫通孔を中心として上記基材を回転させた状態で、上記基材の外周面に金属酸化物膜形成用溶液をスプレー装置で噴霧することにより、上記基材の外周面に金属酸化物膜を形成することを特徴とするものである。
このような本発明の金属酸化物膜の製造方法について図を参照しながら説明する。図1は本発明の金属酸化物膜の製造方法の一例を説明する概略図である。図1に例示するように本発明の金属酸化物膜の製造方法は、貫通孔を有する筒状の基材3の外周面を、上記貫通孔の内部に設けられた加熱装置5によって金属酸化物膜形成温度以上に加熱し、上記基材3を回転させながら、上記基材3の外周面に、スプレー装置1により金属酸化物膜形成用溶液2を噴霧することにより(図1(a))、基材3の外周面に金属酸化物膜4を成膜する方法である(図1(b))。
従来のソフト溶液プロセスによる金属酸化物膜の製造方法は、主に板状の基材表面に金属酸化物膜を成膜する方法として用いられており、ソフト溶液プロセスにより筒状の基材の外周面に金属酸化物膜を成膜することはできなかった。
本発明によれば、金属酸化物膜が成膜される基材として、貫通孔を有する円筒状の基材を用い、上記貫通孔を中心として基材を回転させた状態で基材の金属酸化物膜を成膜することにより、筒状基材の外周面に厚みが均一で、透明性、緻密性、密着性等に優れた金属酸化物膜を得ることができる。
以下、本発明の金属酸化物膜の製造方法について詳細に説明する。
1.基材
まず、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材は、貫通孔を有する筒状の形態を有するものであり、外周面に金属酸化物膜が成膜されるものである。ここで、本発明における「筒状」とは、円柱や角柱等の柱状の外観を有し、中心軸を貫通するように貫通孔が形成された形態をいい、「外周面」とは、基材の表面のうち上記貫通孔が形成された面および貫通孔の内面を除いた表面をいう。
このような、筒状の基材について図を参照しながらより具体的に説明する。図2は本発明に用いられる基材の一例を示す概略図である。図2に例示するように本発明に用いられる基材3’は円柱状の外観を有するものであって、中心軸Aを貫通するように貫通孔Hが形成された形態を有するものである。また、基材3’における上記「外周面」は、基材3’の表面のうち、貫通孔が形成された上面11、底面12、および、貫通孔Hの内面を除いた面(図2中、10で表される表面)を指すものである。
ここで、図2に示す例においては、上面11および底面12の形状が同一となっているが、本発明に用いられる基材は、上面および底面との形状が異なっていても良い。上記例においては外周面10の形態が平面となっているが、本発明に用いられる基材の外周面の形態は凹凸を有していても良い。
上記筒状の形態としては、円柱状の外観を有する円筒形または多角柱状の外観を有する多角筒形を挙げることができるが、なかでも本発明においては円筒形の基材を用いることが好ましい。上記基材が円筒形であることにより、基材の回転速度や金属酸化物膜形成用溶液の噴霧条件を一定とすることで、基材の外周面に均質な金属酸化物膜を形成できるため、本発明の実施が容易になるからである。
また、本発明に用いられる基材の外周面の形態は、例えば、平滑な表面を有するもの、微細構造部を有するもの、穴が開いているもの、溝が刻まれているもの、メッシュ状であるもの、多孔質であるもの、多孔質膜を備えたもの等のいずれの形態であっても良い。なかでも、本発明においては平滑な表面を有するもの、微細構造部を有するもの、溝が刻まれているもの、多孔質であるもの、多孔質膜を備えたものが好適に使用される。
本発明に用いられる基材の材料としては、金属酸化物膜を成膜する際の加熱温度に対する耐熱性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えばガラス、SUS、金属板、セラミック基板、耐熱性プラスチック等を挙げることができ、なかでもガラス、SUS、金属板、セラミック基板を使用することが好ましい。このような材料は汎用性があり、充分な耐熱性を有しているからである。
2.基材の加熱方法
次に、上記基材を加熱する方法について説明する。本発明における基材の加熱方法としては、基材の外周面を上記「金属酸化物膜形成温度」以上に加熱できる方法であれば特に限定されない。
ここで、本発明における「金属酸化物膜形成温度」とは、金属源に含まれる金属元素が酸素と結合し、基材上に金属酸化物膜を形成することが可能な温度をいい、金属塩、金属錯体といった金属源の種類、溶媒等の金属酸化物膜形成用溶液の組成によって大きく異なるものである。本発明において、このような「金属酸化物膜形成温度」は、以下の方法により測定することができる。すなわち、実際に所望の金属源を含有する金属酸化物膜形成用溶液を用意し、基材の加熱温度を変化させて接触させることにより、金属酸化物膜を形成することができる最低の基材加熱温度を測定する。この最低の基材加熱温度を本発明における「金属酸化物膜形成温度」とすることができる。この際、金属酸化物膜が形成したか否かは、通常、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)より得られた結果から判断し、結晶性のないアモルファス膜の場合は、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)より得られた結果から判断するものとする。
