JP2004079610A - TiO2薄膜及び色素増感太陽電池用電極の作製方法並びに色素増感太陽電池用電極 - Google Patents
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Abstract
【課題】SPD法を利用して汎用性及び短時間製膜による生産性の向上を確保するとともに、太陽電池の変換効率の向上を可能にした多孔質Ti02薄膜の作製方法を提供し、また、Ti02薄膜を太陽電池用に応用した色素増感太陽電池用電極及び当該太陽電池用電極の作製方法を提供すること。
【解決手段】Ti02ゾル溶液にチタン化合物(可溶性のチタン化合物)を添加して原料溶液Cを調製するか、或いは、アモルファス型Ti02ゾル水溶液とアナターゼ型Ti02ゾル水溶液とを混合して原料溶液Dを調整して、該原料溶液C又はDを高温保存された基板に間歇噴霧することにより、前記チタン化合物が熱分解などして形成されたTi02相をTi02微粒子間に析出させながら多孔質のTi02層を成長させること。また電極を構成する透明電極膜とTi02薄膜との間に、有機チタン化合物を原料とした緻密なTi02バッファー層を介在させたこと。
【選択図】 図2
【解決手段】Ti02ゾル溶液にチタン化合物(可溶性のチタン化合物)を添加して原料溶液Cを調製するか、或いは、アモルファス型Ti02ゾル水溶液とアナターゼ型Ti02ゾル水溶液とを混合して原料溶液Dを調整して、該原料溶液C又はDを高温保存された基板に間歇噴霧することにより、前記チタン化合物が熱分解などして形成されたTi02相をTi02微粒子間に析出させながら多孔質のTi02層を成長させること。また電極を構成する透明電極膜とTi02薄膜との間に、有機チタン化合物を原料とした緻密なTi02バッファー層を介在させたこと。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、TiO2薄膜(特に多孔質TiO2薄膜)及び該薄膜を用いた色素増感太陽電池用電極の作製方法、並びに、色素増感太陽電池用電極及び該電極の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
白色顔料として知られるTiO2(二酸化チタン)は、その光触媒作用の発見により水分解、水質浄化、殺菌、防汚、脱臭等の光触媒機能材料として着目され、抗菌タオルや空気清浄機等に応用されている。さらに最近では、従来の光触媒作用と異なる光励起親水性や超撥水性の報告もあって、機能性コーティングガラスとして自動車の窓ガラスやミラー等への応用も検討される等、そのTiO2薄膜は各種分野で機能薄膜として有用である。
【0003】
一方、TiO2の電気化学的特性の利用としては色素増感太陽電池用の作用電極が知られている。色素増感太陽電池は、数十nmのアナターゼ型TiO2粒子から構成された半導体薄膜の表面に可視光を吸収する色素分子を吸着させたもので、従来のpn接合と異なり、光吸収部のキャリア輸送部とを分離した構造をもつことからキャリア散乱に起因する再結合がなく高い光電変換効率を示す。
しかも、単結晶シリコンのような高価な固体材料を使用せず、セルを構成するTiO2、色素分子、ヨウ素電解質等の原材料を資源的な制約なく容易に入手できることから安価に作製でき、さらにはリサイクルが容易で環境汚染物質の排出もないため環境にも優しい。
【0004】
従来、上記太陽電池用電極としてのTiO2薄膜の作製方法は、一般に、TiO2ゾル(すなわち、TiO2コロイド分散液)をドクターブレード法やスピンコート法などの塗布法により基板上に一様に拡げて乾燥させる工程を数回〜数十回繰り返した後、500℃までの温度で1〜2時間焼結させる方法(以下、従来方法という)であった。
しかるに、この従来方法では、太陽電池に適した膜厚約10μmの薄膜を形成するためには、数時間〜数十時間を必要とし、生産性が著しく低いものであった。
【0005】
そこで、本発明者らは、上記従来方法の不具合を改善するために、先の特許出願(特願2000−339951号)により、上記原料(TiO2ゾル)とは異なるチタン有機・無機化合物溶液を使用するとともに汎用性に優れたスプレー熱分解法(以下、SPD法という)によるTiO2薄膜の作製方法(以下、先願方法という)を提案した。
すなわち先願方法は、TiO2前駆体を含む溶液に過酸化水素又はアルミニウムアセチルアセトナートを添加して原料溶液を調製し、高温保持された基板に原料溶液を間歇噴霧することによりTiO2前駆体をTiO2に熱分解し、基板上に多孔質のTiO2薄膜を成長させることを特徴とする方法である。
この先願方法によれば、従来方法に比べ汎用性に優れるだけでなく、比較的短時間に色素増感太陽電池用のTiO2多孔質薄膜の作製が可能であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記先願方法において作製された太陽電池の変換効率は3.2%であり、従来方法で作製された太陽電池の変換効率(〜7%)の1/2程度という問題があった。これは、TiO2薄膜の比表面積が従来方法により作製された薄膜の1/2〜1/4程度であり、薄膜表面に吸着した色素量の不足に起因するものと考えられる。
本発明は、上記従来事情に鑑み先願方法の利点、すなわちSPD法を使用して汎用性及び短時間製膜による生産性の向上を確保するとともに、太陽電池の変換効率の向上を可能にした多孔質TiO2薄膜の作製方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記TiO2薄膜を太陽電池用に応用した色素増感太陽電池用電極、さらには当該太陽電池用電極の作製方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
斯る本発明のTiO2薄膜の作製方法は、TiO2ゾル溶液にチタン化合物を添加し原料溶液を調製し、該原料溶液を高温保持された基板に間歇噴霧することにより、前記チタン化合物が熱分解して形成されたTiO2相をTiO2微粒子間に析出させながら多孔質のTiO2層を成長させることを要旨とする(請求項1)。
本発明のTiO2薄膜の作製方法においては、TiO2ゾル溶液としてアナターゼ型TiO2ゾル水溶液を使用して、アナターゼ型TiO2微粒子間にチタン化合物に基づくTiO2相を析出させ、ネックを形成することが好ましい。(請求項2)
すなわち、上記従来方法で利用されているTiO2ゾルを原料として使用し、それをSPD法の利用を可能とすることによって、TiO2微粒子で構成される多孔質電極の作製が可能となって変換効率の向上を図ったことを特長とする。
【0008】
しかるに、上記TiO2ゾルを原料溶液として単にSPD法を採用した場合には、形成薄膜と基板との密着性が著しく低下し実用に供し得ない状態であった。従来方法でTiO2ゾルを使用する場合、長時間の焼結によりTiO2微粒子間でネックが形成されることにより薄膜の強度及び密着性を増強させているが、短時間で薄膜を作製するSPD法でその作用を期待することはできない。したがって、それを解決するために、SPD法による薄膜形成機構について再考する必要があった。
【0009】
従来方法においては、TiO2ゾルによるTiO2多孔質薄膜の作製に際し、原料の微粒子溶液に粘性の高い有機バインダーを添加することで、焼結前に微粒子同士を密着させてネック成長の効率を高めている。有機バインダーは本焼結前の仮焼時における熱分解により薄膜外へ放出される。しかし、この脱バインダープロセスには30分〜1時間の仮焼が必要であり、短時間で薄膜を作製するSPD法ではバインダーが未分解不純物として薄膜内に残留するため採用することが難しい。
そこで、本発明では、SPD法によりTiO2微粒子間にネックを成長させて薄膜と基板との密着性を向上させるために、上記のとおり、TiO2ゾル溶液中にチタン化合物を添加させたものである。それによれば、SPD法で製膜時に前記チタン化合物が熱分解してTiO2相を形成し、それがTiO2微粒子間に析出することで微粒子間のネックとなり、短時間で薄膜の強度及び密着性が増強される。
【0010】
そして、実験によれば、上記チタン化合物がチタンイソプロキシドであることが好ましく(請求項3)、具体的にはチタンイソプロホキシドの硝酸水溶液とTiO2ゾル溶液を所定濃度に調製した原料溶液を使用すること(請求項4)が好ましい。
【0011】
また、実験をさらに行った結果、本発明のTiO2薄膜の作製方法において、上記チタン化合物がアモルファス型TiO2であること(請求項5)が好ましく、そして、アモルファス型TiO2水溶液とアナターゼ型TiO2ゾル溶液を所定濃度に調製して原料溶液としたことによるTiO2薄膜の作製方法(請求項6)が、変換効率などにおいて特に好ましいことが明らかになった。
【0012】
上記TiO2薄膜を色素増感太陽電池用電極に応用する場合、一般に、ガラス基板上にフッ素ドープ酸化スズ薄膜からなる透明電極を形成し、その上にTiO2薄膜を直接に作製するが、そのスズ化合物層とTiO2ゾル溶液となじみが悪いために製膜が困難である。しかも、従来方法による色素増感太陽電池においては、その接合構造のために、電解液と透明電極の接触による短絡、及びそれに伴う開放電圧の低下が問題となっていた。
そこで、本願では、上記フッ素ドープ酸化スズ薄膜からなる透明電極上に直接TiO2ゾル溶液を使用したTiO2薄膜を作製せずに、両薄膜間に、有機チタン化合物を原料とした緻密なTiO2バッファー層を介在させてなる色素増感太陽電池用電極(請求項7)に関する発明を提示する。
それによれば、上記TiO2バッファー層が透明導電膜とTiO2薄膜との何れにもなじみがよいので、接合性に優れて容易に接合を形成することができるばかりでなく従来の問題点を解消できる。
【0013】
その色素増感太陽電池用電極においては、TiO2薄膜が、多孔質TiO2薄膜であること(請求項8)が好ましく、また、その多孔質TiO2薄膜が、アナターゼ型TiO2微粒子間にアモルファス型TiO2粒子がアナターゼ型TiO2相として析出してネックを形成している多孔質のTiO2薄膜であることを特徴とする色素増感太陽電池用電極であること(請求項9)が特に好ましい。
そして、実験によれば、上記有機チタン化合物がチタンオキシアセチルアセトネートであることが望ましい(請求項10)。
【0014】
また、本願では、上記請求項7の色素増感太陽電池用電極を作製する方法であって、スズ化合物及びフッ素化合物を含む原料溶液を高温保持されたガラス基板に間歇噴霧することによりフッ素ドープ酸化スズ薄膜をガラス基板上に形成した後、チタンオキシアセチルアセトナートを原料とした溶液を間歇噴霧することにより緻密なTiO2バッファー層を積層し、その層上に前記請求項1の方法によりTiO2薄膜を積層することを特徴とする(請求項11)発明を提示する。
それにより、ガラス基板上にフッ素ドープ酸化スズ薄膜からなる透明導電薄膜を積層する工程、TiO2バッファー層を積層する工程及びTiO2薄膜を積層する工程が流れ作業的に連続して行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を表及び図面に基づいて説明する。