本発明に用いられる加熱方法としては、基材が有する貫通孔の内側から加熱する内側加熱方法、上記貫通孔の外側から加熱する外側加熱方法、および、上記貫通孔の内側および外側から加熱する両側加熱方法を挙げることができる。
ここで、上記内側加熱方法は、回転する基材の外周面を常時均一に加熱することができるため、より均質な金属酸化物膜を成膜することができるという利点を有する。
また、上記外側加熱方法は、基材の貫通孔の内面と外周面との距離が大きい場合や、基材の外周面の形態が平面ではなく、凹凸形状を有するものであったり、メッシュ状等の形態を有するものである場合であっても、外周面を容易に金属酸化物膜形成温度以上に加熱できるという利点を有する。
さらに、上記両側加熱方法は、上記内側加熱方法および外側加熱方法の利点に加え、基材の貫通孔の内側および外側から加熱することができることから、両側の熱膨張率の差を低減することができるため、加熱時の基材の変形を防止することができるという利点を有する。
このようなことから、基材の加熱方法としては、上記内側加熱方法、外側加熱方法、および、両側加熱方法のいずれであっても好適に用いることができるが、本発明においては上記内側加熱方法または上記両側加熱方法を用いることが好ましい。
本発明において、上記基材を加熱する加熱方式としては、基材の外周面の温度を上記「金属酸化物膜形成温度」以上に到達させることができる方式であれば特に限定されるものではない。このような加熱方式としては、対流加熱方式、伝導加熱方式、および、輻射加熱方式を挙げることができる。
ここで、上記対流加熱方式とは、空気やガスまたは液体等を媒体とし、これらの媒体を加熱して基材に接触させることにより基材を加熱する方式である。
また、上記伝導加熱方式とは、媒体を介さずに熱源を直接基材に接触させ、上記熱源からの熱伝導により基材を加熱する方式である。
さらに、上記輻射加熱方式とは、分子振動を誘起する電磁波を基材に照射することにより加熱する方式である。
本発明においては上記対流加熱方式、伝導加熱方式、および輻射加熱方式のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでも、対流加熱方式または輻射加熱方式を用いることが好ましく、特に輻射加熱方式を用いることが最も好ましい。輻射加熱方式によれば、基材に媒体等を接触させることを必要としないため、基材を加熱する際に基材の回転動作に制約が生じたり、また、装置が複雑化することを防止できるからである。
上記輻射加熱方式に用いられる電磁波としては、通常、赤外線が用いられる。本発明において、上記電磁波として赤外線を用いる場合、その波長としては基材に吸収され、かつ、基材を所望の金属酸化物膜形成温度以上に加温できる波長を有する赤外線であれば特に限定されない。
したがって、本発明に用いられる赤外線の波長は基材の種類等に応じて、短波長赤外線、中波長赤外線、および長波長赤外線を任意に選択して用いればよい。
赤外線の選択例としては、例えば、上記基材として金属系基材を用いる場合は短波長赤外線、上記基材として、樹脂系基材またはガラス系基材を用いる場合は中波長赤外線、また、上記基材としてセラミック系基材を用いる場合は長波長赤外線を用いることを例示することができる。
ここで、上記短波長赤外線は波長0.8μm〜2.5μmの範囲内のもの、上記中波長赤外線は波長2.5μm〜25μmの範囲内のもの、および、上記長波長赤外線は波長25μm〜1000μmの範囲内のものを指すものとする。
このように本発明における基材の加熱方法として、赤外線を照射する方法を用いる場合における赤外線を照射する装置は、所望の波長を有する赤外線を照射できる装置であれば特に限定されない。このような装置としては例えば、短波長赤外線ヒーター、中波長赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、カーボンヒーター等を例示することができる。
3.基材の回転方法
本発明に用いられる基材の回転方法としては、貫通孔を中心として所望の速度で回転させることができる方法であれば特に限定されない。また、基材の回転速度に関しては、後述するスプレー装置から噴霧される金属酸化物膜形成用溶液の量や基材の形状等に応じて、任意に決定すればよい。
さらに、基材の回転速度は一定速度としても良く、または経時で回転速度を変化させても良い。経時で回転速度を変化させる態様としては、単調に増速させる態様、単調に減速させる態様、周期的に増減させる態様、または、不規則に増減させる態様等を挙げることができる。
4.スプレー装置
次に、本発明に用いられるスプレー装置について説明する。本発明に用いられるスプレー装置は、後述する金属酸化物膜形成用溶液を上述した基材の外周面に噴霧するものである。
本発明に用いられるスプレー装置としては、後述する金属酸化物膜形成用溶液を所望の程度に霧化して噴出することができるスプレー方式を備える装置であれば特に限定されない。このようなスプレー方式としては、例えば、エアースプレー方式、エアーレススプレー方式、または回転霧化スプレー方式、超音波霧化方式、静電霧化方式等を例示することができる。
また、本発明に用いられるスプレー装置のノズル径としては、所望の金属酸化物膜を得ることができれば特に限定されるものではないが、具体的には、10μm〜1000μmの範囲内、なかでも50μm〜500μmの範囲内、特に100μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明に用いられるスプレー装置が後述する金属酸化物膜形成用溶液を吐出する吐出量としては、所望の金属酸化物膜を得ることができれば特に限定されるものではないが、具体的には、0.0001L/min〜0.1L/minの範囲内、なかでも0.0001L/min〜0.05L/minの範囲内、特に0.001L/min〜0.01L/minの範囲内であることが好ましい。上記範囲を超える場合は、基材外周面の温度低下を引き起こす可能性があり、上記範囲に満たない場合は、金属酸化物膜の成膜に時間がかかり、コスト上好ましくないからである。また、上記範囲内であれば単調に増加させる態様、単調に減少させる態様、周期的に増減させる態様、または、不規則に増減させる態様等の態様により、噴霧量を経時間で変化させても良い。
さらに、本発明に用いられるスプレー装置により噴霧される金属酸化物膜形成用溶液の液滴の径としては、0.01μm〜1000μmの範囲内が好ましく、なかでも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、液滴が基材に接触する際に、基材温度が低下せず、均一な金属酸化物膜を得ることができるからである。
5.金属酸化物膜形成用溶液
次に、本発明の金属酸化物膜の製造方法に用いられる金属酸化物膜形成用溶液について説明する。本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は上述したスプレー装置により噴霧され、基材の外周面に金属酸化物膜を形成するものである。
本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液としては、少なくとも金属酸化物膜を形成できる金属源と、これを溶解する溶媒とを有するものが用いられる。なかでも本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は酸化剤および/または還元剤を含有していることが好ましい。酸化剤、還元剤を添加することにより、より低い温度で金属酸化物膜を形成することができ、さらに温度が低いことから、霧化された金属酸化物膜形成用溶液が、基材に到達する前に酸化され金属酸化物微粒子となることを防止することができ、透明性等の高い金属酸化物膜を形成することができるからである。
以下、上記金属酸化物膜形成用溶液の各構成について説明する。
(1)金属源
まず、上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源について説明する。上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる金属源は基材の外周面に形成される金属酸化物膜を構成するものである。
本発明に用いられる金属源としては、金属酸化物膜形成温度以上に加熱された基材の外周面に噴霧されることにより、金属酸化物膜を形成できるものであれば特に限定されるものではない。このような金属減としては、例えば、金属塩であっても良く、金属錯体であっても良い。なお、本発明における「金属錯体」とは、金属イオンに対して無機物または有機物が配位したもの、あるいは、分子中に金属−炭素結合を有する、いわゆる有機金属化合物を含むものである。
上記金属酸化物膜形成用溶液における上記金属源の濃度としては、金属源が金属塩の場合、通常0.001mol/L〜10mol/Lであり、なかでも0.01mol/L〜1mol/Lであることが好ましく、金属源が金属錯体である場合、通常0.001mol/L〜10mol/Lであり、なかでも0.01mol/L〜1mol/Lであることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、金属酸化物膜成膜に時間がかかり、工業的に好適でない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、均一な膜厚の金属酸化物膜を得ることができない可能性があるからである。
このような金属源を構成する金属元素としては、所望の金属酸化物膜を得ることができれば特に限定されるものではないが、例えば、Mg、Al、Si、Ca、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ta、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、および、Wからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