SPD法すなわちスプレー熱分解法については先願方法でも開示したが、図1に示すSPD装置により説明すれば、該装置はチャンバ1内にヒータ2で加熱されるホルダ3を配置し、ホルダ3に載置した基板4に噴霧器5にノズルを対向させて構成される。
チャンバ1内には、所定の酸化雰囲気に維持するために大気に解放し、あるいは酸化性ガス源に接続して酸素分圧を制御するようにする。
【0016】
噴霧器5には、圧縮ガス6によって原料溶液7が送り込まれる。レギュレータ8で噴霧圧を制御しながら基板4に向けて噴霧器5から放射状に原料溶液7がスプレーされて、基板上に塗布される。スプレーされた原料溶液7は、加熱された基板4に到達すると熱分解し、SnO2やTiO2など酸化成分等が基板4上に析出する。
原料溶液7の噴霧によって低下した基板4の温度が回復した後、原料溶液7を再度噴霧し、その噴霧の繰り返しにより必要とする膜厚の薄膜に成長する。
すなわち、SPD法は、原料溶液の塗布工程と同時に加熱分解を生起させることにより、SnO2やTiO2などの薄膜を作製するものである。
【0017】
次に、上記SPD法により色素増感太陽電池用電極を作製するために、フッ素ドープ酸化スズ薄膜からなるSnO2:F(略称:FTO)透明導電膜、TiO2バッファー層及びTiO2多孔質層の形成について説明するが、それらの原料溶液を含む形成条件を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
(工程1−1)透明電極の形成工程
表1に示すとおり、原料溶液Aは、0.25モルDBTDA〔(C4H9)2Sn(OCOCH3)2〕エタノール溶液に8モルのフッ化アンモニウム(NH4F)水溶液を、NH4F/DBTDA=1.6の割合で添加し、超音波洗浄器で10分間混合して調整した。
その原料溶液Aを使用して、図1に示すSPD装置の基板4位置にガラス基板(Corning1737;サイズ 25×25×1mm3)をセットした後、基板温度510℃で、噴霧器5から空気を圧縮ガスとし、流量1.25ml/秒、噴霧時間0.5秒、基板温度回復時間3秒、噴霧回数70回の条件で間歇的にガラス基板へ噴霧し、膜厚600nm、平均可視光透過率80%、シート抵抗8Ω/口のFTO(フッ素ドープ酸化スズ薄膜)からなる透明導電膜を形成した。
【0020】
(工程1−2)TiO2バッファー層の形成工程
表1に示すとおり、原料溶液Bとして、0.1モルのチタンオキシアセチルアセトネート(titanium(IV)oxyacetylacetonate)(省略:TOA)エタノール溶液を基板温度500℃、流量0.5ml/秒、噴霧時間0.5秒、基板温度回復時間3秒、噴霧回数300回の条件でFTO膜上へ膜厚が500nmのTiO2バッファー層を積層させた。
【0021】
(工程1−3)TiO2多孔質層の形成工程
〔Ti(i−OPr)4硝酸水溶液とアナターゼ型TiO2ゾルとの使用による方法〕
表1に示すとおり、TiO2ゾル(STS−01:石原産業(株))を3wt%にイオン交換水で希釈してストック溶液とした(溶液1)。さらに、チタンイソプロポキシド(Ti(i−OPr)4)を0.1モルの硝酸水溶液に滴下し、超音波分散させて、0.01〜0.02モルの溶液を調製した(溶液2)。
次に、所定濃度比(Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル)になるように溶液2へ溶液1を混合した後、最終的にTiO2ゾル濃度が0.1モルとなるようにイオン交換水で希釈して原料溶液Cを調製した。
この原料溶液Cを、前記工程2で形成したTiO2バッファー層上へ、基板温度500℃、流量0.5ml/秒、噴霧時間0.5秒、基板温度回復時間3秒、噴霧回数70回の条件で膜厚20μmのTiO2多孔質層を積層させた。その際、1回の噴霧で基板温度の低下は20〜30℃の範囲でヒーターの出力を調節した。
【0022】
上記工程1−1〜工程1−3は何れも図1に示したSPD法を利用して連続的に実施され、その結果、図2に示す色素増感太陽電池用の作用電極が15分〜20分程度で作製することが可能であった。
この電極は、図2の断面のSEM像に示すように、ガラス基板10の上に、工程1によりFTO導線膜11が形成され、その上に工程2によるTiO2バッファー層12が積層された後、該バッファー層12上にTiO2多孔質層13が積層された断面構造である。すなわち、FTO導電膜11とTiO2多孔質層13との間にTiO2バッファー層12が介在する構造である。
このTiO2バッファー層12は、FTO導電膜11とはなじみがよいので密な接合が得られるとともに、TiO2多孔質層13に対してもTiO2層であることから密な接合が容易に形成される。
【0023】
そして、上記TiO2多孔質層13は、前述のとおり、TiO2ゾル溶液にTi(i−OPr)4を添加した原料溶液Cを使用したものである。Ti(i−OPr)4は基板上で熱分解後にTiO2相を生成するが、この際にTiO2微粒子を取り込んで粒子間のネックが成長して膜が形成される。粒子間にネックを成長する点では従来方法と同じだが、ネックの源が従来方法ではTiO2微粒子自身の焼結に基づくのに対し、本発明の場合、ネックの源は原料溶液C中のTi(i−OPr)4に由来する。
熱力学の観点から、前者は拡散による物質移動に基づくネックの成長であり、特に固体であるTiO2微粒子における拡散は、気体や液体のそれに比べ極めて遅い。
そのため、従来方法では本焼成に最低1時間を要した。一方、SPD法によりTi(i−OPr)4から形成されたネックは、原料溶液調製の段階でTiO2微粒子を取り囲んでいるために拡散の工程は必要とせず、数秒で熱分解・結晶化してTiO2相を生成し、同時にTiO2微粒子間のネックとなる。この溶液を利用したSPD法では、噴霧1回に0.5秒、次回噴霧までの待ち時間に3秒の工程を50〜70回繰り返すことにより、色素増感太陽電池で一般に要求される膜厚10〜20μm、ラフネスファクターが1000のTiO2膜を形成することができる。
【0024】
SPD法により色素増感太陽電池用電極を作製するために、前述と同様にしてフッ素ドープ酸化スズ薄膜からなるSnO2:F(略称:FTO)透明導電膜、TiO2バッファー層を形成した後、最後に、前述のとおり、アナターゼ型TiO2ゾル水溶液にアモルファス型TiO2ゾル水溶液を混合した原料溶液Dを使用して、TiO2多孔質層の形成を行った。その色素増感太陽電池用電極の作製法において、各原料溶液を含む形成条件を表2に示す。
表2に示した条件としたほかは、前述の(工程1)透明電極の形成工程及び(工程2)TiO2バッファー層の形成工程と同様にして、各層の形成を行った後、(工程3)TiO2多孔質層の形成工程を次に示すように行うことによって、TiO2多孔質層13を作製することができる。
【0025】
【表2】
【0026】
(工程2−1)透明電極の形成工程
前述の工程1−1と同様にして、ガラス基板上に透明導電膜〔フッ素ドープ酸化スズ薄膜、膜厚600nm、平均可視光透過率80%、シート抵抗10Ω/口のFTO〕を形成した。
(工程2−2)TiO2バッファー層の形成工程
前記の工程2−1と同様にして、工程1−2で形成された透明導電膜上にTiO2バッファー層(膜厚:500nm)を形成した。
【0027】
(工程2−3)TiO2多孔質層の形成工程
〔アモルファス型TiO2ゾルとアナターゼ型TiO2ゾルとの使用による方法〕
表2に示すとおり、アモルファス型TiO2ゾル(TKC−301:テイカ(株))とアナターゼ型TiO2ゾル(TKC−302:テイカ(株))を混合してイオン交換水で希釈してストック溶液とした(溶液)。
次に、所定濃度比(アナターゼ型TiO2/アモルファス型TiO2)になるように、前記のストック溶液をイオン交換水で希釈して原料溶液Dを調製した。
この原料溶液Dを、前記工程2で形成したTiO2バッファー層上へ、基板温度500℃、流量0.5ml/秒、噴霧時間0.5秒、基板温度回復時間3秒、噴霧回数70回の条件で膜厚8μmのTiO2多孔質層を積層させた。その際、1回の噴霧で基板温度の低下は20〜30℃の範囲でヒーターの出力を調節した。
【0028】
上記工程2−1〜工程2−3は、何れも図1に示したSPD法を利用して連続的に実施され、その結果、図9の同様の色素増感太陽電池用の作用電極が15分〜20分程度で作製することが可能であった。
この電極は、図9の断面のSEM像に示すように、ガラス基板10の上に、工程1によりFTO導線膜11が形成され、その上に工程2によるTiO2バッファー層12が積層された後、該バッファー層12上にTiO2多孔質層13が積層された断面構造である。すなわち、FTO導電膜11とTiO2多孔質層13との間にTiO2バッファー層12が介在する構造である。
【0029】
原料溶液D中のアモルファス型TiO2は、製膜の際に、基板上でTiO2相を生成するが、この際にTiO2微粒子を取り込んで粒子間のネックが成長して膜が形成される。
TiO2粒子間にネックを成長させる点では、前述のTi(i−OPr)4を添加した原料溶液Cを使用した方法とほとんど同じだが、ネックの源がTi(i−OPr)4を含有する原料溶液Cによるものであり、製膜の際に、Ti(i−OPr)4が熱分解してTiO2相を形成して、TiO2微粒子間のネックとなるのに対して、原料溶液Dを使用した場合には、アナターゼ型TiO2ゾルとアモルファス型TiO2ゾルとが含有されており、製膜の際に、アモルファス型TiO2粒子が熱的相転移によりアナターゼ型TiO2相を形成すると共にアナターゼ型TiO2微粒子間のネックとなり製膜されるのである。
前述のように原料溶液Dを用いた場合には、多孔質膜TiO2薄膜が良好に形成されると共に、その多孔質膜TiO2薄膜層を有する色素増感太陽電池電極を形成した場合に高い変換効率(η)を有するのである。
【0030】
次に、工程1−3〔Ti(i−OPr)4硝酸水溶液とアナターゼ型TiO2ゾルとの使用による方法〕によって形成された、上記の図2におけるTiO2多孔質層13の作製について、さらに具体的な実施例に基づいて詳細に検討する。
[TiO2多孔質層(工程1−3)のキャラクタリゼーション]
図3、Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.5〜1.2溶液、及びTi(i−OPr)4のみの溶液から基板温度500℃で形成された膜のXRDパターンを示す。
Ti(i−OPr)4のみの溶液からはアナターゼ及びルチルの混合相が、TiO2ゾル含有溶液からはアナターゼ単相がそれぞれ観測された。色素増感太陽電池用電極としては、アナターゼ相の法がルチル相より優れており、TiO2ゾル含有溶液を利用したSPD法による製膜の有効性が予想される。また、Ti(i−OPr)4の添加量の増加に伴い回析ピークの半値幅が狭くなる傾向が観測され、Ti(i−OPr)4添加につれ膜構成粒子の粒径の増加が示唆された。
【0031】