上記金属塩としては、具体的には、上記金属元素を含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。なかでも、本発明においては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩を使用することが好ましい。これらの化合物は汎用品として入手が容易だからである。
また、上記金属錯体としては、具体的には、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、カルシウムジ(メトキシエトキシド)、グルコン酸カルシウム一水和物、クエン酸カルシウム四水和物、サリチル酸カルシウム二水和物、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタンペロキソクエン酸アンモニウム四水和物、ジシクロペンタジエニル鉄(II)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)ジピバロイルメタナート、エチルアセト酢酸銅(II)、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛、ストロンチウムジピバロイルメタナート、イットリウムジピバロイルメタナート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタイソプロポキシニオブ、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、トリシクロヘキシルすず(IV)ヒドロキシド、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、タンタル(V)エトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物、クエン酸鉛(II)三水和物、シクロヘキサン酪酸鉛等を挙げることができる。さらには、クロム(III)アセチルアセトナート、トリフルオロメタンスルホン酸ガリウム(III)、ストロンチウムジピバロイルメタナート、五塩化ニオブ、モリブデニルアセチルアセトナート、パラジウム(II)アセチルアセトナート、塩化アンチモン(III)、テルル酸ナトリウム、塩化バリウム二水和物、塩化タングステン(VI)等を挙げることができる。なかでも、本発明においては、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、ストロンチウムジピバロイルメタナート、ペンタエトキシニオブ、トリス(アセチルアセトナト)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルすず、酸化ジブチルすず(IV)、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物を使用することが好ましい。
また、本発明においては、金属酸化物膜形成用溶液が上記金属元素を2種類以上含有していても良く、複数種の金属元素を使用することにより、例えば、ITO、Gd−CeO、Sm−CeO、Ni−Fe等の複合金属酸化物膜を得ることができる。
(2)溶媒
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる溶媒は、少なくとも上述した金属源を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属源が金属塩の場合は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒等を挙げることができ、金属源が金属錯体の場合は、水、上述した低級アルコール、トルエン、およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。また、本発明のおいては、上記溶媒を組み合わせて使用しても良く、例えば、水への溶解性は低いが有機溶媒への溶解性は高い金属錯体と、有機溶媒への溶解性は低いが水への溶解性が高い還元剤とを使用する場合は、水と有機溶媒とを混合することにより両者を溶解させ、均一な金属酸化物膜形成用溶液とすることができる。
(3)酸化剤
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる酸化剤について説明する。上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる酸化剤は、上述した金属源が溶解してなる金属イオン等の酸化を促進する働きを有するものである。金属イオン等の価数を変化させることにより、金属酸化物の発生しやすい環境とすることができ、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。