図4に、Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.3〜8.0溶液、及びTi(i−OPr)4のみの溶液から形成されたTiO2層の表面SEM像を示す。
膜を構成するTiO2粒子の粒径は10〜20nm(Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.3)から80〜100nm(Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.8)まで、濃度比の増加とともに大きくなった。原料TiO2ゾルの平均粒径は7nmであることから、添加した(Ti(i−OPr)4は基板上で熱分解する際、TiO2ゾル粒子を取り込んで粒径の大きなTiO2粒子を形成するとともに、粒子間にネックを形成したものと考えられる。さらに、(Ti(i−OPr)4添加量を増やした溶液(Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=1.2、8.0)から形成されたTiO2層では、粒子間のネック成長が極めて大きくなり、粒子境界が曖昧で平滑な表面形態が観察された。
このように、Ti(i−OPr)4の添加により膜の密着性の向上を達成することができただけでなく、(Ti(i−OPr)4添加量の制御により膜構成粒子の粒径、言い換えるとTiO2層の多孔度の制御が可能であることが確認された。
【0032】
[TiO2多孔質層(工程1−3)の膜厚]
SPD法で作製した薄膜の特徴として、原料溶液の噴霧回数により膜厚を制御することができることが挙げられる。
図5に、(Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.5の原料溶液を利用して形成されたTiO2多孔質膜の膜厚の噴霧回数依存性を示し、噴霧回数と膜厚には比例関係が存在することが確認された。
この図5のデータから、目的の膜厚に対応する噴霧回数を予測することができる。色素増感太陽電池に関して、一般的に要求される膜厚は10〜20μmである。この要求に対してSPD法を利用すると、膜厚20μmは70回の噴霧に相当する。1回の噴霧時間が0.5秒、基板温度回復時間が3秒であることから、70回噴霧に要する時間は約4分である。
従来方法で同じ膜厚のTiO2層を作製するには、数時間〜十数時間を要していたことから、SPD法の膜形成により大幅な時間短縮が達成された。
【0033】
なお、本発明の特徴は上記のとおり、従来から利用されていたTiO2ゾル溶液にTi(i−OPr)4を添加して短時間でTiO2多孔質膜13の形成を可能にした点にある。
しかし、添加する物質はTi(i−OPr)4に限らず、TiO2ゾル溶液と均質に混合することができる物質であれば有機、無機に関わらず利用可能であると考えられる。
また、今回は500℃での製膜により最も優れたTiO2膜が得られたが、さらに低音で熱分解・結晶化する物質を利用することで、従来に比べて低温での製膜も可能になると考えられる。例えば、四塩化チタン(TiCl4)エタノール溶液(TiO2ゾルは含まず)を利用したSPD法による製膜では、これまでに基板温度380℃でアナターゼ型TiO2単相膜が得られている。この効果を利用すれば、短時間に加え低温での色素増感太陽電池用TiO2層を形成できる。
さらに、本発明ではTiO2に限らず、広い意味での多孔質膜の短時間・低温形成の可能性を示唆している。
【0034】
次に、工程2−3〔アモルファス型TiO2ゾルとアナターゼ型TiO2ゾルとの使用による方法〕によって形成された、上記の図2におけるTiO2多孔質層13の作製について、さらに具体的な実施例に基づいて詳細に検討する。
[原料アモルファス型TiO2ゾル(工程2・3)の熱的変化]
図10に、原料アモルファス型TiO2ゾルを100〜500℃に30分間加熱した後のXRDパターンを示す。100℃ではアモルファス状態のままであったが、300℃以上では、アナターゼ型TiO2相特有の回折ピークが現れた。これは、原料アモルファス型TiO2ゾルが、300℃以上で相転移をしてアナターゼ相へ変化したことを示す。さらに、温度が300℃から500℃へ上昇するにつれ、回折ピーク強度の大きくなるとともに半値幅が小さくなった。これは、原料アモルファスTiO2ゾルのうち、アモルファス相からアナターゼ相へ相転移した割合が大きくなるとともに、粒成長による構成粒子の粒径の増加を示唆している。
【0035】
図11に、原料アモルファス型TiO2ゾル溶液、原料アナターゼ型TiO2ゾル溶液、及び原料アモルファス型TiO2ゾルと原料アナターゼ型TiO2ゾルの混合溶液のTG・DTA測定の結果を示す。アモルファス型TiO2ゾル溶液、アナターゼ型TiO2ゾル溶液、及びアモルファス型TiO2ゾルと原料アナターゼ型TiO2ゾルの混合溶液のDTA曲線で観測された100℃付近の吸熱ピークは、ゾル溶液に付随する水成分の蒸発によるものである。
アモルファス型TiO2ゾル溶液、及びアモルファス型TiO2ゾルとアナターゼ型TiO2ゾルの混合溶液のDTA曲線において、290℃と370℃に吸熱ピークが観測された。これは、アモルファスTiO2相のアナターゼ相への相転移と粒成長に対応していると考えられる。
一方、アナターゼ型TiO2ゾル溶液の場合は、290℃と370℃に吸熱ピークは観測されなかった。
【0036】
[TiO2多孔質層(工程2−3)のキャラクタリゼーション]
図12に、それぞれアナターゼゾル/アモルファスゾル比=0・2.3の溶液から基板温度500℃で形成されたTiO2層の表面SEMを示す。
膜を構成するTiO2粒子の粒径は80・100nm(アナターゼゾル/アモルファスゾル比=0)から10・20nm(アナターゼゾル/アモルファスゾル比=2.3)まで、濃度比の増加とともに小さくなった。原料TiO2ゾルの平均粒径は、アナタ・ゼ及びアモルファスとも7nmであることから、これらのゾルは基板上で粒成長して粒子間にネックを形成したものと考えられる。
このように、アナターゼとアモルファスのTiO2ゾルを混合することで膜の密着性の向上を達成することができただけでなく、アナターゼゾルとアモルファスゾルの混合比の制御により膜構成粒子の粒径、言い換えるとTiO2層の多孔度の制御が可能であることが確認された。
【0037】
次に、上記TiO2薄膜を使用した色素増感太陽電池の作製と評価について説明する。
[色素増感太陽電池の原理]
目低とする太陽電池の原理を図6により説明すれば次のとおりである。
色素分子はTiO2薄膜の半導体作用電極表面に吸着した状態にある。色素分子は太陽光を吸収し、励起状態になる。この状態で、色素分子からTiO2の伝道帯へ電子が注入される。電子は導電膜を通過し、外部の電流回路へと流れ、電流として取り出される。その後、電子は対電極を通じて電池内へ戻る。この対電極と薄膜間には電解液(I−/I3 −)が存在し、この電解質の拡散により2つの電極間に電荷の移動が起こる。対電極の電子によりI3 −が還元されI−に変化して対電極から作用電極まで拡散し、ここで先に電子を放出しカチオンとなった色素増感分子に電子を還元して増感分子を再生する。これと同時にI−自身も酸化されI3 −として再生される。このように、光を電流へ変換する酸化還元サイクルは一つの閉じた系であり、原理的として自然界の光合成と同じである。
【0038】
[色素増感太陽電池の組み立ておよび評価法]
対電極はガラス基板上へPtを蒸着して作製した。その対電極上へ約0.1mlの電解液(I−:0.5M/I3 −0.04M、80%炭酸エチレン/20%炭酸プロピレン溶液)をスポイトで滴下し、2枚の電極間へ広げ簡易太陽電池を組み立てた。この状態で電極間は表面張力により貼り付いた。
電池特性の評価は、太陽電池評価装置(分光計器)で擬似太陽光(AM−1.5,100mW/cm2)の照射下で行った。また吸着色素量は、アルカリ溶液中で脱着させた色素を比色法により定量した。
【0039】
次いで、上記の色素増感太陽電池の評価について説明する。
[色素吸着量(工程1−3)]
図7に、Ti(i−OPr)4添加量を変化させた原料溶液から形成された多孔質TiO2層(膜厚20μm)の表面に吸着した色素(cis−Dithiocyanato−N,N−bis(2,2’−bipyridyl−4,4’−dicarboxylicacid)−ruthenium(II)dehydrate)の単位面積当りの吸着量を示す。
(Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.3で吸着量は最大値9×10−8モル/cm2に達し、この値よりTiO2層のラフネスファクターは約1000に相当する。このラフネスファクター1000は、一般に色素増感太陽電池で要求される値である。
したがって、このTiO2多孔質層を利用することにより、従来方法で形成された色素増感太陽電池と遜色ない電池特性が期待できる。
【0040】
[太陽電池特性(工程1−3)]
図8に、Ti(i−OPr)4添加量を変化させて形成した作用極を利用して作製した太陽電池の(a)開放電圧(Voc)、(b)短絡電流(Isc)、(c)曲線因子(FF)及び(d)変換効率(η)をそれぞれ示す。なお、TiO2多孔質層の膜厚は全ての電極で20μmに統一してある。
開放電圧(Voc)はTi(i−OPr)4添加量にほとんど依存せず、0.7〜0.8Vの間で一定であった。これは当該電池で報告されているトップデータと同程度である。
開放電圧は暗電流と光電流とのバランスで決まるため、暗電流が流れる経路を遮断することができれば向上する。一般にこの太陽電池の系では、作用極に多孔質層を利用するため、電解液がTiO2多孔質層を通過して透明電導膜層に接触することによる短絡が原因で暗電流が流れ易く構造となっている。したがって、同該電池の一般的な開放電圧は0.6〜0.7V程度である。
【0041】
一方、本発明のSPD法で形成された作用電極では、図2で説明したとおり、TiO2多孔質層13と透明導電膜層(FTO導電膜)11の間に密なTiO2バッファー層12が導入されている。この太陽電池で高い開放電圧が得られたのは、この層により暗電流が流れる経路を有効的に遮断することができたためと考えられる。もともとこのバッファー層12は、SPD法による電極作製に際して、TiO2多孔質層13とFTO導電膜11の密着性を高めるために導入したが、電池特性の向上にも寄与したことになる。
【0042】
短絡電流(ISC)はTi(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.6まではTi(i−OPr)4添加量の増加とともに増加したが、Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.6以上では10から12mA/cm2程度で一定となった。しかし、上記太陽電池で得られた短絡電流の値は、既報値の2/3程度であった。
一般に短絡電流は集光面積により決まり、この電池の場合は作用極のラフネスファクターを1000程度まで増加させ、その表面へ大量の色素を吸着させることで電流密度の向上を図っている。SPD法で形成された太陽電池の場合、図7に示されたTi(i−OPr)4添加量と色素吸着量の関係から、Ti(i−OPr)4添加量が少ないほど色素吸着量は大きい結果が得られている。つまり、Ti(i−OPr)4添加量が少ないほど大きな短絡電流が予想されることになり、本結果はこれに矛盾する。
【0043】
この原因として、多孔質層を形成する粒子間の相関を考える必要がある。つまり、Ti(i−OPr)4添加量が少ないほど構成粒子間をつなぐネックは細く、比表面積は大きいため色素の吸着量は多く、したがって光吸収による光電子も数多く発生する。しかし、粒子間のネックが細く未発達のため、粒子間の機械的強度や電気的接触は弱く、再融合により光電子の多くは消滅する。これにより、短絡電流は色素の吸着量から予測される値よりも小さくなる。
一方、Ti(i−OPr)4添加量の増加により短絡電流が急激に増加する理由は、Ti(i−OPr)4添加量の増加にともない粒子間のネックが発達し、光電子の再結合の割合が減少したためであると考えられる。これに対し、Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.6以上におけるTi(i−OPr)4添加に伴う短絡電流の低下はTi(i−OPr)4添加による粒子間のネックの大き過ぎる発達により比表面積が減少し、これに伴う作用極表面の吸着色素量の減少するのに伴い光電子の発生量が減少するのが原因である。
【0044】
曲線因子(FF)はTi(i−OPr)4添加量が増加するにつれ0.7〜0.5まで緩やかに減少した。曲線因子は0〜1までの値をとりうるが、電池の内部抵抗や濡れ電流の増加に伴い減少する。この電池の場合、曲線因子は最高で0.7〜0.8の報告があり、SPD法で作製された太陽電池はこの値よりも低い。
本発明の場合、Ti(i−OPr)4添加量の増加につれ曲線因子が低下しているため、原料であるTi(i−OPr)4やTiO2ゾルに由来する残留物や、アナターゼ相に比べ電池特性の劣るルチル相の膜中への混在がこの原因として考えられる。
【0045】
変換効率(η)は擬似太陽光(AM−1.5、100mW/cm2)下ではη=ISC・VOC・FFで表される。上記の結果よりTi(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.6以下では短絡電流の変化が著しく大きいため、変換効率は短絡電流と同様にTi(i−OPr)4添加量の増加に伴い増加し、最大4.9%に達した。Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.6以上では、曲線因子の低下の影響から変換効率は減少傾向であった。
【0046】
[色素吸着量(工程2・3)]
図13に、アナターゼゾル/アモルファスゾルの濃度比を変化させた原料溶液から形成された多孔質TiO2層(膜厚10μm)の表面に吸着した色素(cis−Dithiocyanato−N, N−bis(2, 2’−bipyridyl−4, 4’−dicarboxylic acid)−ruthenium(II) dehydrate)の単位面積あたりの吸着量を示す。
アナターゼゾル/アモルファスゾル=2.0で吸着量は最大値3×10−8モル/cm2に達し、この値よりTiO2層のラフネスファクターは約400に相当する。アナターゼゾル/アモルファスゾル=2.0の溶液から作成された多孔質TiO2層が最も大きな多孔度を示したことから、この多孔質TiO2層で色素増感太陽電池特性が最大を示すと考えられる。
なお、アナターゼゾル/アモルファスゾル=2.3ではネック形成が不十分で密着性の良い膜を得ることができなかった。このため、一定の膜厚を有する多孔質TiO2層を作成することは困難であった。
【0047】
[太陽電池特性(工程2−3)]
図14に、アナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比を変化させて形成した作用極を利用して作製した太陽電池の(a)開放電圧(Voc)、(b)短絡電流(Isc)、(c)曲線因子(FF)及び(d)変換効率(η)をそれぞれ示す。なお、TiO2多孔質層の膜厚は全ての電極で10μmに統一してある。
開放電圧(Voc)はTi(i−OPr)4添加量にほとんど依存せず、0.7〜0.8Vの間で一定であった。これは当該電池で報告されているトップデータと同程度である。
【0048】
短絡電流(ISC)はアナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比=2.0まではアナターゼゾル添加量の増加とともに増加し、最大13mA/cm2を示した。しかし、アナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比=2.3では8mA/cm2まで減少した。なお、上記太陽電池で得られた短絡電流の値は、既報値の2/3程度であった。短絡電流のアナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比依存性は、多孔質TiO2層表面に吸着した色素量のアナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比依存性(図13)と同じ傾向を示した。これは、多孔質TiO2層表面に吸着した色素が有効に機能して、光電流を発生したことを示している。
【0049】
曲線因子(FF)はアナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比にほとんど依存せず、0.6〜0.7程度の値を示した。
本発明の場合、工程1−3に示した色素増感太陽電池用電極に比べ、曲線因子が大きく、これまで報告されている値が0.7・0.8であることから、本件の値は良好な値であると考えられる。
工程1−3においては、原料に添加していたTi(i−OPr)4に由来する残留有機物による曲線因子の低下が課題であったが、Ti(i−OPr)4を使用しない工程2・3においては、残留有機物の影響はなく、良好な結果につながったものと考えられる。
【0050】
変換効率(η)は擬似太陽光(AM−1.5、100mW/cm2)下ではη=ISC・VOC・FFで表される。上記の結果よりアナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比=2.0で最大6.0%に達した。
【0051】
【本発明の効果】
本発明によれば、SPD法を使用して汎用性及び短時間製膜による生産性の向上を確保することが可能であることに加えて、原料溶液のTiO2ゾル溶液中にチタン化合物を添加させたものを使用するので、該チタン化合物の熱分解により形成されたTiO2相または、アモルファス型TiO2ゾルに基づくTiO2相がTiO2微粒子間に析出することで微粒子間のネックとなる。
したがって、TiO2ゾルのSPD法利用を可能にして、従来方法の不具合を解消し短時間製膜で薄膜の強度及び密着性が増強される作製方法を提供する(請求項1)。特に請求項2、3によれば、その効果が顕著であった。
【0052】
また、請求項4によれば、ガラス基板上のFTO導電膜とTiO2薄膜との間にTiO2バッファー層を介在させて作用電極を作製したので、該TiO2バッファー層がFTO導電膜とTiO2薄膜とに夫々よくなじみ、接合性に優れて容易に接合を形成することができる。しかも、従来方法及び先願方法による色素増感太陽電池で問題となっていた電解液とFTO導電膜の接触による短絡、及びそれに伴う開放電圧の低下を解消することができた。この効果は請求項5により特に優れた色素増感太陽電池の特性が得られた。
【0053】
さらに、請求項3によれば、FTO導電カムを積層する工程、TiO2バッファー層を積層する工程及びTiO2薄膜を積層する工程がSPD法の利用により流れ作業的に連続して行うことができるので、色素増感太陽電池を工業的に生産性よく作製することが可能であって安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スプレー熱分解法(SPD法)を実施する装置の概要図である。
【図2】本発明の色素増感太陽電池用電極(請求項2)の断面SEM像である。
【図3】Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル比で形成されたTiO2薄膜のXRDパターンである。
【図4】Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル比で形成されたTiO2薄膜の表面SEM像であって、(a)はTi(i−OPr)4/TiO2ゾル比が0.3、(b)は同0.5、(c)は同0.8、(d)は同1.2、(e)は同8.0、(f)はTi(i−OPr)4のみの場合を示す。
【図5】SPD法によりTi(i−OPr)4/TiO2ゾル比=0.5溶液から形成されたTiO2薄膜の噴霧回数依存性を示すグラフである。
【図6】色素増感太陽電池を説明する概要図であって、(a)は模式図、(b)は原理図である。
【図7】Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル比の各比で形成されたTiO2薄膜の膜厚表面に吸着した色素量を示すグラフである。
【図8】Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル比の各比で形成された色素増感太陽電池の特性(AM−1.5、100mW/cm2)であって、(a)は開放電圧(Voc)、(b)は短絡電流(Isc)、(c)は曲線因子(FF)、(d)は変換効率(η)を示すグラフである。
【図9】本発明の色素増感太陽電池用電極(請求項2)の断面SEM像である。
【図10】原料アモルファスTiO2ゾルを各温度で30分加熱した結果得られた粉体のXRDパターンである。
【図11】原料TiO2ゾル溶液のTG・DTA測定の結果であって、(a)はアモルファスTiO2ゾル、(b)はアナターゼTiO2ゾル、(c)はアモルファスTiO2ゾル/アナターゼTiO2ゾル比=1を示すグラフである。
【図12】アナターゼゾル/アモルファスゾル比の各比で形成されたTiO2薄膜の表面SEM像であって、(a)はアナターゼゾル/アモルファスゾル比=0、(b)は同0.3、(c)は同1.0、(d)は同2.3の場合を示す。
【図13】アナターゼゾル/アモルファスゾル比の各比で形成されたTiO2薄膜の膜表面に吸着した色素量を示すグラフである。
【図14】アナターゼゾル/アモルファスゾル比の各比で形成された色素増感太陽電池の特性(AM−1.5、100mW/cm2)であって、(a)は開放電圧(Voc)、(b)は短絡電流(Isc)、(c)は曲線因子(FF)、(d)は変換効率(η)を示すグラフである。
【符号の説明】
10;ガラス基板
11:FTO導電膜
12:TiO2バッファー層
13:TiO2多孔質層
【発明の属する技術分野】