上記金属酸化物膜形成用溶液における酸化剤の濃度としては、酸化剤の種類に応じて異なるものではあるが、通常0.001mol/L〜1mol/Lであり、なかでも0.01mol/L〜0.1mol/Lであることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、基材加熱温度を低下させる効果を充分に発揮することができない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、得られる効果に大差が見られず、コスト上好ましくないからである。
このような酸化剤としては、後述する溶媒に溶解し、金属イオン等の酸化を促進することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、酸化銀、二クロム酸、過マンガン酸カリウム等が挙げられ、なかでも過酸化水素、亜硝酸ナトリウムを使用することが好ましい。
(4)還元剤
上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる還元剤について説明する。上記金属酸化物膜形成用溶液に用いられる還元剤は、分解反応により電子を放出し、水の電気分解によって水酸化物イオンを発生させ、金属酸化物膜形成用溶液のpHを上げる働きを有するものである。金属酸化物膜形成用溶液のpHが上昇することで、金属酸化物膜の発生しやすい環境とすることができ、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。
上記金属酸化物膜形成用溶液における還元剤の濃度としては、還元剤の種類に応じて異なるものではあるが、通常0.001〜1mol/lであり、なかでも0.01〜0.1mol/lであることが好ましい。濃度が上記範囲以下であると、基材加熱温度を低下させる効果を充分に発揮することができない可能性があり、濃度が上記範囲以上であると、得られる効果に大差が見られず、コスト上好ましくないからである。
このような還元剤としては、後述する溶媒に溶解し、分解反応により電子を放出することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ボラン−tert−ブチルアミン錯体、ボラン−N,Nジエチルアニリン錯体、ボラン−ジメチルアミン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体等のボラン系錯体、水酸化シアノホウ素ナトリウム、水酸化ホウ素ナトリウムを挙げることができ、なかでもボラン系錯体を使用することが好ましい。
また、本発明においては、還元剤と上述した酸化剤とを組み合わせて使用しても、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。このような還元剤および酸化剤の組合せとしては、基材加熱温度を低下させることができる組合せであれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化水素または亜硝酸ナトリウムと任意の還元剤との組合せ、任意の酸化剤とボラン系錯体との組合せ等が挙げられ、なかでも、過酸化水素とボラン系錯体との組合せが好ましい。
(5)添加剤
また、本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液には、セラミックス微粒子、補助イオン源、および界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。
上記セラミックス微粒子が上記金属酸化物膜形成用溶液に含有されることにより、上記セラミックス微粒子を取り囲むように金属酸化物膜が形成され、異種セラミックスの混合膜を得ることや金属酸化物膜の体積増加を図ることができる。また、上記セラミックス微粒子の含有量は、使用する部材の特徴に合わせて適宜選択されることが好ましい。
このようなセラミックス微粒子は、上記目的を達成することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えばITO、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、珪素酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、セリウム酸化物、カルシウム酸化物、マンガン酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸バリウム等を挙げることができる。
また、上記補助イオン源は、還元剤の熱分解等により生じる電子と反応し水酸化物イオンを発生するものであり、金属酸化物膜形成用溶液のpHを上昇させ、プールベ線図における金属酸化物領域あるいは金属水酸化物領域へ誘導し、金属酸化物膜の発生しやすい環境となり、従来の方法に比べ、より低い基材加熱温度で金属酸化物膜を得ることができる。また、上記補助イオン源の使用量は、使用する金属源や還元剤に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