本発明は、TiO2薄膜(特に多孔質TiO2薄膜)及び該薄膜を用いた色素増感太陽電池用電極の作製方法、並びに、色素増感太陽電池用電極及び該電極の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
白色顔料として知られるTiO2(二酸化チタン)は、その光触媒作用の発見により水分解、水質浄化、殺菌、防汚、脱臭等の光触媒機能材料として着目され、抗菌タオルや空気清浄機等に応用されている。さらに最近では、従来の光触媒作用と異なる光励起親水性や超撥水性の報告もあって、機能性コーティングガラスとして自動車の窓ガラスやミラー等への応用も検討される等、そのTiO2薄膜は各種分野で機能薄膜として有用である。
【0003】
一方、TiO2の電気化学的特性の利用としては色素増感太陽電池用の作用電極が知られている。色素増感太陽電池は、数十nmのアナターゼ型TiO2粒子から構成された半導体薄膜の表面に可視光を吸収する色素分子を吸着させたもので、従来のpn接合と異なり、光吸収部のキャリア輸送部とを分離した構造をもつことからキャリア散乱に起因する再結合がなく高い光電変換効率を示す。
しかも、単結晶シリコンのような高価な固体材料を使用せず、セルを構成するTiO2、色素分子、ヨウ素電解質等の原材料を資源的な制約なく容易に入手できることから安価に作製でき、さらにはリサイクルが容易で環境汚染物質の排出もないため環境にも優しい。
【0004】
従来、上記太陽電池用電極としてのTiO2薄膜の作製方法は、一般に、TiO2ゾル(すなわち、TiO2コロイド分散液)をドクターブレード法やスピンコート法などの塗布法により基板上に一様に拡げて乾燥させる工程を数回〜数十回繰り返した後、500℃までの温度で1〜2時間焼結させる方法(以下、従来方法という)であった。
しかるに、この従来方法では、太陽電池に適した膜厚約10μmの薄膜を形成するためには、数時間〜数十時間を必要とし、生産性が著しく低いものであった。
【0005】
そこで、本発明者らは、上記従来方法の不具合を改善するために、先の特許出願(特願2000−339951号)により、上記原料(TiO2ゾル)とは異なるチタン有機・無機化合物溶液を使用するとともに汎用性に優れたスプレー熱分解法(以下、SPD法という)によるTiO2薄膜の作製方法(以下、先願方法という)を提案した。
すなわち先願方法は、TiO2前駆体を含む溶液に過酸化水素又はアルミニウムアセチルアセトナートを添加して原料溶液を調製し、高温保持された基板に原料溶液を間歇噴霧することによりTiO2前駆体をTiO2に熱分解し、基板上に多孔質のTiO2薄膜を成長させることを特徴とする方法である。
この先願方法によれば、従来方法に比べ汎用性に優れるだけでなく、比較的短時間に色素増感太陽電池用のTiO2多孔質薄膜の作製が可能であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記先願方法において作製された太陽電池の変換効率は3.2%であり、従来方法で作製された太陽電池の変換効率(〜7%)の1/2程度という問題があった。これは、TiO2薄膜の比表面積が従来方法により作製された薄膜の1/2〜1/4程度であり、薄膜表面に吸着した色素量の不足に起因するものと考えられる。
本発明は、上記従来事情に鑑み先願方法の利点、すなわちSPD法を使用して汎用性及び短時間製膜による生産性の向上を確保するとともに、太陽電池の変換効率の向上を可能にした多孔質TiO2薄膜の作製方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記TiO2薄膜を太陽電池用に応用した色素増感太陽電池用電極、さらには当該太陽電池用電極の作製方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
斯る本発明のTiO2薄膜の作製方法は、TiO2ゾル溶液にチタン化合物を添加し原料溶液を調製し、該原料溶液を高温保持された基板に間歇噴霧することにより、前記チタン化合物が熱分解して形成されたTiO2相をTiO2微粒子間に析出させながら多孔質のTiO2層を成長させることを要旨とする(請求項1)。
本発明のTiO2薄膜の作製方法においては、TiO2ゾル溶液としてアナターゼ型TiO2ゾル水溶液を使用して、アナターゼ型TiO2微粒子間にチタン化合物に基づくTiO2相を析出させ、ネックを形成することが好ましい。(請求項2)
すなわち、上記従来方法で利用されているTiO2ゾルを原料として使用し、それをSPD法の利用を可能とすることによって、TiO2微粒子で構成される多孔質電極の作製が可能となって変換効率の向上を図ったことを特長とする。
【0008】
しかるに、上記TiO2ゾルを原料溶液として単にSPD法を採用した場合には、形成薄膜と基板との密着性が著しく低下し実用に供し得ない状態であった。従来方法でTiO2ゾルを使用する場合、長時間の焼結によりTiO2微粒子間でネックが形成されることにより薄膜の強度及び密着性を増強させているが、短時間で薄膜を作製するSPD法でその作用を期待することはできない。したがって、それを解決するために、SPD法による薄膜形成機構について再考する必要があった。
【0009】
従来方法においては、TiO2ゾルによるTiO2多孔質薄膜の作製に際し、原料の微粒子溶液に粘性の高い有機バインダーを添加することで、焼結前に微粒子同士を密着させてネック成長の効率を高めている。有機バインダーは本焼結前の仮焼時における熱分解により薄膜外へ放出される。しかし、この脱バインダープロセスには30分〜1時間の仮焼が必要であり、短時間で薄膜を作製するSPD法ではバインダーが未分解不純物として薄膜内に残留するため採用することが難しい。
そこで、本発明では、SPD法によりTiO2微粒子間にネックを成長させて薄膜と基板との密着性を向上させるために、上記のとおり、TiO2ゾル溶液中にチタン化合物を添加させたものである。それによれば、SPD法で製膜時に前記チタン化合物が熱分解してTiO2相を形成し、それがTiO2微粒子間に析出することで微粒子間のネックとなり、短時間で薄膜の強度及び密着性が増強される。
【0010】
そして、実験によれば、上記チタン化合物がチタンイソプロキシドであることが好ましく(請求項3)、具体的にはチタンイソプロホキシドの硝酸水溶液とTiO2ゾル溶液を所定濃度に調製した原料溶液を使用すること(請求項4)が好ましい。
【0011】
また、実験をさらに行った結果、本発明のTiO2薄膜の作製方法において、上記チタン化合物がアモルファス型TiO2であること(請求項5)が好ましく、そして、アモルファス型TiO2水溶液とアナターゼ型TiO2ゾル溶液を所定濃度に調製して原料溶液としたことによるTiO2薄膜の作製方法(請求項6)が、変換効率などにおいて特に好ましいことが明らかになった。
【0012】
上記TiO2薄膜を色素増感太陽電池用電極に応用する場合、一般に、ガラス基板上にフッ素ドープ酸化スズ薄膜からなる透明電極を形成し、その上にTiO2薄膜を直接に作製するが、そのスズ化合物層とTiO2ゾル溶液となじみが悪いために製膜が困難である。しかも、従来方法による色素増感太陽電池においては、その接合構造のために、電解液と透明電極の接触による短絡、及びそれに伴う開放電圧の低下が問題となっていた。
そこで、本願では、上記フッ素ドープ酸化スズ薄膜からなる透明電極上に直接TiO2ゾル溶液を使用したTiO2薄膜を作製せずに、両薄膜間に、有機チタン化合物を原料とした緻密なTiO2バッファー層を介在させてなる色素増感太陽電池用電極(請求項7)に関する発明を提示する。
それによれば、上記TiO2バッファー層が透明導電膜とTiO2薄膜との何れにもなじみがよいので、接合性に優れて容易に接合を形成することができるばかりでなく従来の問題点を解消できる。
【0013】
その色素増感太陽電池用電極においては、TiO2薄膜が、多孔質TiO2薄膜であること(請求項8)が好ましく、また、その多孔質TiO2薄膜が、アナターゼ型TiO2微粒子間にアモルファス型TiO2粒子がアナターゼ型TiO2相として析出してネックを形成している多孔質のTiO2薄膜であることを特徴とする色素増感太陽電池用電極であること(請求項9)が特に好ましい。
そして、実験によれば、上記有機チタン化合物がチタンオキシアセチルアセトネートであることが望ましい(請求項10)。
【0014】
また、本願では、上記請求項7の色素増感太陽電池用電極を作製する方法であって、スズ化合物及びフッ素化合物を含む原料溶液を高温保持されたガラス基板に間歇噴霧することによりフッ素ドープ酸化スズ薄膜をガラス基板上に形成した後、チタンオキシアセチルアセトナートを原料とした溶液を間歇噴霧することにより緻密なTiO2バッファー層を積層し、その層上に前記請求項1の方法によりTiO2薄膜を積層することを特徴とする(請求項11)発明を提示する。
それにより、ガラス基板上にフッ素ドープ酸化スズ薄膜からなる透明導電薄膜を積層する工程、TiO2バッファー層を積層する工程及びTiO2薄膜を積層する工程が流れ作業的に連続して行うことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を表及び図面に基づいて説明する。
SPD法すなわちスプレー熱分解法については先願方法でも開示したが、図1に示すSPD装置により説明すれば、該装置はチャンバ1内にヒータ2で加熱されるホルダ3を配置し、ホルダ3に載置した基板4に噴霧器5にノズルを対向させて構成される。
チャンバ1内には、所定の酸化雰囲気に維持するために大気に解放し、あるいは酸化性ガス源に接続して酸素分圧を制御するようにする。
【0016】
噴霧器5には、圧縮ガス6によって原料溶液7が送り込まれる。レギュレータ8で噴霧圧を制御しながら基板4に向けて噴霧器5から放射状に原料溶液7がスプレーされて、基板上に塗布される。スプレーされた原料溶液7は、加熱された基板4に到達すると熱分解し、SnO2やTiO2など酸化成分等が基板4上に析出する。
原料溶液7の噴霧によって低下した基板4の温度が回復した後、原料溶液7を再度噴霧し、その噴霧の繰り返しにより必要とする膜厚の薄膜に成長する。
すなわち、SPD法は、原料溶液の塗布工程と同時に加熱分解を生起させることにより、SnO2やTiO2などの薄膜を作製するものである。
【0017】
次に、上記SPD法により色素増感太陽電池用電極を作製するために、フッ素ドープ酸化スズ薄膜からなるSnO2:F(略称:FTO)透明導電膜、TiO2バッファー層及びTiO2多孔質層の形成について説明するが、それらの原料溶液を含む形成条件を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
(工程1−1)透明電極の形成工程
表1に示すとおり、原料溶液Aは、0.25モルDBTDA〔(C4H9)2Sn(OCOCH3)2〕エタノール溶液に8モルのフッ化アンモニウム(NH4F)水溶液を、NH4F/DBTDA=1.6の割合で添加し、超音波洗浄器で10分間混合して調整した。
その原料溶液Aを使用して、図1に示すSPD装置の基板4位置にガラス基板(Corning1737;サイズ 25×25×1mm3)をセットした後、基板温度510℃で、噴霧器5から空気を圧縮ガスとし、流量1.25ml/秒、噴霧時間0.5秒、基板温度回復時間3秒、噴霧回数70回の条件で間歇的にガラス基板へ噴霧し、膜厚600nm、平均可視光透過率80%、シート抵抗8Ω/口のFTO(フッ素ドープ酸化スズ薄膜)からなる透明導電膜を形成した。
【0020】
(工程1−2)TiO2バッファー層の形成工程
表1に示すとおり、原料溶液Bとして、0.1モルのチタンオキシアセチルアセトネート(titanium(IV)oxyacetylacetonate)(省略:TOA)エタノール溶液を基板温度500℃、流量0.5ml/秒、噴霧時間0.5秒、基板温度回復時間3秒、噴霧回数300回の条件でFTO膜上へ膜厚が500nmのTiO2バッファー層を積層させた。
【0021】
(工程1−3)TiO2多孔質層の形成工程
〔Ti(i−OPr)4硝酸水溶液とアナターゼ型TiO2ゾルとの使用による方法〕
表1に示すとおり、TiO2ゾル(STS−01:石原産業(株))を3wt%にイオン交換水で希釈してストック溶液とした(溶液1)。さらに、チタンイソプロポキシド(Ti(i−OPr)4)を0.1モルの硝酸水溶液に滴下し、超音波分散させて、0.01〜0.02モルの溶液を調製した(溶液2)。
次に、所定濃度比(Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル)になるように溶液2へ溶液1を混合した後、最終的にTiO2ゾル濃度が0.1モルとなるようにイオン交換水で希釈して原料溶液Cを調製した。
この原料溶液Cを、前記工程2で形成したTiO2バッファー層上へ、基板温度500℃、流量0.5ml/秒、噴霧時間0.5秒、基板温度回復時間3秒、噴霧回数70回の条件で膜厚20μmのTiO2多孔質層を積層させた。その際、1回の噴霧で基板温度の低下は20〜30℃の範囲でヒーターの出力を調節した。
【0022】
上記工程1−1〜工程1−3は何れも図1に示したSPD法を利用して連続的に実施され、その結果、図2に示す色素増感太陽電池用の作用電極が15分〜20分程度で作製することが可能であった。
この電極は、図2の断面のSEM像に示すように、ガラス基板10の上に、工程1によりFTO導線膜11が形成され、その上に工程2によるTiO2バッファー層12が積層された後、該バッファー層12上にTiO2多孔質層13が積層された断面構造である。すなわち、FTO導電膜11とTiO2多孔質層13との間にTiO2バッファー層12が介在する構造である。
このTiO2バッファー層12は、FTO導電膜11とはなじみがよいので密な接合が得られるとともに、TiO2多孔質層13に対してもTiO2層であることから密な接合が容易に形成される。
【0023】
そして、上記TiO2多孔質層13は、前述のとおり、TiO2ゾル溶液にTi(i−OPr)4を添加した原料溶液Cを使用したものである。Ti(i−OPr)4は基板上で熱分解後にTiO2相を生成するが、この際にTiO2微粒子を取り込んで粒子間のネックが成長して膜が形成される。粒子間にネックを成長する点では従来方法と同じだが、ネックの源が従来方法ではTiO2微粒子自身の焼結に基づくのに対し、本発明の場合、ネックの源は原料溶液C中のTi(i−OPr)4に由来する。
熱力学の観点から、前者は拡散による物質移動に基づくネックの成長であり、特に固体であるTiO2微粒子における拡散は、気体や液体のそれに比べ極めて遅い。
そのため、従来方法では本焼成に最低1時間を要した。一方、SPD法によりTi(i−OPr)4から形成されたネックは、原料溶液調製の段階でTiO2微粒子を取り囲んでいるために拡散の工程は必要とせず、数秒で熱分解・結晶化してTiO2相を生成し、同時にTiO2微粒子間のネックとなる。この溶液を利用したSPD法では、噴霧1回に0.5秒、次回噴霧までの待ち時間に3秒の工程を50〜70回繰り返すことにより、色素増感太陽電池で一般に要求される膜厚10〜20μm、ラフネスファクターが1000のTiO2膜を形成することができる。
【0024】
SPD法により色素増感太陽電池用電極を作製するために、前述と同様にしてフッ素ドープ酸化スズ薄膜からなるSnO2:F(略称:FTO)透明導電膜、TiO2バッファー層を形成した後、最後に、前述のとおり、アナターゼ型TiO2ゾル水溶液にアモルファス型TiO2ゾル水溶液を混合した原料溶液Dを使用して、TiO2多孔質層の形成を行った。その色素増感太陽電池用電極の作製法において、各原料溶液を含む形成条件を表2に示す。
表2に示した条件としたほかは、前述の(工程1)透明電極の形成工程及び(工程2)TiO2バッファー層の形成工程と同様にして、各層の形成を行った後、(工程3)TiO2多孔質層の形成工程を次に示すように行うことによって、TiO2多孔質層13を作製することができる。
【0025】
【表2】
【0026】
(工程2−1)透明電極の形成工程
前述の工程1−1と同様にして、ガラス基板上に透明導電膜〔フッ素ドープ酸化スズ薄膜、膜厚600nm、平均可視光透過率80%、シート抵抗10Ω/口のFTO〕を形成した。
(工程2−2)TiO2バッファー層の形成工程
前記の工程2−1と同様にして、工程1−2で形成された透明導電膜上にTiO2バッファー層(膜厚:500nm)を形成した。
【0027】
(工程2−3)TiO2多孔質層の形成工程
〔アモルファス型TiO2ゾルとアナターゼ型TiO2ゾルとの使用による方法〕
表2に示すとおり、アモルファス型TiO2ゾル(TKC−301:テイカ(株))とアナターゼ型TiO2ゾル(TKC−302:テイカ(株))を混合してイオン交換水で希釈してストック溶液とした(溶液)。
次に、所定濃度比(アナターゼ型TiO2/アモルファス型TiO2)になるように、前記のストック溶液をイオン交換水で希釈して原料溶液Dを調製した。
この原料溶液Dを、前記工程2で形成したTiO2バッファー層上へ、基板温度500℃、流量0.5ml/秒、噴霧時間0.5秒、基板温度回復時間3秒、噴霧回数70回の条件で膜厚8μmのTiO2多孔質層を積層させた。その際、1回の噴霧で基板温度の低下は20〜30℃の範囲でヒーターの出力を調節した。
【0028】
上記工程2−1〜工程2−3は、何れも図1に示したSPD法を利用して連続的に実施され、その結果、図9の同様の色素増感太陽電池用の作用電極が15分〜20分程度で作製することが可能であった。
この電極は、図9の断面のSEM像に示すように、ガラス基板10の上に、工程1によりFTO導線膜11が形成され、その上に工程2によるTiO2バッファー層12が積層された後、該バッファー層12上にTiO2多孔質層13が積層された断面構造である。すなわち、FTO導電膜11とTiO2多孔質層13との間にTiO2バッファー層12が介在する構造である。
【0029】
原料溶液D中のアモルファス型TiO2は、製膜の際に、基板上でTiO2相を生成するが、この際にTiO2微粒子を取り込んで粒子間のネックが成長して膜が形成される。
TiO2粒子間にネックを成長させる点では、前述のTi(i−OPr)4を添加した原料溶液Cを使用した方法とほとんど同じだが、ネックの源がTi(i−OPr)4を含有する原料溶液Cによるものであり、製膜の際に、Ti(i−OPr)4が熱分解してTiO2相を形成して、TiO2微粒子間のネックとなるのに対して、原料溶液Dを使用した場合には、アナターゼ型TiO2ゾルとアモルファス型TiO2ゾルとが含有されており、製膜の際に、アモルファス型TiO2粒子が熱的相転移によりアナターゼ型TiO2相を形成すると共にアナターゼ型TiO2微粒子間のネックとなり製膜されるのである。
前述のように原料溶液Dを用いた場合には、多孔質膜TiO2薄膜が良好に形成されると共に、その多孔質膜TiO2薄膜層を有する色素増感太陽電池電極を形成した場合に高い変換効率(η)を有するのである。
【0030】
次に、工程1−3〔Ti(i−OPr)4硝酸水溶液とアナターゼ型TiO2ゾルとの使用による方法〕によって形成された、上記の図2におけるTiO2多孔質層13の作製について、さらに具体的な実施例に基づいて詳細に検討する。
[TiO2多孔質層(工程1−3)のキャラクタリゼーション]
図3、Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.5〜1.2溶液、及びTi(i−OPr)4のみの溶液から基板温度500℃で形成された膜のXRDパターンを示す。
Ti(i−OPr)4のみの溶液からはアナターゼ及びルチルの混合相が、TiO2ゾル含有溶液からはアナターゼ単相がそれぞれ観測された。色素増感太陽電池用電極としては、アナターゼ相の法がルチル相より優れており、TiO2ゾル含有溶液を利用したSPD法による製膜の有効性が予想される。また、Ti(i−OPr)4の添加量の増加に伴い回析ピークの半値幅が狭くなる傾向が観測され、Ti(i−OPr)4添加につれ膜構成粒子の粒径の増加が示唆された。
【0031】
図4に、Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.3〜8.0溶液、及びTi(i−OPr)4のみの溶液から形成されたTiO2層の表面SEM像を示す。
膜を構成するTiO2粒子の粒径は10〜20nm(Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.3)から80〜100nm(Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.8)まで、濃度比の増加とともに大きくなった。原料TiO2ゾルの平均粒径は7nmであることから、添加した(Ti(i−OPr)4は基板上で熱分解する際、TiO2ゾル粒子を取り込んで粒径の大きなTiO2粒子を形成するとともに、粒子間にネックを形成したものと考えられる。さらに、(Ti(i−OPr)4添加量を増やした溶液(Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=1.2、8.0)から形成されたTiO2層では、粒子間のネック成長が極めて大きくなり、粒子境界が曖昧で平滑な表面形態が観察された。
このように、Ti(i−OPr)4の添加により膜の密着性の向上を達成することができただけでなく、(Ti(i−OPr)4添加量の制御により膜構成粒子の粒径、言い換えるとTiO2層の多孔度の制御が可能であることが確認された。
【0032】
[TiO2多孔質層(工程1−3)の膜厚]
SPD法で作製した薄膜の特徴として、原料溶液の噴霧回数により膜厚を制御することができることが挙げられる。
図5に、(Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.5の原料溶液を利用して形成されたTiO2多孔質膜の膜厚の噴霧回数依存性を示し、噴霧回数と膜厚には比例関係が存在することが確認された。
この図5のデータから、目的の膜厚に対応する噴霧回数を予測することができる。色素増感太陽電池に関して、一般的に要求される膜厚は10〜20μmである。この要求に対してSPD法を利用すると、膜厚20μmは70回の噴霧に相当する。1回の噴霧時間が0.5秒、基板温度回復時間が3秒であることから、70回噴霧に要する時間は約4分である。