このような補助イオン源としては、具体的には、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、臭素酸イオン、次臭素酸イオン、硝酸イオン、および亜硝酸イオンからなる群から選択されるイオン種を挙げることができる。
また、上記界面活性剤は、上記金属酸化物膜形成用溶液と基材表面との界面に作用するものであり、金属酸化物膜形成用溶液と基材表面との接触面積を向上させることができ、均一な金属酸化物膜を得ることができる。また、上記界面活性剤の使用量は、使用する金属源や還元剤に合わせて適宜選択して使用することが好ましい。
このような界面活性剤は、具体的にはサーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノールGA、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104PPM、サーフィノール104E、サーフィノール104PA等のサーフィノールシリーズ(以上、全て日信化学工業(株)社製)、NIKKOL AM301、NIKKOL AM313ON(以上、全て日光ケミカル社製)等を挙げることができる。
6.その他
上記スプレー装置により噴霧された金属酸化物膜形成用溶液と基材の外周面とが接触する際、上記基材の外周面は、上記「金属酸化物膜形成温度」以上に加熱される。この場合の、具体的な「金属酸化物膜形成温度」としては、金属塩、金属錯体といった金属源の種類、溶媒等の金属酸化物膜形成用溶液の組成によって異なるものであるが、金属酸化物膜形成用溶液に酸化剤および/または還元剤を加えない場合、通常、400℃〜1000℃の範囲内とすることができ、なかでも、450℃〜700℃の範囲内であることが好ましい。一方、金属酸化物膜形成用溶液に酸化剤および/または還元剤を加える場合、通常150℃〜400℃の範囲内とすることができ、なかでも、200℃〜400℃の範囲内であることが好ましい。
特に、本発明において、基材上にITO膜を形成する場合は、300℃〜500℃の範囲内、なかでも、350℃〜450℃の範囲内であることが好ましい。また、基材上にアルミナを形成する場合は、400℃〜600℃の範囲内、なかでも、450℃〜550℃の範囲内であることが好ましい。また、基材上にガドリニウムドーピングセリアを形成する場合は、300〜600℃の範囲内、なかでも、350〜500℃の範囲内であることが好ましい。
また、本発明において、基材の外周面を加熱する手順としては、所望の金属酸化物膜形成温度まで加熱することができる手順であれば特に限定されるものではないが、例えば、金属酸化物膜形成用溶液と基材の外周面とを接触させながら加熱する手順、または金属酸化物膜形成用溶液を噴霧する前に、予め基材の外周面を加熱しておく手順等を挙げることができる。なかでも本発明においては、基材温度を安定して保持することができることから前者の方法が好ましい。
さらに、本発明の金属酸化物膜の製造方法においては、上述した接触方法等により得られた金属酸化物膜の洗浄を行っても良い。上記金属酸化物膜の洗浄は、金属酸化物膜の表面等に存在する不純物を取り除くために行われるものであって、例えば、金属酸化物膜形成用溶液に使用した溶媒を用いて洗浄する方法等を挙げることができる。
B.金属酸化物膜の製造装置
次に、本発明の金属酸化物膜の製造装置について説明する。本発明の金属酸化物膜の製造装置は、貫通孔を有する筒状の基材を、上記貫通孔を中心として回転させる回転装置と、上記基材の外周面を加熱する加熱装置と、上記基材の外周面に金属酸化物膜形成用溶液を噴霧するスプレー装置と、上記スプレー装置に上記金属酸化物膜形成用溶液を供給する金属酸化物膜形成用溶液供給装置と、を有することを特徴とするものである。
このような本発明の金属酸化物膜の製造装置について図を参照しながら説明する。図3は本発明の金属酸化物膜の製造装置の一例を示す概略図である。図3に例示するように、本発明の金属酸化物膜の製造装置10としては、貫通孔を有する筒状の基材3を、上記貫通孔を中心として回転させる回転装置11と、上記基材の貫通孔内に設けられ、貫通孔の内部から基材の外周面を加熱する加熱装置12と、金属酸化物膜形成用溶液2を上記基材3の外周面に噴霧するスプレー装置1と、上記スプレー装置1に上記金属酸化物膜形成用溶液2を供給する金属酸化物膜形成用溶液供給装置13と、を備えるものである。
このような例においては、目的とする位置にスプレー装置1が、図3に示されたX、Y方向に移動するものであっても良い。
本発明によれば、筒状の基材を回転させた状態で基材の外周面に金属酸化物膜を成膜できるため、筒状の基材の外周面に厚みが均一で、透明性、緻密性、密着性等に優れた金属酸化物膜を形成できる金属酸化物膜の製造装置を得ることができる。
以下、本発明の金属酸化物膜の製造装置の各構成について詳細に説明する。なお、本発明に用いられるスプレー装置、基材、金属酸化物膜形成用溶液については、上述した「A.金属酸化物膜の製造方法」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
1.加熱装置