従来方法で同じ膜厚のTiO2層を作製するには、数時間〜十数時間を要していたことから、SPD法の膜形成により大幅な時間短縮が達成された。
【0033】
なお、本発明の特徴は上記のとおり、従来から利用されていたTiO2ゾル溶液にTi(i−OPr)4を添加して短時間でTiO2多孔質膜13の形成を可能にした点にある。
しかし、添加する物質はTi(i−OPr)4に限らず、TiO2ゾル溶液と均質に混合することができる物質であれば有機、無機に関わらず利用可能であると考えられる。
また、今回は500℃での製膜により最も優れたTiO2膜が得られたが、さらに低音で熱分解・結晶化する物質を利用することで、従来に比べて低温での製膜も可能になると考えられる。例えば、四塩化チタン(TiCl4)エタノール溶液(TiO2ゾルは含まず)を利用したSPD法による製膜では、これまでに基板温度380℃でアナターゼ型TiO2単相膜が得られている。この効果を利用すれば、短時間に加え低温での色素増感太陽電池用TiO2層を形成できる。
さらに、本発明ではTiO2に限らず、広い意味での多孔質膜の短時間・低温形成の可能性を示唆している。
【0034】
次に、工程2−3〔アモルファス型TiO2ゾルとアナターゼ型TiO2ゾルとの使用による方法〕によって形成された、上記の図2におけるTiO2多孔質層13の作製について、さらに具体的な実施例に基づいて詳細に検討する。
[原料アモルファス型TiO2ゾル(工程2・3)の熱的変化]
図10に、原料アモルファス型TiO2ゾルを100〜500℃に30分間加熱した後のXRDパターンを示す。100℃ではアモルファス状態のままであったが、300℃以上では、アナターゼ型TiO2相特有の回折ピークが現れた。これは、原料アモルファス型TiO2ゾルが、300℃以上で相転移をしてアナターゼ相へ変化したことを示す。さらに、温度が300℃から500℃へ上昇するにつれ、回折ピーク強度の大きくなるとともに半値幅が小さくなった。これは、原料アモルファスTiO2ゾルのうち、アモルファス相からアナターゼ相へ相転移した割合が大きくなるとともに、粒成長による構成粒子の粒径の増加を示唆している。
【0035】
図11に、原料アモルファス型TiO2ゾル溶液、原料アナターゼ型TiO2ゾル溶液、及び原料アモルファス型TiO2ゾルと原料アナターゼ型TiO2ゾルの混合溶液のTG・DTA測定の結果を示す。アモルファス型TiO2ゾル溶液、アナターゼ型TiO2ゾル溶液、及びアモルファス型TiO2ゾルと原料アナターゼ型TiO2ゾルの混合溶液のDTA曲線で観測された100℃付近の吸熱ピークは、ゾル溶液に付随する水成分の蒸発によるものである。
アモルファス型TiO2ゾル溶液、及びアモルファス型TiO2ゾルとアナターゼ型TiO2ゾルの混合溶液のDTA曲線において、290℃と370℃に吸熱ピークが観測された。これは、アモルファスTiO2相のアナターゼ相への相転移と粒成長に対応していると考えられる。
一方、アナターゼ型TiO2ゾル溶液の場合は、290℃と370℃に吸熱ピークは観測されなかった。
【0036】
[TiO2多孔質層(工程2−3)のキャラクタリゼーション]
図12に、それぞれアナターゼゾル/アモルファスゾル比=0・2.3の溶液から基板温度500℃で形成されたTiO2層の表面SEMを示す。
膜を構成するTiO2粒子の粒径は80・100nm(アナターゼゾル/アモルファスゾル比=0)から10・20nm(アナターゼゾル/アモルファスゾル比=2.3)まで、濃度比の増加とともに小さくなった。原料TiO2ゾルの平均粒径は、アナタ・ゼ及びアモルファスとも7nmであることから、これらのゾルは基板上で粒成長して粒子間にネックを形成したものと考えられる。
このように、アナターゼとアモルファスのTiO2ゾルを混合することで膜の密着性の向上を達成することができただけでなく、アナターゼゾルとアモルファスゾルの混合比の制御により膜構成粒子の粒径、言い換えるとTiO2層の多孔度の制御が可能であることが確認された。
【0037】
次に、上記TiO2薄膜を使用した色素増感太陽電池の作製と評価について説明する。
[色素増感太陽電池の原理]
目低とする太陽電池の原理を図6により説明すれば次のとおりである。
色素分子はTiO2薄膜の半導体作用電極表面に吸着した状態にある。色素分子は太陽光を吸収し、励起状態になる。この状態で、色素分子からTiO2の伝道帯へ電子が注入される。電子は導電膜を通過し、外部の電流回路へと流れ、電流として取り出される。その後、電子は対電極を通じて電池内へ戻る。この対電極と薄膜間には電解液(I−/I3 −)が存在し、この電解質の拡散により2つの電極間に電荷の移動が起こる。対電極の電子によりI3 −が還元されI−に変化して対電極から作用電極まで拡散し、ここで先に電子を放出しカチオンとなった色素増感分子に電子を還元して増感分子を再生する。これと同時にI−自身も酸化されI3 −として再生される。このように、光を電流へ変換する酸化還元サイクルは一つの閉じた系であり、原理的として自然界の光合成と同じである。
【0038】
[色素増感太陽電池の組み立ておよび評価法]
対電極はガラス基板上へPtを蒸着して作製した。その対電極上へ約0.1mlの電解液(I−:0.5M/I3 −0.04M、80%炭酸エチレン/20%炭酸プロピレン溶液)をスポイトで滴下し、2枚の電極間へ広げ簡易太陽電池を組み立てた。この状態で電極間は表面張力により貼り付いた。
電池特性の評価は、太陽電池評価装置(分光計器)で擬似太陽光(AM−1.5,100mW/cm2)の照射下で行った。また吸着色素量は、アルカリ溶液中で脱着させた色素を比色法により定量した。
【0039】
次いで、上記の色素増感太陽電池の評価について説明する。
[色素吸着量(工程1−3)]
図7に、Ti(i−OPr)4添加量を変化させた原料溶液から形成された多孔質TiO2層(膜厚20μm)の表面に吸着した色素(cis−Dithiocyanato−N,N−bis(2,2’−bipyridyl−4,4’−dicarboxylicacid)−ruthenium(II)dehydrate)の単位面積当りの吸着量を示す。
(Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.3で吸着量は最大値9×10−8モル/cm2に達し、この値よりTiO2層のラフネスファクターは約1000に相当する。このラフネスファクター1000は、一般に色素増感太陽電池で要求される値である。
したがって、このTiO2多孔質層を利用することにより、従来方法で形成された色素増感太陽電池と遜色ない電池特性が期待できる。
【0040】
[太陽電池特性(工程1−3)]
図8に、Ti(i−OPr)4添加量を変化させて形成した作用極を利用して作製した太陽電池の(a)開放電圧(Voc)、(b)短絡電流(Isc)、(c)曲線因子(FF)及び(d)変換効率(η)をそれぞれ示す。なお、TiO2多孔質層の膜厚は全ての電極で20μmに統一してある。
開放電圧(Voc)はTi(i−OPr)4添加量にほとんど依存せず、0.7〜0.8Vの間で一定であった。これは当該電池で報告されているトップデータと同程度である。
開放電圧は暗電流と光電流とのバランスで決まるため、暗電流が流れる経路を遮断することができれば向上する。一般にこの太陽電池の系では、作用極に多孔質層を利用するため、電解液がTiO2多孔質層を通過して透明電導膜層に接触することによる短絡が原因で暗電流が流れ易く構造となっている。したがって、同該電池の一般的な開放電圧は0.6〜0.7V程度である。
【0041】
一方、本発明のSPD法で形成された作用電極では、図2で説明したとおり、TiO2多孔質層13と透明導電膜層(FTO導電膜)11の間に密なTiO2バッファー層12が導入されている。この太陽電池で高い開放電圧が得られたのは、この層により暗電流が流れる経路を有効的に遮断することができたためと考えられる。もともとこのバッファー層12は、SPD法による電極作製に際して、TiO2多孔質層13とFTO導電膜11の密着性を高めるために導入したが、電池特性の向上にも寄与したことになる。
【0042】
短絡電流(ISC)はTi(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.6まではTi(i−OPr)4添加量の増加とともに増加したが、Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.6以上では10から12mA/cm2程度で一定となった。しかし、上記太陽電池で得られた短絡電流の値は、既報値の2/3程度であった。
一般に短絡電流は集光面積により決まり、この電池の場合は作用極のラフネスファクターを1000程度まで増加させ、その表面へ大量の色素を吸着させることで電流密度の向上を図っている。SPD法で形成された太陽電池の場合、図7に示されたTi(i−OPr)4添加量と色素吸着量の関係から、Ti(i−OPr)4添加量が少ないほど色素吸着量は大きい結果が得られている。つまり、Ti(i−OPr)4添加量が少ないほど大きな短絡電流が予想されることになり、本結果はこれに矛盾する。
【0043】
この原因として、多孔質層を形成する粒子間の相関を考える必要がある。つまり、Ti(i−OPr)4添加量が少ないほど構成粒子間をつなぐネックは細く、比表面積は大きいため色素の吸着量は多く、したがって光吸収による光電子も数多く発生する。しかし、粒子間のネックが細く未発達のため、粒子間の機械的強度や電気的接触は弱く、再融合により光電子の多くは消滅する。これにより、短絡電流は色素の吸着量から予測される値よりも小さくなる。
一方、Ti(i−OPr)4添加量の増加により短絡電流が急激に増加する理由は、Ti(i−OPr)4添加量の増加にともない粒子間のネックが発達し、光電子の再結合の割合が減少したためであると考えられる。これに対し、Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.6以上におけるTi(i−OPr)4添加に伴う短絡電流の低下はTi(i−OPr)4添加による粒子間のネックの大き過ぎる発達により比表面積が減少し、これに伴う作用極表面の吸着色素量の減少するのに伴い光電子の発生量が減少するのが原因である。
【0044】
曲線因子(FF)はTi(i−OPr)4添加量が増加するにつれ0.7〜0.5まで緩やかに減少した。曲線因子は0〜1までの値をとりうるが、電池の内部抵抗や濡れ電流の増加に伴い減少する。この電池の場合、曲線因子は最高で0.7〜0.8の報告があり、SPD法で作製された太陽電池はこの値よりも低い。
本発明の場合、Ti(i−OPr)4添加量の増加につれ曲線因子が低下しているため、原料であるTi(i−OPr)4やTiO2ゾルに由来する残留物や、アナターゼ相に比べ電池特性の劣るルチル相の膜中への混在がこの原因として考えられる。
【0045】