まず、本発明に用いられる加熱装置について説明する。本発明に用いられる加熱装置は、基材の外周面を金属酸化物膜形成温度まで加熱する装置である。
本発明に用いられる加熱装置は、基材の外周面を上記「金属酸化物膜形成温度」以上に加熱できる装置であれば特に限定されるものではない。このような加熱装置としては基材が有する貫通孔内に設けられ、基材の外周面を上記貫通孔の内側から加熱する内側加熱装置と、上記貫通孔外に設けられ、基材の外周面の上記貫通孔の外側から加熱する外側加熱装置とを挙げることができる。
本発明に用いられる加熱装置としては、上記内側加熱装置および外側加熱装置のいずれであっても好適に用いることができ、また、上記内側加熱装置と外側加熱装置との両方を用いても良いが、少なくとも上記内側加熱装置を用いることが好ましい。上記内側加熱装置を用いることにより、回転動作する基材の外周面の温度を均一にすることができるため、より均質な金属酸化物膜を成膜することができる金属酸化物膜の製造装置を得ることができるからである。
本発明に用いられる加熱装置が基材の外周面を加熱方式としては、上記外周面を上記「金属酸化物膜形成温度」以上に形成できる方法であれば特に限定されない。このような加熱方式としては、このような加熱方式としては、対流加熱方式、伝導加熱方式、および、輻射加熱方式を挙げることができる。
上記加熱装置が備える加熱方式としては、上記対流加熱方式、伝導加熱方式、および輻射加熱方式のいずれであっても好適に用いることができるが、なかでも、対流加熱方式または輻射加熱方式を用いることが好ましく、特に輻射加熱方式を用いることが最も好ましい。輻射加熱方式によれば、基材に媒体等を接触させることを必要としないため、基材を加熱する際に基材の回転動作に制約が生じたり、また、装置が複雑化することを防止できるからである。
上記輻射加熱方式に用いられる電磁波としては、通常、赤外線が用いられる。本発明において、上記電磁波として赤外線を用いる場合の波長等については、上記「A.金属酸化物膜の製造方法」の項において記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、本発明に用いられる加熱装置の具体例についても、上記「A.金属酸化物膜の製造方法」の項に例示したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.回転装置
次に、本発明に用いられる回転装置について説明する。本発明に用いられる回転装置は、貫通孔を有する筒状の基材を上記貫通孔を中心として回転させる装置である。
本発明に用いられる回転装置としては、基材を所望の速度で回転させることができる装置であれば特に限定されないが、通常、モーターと、モーターの回転を基材と連動させる連動部とを有する回転装置が用いられる。
また、本発明に用いられる回転装置は、回転装置の回転動作を制御する回転制御装置に接続されていても良い。
3.金属酸化物膜形成用溶液供給装置
本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液供給装置は、上記スプレー装置に金属酸化物膜形成用溶液を供給する装置である。本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液供給装置は、金属酸化物膜形成用溶液が充填され、金属酸化物膜形成用溶液を所望の量で上記スプレー装置に供給できるものであれば特に限定されるものではない。
また、本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液供給装置は、金属酸化物膜形成用溶液を均一に保つための撹拌機能、金属酸化物膜形成用溶液の液温を調整する温度調整機能等を有していても良い。
4.用途
本発明の金属酸化物膜の製造装置は、金属酸化物膜形成用溶液を用い、筒状の基材の外周面に金属酸化物膜を形成する金属酸化物膜を形成するのに用いられるものである。なかでも本発明の金属酸化物膜の製造装置は、上記「A.金属酸化物膜の製造方法」の項において記載した金属酸化物膜の製造方法を実施するのに好適に用いられる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
(1)実施例1
本実施例においては、円筒形基材の表面にITO透明電極膜を付与した。
まず、塩化インジウム0.1mol/Lと、塩化スズ0.05mol/Lとのエタノール−水混合溶液(エタノール:水=1:1)1000gに、過酸化水素水10gとを添加し、金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、円筒形ガラス基材(内径12mm、外径15mm、長さ50mm)の内側へハロゲンランプ(外径8mm、ウシオライティング社製)を挿入し、基材の外周面を500℃に加熱し、この基材をモーター駆動によって回転させながら上記金属酸化物膜形成用溶液をエアレススプレー(A7Aエアレスオートガン、クロスカットノズル1/12、ノズル径114μm、ノードソン社製)を用いてスプレーすることにより金属酸化物膜を形成し、上記基材上にITO膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、ITO膜が形成していることを確認した。さらに、ロレスタ(三菱化学社製)を用いて、ガラス基材上に設けたITO膜の表面抵抗を測定したところ、1Ω/□であった。さらに、カラーコンピューター&ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製)によってHAZE(濁り度)を求めたところ、3%であり、全光線透過率は84%であった。断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定したところ、膜厚は750nmであった。
(2)実施例2
実施例1において用いたエアレススプレーの代わりに、超音波による噴霧(ネプライザ、オムロン社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてITO膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、ITO膜が形成していることを確認した。さらに、ロレスタ(三菱化学社製)を用いて、ガラス基材上に設けたITO膜の表面抵抗を測定したところ、5Ω/□であった。さらに、カラーコンピューター&ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製)によってHAZEを求めたところ、4%であり、全光線透過率は90%であった。断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定したところ、膜厚は450nmであった。
(3)実施例3
実施例1において用いた円筒形ガラス基材の代わりに、円筒型の多孔質酸化チタン基材(一次粒子50nm、空孔率40%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてITO膜を得た。
上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、ITO膜が形成していることを確認した。さらに、ロレスタ(三菱化学社製)を用いて、ガラス基材上に設けたITO膜の表面抵抗を測定したところ、4Ω/□であった。断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定したところ、多孔質基材上に緻密なITOが形成されており、膜厚は600nmであった。
(4)比較例
実施例1と同一組成の金属酸化物膜形成用溶液を用いて、実施例1と同様の基材をディップコートし(引き上げ速度1mm/min)、500℃で1時間焼成した結果、ITO膜を得た。上記方法により得られた金属酸化物膜を、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)を用いて測定したところ、ITO膜が形成していることを確認した。しかしながら粉状に付着しており、密着性が悪く、すぐに剥がれ落ちてしまった。このため、ロレスタ(三菱化学社製)を用いてガラス基材上に設けたITO膜の表面抵抗を測定することはできなかった。
本発明の金属酸化物膜の製造方法の一例を示す説明図である。 本発明に用いられる基材の形態を説明する概略図である。 本発明の金属酸化物膜の製造装置の一例を示す概略図である。
符号の説明
1 … スプレー装置
2 … 金属酸化物膜形成用溶液
3 … 基材
4 … 金属酸化物膜
10 … 金属酸化物膜の製造装置
11 … 回転装置
12 … 加熱装置
13 … 金属酸化物膜形成用溶液供給装置

Claims (5)

  1. 貫通孔を有する筒状の基材を用い、前記基材の外周面を金属酸化物膜形成温度以上に加熱し、さらに前記貫通孔を中心として前記基材を回転させた状態で、前記基材の外周面に金属酸化物膜形成用溶液をスプレー装置で噴霧することにより、前記基材の外周面に金属酸化物膜を形成することを特徴とする、金属酸化物膜の製造方法。
  2. 前記基材の外周面を前記貫通孔の内側から加熱することを特徴とする、請求項1に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  3. 前記基材が円筒形であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の金属酸化物膜の製造方法。
  4. 貫通孔を有する筒状の基材を上記貫通孔を中心として回転させる回転装置と、
    前記基材の外周面を加熱する加熱装置と、
    前記基材の外周面に金属酸化物膜形成用溶液を噴霧するスプレー装置と、
    前記スプレー装置に前記金属酸化物膜形成用溶液を供給する金属酸化物膜形成用溶液供給装置と、を有することを特徴とする、金属酸化物膜の製造装置。
  5. 前記加熱装置が、前記貫通孔内に設けられ、前記貫通孔の内側から前記基材を加熱するものであることを特徴とする、請求項4に記載の金属酸化物膜の製造装置。
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