変換効率(η)は擬似太陽光(AM−1.5、100mW/cm2)下ではη=ISC・VOC・FFで表される。上記の結果よりTi(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.6以下では短絡電流の変化が著しく大きいため、変換効率は短絡電流と同様にTi(i−OPr)4添加量の増加に伴い増加し、最大4.9%に達した。Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル=0.6以上では、曲線因子の低下の影響から変換効率は減少傾向であった。
【0046】
[色素吸着量(工程2・3)]
図13に、アナターゼゾル/アモルファスゾルの濃度比を変化させた原料溶液から形成された多孔質TiO2層(膜厚10μm)の表面に吸着した色素(cis−Dithiocyanato−N, N−bis(2, 2’−bipyridyl−4, 4’−dicarboxylic acid)−ruthenium(II) dehydrate)の単位面積あたりの吸着量を示す。
アナターゼゾル/アモルファスゾル=2.0で吸着量は最大値3×10−8モル/cm2に達し、この値よりTiO2層のラフネスファクターは約400に相当する。アナターゼゾル/アモルファスゾル=2.0の溶液から作成された多孔質TiO2層が最も大きな多孔度を示したことから、この多孔質TiO2層で色素増感太陽電池特性が最大を示すと考えられる。
なお、アナターゼゾル/アモルファスゾル=2.3ではネック形成が不十分で密着性の良い膜を得ることができなかった。このため、一定の膜厚を有する多孔質TiO2層を作成することは困難であった。
【0047】
[太陽電池特性(工程2−3)]
図14に、アナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比を変化させて形成した作用極を利用して作製した太陽電池の(a)開放電圧(Voc)、(b)短絡電流(Isc)、(c)曲線因子(FF)及び(d)変換効率(η)をそれぞれ示す。なお、TiO2多孔質層の膜厚は全ての電極で10μmに統一してある。
開放電圧(Voc)はTi(i−OPr)4添加量にほとんど依存せず、0.7〜0.8Vの間で一定であった。これは当該電池で報告されているトップデータと同程度である。
【0048】
短絡電流(ISC)はアナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比=2.0まではアナターゼゾル添加量の増加とともに増加し、最大13mA/cm2を示した。しかし、アナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比=2.3では8mA/cm2まで減少した。なお、上記太陽電池で得られた短絡電流の値は、既報値の2/3程度であった。短絡電流のアナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比依存性は、多孔質TiO2層表面に吸着した色素量のアナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比依存性(図13)と同じ傾向を示した。これは、多孔質TiO2層表面に吸着した色素が有効に機能して、光電流を発生したことを示している。
【0049】
曲線因子(FF)はアナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比にほとんど依存せず、0.6〜0.7程度の値を示した。
本発明の場合、工程1−3に示した色素増感太陽電池用電極に比べ、曲線因子が大きく、これまで報告されている値が0.7・0.8であることから、本件の値は良好な値であると考えられる。
工程1−3においては、原料に添加していたTi(i−OPr)4に由来する残留有機物による曲線因子の低下が課題であったが、Ti(i−OPr)4を使用しない工程2・3においては、残留有機物の影響はなく、良好な結果につながったものと考えられる。
【0050】
変換効率(η)は擬似太陽光(AM−1.5、100mW/cm2)下ではη=ISC・VOC・FFで表される。上記の結果よりアナターゼゾル/アモルファスゾル濃度比=2.0で最大6.0%に達した。
【0051】
【本発明の効果】
本発明によれば、SPD法を使用して汎用性及び短時間製膜による生産性の向上を確保することが可能であることに加えて、原料溶液のTiO2ゾル溶液中にチタン化合物を添加させたものを使用するので、該チタン化合物の熱分解により形成されたTiO2相または、アモルファス型TiO2ゾルに基づくTiO2相がTiO2微粒子間に析出することで微粒子間のネックとなる。
したがって、TiO2ゾルのSPD法利用を可能にして、従来方法の不具合を解消し短時間製膜で薄膜の強度及び密着性が増強される作製方法を提供する(請求項1)。特に請求項2、3によれば、その効果が顕著であった。
【0052】
また、請求項4によれば、ガラス基板上のFTO導電膜とTiO2薄膜との間にTiO2バッファー層を介在させて作用電極を作製したので、該TiO2バッファー層がFTO導電膜とTiO2薄膜とに夫々よくなじみ、接合性に優れて容易に接合を形成することができる。しかも、従来方法及び先願方法による色素増感太陽電池で問題となっていた電解液とFTO導電膜の接触による短絡、及びそれに伴う開放電圧の低下を解消することができた。この効果は請求項5により特に優れた色素増感太陽電池の特性が得られた。
【0053】
さらに、請求項3によれば、FTO導電カムを積層する工程、TiO2バッファー層を積層する工程及びTiO2薄膜を積層する工程がSPD法の利用により流れ作業的に連続して行うことができるので、色素増感太陽電池を工業的に生産性よく作製することが可能であって安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スプレー熱分解法(SPD法)を実施する装置の概要図である。
【図2】本発明の色素増感太陽電池用電極(請求項2)の断面SEM像である。
【図3】Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル比で形成されたTiO2薄膜のXRDパターンである。
【図4】Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル比で形成されたTiO2薄膜の表面SEM像であって、(a)はTi(i−OPr)4/TiO2ゾル比が0.3、(b)は同0.5、(c)は同0.8、(d)は同1.2、(e)は同8.0、(f)はTi(i−OPr)4のみの場合を示す。
【図5】SPD法によりTi(i−OPr)4/TiO2ゾル比=0.5溶液から形成されたTiO2薄膜の噴霧回数依存性を示すグラフである。
【図6】色素増感太陽電池を説明する概要図であって、(a)は模式図、(b)は原理図である。
【図7】Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル比の各比で形成されたTiO2薄膜の膜厚表面に吸着した色素量を示すグラフである。
【図8】Ti(i−OPr)4/TiO2ゾル比の各比で形成された色素増感太陽電池の特性(AM−1.5、100mW/cm2)であって、(a)は開放電圧(Voc)、(b)は短絡電流(Isc)、(c)は曲線因子(FF)、(d)は変換効率(η)を示すグラフである。
【図9】本発明の色素増感太陽電池用電極(請求項2)の断面SEM像である。
【図10】原料アモルファスTiO2ゾルを各温度で30分加熱した結果得られた粉体のXRDパターンである。
【図11】原料TiO2ゾル溶液のTG・DTA測定の結果であって、(a)はアモルファスTiO2ゾル、(b)はアナターゼTiO2ゾル、(c)はアモルファスTiO2ゾル/アナターゼTiO2ゾル比=1を示すグラフである。
【図12】アナターゼゾル/アモルファスゾル比の各比で形成されたTiO2薄膜の表面SEM像であって、(a)はアナターゼゾル/アモルファスゾル比=0、(b)は同0.3、(c)は同1.0、(d)は同2.3の場合を示す。
【図13】アナターゼゾル/アモルファスゾル比の各比で形成されたTiO2薄膜の膜表面に吸着した色素量を示すグラフである。
【図14】アナターゼゾル/アモルファスゾル比の各比で形成された色素増感太陽電池の特性(AM−1.5、100mW/cm2)であって、(a)は開放電圧(Voc)、(b)は短絡電流(Isc)、(c)は曲線因子(FF)、(d)は変換効率(η)を示すグラフである。
【符号の説明】
10;ガラス基板
11:FTO導電膜
12:TiO2バッファー層
13:TiO2多孔質層
Claims (11)
- TiO2ゾル溶液にチタン化合物を添加して原料溶液を調製し、該原料溶液を高温保持された基板に間歇噴霧することにより、前記チタン化合物が熱分解して形成されたTiO2微粒子間に析出させながら多孔質のTiO2層を成長させるTiO2薄膜の作製方法。
- TiO2ゾル溶液としてアナターゼ型TiO2ゾル水溶液を使用して、アナターゼ型TiO2微粒子間にチタン化合物に基づくTiO2相を析出させ、ネックを形成することを特徴とする請求項1に記載のTiO2薄膜の作製方法。
- 上記チタン化合物がチタンイソプロポキシドであることを特徴とする請求項1に記載のTiO2薄膜の作製方法。
- 請求項3の記載において、チタンイソプロポキシドの硝酸水溶液とTiO2ゾル溶液を所定濃度に調製して原料溶液とすることを特徴とするTiO2薄膜の作製方法。
- 上記チタン化合物がアモルファス型TiO2であることを特徴とする請求項1に記載のTiO2薄膜の作製方法。
- 請求項5の記載において、アモルファス型TiO2水溶液とアナターゼ型TiO2ゾル溶液を所定濃度に調製して原料溶液とすることを特徴とするTiO2薄膜の作製方法。
- ガラス基板上に形成するフッ素ドープ酸化スズ薄膜とTiO2薄膜との間に、有機チタン化合物を原料とした緻密なTiO2バッファー層を介在させてなる色素増感太陽電池用電極。
- TiO2薄膜が、多孔質TiO2薄膜であることを特徴とする請求項7記載の色素増感太陽電池用電極。
- 多孔質TiO2薄膜が、アナターゼ型TiO2微粒子間にアモルファス型TiO2粒子がアナターゼ型TiO2相として析出してネックを形成している多孔質のTiO2薄膜であることを特徴とする請求項8に記載の色素増感太陽電池用電極。
- 上記有機チタン化合物がチタンオキシアセチルアセトネートであることを特徴とする請求項7に記載の色素増感太陽電池用電極。
- スズ化合物及びフッ素化合物を含む原料溶液を高温保持されたガラス基板に間歇噴霧することによりフッ素ドープ酸化スズ薄膜をガラス基板上に形成した後、チタンオキシアセチルアセトネートを原料とした溶液を間歇噴霧することにより緻密なTiO2バッファー層を積層し、その層上に前記請求項4または6の方法によりTiO2薄膜を積層する色素増感太陽電池用電極の作製方法。
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